JP5168859B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、複数の単位セルを積層した燃料電池スタックの内部の状態を判定して、それに応じたシステム動作の制御を行う燃料電池システムに関する。
従来、複数の単位セルを積層した構造の燃料電池スタックに対して水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとをそれぞれ供給し、燃料電池スタック内部で水素と酸素との電気化学反応を生じさせて発電を行う燃料電池システムが知られている。
燃料電池スタックの発電単位となる発電セルは、例えば、飽和含水することでイオン伝導性電解質として機能する固体高分子膜の両側に電極触媒層を形成した膜電極接合体(MEA:Membrane Electrolyte Assembly)を一対のセパレータで挟持したものであり、燃料電池スタックに対しては、例えば、酸化剤ガスを加湿した状態で供給する等の手法で水分を供給することが求められる。ここで、燃料電池スタック内部の水分が不足すると、各単位セルの電解質膜が乾燥して内部抵抗が増加するために燃料電池スタックの出力が低下するといった問題が生じる。その一方で、燃料電池スタック内部の水分が過剰になると、電極の触媒が水で覆われて(水が詰まり)反応ガスの拡散が妨げられることで、燃料電池スタックの出力が低下するといった問題が生じる。これらのことから、燃料電池スタックを効率的に運転するためには、水分不足および水分過剰をともに防止できる制御方法が必要となる。
このような観点から、燃料電池スタックの単位セル内において水分不足が発生しやすい部位を流れる局所電流を測定し、局所電流値が所定範囲以下のときに水分不足と判断して燃料電池スタック内部の含水量が上昇するように運転条件を制御し、局所電流値が所定範囲以上のときに水分過剰と判断して燃料電池スタック内部の含水量を下げるように運転条件を制御する燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2005−190997号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、燃料電池スタックの単位セル内における特定部位の局所電流値のみを基準に水分不足であるか水分過剰であるかを判定しているので、運転条件により水分不足及び水分過剰が単位セル内の同じ部位で起きやすく、水分不足及び水分過剰のいずれが起きた場合もその部位の局所電流値が小さくなるような場合には、適切な判定を行うことができない。例えば、単位セル内で燃料ガスや酸化剤ガス、発電に伴う温度上昇を抑制するための冷却媒体の各流体が流れる方向が同一方向とされている場合がこれにあたる。以下、燃料電池スタックの単位セル内において、燃料ガスや酸化ガス、冷却媒体の各流体が同じ向きに流れる場合のことを「並行流」と呼ぶ。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、並行流の場合でも燃料電池スタック内部の状態を正確に判定し、燃料電池スタック内部の状態に応じて最適な動作制御を迅速に実施することができる燃料電池システムを提供することを目的としている。
本発明は、並行流の場合に流体の流れ方向に沿った局所的な電流密度の分布が燃料電池スタック内部の状態と相関があることに着目し、並行流の構造を有する燃料電池単位セル内の流体が流れる方向に沿った3以上の部位で局所的な電流密度を検出し、これら3以上の部位の電流密度の分布に基づいて燃料電池スタック内部の状態を判定する。即ち、燃料電池スタックの各部位の電流密度分布に基づき、3以上の部位の電流密度分布うち流体の流れる方向の再下流側の部位を除いた2点の電流密度分布から算出する電流密度分布の傾きが所定値以上であって、且つ、前記流体が流れる方向の最下流側の部位の電流密度が所定値以下の場合に、前記燃料電池スタック内部が水分過剰の状態にあると判断する。また、燃料電池スタックの各部位の電流密度分布に基づき、電流密度分布の傾きが所定値未満であって、且つ、電流密度検出手段による電流密度検出の対象とされた燃料電池単位セル近傍のセル電圧の経時変化が振動的である場合に、燃料電池スタック内部が酸化剤ガス不足の状態にあると判断する。また、燃料電池スタックの各部位の電流密度分布に基づき、電流密度分布の傾きが所定値未満であって、且つ、電流密度検出手段による電流密度検出の対象とされた燃料電池単位セル近傍のセル電圧の経時変化が振動的でない場合に、燃料電池スタック内部が水分不足の状態にあると判断する。
本発明に係る燃料電池システムによれば、流体の流れ方向に沿った電流密度の分布に基づいて燃料電池内部の状態を判定し、その判定結果に応じてシステム動作を制御するようにしているので、燃料電池スタック内部の状態を正確に判定して最適な動作制御を迅速に実施することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明を適用した燃料電池システムの全体構成を示すシステム構成図である。この図1に示す燃料電池システムは、例えば燃料電池車両用の発電システムとして構成されたものであり、主要な構成要素として、発電を行う燃料電池スタック1と、この燃料電池スタック1に燃料ガスである水素ガスを供給する水素供給系と、酸化剤ガスである空気を供給する空気供給系と、冷却液を供給する冷却液供給系と、システム全体を統括的に制御するコントローラ100とを備えている。
本実施形態の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタック1としては、例えば、電解質に固体高分子膜を用いた固体高分子型燃料電池が用いられる。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する性質を持つ。固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極触媒層を形成した膜電極接合体(MEA)を一対のセパレータで挟持してなる発電セルを1単位とし、この単位セルが多段に積層されたスタック構造を有する。そして、各単位セルのアノード側に水素供給系からの水素ガス、カソード側に空気供給系からの空気がそれぞれ供給されることで、各単位セルのアノード、カソード間での電極反応により電力が発電される。なお、本実施形態の燃料電池システムでは、この燃料電池スタック1を構成する単位セルが、水素ガスや空気、冷却液の各流体が流れる方向が同一方向とされた並行流の構造を有しているが、この燃料電池スタック1の詳細な構成については、図2乃至図6を参照して後述する。
水素供給系は、例えば、水素供給源である水素タンク2を有しており、この水素タンク2から取り出した水素ガスをアノード調圧弁3で所望の圧力になるように調整した上で、水素供給配管4から燃料電池スタック1のアノード側へと供給するようになっている。
燃料電池スタック1のアノード側では、供給された水素ガスが全て消費されるわけではなく、余剰分の水素ガス(燃料電池スタック1のアノードから排出される水素ガス)は、アノード循環ポンプ5の駆動により水素循環配管6で循環され、新たに水素タンク2から取り出された水素ガスと混合されて再び燃料電池スタック1のアノードに供給される。また、燃料電池1のアノードに供給される水素の圧力は、コントローラ100が系内の水素圧力を検出する図示しない圧力センサの検出値をフィードバックしてアノード調圧弁3を駆動することによって制御される。
空気供給系は、例えば、空気供給源としてコンプレッサ7を有し、このコンプレッサ7で外気をで吸入、加圧して空気供給配管8から燃料電池スタック1のカソード側へと供給するようになっている。なお、空気供給配管8の中途位置には加湿装置9が設置されており、コンプレッサ7から圧送される空気はこの加湿装置9によって加湿された上で、燃料電池スタック1のカソード側へと供給されるようになっている。
また、燃料電池スタック1のカソード出口側には空気排気配管10が接続されており、燃料電池スタック1のカソード側で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、この空気排気配管10からカソード調圧弁11を介して排出される。また、燃料電池スタック1のカソードに供給される空気の圧力は、コントローラ100が系内の空気圧力を検出する図示しない圧力センサの検出値をフィードバックしてカソード調圧弁11を駆動することによって制御される。
冷却液供給系は、冷却液ポンプ12の駆動によって、例えば水にエチレングリコール等の凍結防止剤を混入した冷却液を冷却液循環配管13内で循環させて、燃料電池スタック1に供給する構成となっている。冷却液循環配管13の経路内には、ラジエタファン14を有するラジエタ15が設けられており、燃料電池スタック1の冷却により加熱された冷却液は、ここで冷却される。また、冷却液循環配管13は三方弁16によって分岐されており、分岐経路としてラジエタ15と並列にバイパス配管17が設けられている。冷却液は、三方弁16によってラジエタ15側とバイパス配管17側に分流され、冷却温度が調整される。なお、ラジエタ15側とバイパス配管17側に分流される冷却液の割合は、コントローラ100が燃料電池スタック1の冷却液入口近傍や出口近傍位置における冷却液温度を検出する図示しない温度センサの検出値に応じて三方弁16を操作することにより制御され、これにより燃料電池スタック1に供給される冷却液の温度、すなわち冷却液による冷却能力が制御される。
コントローラ100は、システム内に設けられた各種センサ(圧力センサや流量センサ、温度センサ、電圧センサ、電流センサなど)の検出値をモニタリングしてシステムの動作状況を把握するとともに、車両の運転状況などに応じて燃料電池システムに要求される発電量を把握し、燃料電池スタック1から要求発電量に見合う出力が得られるように、水素供給系の動作や空気供給系の動作を統括的に制御する。また、コントローラ100は、燃料電池スタック1が適正な動作温度に保たれるように冷却液供給系の動作を制御する。また、特に本実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池スタック1内部の状態、具体的には燃料電池スタック1の内部が水分過剰の状態にあるのか、或いは水分不足の状態にあるのか、更には燃料電池スタック1の内部が酸化剤ガスである空気が不足している状態にあるのかを判定し、その判定結果に応じて燃料電池スタック1の効率的な運転を行うための動作制御を実行するが、この燃料電池スタック1内部の状態の判定や判定結果に応じた動作制御もコントローラ100によって実施される。
ここで、本実施形態の燃料電池システムで用いられる燃料電池スタック1の具体的な構成例について、図2乃至図6を参照して説明する。
図2は、本実施形態の燃料電池システムで用いられる燃料電池スタック1の一部を拡大して示す図である。この図2に示すように、燃料電池スタック1は、複数の単位セル20が電気的に直列接続されるように積層されてなる。燃料電池スタック1を構成する単位セル20は、固体高分子電解質膜の両面に一対の電極(カソード電極及びアノード電極)を設けた膜電極接合体(MEA)21と、その両面に接するセパレータ22,23とからなる。アノード側セパレータ22には、燃料ガス(水素ガス)が流れる燃料ガス流路24が形成され、カソード側セパレータ23には、酸化剤ガス(空気)が流れる酸化剤ガス流路25と、冷却液が流れる冷却液流路26とが形成されている。そして、燃料ガス流路24を流れる水素ガス及び酸化剤ガス流路25を流れる空気がそれぞれ膜電極接合体21のアノード電極及びカソード電極に供給され、電気化学反応によって発電が行われる。また、発電に伴って生じる熱は、冷却液流路26を流れる冷却液により放熱される。
図3は、アノード側セパレータ22の膜電極接合体21に接する側の平面の構成を示す図である。アノード側セパレータ22の膜電極接合体21に接する面には、燃料ガス流路24が長手方向に延びる複数の溝として設けられている。この燃料ガス流路24は、溝の一端がアノード側セパレータ22の一方の端部に厚み方向に貫通して設けられた燃料ガス供給通路31に接続され、溝の他端がアノード側セパレータ22の他方の端部に厚み方向に貫通して設けられた燃料ガス排出通路32に接続されており、燃料ガス供給通路31から供給された水素ガスが図中矢印で示す方向で燃料ガス流路24を流れて、燃料ガス排出通路32から排出される構造となっている。また、アノード側セパレータ22の一方の端部には、燃料ガス供給通路31とともに酸化剤ガス供給通路33と冷却液供給通路34とがそれぞれ厚み方向に貫通して設けられており、アノード側セパレータ22の他方の端部には、燃料ガス排出通路32とともに酸化剤ガス排出通路35と冷却液排出通路36とがそれぞれ厚み方向に貫通して設けられている。
図4は、カソード側セパレータ23の膜電極接合体21に接する側の平面の構成を示す図である。カソード側セパレータ23の膜電極接合体21に接する面には、酸化剤ガス流路25が長手方向に延びる複数の溝として設けられている。この酸化剤ガス流路25は、溝の一端がカソード側セパレータ23の一方の端部に厚み方向に貫通して設けられた酸化剤ガス供給通路33に接続され、溝の他端がカソード側セパレータ23の他方の端部に厚み方向に貫通して設けられた酸化剤ガス排出通路35に接続されており、酸化剤ガス供給通路33から供給された空気が図中矢印で示す方向で酸化剤ガス流路25を流れて、酸化剤ガス排出通路35から排出される構造となっている。また、カソード側セパレータ23の一方の端部には、酸化剤ガス供給通路33とともに燃料ガス供給通路31と冷却液供給通路34とがそれぞれ厚み方向に貫通して設けられており、カソード側セパレータ23の他方の端部には、酸化剤ガス排出通路35とともに燃料ガス排出通路32と冷却液排出通路36とがそれぞれ厚み方向に貫通して設けられている。
なお、図3に示したアノード側セパレータ22の平面と図4に示したカソード側セパレータ23の平面は、膜電極接合体21を介して相対向する面であり、厚み方向に積層されたときに、各セパレータ22,23に設けられた燃料ガス供給通路31、酸化剤ガス供給通路33、冷却液供給通路34、燃料ガス排出通路32、酸化剤ガス排出通路35、冷却液排出通路36の位置がそれぞれ一致して連続した通路を形成する。また、アノード側セパレータ22の燃料ガス流路24を水素ガスが流れる方向とカソード側セパレータ23の酸化剤ガス流路25を空気が流れる方向は、同一方向となる。
図5は、カソード側セパレータ23の図4に示した平面とは逆側の平面(隣接する単位セル20のアノード側セパレータ22と接する側の平面)の構成を示す図である。カソード側セパレータ23のアノード側セパレータ22と接する面には、冷却液流路26が長手方向に延びる複数の溝として設けられている。この冷却液流路26は、溝の一端がカソード側セパレータ23の一方の端部に設けられた冷却液供給通路34に接続され、溝の他端がカソード側セパレータ23の他方の端部に設けられた冷却液排出通路36に接続されており、冷却液供給通路34から供給された冷却液が図中矢印で示す方向で冷却液流路26を流れて、冷却液排出通路36から排出される構造となっている。この図5に示す平面は、カソード側セパレータ23の図4に示した平面とは逆側の面であり、カソード側セパレータ23の冷却液流路26を冷却液が流れる方向とカソード側セパレータ23の酸化剤ガス流路25を空気が流れる方向、さらにはアノード側セパレータ22の燃料ガス流路24を水素ガスが流れる方向は、同一方向となる。すなわち、本実施形態の燃料電池システムで用いられる燃料電池スタック1は、各単位セル20が「並行流」の構造を有している。
図6は、図4に示したカソード側セパレータ23の平面に、局所電流を測定するための電流センサ40a,40b,40cを設置した様子を示す図である。電流センサ40a,40b,40cは、図中矢印で示す空気が流れる方向(並行流であるので、水素ガスや冷却液を含めて全ての流体が流れる方向)に沿って順番に設置され、流体が流れる方向の最上流側の部位に電流センサ40a、中間の部位に電流センサ40b、最下流側の部位に電流センサ40cがそれぞれ設置されている。そして、これら電流センサ40a,40b,40cによりカソード側セパレータ23上の各部位の局所的な電流が測定され、電流センサ40a,40b,40cの測定面積から、各部位における単位面積当たりの電流値、つまり電流密度が検出される。なお、この図6に示す例では、流体が流れる方向に沿った3箇所に電流センサ40a,40b,40cを設置しているが、4箇所以上に設置するようにしてもよい。
本実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池スタック1の各単位セル20が「並行流」の構造を有しており、燃料ガスや酸化剤ガス、冷却液の各流体の流れ方向に沿った局所的な電流密度の分布が燃料電池スタック1内部の状態と相関があることから、上述した電流センサ40a,40b,40cを用いて流体が流れる方向に沿った3以上の部位で局所的な電流密度を検出し、コントローラ100が、これら3以上の部位の電流密度の分布に基づいて燃料電池スタック1内部の状態を判定するようにしている。
すなわち、「並行流」の場合、各単位セル20の電解質膜は燃料ガスや酸化剤ガスの流路上流側の方が乾燥気味になり、各単位セル20の発電状態は電解質膜の湿潤状態への依存性が大きくなって、流路下流側ほど生成水により電解質膜が湿潤し、それに従って電流密度が増すことになる。つまり、燃料電池スタック1内部の状態が正常であれば、図7(a)に示すように、燃料ガスや酸化剤ガスの流路上流側から下流側に亘って所定値以上の傾きで電流密度が増加し、加湿水と生成水とにより湿潤状態が飽和した位置で電流密度が最も高くなり、その位置から最下流側にかけて電流密度がなだらかに減少する傾向の電流密度分布が得られることになる。一方、各単位セル20内で水分過剰状態が生じると、図7(b)に示すように、水分過剰となった部位から流路下流側にかけて発電状態が悪化して電流密度が急減に減少し、流路最下流側では電流密度が所定値以下となる傾向の電流密度分布が得られることになる。したがって、上述した電流センサ40a,40b,40cを用いて検出した単位セル20内の3以上の部位の局所的な電流密度をもとに、その分布が図7(b)のような傾向にあるかどうかを見ることにより、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあるかどうかを判定することが可能となる。
また、「並行流」の場合、燃料ガスや酸化剤ガスの流れる方向と冷却液が流れる方向が同一方向であるため、生成水とセル内温度とのバランスによっては、流路下流側に向かうにしたがって電解質膜が水分不足の状態となる場合もある。すなわち、冷却液の温度は流路下流側になるほど上昇し、飽和蒸気量は温度上昇とともに指数関数的に大きくなるので、電解質膜から奪われる水分量が流路下流側になるほど多くなる。このため、生成水の量が少なければ電解質膜は流路下流側ほど乾燥状態となり、それに応じて電流密度が減少することになる。その結果、単位セル20内が水分不足の状態にあるときは、図7(c)に示すように、燃料ガスや酸化剤ガスの流路上流側から下流側に亘って次第に電流密度が減少する、つまり、流路上流側から下流側に向かって傾きが所定値未満となる傾向の電流密度分布が得られることになる。
また、単位セル20の発電状態は、電解質膜の湿潤状態のほかに、電解質膜の反応部位の酸化剤ガス濃度にも依存する。すなわち、燃料電池スタック1全体として酸化剤ガスが不足していたり、燃料電スタック1内で配流が不良となっているなどに起因して、特定の発電セル20において酸化剤ガスが不足している場合には、酸化剤ガスが流れる流路下流側に向かうに従って酸化剤ガス濃度が低下するために流路下流側ほど電流密度が減少し、単位セル20内が水分不足の状態にある場合と同様に、図7(c)に示したような電流密度分布が得られることになる。ここで、単位セル20に酸化剤ガス不足が生じている場合には、その単位セル20近傍のセル電圧の経時変化を見ると、図8(a)に示すように、セル電圧が経時的に振動している状態が観測される。一方、単位セル20内が水分不足の状態にあるときは、その単位セル20近傍のセル電圧の経時変化を見ると、図8(b)に示すように、振動の現われないなだらかな変化となる。
したがって、上述した電流センサ40a,40b,40cを用いて検出した単位セル20内の3以上の部位の局所的な電流密度をもとに、その分布が図7(c)のような傾向にあるかどうかを見ることにより、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態または酸化剤不足の状態にあるかどうかを判定することが可能となり、さらに、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態または酸化剤不足の状態にあると判定したときには、その単位セル20近傍のセル電圧の経時変化が振動的であるかどうかを見ることにより、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態であるのか、酸化剤不足の状態であるのかを判別することが可能となる。
本実施形態の燃料電池システムでは、システム全体を統括的に制御するコントローラ100が、以上の手法により燃料電池スタック1内部の状態を判定し、その判定結果に応じてシステム動作を制御するようにしている。以下、このコントローラ100による判定及び動作制御の処理を中心に、本実施形態の燃料電池システムに特徴的な動作について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
図9のフローがスタートすると、まず、ステップS101において、同一の単位セル20内において流体が流れる方向に沿って設置された電流センサ40a,40b,40cにより、各電流センサ40a,40b,40cが設置された部位の局所電流が測定される。そして、次のステップS102において、ステップS101で測定された局所電流と、各電流センサ40a,40b,40cによる測定面積とから、各部位の局所的な電流密度が算出される。
次に、ステップS103において、ステップS102で求めた各部位の局所的な電流密度のうちで、流体が流れる方向の最下流側の部位(電流センサ40cによる測定箇所)を除いた2箇所以上の局所電流密度から、流体の流れる上流側から下流側への電流密度分布の傾きが算出される。この電流密度分布の傾きの算出の方法は、最下流部位を除いた測定部位が2箇所であれば、単純にその2箇所の局所電流密度の傾きを求めればよく、最下流部位を除いた測定部位が3箇所以上であれば、最小ニ乗法などの方法でその傾きを求めればよい。
次に、ステップS104において、ステップS103で求めた電流密度分布の傾きが所定値未満か否かが判定され、所定値未満であればステップS105に進んで、ステップS105において、電流センサ40a,40b,40cを設置して局所電流密度を検出した単位セル20近傍のセル電圧の時系列変化が振動的であるか否かが判定される。ここで、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値未満で、且つ、局所電流密度を検出した単位セル20近傍のセル電圧の時系列変化が振動的であれば(ステップS104でYES、ステップS105でYES)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が酸化剤ガス不足の状態にあると判断してステップS106に進み、ステップS106において、例えば、空気供給系におけるコンプレッサ7の回転数を上げる等の制御を行って、酸化剤ガスである空気の供給量を増加させることで、酸化剤ガス不足を解消させる。
一方、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値未満で、且つ、局所電流密度を検出した単位セル20近傍のセル電圧の時系列変化が振動的でない場合には(ステップS104でYES、ステップS105でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断して、燃料電池スタック1の温度を低下させるように冷却液供給系の動作を制御する。具体的には、コントローラ100は、例えばステップS107において冷却液供給系のラジエタファン14の回転数を上げ、さらにステップS108において、ラジエタ15側に分流される冷却液の割合を増加させるように三方弁16の開度を変更し、冷却液供給系による冷却能力を通常時よりも増加させる。これにより、燃料電池スタック1の温度が低下し、燃料電池スタック1内部の相対湿度が上昇して電解質膜の湿潤が促進されることになる。
また、ステップS104においてステップS103で求めた電流密度分布の傾きが所定値以上と判定された場合には、ステップS109において、流体が流れる方向の最下流側の部位(電流センサ40cによる測定箇所)における電流密度が所定値以下か否かが判定される。ここで、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値以下であれば(ステップS104でNO、ステップS109でYES)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあり、水詰まりが起こっていると判断する。この場合、燃料電池スタック1の温度を上昇させることで燃料電池スタック1内部の水分の気化を促進させ、水分量を低下させる必要があるので、コントローラ100は、燃料電池スタック1の温度を低下させるように冷却液供給系の動作を制御する。具体的には、コントローラ100は、例えばステップS110において冷却液供給系のラジエタファン14の回転数を低下させ、さらにステップS111において、ラジエタ15側に分流される冷却液の割合を低下させ、バイパス配管17側に分流される冷却液の割合を増加させるように三方弁16の開度を変更し、冷却液供給系による冷却能力を通常時よりも低下させる。これにより、燃料電池スタック1の温度が上昇し、燃料電池スタック1内部の水分の気化が促進されることになる。
一方、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値を超えていれば(ステップS104でNO、ステップS109でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が正常な状態にあると判断し、ラジエタファン14の回転数や三方弁16の開度を通常値に設定し(ステップS112、ステップS113)、冷却液供給系による冷却能力を通常時のレベルに調整する。本実施形態の燃料電池システムでは、コントローラ100が以上のように燃料電池スタック1内部の状態を判定して、それに応じて空気供給系や冷却液供給系などの動作を制御することにより、燃料電池スタック1内部を適切な状態に保って、燃料電池スタック1を効率良く運転させることができる。
以上、具体的な例を挙げながら説明したように、本実施形態の燃料電池システムでは、「並行流」の構造を有する燃料電池スタック1の単位セル20内の3以上の部位に電流センサ40a,40b,40cを設置し、これら電流センサ40a,40b,40cを用いて流体が流れる方向に沿った3以上の部位で局所的な電流密度を検出して、コントローラ100が、これら3以上の部位の電流密度の分布に基づいて燃料電池スタック1内部の状態を判定するようにしている。そして、燃料電池スタック1内部が酸化剤ガス不足の状態にあると判断したときには、酸化剤ガスである空気の供給量を増加させるように空気供給系の動作を制御し、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断したときには、冷却液供給系による冷却能力を通常時よりも増加させて燃料電池スタック1の温度を低下させるように冷却液供給系の動作を制御し、逆に燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあると判断したときには、冷却液供給系による冷却能力を通常時よりも低下させて燃料電池スタック1の温度を上昇させるように冷却液供給系の動作を制御するようにしている。したがって、本実施形態の燃料電池システムによれば、「並行流」の構造を有する燃料電池スタック1内部の状態を正確に判定して、酸化剤ガス不足や水分不足、水分過剰などの状態が生じていればその状態を有効に解消させて燃料電池スタック1内部を適切な状態に保ち、燃料電池スタック1を効率良く運転させることができる。
なお、以上の説明では、燃料電池スタック1を構成する多数の単位セルの中で電流センサ40a,40b,40cの設置に適した単位セル20については特に言及していないが、電流センサ40a,40b,40cを設置して電流密度分布を調べる単位セル20は、特に水分過剰の検知性が求められる場合は燃料電池スタック1の中で他の単位セルに比べて水分過剰が生じやすい単位セル、酸化剤ガス不足の検知性が求められる場合は燃料電池スタック1の中で他の単位セルに比べて酸化剤ガス不足が生じやすい単位セル、水分不足の検知性が求められる場合は燃料電池スタック1の中で他の単位セルに比べて水分不足が生じやすい単位セルといったように、要求に応じて特定の単位セルに定めればよい。
具体的には、例えば、燃料電池スタック1の端部に位置するエンドセルは、放熱のために温度が低くなるので、他の単位セルと比較して水分過剰が生じやすくなる。したがって、エンドセルに電流センサ40a,40b,40cを設置して電流密度分布を調べるようにすれば、水分過剰の検知性が向上する。また、この場合、電流センサ40a,40b,40cは、エンドセルに接する集電板に設けてもよい。
また、事前にシミュレーション試験や実際の燃料電池スタック1を用いた発電試験を行った場合には、その試験結果から、燃料電池スタック1内で酸化剤ガス不足が生じやすい単位セルを特定できる。そして、この酸化剤ガス不足が生じやすい単位セルに電流センサ40a,40b,40cを設置して電流密度分布を調べるようにすれば、酸化剤ガス不足の検知性が向上する。
また、燃料電池スタック1の積層方向中央部に位置する単位セルは、放熱が少ないため温度が高くなりやすく、他の単位セルと比較して水分不足が生じやすい。また、シミュレーション試験や実際の燃料電池スタック1の発電試験の結果から水分不足が生じやすい単位セルを特定することも可能であり、このような水分不足が生じやすい単位セルに電流センサ40a,40b,40cを設置して電流密度分布を調べるようにすれば、水分不足の検知性が向上する。
また、水分過剰が生じやすい単位セルと、酸化剤ガス不足が生じやすい単位セルと、水分不足が生じやすい単位セルのそれぞれに電流センサ40a,40b,40cを設置して、各単位セルの電流密度分布を各々調べるようにすれば、水分過剰状態、酸化剤ガス不足状態、水分不足状態の全ての状態の検知性を向上させることが可能となる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池スタック1内部の状態を判定する手法は上述した第1の実施形態と同様であるが、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断したとき、或いは、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあると判断したときのコントローラ100による動作制御の内容が第1の実施形態とは異なるものである。すなわち、上述した第1の実施形態では、燃料電池スタック1内部が水分不足または水分過剰の状態と判断した場合、燃料電池スタック1の温度を制御することによって燃料電池スタック1内部の湿潤状態が適正な状態となるように制御していたが、本実施形態では、燃料電池スタック1内部が水分不足または水分過剰の状態と判断した場合、加湿量を制御することにより燃料電池スタック1内部の湿潤状態が適正な状態となるように制御するようにしている。
図10は、本発明を適用した燃料電池システムの全体構成を示すシステム構成図である。本実施形態の燃料電池システムでは、図10に示すように、空気供給系における空気供給配管8の中途位置に加湿装置9(以下、カソード加湿装置9aという。)が設置されていることに加えて、水素供給系における水素供給配管4の中途位置にもアノード加湿装置9bが設置され、酸化剤ガスである空気はカソード加湿装置9a、燃料ガスである水素ガスはアノード加湿装置9bによってそれぞれ加湿された上で、燃料電池スタック1に供給されるようになっている。また、これらカソード加湿装置9a及びアノード加湿装置9bの動作は、コントローラ100によって制御される。なお、本実施形態の燃料電池システムのその他の構成は、図1を用いて説明した第1の実施形態の燃料電池システムと同じであるため、説明を省略する。
以下、本実施形態の燃料電池システムに特徴的な動作について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図11のフローチャートにおいて、ステップS201〜ステップS206の処理とステップS208の処理は、図9のフローチャートで示したステップS101〜ステップS106、ステップS109と同一の処理であるため、説明を省略する。
本実施形態の燃料電池システムでは、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値未満で、且つ、局所電流密度を検出した単位セル20近傍のセル電圧の時系列変化が振動的でない場合(ステップS204でYES、ステップS205でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断してステップS207に進み、ステップS207において、燃料ガスである水素ガスの加湿量、或いは酸化剤ガスである空気の加湿量、或いは水素ガスと空気の双方の加湿量が増加するように、アノード加湿装置9bやカソード加湿装置9aの動作を制御して、燃料電池スタック1内部における各単位セル20の電解質膜の湿潤を促進させる。
また、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値以下の場合(ステップS204でNO、ステップS208でYES)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあり、水詰まりが起こっていると判断してステップS209に進み、ステップS209において、燃料ガスである水素ガスの加湿量、或いは酸化剤ガスである空気の加湿量、或いは水素ガスと空気の双方の加湿量が減少するように、アノード加湿装置9bやカソード加湿装置9aの動作を制御して、燃料電池スタック1に供給する水分量を低下させる。
また、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値を超えている場合(ステップS204でNO、ステップS208でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が正常な状態にあると判断してステップS210に進み、ステップS210において、アノード加湿装置9bやカソード加湿装置9aによる加湿量を通常値に設定し、燃料電池スタック1に供給する水分量を通常レベルに調整する。本実施形態の燃料電池システムでは、コントローラ100が以上のように燃料電池スタック1内部の状態を判定して、それに応じてアノード加湿装置9bやカソード加湿装置9aの動作を制御することにより、燃料電池スタック1内部の湿潤状態を適切な状態に保って、燃料電池スタック1を効率良く運転させることができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池スタック1内部の状態を判定する手法は上述した第1の実施形態と同様であるが、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断したとき、或いは、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあると判断したときのコントローラ100による動作制御の内容が第1の実施形態とは異なるものである。すなわち、上述した第1の実施形態では、燃料電池スタック1内部が水分不足または水分過剰の状態と判断した場合、燃料電池スタック1の温度を制御することによって燃料電池スタック1内部の湿潤状態が適正な状態となるように制御していたが、本実施形態では、燃料電池スタック1内部が水分不足または水分過剰の状態と判断した場合、燃料電池スタック1に供給される水素ガス(燃料ガス)や空気(酸化剤ガス)の圧力を制御することにより燃料電池スタック1内部の湿潤状態が適正な状態となるように制御するようにしている。なお、本実施形態の燃料電池システムの構成は、図1を用いて説明した第1の実施形態の燃料電池システムと同じであるため、説明を省略する。
以下、本実施形態の燃料電池システムに特徴的な動作について、図12のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図12のフローチャートにおいて、ステップS301〜ステップS306の処理とステップS308の処理は、図9のフローチャートで示したステップS101〜ステップS106、ステップS109と同一の処理であるため、説明を省略する。
本実施形態の燃料電池システムでは、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値未満で、且つ、局所電流密度を検出した単位セル20近傍のセル電圧の時系列変化が振動的でない場合(ステップS304でYES、ステップS305でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断してステップS307に進み、ステップS307において、燃料ガスである水素ガスの燃料電池スタック1への供給圧力、或いは酸化剤ガスである空気の燃料電池スタック1への供給圧力、或いは水素ガスと空気の双方の供給圧力が増加するように、水素供給系のアノード調圧弁3や空気供給系のカソード調圧弁11を制御して、燃料電池スタック1内部における各単位セル20の電解質膜の湿潤を促進させる。
また、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値以下の場合(ステップS304でNO、ステップS308でYES)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあり、水詰まりが起こっていると判断してステップS309に進み、ステップS309において、燃料ガスである水素ガスの燃料電池スタック1への供給圧力、或いは酸化剤ガスである空気の燃料電池スタック1への供給圧力、或いは水素ガスと空気の双方の供給圧力が減少するように、水素供給系のアノード調圧弁3や空気供給系のカソード調圧弁11を制御して、燃料電池スタック1内部における各単位セル20の電解質膜の湿潤を抑制する。
燃料電池スタック1に対する燃料ガスや酸化剤ガスの供給圧力の低下は、燃料電池スタック1内部のガスの流速を増加させて水分過剰領域の水を外部に吹き飛ばす効果が望めるほかに、水蒸気の分圧が維持された状態でガスの分圧が下がることになるので、ガスのモルあたりの水の持ち出し量が増加することにより水分過剰の解消に寄与することになる。逆に、燃料電池スタック1に対する燃料ガスや酸化剤ガスの供給圧力の増加は、同様の原理で燃料電池スタック1内の水分量増加をもたらすので、水分不足の解消に寄与することになる。
また、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値を超えている場合(ステップS304でNO、ステップS308でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が正常な状態にあると判断してステップS310に進み、ステップS310において、水素供給系のアノード調圧弁3や空気供給系のカソード調圧弁11の開度を通常値に設定し、燃料電池スタック1に供給する水素ガスの圧力や空気の圧力を通常レベルに調整する。本実施形態の燃料電池システムでは、コントローラ100が以上のように燃料電池スタック1内部の状態を判定して、それに応じて燃料電池スタック1に対する水素ガスや空気の供給圧力を制御することにより、燃料電池スタック1内部の湿潤状態を適切な状態に保って、燃料電池スタック1を効率良く運転させることができる。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池スタック1内部の状態を判定する手法は上述した第1の実施形態と同様であるが、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断したとき、或いは、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあると判断したときのコントローラ100による動作制御の内容が第1の実施形態とは異なるものである。すなわち、上述した第1の実施形態では、燃料電池スタック1内部が水分不足または水分過剰の状態と判断した場合、燃料電池スタック1の温度を制御することによって燃料電池スタック1内部の湿潤状態が適正な状態となるように制御していたが、本実施形態では、燃料電池スタック1内部が水分不足または水分過剰の状態と判断した場合、燃料電池スタック1に供給される水素ガス(燃料ガス)や空気(酸化剤ガス)の流量を制御することにより燃料電池スタック1内部の湿潤状態が適正な状態となるように制御するようにしている。なお、本実施形態の燃料電池システムの構成は、図1を用いて説明した第1の実施形態の燃料電池システムと同じであるため、説明を省略する。
以下、本実施形態の燃料電池システムに特徴的な動作について、図13のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図13のフローチャートにおいて、ステップS401〜ステップS406の処理とステップS408の処理は、図9のフローチャートで示したステップS101〜ステップS106、ステップS109と同一の処理であるため、説明を省略する。
本実施形態の燃料電池システムでは、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値未満で、且つ、局所電流密度を検出した単位セル20近傍のセル電圧の時系列変化が振動的でない場合(ステップS404でYES、ステップS405でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分不足の状態にあると判断してステップS407に進み、ステップS407において、燃料ガスである水素ガスの燃料電池スタック1への供給流量、或いは酸化剤ガスである空気の燃料電池スタック1への供給流量、或いは水素ガスと空気の双方の供給流量が減少するように、水素供給系のアノード循環ポンプ5の動作や空気供給系のコンプレッサ7の動作を制御して、燃料電池スタック1内部における各単位セル20の電解質膜の湿潤を促進させる。
また、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値以下の場合(ステップS404でNO、ステップS408でYES)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が水分過剰の状態にあり、水詰まりが起こっていると判断してステップS409に進み、ステップS409において、燃料ガスである水素ガスの燃料電池スタック1への供給流量、或いは酸化剤ガスである空気の燃料電池スタック1への供給流量、或いは水素ガスと空気の双方の供給流量が増加するように、水素供給系のアノード循環ポンプ5の動作や空気供給系のコンプレッサ7の動作を制御して、燃料電池スタック1内部における各単位セル20の電解質膜の湿潤を抑制する。
燃料電池スタック1に対する燃料ガスや酸化剤ガスの供給流量の増加は、ガス流量を増加させた極(アノード或いはカソード)の水の持ち出し量を増加させるだけでなく、極間の水移動を利用して対極の水にも影響を与えることが可能であり、水分過剰を解消するのに有効である。逆に、燃料電池スタック1に対する燃料ガスや酸化剤ガスの供給流量の低下は、同様の原理で燃料電池スタック1内の水分量増加をもたらすので、水分不足の解消に有効である。
また、流体が流れる方向に沿った電流密度分布の傾きが所定値以上で、且つ、最下流の測定部位の電流密度が所定値を超えている場合(ステップS404でNO、ステップS408でNO)、コントローラ100は、燃料電池スタック1内部が正常な状態にあると判断してステップS410に進み、ステップS410において、水素供給系のアノード循環ポンプ5や空気供給系のコンプレッサ7を通常値で動作させ、燃料電池スタック1に供給する水素ガスの流量や空気の流量を通常レベルに調整する。本実施形態の燃料電池システムでは、コントローラ100が以上のように燃料電池スタック1内部の状態を判定して、それに応じて燃料電池スタック1に対する水素ガスや空気の供給流量を制御することにより、燃料電池スタック1内部の湿潤状態を適切な状態に保って、燃料電池スタック1を効率良く運転させることができる。
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、以上の各実施形態は本発明の一適用例を例示したものであり、本発明の技術的範囲は、以上の各実施形態の説明で開示した内容に限定されるものではなく、これらの開示から容易に導き得る様々な代替技術も含まれることは勿論である。
燃料電池システムの全体構成を示すシステム構成図である。 燃料電池スタックの一部を拡大して示す図である。 アノード側セパレータの膜電極接合体に接する側の平面の構成を示す図である。 カソード側セパレータの膜電極接合体に接する側の平面の構成を示す図である。 カソード側セパレータの図4に示した平面とは逆側の平面の構成を示す図である。 図4に示したカソード側セパレータの平面に、局所電流を測定するための電流センサを設置した様子を示す図である。 燃料電池スタックの内部状態に応じて現われる電流密度分布の傾向を示す図であり、(a)は燃料電池スタック内部が正常な状態の場合の電流密度分布の傾向を示す図、(b)は燃料電池スタック内部が水分過剰状態の場合の電流密度分布の傾向を示す図、(c)は燃料電池スタック内部が水分不足又は酸化剤ガス不足の状態の場合の電流密度分布の傾向を示す図である。 燃料電池スタックの内部状態に応じて現われるセル電圧の経時変化の様子を示す図であり、(a)は燃料電池スタック内部が酸化剤ガス不足の状態の場合のセル電圧の経時変化の様子を示す図、(b)は燃料電池スタック内部が水分不足の状態の場合のセル電圧の経時変化の様子を示す図である。 第1の実施形態の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの内部状態を判定してそれに応じた動作制御を行うまでの一連の処理の流れを示すフローチャートである。 第2の実施形態を説明する図であり、燃料電池システムの全体構成を示すシステム構成図である。 第2の実施形態の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの内部状態を判定してそれに応じた動作制御を行うまでの一連の処理の流れを示すフローチャートである。 第3の実施形態の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの内部状態を判定してそれに応じた動作制御を行うまでの一連の処理の流れを示すフローチャートである。 第4の実施形態の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの内部状態を判定してそれに応じた動作制御を行うまでの一連の処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
1 燃料電池スタック
2 水素タンク
3 アノード調圧弁
5 アノード循環ポンプ
7 コンプレッサ
9 加湿装置
9a カソード加湿装置
9b アノード加湿装置
11 カソード調圧弁
12 冷却液ポンプ
14 ラジエタファン
15 ラジエタ
16 三方弁
20 単位セル
21 膜電極接合体
22 アノード側セパレータ
23 カソード側セパレータ
24 燃料ガス流路
25 酸化剤ガス流路
26 冷却液流路
40a,40b,40c 電流センサ
100 コントローラ

Claims (14)

  1. 水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池単位セルが複数積層されてなり、前記燃料電池単位セル内で、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガス、発電に伴う温度上昇を抑制するための冷却媒体の各流体が流れる方向が同一方向とされた燃料電池スタックと、
    前記燃料電池単位セル内の前記流体が流れる方向に沿った3以上の部位の局所的な電流密度を検出する電流密度検出手段と、
    前記電流密度検出手段で検出された前記各部位の電流密度の分布に基づいて前記燃料電池スタック内部の状態を判定する内部状態判定手段と、
    前記内部状態判定手段による判定結果に応じてシステム動作を制御する動作制御手段と、
    を備え、
    前記内部状態判定手段は、前記流体が流れる方向に向かって前記電流密度が増すときの電流密度分布の傾きを正としたときに、前記3以上の部位のうち前記流体の流れる方向の再下流側の部位を除いた2点の電流密度分布から算出する電流密度分布の傾きが所定値以上であって、且つ、前記流体が流れる方向の最下流側の部位の電流密度が所定値以下の場合に、前記燃料電池スタック内部が水分過剰の状態にあると判断することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池単位セルが複数積層されてなり、前記燃料電池単位セル内で、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガス、発電に伴う温度上昇を抑制するための冷却媒体の各流体が流れる方向が同一方向とされた燃料電池スタックと、
    前記燃料電池単位セル内の前記流体が流れる方向に沿った3以上の部位の局所的な電流密度を検出する電流密度検出手段と、
    前記電流密度検出手段で検出された前記各部位の電流密度の分布に基づいて前記燃料電池スタック内部の状態を判定する内部状態判定手段と、
    前記内部状態判定手段による判定結果に応じてシステム動作を制御する動作制御手段と、
    を備え、
    前記内部状態判定手段は、前記流体が流れる方向に向かって前記電流密度が増すときの電流密度分布の傾きを正としたときに、前記電流密度分布の傾きが所定値未満であって、且つ、前記電流密度検出手段による電流密度検出の対象とされた前記燃料電池単位セル近傍のセル電圧の経時変化が振動的である場合に、前記燃料電池スタック内部が前記酸化剤ガス不足の状態にあると判断することを特徴とする燃料電池システム。
  3. 水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池単位セルが複数積層されてなり、前記燃料電池単位セル内で、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガス、発電に伴う温度上昇を抑制するための冷却媒体の各流体が流れる方向が同一方向とされた燃料電池スタックと、
    前記燃料電池単位セル内の前記流体が流れる方向に沿った3以上の部位の局所的な電流密度を検出する電流密度検出手段と、
    前記電流密度検出手段で検出された前記各部位の電流密度の分布に基づいて前記燃料電池スタック内部の状態を判定する内部状態判定手段と、
    前記内部状態判定手段による判定結果に応じてシステム動作を制御する動作制御手段と、
    を備え、
    前記内部状態判定手段は、前記流体が流れる方向に向かって前記電流密度が増すときの傾きを正としたときに、前記電流密度分布の傾きが所定値未満であって、且つ、前記電流密度検出手段による電流密度検出の対象とされた前記燃料電池単位セル近傍のセル電圧の経時変化が振動的でない場合に、前記燃料電池スタック内部が水分不足の状態にあると判断することを特徴とする燃料電池システム。
  4. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分過剰の状態あるいは酸化剤ガス不足の状態にあると判断されたときに、前記酸化剤ガスの流量を増加させることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の燃料電池システム。
  5. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分過剰の状態にあると判断されたときに、前記燃料ガスの流量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  6. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分過剰の状態にあると判断されたときに、前記冷却媒体の温度を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  7. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分過剰の状態にあると判断されたときに、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスの少なくとも一方の圧力を低下させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  8. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分過剰の状態にあると判断されたときに、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスの少なくとも一方の加湿量を減少させることを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
  9. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分不足の状態にあると判断されたときに、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスの少なくとも一方の流量を低下させることを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分不足の状態にあると判断されたときに、前記冷却媒体の温度を低下させることを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
  11. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分不足の状態にあると判断されたときに、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスの少なくとも一方の圧力を上昇させることを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
  12. 前記動作制御手段は、前記内部状態判定手段によって前記燃料電池スタック内部が水分不足の状態にあると判定されたときに、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスの少なくとも一方の加湿量を増加させることを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
  13. 前記電流密度測定手段は、前記燃料電池スタックの端部に位置するエンドセルに設けられることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  14. 前記電流密度測定手段は、前記燃料電池スタックの積層方向中央部に位置する単位セルに設けられることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
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