検出および治療の進歩にも関わらず、癌は主要な公衆衛生課題のままである。癌細胞は、もはや身体の増殖制御機構に供されない異常で無制限な増殖を特徴とする。腫瘍細胞の脱分化および新生物形成性増殖は、癌関連マーカータンパク質の産生をもたらし得る。かかる癌関連タンパク質は、癌細胞を有する個体の組織内および体液中の両方に見られ得る。そのレベルは、通常、発癌性進行の初期の病期では低く、疾患の進行中に増大するか、または稀な症例では、疾患進行過程でレベルの減少を示す癌関連タンパク質が観察される。新規な癌関連タンパク質の同定およびその感度のよい検出は、技術専門家および公衆健康システムの両方にとって大きな課題である。最も罹病率が高い癌の型は、乳癌(BC)、肺癌(LC)および結腸直腸癌(CRC)である。
固形腫瘍のための最も重要な治療アプローチは、
a)腫瘍の外科切除、
b)化学療法、
c)放射線療法、
d)生物製剤、例えば抗腫瘍抗体または抗脈管形成抗体を用いた治療、および
e)上記方法の組み合わせ
である。
腫瘍の外科切除は、初期病期の固形腫瘍の第一線治療として広く受け入れられている。しかし、ほとんどの癌は、症状が出た場合、即ち患者が既に疾患進行のかなり後期病期にある場合にのみ検出される。
癌の病期分類は、程度、進行、および重症度の点での疾患の分類である。これは、一般化が予後および治療の選択について行われ得るように、癌患者を分類する。
今日、TNMシステムは、癌の解剖学的程度の最も広く使用される分類である。これは、国際的に受け入れられた統一病期分類システムを表す。3つの基本変数:T(原発性腫瘍の程度)、N(限局的リンパ節の状態)およびM(遠位転移の存在または非存在)がある。TNM基準は、UICC(国際対癌連合), Sobin, L.H., Wittekind, Ch. (編):TNM Classification of Malignant Tumours, 第6版, 2002)によって公表されている。TNM状態が決定されると、患者は、I〜IVのローマ数字で示される病期に分類され、IVが最も進行した病期となる。TNM病期分類およびUICC病期は、Sobin L.H. and Wittekind (編)上掲から得られる以下の表に示されるように互いに対応する。
特に重要なことは、癌、例えば結腸直腸癌(CRC)の早期診断が非常に良好な予後に解釈されることである。CRCにおいて、結腸直腸の悪性腫瘍は、良性腫瘍、即ち腺腫から生じる。従って、最良の予後は腺腫病期で診断される患者にある。病期Tis、N0、M0またはT1〜3;N0;M0ほどの早期で診断された患者は、適切に治療されると、遠位転移が既に存在するときに診断された患者のわずか10%の5年生存率と比べて、診断後の90%を超える5年の生存機会を有する。
現在の検出方法、例えば、X線または核共鳴画像化などの画像化方法は、理論的に、一般的なスクリーニングツールとしての使用に少なくとも部分的に適切であり得る。しかし、これらは、非常に費用がかかり、多数の被験体、特になにも腫瘍症状がない被験体のマススクリーニングにおける一般的で広範な使用のための健康管理システムには価格が手頃ではない。
従って、本発明の課題は、腫瘍評価の単純で費用効率的な手順を提供すること、例えば癌を有すると疑われる個体を同定することである。この目的のために、組織試料または体液、例えば血液または血清または血漿で検出可能な一般腫瘍マーカーあるいはかかるマーカーのパネルが望ましい。
多くの血清腫瘍マーカーが既に臨床使用にある。例えば、サイトケラチン19(CYFRA 21-1)の可溶性30kDa断片、癌胎児性抗原(CEA)、神経特異的エノラーゼ(NSE)および扁平上皮癌抗原(SCC)が最も顕著なLCマーカーである。しかし、これらのいずれもがスクリーニングツールに必要な感度および特異性の基準を満たさない(Thomas, L., Labor und Diagnose (2000) TH Books Verlagsgesellschaft, Frankfurt/Main, Germany)。
臨床で有用であるために、単一マーカーとしての新規診断マーカーが、当該技術分野で公知の他のマーカーに匹敵すべきであるか、または該マーカーよりも優れているべきである。即ち、それぞれ単独でまたは1つ以上の他のマーカーと組み合わせて使用される場合のいずれかで、新規マーカーが診断感度および/または特異性における進歩をもたらすべきである。試験の診断感度および/または特異性は受信者動作特性によって最も評価され、これを以下で詳細に記載する。
全血、血清または血漿は、臨床ルーチンで最も広く使用される試料の供給源である。信頼性の高い癌検出を補助し、または初期予後情報を提供する初期腫瘍マーカーの同定によって、この疾患の診断および管理を大いに補助する方法がもたらされる。従って、癌、特にLCのインビトロ評価を改善するための緊急の臨床必要性が存在する。早期に診断される患者の生存機会が疾患の進行した段階で診断される患者と比べて非常に高いために、癌、例えばLCの早期診断を改善することが特に重要である。
例えば、肺癌において、確立された生化学マーカーの臨床有用性がDuffy,M.J.によって概説され(Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 38(2001)225-262)、手短に論考する。
CYFRA 21-1は、肺癌について現在公知の腫瘍マーカーのうちで最良のものであると現在みなされている。臓器特異的ではないが、これは主に肺組織で見られる。肺癌のためのCYFRA 21-1の感度は、他の良性肺疾患に対して95%の特異性で46〜61%であると記載されている。CYFRA 21-1の増大した血清レベルはまた、顕著な良性肝臓疾患、腎臓機能不全および浸潤性膀胱癌と関連している。CYFRA 21-1試験は、手術後治療サーベイランスに推奨される。
CEAは癌胎児抗原の群に属し、通常胚発生中に生成される。CEAは、臓器特異的ではなく結腸直腸癌のモニタリングに主に使用される。悪性疾患の他にも、いくつかの良性疾患、例えば肝硬変、気管支炎、膵臓炎および自己免疫疾患がCEA血清レベルの増大と関連している。良性肺疾患に対する95%特異性で、肺癌の感度は29〜44%であると報告されている。CEAの主な使用は、特に転移した場合の結腸癌のモニタリングにおいてである。しかしながら、乳癌などの種々の癌が高レベルのCEAを産生し得る。CEAの好ましい使用は、肺癌の治療サーベイランスである。
NSEはSCLCの腫瘍マーカーである。一般的に、NSE血清レベルの増大は、神経外胚葉腫瘍および神経内分泌腫瘍に関連していることが分かっている。また、増大した血清レベルが、良性肺疾患および脳疾患、例えば髄膜炎または脳の他の炎症疾患および頭部への外傷損傷を有する患者で見られる。95%特異性でのSCLCの感度が60〜87%であると報告されているが、NSCLCのNSE試験の性能は不良である(7〜25%)。NSEは、SCLCの治療サーベイランスに推奨される。
糖脂質上のCA 19-9(糖鎖抗原19-9)、シアリル化ルイス(a)抗原)は、胃腸の癌の腫瘍マーカーである。これは、胎児の胃、腸および膵臓の上皮に生じる。また、肝臓、肺および膵臓の成人組織にも低濃度で見られ得る。腫瘍質量とCA 19-9アッセイ値との間に相関性はない。したがって、CA 19-9の測定を膵臓の癌腫の早期検出に使用することはできない。ムチンは肝臓でのみ分泌されるため、場合によっては、わずかな胆汁欝滞でさえ、明白なCA 19-9血清レベルの上昇をもたらし得る。該マーカーは、主に、確認された膵臓の癌(感度70〜87%)を有する患者の疾患状態のモニタリングにおける補助として使用される。該集団の3〜7%は、ルイスa陰性/b陰性血液型構成を有し、決定基CA 19-9と反応性であるムチンを発現することができない。このことは、所見を解釈する際に考慮されなければならない。
CA 125は、上皮起源の非粘液性卵巣腫瘍において高い割合で見られ、血清中に検出され得る。卵巣癌腫は婦人科系腫瘍の約20%を占める。最も高いCA 125値は、卵巣癌腫に苦しむ患者で生じるが、明白な高値は、子宮内膜、乳房、胃腸管の悪性腫瘍、および種々の他の悪性腫瘍でも観察される。上昇値は、場合によっては、卵巣嚢、卵巣化生、子宮内膜症、子宮筋腫または子宮頚管炎などの種々の良性婦人科系疾患に見られる。また、このマーカーのわずかな上昇は、妊娠初期および種々の良性疾患(例えば、急性および慢性膵炎、良性胃腸の疾患、腎機能不全、自己免疫疾患など)でも起こり得る。顕著に高いレベルが、肝硬変および肝炎などの良性肝臓疾患で見られている。極端な上昇は、悪性疾患および良性疾患により任意の種類の腹水において起こり得る。CA 125は比較的非特異的なマーカーであるが、これは、今日では、漿液性卵巣癌腫を有する患者の治療および進行のモニタリングのための最も重要な腫瘍マーカーである。82〜93%の特異性で69〜79%の感度が報告されている。
SCCは、もともと、子宮頚の扁平上皮細胞CAにおいて同定された。LCのSCCの感度は一般に低い(18〜27%)。したがって、SCC試験は、スクリーニングに適していないとみなされている。しかしながら、扁平上皮細胞CAに対する感度は高いため、SCCに対する好ましい使用は治療サーベイランスであるが、一般的には、CYFRA 21-1の方が良好な機能を果たす。
ProGRPは、SCLCの検出およびモニタリングに有用な腫瘍マーカーである。また、特発性肺性線維症またはサルコイドーシスなどの非悪性肺/胸膜性疾患を有する患者では、血清レベルの増大が見られる。SCLC領域におけるproGRPの感度(95%特異性で)は47〜86%であると報告されているが、NSCLC領域におけるproGRP試験の成績は、感度が10%未満であると報告されているため良好でない。
CA 15-3は、通常、進行乳癌を有する患者において増大している。CA 15-3レベルは、稀に、初期の病期の乳癌を有する女性で上昇している(Duffy,M.J.,Critical Reviews in Clinical Laboratory Sciences 38(2001)225-262)。また、卵巣、肺および前立腺の癌でも、CA 15-3レベルが上昇し得る。CA 15-3の上昇レベルは、良性乳房または卵巣疾患、子宮内膜症、骨盤腹膜炎および肝炎などの非癌性状態と関連している可能性がある。また、妊娠および授乳期でも、CA 15-3レベルの上昇が引き起こされることがあり得る(National Cancer Institute、Cancer Facts、Fact Sheet 5.18(1998)1-5)。
CA 27-29は、ほとんどの乳癌患者の血液中に、CA 15-3抗原と同様に見られる。CA 27-29レベルは、以前に病期IIおよび病期IIIの乳癌を治療された女性において再発をチェックするため、他の手順(乳房X線像および他の腫瘍マーカーレベルの測定など)と組み合わせて使用され得る。また、CA 27-29レベルは、結腸、胃、腎臓、肺、卵巣、膵臓、子宮、および肝臓の癌によって上昇し得る。妊娠の第1トリメスター、子宮内膜症、卵巣嚢、良性乳房疾患、腎臓疾患、および肝臓疾患は、同様にCA 27-29レベルが上昇し得る非癌性状態である。
AFP(α-フェトタンパク質)は、通常、発生中の胎児において生成される。AFPレベルは、出生直後に減少し始め、通常、健常成人(妊娠中を除く)の血液中には検出不可能である。高レベルのAFPは、原発性肝臓癌または卵巣もしくは精巣の生殖細胞癌(卵もしくは精子をもたらす細胞に発生する癌)いずれかの存在を強く示す。ごく稀に、他の型の癌(胃癌など)を有する患者が高レベルのAFPを有する。AFPレベルの上昇を引き起こし得る非癌性状態としては、肝硬変または肝炎などの良性肝臓状態;毛細血管拡張性運動失調;ウィスコット・アルドリッチ症候群;および妊娠が挙げられる。
PSA(前立腺特異的抗原)は、たいていは前立腺癌を有する患者の治療の信頼性ある予後マーカーとして使用されていた(Catalona,W.J. et al.,N. Engl. J. Med. 324(1991)1156-1161;Osterling,J.E.,J. Urol. 145(1991)907-923)。腫瘍マーカーとして、これは、健常男性の血液中には検出可能でないか、検出可能であっても非常に低い濃度にすぎないという相当な利点を有する。非常に上昇したPSA値は、一般的に、疾患の進行病期において測定される。PSAは、「カリクレイン」として知られるタンパク質/酵素群に属する。ヒトカリクレインファミリーは、hK1、hK2およびhK3(PSA)と記載される3つの構成員で構成されている(Clements,J.A.,Endocr. Rev. 10(1989)393-419;Carbini,L.A. et al.,J. Hypertens. 11(1993)893-898)。前立腺特異的抗原(PSA)またはhK3は、ほぼ29kDaの分子量を有する糖タンパク質である。これは、前立腺上皮細胞において形成され、精液の成分である。PSAは、中性セリンプロテアーゼの酵素活性を有する。その主な機能は、射精の必須成分として精子の移動をブロックするセミノゲリンIおよびIIならびにフィブロネクチンを切断することである。これらのタンパク質を加水分解することにより、PSAは精液凝塊の液状化をもたらし、これにより精子の移動が可能になる。
フェリチンは、少なくとも440kD(鉄含有量に依存)分子量を有する巨大分子であり、24サブユニットのタンパク質殻(アポフェリチン)および平均ほぼ2500個のFe3+イオン(肝臓内および脾臓フェリチン)を含む鉄コアからなる(Wick,M. et al.,Ferritin in Iron Metabolism - Diagnosis of Anemias、第2版、Springer-Verlag(1995)、ISBN 3-211-82525-8およびISBN 0-387-82525-8)。フェリチンはオリゴマーを形成する傾向にあり、貯蔵器官の細胞内に過剰に存在すると、縮合して半晶質のヘモジデリンをリソソーム内に生成させる傾向になる。
等電点電気泳動法の補助により、少なくとも20種類のイソフェリチンが識別され得る(Arosio,P. et al.,Heterogeneity of Ferritin II:Immunological aspects、In:Albertini A.,Arosio P.,Chiancone E.,Drysdale J.(編)、Ferritins and isoferritins as biochemical markers、Elsevier、Amsterdam(1984)pp. 33-47)。この微小不均一性は、酸性Hサブユニットと弱塩基性Lサブユニットの含有量の違いによる。塩基性イソフェリチンは長期鉄貯蔵機能を担い、主に肝臓、脾臓および骨髄に見られる(Kaltwasser,J.P. et al.,Serumferritin:Methodische und Klinische Aspekte,Springer Verlag(1980))。
酸性イソフェリチンは、主に心筋層、胎盤および腫瘍組織に見られる。酸性イソフェリチンは鉄含有量が低く、おそらく種々の合成における鉄輸送中間体としての機能を果たしている(Morikawa,K. et al.,Leuk. Lymphoma 18(1995)429-433;Borch-Iohnson,B.,Analyst 120(1995)891-903;Cook,J. et al.,Adv. Exp. Med. Biol. 356(1994)219-228)。
フェリチンの測定は、鉄代謝状況を確認するのに適当な方法である。治療開始時のフェリチンの測定は、体内の鉄貯蔵量を代表する測定をもたらす。臨床的には、20μg/L(ng/mL)の閾値が前潜在的鉄不足の検出に有用であることが示されている。この値は、ヘモグロビン合成のために動員され得る鉄貯蔵の消耗の信頼性のある表示をもたらす。フェリチンレベルが上昇しており、分布障害の可能性が排除され得る場合、これは、体内の鉄過剰負荷の表示である。400μg/L(ng/mL)フェリチンが閾値として使用される。また、フェリチン値の上昇は、以下の腫瘍:急性白血病、ホジキン病ならびに肺、肝臓および前立腺の癌腫にも見られる。フェリチンの測定は、肝臓転移に重要であることが示されている。研究により、肝臓転移を有する全患者の76%が400μg/L(ng/mL)より上のフェリチン値を有することが示されている。この上昇値の理由は、腫瘍組織における細胞壊死、赤血球生成のブロックまたは合成の増大であり得る。
他方において、胃腸の癌では血清フェリチンレベルが増大しなかったことが特徴的であることが記載されている(Niitsu,Y. et al.,Rinsho Ketsueki 21(1980)1135-1143)。さらに、進行結腸直腸癌を有する患者では対照よりも平均血清フェリチンレベルが有意に低いことが報告された(Kishida,T. et al.,J. Gastroenterol. 29(1994)19-23. 血清フェリチンレベルの減少は連続的(continous)出血によって引き起こされ、この血液減少は腫瘍の大きさと部位に関連する (Li,F. et al.,J. Gastroenterol. 34(1999)195-199)。
マーカーのプロファイリングに関して、および肺癌の診断の改善を目的として、CYFRA 21-1、NSEおよび一般的な炎症マーカーのC反応性タンパク質(CRP)の血清レベルを組み合わせるファジー論理系分類アルゴリズムを使用する方法が公表された(Schneider, J., ら、Int. J. Clin. Oncol. 7 (2002) 145-151)。筆者らは、95%の特異性で92%の感度を報告している。しかし、この研究で、例えば単一腫瘍マーカーとしてCYFRA 21-1の感度は、95%の特異性で72%であると報告され、これは多くの他の報告された研究よりも有意に高い。Duffy,M.J.,in Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 38(2001)225-262は、46%〜61%の感度を報告している。Schneiderらによって達成されたこの普通ではない高性能は、ある疑いを引き起こすが、いくつかの事実によるものであり得る。第一に、対照患者の集団は患者集団よりも若いように思われ、即ち両方の集団は年齢で十分適合しておらず、患者集団は多くが後期病期を含む。第二におよびさらにより重要にも、アルゴリズムの性能がファジー論理修飾子の決定に使用された訓練集団の試料について調べられている。したがって、これらの修飾子は、厳密に言うとこの集団に「仕立て」たものであって、独立した確認集団には適用されない。通常の状況下で、大きく、独立し、かつ十分にバランスがとれた確認集団に適用される同じアルゴリズムが有意に減少した全体性能をもたらすことが予期されるはずである。
本発明の課題は、癌疾患の評価に使用され得る生化学マーカーが同定され得るかどうかを調べることであった。特に、本発明の発明者らは、組織試料または体液中で、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃および/または胆管の癌などの種々の癌の型を評価するための生化学マーカーが同定され得るかどうかを調べた。
驚くべきことに、生化学マーカーとしてのPACAPタンパク質の使用は、当該技術分野の水準で現在公知のマーカーの問題のいくつかを少なくとも部分的に克服し得ることが見出された。
本発明は、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度を試料中で測定する工程、ならびに癌の評価において測定結果、特に測定された濃度を使用する工程を含む、インビトロでの癌の評価方法に関する。
驚くべきことに、試験試料中のPACAPタンパク質および/またはその断片の濃度の増大が癌の発生と関連することが見出された。PACAPは、単一型の癌に特異的なマーカーではなく、異なる型の癌のマーカー、即ち一般腫瘍マーカーのようであることが見出された。PACAPは腫瘍形成プロセスにかなり特異的であるように思われるため、したがって、新規腫瘍マーカーPACAPは、様々なクラスの腫瘍型について臨床で有用である可能性が高い。
本発明の方法は、多くの種々の型の癌の評価に適切である。正常対照と比べて試料中のPACAPタンパク質またはその断片の濃度の増大は、特定の癌型、例えば肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌のそれぞれで見られた。
本発明の好ましい態様によれば、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度が、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌からなる群より選択される特定の癌型をインビトロで評価するために試料中で測定される。
本発明の別の好ましい態様によれば、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度が、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、黒色腫または腎臓の癌などの癌をインビトロで評価するために試料中で測定される。
本発明の別の好ましい態様によれば、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度が、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、または子宮内膜の癌などの癌をインビトロで評価するために試料中で測定される。
本発明の別の好ましい態様によれば、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度が、肺癌(LC)または結腸直腸癌(CRC)などの癌をインビトロで評価するために試料中で測定される。
本発明の別の好ましい態様によれば、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度が、肺癌(LC)をインビトロで評価するために試料中で測定される。
本発明の一態様は、おそらく癌のない個体と、「疑いのある」症例として分類され得る個体とを区別するための集団のマススクリーニングに関する。後者の群の個体は、次に例えば画像化方法または他の適切な手段により、さらなる診断手順に供され得る。
本発明のさらなる態様は、一般的な癌の診断に適切な腫瘍マーカーパネルまたは特定の腫瘍型、例えば肺癌の診断に適切な腫瘍マーカーパネルの改善に関する。
本発明はまた、PACAPタンパク質および/またはその断片ならびに任意に癌に特異的な1つ以上の他のマーカーの濃度を試料中で測定する工程、ならびに測定された測定結果、特に濃度を癌の評価において使用する工程を含む、生化学マーカーによるインビトロでの癌の評価方法に関する。PACAPと組み合わせた使用に好ましいマーカーは、一方で、一般腫瘍マーカー(即ち、単一腫瘍型に特異的ではないマーカー)または他方で特異的腫瘍マーカー(単一腫瘍型に特異的なマーカー)のマーカーである。例えば、肺癌などの癌の評価に好ましいマーカーは、Cyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSE、proGRP、CA 15-3、CA 27-29、AFP、PSA、フェリチンである。これらのマーカーは、個々にそれぞれまたはPACAPと共に任意の組み合わせで使用され得る。
本発明のこの方法により癌が評価される場合、それぞれの癌の1つ以上の他のマーカーは、好ましくはCyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSE、proGRP、CA 15-3、CA 27-29、AFP、PSA、フェリチンからなる群より選択される。
したがって、好ましい態様において、本発明はまた、癌、例えば肺癌および/または結腸癌の評価における、少なくともマーカーPACAPならびに少なくとも1つの他の腫瘍マーカー、例えばCyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSE、proGRP、CA 15-3、CA 27-29、AFP、PSA、フェリチンを含むマーカーパネルの使用に関する。
好ましくは、本発明は、PACAPタンパク質および/またはその断片ならびに任意に1つ以上の他の癌マーカー、例えば肺癌の1つ以上の他のマーカーの濃度を試料中で測定する工程、ならびに測定された測定結果、特に濃度を癌の評価において使用する工程を含む、生化学マーカーによるインビトロでの癌、例えば肺癌の評価方法に関する。1つ以上の他のマーカーは、Cyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSEおよび/または proGRPからなる群より選択されることが好ましい。
本発明はまた、好ましい態様において、癌、詳しくはLC、より詳しくはNSCLCの評価における、少なくともPACAPおよびCYFRA 21-1を含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、癌、詳しくはLC、より詳しくはNSCLCの評価における、少なくともPACAPおよびCEAを含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、癌、詳しくはLC、より詳しくはNSCLCの評価における、少なくともPACAPおよびCA 19-9を含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、癌、詳しくはLC、より詳しくはNSCLCの評価における、少なくともPACAPおよびSCCを含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、癌、詳しくはLC、より詳しくはNSCLCの評価における、少なくともPACAPおよびCA 125を含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、癌、詳しくはLC、より詳しくはNSCLCの評価における、少なくともPACAPおよびNSEを含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、癌、詳しくはLC、より詳しくはNSCLCの評価における、少なくともPACAPおよびproGRPを含むマーカーパネルの使用に関する。
本発明はまた、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度の増大が癌を示す、癌の評価におけるPACAPタンパク質および/またはその断片の使用に関する。
本発明はまた、いくつかの特定の型の癌、詳しくは肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌の評価におけるPACAPの使用に関する。
本発明はまた、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度の増大が癌を示す、癌の評価におけるPACAPタンパク質および/またはその断片に対する抗体の使用に関する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPタンパク質および/またはその断片ならびに任意に癌の1つ以上の他のマーカーを特異的に測定するために必要な試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPタンパク質および/またはその断片ならびに任意に癌の1つ以上のマーカー、例えば上記のような肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌のマーカーを特異的に測定するために必要な試薬を含み、他のマーカーが個々にまたは任意の組み合わせでそれぞれ使用され得る、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPおよびCYFRA 21-1それぞれを特異的に測定するために必要な試薬ならびに任意に、測定を行うための補助試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPおよびCEAそれぞれを特異的に測定するために必要な試薬ならびに任意に、測定を行うための補助試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPおよびCA 19-9それぞれを特異的に測定するために必要な試薬ならびに任意に、測定を行うための補助試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPおよびSCCそれぞれを特異的に測定するために必要な試薬ならびに任意に、測定を行うための補助試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPおよびCA 125それぞれを特異的に測定するために必要な試薬ならびに任意に、測定を行うための補助試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPおよびNSEそれぞれを特異的に測定するために必要な試薬ならびに任意に、測定を行うための補助試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
本発明はまた、少なくとも、PACAPおよびproGRPそれぞれを特異的に測定するために必要な試薬ならびに任意に、測定を行うための補助試薬を含む、本発明の方法を行うためのキットを提供する。
好ましい態様において、本発明は、a)PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度、b)任意に癌の1つ以上の他のマーカーの濃度を試料中で測定する工程、ならびに(c)癌の評価において工程(a)および任意に工程(b)の測定結果を使用する工程を含み、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度の増大が癌を示す、インビトロでの癌の評価方法に関する。
用語「測定」は、好ましくは試料中のPACAPタンパク質および/またはその断片の定性的、半定性的、または定量的測定を含む。好ましい態様において、測定は、半定量的測定であり、即ち、PACAPの濃度がカットオフ値より上か下にあるかどうかを測定する。当業者に認識されるように、はい(存在)またはいいえ(非存在)アッセイで、アッセイ感度は、通常、カットオフ値に適合するように設定される。例えばカットオフ値は、健常個体の群の試験から決定され得る。好ましくは、カットオフは90%の特異性をもたらすように設定され、また好ましくはカットオフは95%の特異性をもたらすように設定され、あるいはまた好ましくはカットオフは98%の特異性をもたらすように設定される。カットオフ値より上の値は、例えば癌の存在を示し得る。特に、カットオフ値より上のPACAPの値は、例えば肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌の存在を示し得る。さらに好ましい態様において、PACAPの測定は、定量的測定である。さらなる態様において、PACAPの濃度は、基礎にある診断問題、例えば疾患の病期、疾患進行、または治療への応答などに相関させられる。
プロアポトーシスカスパーゼアダプタータンパク質(PACAP、SwissProtデータベースID:PACAP_HUMAN、SwissProtデータベース受託番号:Q8WU39)は、配列番号:1(図6)に示す配列を特徴とする。PACAP分子は、189個のアミノ酸(=aa)からなり、20.7kDaの分子量を有する。PACAPの他の同義語は、FLJ32987、gxHOMSA73848、HSPC190、カスパーゼ-2結合タンパク質または仮想タンパク質MGC29506である。対応するヒト遺伝子(PACAPのコード配列)は、染色体バンド5q23-q31に位置する。
ヒトMGC29506遺伝子およびそのコードタンパク質は、KatohおよびKatohによってEST情報およびバイオインフォマティクスを用いて同定され、特性評価された(Katoh,M. and Katoh,M.,Int. Journal of Oncology 23(2003)235-241)。ヒトMGC29506遺伝子から、選択的スプライシングのため、3種類のタンパク質:189個のaaを有する完全長PACAPタンパク質(配列番号:1)とともにスプライスバリアントQ8WU39-2タンパク質(SwissProtデータベースID:PACAP_HUMAN-S2、SwissProtデータベース受託番号:123個のaaを有するQ8WU39-2;配列番号:5)およびQ8WU39-3タンパク質(SwissProtデータベースID:PACAP_HUMAN-S3、SwissProtデータベース受託番号:61個のaaを有するQ8WU39-3;配列番号:6)が得られる。タンパク質Q8WU39とQ8WU39-2は、アミノ酸1〜59を含むN末端領域は同一であるが、C末端領域は完全に異なる。KatohおよびKatohには、Q8WU39(PACAP)およびQ8WU39-2(PACAP-2)が、N末端シグナルペプチドおよび6つの保存されたシステイン残基を有する分泌型タンパク質であると報告されている。Q8WU39は、MGC29506遺伝子の主要な発現アイソフォームであることが示された。PACAP遺伝子は、腸型胃癌において高頻度に下方調節されることがわかった(Katoh and Katoh)。この下方調節のため、彼らは、PACAPは、腸型胃癌に関与している候補腫瘍抑制遺伝子かもしれないと推測している。組織試料中または体液中でのPACAPタンパク質は記載されていない。この文献には、高レベルのPACAPタンパク質が癌疾患の同定、予後および/または診断に関連するマーカーとしての機能を果たし得るというデータまたは表示は全く含まれていない。
Bonfoco et al.(J. Biol. Chem. 276(2001)29242-29250)には、酵母ツーハイブリッド系によるプロアポトーシス分子PACAPのクローニングに関して報告されている。彼らは、13.6kDaの計算値分子量を有する123-アミノ酸タンパク質PACAP-2を同定した。インビトロタンパク質結合アッセイおよびウエスタンブロット解析を使用し、Bonfoco et al.は、PACAP-2がカスパーゼ-2およびカスパーゼ-9と相互作用することを見い出し、PACAP-2タンパク質がアポトーシス誘発タンパク質であると同定した。しかしながら、著者らは、PACAP-2と癌評価との関連については全く記載していない。
US 2006/0252057には、一群の遺伝子の遺伝子発現産物または発現産物の組合せが開示されている。PACAP遺伝子は、331個の遺伝子の1つとして挙げられている。ほとんどはケラチンであってPACAPではない、いくつかの遺伝子について、IHCによりタンパク質レベルで識別的発現が確認された。IHC解析は癌組織に対してのみ行なわれたため、正常組織と比べて発現の改変は示されなかった。
WO 2006/121991には、対照群と比較した乳癌患者の一群の遺伝子の発現レベルの定量による乳癌の予後が開示されている。67個の他の遺伝子とともに、mRNAとして測定されたPACAP遺伝子は良好な予後を示すと記載されている。QPCR方法論によるこれらの遺伝子の対応するmRNAレベルの測定でのみ、実施例が示されている。いずれの実施例にも、組織中または循環中のタンパク質レベルは示されていない。
同じ著者により、WO 2007/112330に結腸癌の測定および予後のための遺伝子の組が記載されている。8個の他の遺伝子を有する群によるPACAP遺伝子の発現不足は、結腸癌の予後不良を示すと開示されている。
最後の2つの特許出願の実施例では、同定および定量にRNA検出方法しか使用されていない。対応するタンパク質レベルは測定されていない。
したがって、上記の当該技術の文書のいずれにも、組織試料または体液におけるPACAPタンパク質の測定は示されていない。
また、mRNAレベルとタンパク質レベルとの相関性は大きく異なることは周知である(Kadota,K. et al.,Genome Letters 2(2003)139-148;Greenbaum,D. et al.,Genome Biology 4(2003)117)。したがって、対応するmRNAレベルからタンパク質量を推測することはできない。mRNAレベルの調節異常が同時にタンパク質レベルの調節異常をもたらすという結論にはなり得ない。
WO 1997/38003には、ヒト造血系特異的タンパク質(hHSPタンパク質)が記載されている。特定の態様において、WO 1997/38003には、ヒト造血系特異的タンパク質としてのPACAPタンパク質、ならびに免疫系の細胞の分化および成熟の調節におけるその使用、ならびにhHSPタンパク質の発現不足を特徴とする状態の治療および/または予防におけるその使用が開示されている。組織試料または体液中でのPACAPタンパク質の測定は記載されていない。さらに、該文献には、PACAPタンパク質が癌、特に、肺、乳房および/または結腸の癌と関連しているマーカーかもしれないというデータは全く含まれていない。
したがって、上記の当該技術の文書のいずれにも、組織試料中および体液中のPACAPの測定により癌の評価が可能となり得ることは示唆されていない。
驚くべきことに、本発明において、組織試料および/または体液中のPACAPの存在および/または量の測定は、形態学的または組織学的情報の非存在下での、特に、細胞内の局在の測定なしでの癌疾患、例えば、肺、乳房、結腸、前立腺または腎臓の癌疾患、特に、肺癌疾患の評価を可能にすることが見出された。
本明細書で使用される場合、以下の用語のそれぞれは、本項のものと関連する意味を有する。
冠詞「a」および「an」は、1つまたは1つより多く(即ち少なくとも1つ)の冠詞の文法的目的語を示すために本明細書で使用される。例として、「マーカー(a marker)」は、1つのマーカーまたは1つより多くのマーカーを意味する。用語「少なくとも」は、任意に1つ以上のさらなる目的語が存在し得ることを示すために使用される。例として、少なくとも(マーカー)PACAPおよびCYFRA 21-1を含むマーカーパネルは、任意に1つ以上の他のマーカーを含み得る。
表現「1つ以上」は、1〜50、好ましくは1〜20、また好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、または15を示す。
用語「マーカー」または「生化学マーカー」は、本明細書で使用される場合、患者の試験試料を分析するための標的として使用される分子のことをいう。かかる分子標的の例は、タンパク質またはポリペプチドである。本発明でマーカーとして使用されるタンパク質またはポリペプチドは、前記タンパク質の天然バリアントおよび前記タンパク質または前記バリアントの断片、特に免疫学的に検出可能な断片を含むことが考えられる。免疫学的に検出可能な断片は、好ましくは前記マーカーポリペプチドの少なくとも6、7、8、10、12、15または20個の連続アミノ酸を含む。当業者は、細胞によって放出されるタンパク質または細胞外マトリックスに存在するタンパク質が、例えば炎症中に改変され得、かかる断片に分解または切断され得ることを理解する。特定のマーカーは不活性化形態で合成され、次にタンパク質分解によって活性化され得る。当業者に認識されるように、タンパク質またはその断片が複合体の一部としても存在し得る。また、かかる複合体は、本発明の意味において、マーカーとして使用され得る。マーカーポリペプチドのバリアントは、同じ遺伝子によってコードされるが、例えば選択的mRNAまたはプレmRNAのプロセッシングの結果として等電点(=PI)または分子量(=MW)あるいは両方で異なり得る。バリアントのアミノ酸配列は、対応するマーカー配列に95%以上同一である。また、もしくはあるいは、マーカーポリペプチドまたはそのバリアントは、翻訳後修飾を有し得る。翻訳後修飾の非限定的な例は、グリコシル化、アシル化、および/またはリン酸化である。
PACAP:
PACAPタンパク質、特に可溶性形態のPACAPタンパク質および/またはその断片は、適切な試料で検出される。好ましい試料は、組織試料または体液、例えば血液、血漿、血清、尿、糞便、気管支肺胞洗浄液(BAL)、上皮裏層液(epithelial lining fluid)(ELF)または痰等である。好ましくは、試料は、ヒト被験体、例えば腫瘍患者または腫瘍のリスクがあるヒトあるいは腫瘍を有すると疑われるヒトに由来する。また、PACAPは血清または血漿試料中で検出されることが好ましい。
本発明による好ましい態様において、本発明によれば、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度が測定される。一態様において、マーカーPACAPは、特異的結合剤の使用によって試料から特異的に測定される。
特異的結合剤は、例えばPACAPのレセプター、PACAPに結合するレクチン、またはPACAPに対する抗体である。特異的結合剤は、その対応する標的分子に対して少なくとも107l/molの親和性を有する。特異的結合剤は、好ましくはその標的分子に対して108l/molあるいはまた好ましくは109l/molの親和性を有する。当業者に認識されるように、用語特異的は試料中に存在する他の生体分子がPACAPに特異的な結合剤に有意に結合しないことを示すために使用される。好ましくは、標的分子以外の生体分子に結合するレベルは、標的分子に対する結合親和性の最大わずか10%以下、わずか5%以下、わずか2%以下、またはわずか1%以下それぞれの結合親和性を生じる。好ましい特異的結合剤は、親和性および特異性の上記最小基準の両方を満たす。
特異的結合剤は、好ましくはPACAPと反応性である抗体である。用語抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、かかる抗体の抗原結合断片、単鎖抗体ならびに抗体の結合ドメインを含む遺伝子構築物のことをいう。
特異的結合剤の上記基準を満たす任意の抗体断片が使用され得る。抗体は、当該技術の水準の方法によって、例えばTijssen(Tijssen,P.,Practice and theory of enzyme immunoassays、11、Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam、本全体、特に43-78頁)に記載されるように作製される。また、当業者は、抗体の特異的単離に使用され得る免疫吸着剤に基づく方法を知っている。これらの手段によって、ポリクローナル抗体の質および従って免疫アッセイにおけるそれらの性能が高められ得る(Tijssen, P., 上掲、108-115頁)。
本発明に開示される成果のために、ウサギにおいて惹起されたポリクローナル抗体が使用され得る。しかし、明らかに、異なる種、例えばヒツジまたはヤギのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体も使用され得る。モノクローナル抗体は任意の必要量で一定した性質で生成され得るために、これらは臨床ルーチンのアッセイの開発における理想的なツールを表す。本発明の方法におけるPACAPに対するモノクローナル抗体の作製および使用のそれぞれは、さらに他の好ましい態様を表す。
ここに、当業者は、PACAPが、癌、好ましくは肺癌または結腸癌の評価において有用なマーカーとして同定されたことを認識するため、本発明の成果に匹敵する結果に達するために様々な免疫診断方法が使用され得る。例えば、抗体を作製するための代替的戦略が使用され得る。かかる戦略は、中でも免疫化のためのPACAPのエピトープを表す合成ペプチドの使用を含む。あるいは、DNAワクチン接種としても公知のDNA免疫化が使用され得る。
測定のために、個体から得られた試料は、結合剤PACAP複合体の形成に適切な条件下でPACAPの特異的結合剤とインキュベートされる。当業者はいかなる発明の努力をすることなく、かかる適切なインキュベーション条件を容易に同定し得るために、かかる条件は特定される必要はない。結合剤PACAP複合体の量が測定され、そのようにして測定されたPACAPの濃度が癌、好ましくは肺癌の評価に使用される。当業者に認識されるように、特異的結合剤PACAP複合体の量を測定する多くの方法が存在し、全ては関連の教科書に詳細に記載されている(例えば、Tijssen, P., 上掲、またはDiamandis, E.P., and Christopoulos, T.K. (編), Immunoassay, Academic Press, Boston (1996)参照)。
好ましくは、PACAPは、サンドイッチ型アッセイ形式で検出される。かかるアッセイにおいて、一方でPACAPを捕捉するために第一特異的結合剤が使用され、他方で直接的または間接的に検出可能に標識される第二特異的結合剤が使用される。サンドイッチ型アッセイ形式で使用される特異的結合剤は、PACAPに対して特異的な抗体であり得る。検出は、異なる捕捉抗体および標識抗体、即ちPACAPタンパク質上の異なるエピトープを認識する抗体を使用することによって行われ得る。
本発明の意味において「癌のマーカー」、特に「肺癌のマーカー」は、マーカーPACAPと組み合わせた場合に、一般的な癌の評価または特定の癌の型の評価において、例えばLCの評価において関連する情報を付加する任意のマーカーである。癌の評価に対して、付加的な値、所定の特異性での感度または所定の感度での特異性それぞれが、マーカーPACAPを既に含むマーカー組み合わせに前記マーカーを含ませることによって改善され得る場合に、情報は関連するとみなされる。癌評価の好ましい態様において、感度または特異性それぞれの改善は、p = .05、.02、.01以下の有意さのレベルで統計学的に有意である。好ましくは、1つ以上の他の腫瘍マーカーは、Cyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSEおよび/またはproGRPからなる群より選択される。
用語「試料」は、本明細書で使用される場合、インビトロでの評価の目的で得られる生物学的試料のことをいう。本発明の方法において、試料または患者試料は、好ましくは任意の体液または組織試料を含み得る。好ましい試料は、全血、血清、血漿、気管支肺胞洗浄液(BAL)、上皮裏層液(ELF)、尿または痰であり、血漿または血清が最も好ましい。
用語「組織試料」および/または「組織切片」は、本明細書において使用される場合、インビトロ評価目的のための細胞または組織の除去を伴う、手術中に患者から採取された生物学的試料、治療的切除物または生検材料(例えば、切開生検材料、切除生検材料、コア生検材料または穿刺吸引生検材料)をいう。本発明による解析を行なう場合、組織試料物質は、直接または「組織溶解物」としてのいずれかで使用される。また、「組織試料」は、本明細書で使用されるように、通常ミクロトームの使用によって得られる組織薄片をいう。生物学的試料を伴う任意の開示された方法の態様において、かかる生物学的試料は、(必ずしもそうでなくてよいが)顕微鏡スライド上に置かれ得る、組織切片(ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片など)である、および/または新生物形成性組織(肺癌、結腸直腸癌、頭部および頚部癌、胃癌もしくはグリア芽腫など)である。
「組織溶解物」、「細胞溶解物」、「溶解物」、「溶解試料」、「組織抽出物」または「細胞抽出物」は、本明細書において使用される場合、溶解された組織または細胞を含む、すなわち、組織または細胞の構造的完全性が破壊された試料および/または生物学的試料物質をいう。細胞または組織試料の内容物を放出させるため、該物質は、通常、かかる組織または細胞の細胞壁および細胞膜を溶解、分解または破壊するための酵素および/または化学薬品で処理される。当業者は、溶解物を得るための適切な方法に充分精通している。このプロセスは用語「溶解」に包含される。
用語「癌の評価」、特に「肺癌の評価」は、本発明の方法が(単独または他のマーカーもしくは変数、例えばUICC(上記参照)に示される基準と共に)、例えば医師が癌、特にLCの非存在または存在を確立または確認することを補助し、予後、再発の検出(手術後の患者の追跡)および/または治療のモニタリング、特に化学療法のモニタリングにおいて医師を補助することを示すために使用される。
当業者に認識されるように、任意のかかる評価がインビトロで行われる。患者試料が後で廃棄される。患者試料は、本発明のインビトロ診断方法だけに使用され、患者試料の物質は、患者の体に戻されない。典型的に、試料は、液体試料、例えば全血、血清、または血漿である。
特に記載のない限り、技術用語は慣用的用法に従って使用される。細胞分子生物学における一般的な用語の定義は、Lewin,B.,Genes V、published by Oxford University Press(1994)、ISBN 0-19-854287 9);Kendrew et al.(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.出版(1994)、ISBN 0-632-02182-9);およびMeyers,R.A.(編)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers、Inc.出版(1995)、ISBN 1-56081-569 8) に見られ得る。
好ましい態様において、本発明は、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度を試料中で測定する工程、ならびに測定された濃度を癌、例えばLCの評価において使用する工程を含む、生化学マーカーによるインビトロでの癌、例えばLCの評価方法に関する。
別の好ましい態様において、本発明は、PACAPタンパク質および/またはその断片の濃度を試料中で測定する工程、ならびに測定された濃度をLCの評価において使用する工程を含む、生化学マーカーによってLCをインビトロで評価するための方法に関する。
本発明の発明者らは、驚くべきことに、癌、特に肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌を有する患者に由来する試料から有意な割合でマーカーPACAPの濃度の増大を検出できた。さらにより驚くべきことに、発明者らは、個体から得られたかかる試料中のPACAPタンパク質および/またはその断片の濃度の増大が癌、特に上記癌の評価において使用され得ることを示すことができた。
診断の理想的なシナリオは、単一の事象またはプロセスがそれぞれの疾患例えば感染性疾患を引き起こす状況である。全ての他の症例において、正確な診断は、特に疾患の病因が、多くの癌の種類、例えばLCについて当てはまるように十分に理解されていない場合に非常に困難であり得る。当業者が理解するように所定の多要因疾患例えばLCについて100%特異性および同時に100%感度で診断する生化学マーカーはない。むしろ、生化学マーカー、例えばCYFRA 21-1、CEA、CA 125、proGRP、SCC、または本明細書に示されるPACAPが、特定の可能性または予測値で、例えば疾患の存在、非存在または重症度を評価するために使用され得る。従って、日常業務の臨床診断では、一般的に様々な臨床症状および生物学的マーカーは、基礎にある疾患の診断、治療および管理において共に考慮される。
生化学マーカーは、個々に測定され得るか、または本発明の好ましい態様においてこれらはチップまたはビーズ系アレイ技術の使用によって同時に測定され得るかのいずれかである。生物マーカーの濃度は、次に例えば各マーカーのそれぞれのカットオフを使用して独立して解釈されるか、またはこれらが解釈のために組み合わされるかのいずれかである。
さらに好ましい態様において、本発明の癌の評価は、a)PACAPおよび/またはその断片、およびb)癌の1つ以上の他のマーカーの濃度を試料中で測定する工程、ならびにc)癌の評価において工程(a)および工程(b)それぞれで測定された測定結果、例えば濃度を使用する工程を含む方法において行われる。
癌の評価において、マーカーPACAPは以下の局面:スクリーニング;診断補助;予後;化学療法、放射線療法、および免疫療法などの療法のモニタリングの1つ以上で有利である。
スクリーニング:
スクリーニングとは、疾患のインジケータ、例えば癌の存在について、個体、例えば危険性のある個体を同定するための試験の体系的な適用として規定される。好ましくは、スクリーニング集団は、癌のリスクが平均より高いことが知られている個体からなる。例えば、肺癌のスクリーニング集団は、喫煙者、元喫煙者、およびウラン、石英またはアスベスト曝露労働者のような肺癌のリスクが平均より高いことが知られている個体からなる。
好ましい態様において、組織試料または血漿、血清、便、尿もしくは痰などの任意の体液は、癌、例えば肺癌のスクリーニングにおける試料として使用される。
LCの別の好ましい態様において、肺癌のスクリーニングにおける試料として痰が使用される。
多くの疾患について、スクリーニング目的に必要な感度および特異性の基準を常に満たす、循環中の単一の生化学マーカーはない。このことは癌、特に肺癌についてもそうであると思われる。癌のスクリーニングには複数のマーカーを含むマーカーパネルが使用されなければならないと予測されよう。本発明において確立されたデータは、マーカーPACAPがスクリーニング目的に適したマーカーパネルの不可欠な部分を形成することを示す。したがって、本発明は、癌マーカーパネル、つまり、PACAPおよび癌スクリーニングのための1つ以上のさらなるマーカーを含むマーカーパネルのマーカーの1つとしてのPACAPの使用に関する。特に、本発明は、一般的な癌マーカーの1つのマーカーとしてのPACAPの使用に関する。かかるマーカーパネルは、マーカーPACAPおよび1つ以上のさらなるマーカー、例えば一般的な癌マーカーおよび/または上記の種類の癌についてのマーカーを含む。
PACAPはまた、特定の具体的な種類の癌、例えば肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌についてのマーカーパネルに寄与し得る。
PACAPを含むマーカーパネルで評価される癌の他の好ましい種類は、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、腎臓、または前立腺の癌である。
PACAPを含むマーカーパネルで評価される癌の他の好ましい種類は、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、黒色腫、または腎臓の癌である。
PACAPを含むマーカーパネルで評価される癌の他の好ましい種類は、肺癌または結腸癌である。
PACAPを含むマーカーパネルで評価される癌の好ましい種類は、肺癌(LC)である。
本発明のデータは、マーカーの特定の組合せは、癌のスクリーニングに有利であることをさらに示す。例えば、LCのスクリーニングの好ましい態様を参照して、本発明はまた、PACAPおよびCYFRA 21-1を含むマーカーパネル、またはPACAPおよびCEAを含むマーカーパネル、またはPACAPおよびCA 19-9を含むマーカーパネル、またはPACAPおよびSCCを含むマーカーパネル、またはPACAPおよびCA 125を含むマーカーパネル、またはPACAPおよびNSEを含むマーカーパネル、またはPACAPおよびproGRPを含むマーカーパネル、またはPACAPおよびCyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSEおよび/またはproGRPからなる群より選択される2つ以上のマーカーを含むマーカーパネルの使用に関する。
診断補助:
マーカーは、特定の臓器における良性疾患対悪性疾患の鑑別診断を補助し得るか、異なる組織学的腫瘍型の識別を補助し得るか、または手術前のベースラインマーカー値を確立し得るかのいずれかである。
今日、肺癌の検出に使用される重要な方法は、放射線学および/またはコンピュータ連動断層撮影(CT)スキャンである。小結節、すなわち、疑わしい組織の小領域は、これらの方法によって可視化され得る。しかしながら、これらの結節の多く-CTで90%より多く-は良性組織変化を示し、少数の結節のみが癌性組織を示す。マーカーPACAPの使用は、良性対悪性疾患の識別を補助し得る。
好ましい態様において、マーカーPACAPは、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌、好ましくはLCの異なる組織学的型を確立または確認するために免疫組織学的方法に使用される。
単独マーカーとしてのPACAPは、他のマーカー、例えばLCの場合、Cyfra 21-1またはCEAなどの他のマーカーより卓越し得るため、PACAPは、特に、手術前のベースライン値を確立することにより診断補助として使用されるものと期待されよう。したがって、本発明はまた、手術前の癌のベースライン値を確立するためのPACAPの使用に関する。
予後:
予後インジケータは、一定の尤度で疾患結果を予測する癌患者およびその腫瘍の臨床的、病理学的または生化学的な特徴と定義され得る。その主な使用は、患者管理の合理的な計画を補助すること、すなわち、それぞれ急速進行性疾患の過少治療および無痛性疾患の過剰治療を回避することである。Molina R. et al.,Tumor Biol. 24 (2003) 209-218では、NSCLCにおけるCEA、CA 125、CYFRA21-1、SSCおよびNSEの予後値が評価された。彼らの研究では、マーカーNSE、CEA、およびLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の異常血清レベルは、短い生存を示すように思われた。
PACAPは単独で、癌患者、例えばLC患者と健常対照の識別に有意に寄与するため、PACAPは癌、好ましくはLCに苦しむ患者の予後の評価を補助するものと期待されよう。手術前のPACAPのレベルは、たいてい、癌の1種類以上の他のマーカーおよび/またはTNM病期分類システムと組み合わされる。好ましい態様において、PACAPはLCを有する患者の予後に使用される。
化学療法のモニタリング:
Merle,P. et al.,Int. J. of Biological Markers 19(2004) 310-315では、導入化学療法で治療された局所進行NSCLCを有する患者におけるCYFRA 21-1血清レベルの変化が評価された。彼らは、CYFRA 21-1血清レベルの早期モニタリングが病期III NSCLC患者の腫瘍応答および生存に有用な予後ツールであり得ると結論づけている。また、報告には、LCを有する患者の治療のモニタリングにおけるCEAの使用が記載されている(Fukasawa T. et al.,Gan to Kagaku Ryouho 13(1986) 1862-1867)。これらの研究のほとんどは遡及的で、無作為で、少数の患者を含んだ。CYFRA21-1での研究の場合と同様に、CEA研究は、a)化学療法を受けている間にCEAレベルが減少した患者は、一般的に、CEAレベルが減少しなかった患者よりも良好な結果を有し、(b)ほぼすべての患者で、CEAレベルの増加は疾患の進行と関連したことを示した。
PACAPは、それぞれCYFRA21-1またはCEAと少なくとも同程度に良好な化学療法のモニタリングのためのマーカーであることが期待されよう。したがって、本発明はまた、化学療法下の癌患者、好ましくは肺癌(LC)患者のモニタリングにおけるPACAPの使用に関する。好ましい一態様における治療モニタリングでは、PACAPの測定およびCyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSEおよび/またはproGRPからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの測定は、LCの評価に合わせて使用される。
追跡:
癌性組織の完全な除去を目的として外科的切除を受けたLC患者の大部分は、後に再発性または転移性の疾患を発症する(Wagner,H.,Chest 117(2000) 110S-118S;Buccheri,G. et al.,Ann. Thorac. Surg. 75(2003) 973-980)。これらの再発のほとんどは、手術後2〜3年以内に起こる。再発性/転移性疾患は、検出が遅すぎた場合は常に致死的であるため、相当な研究が、初期ひいては潜在的に治療可能な段階での癌の再発に焦点を当てている。
その結果、多くの癌患者、例えばLC患者は、多くの場合CEAでの定期的モニタリングを含む、術後のサーベイランスプログラムを受ける。外科的切除後1年間のCEAによる連続モニタリングにより、再発性/転移性疾患が、疑わしい症状または徴候がない場合であっても、早期の術後再発性/転移性疾患は、ほぼ97%の特異性でほぼ29%の感度で検出されることが示された(Buccheri,G. et al.,Ann. Thorac. Surg. 75(2003) 973-980)。したがって、LCを有する患者の手術後の追跡は、適切な生化学的マーカーの使用の最も重要な分野の1つである。調査したLC患者においてPACAPの感度が高いために、PACAPは単独でまたは1種類以上の他のマーカーと組合せて、LC患者の追跡、特に手術後のLC患者の追跡に非常に有用であろう。LC患者の追跡におけるPACAPおよび1種類以上のLCの他のマーカーを含むマーカーパネルの使用は、本発明のさらに好ましい態様を示す。
好ましい態様において、本発明は、癌の診断の分野におけるPACAPの使用に関する。好ましくは、PACAPは、肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管のそれぞれの癌の評価に使用される。
またさらに好ましい態様において、本発明は、癌、例えば一般的な癌または具体的な種類の癌、例えば肺、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、子宮内膜、頭部および頚部、乳房、黒色腫、膵臓、腎臓、前立腺、食道、胃または胆管の癌のためのマーカー分子としての、癌のための1つ以上のさらなるマーカー分子と組み合わせたPACAPの使用に関する。さらなるマーカー分子は、癌型非特異的な、一般的なマーカー分子および/または癌型特異的なマーカー分子、例えば肺または結腸癌のためのマーカー分子であり得る。PACAPおよび少なくとも1つのさらなるマーカーは、個体から得られた液体中の癌、例えば肺または結腸癌の評価に使用される。PACAPの測定と合わされ得る選択された好ましい他の癌マーカーは、Cyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSE、proGRP、CA 15-3、CA 27-29、AFP、PSA、フェリチンである。特に、PACAPの測定と合わされ得る選択された好ましい他のLCマーカーは、Cyfra 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSEおよび/またはproGRPである。癌、例えばLCの評価に使用されるまたさらに好ましいマーカーパネルは、PACAPならびにCYFRA 21-1およびCEAからなる群より選択される少なくとも1つの他のマーカー分子を含む。
当業者が理解するように、調査中の診断的疑問を改善するために、2種類以上のマーカーの測定を使用するには多くの方法がある。全く単純に、しかしながら、しばしば効果的なアプローチにおいて、調査された少なくとも1種類のマーカーについて試料が陽性である場合、陽性の結果が仮定される。このことは、例えばAIDSのような感染性の疾患の診断の場合であり得る。
しかしながら、マーカーの組み合わせは頻繁に評価される。好ましくは、マーカーパネルのマーカー、例えばPACAPおよびCYFRA21-1についての測定値は、数学的に組み合わされ、組み合わされた値は診断的疑問の原因に相関される。マーカー値は、当該技術分野の技術水準の任意の適切な数学的方法により組み合わされ得る。マーカーの組み合わせと疾患を相関する周知の数学的方法には、識別分析(DA)(即ち、一次、二次、標準化DA)、カーネル法(即ちSVM)、ノンパラメトリック法(即ちk-最近接分類)、PLS(部分最小二乗)、ツリーベース法(即ちロジック回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バギング法)、一般化直線モデル(即ちロジスティック回帰)、主成分ベース法(即ちSIMCA)、一般化付加モデル、ファジーロジックベース法、ニューラルネットワークおよび遺伝的アルゴリズムベース法などの方法を用いる。当業者は、本発明のマーカーの組み合わせを評価するための適切な方法を問題なく選択する。好ましくは、本発明のマーカーの組み合わせを、例えばLCの有無と相関することに用いられる方法は、DA(即ち一次、二次、標準化識別分析)、カーネル法(即ちSVM)、ノンパラメトリック法(即ちk-最近接分類)、PLS(部分最小二乗)、ツリーベース法(即ちロジック回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング法)、または一般化線形モデル(即ちロジスティック回帰)から選ばれる。これらの統計的方法に関する詳細は、以下の参考文献:Ruczinski,I.,et al,J. of Computational and Graphical Statistics,12 (2003)475-511;Friedman,J. H. ,J. of the American Statistical Association 84 (1989)165-175;Hastie,T., et al., The Elements of Statistical Learning,Springer Series in Statistics (2001);Breiman,L., et al., Classification and regression trees,California:Wadsworth (1984);Breiman,L.,Random Forests,Machine Learning 45 (2001)5-32;Pepe,M. S.,The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction,Oxford Statistical Science Series 28 (2003);およびDuda,R. O.,et al.,Pattern Classification,Wiley Interscience,第2版 (2001)に見られる。
生物学的マーカーの基礎的な組合せに対して、最適化された多変量カットオフを使用し、状態Aと状態B、例えば、疾患状態と健常を区別することは、本発明の好ましい態様である。この型の解析では、マーカーは、もはや独立ではなくマーカーパネルを形成する。
診断方法の精度は、その受信者動作特性(ROC)によって最もよく示される(特にZweig, M. H.およびCampbell, G., Clin. Chem. 39 (1993)561-577参照のこと)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって判定閾値を連続的に変えることにより得られる全ての感度/特異性ペアのプロットである。
臨床試験の臨床性能は、その診断精度または被験体を臨床的に関連する亜群に正確に分類する能力に依存する。診断精度は、検査を受けた被験体の2つの異なる状態を正確に区別する試験の能力を評価する。かかる状態は、例えば健常と疾患または良性疾患対悪性疾患である。
それぞれの場合において、ROCプロットは、判定閾値の全範囲で1−特異性に対して感度をプロットすることにより2つの分布間の重複を示す。Y軸上は感度、すなわち真陽性部分[(真陽性試験結果の数)/(真陽性の数+偽陰性試験結果の数)として定義される]である。これは、疾患または状態の存在下の陽性度とも称される。これは、罹患亜群のみから算出される。X軸上は偽陽性部分、すなわち1-特異性[(偽陽性結果の数)/(真陰性の数+偽陽性結果の数)として定義される]である。これは特異性の指標であり、罹患していない亜群全体から算出される。真陽性部分および偽陽性部分は、2つの異なる亜群由来の試験結果を用いて全く別々に算出されるため、ROCプロットは試料中の疾患の有病率とは独立している。ROCプロット上のそれぞれの点は、特定の判定閾値に対応する感度/1-特異性のペアを表す。完全識別を伴う試験(結果の2つの分布に重複がない)は、左上の角を通るROCプロットを有し、この場合、真陽性の割合は1.0または100%(完全な感度)であり、偽陽性部分は0(完全な特異性)である。識別のない試験の理論的プロット(2つの群の結果の分布が同一)は、左下の角から右上の角に向かう45°の対角線である。ほとんどのプロットはこれらの両極間に含まれる。(ROCプロットが45°の対角線の完全に下に含まれる場合、これは「陽性度」についての基準を「より大きい」から「より少ない」に入れ換えることにより容易に修正される。逆も同じ)。定性的には、プロットが左上の角に近づくにしたがって、試験の全体的な精度は高くなる。
臨床試験の診断精度を定量化するための好ましい方法の1つは、単一の数によりその成績を表すことである。かかる全般的パラメータは、例えば、いわゆる「総エラー」あるいは「曲線下面積=AUC」である。最も一般的な世界的尺度はROCプロット下の面積である。慣例により、この面積は常に≧0.5である(もしそうでなければ、そうなるように決定基準を入れ換えることができる)。数値は1.0(2群の試験値の完全な分離)と0.5(2群間の試験値に明らかな分布の差が無い)の範囲にある。該面積は、対角線に最も近い点または90%特異性での感度などのプロットの特定の部分だけでなく、全プロットに依存する。これは、ROCプロットが完全なもの(面積=1.0)にどれだけ近いかということの定量的で説明的な表現である。
PACAPとCYFRA 21-1またはCEAなどの他のマーカー、または今後見出されるであろうLCの他のマーカーを組み合わせることで、PACAPは、LCの評価においてさらなる改善をもたらす。
好ましい態様において、本発明は、試料中の少なくともPACAPおよびCYFRA21-1の濃度、ならびに任意にCEA、CA 19-9、SCC、CA 125、NSEおよび/またはproGRPの濃度をそれぞれ測定し、測定された濃度を癌、例えばLCの有無と相関させることにより、癌、例えばLC対健常対照の診断精度を改善するための方法であって、改善により、調査されたいずれかの単一マーカー単独に基づいた分類と比べて、健常対照に対してより多くの患者が癌、例えばLCに苦しんでいると正確に分類される方法に関する。
本発明の好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAPおよびCYFRA21-1の濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAPおよびCEAの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAPおよびCA 19-9の濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAPおよびSCCの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAPおよびCA 125の濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAPおよびNSEの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAPおよびproGRPの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のなおさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAP、CYFRA 21-1およびCEAの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のなおさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAP、CYFRA 21-1およびCA 19-9の濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のなおさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAP、CYFRA 21-1およびSCCの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のなおさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAP、CYFRA 21-1およびCA 125の濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のなおさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAP、CYFRA 21-1およびNSEの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
本発明のなおさらに好ましい方法において、少なくともバイオマーカーPACAP、CYFRA 21-1およびproGRPの濃度のそれぞれが測定され、癌、例えばLCの評価に該マーカー組合せが使用される。
以下の実施例、配列表および図面は、本発明の理解を補助するために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。記載の手順において、本発明の精神から逸脱することなく変更がなされ得ることが理解されよう。
実施例1
肺癌のマーカーとしてのPACAPの同定
組織の供給源:
肺癌の診断マーカーとして腫瘍特異的タンパク質を同定するために、プロテオミクス法を使用して2種類の異なる組織の解析を行う。
全部で、20名の肺癌に苦しむ患者(10名の腺CAおよび10名の扁平上皮CA)由来の組織被検物を解析する。各患者から、2種類の異なる組織型を、治療的切除により採取する:腫瘍組織(>80%腫瘍)(T)および隣接する健常組織(N)。後者は適合健常対照試料として用いる。切除後、組織をすぐに凍結して、処理まで-80℃に保存する。組織病理学的基準により腫瘍を診断する。
組織調製:
0.8〜1.2gの凍結した組織を小片に切断し、冷やしたボールミルミキサーのすりつぶしジャーに移し、液体窒素で完全に凍結させる。組織をボールミルで粉砕して、10倍容量(w/v)の溶解バッファー(40mMクエン酸Na、5mM MgCl2、1% Genapol X-080、0.02%アジ化Na、Complete(登録商標) EDTA-free [Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号1 873 580])に溶解し、次いでWheaton(登録商標)ガラスホモジナイザー(20xゆるくフィット、20xきつくフィット)中でホモジナイズする。ホモジネートを遠心分離(5,000xgで10分)に供し、上清を別のバイアルに移し、再度遠心分離に供する(20,000xgで15分)。得られた上清は、可溶性タンパク質を含み、さらなる解析に使用する。
アルブミンの枯渇:
調製した組織溶解物から豊富なアルブミンを枯渇させるために、CNBr活性化セファロース4Bに結合したモノクローナル抗ヒトアルブミンIgG(GE Healthcare Europe GmbH, Munich, Germany)を使用して、溶解物を免疫親和性クロマトグラフィーに供した。製造業者の使用説明書に従いAmicon(登録商標) Ultra-15デバイス(Millipore GmbH, Schwalbach, Germany)を使用して組織溶解物を濃縮した。1mlの濃縮溶解物を免疫親和性カラムに注入し、流量最大1ml/分でクロマトグラフィーに供した。ランニングバッファーはGenapol X-080を含まない溶解バッファーであった。枯渇フロースルーを回収しさらなる解析に使用した。
等電点電気泳動法(IEF)およびSDS-PAGE:
IEFについて、3mlのアルブミン枯渇ヘパリン結合画分を12mlの試料バッファー(7M尿素、2Mチオウレア、2% CHAPS、0.4% IPGバッファーpH4〜7、0.5% DTT)と混合し、1時間インキュベートした。試料をAmicon(登録商標) Ultra-15デバイス(Millipore GmbH, Schwalbach, Germany)中で濃縮し、供給業者のマニュアルの指示に従いBio-Rad□タンパク質アッセイ(カタログ番号500-0006;Bio-Rad Laboratories GmbH, Munich, Germany)を使用してタンパク質濃度を測定した。1.5mgのタンパク質に相当する容量に試料バッファーを添加して最終容量350μlとした。この溶液を使用して、IPGストリップpH4〜7(Amersham Biosciences, Freiburg, Germany)を一晩再水和した。以下の勾配プロトコル:1.) 500Vで1分;2.) 3500Vで2時間;3.) 3500V一定で82kVhまで22時間、を使用してIEFを行った。IEF後、ストリップを-80℃に保存してSDS-PAGEに直接使用した。
SDS-PAGEの前に、該ストリップを平衡化バッファー(6M尿素、50mM Tris/HCl、pH8.8、30%グリセロール、2% SDS)中でインキュベーションし、還元のためにDDT(15分+50mg DTT/10ml)、およびアルカリ化のためにIAA(15分+235mgヨードアセトアミド/10ml)を添加した。ストリップを12.5%ポリアクリルアミドゲルに置き、1W/ゲルで1時間その後17W/ゲルで、電気泳動に供した。次いで、ゲルを固定して(50%メタノール、10%酢酸塩)、Novex(登録商標) Colloidal Blue Staining Kit(Invitrogen, Karlsruhe, Germany, カタログ番号LC6025, 45-7101)で一晩染色した。
肺癌の潜在的マーカーとしてのPACAPタンパク質の検出:
ProteomeWeaver(登録商標)ソフトウェア(Definiens AG, Munich, Germany)を用いて、画像解析により各患者を別々に解析した。また、ゲルの全てのスポットを、ピッキングロボットで切出し、スポット中のタンパク質を、MALDI-TOF質量解析(UltraflexTMTof/Tof, Bruker Daltonik GmbH, Bremen, Germany)により同定した。各患者について、腫瘍試料由来の3つのゲルを隣接正常試料由来の3つのゲルと比較し、識別的に発現したタンパク質に対応する別々のスポットについて解析した。この手段により、PACAPタンパク質は、腫瘍組織で特異的に発現されるか、または腫瘍組織で強く過剰発現されるということがわかった。PACAPタンパク質スポットを検出して、13の肺癌患者試料とわずか4の対照試料の2Dゲル中で同定した。過剰発現は、腺癌(AdCa)および扁平上皮癌(SCC)で同様であった(表1および図1参照)。従って、PACAPは、肺癌の診断における使用のための候補マーカーとして確認された。
実施例2
肺癌マーカータンパク質PACAPに対する抗体の作製
免疫検出アッセイ、例えば、ウエスタンブロッティングおよびELISAによるPACAPの血清レベルおよび血漿レベルおよび血中レベルの測定における抗体のさらなる使用のため、肺癌マーカータンパク質PACAPに対するポリクローナル抗体を作製する。
大腸菌における組換えタンパク質発現:
PACAPに対する抗体を作製するため、大腸菌において組換え抗原を作製する。したがって、German Resource Center for Genome Research (RZPD、Berlin、Germany)から入手した全長cDNAクローンIRALp962G1939Qから、プライマー:
フォワードプライマーLC13Bfor-EcoRI:
5' aCGTACGTgaattcattaaagaggagaaattaact atgagaggatcgcatcaccatcaccatcacattgaaggccgtagg_ctgtcactgc cactgctgc (配列番号:2/EcoRI -開始コドンに下線)、
リバースプライマーLC13Brev-HindIII:
5’ acgtacgtaa gctttcatta gagctcttct cttgtggctg (配列番号: 3)
を使用してPACAPコーディング領域をPCR増幅する。
フォワードプライマーは、(EcoRIクローニング部位およびリボソーム結合部位の他に)PACAPタンパク質にインフレーム導入されたN-末端MRGSHHHHHHIEGRペプチド伸長部(配列番号:4)をコードするオリゴヌクレオチドを特徴とする。EcoRI/HindIII消化されたPCR断片を、対応するpQE-30(Qiagen, Hilden, Germany)ベクター断片に連結し、その後大腸菌XL1-blueコンピテント細胞に形質転換する。配列解析後、製造業者の使用説明書に従ってpQEベクターシリーズのIPTG誘導性T5プロモーター下での発現のために、プラスミドを大腸菌BL21コンピテント細胞に形質転換する。
MRGSHHHHHHIEGR-PACAP融合タンパク質の精製のために、1lの一晩誘導細菌培養液を遠心分離してペレット化し、100mMリン酸ナトリウムバッファー、pH8.0、7M塩酸グアニジウム、5mMイミダゾール、20mMチオグリセロールに再懸濁して細胞ペレットを溶解する。誘導物質を遠心分離してペレット化し、上清をNi-ニトロトリ酢酸(Ni-NTA)金属親和性クロマトグラフィーに供する:カラムを数倍床容量の溶解バッファーで洗浄し、次いでa) 100mMリン酸ナトリウムバッファー、pH8.0、10mM Tris-HCl、pH8.0、8M尿素、20mMチオグリセロール;b) 100mMリン酸ナトリウムバッファー、pH8.0、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、20mMチオグリセロール;およびc) 100mMリン酸ナトリウムバッファー、pH8.0、0.1% SDS、20mMチオグリセロールで洗浄する。最終的に、100mMリン酸ナトリウムバッファー、pH5.0、0.1% SDS、20mMチオグリセロールを用いて、酸性条件下で抗原を溶出し、同一バッファー中4℃で保存する。
ポリクローナル抗体の作製:
a) 免疫化
免疫化のため、タンパク質溶液の新鮮エマルジョン(100μg/mlのタンパク質PACAP)および完全フロイントアジュバントを1:1の比で調製する。1、7、14および30、60および90日目に各ウサギを1mlのエマルジョンで免疫化する。血液を採取し、得られた抗PACAP血清を実施例3および4に記載のさらなる実験に使用する。
b)カプリル酸および硫酸アンモニウムでの連続沈殿によるウサギ血清からのIgG (免疫グロブリンG)の精製
1容量のウサギ血清を4容量の酢酸バッファー(60mM、pH4.0)で希釈する。2M Tris-塩基でpHを4.5に調整する。カプリル酸(25μl/mlの希釈試料)を激しい攪拌下で滴下する。30分後、試料を遠心分離し(13000×g、30分、4℃)、ペレットを廃棄し、上清を回収する。2MのTris-塩基を添加して上清のpHを7.5に調整し、ろ過する(0.2μm)。
最終濃度2Mまで4M硫酸アンモニウム溶液を滴下して、激しい攪拌下、上清中の免疫グロブリンを沈殿させる。沈殿した免疫グロブリンを遠心分離(8000×g、15分、4℃)によって回収する。
上清を廃棄する。ペレットを10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaClに溶解し、充分透析する。透析物を遠心分離し(13000×g、15分、4℃)、濾過する(0.2μm)。
ポリクローナルウサギIgGのビオチン化:
ポリクローナルウサギIgGを10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaClで10mg/mlにする。IgG溶液1mlあたり50μlのビオチン-N-ヒドロキシスクシンイミド(DMSO中3.6mg/ml)を添加する。室温で30分後、試料をSuperdex 200 (10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaCl)上でクロマトグラフィー処理する。ビオチン化IgGを含有する画分を収集する。同様の手順に従いモノクローナル抗体をビオチン化する。
ポリクローナルウサギIgGのジゴキシゲニン化:
10mM NaH2PO4/NaOH、30mM NaCl、pH7.5中でポリクローナルウサギIgGを10mg/mlにする。IgG溶液1mlあたり、50μlのジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany, カタログ番号1 333 054)(DMSO中3.8mg/ml)を添加する。室温で30分後、試料をSuperdex(登録商標) 200(10mM NaH2PO4/NaOH、pH7.5、30mM NaCl)上でクロマトグラフィー処理する。ジゴキシゲニン化IgGを含む画分を収集する。同様の手順に従い、モノクローナル抗体をジゴキシゲニンで標識する。
実施例3
ヒト血清および血漿試料中のPACAPの測定のためのELISA
ヒト血清または血漿中のPACAPの検出のために、サンドイッチELISAを開発する。抗原の捕捉および検出のために、抗PACAPポリクローナル抗体(実施例2参照)のアリコートをビオチンおよびジゴキシゲニンのそれぞれでコンジュゲートする。
ストレプトアビジン被覆した96ウェルマイクロタイタープレートを、100μlのビオチン化した抗PACAPポリクローナル抗体とともに60分間、10mMリン酸塩、pH7.4、1% BSA、0.9% NaClおよび0.1% Tween 20中、10μg/mlでインキュベートする。インキュベーション後、プレートを0.9% NaCl、0.1% Tween 20で3回洗浄する。次いで、ウェルを、標準抗原としての組換えタンパク質(実施例2参照)の連続希釈物、または患者由来の希釈血漿試料のいずれかとともに2時間インキュベートする。PACAPの結合後、プレートを0.9% NaCl、0.1% Tween 20で3回洗浄する。結合したPACAPの特異的検出のために、ウェルを100μlのジゴキシゲニン化抗PACAPポリクローナル抗体と、10mMリン酸、pH7.4、1% BSA、0.9% NaClおよび0.1% Tween 20中、10μg/mlで60分間インキュベートする。その後プレートを3回洗浄して未結合抗体を除去する。次の工程では、ウェルを20mU/mlの抗ジゴキシゲニンPODコンジュゲート(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号1633716)と、10mMリン酸、pH7.4、1% BSA、0.9% NaClおよび0.1% Tween 20中で60分間インキュベートする。次いで、プレートを同様のバッファーで3回洗浄する。抗原-抗体複合体の検出のために、ウェルを100μlのABTS溶液(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号11685767)とインキュベートし、30〜60分後、ELISAリーダーを用いて405nmでODを測定する。
実施例4
肺癌におけるPACAPの臨床有用性
充分に特徴付けられた患者コホートから得られた血清試料を解析して、PACAPの臨床実用性を評価する。対照および患者の数および集団を変えて、2つの集団の試験を行う。診断値は、ROC解析および95%特異性での感度の測定により評価する。
第1試験
表2に示されるUICC分類を有する充分に特徴付けられた60名のNSCLC患者(30名の腺CA、30名の扁平上皮CA)由来の試料を使用する。
表2のLC試料中のPACAPのレベルを、30名の健常個体および公知の悪性肺疾患を何ら有さない30名の見かけ上健常な喫煙者から得られる60の対照試料(=対照コホート)と比較して評価する。
曲線下面積で測定した際のLC群の患者と健常個体を区別するための識別力は、LC対健常対照について82%であると分かる(図2)。
95%の特異性で、感度は、それぞれ全てのLC試料については37%、腺癌については23%、扁平上皮癌については50%であった。
第2試験
多施設試験において、多くの臨床的に充分に特徴付けられた血清試料を収集した(表3)。健常人および見かけ上健常な喫煙者または元喫煙者由来の試料に加えて、全対照集団(233試料)には、仕事に関連する曝露を通じて高い肺癌のリスクを有する個体および病期0〜IIの慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する被験体からの試料が含まれる。
年齢適合肺癌群において(表4)、全ての病期由来の最も重量なNSCLCの組織学型およびSCLC患者由来の試料が示されている。NSCLC試料についてのROC解析のAUC値は69%であり、SCLC試料については68%であった。NSCLC試料をUICC病期でグループ分けすることにより62〜74%の値が得られる。異なる組織学集団からは、大細胞癌試料が最も良好に識別される(77% AUC)。従って、95%選択性での感度は、この組織学型で最も高かった。
実施例5
実施例2で作製したポリクローナル抗体を使用した、ヒト肺癌組織中のPACAPの検出のためのウエスタンブロット
腫瘍試料および健常対照試料由来の組織溶解物を、実施例1の「組織調製」に記載されるように調製する。
Invitrogen, Karlsruhe, Germanyの試薬および設備を使用してSDS-PAGEおよびウエスタンブロットを行う。試験するそれぞれの組織試料について、15μgの組織溶解物を、還元NuPAGE(登録商標)(Invitrogen)SDS試料バッファーに希釈し、95℃で10分間加熱する。MESランニングバッファー系中4〜12% NuPAGE(登録商標)ゲル(Tris-グリシン)上で、試料を流す。Invitrogen XCell II(登録商標) Blot Module(Invitrogen)およびNuPAGE(登録商標)転写バッファー系を使用して、ゲル-分離タンパク質混合物をニトロセルロース膜上にブロッティングする。PBS/0.05% Tween-20で膜を3回洗浄し、Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファー(A151.1; Carl Roth GmbH, Karlsruhe, Germany)で2時間ブロッキングする。一次抗体ポリクローナルウサギ抗Q8WU39血清(実施例2に記載の作製)を、Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファー中に1:10,000で希釈し、膜と1時間インキュベートする。膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄する。特異的に結合した一次ウサギ抗体をPODコンジュゲートポリクローナルヒツジ抗ウサギIgG抗体で標識し、0.5xRoti(登録商標)-Blockブロッキングバッファーで10mU/mlに希釈する。1時間インキュベーション後、膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄する。結合したPODコンジュゲート抗ウサギ抗体の検出のために、膜をLumi-LightPLUSウエスタンブロッティング基質(注文番号2015196, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)とインキュベートし、オートラジオグラフフィルムに曝露する。
PACAPについてのシグナル強度は、20名の異なるLC患者から得た20の腫瘍組織溶解物中16で増加した(図3)。発現レベルは>100ng/mgであった。従って、実施例1においてMALDIで検出した場合の肺癌組織中のPACAPの高いアバンダンスは、ウエスタンブロット解析により確認される。
実施例6
実施例2で作製されたポリクローナル抗体を使用した、ヒト乳房および結腸組織におけるPACAPの検出のためのウエスタンブロット
腫瘍試料および健常対照試料由来の組織溶解物は、実施例1「組織調製」と同様に調製した。
実施例5に記載のようにSDS-PAGEおよびウエスタンブロットを行った。
乳房(mamma)および結腸の両方の癌について、5名の患者の腫瘍および隣接する正常組織を解析した。正常組織と比較して、3つの乳癌および4つの結腸癌でPACAPタンパク質の過剰発現が見られた。発現レベルは試料内で異なり、肺癌よりも全ての乳癌および結腸癌でわずかに低かった。乳癌組織および結腸癌組織におけるPACAPの高いアバンダンスはウエスタンブロット解析により確認した(図4および5)。