JP5186155B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、超音波診断装置に関し、特に、造影剤を利用した画像形成技術に関する。
マイクロバブル(またはナノバブル)は、液体などに注入された微細な気泡を意味している。このマイクロバブルは、様々な優れた特性を備えているため、多くの分野で利用されている。例えば、医療分野への応用として、マイクロバブルが超音波の好適な反射体となることから、超音波画像を取得する際の造影剤として利用されている。造影剤を利用した超音波画像の形成手法としては、例えば、フェーズインバージョン法などが知られている(特許文献1参照)。
一方、マイクロバブルの表面にたんぱく質(抗原、抗体など)や核酸(DNA、RNAなど)を標識する技術が注目を集めている。例えば、マイクロバブルの表面に分子を修飾し、生体の組織内でマイクロバブルを対象細胞に捕捉させ、そのマイクロバブルを介して、組織内の対象細胞の量や組織内における対象細胞の分布などを画像化して診断する技術である。
マイクロバブルを対象細胞に捕捉させて画像化する場合には、例えば捕捉されたマイクロバブルのみを観察するために、対象細胞に捕捉されずに組織内を移動するマイクロバブルと、対象細胞に捕捉された停留しているマイクロバブルとを識別できることが望ましい。こうした要望に応じて、例えば特許文献2には、比較的緩慢に移動するコントラスト剤(停留しているマイクロバブル)から得られる情報を、速く移動するコントラスト剤(移動するマイクロバブル)に対して強調表示する技術が記載されている。
停留しているマイクロバブルと移動するマイクロバブルの識別について、特許文献2には、大別すると3つの手法が示されている。第1の手法は、ドプラの原理に基づくものであり、この手法では例えば信号処理などが複雑になる。第2の手法は、停留するマイクロバブルの非線形振動に伴う発生信号のスペクトラムが基本波帯にシフトすることを利用するものである。また、第3の手法は、停留するマイクロバブルでは振動が限定されて信号強度が弱くなるため、同じ位置からの信号を異なる時刻で検出してその強度の変化を利用するものである。しかし、第2と第3の手法では、検出の感度や精度に問題がある。
ちなみに、停留するマイクロバブルと移動するマイクロバブルとを識別する技術ではないが、特許文献3,4には、同じ位置からの信号を異なる時刻で検出して画像化する技術が示されている。
特開2003−102726号公報 特開2007−90075号公報 特開2002−153462号公報 特開2004−613号公報
このような状況のもと、本願の発明者は、造影剤を利用した超音波による造影技術について研究を重ねてきた。特に、被検体組織の信号成分と造影剤の信号成分を識別し、さらに、停留する造影剤と移動する造影剤を識別する技術について研究を重ねてきた。
本発明は、その研究の過程において成されたものであり、その目的は、被検体組織の信号成分と造影剤の信号成分を適切に識別することにある。また、本発明の他の目的は、停留する造影剤と移動する造影剤を適切に識別することにある。
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である超音波診断装置は、造影剤を投与された被検体に対して超音波を送受波するプローブと、プローブを制御して超音波ビームを走査することにより走査空間内において複数の超音波ビームを形成する送信部と、プローブから得られる信号を処理することにより走査空間内の複数の超音波ビームに対応した複数の受信信号を形成する受信部と、各超音波ビームごとに各受信信号に含まれる造影剤の停留成分と移動成分を識別する識別部と、走査空間内の複数の超音波ビームに対応した複数の受信信号に基づいて、造影剤の停留成分と移動成分が識別された表示画像を形成する画像形成部と、を有し、前記プローブは、各受信信号に含まれる被検体組織の信号成分と造影剤の信号成分のうち、造影剤の信号成分が支配的となる低音圧の超音波を送波することを特徴とする。
望ましい態様において、前記造影剤には造影用のバブルが含まれており、前記識別部は、各受信信号から抽出される高調波成分に含まれるバブルの停留成分と移動成分を識別することを特徴とする。
望ましい態様において、前記送信部は、チャープ信号の波形を備えた送信パルスに基づいてプローブを制御し、前記各受信信号は、当該チャープ信号に対応したパルス圧縮処理を施されることを特徴とする。
望ましい態様において、前記チャープ信号の中心周波数は、前記造影剤に含まれるバブルの共振周波数に応じて設定されることを特徴とする。
望ましい態様において、前記チャープ信号の波形を備えた送信パルスのパルス長に基づいて、前記パルス圧縮処理を施された各受信信号の信号強度が調整されることを特徴とする。これにより、例えば低音圧の送信波形においても、送信パルスのパルス長を長くすることで、受信信号の強度を強めることができる。
望ましい態様において、前記プローブは、前記高調波成分に含まれる被検体組織の2次高調波成分とバブルの2次高調波成分のうち、バブルの2次高調波成分が支配的となるような低音圧の超音波を送波することを特徴とする。
望ましい態様において、前記プローブは、メカニカルインデックス(MI)が0.1以下の低音圧の超音波を送波することを特徴とする。
望ましい態様において、前記送信部は、複数の超音波ビームの各ビーム方向ごとに複数回の送信を行い、前記受信部は、各ビーム方向ごとに複数回の送信に対応した複数の受信信号を形成し、前記識別部は、各ビーム方向ごとに、そのビーム方向に対応した複数の受信信号を加算処理することにより前記停留成分を抽出し、そのビーム方向に対応した複数の受信信号を減算処理することにより前記移動成分を抽出することを特徴とする。
望ましい態様において、前記画像形成部は、前記停留成分の量の時間的な変化を表した表示画像を形成することを特徴とする。
本発明により、被検体組織の信号成分と造影剤の信号成分を適切に識別することが可能になる。さらに、本発明の好適な態様によれば、停留する造影剤と移動する造影剤を適切に識別することが可能になる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1は、その全体構成を示す機能ブロック図である。図1に示す超音波診断装置は、造影用のバブル(マイクロバブルやナノバブルなどの微小気泡)を含んだ造影剤を利用して画像を形成するのに適している。造影剤は、例えば生体内の血管や腫瘍などの診断部位に投与される。そして、造影剤が投与されてから、例えば生体内におけるバブルの集積や取り込みが起こるまでの一定時間が経過した後に、図1に示す超音波診断装置によって診断が行われる。
信号発生器10は、図示しない制御部などによって制御され、送信パルスを形成するための駆動信号を生成して送信回路12へ出力する。本実施形態では、チャープ信号の波形を備えた送信パルスが利用される。信号発生器10は、例えば、中心周波数3.5MHz、開始周波数3MHz、終了周波数4MHz、パルス長20μsecのチャープ信号の波形を備えた送信パルスを出力する。
送信回路12は、信号発生器10から出力された送信パルスに基づいて、プローブ14が備える図示しない複数の振動素子を制御して送信ビームを形成し、形成した送信ビームを電子的に走査することにより、走査領域の全域に亘って複数の送信ビームを形成する。本実施形態においては、複数の送信ビームの各ビーム方向ごとに2回の送信が行われる。つまり、一つのビーム方向に対してチャープ信号波形の送信パルスに基づいて1回目の送信が行われて受信信号を取得した後に、続けてその同じビーム方向に対して同じ波形の送信パルスに基づいて2回目の送信が行われて受信信号が取得される。そして、一つのビーム方向に対して2回の送信が行われた後に、ビーム方向を変えて次のビーム方向に対して2回の送信が行われる。こうして、走査領域の全域に亘って各ビーム方向ごとに2回の送信が実行される。
ちなみに、送信における繰り返しの周波数、つまり同一のビーム方向における1回目の送信と2回目の送信の時間間隔は、血流中などを移動するバブルからのエコー信号による折り返しが生じないように設定することが望ましい。例えば、送信パルスを形成するチャープ信号の中心周波数が3.5MHzであると、後に説明する2次高調波成分が7MHzとなる。そこで、例えば腹部における血流速の60cm/sec程度をバブルの速度と仮定すると、繰り返し間隔を250μsec、繰り返しの周波数(PRF)を4KHzに設定すると折り返しが発生しない。
プローブ14は、造影剤が投与された生体に対して超音波を送受波する。プローブ14は、超音波を送受波する複数の振動素子を備えており、複数の振動素子が送信回路12によって送信制御されて送信ビームが走査される。また、複数の振動素子が生体から反射された超音波を受波し、これにより得られた信号が受信回路16へ出力される。
受信回路16は、プローブ14の複数の振動素子から得られる信号を整相加算処理することにより、走査領域内の複数の送信ビームの各々に対応した受信ビーム信号を形成する。本実施形態においては、複数の送信ビームの各ビーム方向ごとに2回の送信が行われるため、受信回路16は、各ビーム方向ごとに、1回目の送信に対応した1回目の受信ビーム信号と2回目の送信に対応した2回目の受信ビーム信号を形成する。
ローパスフィルタ18は、受信回路16において形成された受信ビーム信号から、基本波成分(基本周波数の成分)を抽出する。基本波成分には、生体内の組織からの反射エコーがバブルからのものよりも優位に含まれている。パルス圧縮処理部20は、ローパスフィルタ18によって抽出された受信ビーム信号の基本波成分に対して、送信時のチャープ信号に応じたパルス圧縮処理を施す。このパルス圧縮処理により、受信ビーム信号(基本波成分)がシャープなパルス信号に変換(圧縮)される。そして、走査領域内の複数の送信ビームの各々に対応した受信ビーム信号(圧縮処理後の基本波成分)のデータが画像メモリ22に記憶される。基本波成分には組織からの反射エコーが優位に含まれているため、画像メモリ22に記憶されたデータは生体内の組織に対応した画像データに相当する。
ハイパスフィルタ24は、受信回路16において形成された受信ビーム信号から、2次高調波成分(第2高調波の成分)を抽出する。2次高調波成分には、バブルからの反射エコーが組織からのものよりも優位に含まれている。パルス圧縮処理部26は、ハイパスフィルタ24によって抽出された受信ビーム信号の2次高調波成分に対して、送信時のチャープ信号に応じたパルス圧縮処理を施す。このパルス圧縮処理により、受信ビーム信号(2次高調波成分)がシャープなパルス信号に変換(圧縮)される。
本実施形態では、複数の送信ビームの各ビーム方向ごとに2回の送信が行われ、各ビーム方向ごとに、1回目の送信に対応した1回目の受信ビーム信号と2回目の送信に対応した2回目の受信ビーム信号が形成される。そこで、パルス圧縮処理部26において、1回目の受信ビーム信号に対してパルス圧縮処理が施されると、その変換後の受信ビーム信号がメモリ28に記憶される。次に、パルス圧縮処理部26において、1回目と同一のビーム方向の2回目の受信ビーム信号に対してパルス圧縮処理が施される。そして、同一のビーム方向についての1回目の受信ビーム信号がメモリ28から出力され、同一のビーム方向についての2回目の受信ビーム信号がパルス圧縮処理部26から出力される。こうして、走査領域の全域に亘って各ビーム方向ごとに1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号の組がメモリ28とパルス圧縮処理部26から次々に出力される。
移動成分抽出部30は、各ビーム方向ごとに受信ビーム信号に含まれるバブルの移動成分を抽出する。ハイパスフィルタ24において抽出された受信ビーム信号の2次高調波成分には、バブルからの反射エコーが組織からのものよりも優位に含まれている。つまり、メモリ28とパルス圧縮処理部26から出力される1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号は、共にバブルからの反射エコーが支配的である。
移動成分抽出部30は、同一ビーム方向の1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号の差分処理(減算処理)を行う。つまり、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号について、同じ深さ(位置)に相当する信号部分同士の差分を算出する。バブルが停留している場合、そのバブルに対応した信号部分は、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号において同じ深さに同じ程度の強度で現れる。そのため、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号の差分を算出することにより、停留するバブルの成分が除去される。これに対し、バブルが移動している場合、そのバブルに対応した信号部分が、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号において同じ深さに同じ程度の強度で現れる可能性は極めて低い。そのため、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号の差分を算出することにより、移動するバブルの成分のみが抽出される。
移動成分抽出部30は、走査領域の全域に亘る複数のビーム方向について、各ビーム方向ごとに、そして各ビーム方向の各深さ(位置)ごとに、移動するバブルの成分を抽出する。こうして抽出された結果が、移動するバブルの画像データとして、画像メモリ34に記憶される。
一方、停留成分抽出部32は、各ビーム方向ごとに受信ビーム信号に含まれるバブルの停留成分を抽出する。停留成分抽出部32は、同一ビーム方向の1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号の加算処理を行う。つまり、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号について、同じ深さ(位置)に相当する信号部分同士を加算する。バブルが停留している場合、そのバブルに対応した信号部分は、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号において同じ深さに同じ程度の強度で現れる。そのため、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号を加算することにより、停留するバブルの成分の信号強度がほぼ2倍となる。これに対し、バブルが移動している場合、そのバブルに対応した信号部分が、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号において同じ深さに同じ程度の強度で現れる可能性は極めて低い。そのため、1回目の受信ビーム信号と2回目の受信ビーム信号を加算しても、信号強度は停留成分ほど大きくならない。
そこで、停留成分抽出部32は、加算処理により停留するバブルの成分が支配的となった受信ビーム信号を、停留するバブルの受信ビーム信号とみなすことにより、停留するバブルの成分を抽出する。なお、加算処理後の受信ビーム信号のうちの信号強度が大きい部分のみを閾値などにより抽出することにより、停留するバブルの成分を抽出してもよい。停留成分抽出部32は、走査領域の全域に亘る複数のビーム方向について、各ビーム方向ごとに、そして各ビーム方向の各深さ(位置)ごとに、停留するバブルの成分を抽出する。こうして抽出された結果が、停留するバブルの画像データとして、画像メモリ36に記憶される。
以上のように、移動成分抽出部30と停留成分抽出部32によって、移動するバブルの成分と停留するバブルの成分が抽出される。つまり、移動成分抽出部30が、停留するバブルからの信号成分を除去するMTIフィルタ(逆Wallフィルタ)に対応した機能を備えており、一方、停留成分抽出部32が、移動するバブルからの信号成分を除去する逆MTIフィルタ(Wallフィルタ)に対応した機能を備えている。
但し、本実施形態においては、受信ビーム信号の周波数解析処理などを必ずしも必要としない。そのため、本実施形態では、ドプラの原理に基づいて移動成分を抽出する手法に比べて、比較的簡易な構成で比較的容易な信号処理により、移動するバブルの成分と停留するバブルの成分を識別することができる。また、本実施形態の上記説明では、各ビーム方向ごとに2回の送信と受信の例を示したが、例えば、各ビーム方向ごとに3回または4回(あるいはそれ以上)の送信と受信を行うことにより、移動するバブルの成分と停留するバブルの成分の識別(弁別)の精度などをさらに向上させてもよい。
図1の説明に戻り、画像合成部38は、画像メモリ22,34,36に記憶された画像データを合成して、バブルの停留成分と移動成分が識別された表示画像を形成する。つまり、画像合成部38は、画像メモリ22に記憶された画像データに基づいて生体内の組織に対応した組織画像(例えばBモード画像)を形成する。さらに、画像合成部38は、画像メモリ34に記憶された画像データに基づいて移動するバブルの画像を形成し、画像メモリ36に記憶された画像データに基づいて停留するバブルの画像を形成する。そして、画像合成部38は、移動するバブルの画像と停留するバブルの画像を組織画像上に合成する。その合成の際には、移動するバブルの画像と停留するバブルの画像に対して、各々に対応した表示処理が施される。形成された表示画像(合成画像)は表示部40に表示される。
図2は、表示部(図1の符号40)に表示される表示画像50を説明するための図である。図2の表示画像50は、血管などの組織を含んだBモード画像52内に、停留するバブル(中抜きされた複数の丸点)と移動するバブル(塗り潰された複数の丸点)を合成したものである。なお、停留するバブルと移動するバブルは、色付け処理により識別表示されてもよい。例えば、移動しているバブルを赤色で表現し、停留しているバブルを青色で表現する。
図2において、移動する複数のバブルは、例えば血管内を流れるバブルである。一方、停留するバブルは、例えば組織などに捕捉されたバブルである。本実施形態では、移動するバブルと停留するバブルを識別した表示画像の他に、停留するバブルの量の時間的な変化を表した時間変化画像56が形成されてもよい。
時間変化画像56は、表示画像50内に設定された関心領域(ROI)54内におけるバブルの量の時間変化を示している。時間変化画像56は、横軸を時間軸として縦軸にバブルの信号強度の積算値を示したグラフである。時間変化画像56から、例えば特定の部分(特定の細胞)に捕捉されるバブルの量の時間変化を観察することができる。なお、関心領域54は、例えばユーザ(観察者)の操作に応じて、観察対象となる所望の位置に設定されることが望ましい。
図2の表示画像50や時間変化画像56により、例えば血管内や組織内に停留しているバブルと血管内を移動しているバブルとが識別表示される。これにより、例えばバブル(微小気泡)の表面に、病変が特異的に発現している蛋白質などの分子を捕捉するための低分子のリガントを標識し、病変特異的に発現している蛋白質などにバブルを集積させて画像化(分子イメージング)することが可能になる。
また、肝細胞内の貧食細胞(クッパー細胞)に捕捉されるバブル(例えばソナゾイド)を利用して間接的にクッパー細胞を画像化してもよい。例えばソナゾイドを利用することにより、転移によって発生した癌細胞ではクッパー細胞がないため、癌細胞の部分のみが表示されない(黒く抜けた)画像を形成することが可能になる。その画像を癌の診断に利用してもよい。
以上に説明したように、本実施形態においては、2次高調波成分にバブルからの反射エコーが優位に含まれていることを利用して、バブルからの信号と組織からの信号を識別している。
組織から発生される高調波信号は、超音波に対する組織の非線形性に基づいており、一般に、組織からの2次高調波は、超音波の音圧の2乗に比例する。一方、バブルからの高調波信号は、バブルの非線形振動に伴って発生する。超音波の音圧が小さくなると、バブルの振動量が減少するため、バブルから発生される2次高調波も減少する。但し、バブルから発生される2次高調波の減少の度合いは、組織から発生される2次高調波の減少の度合いに比べて小さい。そのため、超音波の送信音圧を小さくすることにより、バブルからの2次高調波信号と組織からの2次高調波信号の比であるCTR(Contrast to Tissue Ratio)を向上させることができる。
図3は、シミュレーションによって音圧を小さくした場合のCTRの向上を検討した結果を示す図である。シミュレーションでは、組織伝搬中の非線形信号の発生をKZK方程式で、バブルの振動モデルをへリング(Herring)の方程式を用い、数値計算によって解析した。解析の条件は、バブルの直径2μm、送信パルスを形成するチャープ信号として、開始周波数3MHz、終了周波数4MHz、パルス長2μsecの信号を利用した。また、送信音圧を300KPaと30KPaの2種類、振動子径1.3cm、フォーカス深さ7cmとした。この条件で、メカニカルインデックス(MI値)は、フォーカスでの波形より、300KPaの送信音圧時MI=0.32、30KPaでMI=0.042となった。
図3(a)は、MI=0.32におけるバブルからの2次高調波(パルス圧縮処理後)を示している。同様に、図3(b)は、MI=0.32における組織からの2次高調波(パルス圧縮処理後)を示している。このとき、組織からの反射係数を、バブルからの信号と同じ振幅(CTR=1)となるように仮定した。この高い音圧での反射係数の条件を用いて、音圧を300KPaから30KPa、すなわちMIを0.32から0.042にした場合のバブルと組織からの信号比(CTR)を算出した。
図3(c)は、バブルからの信号波形を示しており、図3(d)は、組織からの信号を示したものである。なお、図3(c)と(d)において縦軸は同じスケールである。このとき、バブルと組織からの信号比CTRは、7.76となり、MI=0.32の場合に比べて17.8dB向上した。
このように、送信音圧を小さくすることによりCTRを向上させることができるが、バブルからの信号自体は減少する。上記の解析条件では、バブルからの信号強度は、MI=0.32のときに比べて約20dB小さくなった。そのため、本実施形態ではパルス圧縮処理を利用している。パルス圧縮処理では、送信パルスのパルス長を長くすることにより、パルス圧縮処理後の信号の強度を増強することができる。シミュレーションでは、パルス長2μsecから8μsecとすることにより、信号強度が3.6dB増強された。
以上の解析から、パルス圧縮処理を利用してMI=0.1以下の低い音圧の長い送信波形を用いることにより、バブルからの信号を効率よく抽出できることが分かる。ちなみに、クッパー細胞に捕捉されるソナゾイドを最適な感度で画像化するためのMIは、0.2〜0.4程度と言われている。しかし、この範囲のMIに対応した超音波の音圧でも、ある程度のソナゾイドは消失してしまう。これに対し、MI=0.1以下の低い音圧を利用することにより、ソナゾイドの消失(破裂)を極力少なくすることが可能になる。また、バブルに対して送波される超音波の送信周波数、例えば本実施形態におけるチャープ信号の中心周波数は、バブルの共振周波数と同じ程度から、それ以下の範囲であることが望ましい。
図4は、造影剤の音響特性を示す図であり、直径2.5μmのマイクロバブルについてのシミュレーションによって得られた音響特性グラフを示している。図4のグラフにおいて、横軸は超音波の送信周波数である。また、縦軸に示す「対組織信号規格化第2高調波量」は、高調波レベルに相当する。なお、図4のグラフ内には、Pa=100,200,300,400(単位KPa)の各送信音圧についての結果が示されている。
図4に示すグラフにおいては、共振周波数が2.5MHz程度となっている。そして、2.5MHz程度以下の範囲においては、2.5MHz程度より大きい場合に比べて、高調波レベルの減衰が比較的小さい。つまり、超音波の送信周波数が、バブルの共振周波数と同じ程度からそれ以下の範囲では、比較的高い高調波レベルを維持することができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。ちなみに、本実施形態において、バブルの直径は例えば0.2〜15μmであることが望ましい。また、複数のバブルの粒径分布が揃っていることが望ましい。例えば、一定以上の大きさのバブルが取り除かれることが望ましい。また、チャープ信号に換えて他のコード化された信号を利用してもよい。なお、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示す機能ブロック図である。 表示部に表示される表示画像を説明するための図である。 音圧を小さくした場合のCTRの向上を検討した結果を示す図である。 造影剤の音響特性を示す図である。
符号の説明
12 送信回路、14 プローブ、16 受信回路、18 ローパスフィルタ、24 ハイパスフィルタ、30 移動成分抽出部、32 停留成分抽出部、38 画像合成部。

Claims (9)

  1. 造影剤を投与された被検体に対して超音波を送受波するプローブと、
    プローブを制御して超音波ビームを走査することにより走査空間内において複数の超音波ビームを形成する送信部と、
    プローブから得られる信号を処理することにより走査空間内の複数の超音波ビームに対応した複数の受信信号を形成する受信部と、
    各超音波ビームごとに各受信信号に含まれる造影剤の停留成分と移動成分を識別する識別部と、
    走査空間内の複数の超音波ビームに対応した複数の受信信号に基づいて、造影剤の停留成分と移動成分が識別された表示画像を形成する画像形成部と、
    を有し
    前記送信部は、複数の超音波ビームの各ビーム方向ごとに複数回の送信を行い、
    前記受信部は、各ビーム方向ごとに複数回の送信に対応した複数の受信信号を形成し、
    前記識別部は、各ビーム方向ごとに、そのビーム方向に対応した複数の受信信号を加算処理することにより前記停留成分を抽出し、そのビーム方向に対応した複数の受信信号を減算処理することにより前記移動成分を抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 請求項1に記載の超音波診断装置において、
    前記造影剤には造影用のバブルが含まれており、
    前記識別部は、各受信信号から抽出される高調波成分に含まれるバブルの停留成分と移動成分を識別する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  3. 請求項2に記載の超音波診断装置において、
    前記送信部は、チャープ信号の波形を備えた送信パルスに基づいてプローブを制御し、
    前記各受信信号は、当該チャープ信号に対応したパルス圧縮処理を施される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  4. 請求項3に記載の超音波診断装置において、
    前記チャープ信号の中心周波数は、前記造影剤に含まれるバブルの共振周波数に応じて設定される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  5. 請求項3または4に記載の超音波診断装置において、
    前記チャープ信号の波形を備えた送信パルスのパルス長に基づいて、前記パルス圧縮処理を施された各受信信号の信号強度が調整される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  6. 請求項2から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
    前記プローブは、前記高調波成分に含まれる被検体組織の2次高調波成分とバブルの2次高調波成分のうち、バブルの2次高調波成分が支配的となるような低音圧の超音波を送波する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  7. 請求項6に記載の超音波診断装置において、
    前記プローブは、メカニカルインデックス(MI)が0.1以下の低音圧の超音波を送波する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  8. 請求項3に記載の超音波診断装置において、
    前記チャープ信号の中心周波数は、前記造影剤に含まれるバブルの共振周波数以下に設定される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
    前記画像形成部は、前記停留成分の量の時間的な変化を表した表示画像を形成する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
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