JP5229936B2 - 金属基複合材の製造方法及び金属基複合材 - Google Patents

金属基複合材の製造方法及び金属基複合材 Download PDF

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本発明は、特に多様な構造を持つ微細な炭素シートの筒状積層体から成る微細な炭素繊維から構成される炭素繊維構造体を含有させた炭素繊維構造体含有プリフォームを用いた金属基複合材の製造方法及び金属基複合材に係り、更に詳細には、有機バインダーを用いて製造した炭素繊維構造体含有プリフォームを用いた金属基複合材の製造方法及びその製造方法により製造された金属基複合材に関する。
従来から、鋳造法によって金属基複合材を作製する場合には、溶湯を含浸させ易いように予め繊維や粒子等の強化材のプリフォームを成形する技術が知られている。
また、強化繊維とマトリックス金属との濡れ性が悪い組合せ(強化繊維にカーボン、マトリックス金属にアルミニウムを選択する場合など)の場合、プリフォームに溶湯を注いだ後に圧力を付与して複合化する技術、いわゆる溶湯鍛造法が広く知られている。この溶湯鍛造法は、溶湯を短時間で凝固させるため、合金組織が緻密であり、鋳巣の無い鋳造物を作製することができ、比較的量産性に優れることが知られている(特許文献1参照。)。
特開昭61−137624号公報
これに対して、本発明者らは、2005年7月8日付けの特許出願にて、金属基複合材を製造するときに、用いるカーボンナノチューブ含有プリフォームを製造するに際し、無機バインダーと強化繊維を用いた製造方法を提案している(特許文献2参照。)。
上記方法は、カーボンナノチューブ含有プリフォームが溶湯から受ける圧力により圧縮変形するのを抑制するためのホウ酸アルミニウムをはじめとする強化材と、カーボンナノチューブ同士及びカーボンナノチューブと強化繊維とを結合させるための無機バインダーと、を添加することなどにより、溶湯鍛造時の圧縮変形を抑制している。
特開2007−16286号公報
これら金属基複合材に用いられるカーボンナノチューブとしては、炭素原子が網状に結合したシート(グラフェンシート)一層が筒状になったシングルカーボンナノチューブ(SWNT)やグラフェンシートの筒が何層も入れ子状に積層した多層型カーボンナノチューブ(MWNT)が知られている。カーボンナノチューブは直径とシートの巻き方の幾何学形状がカイラル指数によって決定され、カイラル指数によって金属や半導体の性質を示すという特異な電気的性質とともに、化学的、機械的及び熱的に安定した性質を持つ物質である。従って、例えば、各種樹脂、セラミック、金属等の固体材料に、このようなカーボンナノ構造体を分散配合することにより、上記したような物性を生かすことができれば、その添加剤としての用途が期待されることとなる。
しかしながら、特許文献2に係る金属基複合材は、従来の金属基複合材に比して優れた熱伝導特性を有するものであるが、カーボンナノチューブ含有プリフォームを製造する際には溶湯鍛造法での溶湯を含浸させる圧力を考慮して、ホウ酸アルミニウムなどの強化材や無機バインダーを用いているため、強化材の熱伝導率がカーボンナノチューブより低いことなどの理由からカーボンナノチューブを用いることによって本来得られる効果が十分に得られていないことが判明した。
また、通常、カーボンナノチューブは、生成時点で既に塊となってしまうことが知られており、嵩密度の高いカーボンナノチューブをそのまま使用してプリフォームを作製すると、プリフォームに溶湯を注いで圧力を付与し複合化する際に、マトリックス合金が十分に含浸せず、合金組織の緻密さを損なわせるおそれがあった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、炭素繊維構造体含有プリフォームを用いた優れた熱伝導特性を有する金属基複合材の製造方法及びその製造方法により製造された金属基複合材を提供することを主たる課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、熱伝導性に優れた炭素繊維構造体含有プリフォームを用いた金属基複合材を得るためには、金属基複合材を製造するときに用いるバインダーを有機バインダーとすること、並びに、可能な限り微細な炭素繊維が一本一本ばらばらになることなく互いに強固に結合した構造体であって、当該構造体が、溶湯を含浸させるための空隙を有し、当該構造体を構成する炭素繊維一本一本が欠陥の少ないものを用いること、を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の金属基複合材の製造方法は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、該懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、該混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、該圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、該硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持した後、室温まで徐冷することを特徴とする。
また、本発明の金属基複合材の製造方法は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、該懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、該混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、該圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、該硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持した後、150℃より低い温度まで徐冷し、更に、150℃より高い温度に昇温し、保持した後、150℃より低い温度まで徐冷する処理を1回以上行った後、室温まで徐冷することを特徴とする。
更に、本発明の金属基複合材の製造方法は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、該懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、該混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、該圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、該硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI /I が0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、室温まで徐冷することを特徴とする。
また、本発明の金属基複合材の製造方法は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、該懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、該混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、該圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、該硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI /I が0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、150℃より低い温度まで徐冷し、更に、150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、150℃より低い温度まで徐冷する処理を1回以上行った後、室温まで徐冷することを特徴とする
更に、本発明の金属基複合材は、上記本発明の金属基複合材の製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
本発明においては、炭素繊維構造体含有プリフォームを用いた金属基複合材を製造するに際し、含浸圧を考慮して添加するバインダーを有機バインダーとしたので、硬化処理する際に、有機バインダーが炭化して、炭素繊維構造体と同質のものとなるため、強化材たるバインダーの熱伝導率が炭素繊維構造体と比して低いものとなる等の不利益を解消することができ、更に、本発明においては、炭素繊維構造体含有プリフォームが、3次元ネットワーク状に配された微細径の炭素繊維が、該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって互いに強固に結合され、該粒状部から該炭素繊維が複数延出する形状を有する炭素繊維構造体を用いており、且つ、プリフォームに含有される当該炭素繊維構造体のラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下であるため、優れた熱伝導特性を有する炭素繊維構造体含有プリフォームを用いた金属基複合材の製造方法及びその製造方法により製造された金属基複合材を提供することができる。
以下、炭素繊維構造体含有プリフォームについて説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、含有量などの「%」については、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述の如く、炭素繊維構造体含有プリフォームは、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体、有機バインダー及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、その懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、その混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、その圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、その硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造されるものである。
このような構成とすることにより、溶湯鍛造する際の溶湯の含浸開始圧力に耐え得る強度を示すものとなる。また、これを用いた金属基複合材は優れた熱伝導特性を有するものとなる。
また、工程(2)における懸濁液の乾燥に際し、分散媒を完全に蒸発させずに残存させることが望ましい。
これを用いて得られる金属基複合材は、より熱伝導性に優れたものとなるからである。また、得られる炭素繊維構造体含有プリフォームにおいて、強度がより優れたものとなるからである。
更に、工程(4)における圧縮成形体の硬化処理に際し、その圧縮成形体の外形が変化しないようにすることが望ましい。
このようにして得られる炭素繊維構造体含有プリフォームにおいては、強度が更に優れたものとなる。
なお、圧縮成形体の外形が変化しないよう維持するためには、例えば硬化処理に伴う膨張などを抑制ないし防止するように、型で固定したり、加圧するなどすればよい。
ここで、用いる各原料について詳細に説明する。
まず、分散媒について詳細に説明する。分散媒としては、詳しくは後述する炭素繊維構造体と有機バインダーとを均一となるように分散させ得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば有機溶媒を好適例として挙げることができる。
このような有機溶媒としては、メタノールやプロパノール、エタノールなどのアルコール、ベンゼンやトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、これらは適宜混合して用いてもよい。
なお、このような有機溶媒は、有機バインダーを溶解するものである必要はない。
次に、有機バインダーについて詳細に説明する。有機バインダーとしては、詳しくは後述する工程(5)の焼成によって炭化されて炭素繊維同士を結合し、且つ工程(4)において硬化し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えばフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を好適例として挙げることができる。
次に、炭素繊維構造体について詳細に説明する。
素繊維構造体が、図1の走査型電子顕微鏡(SEM)写真又は図2(a)及び(b)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真に示すように、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合するチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であることが望ましい。
このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、金属、樹脂等を含浸させる際も、当該構造体を保持した状態で、プリフォームを形成しているため、含浸させる圧力によっても炭素繊維がプリフォームの形態を保持することができ、金属マトリックスに配した場合に当該構造体が炭素繊維単体として分散されることなく、構造体のまま金属マトリックス中に分散配合することができる。また、炭素繊維の成長過程において形成された粒状部によって炭素繊維同士が互いに結合されていることから、その構造体自体の熱伝導特性も非常に優れたものとなる。
また、本発明に用いる炭素繊維構造体は、プリフォームを形成する際において、高い熱伝導性を有する上から、炭素繊維を構成するグラフェンシート中における欠陥が少ないことが望ましく、具体的には、例えば、プリフォーム焼成後のラマン分光分析法で測定されるI/I比が、0.2以下であ、0.1以下であることがより好ましい。ここで、ラマン分光分析では、大きな単結晶の黒鉛では1580cm−1付近のピーク(Gバンド)しか現れない。結晶が有限の微小サイズであることや格子欠陥により、1360cm−1付近にピーク(Dバンド)が出現する。このため、DバンドとGバンドの強度比(R=I1360/I1580=I/I)が上記したように所定値以下であると、グラフェンシート中における欠陥量が少ないことが認められるためである。
更に、炭素繊維構造体を構成する多層型カーボンナノチューブは、チューブの長手方向に対する軸直交断面の最大径が15〜100nmであることが望ましい。
炭素繊維構造体を構成する多層型カーボンナノチューブの外径を、15〜100nmの範囲のものとするのは、外径が15nm未満であると、後述するように炭素繊維の断面が多角形状とならず、一方、炭素繊維の物性上直径が小さいほど単位量あたりの本数が増えるとともに、炭素繊維の軸方向への長さも長くなり、高い導電性が得られるため、100nmを超える外径を有することは、金属等のマトリックスへ改質剤、添加剤として配される炭素繊維構造体として適当でないためである。なお、多層型カーボンナノチューブの外径としては特に、20〜70nmの範囲内にあることが、より望ましい。この外径範囲のもので、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層したもの、すなわち多層であるものは、曲がりにくく、弾性、すなわち変形後も元の形状に戻ろうとする性質が付与されるため、炭素繊維構造体が一旦圧縮された後においても、樹脂等のマトリックスに配された後において、疎な構造を採りやすくなる。なお、2400℃以上でアニール処理すると、積層したグラフェンシートの面間隔が狭まり真密度が1.89g/cmから2.1g/cmに増加するとともに、炭素繊維の軸直交断面が多角形状となり、この構造の炭素繊維は、積層方向及び炭素繊維を構成する筒状のグラフェンシートの面方向の両方において緻密で欠陥の少ないものとなるため、曲げ剛性(EI)が向上する。
加えて、該微細炭素繊維は、その外径が軸方向に沿って変化するものであることが望ましい。このように炭素繊維の外径が軸方向に沿って一定でなく、変化するものであると、金属等のマトリックス中において当該炭素繊維に一種のアンカー効果が生じるものと思われ、マトリックス中における移動が生じにくく分散安定性が高まるものとなる。
また、本発明に用いる炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜100μm程度であることが望ましい。ここで面積基準の円相当平均径とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を、適当な画像解析ソフトウェア、例えばWinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。
複合化される金属等のマトリックス材の種類によっても左右されるため、全ての場合において適用されるわけではないが、この円相当平均径は、金属等のマトリックス中に配合された場合における当該炭素繊維構造体の最長の長さを決める要因となるものであり、概して、円相当平均径が50μm未満であると、導電性が十分に発揮されないおそれがあり、一方、100μmを超えるものであると、例えば、マトリックス中へ配合する際に大きな粘度上昇が起こり混合分散が困難又は成形性が劣化するおそれがあるためである。
更に、本発明に用いる炭素繊維構造体は、上記したように、3次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から該炭素繊維が複数延出する形状を呈しており、このため当該構造体は炭素繊維が疎に存在した嵩高な構造を有するが、具体的には、例えば、その嵩密度が0.0001〜0.05g/cmであることが好ましく、0.001〜0.02g/cmであることがより好ましい。嵩密度が0.05g/cmを超えるものであると、少量添加によって、金属マトリックスの物性を改善することが難しくなるためである。
上記したような形状を有する炭素繊維構造体は、特に限定されるものではないが、例えば、次のようにして調製することができる。
基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して繊維構造体(以下、「中間体」という。)を得、これをさらに高温熱処理する。
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素(CO)、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、本発明に用いる繊維構造体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様も含むものである。
雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属又はフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と、硫黄やチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物との混合物を使用する。
図3のSEM写真又は図4のTEM写真に示す中間体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素及び触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、上記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cmから数十cmの大きさの集合体を合成する。
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしながら、本発明に用いる炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる。例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。もちろん、このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受ける。また、上記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度及びガス温度等によっても影響受けるが、概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長する一方で、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長方向を一定方向とすることなく、制御下に多方向として、本発明に用いるもののような三次元構造を形成することができるのである。
なお、生成する中間体において、繊維相互が粒状体により結合された上記したような三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、及びガス温度等を最適化することが望ましい。
触媒及び炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の一定温度で加熱生成して得られた中間体は、炭素原子から成るパッチ状のシート片を貼り合わせたような(生焼け状態の、不完全な)構造を有し、ラマン分光分析をすると、Dバンドが非常に大きく、欠陥が多い。また、生成した中間体は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分及び触媒金属を含んでいる。
従って、このような中間体からこれら残留物を除去し、欠陥が少ない上記の炭素繊維構造体を得るために、適切な方法で2400〜3000℃の高温熱処理する。即ち、例えば、この中間体を800〜1200℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去した後、2400〜3000℃の高温でアニール処理することによって所期の構造体を調製し、同時に繊維に含まれる触媒金属を蒸発させて除去する。
なお、この際、物質構造を保護するために不活性ガス雰囲気中に還元ガスや微量の一酸化炭素ガスを添加してもよい。
上記中間体を2400〜3000℃の範囲の温度でアニール処理すると、炭素原子から成るパッチ状のシート片は、それぞれ結合して複数のグラフェンシート状の層を形成する。
また、このような高温熱処理前若しくは処理後において、炭素繊維構造体の円相当平均径を数cmに解砕処理する工程と、解砕処理された炭素繊維構造体の円相当平均径を50〜100μmに粉砕処理する工程とを経ることで、所望の円相当平均径を有する炭素繊維構造体を得る。なお、解砕処理を経ることなく、粉砕処理を行ってもよい。
また、本発明に用いる炭素繊維構造体を複数有する集合体を、使いやすい形、大きさ、嵩密度に造粒する処理を行ってもよい。さらに好ましくは、反応時に形成された上記構造を有効に活用するために、嵩密度が低い状態(繊維が極力伸びきった状態且つ空隙率が大きい状態)で、アニール処理すると更に金属への導電性付与に効果的である。
次に、炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法について説明する。
上述の如く、炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法は、成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状をなしラマン分光分析法で測定されるI/Iが0.2以下である炭素繊維構造体、有機バインダー及び分散媒を混合して懸濁液を得る工程(1)と、その懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、その混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、その圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、その硬化圧縮成形体を焼成して炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、を含む。
このような構成とすることにより、優れた強度、即ち溶湯鍛造する際の溶湯の含浸開始圧力に耐え得る強度を示す炭素繊維構造体含有プリフォームを得ることができる。また、これを用いた金属基複合材は熱伝導特性に優れたものとなる。
また、上記工程(1)における炭素繊維構造体、有機バインダー及び分散媒の混合に際し、得られる炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、炭素繊維構造体及び有機バインダーを、それぞれ10体積%以上及び25体積%以上となるように添加することが好ましい。
ここで、「得られる炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、25体積%以上となるように有機バインダーを添加する」と記載したが、炭素繊維構造体含有プリフォームに有機バインダーが含まれていることを意味するものではない。なお、得られる炭素繊維構造体含有プリフォームは、工程(3)で得られる圧縮成形体とほぼ全体積が同じである。
そして、炭素繊維構造体の添加量は得られる炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、10〜80体積%であることが好ましい。また、有機バインダーの添加量は、得られる炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、25〜75体積%であることがより好ましく、25〜50体積%であることが更に好ましく、25〜30体積%であることが特に好ましい。
炭素繊維構造体の添加量が10体積%未満の場合には、プリフォームとしての強度が十分でないため、溶湯鍛造時にプリフォームが変形してしまうことがある。
また、有機バインダーの添加量が25体積%未満の場合には、炭素繊維構造体同士の結合力が十分でないため、乾燥時にプリフォームにクラックが生じることがある。
更に、工程(2)における混合物の乾燥に際し、分散媒を完全に蒸発させずに、残存させることが望ましい。
このようにして得られる混合物は、工程(3)において圧縮成形体を作製するときの圧縮成形性に優れたものとなると共に、より優れた強度を示す炭素繊維構造体含有プリフォームを得ることができる。また、これを用いた金属基複合材は熱伝導特性がより優れたものとなる。
更にまた、工程(4)における圧縮成形体の硬化処理に際し、その圧縮成形体の外形が変化しないよう、外形を維持した状態にすることが望ましい。
このようにして得られる炭素繊維構造体含有プリフォームは更に優れた強度を示すものとなる。
なお、圧縮成形体の外形が変化しないようにするには、例えば硬化処理に伴う膨張などを抑制ないし防止するように、型で固定したり、加圧するなどすればよい。例えばホットプレスを適用することもできる。
次に、金属基複合材について説明する。
上述の如く、金属基複合材は、上記炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化して成るものである。
このような構成とすることにより、熱伝導特性に優れたものとなる。
ここで、金属基複合材に用いるマトリックス金属としては、特に限定されるものではないが、通常のアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)などを含む軽金属を適用することができる。また、本発明の金属基複合材についても同様のマトリックス金属を適用することができる。
例えばAlを含む軽金属としては、Al金属単体でもよいが、融点を下げて溶融金属の流動性を向上させる効果のある、即ち加圧鋳造法における含浸工程の含浸抵抗を低下させる効果のあるケイ素(Si)を適量添加したAl合金が望ましく、ケイ素(Si)の含有量が1〜15%であるAl合金が特に好ましい。
その他マトリックス金属の強度や耐熱性を向上させるマグネシウム(Mg)や銅(Cu)、ニッケル(Ni)を適宜添加したAl合金も望ましい。
また、例えばMgを含む軽金属としては、Mg金属単体でもよいが、鋳造性や強度、耐熱性を向上させる効果のある亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、希土類元素(RE)を添加したMg合金を挙げることができる。
なお、希土類元素としては、特に限定されるものではないが、典型的にはセリウム(Ce)やランタン(La)を主成分とするミッシュメタルが挙げれる。
そして、マトリックス金属は、主たる合金元素として、Si、Mg、Cu又はNi、及びこれらの任意の組合わせに係る合金元素を含むAl合金や、主たる合金元素として、Zn、Al、Ca、Mn、Si、Zr又はRE、及びこれらの任意の組合わせに係る合金元素を含むMg合金などを代表的なものとして挙げることができる。
次に、本発明の金属基複合材の製造方法について説明する。
上述の如く、本発明の金属基複合材の製造方法は、上記炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したマトリックス金属を含浸させ、固化し、次の工程(1)〜(4)のうちいずれかを行う金属基複合材の製造方法である。
(1)多層型カーボンナノチューブ近傍のアルミニウムを引張方向に降伏させ得る応力を発生する温度Tσである150℃より高い温度に昇温し、保持した後、室温まで徐冷する。
(2)150℃より高い温度に昇温し、保持した後、150℃より低い温度まで徐冷し、更に、150℃より高い温度に昇温し、保持した後、150℃より低い温度まで徐冷する処理を1回以上行った後、室温まで徐冷する。
(3)150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、室温まで徐冷する。
(4)150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、150℃より低い温度まで徐冷し、更に、150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、150℃より低い温度まで徐冷する処理を1回以上行った後、室温まで徐冷する。
このような温度Tσをまたぐような熱処理方法とすることにより、熱伝導特性に優れたものを得ることができる。また、高温(マトリックス金属がAlの場合では、約150℃以上である。)における熱膨張係数の増加の抑制能、換言すれば寸法変化の抑制能が向上したものを得ることができる。
多層型カーボンナノチューブ近傍のアルミニウムを引張方向に降伏させ得る応力を発生する温度Tσである150℃を基準として上述のような熱処理を施すと、金属基複合材の作製時に多層型カーボンナノチューブ近傍のアルミニウムに局所的に導入される圧縮塑性歪が、温度Tσ付近で急激に緩和されるため、残留応力は急激に減少する。
従って、温度Tσ以上に昇温し、ある温度で保持する熱処理より、温度Tσより高い温度に昇温し、保持した後又は保持することなく、温度Tσより低い温度まで徐冷する処理を繰り返す熱処理の方が、残留応力をより効果的に緩和させることができ、より少ない熱エネルギーで残留応力を緩和することが可能になる。
ここで、「温度Tσ」とは、上述したように多層型カーボンナノチューブ近傍のマトリックス金属を引張方向に降伏させ得る応力を発生する温度であるが、例えば、上述のような金属基複合材の熱膨張係数を測定した場合に、測定開始温度〜50℃程度の低温領域における熱膨張係数と比較し、増加し始める温度と定義している。この規定によると、例えばマトリックス金属がアルミニウムの場合には、Tσは150℃程度になる。
また、「徐冷」とは、冷却によって複合材に歪みが導入されない程度の降温速度による冷却であり、その降温速度は、例えば5℃/分とすればよいが、これに限定されるものではない。
なお、マトリックス金属としては、上述したものを同様に適用することができる。
次に、本発明の金属基複合材について説明する。
上述の如く、本発明の金属基複合材は、上記本発明の金属基複合材の製造方法により製造されたものである。
このような構成とすることにより、熱伝導特性に優れたものとなる。また、高温(マトリックス金属がAlの場合は、約150℃以上である。)における熱膨張係数の増加の抑制能、換言すれば寸法変化の抑制能を向上させることができる。
ここで、マトリックス金属としては、上述したものを同様に適用することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1
図5は、炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、炭素繊維構造体(多層型カーボンナノチューブの長手方向に対する軸直交断面の平均径:50nm)と、有機バインダーとしてのフェノール樹脂と、分散媒としてのメタノールを用意した。
次に、メタノール中に、得ようとする炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、炭素繊維構造体を15体積%となるように、更にフェノール樹脂を7.5体積%となるように添加し、約5分間撹拌混合して、懸濁液を得た。
次に、得られた懸濁液を乾燥炉において、大気中、70℃で、1時間乾燥させて、混合物を得た。
次に、得られた混合物を図6に示すような内径40mmの成形型を用いて、図7に示すような圧縮成形体(直径40mm、厚み6mm)を得た。なお、図6は、用いた成形型の断面図であり、同図に示すように、成形型10は、ダイ11と下パンチ12と上パンチ13から構成される。また、図7は、得られた圧縮成形体の上面図(a)及び側面図(b)である。
次に、得られた圧縮成形体を乾燥炉において、大気中、150℃で、10分間熱処理し、フェノール樹脂を硬化(硬化処理)させ、硬化圧縮成形体を得た。
次に、硬化圧縮成形体を焼成炉において、Ar中、2500℃で、20分間焼成して、本例の炭素繊維構造体含有プリフォームを得た。
参考例2
混合物を得るに当たり、得られた懸濁液を乾燥炉において、大気中、40℃で、20分間乾燥させて、混合物(メタノールを含有している。)を得た以外は、参考例1と同様の操作を繰り返して、本例の炭素繊維構造体含有プリフォームを得た。
参考例3
混合物を得るに当たり、得られた懸濁液を乾燥炉において、大気中、40℃で、20分間乾燥させて、混合物(メタノールを含有している。)を得、硬化圧縮成形体を得るに当たり、得られた圧縮成形体の外形が変化しないように型で固定して、大気中、150℃で、10分間熱処理し、フェノール樹脂を硬化(硬化処理)させ、硬化圧縮成形体を得た以外は、参考例1と同様の操作を繰り返して、本例の炭素繊維構造体含有プリフォームを得た。
(比較例1)
図8は、比較例1の炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、参考例1と同様の炭素繊維構造体と、強化材としてのホウ酸アルミニウムウィスカ(四国化成製、商品名:アルボレックス)と、無機バインダーとしてのシリカゾルと、分散媒としての純水/エタノールの混合液を用意した。一方で、凝集剤としてのアクリル系凝集剤と、PH調整剤としてのアンモニアを更に用意した。
純水とエタノールの混合液中に、得ようとする炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、炭素繊維構造体を15体積%となるように、更にホウ酸アルミニウムを15体積%となるように添加し、次いで、シリカゾルを添加し、次いで、アクリル系凝集剤を添加し、次いで、アンモニアを添加してPHを9〜10に調整し、次いで、撹拌混合し、次いで、これをろ過してフィルタを介して脱水し、更に、自然乾燥させ、しかる後、成形して、グリーン体を得た。
得られたグリーン体を窒素雰囲気下、1000℃で、1時間焼成して、本例の炭素繊維構造体含有プリフォームを得た。
[性能評価]
(強度評価)
上記各例の炭素繊維構造体含有プリフォームを用いて、圧縮試験を行い、座屈強度を測定した。得られた結果を表1に示す。表1中の座屈強度評価において、「◎」は予想される溶湯の含浸開始圧力より座屈強度が著しく高いこと、「○」は予想される溶湯の含浸開始圧力より高いこと、「△」は予想される溶湯の含浸開始圧力より座屈強度が若干高いこと、を示す。
(熱伝導特性評価)
上記各例の炭素繊維構造体含有プリフォームを用いて、これを加熱(予熱温度:700℃)した後、マトリックス金属としてのAl金属単体(JIS‐H 4000で規定されるA1050P)を用いて、溶湯鍛造(鋳込み温度:700〜750℃、加圧力:80〜100MPa)することにより、各例の金属基複合材(インゴット)を得た。
得られたインゴットから試験片を切り出し、熱伝導率を測定し、加圧鋳造した鋳物の非複合化部から切り出した試験片の熱伝導率と比較して向上効果を判断した。得られた結果を表1に併記する。表1中の熱伝導特性評価において、「◎」は効果が著しく大きいこと、「△」は若干の効果があったこと、を示す。
Figure 0005229936
表1から、参考例1〜3は、比較例1より座屈強度が著しく高いことが分かる。
したがって、強化材を添加せずとも予想される含浸開始圧力より座屈強度が高い炭素繊維構造体含有プリフォームを製造することができることが分かる。
また、参考例1〜3に係るプリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化して得られた金属基複合材は、比較例1に係るプリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化して得られた金属基複合材より熱伝導率が著しく高く、熱伝導特性が優れていることが分かる。
現時点においては、座屈強度や熱伝導特性の観点から、参考例2及び3が最も良好な結果をもたらすものと思われる。
(熱膨張特性評価1)
参考例3の炭素繊維構造体含有プリフォームを用い、熱伝導特性評価の場合と同様の方法により金属基複合材を作製し、これらをJIS Z 2285に定められた試験片形状に加工した。更に、各熱処理(図9参照。)を施した。
得られた試験片の0〜300℃における熱膨張係数を測定した。得られた結果を図9に示す。
なお、同図には、比較のために、アルミニウムマトリックスの結果も追加してある。
また、同図中の「1h熱処理材」とは、300℃で1時間の熱処理を施したものを意味しており、「4h熱処理材」とは、300℃で4時間の熱処理を施したものを意味している。
同図から明らかなように、アルミニウムマトリックスでは熱処理が熱膨張に影響を与えないが、アルミニウム基複合材では、熱処理により、150〜300℃の範囲における熱膨張が抑制されている。
また、上記範囲における熱膨張係数を熱処理時間別にまとめると表2のようになる。
Figure 0005229936
なお、表2中の「◎」はアルミニウムマトリックスの未処理材と比較して熱膨張係数の増加を著しく抑制したこと、「○」は熱膨張係数の増加を抑制したこと、「△」は熱膨張係数の増加を少し抑制したことを示す。
(熱膨張特性評価2)
参考例3の炭素繊維構造体含有プリフォームを用い、熱伝導特性評価の場合と同様の方法により金属基複合材を作製し、これらをJIS Z 2285に定められた試験片形状に加工した。
また、加工した試験片の一種につき、300℃まで昇温(5℃/分)し、4時間保持(上記熱膨張特性評価1の「4h熱処理材」と同様の熱処理)した後、室温まで徐冷(5℃/分)する熱処理方法(1)を施した。
一方、加工した試験片の他種につき、300℃まで昇温(5℃/分)し、保持することなく室温まで徐冷(5℃/分)する工程を3回繰り返す熱処理方法(2)を施した。
得られた試験片の0〜300℃における熱膨張係数を測定した。測定した結果と熱処理に要した熱エネルギーを表3に示す。
なお、表3中の「◎」はアルミニウムマトリックスの未処理材と比較して熱膨張係数の増加を著しく抑制したこと、「○」は熱膨張係数の増加を抑制したことを示す。
Figure 0005229936
表3から明らかなように、熱処理方法(1)及び熱処理方法(2)により得られる金属基複合材の熱膨張特性についてはほぼ同等であるが、熱エネルギーの消費量は熱処理方法(2)の方が少ないことが分かる。
本発明に用いる炭素繊維構造体のSEM写真である。 本発明に用いる炭素繊維構造体のTEM写真(a)及び(b)である。 本発明に用いる炭素繊維構造体の中間体のSEM写真である。 本発明に用いる炭素繊維構造体の中間体のTEM写真である。 素繊維構造体含有プリフォームの製造方法の一例を示すフローチャートである。 参考例1において用いた成形型を示す断面図である。 参考例1において得られた圧縮成形体を示す上面図(a)及び側面図(b)である。 比較例1の炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法を示すフローチャートである。 各試験片の熱膨張係数測定結果を示すグラフである。
符号の説明
10 成形型
11 ダイ
12 下パンチ
13 上パンチ

Claims (10)

  1. 成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、
    上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、
    上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、
    上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、
    上記硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI /I が0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、
    を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持した後、室温まで徐冷することを特徴とする金属基複合材の製造方法。
  2. 成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、
    上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、
    上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、
    上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、
    上記硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI /I が0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、
    を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持した後、150℃より低い温度まで徐冷し、更に、150℃より高い温度に昇温し、保持した後、150℃より低い温度まで徐冷する処理を1回以上行った後、室温まで徐冷することを特徴とする金属基複合材の製造方法。
  3. 成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、
    上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、
    上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、
    上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、
    上記硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI /I が0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、
    を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、室温まで徐冷することを特徴とする金属基複合材の製造方法。
  4. 成長過程において成長の起点となる粒状部から複数延出して互いに結合する多層型カーボンナノチューブにより構成された3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体と、有機バインダーと、分散媒とを混合して懸濁液を得る工程(1)と、
    上記懸濁液を乾燥して混合物を得る工程(2)と、
    上記混合物を圧縮成形して圧縮成形体を得る工程(3)と、
    上記圧縮成形体を硬化処理して硬化圧縮成形体を得る工程(4)と、
    上記硬化圧縮成形体を焼成してラマン分光分析法で測定されるI /I が0.2以下である炭素繊維構造体を含む炭素繊維構造体含有プリフォームを得る工程(5)と、
    を含む炭素繊維構造体含有プリフォームの製造方法により製造される炭素繊維構造体含有プリフォームに、溶融したアルミニウムを含浸させ、固化し、150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、150℃より低い温度まで徐冷し、更に、150℃より高い温度に昇温し、保持することなく、150℃より低い温度まで徐冷する処理を1回以上行った後、室温まで徐冷することを特徴とする金属基複合材の製造方法。
  5. 上記多層型カーボンナノチューブは、チューブの長手方向に対する直交断面の最大径が15〜100nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の金属基複合材の製造方法。
  6. 上記多層型カーボンナノチューブは、チューブの長手方向に対する直交断面が多角形をなすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の金属基複合材の製造方法。
  7. 上記炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜100μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の金属基複合材の製造方法。
  8. 上記炭素繊維構造体は、嵩密度が0.0001〜0.05g/cm であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の金属基複合材の製造方法。
  9. 上記工程(1)における炭素繊維構造体、有機バインダー及び分散媒の混合に際し、得られる炭素繊維構造体含有プリフォームの全体積に対して、炭素繊維構造体及び有機バインダーを、それぞれ10体積%以上及び25体積%以上となるように添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の金属基複合材の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の金属基複合材の製造方法により製造されることを特徴とする金属基複合材。
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