JP5250901B2 - アニリノキナゾリン系化合物及びその用途 - Google Patents

アニリノキナゾリン系化合物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、アニリノキナゾリン系化合物及びその用途に関する。
これまでに、様々な作用機序を持つ数多くの抗癌・抗腫瘍剤が開発されてきている。例えば、パクリタキセルやドセタキセルは、チューブリンと結合し微小管の脱重合を阻害することにより有糸分裂および細胞増殖を阻害し、他の既存薬剤が効かない腫瘍(例えば卵巣癌及び乳癌)に有効であることが示されている。また、ゲフィチニブは、上皮増殖因子受容体のチロシンキナーゼを選択的に阻害し、既存薬剤が効かない非小細胞肺癌に有効であることが示されている。
タキソール等は抗癌剤として有用であるが、骨髄抑制やアナフラキシーショック等重篤な副作用が報告されており、新規作用機序を持つ抗癌剤の開発が望まれている。
本発明は、新規な作用機序により抗癌作用を示す化合物を提供することを課題とする。
本発明者ら、既存の抗癌作用を持つ化合物と異なる作用機序により抗癌作用を示す化合物を見出し、本発明を完成した。
本発明は、下記のものを提供する。
[1] 下記式で表わされる化合物又はその塩。
Figure 0005250901
[2] [1]に記載の化合物又はその塩を含む医薬組成物。
[3] 抗癌剤である[2]に記載の医薬組成物。
新規作用機序による抗癌作用を持つ化合物が提供される。本願発明の化合物を、単独で、又は他の抗癌剤と組み合わせて用いることにより、副作用の小さい癌治療用組成物が提供できる。
<1>本発明化合物
本発明化合物は、下記式で示される化合物であり、後記の実施例1に記載の方法によって製造することができる。
Figure 0005250901
本発明化合物の塩は、特に制限されず、有機物及び無機物との塩を包含する。本発明化合物が医薬組成物に用いられる場合には、医薬的に許容される塩であることが好ましい。
本発明化合物は、後記実施例に示すように、新規な作用機序により抗癌・抗腫瘍作用を示す。
<2>本発明医薬組成物
本発明医薬組成物は、本発明化合物又はその塩を有効成分として含む。
通常には、有効成分の本発明化合物又はその塩は、医薬的に許容可能な担体を用いて製剤(医薬組成物)にすることができる。医薬的に許容可能な担体としては、賦形剤または基剤などが挙げられる。また、製剤は、通常に用いられる添加剤を含んでいてもよい。剤形は、投与経路に応じて適宜選択される。製剤には、有効成分のペプチドと、他の抗癌剤と別個に包装して一体としたものも包含される。また、投与量は、対象とする抗癌剤治療、患者の状態などにより適宜選択される。本発明医薬組成物は、好ましくは抗癌剤であり、抗癌剤治療を受けているまたは受ける予定の患者に投与することができる。
以下、具体的に本発明の実施例を記述するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものでない。
<実施例1> 化合物Q15及びビオチン化Q15の合成
Figure 0005250901
1-1 化合物2の合成
Figure 0005250901
7−クロロキナゾリン 1 (212.9 mg, 0.603 mmol)にn-ブタノール(6 mL)およびピペラジン(103.9 mg, 1.21 mmol)を加え、還流下一晩撹拌した。減圧下溶媒を溜去し、残渣に酢酸エチルを加え撹拌後、生成物を濾取し目的物(142 mg, 収率58%)を燈黄色固体として得た。
2: 1H NMR (DMSO-d6, 400MHz) δppm: 9.24 (s, 1H), 8.65 (s, 1H), 8.19 (m, 1H), 7.81 (m, 1H), 7.47 (t, 1H), 7.38 (s, 1H), 3.34 (br s, 1H), 3.24 (m, 4H), 3.08 (m, 4H).
1-2 化合物3の合成
Figure 0005250901
ピペラジン2 (403 mg, 1.0 mmol) をテトラヒドロフラン(12 mL)に溶解し、p-フェノキシフェニルイソシアネート(211 mg, 1.0 mmol)を加えた。黄色の沈殿物を濾取し、残渣を酢酸エチルで洗浄、乾燥し、目的とする化合物3 (529 mg, 収率86%)を得た。
3: 1H NMR(DMSO-d6, 400MHz) δ ppm: 9.18 (s, 1H), 8.64 (s, 1H), 8.17 (dd, 1H), 7.80 (m, 1H), 7.49〜7.37 (m, 7H), 7.35 (s, 1H), 7.10 (t, 1H), 6.95 (d, 1H), 3.61
(brs, 1H), 3.55 (s, 8H).
1-3 化合物4の合成
Figure 0005250901
3(199mg, 0.32 mmol)をエタノール(10 mL)に溶解し、濃塩酸2滴、水(7 mL)を加え、90 ℃の油浴上で加熱した。これに塩化スズ(II)二水和物(289 mg, 1.28 mmol)の
エタノール溶液(2 mL)を 50〜60℃で加え、90 ℃の油浴上でで2時間加熱した。放冷後、トリエチルアミンを加え、pH = 7とした後、酢酸エチルを加え、セライト濾過で不溶物を除去した。生成物を酢酸エチルで抽出し、重曹水、続いて食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下、濃縮した。残渣をエタノール(20 mL)で洗浄後濾過し、ろ液を濃縮して、目的物4(49 mg, 収率26%)を得た。
4: 1H NMR(DMSO-d6, 400 MHz)δ ppm: 9.44 (s, 1H), 8.65 (s, 1H), 8.37 (s, 1H), 8.18 (dd, 1H), 7.80 (m, 1H), 7.33〜7.55 (m, 7H), 7.23 (s, 1H), 6.96 (m, 2H), 5.31
(s, 2H), 3.46 (s, 8H).
1-4 Bio-Q15の合成
Figure 0005250901
NHS-PEO4-Biotin(10 mg, 17 μmol)の水溶液(100 μL)に1 N NaOH水溶液(19 μL)を加えて室温で1時間攪拌した後、1N塩酸水溶液(22 μL)を加えて濃縮した。濃縮物を脱水ピリジンにて置換濃縮を繰り返し、加水分解物PEO4-Biotinの粗精製物を得た。化合物Q15 (9.9mg, 17 μmol)のピリジン溶液(500 μL)に、三塩化リン(2.3 mg, 17 μmol)を加え80℃で1時間攪拌した後、上記で得られたPEO4-Biotin粗精製物をピリジン(100 μL)に溶解して加えた。80℃で終夜攪拌した後、反応液に水を加えて濃縮し、HPLCにより分取精製した(2 mg, 収率11%)。
Mass (ESI): m/z = 1057 (M+1)
なお、LC-MS分析および分取の条件は以下の通りである。
<LC分析条件>
使用機器 Waters 2695(LC部)、2487(UV検出部)、ZQ(MS検出部)
カラム YMC-Pack Pro C18 S-5um 50×4.6mm(YMC)
カラム温度 30℃
キャリアー A:H2O / MeCN = 95 / 5 (0.05 % TFA)、B:H2O / MeCN = 5 / 95 (0.05 % TFA)、3.0mL/min、Linear Gradient
Figure 0005250901
<LC分取条件>
使用機器 Waters 2525(LC Pump)、2487(UV検出部)、ZQ(MS検出部)、2767(フラコレ部)カラム CombiPrep Pro C18 S-5um 50×20mm(YMC)
カラム温度 r.t.
キャリアー A:100 % H2O (0.05 % TFA)、B:100 % MeCN (0.05 % TFA)、25.0mL/min、Linear Gradient
Figure 0005250901
<実施例2> Q15のSW480大腸癌細胞に対する増殖抑制試験
SW480細胞[アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より入手されるヒト大腸癌由来培養細胞]の増殖を阻害する試験化合物の能力を測定した。
SW480細胞を、37℃で5% CO2 空気インキュベーターにおいて、10% 胎仔ウシ血清、2 mMグルタミン、及び非必須アミノ酸を含有するダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で培養した。トリプシン/エチルアミンジアミン四酢酸(EDTA)を使用して、シャーレより細胞を採取した。96穴プレートのウェルにつき2 × 103細胞の密度で細胞を播き、37℃, 5%
CO2 で、10%胎仔ウシ血清、1 mMグルタミン、及び非必須アミノ酸を含有するDMEMにおいて、24時間静置した。そしてジメチルスルホキシド(DMSO)中の様々な濃度(最終濃度で100, 50, 25, 12.5, 6.25, 3.125 μM)の化合物Q15を添加あるいは非添加で細胞を処理してから、3日間インキュベートした。このインキュベーション期間の後、CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay Kit(プロメガ株式会社)を用い、添付文書の方法に従い処理後、吸光度を測定し、生細胞数を求めた。薬剤非添加(DMSOのみ添加)を100%、細胞が無い場合を0%のCell viabilityとして図1に結果を示す。
増殖の50%阻害を与えるのに必要とされる化合物の濃度(IC50)は、8.6 μMであった。
<実施例3> 化合物Q15の結合蛋白質スクリーニング
スクリーニングは、in vitro virus(以下IVVと略す)法[Horisawa, K et al, (2004), 32, e169.:文献1]を用いて実施し、IVVライブラリーを作製するためのIVVテンプレートRNAライブラリーはSW480細胞より得られたpoly A+ RNA(プレミアムポリA+ RNA, タカラバイオ株式会社)より、文献1に従って作製した。
スクリーニング方法は以下の通りである。
ビオチン化Q15(2 mM DMSO溶液、1μL)を磁性体ストレプトアビジンビーズ(Magnotex
SA, タカラバイオ株式会社、0.67 mg)のIPP150緩衝液[10 mM トリス塩酸 (pH 8.0), 150 mM 塩化ナトリウム, 0.1% NP-40, 0.2 mL]懸濁液に加え、室温1時間撹拌した。IPP150(0.2 mL × 3)で洗浄後、IPP150(0.2 mL)に懸濁し、0.1 M ビオチン水溶液(20 μL)を加え、室温1時間撹拌し、IPP150(0.2 mL × 3)で洗浄後、IPP150-2緩衝液[10 mM トリス塩酸 (pH 8.0), 150 mM 塩化ナトリウム, 0.1% NP-40, 1 mM ジチオスレイトール, 0.5 mg/mL ウシ血清アルブミン, 20 μg/mL tRNA, 0.2 mL]に懸濁し、Q15固定ビーズ懸濁液とした。
IVVテンプレートRNAライブラリー(10 pmol)を表3に示した組成・条件で、コムギ胚芽無細胞翻訳キット(ゾイジーン社)で翻訳し、IVVライブラリー溶液を調製した。
Figure 0005250901
IVVライブラリー溶液とQ15固定ビーズ懸濁液を混和し、4 ℃, 2時間撹拌した。Q15固定ビーズを回収後、IPP150-2(0.8 mL × 3)で洗浄し、その後純水(0.1 mL)でビーズを懸濁した。ビーズ懸濁液(1 μL)を表4に示した組成、表5に示した条件で、One Step RT-PCRキット(株式会社キアゲン)で、逆転写及び増幅しcDNAライブラリーとした。各プライマー配列は表6に示す。
Figure 0005250901
Figure 0005250901
Figure 0005250901
cDNAライブラリーを2%アガロース電気泳動し、700-1000 塩基対の鎖長の画分を回収した。このようにして再構築されたcDNAライブラリーは、文献1の方法に従い、IVVテンプレートRNAライブラリーに変換され、次回のスクリーニングに用いられた。
上記スクリーニングを合計5回繰返し、得られたcDNAライブラリーをクローニング・シーケンスした。その結果、100クローン中2クローンがHomo sapiens non-SMC condensin II complex, subunit G2 (NCAPG2, NM_017760)の配列と一致した。
<実施例4> cDNAライブラリー中のNCAPG2遺伝子量の測定
リアルタイムPCR装置(LightCycler, ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用い、スクリーニング前(ラウンド0)及び、スクリーニングを合計5回繰返した後(ラウンド5)得られたcDNAライブラリー(各5 ng)中のNCAPG2遺伝子の分子数を測定した。方法は、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)の添付文書に従い、NCAPG2遺伝子が特異的に増幅されるDNAプライマー3及びDNAプライマー4(表7)を用いた。その結果と計算された濃縮率を表8に示す。
Figure 0005250901
Figure 0005250901
実施例3のIVVスクリーニングの結果、NCAPG2遺伝子の複数クローンがクローニングされた。実施例4では、IVVスクリーニング時のcDNAライブラリー中のNCAPG2遺伝子の定量を実施したが、ベイトとしてQ15を使用した場合(Q15固定ビーズの場合)、NCAPG2遺伝子が5ラウンドのスクリーニング後、スクリーニング前(ラウンド0)に比べ705倍に濃縮されていた。一方、mock(ビーズに何も薬剤を固定しない場合)では0.13倍になっていた。
IVVスクリーニングとは、蛋白質とそれをコードする遺伝子が結合しているIVVという分子を用いたスクリーニング法であるので、cDNAライブラリー中の特定遺伝子の濃縮はベイト分子と蛋白質の相互作用に起因するものと解釈される。そこで実施例3、4の結果を総合すると、Q15固定ビーズの場合のみNCAPG2遺伝子が濃縮されていることより、NCAPG2蛋白質が化合物Q15と特異的に相互作用しスクリーニングされたと考えられる。
<実施例5> 細胞ライセート中のNCAPG2蛋白質のプルダウンアッセイ
細胞内の全長NCAPG2蛋白質が化合物Q15と実際に結合するかを調べるため、SW480細胞ライセートとQ15固定ビーズを用いプルダウンアッセイを行った。
(ライセートの調製法)SW480細胞を10cm培養プレート(コーニング社)上で、37℃ で5% CO2 空気インキュベーターにおいて、10% 胎仔ウシ血清、1 mMグルタミン、及び非必須アミノ酸を含有するダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で培養した。サブコンフレント(80-90%)になったSW480細胞をPBS存在下でセルリフター(コーニング社)を用いて回収したのち、1000r.p.m.で細胞を沈降させる。上清を除去したのち、得られた細胞隗を細胞抽出用緩衝液(10mM Tris-HCl, 150mM NaCl, 1%NP-40, 0.1%デオキシコール酸, ロシュ・ダイアグノスティックス社製プロテアーゼインヒビターカクテル, pH7.6)で懸濁したのち、氷上で30分間静置する。懸濁液を15000r.p.m.で10分間遠心し、得られた上清を細胞ライセートとして使用する。
Q15固定ビーズの調製法は実施例1に示した通りである。Q15固定ビーズ(6mg)を細胞ライセート(250 μL、総タンパク量として500μg分)を加え4 ℃, 2時間撹拌した。ビーズを回収後、IPP150(0.5 mL × 3)で洗浄後、溶出用緩衝液(20 μL、組成は表9に示す)でビーズを懸濁した。懸濁液を96℃,10分間加熱後、上清を取り、5-20% SDSポリアクリルアミド電気泳動ゲル(和光純薬株式会社)で、20 mA(定電流)90分間、移動緩衝液で(組成は表10に示す)展開した。ゲルで展開された蛋白質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に写し、抗NCAPG2蛋白質抗体(Bethyl Inc, アメリカ合衆国テキサス州)を用いてウエスタンブロット法で染色した。結果を図2に示す。図2中、Mockは薬剤非結合ビーズ、Iressaはビオチン化Iressa類似体(下記式)結合ビーズの場合を示し、陰性対照である。
Figure 0005250901
Figure 0005250901
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実施例3、4では、in vitro翻訳系で発現されるIVV分子において、化合物Q15がNCAPG2蛋白質と特異的に相互作用することを示した。実施例5では、生細胞で発現されるNCAPG2蛋白質が化合物Q15と特異的に結合するかどうかを調べた。ここでは、結合を調べるための一般的手法であるプルダウンアッセイをQ15固定ビーズ、Iressa固定ビーズおよび薬剤非固定ビーズ(mock)を用いて実施した。各ビーズに結合した蛋白質溶出後、SDSポリアクリルアミド電気泳動で分離、そしてPVDF膜に転写し、抗NCAPG2蛋白質抗体による染色(ウエスタンブロット法)を行った。その結果、Q15固定ビーズの場合のみNCAPG2蛋白質のバンドが分子量約130k(アミノ酸配列によるNCAPG2の計算分子量は131k)の位置に検出された。すなわち、薬剤非固定ビーズのみならずQ15と類似のアニリノキナゾリン誘導体であるIressa固定ビーズの場合もNCAPG2蛋白質のバンドが検出されないことより、Q15とNCAPG2蛋白質の結合は非常に特異性が高いことが示された。
コンデンシンは細胞分裂時の染色体凝集や染色体分配に関与する、細胞増殖には重要な蛋白質複合体である[Hirano, T., Curr. Biol. (2005), 15, R265]。また、コンデンシンの構成蛋白質であるNCAPG2蛋白質をRNA干渉によりノックダウンした細胞では、細胞周期がM期で停止することが報告されている[Kittler, R. et al, Nature (2004), 432, 1036. 本文献中の遺伝子「FLJ2031」はNCAPG2の別名である]。以上のような、NCAPG2蛋白質の特性および本実施例の結果を総合的に勘案すると、化合物Q15はNCAPG2蛋白質と特異的に結合し癌細胞増殖を抑制している。すなわち、化合物Q15は、既存の抗癌作用をもつ化合物とは異なる作用機序により抗癌作用を示すことが確認された。また、その作用機序からみて、種々の癌に対し幅広く抗癌・抗腫瘍作用を示すものと考えられる。
<実施例6> 化合物Q15とコンデンシンII複合体との結合
hCAP-G2は、コンデンシンIIのサブユニットの一つである。コンデンシンは2つのSMC (Structural maintenance of chromosome)蛋白質と、3つのnon-SMCサブユニットからなる蛋白質複合体で、染色体凝集に重要な役割を担っている。SMC蛋白質であるSMC2とSMC4はヘテロ二量体を形成し、 DNAへ結合する。non-SMCサブユニットのうち、CAP-HとCAP-H2はSMC二量体に結合する蛋白質で、互いに類似している。CAP-D2とCAP-D3、CAP-GとCAP-G2もそれぞれ互いに類似しており、分子内にHEATリピート(HEAT repeats)と呼ばれる反復配列が存在する。このHEATリピートは蛋白質-蛋白質相互作用に関与していることが報告されている。化合物Q15のIVVスクリーニングによりhCAP-G2のHEATリピートを含む領域が得られたことから、コンデンシンII複合体形成に対するQ15の影響を調べた。プロテアーゼ阻害剤を含む細胞抽出バッファー(50 mM Tris-HCl (pH7.5), 150 mM NaCl, 1% NP-40, 0.1%
DOC)を用いて、SW480細胞から細胞抽出液を調製した。総蛋白質量500 μg分の細胞抽出液に、Q15固相化ストレプトアビジン磁性体ビーズ(ビオチン結合能で換算すると2 nmol相当)を加え、4℃、2時間反応させた。反応後、洗浄バッファーで4回洗浄した後ウエスタンブロッティング法によって、hCAP-G2およびSMC2のバンドを確認した。その結果、薬剤Q15特異的にhCAP-G2およびSMC2の結合が確認できた(図3)。このことから、Q15にはhCAP-G2およびSMC2を含むコンデンシンII複合体が結合していることがわかった。
<実施例7> 化合物Q15の種々のヒト培養癌細胞に対する増殖抑制試験
化合物Q15の種々のヒト培養癌細胞に対する増殖抑制試験を行った。用いたヒト培養癌細胞は、乳癌(Breast cancer、Br)5株(HBC-4、BSY-1、HBC-5、NCF-7、MDA-MB-231)、脳腫瘍(中枢神経系癌、Central Nerval System、CNS)6株(U251、SF-268、SF-295、SF-539、SNB-75、SNB-78)、大腸癌(Colon cancer、Co)5株(HCC2998、KM-12、HT-29、HCT-15、HCT-116)、肺癌(Lung cancer、Lu)7株(NCI-H23、NCI-H226、NCI-H522、NCI-H460、A549、DMS273、DMS114)、メラノーマ(Melanoma、Me)1株(LOX-IMVI)、卵巣癌(Ovary cancer、Ov)5株(OVCAR-3、OVCAR-4、OVCAR-5、OVCAR-8、SK-OV-3)、腎癌(Renal cancer、Re)2株(RXF-631F、ACHN)、胃癌(Stomach cancer、St)6株(St-4、MKN1、MKN7、MKN28、MKN45、MKB74)、前立腺癌(Prostatic cancer、xPg)2株(DU-145、PC-3)の計39株である。これらを1つのパネルとして扱い、in vitro 薬剤感受性試験を行い、その薬剤に対する感受性パターン(Finger Print、後述)を得ることを試みた。この系の最大のメリットは、Finger Printをデータベース内のデータと比較することにより、既存の抗癌剤と異なる作用様式の化合物を選別しうる点、あるいは化合物の作用様式の推定を行える点にある。データベース解析の結果、有望と評価された検体については、上記パネルの癌細胞をヌードマウスに移植した異種移植(xenograft)系での抗腫瘍活性評価が可能である。
ヒト培養癌細胞パネルは、パネル全体を一個の生き物ととらえるとわかりやすい。パネルにインプットとして薬物を与えると、アウトプットとして得られるものがFinger Printである。Finger Printの特徴が評価の鍵になり、その解析をデータベースで行う。このデータベースは、スクリーニングを行うにつれ膨張するので、それに伴って得られる情報は、質量ともに高くなることが期待される。情報化時代にふさわしい新しいタイプの抗癌剤スクリーニング系である。
癌細胞を96ウェルプレートにまき込み、翌日検体溶液(5種の用量(doses)、通常10-4から10-8Mまで1 log間隔、最高濃度をHigh Concと呼ぶ)を添加、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定する。測定結果はコンピュータに入力し、データ処理する。
データ解析のパラメータとして、薬をかける直前(Time Zero)の細胞数を基準として
GI50 : 対照(Control)に比べ 増殖を50%に抑制する濃度
TGI : Time Zeroと同じ細胞数に増殖を抑制する濃度(見かけ上細胞数の増減がない
濃度)
LC50 : Time Zeroの50%に細胞数を減少せしめる濃度(殺細胞効果が高い程、この濃度が低い)
の3種類を求める。具体的には "In Vitro Testing Results"のデータを用い、次のように計算する。
各濃度における平均光学密度[Mean Optical Density] (ODtest)が Time ZeroのOD値(Tz)より大(ODtest > Tz)のとき
増殖%[Percent Growth](PG%) = ((ODtest - Tz)/(ODcontrol − Tz)) x 100
ただし、ODcontrolは、ControlのOD値を示す。
逆に、 ODtest < Tzのときは、
PG% = ((ODtest - Tz)/Tz ) x 100
この場合、PG%は (−)となる。
各細胞ごとに上で求めたPG%の値を濃度(対数)に対してプロットして得られる用量応答曲線(Dose Response Curves)を臓器癌別にまとめたのが図4である。各曲線が PG 50%,
0%, −50% の横線と交わる点の濃度がそれぞれLog GI50、Log TGI、Log LC50 に相当する。図4からわかるように、化合物Q15は肺癌(Lu)と大腸癌(Co)の培養細胞に対する増殖抑制効果が一番顕著で、肺癌(Lu)ではNCI-H522株のGI50は4.2×10-7M、大腸癌(Co)ではHT-29株のGI50は6.2×10-7Mであり、nMオーダーで有意な癌細胞の増殖抑制効果が見られた。Q15は10-5M以上の濃度ではその他の癌細胞株、たとえば乳癌(Br)、脳腫瘍(CNS)、メラノーマ(Me)、腎癌(Re)、胃癌(St)等の培養細胞の増殖を強く抑制した。
次に感受性パターン“Finger Prints”(Mean Graphs)を作成した。検定したすべての株についてLog GI50の平均値を求め、これをMean Graph Midpoint (MG_MID) と称する。この平均値と個々の細胞でのLog GI50値との差(つまり個々の細胞でのGI50が平均値の何倍あるいは何分の一かが対数値で示される)を求め、それらを平均Log GI50値を中心(目盛0)として左右に棒グラフで描いたものが Finger Print (図5)である。図5の左側の棒グラフはGI50の、中央の棒グラフはTGIの、右側の棒グラフはLC50に関してのFinger Printである。感受性(Differential Sensitivity)が高い株ほど右側に長いバー(bar)が伸びる。一目盛は1 log を表す。Finger Print の下段に表示されたDelta は最も感受性が高いものと平均値との差を示し、その下の Range は最も感受性の高い株と最も感受性の低い株のLogGI50の差を示す。Log TGI、Log LC50についても同様である。テストした濃度の範囲でデータが求められなかったときは、limitの値(通常は、上限値−4または下限値−8)を代用している(この値をFalse Valuesと呼び、グラフの上の"Summary of Evaluation"欄にはその個数が、上限値についてはHigh、下限値についてはLowの下に各々示されている。)したがって、ここで計算される平均値は必ずしも本当の平均値とはならないので、mean でなくmean midpoint (MG_MID)という表現を用いている。図5から、化合物Q15に対して感受性の高い培養細胞株(右側にbarが伸びている)の多いのは肺癌(Lu)で、次いで大腸癌(Co)、脳腫瘍(CNS)であった。たとえば、図5の中央のLog TGIについて見てみると、肺癌(Lu)では7株中5株で、大腸癌(Co)では5株中4株で、脳腫瘍(CNS)では6株中4株で、それぞれの棒グラフが右に伸びており、感受性が高いことがわかる。
このスクリーニングのデータベースには薬剤間でFinger Printを比較しその類似性を検定する“COMPAREプログラム”という機能がある(財団法人癌研究会癌化学療法センター分子薬理部)。基本的には、2つの薬剤間で統計学的相関性を検定するものである。あるサンプル薬剤のFinger Print(Seed)を入力すると、過去に蓄積された標準薬剤のFinger
Printデータの中からそのSeedに類似したFinger Printを持つ薬剤が類似度の高い順にリストアップされる。COMPAREプログラムによる既存の抗癌剤を含む100種類以上の薬剤のFinger Printの分析結果から、「作用機作の同じ薬剤は相関性の高い(互いによく似た)Fi
nger Printを示す」というたいへん重要な事実が明らかとなっている。たとえば、DNAインターカレーター同士は、非常に良く似たFinger Printを示す。そのほか、チューブリン阻害物質、トポイソメラーゼ阻害物質、シスプラチン類似物質、5-フルオロウラシル類似物質、シタラビン類似物質、メソトレキセート類似物質なども各グループ内で互いに似かよったFinger Printを示すことがわかっている。COMPAREプログラムによるデータ分析は、HCCパネルスクリーニングにおけるサンプル評価基準として特に重要である。作用機作未知のサンプルがなんらかの既存の薬剤と良く似たFinger Printを示せばサンプル薬物はその薬剤と同様の作用機作を持つことが期待でき、逆にいかなる既存の薬剤とも異なるFinger Printを示せばこれまでにないユニークな作用機作を持つことが示唆される。現時点でCOMPARE プログラムには少なくとも次のような使い方が考えられる。
1)ニューリードの選別
どの標準薬剤のFinger Printとも類似性を持たない化合物を選別する。そのような化合物は、新しいタイプの作用機作(未知)をもつニューリードである可能性がある。
2)作用機作の推定
作用機作が全く不明の化合物の場合でも、そのFinger PrintをCOMPAREプログラムで解析した結果、データベースに登録された何らかの標準薬剤のFinger Printと類似性を示せば、その標準薬剤と近い作用機作を持つことが示唆される(そうでない場合は、上記1)。
3)リード化合物からより有効な化合物候補をデータベース上で検索
リード化合物のFinger PrintをSeedに、データベースに登録された物質の中から類似性の高いFinger Printを持つ物質を抽出し実際の薬理活性を調べより有効な化合物を見出す。
4)構造活性相関
構造類似化合物群の中から母化合物と同様の作用機作を持つ化合物候補をFinger Printの類似性に基づき選別する。あるいは逆に、母化合物と異なる作用機作を持つ化合物候補を選別する。
Q15に関してデータからDifferential Activity(特定のがん種またはいくつかのがん細胞株に対し顕著な有効性が見られるか)の基準になるDelta値とRange値を算出した。その結果、Delta値に関しては、GI50で0.74、TGIで0.92、LC50で0.97の値が得られた。また、Range値に関しては、GI50で1.31、TGIで1.79、LC50で1.15の値が得られた。Differential
Activity の基準として、Delta ≧ 0.5 かつ Range≧ 1 ならば顕著な有効性ありと判断できるので、化合物Q15は特定の癌種またはいくつかの癌細胞株に対し顕著な有効性が見られると、Differential Activityの値からも結論できた。
次に、Finger Printのユニーク度について解析した。COMPAREプログラムにより、サンプル物質のFinger Printをデータベース中の既存の抗がん剤全てと比較した結果、r値が、最も高値(1に最も近い値)を示した抗がん剤(Drug A)のr値(rMAX)に基づき以下のように評価した。
(1)rMAX < 0.5 ならば COMPARE Negative:データベース中の既存の抗がん剤にはサンプル物質と似たFinger Printのものがない→新規作用機作を期待。
(2)0.5 ≦ rMAX < 0.75 ならば COMPARE Marginal:Drug Aとやや似ている→Drug Aと同様の作用機作を持つ可能性もあるが、新規作用機作を持つ可能性もある。(1)と(3)の中間。(データベース中にやや似たものがある)
(3)0.75 ≦rMAX ならば COMPARE Positive:Drug Aとに良く似ている→ Drug Aと同様の作用機作を予想。
化合物Q15のrMAX値(Results of compare)を算出したところ、rMAX<0.5であった。その結果、データベース中の既存の抗癌剤には化合物Q15と似たFinger Printのものがなく、新規作用機作を期待できることが明らかになった。
以上、化合物Q15の一連のヒト培養癌細胞パネルの解析結果を総合すると、化合物Q15は、化学構造が新規であり、各種癌細胞に対して増殖抑制の有効濃度が十分低く(nMレベルでも効果あるものあり)、Differential growth inhibition(特に肺癌や大腸癌細胞で感受性が高い)が認められ、かつ、rMAX<0.5(Results of compare)なので、これまでにない新規作用機序をもつ薬剤として有効な物質であると結論付けられた。
SW480細胞に対する増殖抑制試験の結果を示す。 プルダウンアッセイの結果(電気泳動写真)を示す。 化合物Q15とコンデンシンII複合体の結合を示すウェスタンブロットの結果(電気泳動写真)を示す。 化合物Q15の種々のヒト培養癌細胞に対する用量応答曲線を示す。 化合物Q15に対する種々のヒト培養癌細胞の感受性パターンを示す。

Claims (3)

  1. 下記式で表わされる化合物又はその塩。
    Figure 0005250901
  2. 請求項1に記載の化合物又はその塩を含む医薬組成物。
  3. 抗癌剤である請求項2に記載の医薬組成物。
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