本発明は、乳酸の生産能力のある原核微生物の発酵培養液を、分離膜で濾過し濾液から生産物を回収すると共に未濾過液を前記発酵培養液に保持または還流し、かつ、その原核微生物の発酵原料を前記発酵培養液に追加する連続発酵であって、前記分離膜として平均細孔径が0.01μm以上1μm未満の多孔性膜を用い、その膜間差圧を0.1以上20kPa未満にして濾過処理することを特徴とする連続発酵による乳酸の製造方法である。
本発明において分離膜として用いられる多孔性膜は、発酵に使用される原核微生物による目詰まりが起こりにくく、かつ、濾過性能が長期間安定に継続する性能を有するものであることが望ましい。そのため、本発明で使用される多孔性膜は、平均細孔径が0.01μm以上1μm未満であることが重要である。
本発明で分離膜として用いられる多孔性膜の構成について説明する。本発明における多孔性膜は、被処理水の水質や用途に応じた分離性能と透水性能を有するものであり、阻止性能および透水性能や耐汚れ性という分離性能の点からは、多孔質樹脂層を含む多孔性膜であることが好ましい。このような多孔性膜は、多孔質基材の表面に、分離機能層として作用とする多孔質樹脂層を有している。多孔質基材は、多孔質樹脂層を支持して分離膜に強度を与えるものである。
多孔質基材の素材は、有機材料および/または無機材料等からなり、中でも有機繊維が望ましく用いられる。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエチレン繊維などの有機繊維を用いてなる織布や不織布であり、中でも、密度の制御が比較的容易であり製造も容易で安価な不織布が好ましく用いられる。
また、多孔質樹脂層は、上述したように分離機能層として作用するものであり、有機高分子膜を好適に使用することができる。有機高分子膜の素材としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。ここで主成分とは、その成分が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有することをいう。
中でも、有機高分子膜の膜素材としては、溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が最も好ましく用いられる。
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられるが、フッ化ビニリデンの単独重合体の他、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
本発明で用いられる多孔性膜の作成法の概要を例示説明する。
まず、多孔性膜のうち、平膜は次のようにして作成することができる。上述した多孔質基材の表面に、上述した樹脂と溶媒とを含む原液の被膜を形成すると共に、その原液を多孔質基材に含浸させる。その後、被膜を有する多孔質基材の被膜側表面のみを、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させると共に、多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を形成する。原液にさらに非溶媒を含ませることもできる。原液の温度は、製膜性の観点から、通常、15〜120℃の範囲内で選定することが好ましい。
ここで、原液には、開孔剤を添加することもできる。開孔剤は、凝固浴に浸漬された際に抽出されて、樹脂層を多孔質にする作用を持つものである。開孔剤を添加することにより、平均細孔径の大きさを制御することができる。開孔剤は、凝固浴への溶解性の高いものであることが好ましい。開孔剤としては、例えば、塩化カルシウムや炭酸カルシウムなどの無機塩を用いることができる。また、開孔剤として、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールおよびポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物や、グリセリンを用いることができる。
また、溶媒は、樹脂を溶解するものである。溶媒は、樹脂および開孔剤に作用してそれらが多孔質樹脂層を形成する作用を促す。溶媒としては、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンおよびメチルエチルケトンなどが用いられる。中でも、樹脂の溶解性の高いNMP、DMAc、DMFおよびDMSOが好ましく用いられる。
さらに、原液には、非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、樹脂を溶解しない液体である。非溶媒は、樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類を用いることができる。中でも、価格の点から水やメタノールが好ましく用いられる。非溶媒は、これらの混合物であってもよい。
また、多孔性膜のうち、中空糸膜は次のようにして作成することができる。中空糸膜は、樹脂と溶媒からなる原液を二重管式口金の外側の管から吐出すると共に、中空部形成用流体を二重管式口金の内側の管から吐出して、冷却浴中で冷却固化して作製することができる。
原液は、上述の平膜の作成法で述べた樹脂を20重量%以上60重量%以下の濃度で、上述の平膜の生成法で述べた溶媒に溶解させることにより調整することができる。また、中空部形成用流体には、通常気体もしくは液体を用いることができる。また、得られた中空糸膜の外表面に、新たな多孔性樹脂層をコーティング(積層)することもできる。積層は中空糸膜の性質、例えば、親水・疎水性あるいは細孔径等を所望の性質に変化させるために行うことができる。積層される新たな多孔性樹脂層は、樹脂を溶媒に溶解させた原液を、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させることによって作製することができる。その樹脂の材質は、例えば、上述有機高分子膜の材質と同様のものが好ましく用いられる。また、積層方法としては、原液に中空糸膜を浸漬してもよいし、中空糸膜の表面に原液を塗布してもよく、積層後、付着した原液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしすることにより積層量を調整することもできる。
本発明で用いられる多孔性膜は、樹脂などの部材を用いて中空糸膜の中空部を接着・封止し、支持体に設置することによって分離膜エレメントとすることができる。
本発明で用いられる多孔性膜は、上記したように、平膜であっても中空糸膜であっても良い。平膜の場合、その平均厚みは用途に応じて選択されるが、好ましくは20μm以上5000μm以下であり、より好ましくは50μm以上2000μm以下の範囲で選択される。
上述のように、本発明で用いられる分離膜は、多孔質基材と多孔質樹脂層とから形成されている多孔性膜であることが望ましい。その際、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していても、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していなくてもどちらでも良く、用途に応じて選択される。多孔質基材の平均厚みは、好ましくは50μm以上3000μm以下の範囲で選択される。
また、多孔性膜が中空糸膜の場合、中空糸の内径は好ましくは200μm以上5000μm以下の範囲で選択され、膜厚は好ましくは20μm以上2000μm以下の範囲で選択される。また、有機繊維または無機繊維を筒状にした織物や編物を中空糸の内部に含んでいても良い。
本発明で用いられる多孔性膜は、支持体と組み合わせることによって分離膜エレメントとすることができる。多孔性膜を有する分離膜エレメントの形態は特に限定されないが、支持体として支持板を用い、その支持板の少なくとも片面に、本発明で用いられる多孔性膜を配した分離膜エレメントは、本発明で用いられる多孔性膜を有する分離膜エレメントの好適な形態の一つである。この形態で、膜面積を大きくすることが困難な場合には、透水量を大きくするために、支持板の両面に多孔性膜を配することも好ましい態様である。
分離膜の平均細孔径が上記の範囲内にあると、菌体や汚泥などがリークすることのない高い排除率と、高い透水性を両立させることができ、さらに目詰まりを起こしにくく、透水性を長時間保持することが、より高い精度と再現性を持って実施することができる。細菌類を用いた場合、多孔性膜の平均細孔径は好ましくは0.4μm以下であり、平均細孔径は0.2μm未満であればなお好適に実施することが可能である。平均細孔径は、小さすぎると透水量が低下することがあるので、本発明では、平均細孔径は0.01μm以上であり、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.04μm以上である。
ここで、平均細孔径は、倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡観察における、9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔すべての直径を測定し、平均することにより求めることができる。
平均細孔径の標準偏差σは、0.1μm以下であることが好ましい。更に、平均細孔径の標準偏差が小さい、すなわち細孔径の大きさが揃っている方が均一な透過液を得ることができ、発酵運転管理が容易になることから、平均細孔径の標準偏差は小さければ小さい方が望ましい。
平均細孔径の標準偏差σは、上述の9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔数をNとして、測定した各々の直径をXkとし、細孔直径の平均をX(ave)とした下記の(式1)により算出される。
本発明で用いられる多孔性膜においては、発酵培養液の透過性が重要点の一つであり、透過性の指標として、使用前の多孔性膜の純水透過係数を用いることができる。本発明において、多孔性膜の純水透過係数は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出したとき、2×10−9m3/m2/s/pa以上であることが好ましく、純水透過係数が2×10−9m3/m2/s/pa以上6×10−7m3/m2/s/pa以下であれば、実用的に十分な透過水量が得られる。
本発明で用いられる多孔性膜の膜表面粗さは、多孔性膜の目詰まりに影響を与える因子であり、好ましくは膜表面粗さが0.1μm以下のときに多孔性膜の剥離係数や膜抵抗を好適に低下させることができ、より低い膜間差圧で連続発酵が実施可能である。従って、目詰まりを抑えることで、安定した連続発酵が可能になることから、膜表面粗さは小さければ小さいほど好ましい。
また、多孔性膜の膜表面粗さが低いことにより、微生物の濾過において、膜表面で発生する剪断力を低下させることが期待でき、微生物の破壊が抑制され、多孔性膜の目詰まりも抑制されることにより、長期間安定な濾過が可能になると考えられる。
ここで、膜表面粗さは、膜表面に対して垂直方向の高さの平均値であり、下記の原子間力顕微鏡装置(AFM)を使用して、下記の条件で測定することができる。
・装置 原子間力顕微鏡装置(Digital Instruments(株)製Nanoscope IIIa)
・条件 探針 SiNカンチレバー(Digital Instruments(株)製)
走査モード コンタクトモード(気中測定)
水中タッピングモード(水中測定)
走査範囲 10μm、25μm 四方(気中測定)
5μm、10μm 四方(水中測定)
走査解像度 512×512
・試料調製 測定に際し膜サンプルは、常温でエタノールに15分浸漬後、RO水中に24時間浸漬し洗浄した後、風乾し用いた。RO水とは、濾過膜の一種である逆浸透膜(RO膜)を用いて濾過し、イオンや塩類などの不純物を排除した水を指す。RO膜の孔の大きさは、概ね2nm以下である。
膜表面粗さdroughは、上記AFMにより各ポイントのZ軸方向の高さから、下記の(式2)により算出する。
本発明において、原核微生物を分離膜で濾過処理する際の膜間差圧は、原核微生物および培地成分が容易に目詰まりしない条件であればよいが、膜間差圧を0.1kPa以上20kPa以下の範囲にして濾過処理することが重要であり、膜間差圧は好ましくは0.1kPa以上10kPa以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1kPa以上5kPaの範囲である。上記膜間差圧の範囲を外れた場合、原核微生物および培地成分の目詰まりが急速に発生し、透過水量の低下を招き、連続発酵運転に不具合を生じることがある。
濾過の駆動力としては、発酵培養液と多孔性膜処理水の液位差(水頭差)を利用したサイホンにより多孔性膜に膜間差圧を発生させることが可能である。また、濾過の駆動力として多孔性膜処理水側に吸引ポンプを設置してもよいし、多孔性膜の発酵培養液側に加圧ポンプを設置することも可能である。膜間差圧は、発酵培養液と多孔性膜処理水の液位差を変化させることにより制御することができるから、特別に発酵反応槽内を加圧状態に保つ必要がなく、乳酸を生産する能力が低下しない。また、発酵反応槽内を加圧状態に保つ必要がないことから、膜分離槽と発酵反応槽間で発酵培養液を循環させる動力手段が不要となり、多孔性膜を発酵反応槽内に設置することも可能となり、連続発酵装置のコンパクト化を図ることができる。
また、膜間差圧を発生させるためにポンプを使用する場合には、吸引圧力により膜間差圧を制御することができ、更に発酵培養液側の圧力を導入する気体または液体の圧力によっても膜間差圧を制御することができる。これら圧力制御を行う場合には、発酵培養液側の圧力と多孔性膜処理水側の圧力差をもって膜間差圧とし、膜間差圧の制御に用いることができる。
本発明で使用される原核微生物の発酵原料は、培養する原核微生物の生育を促し、目的とする発酵生産物である乳酸を良好に生産させ得るものであればよく、例えば、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸やビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する液体培地等が好ましく用いられる。
上記の炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトースおよびマルトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、ケーンジュース、ケーンジュース抽出物または濃縮液、ケーンジュースからの精製または結晶化された原料糖、ケーンジュースからの精製または結晶化された精製糖、更には酢酸、フマル酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、およびグリセリン等が使用される。ここで糖類とは、多価アルコールの最初の酸化生成物であり、アルデヒド基またはケトン基をひとつ持ち、アルデヒド基を持つ糖をアルドース、ケトン基を持つ糖をケトースと分類される炭水化物のことを指す。
前記の炭素源は、培養開始時に一括して添加してもよいし、培養中分割してあるいは連続的に添加することもできる。
また、上記の窒素源としては、例えば、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば、油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。
また、上記の無機塩類としては、例えば、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、およびマンガン塩等を適宜添加使用することができる。
本発明で使用される微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加することができる。また、消泡剤も必要に応じて添加使用することができる。
本発明において、乳酸の製造方法で使用されるより好ましい乳酸生産培地は、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトースおよびマルトースからなる群から選ばれた少なくとも1種類を含む乳酸生産培地である。また、乳酸の製造方法で使用されるより好ましい乳酸生産培地は、これらの糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、ケーンジュース、ケーンジュース抽出物または濃縮液、ケーンジュースからの精製または結晶化された原料糖、ケーンジュースからの精製または結晶化された精製糖、更には酢酸、フマル酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、およびグリセリン等からなる群から選ばれた少なくとも1種類を含む乳酸生産培地であることが、より好ましい。本発明では、これら発酵原料を必要に応じて希釈して用いることができる。
本発明において、発酵培養液とは、発酵原料に微生物が増殖した結果得られる培養液のことを言い、追加する発酵原料の組成は、培養開始時の発酵原料組成から適宜変更しても良い。発酵原料組成から追加する発酵原料の組成に変更する場合、目的とする乳酸の生産性が高くなるように変更することが好ましい。例えば、上記炭素源に対する窒素源、無機塩類、アミノ酸およびビタミンなどの有機微量栄養素の重量比率を低下させることにより、乳酸の生産コストの低減、すなわち広義で乳酸の生産性の向上が実現できる場合もある。一方、上記炭素源に対する窒素源、無機塩類、アミノ酸およびビタミンなどの有機微量栄養素の重量比率を増加させることにより、乳酸の生産性を向上させることができる場合もある。
本発明では、発酵培養液中の糖類など発酵原料の濃度は、5g/l以下に保持されるようにすることが好ましい。その理由は、培養液の引き抜きによる発酵原料の流失を最小限にするためである。そのため発酵培養液中の発酵原料の濃度は、可能な限り小さいことが望ましい。
原核微生物の発酵培養は、通常、pHが4〜8で温度が20〜40℃の範囲で行われることが多い。発酵培養液のpHは、無機の酸または有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、上記範囲内のあらかじめ定められた値に調節される。
原核微生物の発酵培養において、酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、培養液を加圧する、攪拌速度を上げる、あるいは通気量を上げるなどの手段を用いることができる。逆に、酸素の供給速度を下げる必要があれば、炭酸ガス、窒素およびアルゴンなど酸素を含まないガスを空気に混合して供給することも可能である。
本発明においては、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って微生物濃度を高くした後に連続培養(引き抜き)を開始しても良いし、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行っても良い。適当な時期から、発酵原料液の供給および培養物の引き抜きを行うことが可能である。発酵原料液供給と培養物の引き抜きの開始時期は、必ずしも同じである必要はない。また、発酵原料液の供給と培養物の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。発酵原料液には、上記に示したような菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。
発酵培養液中の原核微生物の濃度は、発酵培養液の環境が微生物の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが効率よい生産性を得る上で好ましく、一例として、乾燥重量として5g/L以上に維持することにより良好な生産効率が得られる。また、連続発酵装置の運転上の不具合や生産効率の低下を招かなければ、原核微生物の濃度の上限値は特に限定されない。
発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、培養管理上、通常、単一の発酵反応槽で行うことが好ましい。しかしながら、菌体を増殖しつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵反応槽の数は問わない。発酵反応槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵反応槽を用いることもあり得る。この場合、複数の発酵反応槽を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても、発酵生産物の高生産性は得られる。
本発明においては、原核微生物を発酵反応槽に維持したままで、発酵反応槽からの発酵培養液の連続的かつ効率的な抜き出しが可能となることから、原核微生物を連続的に発酵培養し、十分な増殖を確保した後に発酵原料液組成を変更し、目的とする化学品を効率よく製造することも可能である。
本発明で使用される原核微生物は、乳酸の生産能力を持つものであり(ただし、バシラス属(Genus Bacillus)に属する微生物であって、D−乳酸を生産する能力を有する微生物を除く。)、このような原核微生物としては、例えば、発酵工業においてよく使用される大腸菌やコリネ型細菌などのバクテリアなどが挙げられる。使用される原核微生物は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
本発明で用いられる原核微生物とは、原核細胞からなる微生物のことである。原核細胞の最も際立った特徴は、細胞内に細胞核(核)と呼ばれる構造をもたないことである。その意味で、細胞核(核)を有する真核生物とは明確に区別される。本発明では、その原核微生物のうちで更に好ましくは乳酸菌を用いることができる。ここで乳酸菌とは、消費したグルコースに対して対糖収率として50%以上の乳酸を産生する原核微生物として定義することができる。
好ましい乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス属(Genus Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Genus Pediococcus)、テトラゲノコッカス属(Genus Tetragenococcus)、カルノバクテリウム属(Genus Carnobacterium)、バゴコッカス属(Genus Vagococcus)、ロイコノストック属(Genus Leuconostoc)、オエノコッカス属(Genus Oenococcus)、アトポビウム属(Genus Atopobium)、ストレプトコッカス属(Genus Streptococcus)、エンテロコッカス属(Genus Enterococcus)、ラクトコッカス属(Genus Lactococcus)、およびバシラス属(Genus Bacillus)に属する乳酸菌が挙げられる。
それらの中でも、乳酸の対糖収率が高い乳酸菌を選択して乳酸の生産に好ましく用いることができる。更に、乳酸菌の中でも、L−乳酸の対糖収率の高い乳酸菌を選択して乳酸の生産に好ましく用いることができる。L−乳酸とは、乳酸の光学異性体の一種であり、その鏡像体であるD−乳酸と明確に区別することができる。
L−乳酸の対糖収率が高い乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス・ヤマナシエンシス(Lactobacillus yamanashiensis)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・アジリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバシラス・アビアリエス(Lactobacillus aviaries)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・デルブレッキ(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバシラス・サリバリス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・シャーピイ(Lactobacillus sharpeae)、ペディオコッカス・デクストリニクス(Pediococcus dextrinicus)、およびラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)などが挙げられ、これらを選択して、L−乳酸の生産に用いることが可能である。
本発明の連続発酵による乳酸の製造方法により製造された濾過・分離発酵培養液に含まれる乳酸の分離・精製は、従来知られている濃縮、蒸留および晶析などの方法を組み合わせて行うことができる。
分離・精製方法としては、例えば、濾過・分離発酵培養液のpHを1以下にしてからジエチルエーテルや酢酸エチル等で抽出する方法、イオン交換樹脂に吸着洗浄した後に溶出する方法、酸触媒の存在下でアルコールと反応させてエステルとし蒸留する方法、およびカルシウム塩やリチウム塩として晶析する方法などが挙げられる。好ましくは、濾過・分離発酵液の水分を蒸発させた濃縮L−乳酸溶液を蒸留操作にかけることができる。ここで、蒸留する際には、蒸留原液の水分濃度が一定になるように水分を供給しながら蒸留することが好ましい。乳酸水溶液の留出後は、水分を加熱蒸発することにより濃縮し、目的とする濃度の精製乳酸を得ることができる。留出液としてエタノールや酢酸等の低沸点成分を含む乳酸水溶液を得た場合は、低沸点成分を乳酸濃縮過程で除去することが好ましい態様である。蒸留操作後、留出液について必要に応じて、イオン交換樹脂、活性炭およびクロマト分離等による不純物除去を行い、さらに高純度の乳酸を得ることもできる。
本発明の連続発酵による乳酸の製造方法で用いられる連続発酵装置のうち、分離膜エレメントが発酵反応槽の内部に設置された代表的な一例を図1の概要図に示す。図1は、本発明で用いられる膜分離型の連続発酵装置の一つの実施の形態を説明するための概要側面図である。図1において、膜分離型の連続発酵装置は、発酵反応槽1と水頭差制御装置3で基本的に構成されている。発酵反応槽1内の分離膜エレメント2には、多孔性膜が組み込まれている。この多孔性膜と分離膜エレメントとしては、例えば、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜および分離膜エレメントを使用することができる。分離膜エレメントに関しては、追って詳述する。
次に、図1の膜分離型の連続発酵装置による連続発酵の形態について説明する。培地供給ポンプ7によって、培地を発酵反応槽1に連続的もしくは断続的に投入する。培地については、投入前に必要に応じて加熱殺菌、加熱滅菌あるいはフィルターを用いた滅菌処理を行うことができる。発酵生産時には、必要に応じて、発酵反応槽1内の攪拌機5で発酵反応槽1内の発酵培養液を攪拌し、また必要に応じて、気体供給装置4によって必要とする気体を発酵反応槽1内に供給することができる。また必要に応じて、pHセンサ・制御装置9およびpH調整溶液供給ポンプ8によって発酵反応槽1内の発酵培養液のpHを調整し、また必要に応じて、温度調節器10によって発酵反応槽1内の発酵培養液の温度を調節することができる。このようにすることにより、より生産性の高い発酵生産を行うことができる。
ここでは、計装・制御装置による発酵培養液の物理化学的条件の調節に、pHおよび温度を例示したが、必要に応じて、溶存酸素やORPの制御、更にはオンラインケミカルセンサーなどの分析装置により発酵培養液中の乳酸の濃度を測定し、それを指標とした物理化学的条件の制御を行うことができる。また、培地の連続的もしくは断続的投入の形態に関しては、特に限定されるものではないが、上記計装装置による発酵液の物理化学的環境の測定値を指標として、培地投入量および速度を適宜調節することができる。
発酵培養液は、発酵反応槽1内に設置された分離膜エレメント2によって、原核微生物と発酵生産物に濾過・分離され装置系から取り出される。また、濾過・分離された原核微生物は、装置系内に留まることにより装置系内の原核微生物濃度を高く維持することができ、生産性の高い発酵生産を可能としている。ここで、分離膜エレメント2による濾過・分離は発酵反応槽1の水面との水頭差圧によって行い、特別な動力を必要としない。また、必要に応じて、レベルセンサ6および水頭差圧制御装置3によって、分離膜エレメント2の濾過・分離速度およびよび発酵反応槽1内の発酵液量を適当に調節することができる。また、必要に応じて、分離膜エレメント2からの濾過液の重量によって装置系内に添加する発酵原料の液量を適当に調節し、発酵反応槽1内の発酵培養液量を適当に調節することができる。上記の分離膜エレメント2による濾過・分離は水頭差圧によって行うことを例示したが、必要に応じて、ポンプ等による吸引濾過あるいは装置系内を加圧することにより、濾過・分離することもできる。
また、図1において、別の培養槽(図示せず)で連続発酵により原核微生物を培養し、それを必要に応じて発酵反応槽1内に供給することができる。別の培養槽で連続発酵により原核微生物を培養し、その培養液を必要に応じて発酵反応槽1内に供給することにより、常にフレッシュで乳酸の生産能力の高い原核微生物による連続発酵が可能となり、高い生産性能を長期間維持した連続発酵が可能となる。
次に、本発明の連続発酵による乳酸の製造方法で用いられる膜分離型の連続発酵装置のうち、分離膜エレメントが、発酵反応槽の外部に設置された代表的な一例を図2に示す。図2は、本発明で用いられる他の膜分離型の連続発酵装置の一つの実施の形態を説明するための概要側面図である。
図2において、膜分離型の連続発酵装置は、発酵反応槽1と膜分離槽12と水頭差制御装置3で基本的に構成されている。そして、膜分離槽12は、発酵液循環ポンプ11を介して発酵反応槽1に接続されており、その内部に分離膜エレメント2が配置されている。ここで、分離膜エレメント2には、多孔性膜が組み込まれている。この多孔性膜と分離膜エレメントとしては、例えば、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜および分離膜エレメントを使用することが好適である。
図2において、培地供給ポンプ7によって培地を発酵反応槽1に投入し、必要に応じて、攪拌機5で発酵反応槽1内の発酵培養液を攪拌し、また必要に応じて、気体供給装置4によって必要とする気体を供給することができる。このとき、供給した気体を回収リサイクルして再び気体供給装置4で供給することができる。また、必要に応じて、pHセンサ・制御装置9およびよびpH調整溶液供給ポンプ8によって発酵培養液のpHを調整し、また必要に応じて、温度調節器10によって発酵培養液の温度を調節することにより、生産性の高い発酵生産を行うことができる。さらに、装置内の発酵培養液は、発酵液循環ポンプ11によって発酵反応槽1と膜分離槽12の間を循環する。発酵生産物を含む発酵培養液は、分離膜エレメント2によって原核微生物と発酵生産物に濾過・分離され、装置系から取り出すことができる。また、濾過・分離された原核微生物は、装置系内に留まることにより装置系内の原核微生物濃度を高く維持することができ、生産性の高い発酵生産を可能としている。
ここで、分離膜エレメント2による濾過・分離は、膜分離槽12の水面との水頭差圧によって行い、特別な動力を必要としない。また、必要に応じて、レベルセンサ6および水頭差圧制御装置3によって、分離膜エレメント2の濾過・分離速度および装置系内の発酵液量を適当に調節することができる。また、必要に応じて、気体供給装置4によって必要とする気体を膜分離槽12内に供給することができる。このとき、供給された気体を回収リサイクルして再び気体供給装置4で膜分離槽12内に供給することができる。
上記のように、分離膜エレメント2による濾過・分離は水頭差圧によって行うことを例示したが、必要に応じて、ポンプ等による吸引濾過あるいは装置系内を加圧することにより濾過・分離することもできる。
また、図2において、別の培養槽(図示せず)で連続発酵により原核微生物を培養し、それを必要に応じて発酵反応槽1内に供給することができる。別の培養槽で連続発酵により原核微生物を培養し、その培養液を必要に応じて発酵反応槽1内に供給することにより、常にフレッシュで乳酸の生産能力の高い原核微生物による連続発酵が可能となり、高い生産性能を長期間維持した連続発酵が可能となる。
次に、本発明で用いられる分離膜エレメントについて、好適な形態の例である国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜および分離膜エレメントを、以下に図面を用いてその概略を説明する。図3は、本発明で用いられる分離膜エレメントの一つの実施の形態を説明するための概要斜視図である。
分離膜エレメントは、図3に示すように、剛性を有する支持板13の両面に、流路材14と前記の分離膜15(平膜)をこの順序で配し構成されている。支持板13は、両面に凹部16を有している。分離膜15は、発酵培養液を濾過する。流路材14は、分離膜15で濾過された透過水を効率よく支持板13に流すためのものである。支持板13に流れた透過水は、支持板13の凹部16を通り、集水パイプ17を介して連続発酵装置外部に取り出される。透過水を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
図4に示す分離膜エレメントについて説明する。図4は、本発明で用いられる別の分離膜エレメントを例示説明するための概略斜視図である。
分離膜エレメントは、図4に示すように、中空糸膜(多孔性膜)で構成された分離膜束18と上部樹脂封止層19と下部樹脂封止層20によって主に構成される。分離膜束18は、上部樹脂封止層19および下部樹脂封止層20よって束状に接着・固定化されている。下部樹脂封止層20による接着・固定化は、分離膜束18の中空糸膜(多孔性膜)の中空部を封止しており、発酵培養液の漏出を防ぐ構造になっている。一方、上部樹脂封止層19は、分離膜束18の中空糸膜(多孔性膜)の内孔を封止しておらず、集水パイプ22に透過水が流れる構造となっている。この分離膜エレメントは、支持フレーム21を介して連続発酵装置内に設置することが可能である。分離膜束18によって濾過された透過水は、中空糸膜の中空部を通り、集水パイプ22を介して連続発酵装置外部に取り出される。透過水を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
本発明の乳酸の製造方法で用いられる連続発酵装置の分離膜エレメントを構成する部材は、高圧蒸気滅菌操作に耐性の部材であることが好ましい。連続発酵装置内が滅菌可能であれば、連続発酵時に好ましくない微生物による汚染の危険を回避することができ、より安定した連続発酵が可能となる。
分離膜エレメントを構成する部材は、高圧蒸気滅菌操作の条件である、121℃で15分間に耐性であることが好ましい。分離膜エレメント部材は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、PVDF、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリサルホン系樹脂等の樹脂を好ましく選定することができる。
本発明の乳酸の製造方法で用いられる連続発酵装置では、分離膜エレメントは、図1のように発酵反応槽内に設置しても良いし、図2のように発酵反応槽外に設置しても良い。分離膜エレメントを発酵反応槽外に設置する場合には、別途、膜分離槽を設けてその内部に分離膜エレメントを設置することができ、発酵反応槽と膜分離槽の間を発酵培養液を循環させながら、分離膜エレメントにより発酵培養液を連続的に濾過することができる。
本発明で用いられる連続発酵装置では、膜分離槽は、高圧蒸気滅菌可能であることが好ましい。膜分離槽が高圧蒸気滅菌可能であると、雑菌による汚染回避が容易である。
本発明の連続発酵による乳酸の製造方法に従って連続発酵を行った場合、従来のバッチ式の発酵と比較して、高い体積生産速度が得られ、極めて効率のよい発酵生産が可能となる。ここで、連続培養における発酵生産速度は、次の(式3)で計算される。
発酵生産速度(g/L/hr)
=抜き取り液中の生産物濃度(g/L)×発酵液抜き取り速度(L/hr)
÷装置の運転液量(L) ・・・・(式3)
また、バッチ式培養による発酵生産速度は、原料炭素源をすべて消費した時点の生産物量(g)を、炭素源の消費に要した時間(h)とその時点の培養液量(L)で除して求められる。
本発明の連続発酵による乳酸の製造方法で得られる乳酸は、主に、酸味料として従来のクエン酸や酒石酸の代替品として用いられており、酸性の洗浄剤としての用途にも用いられる。また、乳酸には、医薬品として、局方品の酸薬や皮膚腐触薬などの用途がある。また、乳酸には、誘導体として、ナトリウム塩(化粧品や食品などの保湿剤用途)や、カルシウム塩(カルシウム剤や強壮剤用途)などの用途もある。乳酸には、その他、メチルエステルやエチルエステルなどのエステルとして、フロンやトリクロロエタンなどのオゾン層破壊性溶剤の代替品としての用途もある。最近では、乳酸は、ポリ乳酸の原料としての用途が大きく広がっている。本発明の連続発酵による乳酸の製造方法を用いることにより、これら幅広い用途のある乳酸を効率的に製造することができることから、より安価に乳酸を提供することが可能となる。
以下、本発明の連続発酵による乳酸の製造方法をさらに詳細に説明するために、図1および図2の概要図に示す連続発酵装置を用いることによる、連続的な乳酸の発酵生産について、実施例を挙げて説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
下記の乳酸の製造方法に関する実施例においては、乳酸を生産させる微生物として、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)のうち、乳酸菌であるラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis) JCM7638株およびラクトバシラス カゼイ(Lactobacillus casei)のうち、乳酸菌であるラクトバシラス カゼイ(Lactobacillus casei)NRIC1941株を用いた。また、発酵原料のうち炭素源としては、グルコースまたはケーンジュースを用い、窒素源と無機塩類に関しては、下記の実施例で説明する原料を用いた。
(実施例1)連続発酵による乳酸の製造(その1)
図1に示す連続発酵装置を稼働させることにより、乳酸が連続発酵で得られるかどうかを調べるため、同装置を用いた連続発酵試験を行った。培地には表1に示すラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。分離膜エレメント部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成形品を用いた。分離膜には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする、後述の参考例1で作製した多孔性膜を用いた。この多孔性膜の特性を調べたところ、平均細孔径が0.1μmであり、純水透過係数が50×10-9m3/m2/s/paであった。この実施例1における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:37(℃)
・発酵反応槽通気量:200(mL/分)
・発酵反応槽攪拌速度:600(rpm)
・滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽、および使用培地は総て121℃、20分のオー
トクレーブにより高圧蒸気滅菌。
・pH調整:8N アンモニア水溶液によりpHを6.5に調整
・膜透過水量制御:膜分離槽水頭差により流量を制御(水頭差は2m以内で制御した。)。
原核微生物として、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)JCM7638株を用い、培地として表1に示す組成のラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地を用いた。発酵培養液に含まれる乳酸は、下記に示す条件でHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
・カラム:Shim−Pack SPR−H(島津社製)
・移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/分)
・反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、および0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/分)
・検出方法:電気伝導度
・温度:45(℃)。
また、L−乳酸の光学純度測定は、下記の条件でHPLC法により測定した。
・カラム:TSK−gel Enantio L1(東ソー社製)
・移動相 :1mM 硫酸銅水溶液
・流速:1.0ml/分
・検出方法 :UV254nm
・温度 :30℃。
また、L−乳酸の光学純度は次式で計算される。
・光学純度(%)=100×(L−D)/(L+D)
ここで、LはL−乳酸の濃度を表し、DはD−乳酸の濃度を表す。また、グルコース濃度の測定には、“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。
まず、ラクトコッカス ラクティス JCM7638株を、試験管で表1に示す5mlの窒素ガスでパージしたラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地で24時間、37℃の温度で静置培養した(前々々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、48時間、37℃の温度で静置培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続発酵装置の窒素ガスでパージした1Lの乳酸発酵培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって600rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整と37℃の温度に温度調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵培養液量を1.5Lとなるように膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵による乳酸の製造を行った。このとき、気体供給装置から窒素ガスを発酵反応槽1内に供給し、排出されたガスを回収して再度発酵反応槽1に供給した。すなわち、窒素ガスを含む気体のリサイクル供給を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、発酵反応槽水頭を最大2m以内、すなわち膜間差圧が20kPa以内となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、膜透過発酵液中の生産された乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。また、乳酸およびグルコース濃度から算出された投入グルコースから算出された乳酸生産速度を、表2に示した。400時間の発酵試験を行った結果、この連続発酵装置を用いることにより、安定した乳酸の連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(実施例2)連続発酵による乳酸の製造(その2)
図2に示す連続発酵装置を稼働させることにより、乳酸が得られるかどうかを調べるため、同装置を用いた連続発酵試験を行った。培地には表1に示すラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。分離膜エレメント部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成形品を用いた。また分離膜には、実施例1と同じ多孔性膜を用いた。この多孔質膜の特性を調べたところ、平均細孔径は0.1μmであり、純水透過係数は50×10-9m3/m2/s/paであった。この実施例2における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:37(℃)
・発酵反応槽通気量:200(L/分)
・発酵反応槽攪拌速度:600(rpm)
・滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽、および使用培地は総て121℃、20分のオー トクレーブにより高圧蒸気滅菌。
・pH調整:8N アンモニア水溶液によりpHを6.5に調整
・膜透過水量制御:膜分離槽水頭差により流量を制御(水頭差は2m以内で制御した。)。
原核微生物として、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)JCM7638株を用い、培地として表1に示す組成のラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地を用い、生産物である乳酸およびグルコースは、実施例1に示す方法で測定した。
まず、ラクトコッカス ラクティス JCM7638株を、試験管で表1に示す5mlの窒素ガスでパージしたラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地で24時間、37℃の温度で静置培養した(前々々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、48時間、37℃の温度で静置培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示す膜分離型連続発酵装置の窒素ガスでパージした1Lの乳酸発酵培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって600rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整と37℃の温度に温度調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、連続・バッチ発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵培養液量を1.5Lとなるように膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵による乳酸の製造を行った。このとき、気体供給装置から窒素ガスを発酵反応槽1内に供給し、排出されたガスを回収して再度発酵反応槽1に供給した。すなわち、窒素ガスを含む気体のリサイクル供給を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、発酵反応槽水頭を最大2m以内、すなわち膜間差圧が20kPa以内となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、膜透過発酵培養液中の生産された乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。また、乳酸およびグルコース濃度から算出された投入グルコースから算出された乳酸生産速度を、表2に示した。400時間の発酵試験を行った結果、この連続発酵装置を用いることにより、安定した乳酸の連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(実施例3)連続発酵による乳酸の製造(その3)
乳酸が連続発酵で得られるかどうかを調べるため、実施例1と同じく図1に示す続発酵装置を用いて連続発酵試験を行った。培地には表3に示すラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。分離膜エレメント部材、分離膜および多孔質膜の特性は実施例1に記載のものと同様である。この実施例3における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:30(℃)
・発酵反応槽通気量:100(mL/分)
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽、および使用培地は総て121℃、20分のオー
トクレーブにより高圧蒸気滅菌。
・pH調整:8N 水酸化カルシウム水溶液によりpHを6.0に調整
・膜透過水量制御:膜分離槽水頭差により流量を制御(水頭差は2m以内で制御した。)。
原核微生物として、ラクトバシラス カゼイ(Lactobacillus casei) NRIC1941株を用い、培地として表3に示す組成のラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地を用いた。発酵培養液に含まれる乳酸は、実施例1と同様な条件で測定することで確認した。
また、L−乳酸の光学純度も実施例1と同様で計算される。また、グルコース濃度の測定には、“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用い、スクロース濃度とフラクトース濃度の測定には、F−キット(Roche社製)を用いた。
まず、ラクトバシラス カゼイ NRIC1941株を、試験管で表3に示す5mlの窒素ガスでパージしたラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地で24時間、30℃の温度で静置培養した(前々々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、24時間、30℃の温度で静置培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示す連続発酵装置の窒素ガスでパージした1Lの乳酸発酵培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって800rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整と30℃の温度に温度調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵培養液量を1.5Lとなるように膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵による乳酸の製造を行った。このとき、気体供給装置から窒素ガスを発酵反応槽1内に供給し、排出されたガスを回収して再度発酵反応槽1に供給した。すなわち、窒素ガスを含む気体のリサイクル供給を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、発酵反応槽水頭を最大2m以内、すなわち膜間差圧が20kPa以内となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、膜透過発酵液中の生産された乳酸濃度および残存スクロース、フラクトースおよびグルコース濃度を測定した。また、測定した総スクロース、フラクトースおよびグルコース濃度は総グルコース濃度に換算した。また、乳酸および残存グルコース濃度から算出された投入グルコースから算出された乳酸生産速度を、表2に示した。500時間の発酵試験を行った結果、この連続発酵装置を用いることにより、安定した乳酸の連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(実施例4)連続発酵による乳酸の製造(その4)
図2に示す連続発酵装置を稼働させることにより、乳酸が得られるかどうかを調べるため、同装置を用いた連続発酵試験を行った。培地には表3に示すラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。分離膜エレメント部材、分離膜および多孔質膜の特性は実施例2に記載のものと同様である。この実施例4における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:30(℃)
・発酵反応槽通気量:100(L/分)
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・滅菌:分離膜エレメントを含む培養槽、および使用培地は総て121℃、20分のオー トクレーブにより高圧蒸気滅菌。
・pH調整:8N 水酸化カルシウム水溶液によりpH6.0に調整
・膜透過水量制御:膜分離槽水頭差により流量を制御(水頭差は2m以内で制御した。)。
原核微生物として、ラクトバシラス・カゼイ NRIC1941株を用い、培地として表3に示す組成のラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地を用い、生産物である乳酸およびグルコースは、実施例1に示す方法で測定した。
また、スクロース濃度とフラクトース濃度の測定には、F−キット(Roche社製)を用いた。
まず、ラクトバシラス・カゼイ NRIC1941株を、試験管で表3に示す5mlの窒素ガスでパージしたラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地で24時間、30℃の温度で静置培養した(前々々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、24時間、30℃の温度で静置培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示す連続発酵装置の窒素ガスでパージした1Lの乳酸発酵培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって800rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整と30℃の温度に温度調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、連続・バッチ発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵培養液量を1.5Lとなるように膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵による乳酸の製造を行った。このとき、気体供給装置から窒素ガスを発酵反応槽1内に供給し、排出されたガスを回収して再度発酵反応槽1に供給した。すなわち、窒素ガスを含む気体のリサイクル供給を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、発酵反応槽水頭を最大2m以内、すなわち膜間差圧が20kPa以内となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、膜透過発酵液中の生産された乳酸濃度および残存スクロース、フラクトースおよびグルコース濃度を測定した。また、測定した総スクロース、フラクトースおよびグルコース濃度は総グルコース濃度に換算した。また、乳酸および残存グルコース濃度から算出された投入グルコースから算出された乳酸生産速度を、表2に示した。500時間の発酵試験を行った結果、この連続発酵装置を用いることにより、安定した乳酸の連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(実施例5)連続発酵による乳酸の製造(その5)
参考例1で作成したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜の代わりに、分離膜として参考例2で作製したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜(中空糸膜)を用いた他は、実施例3と同様にして、連続発酵試験を行った。また、乳酸および総糖濃度から算出された投入グルコースから算出された乳酸生産速度を、表2に示した。500時間の発酵試験を行った結果、この連続発酵装置を用いることにより、安定した乳酸の連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(実施例6)連続発酵による乳酸の製造(その6)
参考例1で作成したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜の代わりに、分離膜として参考例2で作製したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜(中空糸膜)を用いた他は、実施例4と同様にして、連続発酵試験を行った。また、乳酸および総糖濃度から算出された投入グルコースから算出された乳酸生産速度を、表2に示した。500時間の発酵試験を行った結果、この連続発酵装置を用いることにより、安定した乳酸の連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(比較例1)バッチ発酵による乳酸の製造
原核微生物を用いた発酵形態として最も典型的なバッチ発酵を2L容のジャーファーメンターを用いて行い、その乳酸生産性を評価した。培地には表1に示すラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。この比較例1では、原核微生物としてラクトコッカス ラクティス JCM7638株を用い、生産物である乳酸の濃度の評価は、実施例1に示した方法を用いて評価し、グルコース濃度の測定には、“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。比較例1の運転条件は、下記のとおりである。
・発酵反応槽容量(乳酸発酵培地量):1.5(L)
・温度調整:37(℃)
・発酵反応槽通気量:200(mL/分)
・発酵反応槽攪拌速度:200(rpm)
・pH調整:8N アンモニア水溶液によりpH6.5に調整
まず、ラクトコッカス ラクティス JCM7638株を、試験管で表1に示す5mlの窒素ガスでパージしたラクトコッカス・ラクティス用乳酸発酵培地で24時間、37℃の温度で静置培養した(前々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、48時間、37℃の温度で静置培養した(前培養)。前培養液をジャーファーメンターの1.5Lの表1に示す連続・バッチ発酵培地に植菌し、バッチ発酵を行った。バッチ発酵の結果を、上記実施例1および実施例2の連続発酵試験で得られた乳酸発酵生産性と比較して表2に示す。
(比較例2)バッチ発酵による乳酸の製造
原核微生物を用いた発酵形態として最も典型的なバッチ発酵を2L容のジャーファーメンターを用いて行い、その乳酸生産性を評価した。培地には表3に示すラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地を用い、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌処理して用いた。この比較例2では、原核微生物としてラクトバシラス カゼイ NRIC1941株を用い、生産物である乳酸の濃度の評価は、実施例1に示した方法を用いて評価し、グルコース濃度の測定には“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。またスクロース濃度とフラクトース濃度の測定にはF−キット(Roche社)を用いた。比較例2の運転条件は下記のとおりである。
・発酵反応槽容量(乳酸発酵培地量):1.5(L)
・温度調整:30(℃)
・発酵反応槽通気量(窒素ガス):100(mL/分)
・発酵反応槽攪拌速度:120(rpm)
・pH調整:8N 水酸化カルシウム水溶液によりpHを6.0に調整。
まず、ラクトバシラス カゼイ NRIC1941株を、試験管で表3に示す5mlの窒素ガスでパージしたラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地で24時間、30℃の温度で静置培養した(前々培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、24時間、30℃の温度で静置培養した(前培養)。前培養液をジャーファーメンターの1.5Lの表3に示すラクトバシラス・カゼイ用乳酸発酵培地に植菌し、バッチ発酵を行った。バッチ発酵の結果を、上記実施例3〜6の連続発酵試験で得られた乳酸発酵生産性と比較して表2に示す。
これらを比較した結果、図1および図2の膜分離型の連続発酵装置を用いることにより、乳酸の生産速度が大幅に向上することが明らかになった。すなわち、本発明によって開示された多孔性膜を組み込んだ膜分離型の連続発酵装置を用い、膜間差圧を制御することにより、発酵培養液を分離膜によって濾液と未濾過液に分離し、濾液から所望の発酵生産物を回収するとともに、未濾過液を発酵培養液に戻す連続発酵方法を可能とし、微生物量を高く維持しながら、連続発酵による乳酸の製造が可能であることが明らかとなった。
(参考例1) 多孔性膜の作製(その1)
樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂を、また溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)をそれぞれ用い、これらを90℃の温度下に十分に攪拌し、次の組成を有する原液を得た。
・PVDF:13.0重量%
・DMAc:87.0重量%
次に、上記の原液を25℃の温度に冷却した後、あらかじめガラス板上に貼り付けて置いた、密度が0.48g/cm3で、厚みが220μmのポリエステル繊維製不織布に塗布し、直ちに次の組成を有する25℃の温度の凝固浴中に5分間浸漬して、多孔質樹脂層が形成された多孔質基材を得た。
・水 :30.0重量%
・DMAc:70.0重量%
この多孔質基材をガラス板から剥がした後、80℃の温度の熱水に3回浸漬してDMAcを洗い出し、総膜厚が350μmの分離膜(平膜の多孔性膜)を得た。この分離膜の凝固浴と接触した側における、多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、観察できる細孔すべての直径の平均は2.0μmであり、反対側における、多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、観察できる細孔すべての直径の平均は0.1μmであった。次に、上記の分離膜について純水透水量を評価したところ、50×10-9m3/m2・s・Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。
(参考例2)多孔性膜の作製(その2)
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ-ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で配合し、170℃の温度で混合溶解し原液を作製した。このようにして得られた原液を、γ-ブチロラクトンを中空部形成液体として随拌させながら口金から吐出し、温度20℃のγ-ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社、CAP482−0.5)を1重量%、N-メチル-2-ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社製、商品名イオネットT−20C)を5重量%、および水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して原液を調整した。このようにして得られた原液を、上記で得られた中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させた本発明で用いる多孔性膜(中空糸膜)を製作した。得られた中空糸多孔性膜の内径は900μm、膜厚は600μmであり、中空糸多孔性膜の被処理水側表面の平均細孔径は、0.05μmであった。次に、上記の分離膜である中空糸膜(多孔性膜)について純水透水量を評価したところ、5.5×10-9m3/m2・s・Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。また、平均細孔径の標準偏差 は0.006μmであった。