JP5266880B2 - 低温焼戻し用鋼板 - Google Patents
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Description
(1)従来から使用されているS50C〜S65C鋼のようなC含有量の高い材料では、焼入れ前において優れた加工性を確保し、かつ、焼入れ焼戻し後の鋼板部材において優れた靭性を確保することはできない。
図1は、Si:0.21%、Mn:0.61%、P:0.012%、S:0.007%、Cr:0.15%、Ti:0.001%、sol.Al:0.034%、N:0.0040%を基本組成としてC含有量のみを変化させた化学組成を有する熱延鋼板に、870℃に20分間保持したのちに油焼入れを施し、その後各温度で30分間の焼戻しを施した場合における、焼戻し温度が焼入れ焼戻し後の鋼板の表面硬度に及ぼす影響を示すものである。同図に示されるように、焼入れままの硬度はC含有量によって決定され、焼戻し温度が高温になるにしたがって表面硬度は低下する。同図より、焼戻し後にHRCで43〜47の硬度を確保するには少なくともC含有量は0.30%以上とする必要がある。しかしながら、400℃以下の温度域においては低温脆性が生じてしまい、焼入れ焼戻し後において優れた靭性を確保することはできないから、焼戻し温度を400℃以上とすることが必要であり、このような焼戻し温度を前提とすると、C含有量は0.50%以上となる。
したがって、従来の技術思想の延長線上ではC含有量を低減させることはできないか、できたとしても焼入れ前において優れた加工性を確保することはできなかったのである。
P≦0.2×(31/11)×(B*)0.5 (1)
0.0005≦B*≦0.0050 (2)
B*=max[B−(11/14)×N*,0] (3)
N*=max[N−(14/48)×Ti,0] (4)
ここで、各式におけるP、N、Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
(1)質量%で、C:0.30〜0.47%、Si:0.30%以下、Mn:0.30〜1.00%、S:0.0010〜0.02%、Ti:0.002〜0.030%、Cu:0.15%以下、Al:0.050%以下およびN:0.0070%以下を含有し、さらにPおよびBの含有量が下記式(1)〜(4)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有することを特徴とする、焼入れ後に400℃以下の焼戻しが施される低温焼戻し用鋼板。
0.0005≦B*≦0.0050 (2)
B*=max[B−(11/14)×N*,0] (3)
N*=max[N−(14/48)×Ti,0] (4)
ここで、各式におけるP、N、Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
P≦0.2×(31/11)×(B * ) 0.5 (1)
0.0005≦B * ≦0.0050 (2)
B * =max[B−(11/14)×N * ,0] (3)
N * =max[N−(14/48)×Ti,0] (4)
ここで、各式におけるP、N、Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.50%以下を含有することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の低温焼戻し用鋼板。
(1)C:0.30〜0.47%
Cは、焼入れ焼戻し後の鋼板部材の強度(硬度)を決定するとともに、焼入れ前の鋼板の加工性(強度)に大きな影響を及ぼす重要な元素である。C含有量が0.30%未満では、焼入れ焼戻し後の鋼板部材の強度を十分に高めることが困難となる。例えば、鋼板部材がチェーンである場合には、チェーン芯部の硬度をHRCで43〜47とすることが困難となる。一方、C含有量が0.47%超では、焼入れ前の鋼板は強度が高く加工性に劣り、焼入れ焼戻し後の鋼板部材は靭性に劣る。したがって、C含有量を0.30%以上0.47%以下とする。
Siは、不純物として鋼中に含有される元素であるが、脱酸剤として有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、Siは固溶強化元素であり、過剰に含有すると焼入れ前の鋼板は強度が高く加工性に劣る。したがって、Si含有量は0.30%以下とする。
Mnは、脱酸剤として有効な元素であるとともに、焼入れ時の焼入れ倍数を高め、硬化深度を高めるのに有効な元素でもある。このため、Mn含有量を0.30%以上とする。一方、過剰に含有すると焼入れ前の鋼板の強度が高くなり加工性が劣化する。このため、Mn含有量を1.00%以下とする。
Pは、本発明において重要な元素である。
Pは、不純物として鋼中に含有される元素であり、オーステナイト粒界に偏析しやすく、これにより粒界強度を低下させて靭性を著しく劣化させる。したがって、P含有量は少ないほど好ましい。
0.0005≦B*≦0.0050 (2)
B*=max[B−(11/14)×N*,0] (3)
N*=max[N−(14/48)×Ti,0] (4)
ここで、各式におけるP、N、Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
Sは、不純物として鋼中に含有される元素であり、S含有量が0.02%超では焼入れ焼戻し後の鋼板部材の靭性を劣化させる。一方、Sは焼入れ前の鋼板の打抜き加工性を向上させる作用を有し、S含有量が0.0010%未満では焼入れ前の鋼板の打抜き加工性が劣化する。したがって、S含有量は0.0010%以上0.02%以下とする。好ましくは、0.004%以上0.01%以下である。
Bは、本発明において最も重要な元素である。
Bは、焼入れ時の焼入れ倍数を高め、鋼板部材の板厚中心部まで焼きを入れるのに有効な元素である。さらに、焼入れ時にPに優先してオーステナイト粒界に偏析して、低温脆性を惹き起こすPの粒界偏析を抑制する元素でもある。このようなBの作用を利用することにより、C含有量の低減にともなう焼入れ性の低下を補償することのみならず、従来低温脆性を回避するために忌避されていた400℃以下の低温焼戻しによっても良好な靭性を確保することを可能にするとともに、かかる低温焼戻しを適用することによって低いC含有量でありながら焼戻し後において高い強度を確保することをも可能にする。すなわち、C含有量の低減と低温焼戻しの適用とを可能にすることにより、焼入れ前においては優れた加工性を有するとともに焼入れ焼戻し後においては高い強度と優れた靭性とを備える鋼板部材を得ることを可能とするのである。
N*=max[N−(14/48)×Ti,0] (4)
ここで、各式におけるN、Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
Alは、脱酸剤として有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると、表面欠陥を生じ易くなったり、焼入れ前の鋼板の強度が高くなり加工性が劣化したりする。したがって、Al含有量を0.050%以下とする。Alによる脱酸を目的とする場合には、Al含有量を0.005%以上とすることが好ましい。なお、脱酸をSiのみで行う場合には、Alは添加しなくともよい。
Nは、上述したようにBと結びついてBNを形成し、固溶状態にある有効Bを減少させてしまう。したがって、N含有量は少ないほど好ましく、本発明においては0.0070%以下とする。好ましくは0.0050%以下である。
Tiは、Bよりも高温域でNと結合して、NをTiNとして固定する作用を有するので、Nと結合することにより消費されるBの量を低減し、有効Bを確保するのに有効な元素である。したがって、Ti含有量を0.002%以上とする。好ましくは0.005%以上である。しかし、過剰に含有すると、Nに対して過剰なTiがCを結合してTiCを形成し、焼入れ前の鋼板の強度が高くなり加工性が劣化する。また、炭窒化物を形成することにより、靭性の劣化や焼入れ性の低下を招く。したがって、Ti含有量を0.030%以下とする。好ましくは0.025%以下である。
Crは、Mnと同様に焼入れ時の焼入れ倍数を高め、硬化深度を高める有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると焼入れ前の鋼板の強度が高くなり加工性が劣化する。また、コストの増加も招く。このため、Cr含有量は0.50%以下とする。上記効果をより確実に得るには、Cr含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Cuは、酸洗時の過酸洗を抑制し、酸洗後の表面状態を安定化する作用を有するので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると焼入れ前の鋼板の強度が高くなり加工性が劣化する。また、コストの増加も招く。このため、Cu含有量を0.15%以下とする。好ましくは0.12%以下である。上記効果をより確実に得るには、Cu含有量を0.05%以上とすることが好ましく、0.08%以上とすることがさらに好ましい。
Niは、靭性向上に有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、Niは高価な元素であり、過剰な添加は著しいコストの増加を招く。したがって、Ni含有量を0.15%以下とする。好ましくは0.12%以下である。上記効果をより確実に得るには、Ni含有量を0.04%以上とすることが好ましく、0.06%以上とすることがさらに好ましい。
Moも、靭性向上に有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると焼入れ前の鋼板の強度が高くなり加工性が劣化する。また、コストの増加も招く。したがって、Mo含有量を0.30%以下とする。好ましくは0.28%以下である。上記効果をより確実に得るには、Mo含有量を0.02%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがさらに好ましい。
Nbは、焼入れ時にオーステナイト結晶粒を細粒化し、靭性を向上させる効果を有する有効な元素であるので、必要に応じて添加してもよい。一方、過剰に含有すると、炭化物を形成して、焼入れ前の鋼板の強度が高くなり加工性を劣化させたり、焼入れ時の焼入れ性を低下させたりする。したがって、Nb含有量を0.030%以下とする。好ましくは0.025%以下である。上記効果をより確実に得るには、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましく、0.010%以上とすることがさらに好ましい。
本発明に係る鋼板は、Bを含有させることにより、C含有量の低減に伴う焼入れ性の低下を補償するのみならず、低温脆性を惹き起こすPの粒界偏析を抑制して低温での焼戻しを可能にし、これによってC含有量の低減に伴う焼入れ焼戻し後の鋼板部材の強度(硬度)低下を補償するのであり、これにより、焼入れ前においては優れた加工性を有するとともに焼入れ焼戻し後においては高い強度と優れた靭性とを備える鋼板部材を得ることを可能にするのである。
本発明に係る鋼板は、上記化学組成を有するので、常法にしたがって熱間圧延工程などを行うことにより、焼入れ前においては優れた加工性を有するとともに焼入れ焼戻し後においては高い強度と優れた靭性とを備える鋼板部材を得ることが可能となる。したがって、製造方法は特に限定する必要はないが、本発明に係る焼入れ焼戻し用鋼板の好適な製造方法を以下に例示する。
i)熱間圧延完了温度:850〜910℃
熱間圧延完了温度が910℃超の場合には、スケール厚が厚くなりすぎて、酸洗効率や歩留まりが低下したり、表面品質が劣化したりする場合がある。一方、熱間圧延完了温度が850℃未満の場合には、鋼塊または鋼片の変形抵抗が大きくなって熱間圧延そのものの実施が困難になったりする場合がある。したがって、熱間圧延完了温度は850〜910℃とすることが好ましい。
巻取温度が低すぎると鋼板が高強度となり、熱間圧延ままの鋼板を焼入れに供する場合には焼入れ前の鋼板の加工性が劣化するため、巻取温度は550℃以上とすることが好ましい。一方、巻取温度があまりに高すぎると、スケール厚が厚くなりすぎて、酸洗効率や歩留まりが低下したり、表面品質が劣化したりする場合があるので、巻取温度は660℃以下とすることが好ましい。
本発明に係る鋼板は、熱延鋼板であっても冷延鋼板であってもよい。
熱延鋼板の場合には、熱間圧延ままの鋼板であってもよく、熱延板焼鈍を施してさらに軟質化した鋼板であってもよい。熱延板焼鈍を施す場合には、焼鈍温度を650℃以上760℃以下とし、焼鈍時間を0.1時間以上30時間以下とすることが好ましい。通常酸洗処理が施されて鋼板部材へと加工されたのちに、焼入れ焼戻しが施される。
表1に示す化学組成を有するスラブを1250℃に加熱して、仕上温度:870℃、巻取温度:620℃の条件にて熱間圧延を施して2.6mm厚の熱延鋼板とした。得られた熱延鋼板に酸洗処理を施して各試験に供した。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.30〜0.47%、Si:0.30%以下、Mn:0.30〜1.00%、S:0.0010〜0.02%、Ti:0.002〜0.030%、Cu:0.15%以下、Al:0.050%以下およびN:0.0070%以下を含有し、さらにPおよびBの含有量が下記式(1)〜(4)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有することを特徴とする、焼入れ後に400℃以下の焼戻しが施される低温焼戻し用鋼板。
P≦0.2×(31/11)×(B*)0.5 (1)
0.0005≦B*≦0.0050 (2)
B*=max[B−(11/14)×N*,0] (3)
N*=max[N−(14/48)×Ti,0] (4)
ここで、各式におけるP、N、Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。 - 質量%で、C:0.30〜0.47%、Si:0.30%以下、Mn:0.30〜1.00%、S:0.0010〜0.02%、Ti:0.002〜0.030%、Al:0.050%以下およびN:0.0070%以下を含有し、さらにPおよびBの含有量が下記式(1)〜(4)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有することを特徴とする、焼入れ後に250℃以上400℃以下の焼戻しが施されてHRCで44.3以上の表面硬度とされる低温焼戻し用鋼板。
P≦0.2×(31/11)×(B*)0.5 (1)
0.0005≦B*≦0.0050 (2)
B*=max[B−(11/14)×N*,0] (3)
N*=max[N−(14/48)×Ti,0] (4)
ここで、各式におけるP、N、Bは各元素の含有量(単位:質量%)を表し、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.50%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の低温焼戻し用鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ni:0.15%以下、Mo:0.30%以下およびNb:0.030%以下からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低温焼戻し用鋼板。
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