JP5289990B2 - 丸軸表面の改質方法及びこれに用いる改質装置 - Google Patents

丸軸表面の改質方法及びこれに用いる改質装置 Download PDF

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本発明は、軸受等に適した丸軸表面の改質方法及びこれに用いる改質装置に関する。
相手材に対して高速で摺動し、相手材との間に大きな摩擦力が発生する部材では、アルミニウム合金、鉄鋼材等より成る基材の表面に硬質薄膜を形成して耐摩耗性を高めるのが一般的である。
基材に硬質薄膜を形成する方法として、例えば、外側構造体の円形内面に機能材料よりなる内側パイプを挿入セットし、円盤状の回転加圧工具を内側パイプの内面に回転及び加圧下に押付けながら軸方向に進行させ、内側パイプを摩擦発熱により加熱軟化させて、外側構造体の円形内面に機能材料より成る膜を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。
しかし、この方法では、高い摩擦熱によって機能材料を軟化させるので、構造体が熱の影響で変形する虞があるばかりか、回転加圧工具により高荷重を加えるので、高熱と高荷重に耐えられる特殊な工具及び装置が必要である。また、この方法では、軸受ピンのような丸軸の表面に薄膜を形成することができない。
特許文献2及び特許文献3には、鉄鋼材、アルミニウム材等より成る基材の表面に、アーク式イオンプレーティング法により硬質薄膜を形成する技術が記載されている。
しかし、アーク式イオンプレーティング法を行なうには、真空発生装置、複数の処理室等を備えた大掛かりな装置が必要でコストが高くつき、しかも、非常な高熱が発生するので基材が熱の影響を受けざるを得ない。
特開2006−102803号公報 特開平7−118832号公報 特開2004−138128号公報
本発明が解決しようとする課題は、丸軸の表面硬度が増して耐摩耗性が向上し、しかも、発熱量が少ないため丸軸の歪や変形が抑制され、高熱・高荷重に耐えられる特殊な工具や装置を必要としない丸軸表面の改質方法及びこれに用いる改質装置を提供することにある。
本発明の丸軸表面の改質方法は、丸軸を回転させ、外周面に螺旋溝を形成した工具の平坦な又は円錐状をした先端面を、前記丸軸の外周面に線又は点接触させ、該工具を回転させながら、前記丸軸と工具とを丸軸の軸方向に相対移動させ、前記工具の回転に伴って、前記丸軸よりも硬い微細な硬質粉末を前記丸軸と工具との接触部分へ送り込むことにより、前記丸軸の表面に前記硬質粉末を埋め込むことを特徴とする構成を有する。
前記工具に対して前記丸軸をその軸方向に複数回往復させると良い。
前記硬質粉末は、金属粉末、シリコン粉末、セラミックス粉末(例えば、窒化チタン粉末、窒化アルミ粉末、窒化クロム粉末、タングステンカーバイト粉末、炭化ケイ素粉末)、ダイアモンド粉末、カーボンナノチューブなどの少なくとも1種類より成る。
前記硬質粉末を、該硬質粉末よりも径大の高速度工具鋼粉末と共に送り込むことが望ましい。
本発明の丸軸表面の改質装置は、被改質物である丸軸より径大で端部が開口した丸軸摺動孔と、一端が前記丸軸摺動孔に連通し、他端が硬質粉末投入口となっている工具挿入孔と、該硬質粉末投入口から前記工具挿入孔へ回転可能に挿入され、先端が前記丸軸摺動孔に達する工具とを備え、該工具は、その外周面に螺旋溝を形成すると共に、平坦な或いは円錐状の先端面を有する。
本発明の丸軸表面の改質方法によれば、丸軸の表面に硬質粉末が埋め込まれて方向性のない硬質膜が島状に創成されるので、耐摩耗性が著しく向上する。
また、工具と丸軸とが丸軸の軸方向に相対的に移動しながら線接触又は点接触して回転するので、高い熱が発生せず、このため、丸軸の歪みや変形が抑制され、しかも、丸軸の摩耗は極めて少なく、高熱・高荷重に耐えられる特殊な工具や装置も必要としない。
本発明の丸軸表面の改質装置によれば、工具の螺旋溝で硬質粉末が効率良く工具と丸軸との接触部分へ送り込まれると共に、丸軸の摺動によって、丸軸摺動孔内に送り込まれた硬質粉末は端部の開口から排出されるので、工具及び丸軸の運動を阻害することがなく、熱の発生も抑えられる。また、高熱が発生しないので、高度な耐久性が要求されず、装置全体の構造も簡単で済む。
本発明の実施例を示す丸軸表面の改質装置の断面図である。 丸軸と工具との関係示す斜視図である。 硬質粉末埋め込み後の丸軸の平面図である。 丸軸の改質部分表面のレーザー顕微鏡による輝度画像であり、(イ)はアルミニウム(Al)合金より成る丸軸、(ロ)はSCM鋼より成る丸軸を示す。 硬質粉末埋め込み後の丸軸の断面画像であり、(イ)はAl合金より成る丸軸、(ロ)はSCM鋼より成る丸軸を示す。 丸軸のビッカース硬さ試験の結果を示す図である。 丸軸の摩擦試験による摩耗量を示す図である。 丸軸の摩耗痕の画像であり、(イ)は非改質丸軸、(ロ)は改質丸軸を示す。
図1は、丸軸表面の改質装置を示す。
この改質装置は、丸軸Aが内部に設置されてその軸方向に摺動する丸軸摺動孔1と、一端が丸軸摺動孔1に連通し、他端が硬質粉末投入口2となっている工具挿入孔3と、硬質粉末投入口2から工具挿入孔3へ挿入された工具4とを備える。
被改質物である丸軸Aは、アルミニウム(Al)合金、SCM鋼等の摩擦材として汎用されている材質より成ることが多い。
丸軸摺動孔1は、丸軸Aよりやや径大であり、図示しないがその両端部は開口して硬質粉末排出口となっている。
工具挿入孔3は、工具4よりやや径大であり、その硬質粉末投入口2にはロート5が取り付けられている。
工具挿入孔3の上方には粉末ホッパ6が設置され、粉末ホッパ6内に微細な硬質粉末Bが充填されている。硬質粉末Bは、丸軸Aの材質よりも硬い、金属粉末、シリコン粉末、セラミックス粉末(例えば、窒化チタン粉末、窒化アルミ粉末、窒化クロム粉末、タングステンカーバイト粉末、炭化ケイ素粉末)、ダイアモンド粉末、カーボンナノチューブなどの一種類、又は、複数種類を混合したものである。
また、粉末ホッパ6の下流には羽根車7が設置され、その下方には粉末供給チューブ9が連続して設けてある。
粉末供給チューブ9の供給口はロート5の内部に向けて開口し、羽根車7を回転させると、粉末ホッパ6内の硬質粉末Bが粉末供給チューブ9を通ってロート5内に落下するようになっている。
工具4は、高速度工具鋼(HSS)、超鋼など、硬くて耐摩耗性のある材料を素材とした円柱体より成り、工具挿入孔3に挿入されている部分の外周面に螺旋溝10を形成してあり、平坦な或いは円錐状の先端面11を有する。
さらに、工具4の基端部はボール盤等の工作機械に取り付けられており、工具4を回転させると共に、先端面11を介して丸軸摺動孔1内の丸軸Aに対し荷重を加えられるようになっている。
丸軸Aの表面を改質するには、丸軸Aを丸軸摺動孔1内に設置し、工具4の先端面11を丸軸Aの外周面に線接触又は点接触させ、羽根車7を回転させて、粉末ホッパ6に充填した硬質粉末Bを工具挿入孔3の硬質粉末投入口2に供給する。
そして、図2に示すように、工具4を回転させると共に、丸軸Aを回転させながら、丸軸摺動孔1内で軸方向に沿って一定速度で移動させる。
すると、工具4の回転に伴い、硬質粉末Bが螺旋溝10によって工具4と丸軸Aとの接触部へ送り込まれる。
なお、丸軸Aは、軸方向に複数回往復させると良い。
工具4の先端面11と丸軸Aの外周面とは線接触又は点接触して回転及び摺動しているため、大きな荷重を加えなくても、接触部に送り込まれた硬質粉末Bと丸軸Aとの間には高面圧が作用して、冷間溶着、即ち、高い接触圧力又はせん断力による低温下での溶着が生ずる。
この結果、丸軸Aの外周面に硬質粉末Bが埋め込まれ、丸軸Aの表面に方向性のない島状の硬質膜が形成されて、耐摩耗性が大幅に向上する。
また、丸軸Aの表面は高面圧とせん断力を受けて摩耗するが、その摩耗粉のほとんどは硬質粉末Bと混じり合って再移着が生じるため、結果的に、丸軸Aの摩耗はきわめて少なく、しかも、高温が発生しないため、丸軸Aの歪みや変形を抑制できる。
なお、粉末ホッパ6の内部に、硬質粉末Bより径大の高速度工具鋼(HSS)粒子を硬質粉末Bと共に充填しておき、硬質粉末BをHSS粒子と共に丸軸Aと工具4との接触部へ送り込むと良い。この場合、硬質粉末BとHSS粒子との混合比は、かさ比で50:50、重量比で15:85程度とする。
このようにすると、流動性が良い球状のHSS粒子の周囲に硬質粉末Bが付着して運搬されるので、効率良く工具4と丸軸Aとの接触部へ硬質粉末Bを送り込むことができる。また、HSS粒子は、硬質粉末Bどうしを適度に分散させて、過度な凝集を防ぎ、HSS粒子が転がることにより、大規模な焼き付きを防ぐ作用もある。
直径10mm、長さ100mmのAl合金製の丸軸Aを丸軸摺動孔1に設置し、直径8mmの工具4の平坦な先端面11を丸軸Aに線接触させて19.6Nの荷重(W)を加えた。
工具4の回転数(NT)を380rpmとし、丸軸Aの回転数(NR)を110rpmとし、丸軸Aを0.26mm/sの速度(VT)で軸方向に移動させた。なお、丸軸Aの改質部分の長さは80mmとする。
#300メッシュのSi粉末より成る硬質粉末Bと、平均粒径50μmのHSS粒子とを嵩比50:50で混合した混合粉末を、工具4と丸軸Aの接触部へ送り込み、丸軸Aの改質部分を2往復させて、硬質粉末Bを丸軸Aの改質部分の表面に埋め込んだ。
処理した丸軸Aを図3に示す。脱脂綿で付着物を拭い去ってから丸軸Aを目視すると、改質部分の表面は黒灰色を呈し、軸方向にも周方向にも引っ掻き傷は付いておらず、丸軸Aの歪みも認められなかった。
また、丸軸Aの素材をAl合金よりも硬いSCM鋼に変え、他の条件は同様にして改質処理を行なった。
硬質粉末Bの埋め込み処理後に丸軸Aの直径を測定すると、0.04〜0.06mmの寸法増が認められた。
丸軸Aの改質部分の表面を30μm程度研磨した後の丸軸A表面のレーザー顕微鏡による輝度画像を図4に示す。図4の(イ)はAl合金より成る丸軸A、(ロ)はSCM鋼より成る丸軸Aの画像である。
どちらの丸軸Aも、金属光沢部(例えばa部)に灰色のSi組織(b部)が島状に埋め込まれており、黒色に見える窪み(s部)が存在した組織となっている。
なお、柔らかいAl合金を素材とする丸軸Aの改質部分表面には、円形状のHSS粒子部(c部)が散在しているが、硬いSCM鋼より成る丸軸Aの改質部分表面には、HSS粒子の埋め込みが殆ど見られなかった。
また、研磨後の丸軸Aの断面画像を図5に示す。図5の(イ)はAl合金より成る丸軸A、(ロ)はSCM鋼より成る丸軸Aの画像である。
いずれの丸軸Aも、表層にSiが埋め込まれた灰色層が見られ、その厚さはAl合金製の丸軸Aでは約30μm、SCM鋼製の丸軸Aでは約15μmであった。
なお、灰色層の表面に近い部分は粒子状となっているのに対し、基材側ではSi粉末と基材とが混ざり合っていることがわかる。
研磨後の丸軸Aの改質部分表面とその近傍の基材面にビッカース硬さ試験を行なった。荷重は0.245Nとし、金属光沢部(a部)、灰色層部(b部)、HSS粒子部(c部)ごとに打点して硬さを測定した結果をばらつき範囲を含めて図6に示す。
Al合金、SCM鋼のいずれの丸軸Aでも、金属光沢部は基材(d)の硬さに近く、灰色層部は金属光沢部よりはるかに高い硬さを示した。
また、Al合金製丸軸Aの灰色層部の硬さとSCM鋼製丸軸Aのそれとを比較すると、後者の方がはるかに硬い。
なお、HSS粒子部の硬さが灰色層部に比べて高いのは、粉砕されていないHSS粒子そのものの硬さが計測されたためと考えられる。
丸軸Aの改質部分の耐摩耗性を、点接触形態の往復摩擦試験により評価した。相手材は市販のSUJ2丸軸(直径10mm、HV約760)として、丸軸Aと直角に交差させ、上側の丸軸Aを荷重4.9N、振幅20mm、振動数3Hzで、潤滑油中において10800回往復させ、改質部分の摩耗量を調べた。また、比較のために、同様の条件で改質処理していない丸軸の摩擦試験を行なった。その結果を図7に示す。なお、摩耗量は、摩耗痕の大きさと深さをもとに体積を算出したものである。
いずれの丸軸Aも改質しない丸軸に比べて著しく耐摩耗性が高まり、殆ど摩耗が生じなかった(Al合金、SCM鋼共に約0.7×106μm3)。
図8に、往復摩擦試験による摩耗痕の様子を示す。Al合金製であってもSCM鋼製であってもその摩耗痕は類似しているので、図8にはAl合金製のものを示す。(イ)は非改質の丸軸、(ロ)は改質した丸軸Aの画像である。
図8から明らかなように、非改質丸軸では明瞭な摺動痕を伴う激しい摩耗が見られるのに対して、改質した丸軸Aの摩耗は軽微であり、摺動痕もほとんど見られない。
なお、相手材のSUJ2丸軸には、ストロークよりやや長い線状の摩耗痕ができるが、激しい引っ掻き痕は見られなかった。
A 丸軸
B 硬質粉末
1 丸軸摺動孔
2 硬質粉末投入口
3 工具挿入孔
4 工具
5 ロート
6 粉末ホッパ
7 羽根車
9 粉末供給チューブ
10 螺旋溝
11 先端面

Claims (5)

  1. 丸軸を回転させ、外周面に螺旋溝を形成した工具の平坦な又は円錐状をした先端面を、前記丸軸の外周面に線又は点接触させ、該工具を回転させながら、前記丸軸と工具とを丸軸の軸方向に相対移動させ、前記工具の回転に伴って、前記丸軸よりも硬い微細な硬質粉末を前記丸軸と工具との接触部分へ送り込むことにより、前記丸軸の表面に前記硬質粉末を埋め込むことを特徴とする丸軸表面の改質方法。
  2. 前記工具に対して前記丸軸をその軸方向に複数回往復させる請求項1に記載した丸軸表面の改質方法。
  3. 前記硬質粉末が、金属粉末、セラミックス粉末、シリコン粉末、ダイアモンド粉末、カーボンナノチューブの少なくとも1種類より成る請求項1又は2に記載した丸軸表面の改質方法。
  4. 前記硬質粉末を、該硬質粉末よりも径大の高速度工具鋼粉末と共に送り込む請求項1〜3のいずれかに記載した丸軸表面の改質方法。
  5. 被改質物である丸軸より径大で端部が開口した丸軸摺動孔と、一端が前記丸軸摺動孔に連通し、他端が硬質粉末投入口となっている工具挿入孔と、該硬質粉末投入口から前記工具挿入孔へ回転可能に挿入され、先端が前記丸軸摺動孔に達する工具とを備え、該工具は、その外周面に螺旋溝を形成すると共に、平坦な或いは円錐状の先端面を有することを特徴とした丸軸表面の改質装置。
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