JP5320681B2 - 高強度冷延鋼板及び高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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耐衝撃吸収特性に優れる高強度鋼板としては特許文献1に開示されているようなフェライトとマルテンサイトの複合組織からなる二相組織鋼板(DP鋼板)が代表的である。また、特許文献2では残留γの塑性誘起変態を利用したTRIP鋼において、耐衝撃特性を向上させる技術が開示されている。
本発明は、自動車用、家電用及び機械構造用等に用いられる冷延鋼板について、プレス加工による歪の導入がなくても、低歪域での吸収エネルギーが大きく、耐衝突特性に優れる高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
C:0.05〜0.25質量%以下、Si:1.0〜2.0質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.10質量%以下、S:0.02質量%以下、Al:0.01〜2質量%含み、かつNbおよびVのうち1種または2種を合計で0.01〜0.2質量%含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
鋼組織として、フェライトと、マルテンサイト、ベイナイトおよび残留γのうち1種または2種以上からなる低温変態相と、を有し、
該低温変態相の体積率が10〜50vol.%、かつ該低温変態相の平均結晶粒径が2μm以下であり、近接する該低温変態相間の平均距離が2μm以下であることを特徴とする。
鋼組成として、さらに、下記A群、B群およびC群のうち1群又は2群以上に規定される成分を当該規定範囲内で含有することを特徴とする。
(A群)CrおよびMo:1種または2種合計で0.05〜2.0質量%
(B群)B:0.005質量%以下
(C群)Caおよび希土類元素:1種または2種以上の合計で0.01質量%以下
溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を表面に有することを特徴とする。
さらに、本発明の請求項4による高強度冷延鋼板の製造方法は、
請求項1または2に記載の前記鋼組成を有する鋼素材に熱間圧延及び冷間圧延を施した後、連続焼鈍を施し、
前記連続焼鈍では、前記冷間圧延により製造した鋼板を、500℃〜A1変態点における平均加熱速度を10℃/s以上としてA1変態点まで昇温し、次いでAl変態点〜(A3変態点+30℃)の温度域に10秒以上保持した後、550℃以上における平均冷却速度を5℃/s以上として550℃以下まで冷却することを特徴とする。
前記冷却中又は前記冷却後に、鋼板表面に溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする。
さらに、本発明の請求項6による高強度冷延鋼板の製造方法は、
前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、480〜550℃で5〜60秒間保持して、前記溶融亜鉛めっき処理により形成した亜鉛めっき層を合金化することを特徴とする。
なお、本明細書及び請求項の記載について「A〜B」の表記は、境界値となるA及びBを範囲に含める意味である(A,Bは、任意の数字又は文字である)。
[高強度冷延鋼板について]
本実施形態にかかる高強度冷延鋼板は、C:0.05〜0.25%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.02%以下、Al:0.01〜2%含み、かつTi、NbおよびVのうち1種または2種以上を合計で0.01〜0.2%含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成を有する。さらに、鋼組織として、フェライトと、マルテンサイト、ベイナイトおよび残留γのうち1種または2種以上からなる低温変態相(以下、単に「低温変態相」と記述することもある。)と、を有し、該低温変態相の体積率が10〜50vol.%、かつ該低温変態相の平均結晶粒径が2μm以下であり、近接する該低温変態相間の平均距離が2μm以下である。
(C:0.05〜0.25%)
Cは鋼の強化に有用な元素であり、マルテンサイト等の低温変態相を生成させる上でも重要な元素である。しかし、含有量が0.05%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、0.25%を超えて含有させると延性や溶接性が劣化するため、Cは0.05〜0.25%の範囲に限定した。
(Si:2.0%以下)
Siは固溶強化成分として、強度−伸びバランスを改善しつつ強度を向上させるのに有効に寄与するが、過剰な添加は、延性や表面性状、溶接性を劣化させるので、Siは、2.0%以下で含有させるものとした。なお、溶融亜鉛めっきを施す場合にはめっき性の観点からSi量を1.0%以下とするのが好ましい。
Mnは鋼の強化に有効な元素であり、マルテンサイト等の低温変態相の生成を促進する。このような作用は、Mn含有量が1.0%以上で認められる。ただし、Mnを3.0%を超えて過剰に添加すると、過度の第2相分率(マルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトの体積率)の増加や固溶強化量の増加により強度上昇が著しくなり、延性の低下を招く。従って、Mn量を1.0〜3.0%とする。
(P:0.10%以下)
Pは鋼の強化に有効な元素であるが、0.10%を超えて過剰に添加すると、粒界偏析により脆化を引き起こし、衝撃特性を劣化させる。従って、P量を0.10%以下とする。
SはMnSなどの介在物となって、耐衝撃特性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因になるので極力低い方が良いが、製造コストの面から0.02%以下とする。
(Al:0.01〜2.0%)
Alは脱酸剤として作用し、鋼の清浄度に有効な元素であり、脱酸工程で添加することが好ましい。ここに、Al量が0.01%に満たないとその添加効果に乏しくなるので、下限を0.01%とした。また、AlはSiと同様に固溶強化成分として、強度−伸びバランスを改善しつつ強度を向上させるのにも有効に寄与するが、2%を超えて含有するとその効果が飽和するだけでなく、鋼中の介在物の量が増加し延性を低下させる。したがってAlの添加量は2.0%以下に限定する。
Ti、Nb、Vは本発明において重要な元素である。これらの元素を添加することによってTiC、NbCおよびVC等が析出し、鋼板の再結晶を抑制することにより組織の微細化に有効に働く。Ti、Nb、Vの添加量の合計が0.01%未満では上記の効果に乏しく、0.2%を超えて添加しても効果が飽和するだけでなく、析出物が過剰になりフェライトの延性の低下を招く。従ってTi、Nb、Vの添加量の合計を0.01〜0.2%の範囲とした。なお、好ましい範囲としては0.02〜0.1%である。
(CrおよびMo:1種または2種の合計で0.05〜2.0%)
Cr、Moは、いずれも強化成分として必要に応じて含有させることができるが、多量の添加はかえって強度−延性バランスを劣化させる。このため、Cr及びMoの1種または2種を合計で2.0%以下とすることが望ましい。また、上記の作用を発揮させるためには、Cr、Moの1種または2種を合計で0.05%以上含有させることが好ましい。
Bは粒界強度の上昇を通じて加工性を改善する効果を有しており、必要に応じて含有させることができる。しかしながら過剰な含有は加工性を劣化させるため、上限を0.005%とする。
(Caおよび希土類元素(REM):1種または2種以上の合計で0.01%以下)
Ca、REMはいずれも硫化物の形態制御により加工性を改善する効果を有しており、必要に応じて1種または2種以上を含有させることができる。しかしながら過剰な添加は清浄度に悪影響を及ぼす恐れがあるため、CaおよびREMの含有量は合計で0.01%以下とする。
低温変態相は、強度の上昇および耐衝撃特性の向上に有効に働く。低温変態相の体積率が10%未満ではその効果に乏しく、50%を超えると加工性が劣化するため、低温変態相の体積率は10〜50%とする。また、低温変態相を微細に分散させることにより耐衝撃特性が向上し、低温変態相の平均結晶粒径が2μm以下および近接する低温変態相間の平均距離が2μm以下でその効果が顕著となる。従って、低温変態相の平均結晶粒径を2μm以下、近接する低温変態相間の平均距離を2μm以下とする。さらに高い耐衝撃特性を得るためには低温変態相の平均結晶粒径を1.5μm以下とすることが好ましい。フェライト粒径は本発明において特に限定しないが、本発明の構成をとると通常3μm以下となる。また、フェライト、マルテンサイト、ベイナイト、残留γ以外の相としてはパーライトを含む可能性があるが、上記相構成を満たしていればパーライトを含むことは問題ない。
次に上記構成の高強度冷延鋼板の製造方法について説明する。
上記高強度冷延鋼板は、上記の好適成分組成に調整した鋼を転炉などで溶製し、連続鋳造法等でスラブとし、このスラブに熱間圧延、冷間圧延を施した後、連続焼鈍を行うことで製造される。連続焼鈍では、鋼板を、500℃〜A1変態点における平均加熱速度を10℃/s以上としてA1変態点まで昇温し、次いでAl変態点〜(A3変態点+30℃)の温度域に10秒以上保持した後、550℃以上における平均冷却速度を5℃/s以上として550℃以下まで冷却することで、上記のような鋼組織が形成される。
[鋳造条件]
使用するスラブは、成分のマクロ偏析を防止するために連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法、薄スラブ鋳造法で製造してもよい。また、鋼スラブを製造したのち、いったん室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法に加え、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に挿入する、あるいはわずかの保熱をおこなった後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
(スラブ加熱温度:1100℃以上)
スラブ加熱温度は、低温加熱がエネルギー的には好ましいが、加熱温度が1100℃未満では、炭化物が十分に固溶できなかったり、圧延荷重の増大による熱間圧延時のトラブル発生の危険が増大するなどの問題が生じる。なお、酸化重量の増加にともなうスケールロスの増大などから、スラブ加熱温度は1300℃以下とすることが望ましい。
なお、スラブ加熱温度を低くしても熱間圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シートバーを加熱する、いわゆるシートバーヒーターを活用してもよい。
仕上げ圧延終了温度がA3変態点未満では、圧延中にαとγが生成して、鋼板にバンド状組織が生成し易くなり、かかるバンド状組織は冷間圧延後や焼鈍後にも残留し、材料特性に異方性を生じさせたり、加工性を低下させる原因となる場合がある。このため、仕上げ圧延温度はA3変態点以上とすることが望ましい。
(巻取り温度:450℃〜700℃)
巻取り温度が450℃未満あるいは700℃を超えると炭窒化物の生成が不十分となったり、巻取り温度の制御が困難となるなどの問題が生じる。このため、巻取り温度は450〜700℃の範囲とするのが望ましい。
なお、冷間圧延時の圧下率は焼鈍時、逆変態により生成するγの核生成サイトを増やし、結晶粒の微細化を促すという観点から40%以上とすることが好ましい。
(500℃〜A1変態点における平均加熱速度:10℃/s以上)
加熱速度は本発明における製造方法の中で最も重要な条件となる。本発明の鋼における再結晶温度域である500℃からA1変態点における平均加熱速度を10℃/s以上とすることで、加熱昇温時の再結晶が抑制され、A1変態点以上で生成するγの微細化、ひいては焼鈍冷却後の組織の微細化に有効に働く。平均加熱速度が10℃/s未満では、加熱昇温時にαの再結晶が起こり、α中に導入された歪が開放され十分な微細化が達成できなくなる。
従って、500℃〜A1変態点における平均加熱速度を10℃/s以上とした。該平均加熱速度の好ましい範囲は20℃/s以上である。
加熱温度がA1変態点未満あるいは、A1変態点〜(A3変態点+30℃)の加熱温度域における保持時間が10秒未満では、焼鈍時のγの生成が不十分となり、焼鈍冷却後に十分な量の第2相が確保できなくなる。また、加熱温度が(A3変態点+30℃)を超えると、焼鈍中のγ粒の成長が激しく、十分な微細化が達成できなくなる。この加熱温度域における保持時間の上限は、エネルギー的な観点およびγの粗大化抑制から300秒以下とすることが好ましい。
平均冷却速度が5℃/s未満では冷却中のγ→α変態の過冷度が小さくなり、結晶粒が粗大化する。また冷却時にパーライトが生成し、十分な量の低温変態相が得られなくなる。
また、550℃以下まで冷却した後に過時効処理を施してもよい。その際、過時効処理の条件は特に限定しないが、保持温度250〜550℃、保持時間10〜1000秒の範囲とすることが好ましい。
以上のような製造方法とすることにより、前記の微細組織(低温変態相)を有し、低歪域での耐衝撃特性に優れる高強度冷延鋼板を得ることができる。
なお、前記の焼鈍後の鋼板または溶融亜鉛めっき処理後の鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)には、形状矯正、表面粗度等の調整のため調質圧延を加えてもよい。また、樹脂あるいは油脂コーティング、各種塗装等の処理を施しても何ら不都合はない。
まず、表1に示す組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にて鋳片とした。得られた鋳片を板厚3.0mmまで熱間圧延した。熱間圧延の条件は、仕上げ温度900℃、冷却速度10℃/s、巻取り温度600℃とした。
次いで、これら冷延鋼板に、連続焼鈍ラインまたは連続溶融亜鉛めっきラインにて、表2に示す処理を施した。
表2に示す処理後、得られた鋼板のミクロ組織、引張特性および耐衝撃特性について調査を行い、その結果を表3に示した。
衝撃吸収特性は、同じく無加工の鋼板の圧延方向と直角方向から採取した平行部の幅5mm、長さ7mmの試験片を用い、歪速度2000/sで引張試験を行ったときの歪量5%までの吸収エネルギーで評価した(鉄と鋼、83(1997)、p.748)。吸収エネルギーは応力−真歪曲線を歪量0〜5%の範囲で積分することにより求めた。
従って、本発明例によれば、耐衝撃特性に優れた冷延鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板が得られ、自動車の軽量化と衝突安全性向上との両立を可能とし、自動車車体の高性能化に大きく寄与するという優れた効果を奏する。
Claims (6)
- C:0.05〜0.25質量%以下、Si:1.0〜2.0質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.10質量%以下、S:0.02質量%以下、Al:0.01〜2質量%含み、かつNbおよびVのうち1種または2種を合計で0.01〜0.2質量%含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
鋼組織として、フェライトと、マルテンサイト、ベイナイトおよび残留γのうち1種または2種以上からなる低温変態相と、を有し、
該低温変態相の体積率が10〜50vol.%、かつ該低温変態相の平均結晶粒径が2μm以下であり、近接する該低温変態相間の平均距離が2μm以下であることを特徴とする高強度冷延鋼板。 - 鋼組成として、さらに、下記A群、B群およびC群のうち1群又は2群以上に規定される成分を当該規定範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度冷延鋼板。(A群)CrおよびMo:1種または2種合計で0.05〜2.0質量%
(B群)B:0.005質量%以下
(C群)Caおよび希土類元素:1種または2種以上の合計で0.01質量%以下 - 溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を表面に有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板。
- 請求項1または2に記載の前記鋼組成を有する鋼素材に熱間圧延及び冷間圧延を施した後、連続焼鈍を施し、
前記連続焼鈍では、前記冷間圧延により製造した鋼板を、500℃〜A1 変態点における平均加熱速度を10℃/s以上としてA1 変態点まで昇温し、次いでA1 変態点〜(A3 変態点+30℃)の温度域に10秒以上保持した後、550℃以上における平均冷却速度を5℃/s以上として550℃以下まで冷却することを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法。 - 前記冷却中又は前記冷却後に、鋼板表面に溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする請求項4に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
- 前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、480〜550℃で5〜60秒間保持して、前記溶融亜鉛めっき処理により形成した亜鉛めっき層を合金化することを特徴とする請求項5に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
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