JP5342155B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置における、偽エコー信号を抑制する技術に関する。
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号(エコー信号)を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を二次元的に或いは三次元的に画像化する装置である。撮像においては、エコー信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたエコー信号は、二次元又は三次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
このようなMRI装置による撮像において、高周波磁場パルス(以下、RFパルスという)が三つ以上続くと、原理的にスティミュレーティッドエコーがRFパルスや傾斜磁場パルスのさまざまな印加パターンで発生する。例えば、複数の180度RFパルスを印加して、1回の繰り返し時間(以下TR)内に複数のエコー信号を計測するファーストスピンエコーシーケンス、マルチエコータイプのスピンエコーシーケンス、或いは、TRが短い場合にはシングルエコータイプのスピンエコーシーケンスにおいてさえも、同様にスティミュレーティッドエコーが発生する場合がある。
さらに、そのスティミュレーティッドエコーは、パルスシーケンスの傾斜磁場印加パターンの組み合わせにより、偽エコー信号として計測され、そのデータがK空間上の好ましくない位置に配置され、画像上にアーチファクトが発生する場合がある。このようなアーチファクトを抑制するためには、クラッシャー傾斜磁場パルスを印加して、スティミュレーティッドエコーの発生を抑制し、偽エコー信号のデータがK空間データに混入するのを抑制するのが一般的である(例えば、特許文献1)。
特開2002-136498号公報
スティミュレーティッドエコーが発生する条件は、さまざまな計測パラメータの組み合わせに依存する。そのため、全てのケースでスティミュレーティッドエコーの発生を抑制し、偽エコー信号となってK空間データに混入するのを抑制するためには、一般的に印加量の大きなクラッシャー傾斜磁場パルスを印加する必要がある。
しかし、全てのエンコードパターンでにおいて、同じ印加量、同じ極性のクラッシャー傾斜磁場パルスを印加し続ける従来手法においては、偽エコー信号を抑制するためには、最大印加量のクラッシャー傾斜磁場パルスを全てのエンコードパターンにおいて印加する必要がある。この場合、180度RFパルスによるFID信号を拡散するために本来必要であるクラッシャー傾斜磁場パルスの印加量と比較し、より大きなクラッシャー傾斜磁場パルスの印加量が必要となる。その結果、エコー信号の計測に割ける時間が短くなって画像の空間分解能やS/Nが低下することになる。(特許文献1)は、この課題については考慮していない。
そこで、本発明の目的は、印加量の大きなクラッシャー傾斜磁場パルスを印加することなく、偽エコー信号に基づくアーチファクトを抑制することが可能なMRI装置を実現することである。
上記目的を達成する本発明のMRI装置は次の様に構成される。即ち、
所定のパルスシーケンスに基づいて複数のパルスと複数の傾斜磁場パルスを被検体に印加してエコー信号の計測を制御する計測制御手段を有し、複数の傾斜磁場パルスは、少なくとも一つのRFパルスの前後で印加される、印加量の等しい一対のクラッシャー傾斜磁場パルスを含む。そして、計測制御手段は、所定の傾斜磁場パルスの極性に対応して、前記一対のクラッシャー傾斜磁場パルスの印加を制御する。
本発明のMRI装置によれば、印加量の大きなクラッシャー傾斜磁場パルスを印加することなく、偽エコー信号に基づくアーチファクトを抑制することが可能となる。
以下、本発明のMRI装置の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
最初に、本発明のMRI装置の一例の概略を図1に基づいて説明する。図1は本発明のMRI装置の一例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、核磁気共鳴(NMR)現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生系1と、傾斜磁場発生系2と、送信系3と、受信系4と、信号処理系5と、シーケンサ6とを備えて成る。
上記磁場発生系1は、非検体8の周りにその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、上記被検体8の周りのある広がりを持った空間に永久磁石方式または常電動方式あるいは超伝導方式の図示していない磁場発生手段が配置されている。
傾斜磁場発生系2は、X,Y,Z軸方向に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイル9を駆動する傾斜磁場電源10とからなる。後述するシーケンサ6からの命令に従ってそれぞれの傾斜磁場コイル9に対応する傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの三軸方向の傾斜磁場Gx, Gzを被検体8に印加するようになっている。この傾斜磁場の加え方により被検体8に対するスライス面を設定することができる。
送信系3は、RFパルスにより被検体8の組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせるためにRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と照射コイル14とからなる。上記高周波発振器11から出力された高周波パルスを後述シーケンサ6の命令に従って変調器12で振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体8に近接して配置された照射コイル14に供給することにより、電磁波であるRFパルスが上記被検体8に照射されるようになっている。
受信系4は、被検体8の組織の原子核の核磁気共鳴により放出されるエコー信号を検出するもので、受信側の高周波受信コイル15と受信回路16とA/D変換機17とから成る。上記送信側の照射コイル14から照射されたRFパルスによる被検体8の応答の電磁波であるエコー信号は被検体8に近接して配置された高周波受信コイル15で検出され、受信回路16を介してA/D変換機17に入力されることでディジタル量に変換され(以下、ディジタル化されたエコー信号をエコーデータという)、その信号が後述する信号処理系5に送られるようになっている。
信号処理系5は、CPU7と信号処理装置18と、メモリ19及び磁気ディスク20及び光ディスク21などの記憶装置と、CRT等のディスプレイ22とから成る。CPU7はメモリ19からパルスシーケンスの印加パターンを読み出し、後述するシーケンサ6へエコー信号を計測するためのパルスシーケンスの印加パターンを命令し、メモリ19は任意の撮像条件によるパルスシーケンスの印加パターン及び前記受信系4にて得られたエコーデータなどの情報を上記CPU7の制御により記憶する。信号処理装置18は、メモリ19のK空間に相当する領域に記憶されたエコーデータをフーリエ変換し、補正計算及び画像再構成等の処理を行ない、処理結果をメモリ19に出力する。前記メモリ19に出力された処理結果は、ディスプレイ22に断層像として表示するようになっている。磁気ディスク20、及び光ディスク21は信号処理装置18によって前述のような処理を施されたエコーデータ及び信号データを再構成して得られた画像データ及び患者データなどを保存することができる。
シーケンサ6は、上記被検体8の組織を構成する原子の原子核に磁気共鳴を起こさせるRFパルス及び傾斜磁場パルスを或る所定のパルスシーケンスで繰り返し印加するもので、CPU7の制御で動作し、被検体8の断層像のエコーデータの収集に必要な種々の命令を、送信系3及び傾斜磁場発生系2ならびに受信系4に送るようになっている。本発明は、シーケンサ6の制御により実行されるパルスシーケンスパターンに関するものであり、本発明は、パルスシーケンスとしては、二次元計測でも三次元計測でも良い。また、k空間を放射状にデータ取得するラディアルシーケンスでも、k空間をkx軸に平行にデータ取得する通常方法でもよい。さらにまた、パルスシーケンスとしては、どのようなパルス系列でも良い。
なお、図1において、送信側及び受信側の高周波コイル14,15と傾斜磁場コイル9は、被検体1の周りの空間に配置された静磁場発生系2の静磁場空間内に設置されている。
現在MRI装置の撮影対象スピン種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質であるプロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を二次元もしくは三次元的に撮影する。
次に、上記本発明に係るMRI装置が備えるスピンエコーシーケンス(以下、SEシーケンスと略記する)の一例を図2に基づいて説明すると共に、偽エコー信号の発生の理由を簡単に説明する。
図2は、周波数エンコード方向にFlow-Rephase機能付きのSEシーケンスの一繰り返し時間(TR)分のシーケンスチャートを示しており、RF、Gs、Gp、Gf、signalはそれぞれ、RFパルス、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場、エコー信号の軸を表す。シーケンサ6は、このシーケンスチャートに基づいて、送信系4、傾斜磁場系2、および受信系4を制御し、繰り返し時間(TR)毎にこのシーケンスを繰り返し実行することにより、画像再構成に必要なスピンエコー信号の計測を制御する。
201は、撮影スライス領域内の縦磁化にRFパルスを印加して90度倒し、横磁化に励起する90度RFパルスである。203は、スライス選択傾斜磁場パルスであって、90度RFパルス201と共に印加されることにより所望の撮影面のみの縦磁化が90度励起されることになる。
204は、スライス選択傾斜磁場パルスにより拡散した横磁化の位相を戻すためのスライスリフェーズパルスである。206は、位相エンコード傾斜磁場パルスであり、繰り返し時間(TR)毎にその印加量(波形と時間軸との囲む面積)が変更されて、それぞれ位相エンコード方向の空間情報がエコー信号210にエンコードされる。
207と208は、あらかじめ横磁化の位相を分散させておくと共に、209の前半部と合わせて横磁化の0次及び1次の位相成分をゼロに戻すための周波数ディフェーズ傾斜磁場パルスである。これら207, 208,及び209でFlow-Rephase機能が形成される。
202は、磁化を撮影面内で180度反転するための180度反転RFパルスである。90度RFパルスで励起され横磁化は、その後静磁場不均一等により、その位相が分散する。この180度反転RFパルスは、横磁化を反対方向に180度反転させることにより、この位相分散を再収束させて、スピンエコーを発生させるものである。
205は、スライス選択傾斜磁場パルスであって、180度RFパルス202と共に印加されることにより、90度RFパルスで励起された撮影スライス領域と同じ領域内の磁化が180度反転されることになる。
209は、周波数エンコード傾斜磁場パルスであって、エコー信号に周波数エンコード方向の空間情報をエンコードするものである。周波数エンコード傾斜磁場パルス209の印加量が、周波数ディフェーズ傾斜磁場パルス207と208との印加量和と同一となった時点でエコー信号210の振幅が最大となる。つまり、エコー信号210は、90度RFパルスと180度RFパルス間の時間と、180度RFパルスとエコー信号210のピーク時点との時間と、が同一となる時点であって、かつ、周波数エンコード傾斜磁場パルス209の中央の時点で、ピークとなる。シーケンサ6は、このように、周波数ディフェーズ傾斜磁場パルス207と208の印加量、周波数エンコード傾斜磁場パルス209の印加量、及び、各RFパルス201, 202の印加タイミングを制御する。
また、エコー信号210の計測後には、残留横磁化を位相分散させるためのスポイラー傾斜磁場211と212がそれぞれスライス方向と周波数エンコード方向に印加される。222は、180度RFパルス202の印加によって発生するFID信号を分散させるためのクラッシャー傾斜磁場パルスである。
221は、クラッシャー傾斜磁場パルス222の印加量を相殺するための、事前に印加する傾斜磁場パルスであって、クラッシャー傾斜磁場パルス222と同じ印加量とされる。本発明では、221と222の一対をクラッシャー傾斜磁場パルスという。なお、図2に示すSEシーケンスでは、一対のクラッシャー傾斜磁場パルスは位相エンコード方向にのみ挿入されているが、他のスライス方向と周波数エンコード方向も含めて、3軸方向の少なくとも1軸における180度RFパルス202の前後に一対のクラッシャー傾斜磁場パルスを挿入すれば良い。なお、180度RFパルス前後のクラッシャー傾斜磁場パルスの印加量は、180度RFパルス直後のFID信号を拡散するのに最小限必要な印加量にとどめることが望ましい。
シーケンサ6は、以上の一繰り返し時間(TR)分のシーケンスを、位相エンコード傾斜磁場の印加量を変えながら繰り返し、画像再構成に必要なエコー信号の計測を制御する。
次に、以上のSEシーケンスにおいて、偽エコー信号の発生の理由を説明する。図2に示すSEシーケンスの90度RFパルス201と180度RFパルス202による励起角度が、撮影スライス領域内で、均一且つ理想的に、それぞれ90度と180度となれば、全ての位相エンコードにおいて、エコー信号が周波数エンコード傾斜磁場209の中央で発生する。しかし、撮影スライス領域の励起プロファイルは、均一且つ理想的に、90度あるいは180度となることはなく、特に撮影スライス領域の両側においては、180RFパルスが印加されても、180度より少ない励起角度となり、撮影スライス領域全体で不完全な励起プロファイルとなってしまう。
そのため、180度RFパルスによっても、90度RFパルス相当のエネルギーしか感じなかった磁化成分は、その横磁化が縦磁化に戻ってしまうことになる。この縦磁化に戻ってしまった磁化成分は、次のRFパルスで再び横磁化に励起されてしまい、この横磁化がスティミュレーティッドエコーとなる。すなわち、三つ以上のRFパルスが連続すると、上記励起プロファイルの不完全性を避けられないことから、スティミュレーティッドエコーが発生してしまうことになる。
さらに、上記スティミュレーティッドエコーの生成過程において、傾斜磁場の印加量のバランスがとれた時点で、スティミュレーティッドエコーが偽エコー信号として計測されてしまう。その具体例を図3に基づいて説明する。図3は、図2のパルスシーケンスを、位相エンコードn番目とn+1番目のシーケンスで、2繰り返し時間(TR)分を図示したものである。なお、スライス選択傾斜磁場Gsは、図2と同じなので表示及び説明を省略する。
位相エンコードnのシーケンス時に、90度RFパルス201-1(添え字1,2がそれぞれ位相エンコードn,n+1のシーケンス時の符号を表す。以下同様。)により横磁化が発生する。そして、180度RFパルス202-1において、90度パルス相当のエネルギーしか感じなかった磁化成分は、その横磁化が縦磁化へと変化する。この段階で、この縦磁化は、傾斜磁場パルス208-1,209-1,212-1,222-1,による位相拡散の影響を受けない。そして、位相エンコードn+1のシーケンス時の90度RFパルス201-2により、上記縦磁化は再び横磁化に変化し、次の180度RFパルス202-2により、位相再収束がなされる。
以上の90度-180度-90度の経路で発生するスティミュレーティッドエコーについて、まず位相エンコード軸(Gp)に注目し、[ ]で傾斜磁場パルスの印加量(絶対値)を表すと、傾斜磁場パルス印加量の関係が

- [206-1] + [221-1] - [206-2] + [221-2] ≒ [222-2]

となり、位相エンコード軸の傾斜磁場パルス印加量のバランスが取れ、位相エンコードなしの状態に近くなる。
次にリードアウト軸に注目すると、

[207-1] + [207-2] < - [208-2] + [209-2]/2

となり、印加量[207-1]の分だけ、周波数エンコード傾斜磁場209-2の中心よりも前で傾斜磁場パルス印加量のバランスがとれることになる。
以上の結果、90度-180度-90度の経路で発生するスティミュレーティッドエコーは、周波数エンコード傾斜磁場209-2の中心よりも前で偽エコー信号301として計測されることになる。
次に、本Flow-Rephase機能付きSEシーケンスで計測されたエコーデータが配置されたK空間の様子を図4に示す。図4に示すように、正常なエコーデータ401の他に、ある位相エンコードの時に傾斜磁場パルス印加量のバランスが取れて偽エコー信号が発生するため、計測された偽エコー信号のデータ402がK空間に配置される。この偽エコー信号のデータを含んだK空間データを再構成して得た画像上にはアーチファクトが発生することになる。
このような場合、この偽エコー信号を発生させないためには、上記の様な傾斜磁場パルス印加量のバランスが取れなくなるようにすればよい。そのためには、従来の方法では、

- [206-1] + [221-1] - [206-2] + [221-2] >> [222-2]

と大きく異なるよう[221-1]、[221-2]の印加量を大きくしていた。しかし、所望のコントラストを得るための同じエコー時間(TE)を設定して、[221-1]、[221-2]の印加量を大きくするためには、計測マトリックスを下げるかバンド幅を上げる必要があり、それぞれ、画像の空間分解能またはS/Nの低下をもたらすことになる。
以上の概要をふまえて、本発明の、必要以上にクラッシャー傾斜磁場パルスの印加量を大きくすることなく、偽エコー信号を抑制する方法について説明する。
(第1の実施形態)
本発明のMRI装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態は、SEシーケンスにおける位相エンコード傾斜磁場の極性に対応して、一対のクラッシャー傾斜磁場の印加量を制御する。
具体的には、本実施形態は、偽エコー信号がK空間のky方向の一方の側のみ、即ち、位相エンコードの片側の極性においてのみ発生することに注目し、位相エンコードの極性に合わせて、クラッシャー傾斜磁場パルスの極性を変化させる。
このように制御されたパルスシーケンスにおいては、印加量が必要最小限のクラッシャー傾斜磁場パルスが印加されれば、偽エコー信号が発生しない位相エンコードと同じ状態でエコー信号を計測することが可能となる。
以下、図5を用いて本実施形態を詳細に説明する。図5は、本実施形態に係るSEシーケンスのシーケンスチャートを示し、位相エンコードがm番目(各パルスの添字はmとされている)とn番目(各パルスの添字はnとされている)の繰り返し時のシーケンスチャートを示す。図3と同様に、スライス選択傾斜磁場は図2と同じなので説明及び表示を省略する。また、RFパルス(RF)及び周波数エンコード傾斜磁場(Gf)、及びエコー信号(Sg)は図3と同じであるので説明を省略する。各繰り返しにおけるシーケンス形状と図2,3に示すシーケンス形状との違いは、クラッシャー傾斜磁場パルスの極性と位相エンコード傾斜磁場パルスの極性とが同じにされていることである。即ち、位相エンコードm番目の繰り返しにおいては、位相エンコード傾斜磁場パルス206-mの極性が正であることから、クラッシャー傾斜磁場パルス221-m, 222-mの極性も同じ正とされている。一方、位相エンコードn番目の繰り返しにおいては、位相エンコード傾斜磁場パルス206-nの極性が負であることから、クラッシャー傾斜磁場パルス221-n, 222-nの極性が同じ負とされている。シーケンス6が、このように位相エンコード傾斜磁場パルスとクラッシャー傾斜磁場パルスを制御することにより、傾斜磁場パルス206-m, 221-m, 206-n及び221-nの印加量の和が傾斜磁場パルス222-nの印加量と異なること、即ち、

[206-m] + [221-m] - [206-n] - [221-n] ≠ - [222-n]

となる。その結果、傾斜磁場パルスの印加量がバランスすることがなくなり、スティミュレーティッドエコーが偽エコー信号として計測されることが無くなる。
なお、上記説明では、位相エンコード傾斜磁場パルスの極性に合わせてクラッシャー傾斜磁場パルスの極性を変更することを説明したが、予め偽エコー信号が計測される位相エンコードが判明している場合は、その位相エンコードの前後の近傍(前後2、3位相エンコード分)の繰り返し時のみ、上記クラッシャー傾斜磁場パルスの極性又は印加量の制御を行っても良い。
以上説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、位相エンコード傾斜磁場の極性と、クラッシャー傾斜磁場の極性とが同じになるように、即ち、位相エンコード傾斜磁場の極性に対応して、クラッシャー傾斜磁場の印加量を制御することにより、傾斜磁場印加量がバランスすることを回避することができる。その結果、必要最低限のクラッシャー傾斜磁場で、スティミュレーティッドエコーが偽エコー信号として計測されることを抑制できるので、偽エコー信号に基づく画像上のアーチファクトを低減することが可能となる。
(第2の実施形態)
次に本発明のMRI装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、マルチスピンエコータイプのラディアルシーケンスに、前述の第1の実施形態と同様の偽エコー信号抑制技術を適用する。前述の第1の実施形態と異なる点は、シーケンスタイプ、及び、そのシーケンスタイプに基づくクラッシャー傾斜磁場の印加制御である。以下、前述の第1の実施形態と異なる点のみを図6に基づいて説明し、同一の点の説明は省略する。
図6(a)は、マルチスピンエコータイプのラディアルシーケンスのシーケンスチャートを示す図である。なお、図6(a)は二つのスピンエコー信号を計測するシーケンス例を示すが、本実施形態は2エコー信号に限定されない。スピンエコータイプのラディアルシーケンスは、図2に示したSEシーケンスから、位相エンコード方向の位相エンコード傾斜磁場206とクラッシャー傾斜磁場221と222とを削除し、周波数エンコード方向のFlow Rephaseパルス207, 208を削除し、180度RFパルスを挟んで一対のスポイラー傾斜磁場パルスを周波数エンコード傾斜磁場209の前に挿入したシーケンスを基本とする。
さらに第2エコー信号を計測するために、第1エコー信号を計測するための180度RFパルス以降のシーケンスを繰り返すよう構成される。そして、このシーケンスにおけるスライス傾斜磁場方向以外の他の二つ傾斜磁場の印加軸をスライス面内で撮影空間の座標原点の周りに所定の角度ステップで回転させながら、各々の角度でスピンエコー信号を計測する。なお、ラディアルシーケンスにおいては、位相エンコード方向(Gp)と周波数エンコード方向(Gf)の区別が無いので、Gp, Gfの代わりに、G1, G2と表している。
また、本実施形態では、エコー信号を計測する際に印加する周波数エンコード傾斜磁場をラディアルシーケンスのエンコード傾斜磁場という。具体的な各パルスの印加シーケンスは、以下の通り。
90度RFパルス601をスライス選択傾斜磁場パルス602と共に印加して所定の撮影スライス領域の縦磁化を励起する。その後、スライスリフェーズパルス603を印加してスライス選択傾斜磁場パルス602により拡散した横磁化の位相を戻す。G2軸では、あらかじめ横磁化の位相を分散させておく周波数ディフェーズ傾斜磁場パルス607が印加される。
そして横磁化を180度反転するための180度反転RFパルス605がスライス選択傾斜磁場パルス606と共に印加される。また、この180度RFパルス605を間に挟んで、残留横磁化を位相分散させるためのクラッシャー傾斜磁場パルス608と609とが同じ印加量となるように印加される。180度RFパルス605により再収束された横磁化からのエコー信号は、周波数エンコード傾斜磁場パルス610の印加の下に第1エコー信号611として計測される。
その後、第2エコー信号619を計測するために、再度180度RFパルス614がスライス選択傾斜磁場パルス615と共に印加される。また、この180度RFパルス614を間に挟んで、残留横磁化を位相分散させるためのクラッシャー傾斜磁場パルス613と617とが同じ印加量となるように印加される。そして、周波数エンコード傾斜磁場パルス618の印加の下に第2エコー信号619が計測される。最後に、残留横磁化を位相分散させるためのスポイラー傾斜磁場パルス620と621とが、それぞれスライス傾斜磁場(Gs)軸とG2軸に印加される。
このような基本シーケンスにおけるG1軸とG2軸の各傾斜磁場パルスをスライス面内で撮影空間の座標原点の周りに所定の角度ステップで回転させながら、各々の角度で二つのスピンエコー信号が計測される。その際、各回転角度に応じて、この基本シーケンスにおけるG2軸の各傾斜磁場パルスの振幅が、G1軸とG2軸に分散されて印加される。シーケンサ6は、このように各RFパルス及び各傾斜磁場パルスの印加を制御し、画像再構成に必要なエコー信号の計測を制御する。
図6(b)にラディアルシーケンスで計測されたエコーデータが配置されたK空間の様子を示す。各矢印は、一つのエコー信号に対応し、矢印の向きがK空間上での各エコー信号の走査方向を示す。図6(b)に示すように、ラディアルシーケンスは、K空間の原点を通る放射状軌跡を所定の角度ステップでK空間原点の周りに回転させた、各軌跡上のデータを計測する。
次に、このようなマルチスピンエコータイプのラディアルシーケンスにおいて、スティミュレーティッドエコーが発生する理由を図7に示すシーケンスに基づいて説明する。図7は、図6(a)に示した基本シーケンス形状をある角度に回転させた時のRFパルス(RF)、及び、傾斜磁場パルス(G1,G2)を表している。他の軸は図6(a)と同じなので表示及び説明を省略する。なお、各傾斜磁場パルスの符号は、G1軸には1を、G2軸には2を付けて区別している。図7において、G1軸、G2軸共に傾斜磁場パルスの印加量が、

- [607] + [608] ≒ [617] +[618]/2

の関係を満たす回転角度の時に、スティミュレーティッドエコーが偽エコー信号として、傾斜磁場パルス618の印加時に計測されることになる。これは、横磁化が感じる励起角度が、1番目の90度RFパルス601において90度、2番目の180度RFパルス605において90度、3番目の180度RFパルス614において90度となる組合せ時に、一繰り返し時間(TR)内で傾斜磁場パルスの印加量のバランスが取れてしまうためである。従来方法では、クラッシャー傾斜磁場パルスの印加量を大きくするよりスティミュレーティッドエコーを抑制する方法はなかった。
次に、本実施形態のクラッシャー傾斜磁場パルスの印加制御について図8に基づいて説明する。図8は、本実施形態のクラッシャー傾斜磁場パルスの印加制御を示すシーケンスチャートで、図8(a)が、エンコード傾斜磁場パルス610-1, 618-1が正極性となる回転角度の場合を示し、図8(b)は、エンコード傾斜磁場パルス610-2, 618-2が負極性となる回転角度の場合を示す。
本実施形態では、これらのエンコード傾斜磁場パルスの各回転角度における極性に対応して、180度RFパルスを間に挟んで印加されるクラッシャー傾斜磁場パルス608, 609及び613,617の印加量を制御する。具体的には、エンコード傾斜磁場パルス610, 618の極性とクラッシャー傾斜磁場パルス608, 609及び613,617の極性を回転角度に依らず同一になるように、クラッシャー傾斜磁場パルス608, 609及び613,617の印加量を制御する。
図8(a)の場合は、エンコード傾斜磁場パルス610,-1 618-1が正極性なので、ラッシャー傾斜磁場パルス608-1, 609-1及び613-1, 617-1の極性も正とする。一方、図8(b)の場合は、エンコード傾斜磁場パルス 610-2, 618-2が負極性なので、ラッシャー傾斜磁場パルス608-2, 609-2及び613-2, 617-2の極性も負とする。シーケンサ6がエンコード傾斜磁場パルス及びクラッシャー傾斜磁場パルスの極性をこのように制御することにより、一繰り返し時間(TR)内で傾斜磁場パルスの印加量のバランスが取れてしまうことを防止し、スティミュレーティッドエコーが偽エコー信号となることを抑制する。
以上説明したように、本実施形態のMRI装置では、マルチスピンエコータイプのラディアルシーケンスにおいて、クラッシャー傾斜磁場パルスの極性に対応してエンコード傾斜磁場の印加量を制御することにより、全ての回転角度において、一繰り返し時間(TR)内で傾斜磁場パルスの印加量のバランスが取れてしまうことを防止できるので、スティミュレーティッドエコーが偽エコー信号となることを抑制することが可能になる。その結果、必要最低限のクラッシャー傾斜磁場パルス印加量でアーチファクトを抑制することが可能である。
(第3の実施形態)
次に本発明のMRI装置の第3の実施形態を説明する。前述の第1、2実施形態は、シーケンサ6が、クラッシャー傾斜磁場パルスの印加パターンを制御する例を示したが、本実施形態は、クラッシャー傾斜磁場パルスの印加パターンを操作者が設定できるようにする。前述の各実施形態と異なる点は、操作者がクラッシャー傾斜磁場パルスの印加パターンを設定するためのUI(ユーザーインターフェース)を設ける点であり、それ以外は前述の各実施形態と同じなので、以下図8に基づいて、異なる点のみ説明し、同一の点についての説明は省略する。
図8は、クラッシャー傾斜磁場パルスの印加パターンを設定するためのUIの一例であって、ディスプレイ20に表示され、マウスまたはキーボードを介して、操作者よってUIに表示された各種パラメータが選択・設定される。なお、図8は本実施形態に係るパラメータのみを示し、他のパラメータについては表示及び説明を省略する。
項目「Crusher Polarity」は、本実施形態に係るパラメータであり、クラッシャー傾斜磁場パルスの印加パターンを選択するためのUIである。この「Crusher Polarity」には、以下の選択肢がある。
「AUTO」は、パルスシーケンス制御ソフトに組み込まれている既知のスティミュレーティッドエコー対策のクラッシャー傾斜磁場パルス制御が自動で適用される選択肢である。
「NORMAL」は、既知のスティミュレーティッドエコー制御が適用されず、ある一方の極性でクラッシャー傾斜磁場パルス制御が適用される選択肢である。
「REVERSE」は、NORMALの逆極性でクラッシャー傾斜磁場パルス制御が適用される選択肢である。
「RANDOM」は、TR毎またはスライス毎に正極性、負極性交互にクラッシャー傾斜磁場パルスの極性が変化する制御が適用される選択肢である。
「STATIC」は、AUTOの制御に対し、オブリーク撮像時でも、オブリーク無し撮像時と同じクラッシャー傾斜磁場パルスが印加される制御が適用される選択肢である。
操作者は所望の印加パターンを選択すると、シーケンサ6は、選択された印加パターンのクラッシャー傾斜磁場パルスを印加する。
以上説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、操作者がクラッシャー傾斜磁場パルスの印加パターンを選択できるようになるので、ある計測条件の組み合わせ時に、画像上に予期せぬアーチファクトが発生したときに、Crusher Polarityを変更することにより、そのようなアーチファクトを回避することができるようになる。
本発明に係るMRI装置の一例の全体構成を示すブロック図 Flow-Rephase機能付きSEシーケンスの一例を示すパルスシーケンス図。 図2を2TR分図示し、スティミュレーティッドエコー形成経路を説明するパルスシーケンス図 従来の実施形態において発生する偽エコーの位置を示すk空間データを示す図。 本発明の第1の実施形態に係るSEシーケンスを2TR分にまたがって示すパルスシーケンス図。 (a) ラディアルシーケンスの一例を示すパルスシーケンス図と、(b) ラディアルシーケンスで取得されるK空間データの一例を占めず図。 従来のラディアルシーケンスで偽エコー信号が発生する理由を説明するシーケンス図。 本発明の第2の実施形態に係るラディアルシーケンスを2TR分にまたがって説明するパルスシーケンス図の一例、(a)はエンコード傾斜磁場パルスが正の場合、(b)はエンコード傾斜磁場パルスが負の場合。 本発明の第3の実施形態に係るUIを示す図。
符号の説明
1 静磁場発生系、2 静傾斜磁場発生系、3 送信系、4 受信系、5 信号処理系、6 シーケンサ、7 中央処理装置、8 披検体、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14 照射コイル、15 高周波受信コイル、16 受信回路、17 A/D変換器、18 信号処理装置、19 メモリ、20 磁気ディスク、21 光ディスク、22 ディスプレイ

Claims (4)

  1. マルチスピンエコータイプのラディアルシーケンスに基づいて複数のRFパルスと複数の傾斜磁場パルスを被検体に印加してエコー信号の計測を制御する計測制御手段を有し、
    前記複数の傾斜磁場パルスは、少なくとも一つの180度RFパルスの前後で印加される、印加量の等しい一対のクラッシャー傾斜磁場パルスを含み、
    前記計測制御手段は、周波数エンコード傾斜磁場パルスの極性と、前記一対のクラッシャー傾斜磁場パルスの極性とが同一となるように制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記計測制御手段は、前記周波数エンコード傾斜磁場パルスの極性が切り替わるタイミングで、前記一対のクラッシャー傾斜磁場パルスの極性を変更することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 請求項1又は2記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記計測制御手段は、撮影空間における回転角度に依らずに、前記周波数エンコード傾斜磁場パルスの極性と前記一対のクラッシャー傾斜磁場パルスの極性とが同一となるように制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記クラッシャー傾斜磁場パルスの印加パターンの選択肢を表示する表示手段を備え、
    前記計測制御手段は、選択された印加パターンに対応して、前記クラッシャー傾斜磁場パルスの印加を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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