JP5375246B2 - 原油タンク用耐食形鋼材とその製造方法 - Google Patents

原油タンク用耐食形鋼材とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、原油タンカーの油槽や原油を輸送あるいは貯蔵するためのタンク(以下、まとめて「原油タンク」と総称する)に用いて好適な形鋼材に関し、具体的には、原油タンクの天井部や側壁部、底部の形鋼材表面に発生する全面腐食を軽減することができる、原油タンク用形鋼材とその熱間圧延による製造方法に関するものである。
タンカーの原油タンクの内面、特に上甲板裏面および側壁部上部に用いられている鋼材には、全面腐食が生じることが知られている。全面腐食が起こる原因としては、
(1)昼夜の温度差による鋼材面への結露と乾湿の繰り返し、
(2)原油タンク内に防爆用に封入されたイナートガス(O約5vol%、CO約13vol%、SO約0.01vol%、残部Nを代表組成とするボイラあるいはエンジンの排ガス)中のO、CO、SOの結露水への溶け込み、
(3)原油から揮発するHS等の腐食性ガスの結露水への溶け込み、
(4)原油タンクの洗浄に使用される海水の残留、
などが挙げられる。これらは、実際のドック検査時における調査で、強酸性の結露水と、硫酸イオンおよび塩化物イオンが検出されていることからも窺い知ることができる。
更に、腐食によって生成した鉄錆を触媒としてHSが酸化されて、固体Sが鉄錆中に層状に生成し、これらの腐食生成物は、容易に剥離して脱落するため、原油タンクの底部に堆積する。そのため、2.5年毎のドック検査では、多大な費用をかけて、タンク上部の補修やタンク底部の堆積物の回収が行われているのが現状である。
上記腐食を抑制する最も有効な方法は、鋼材表面に重塗装を施し、鋼材を腐食環境から遮断する方法である。しかし、原油タンクの塗装作業は、その塗布面積が膨大である。また、塗膜の劣化により、約10年に1度は塗り替えが必要となるため、検査および塗装に多大な費用が発生する。さらに、重塗装した塗膜の損傷部分においては、原油タンク環境では、却って腐食が助長されることが指摘されている。
そこで、鋼材自体の耐食性を改善し、原油油槽環境においても耐食性を有する耐食鋼が幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.01〜0.3%を含有する鋼に、適正量のSi,Mn,P,Sと、Ni:0.05〜3%を添加し、さらに選択的にMo,Cu,Cr,W,Ca,Ti,Nb,V,Bを添加した全面腐食や局部腐食に対する抵抗性を改善した耐食鋼が開示されている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.001〜0.2%を含有する鋼に、適正量のSi,Mn,P,SとCu:0.01〜1.5%、Al:0.001〜0.3%、N:0.001〜0.01%を添加し、さらにMo:0.01〜0.2%またはW:0.01〜0.5%の少なくとも一方を添加することにより、耐全面腐食性および耐局部腐食性に優れ、しかも固体Sを含む腐食生成物の生成を抑制した耐食鋼が開示されている。
また、特許文献3には、質量%で、C:0.01〜0.2%を含有する鋼に、適正量のSi,Mn,Pと、Ni:0.01〜2%、Cu:0.05〜2%、W:0.01〜1%を添加し、選択的にCr,Al,N,Oを添加した上で、さらにCu,Ni,Wの添加量をパラメータ式で規定することにより全面腐食や局部腐食を向上させた耐食鋼が開示されている。
また、特許文献4には、質量%で、C:0.01〜0.2%を含有する鋼に、適正量のSi,Mn,P,Cr,Alと、Ni:0.01〜1%、Cu:0.05〜2%、Sn:0.01〜0.2%を添加し、さらに選択的にMo,W,Ti,Zr,Sb,Ca,Mg,Nb,V,Bを添加することにより全面腐食や局部腐食に対する抵抗性を向上した耐食鋼が開示されている。
特開2003−082435号公報 特開2004−204344号公報 特開2005−325439号公報 特開2007−270196号公報
しかしながら、上記特許文献1〜4に開示された耐食鋼は、厚鋼板を前提に考案されたものであり、形鋼材の製造に当てはめた場合には、その製造方法の違いによってミクロ組織が異なるため、十分な耐食性を発現するとは言い難かった。
さらに、原油タンクにおける形鋼材は構造部材として用いられ、その形状に起因して、腐食性物質が表面に蓄積しやすく、さらに、鋼材両面からの腐食を受けるため、厚鋼板以上に耐食性に優れることが求められる。
本発明は、上記課題を解決するために開発されたものであり、その目的は、裸状態で原油タンクに使用した場合に優れた耐全面腐食性を有するだけでなく、形鋼材表面にZnが存在する状態で使用された場合においても、著しく優れた耐全面腐食性および塗装寿命延長効果を発揮する原油タンク用形鋼材とその製造方法を提供することにある。
発明者等は、上記課題を解決するため、まず、原油タンク内の全面腐食に関与すると思われる因子を抽出し、それらの因子を種々に組み合わせた腐食試験を行い、原油タンク内で生じる全面腐食の再現に成功した。そして、その腐食試験を通して、全面腐食の支配因子および腐食機構について、以下の知見を得た。
原油タンク内に防爆のために封入されるイナートガスには水蒸気が含まれる。そのため、航海中の昼夜の温度差でタンク内壁の形鋼材表面に結露を生じる。この結露水には、イナートガス成分であるCO(二酸化炭素)やO(酸素),SO(二酸化硫黄)および原油からの揮発成分であるHS(硫化水素)等が溶け込み、硫酸イオンを含む腐食性の酸性溶液を生成する。また、原油タンクの海水洗浄によって持ち込まれる塩化物イオンも考慮する必要がある。これらの成分が溶け込んだ腐食性の酸性溶液は、形鋼材温度が上昇する過程で濃化し、形鋼材表面に全面腐食を生じさせる。さらに、形鋼材表面に形成した鉄さびを触媒として、HSからS(硫黄)が析出し、鉄さびと硫黄が層状となったさび層を形成するため、形鋼材表面のさび層は、脆く保護性のないものとなり、腐食が継続的に進行する。
そこで、発明者等は、硫酸イオンおよび塩化物イオンを含有した結露水が存在する環境下での形鋼材表面の全面腐食に及ぼす各種合金元素の影響について調査した。その結果、Cu,CrおよびSnの添加は、原油タンク用形鋼材として使用される環境において形成される形鋼材表面の錆層を緻密化し、耐全面腐食性を向上させる効果があること、WおよびSbの添加は、上記緻密な錆層の生成を促進し、耐全面腐食性をより向上させることを確認した。また、塩化物イオンおよび硫酸イオンの双方が同時に存在する酸性腐食環境においては、Moの添加は、却って耐食性を劣化させることを確認した。すなわち、耐食性向上元素として主にCu,CrおよびSnを添加し、それに加えてさらにWおよびSbを適正量添加し、かつ、Mo含有量を制限することにより、裸状態において優れた耐全面腐食性を有する原油タンク用形鋼材が得られることを見出した。
さらに、発明者らは、上記Cu,Cr,Sn,WおよびSb含有量を適正化した形鋼材は、無塗装の状態でも優れた耐食性を有するが、表面に金属ZnあるいはZn化合物を含有する塗装を施して使用した場合には、その塗装寿命を大きく延長できるとともに、耐全面腐食性が著しく向上することを見出した。本発明は、上記知見に基づき、さらに検討を加えて完成したものである。
すなわち、本発明は、C:0.001〜0.16mass%、Si:1.5mass%以下、Mn:0.1〜2.5mass%、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.1mass%、N:0.001〜0.008mass%、Cu:0.008〜0.35mass%、Cr:0.1mass%超0.5mass%以下、Mo:0.01mass%以下、Sn:0.005〜0.3mass%を含有し、さらに上記成分が下記(1)式:
B1=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)−6
・・・(1)
ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
で定義するB1の値が0以下となるよう含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、加工フェライトを全組織に対して面積率で10%以上含むフェライトおよびパーライトからなるミクロ組織を有する原油タンク用耐食形鋼材である。
本発明の原油タンク用耐食形鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.005〜0.4mass%を含有し、下記(2)式:
B2=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+2×Ni+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)−6
・・・(2)
ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
に定義するB2の値が0以下であることを特徴とする。
また、本発明の原油タンク用耐食形鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、W:0.001〜0.5mass%およびSb:0.005〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有し、下記(3)式:
B3=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+2×Ni+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)+0.0019×(1/(Sb+W))−6.5 ・・・(3)
ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
に定義するB3の値が0以下であることを特徴とする。
また、本発明の原油タンク用耐食形鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、Nb:0.002〜0.1mass%、V:0.002〜0.1mass%、Ti:0.001〜0.1mass%およびB:0.01mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の原油タンク用耐食形鋼材は、上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.0002〜0.005mass%およびREM:0.0005〜0.015mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする。
また、本発明の原油タンク用耐食形鋼材は、降伏応力が315MPa以上、引張強さが440MPa以上であることを特徴とする。
また、本発明の原油タンク用耐食形鋼材は、鋼材の表面に、金属ZnあるいはZn化合物を含む塗膜が形成されてなることを特徴とする。
また、本発明の原油タンク用耐食形鋼材は、塗膜中におけるZnの含有量が1.0g/m以上であることを特徴とする。
また、本発明は、上記いずれかに記載の成分組成を有する鋼素材を1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延して形鋼材を製造する方法において、Ar変態点以下での累積圧下率を10〜80%、圧延仕上温度を(Ar変態点−30℃)〜(Ar変態点−180℃)とする熱間圧延後、放冷することを特徴とする原油タンク用耐食形鋼材の製造方法を提案する。
本発明の原油タンク用耐食形鋼材の製造方法は、圧延中における被圧延材全体の表面温度差を70℃以内に制御して、上記熱間圧延することを特徴とする。
本発明によれば、優れた耐全面腐食性を有し、原油タンカーの油槽や原油を輸送あるいは貯蔵するためのタンクの用いて好適な形鋼材を、安価に提供することができるので、産業上格段の効果を奏する。
本発明の実施例で用いた全面腐食試験装置の模式図である。
本発明の原油タンク用形鋼材の成分組成を上記範囲に限定する理由について説明する。
C:0.001〜0.16mass%
Cは、鋼材の強度を高める元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.001mass%以上の含有を必要とする。一方、Cは、含有量の増加とともに耐食性が劣化するだけでなく、0.16mass%を超える添加は、溶接性および溶接熱影響部の靭性を劣化させる。よって、Cは0.001〜0.16mass%の範囲とする。なお、強度、靭性をバランスさせる観点からは、0.01〜0.15mass%の範囲が好ましい。
Si:1.5mass%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、強度を高める元素であるが、1.5mass%を超える添加は、鋼の靭性を低下させる。そのため、本発明では、Siは1.5mass%以下の範囲に限定する。なお、上記Siの作用を確実に得るためには、0.01mass%以上の添加が望ましい。さらに、Siは、酸性環境において、防食皮膜を形成して耐食性の向上に寄与するので、酸性環境での耐食性を改善する観点からは、0.3〜1.5mass%の範囲で添加するのが好ましい。
Mn:0.1〜2.5mass%
Mnは、鋼材の強度を高める元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.1mass%以上の添加を必要とする。一方、2.5mass%を超える添加は、鋼の靭性および溶接性を低下させるとともに、偏析を助長して鋼材組成の不均一化を招く。よって、Mnは0.1〜2.5mass%の範囲とする。なお、高強度を維持し、かつ、耐食性を劣化させる介在物の形成を抑制する観点からは、0.5〜1.6mass%の範囲が好ましく、0.8〜1.4mass%の範囲がより好ましい。
P:0.03mass%以下
Pは、粒界に偏析して鋼の靭性を低下させるとともに、耐食性をも低下させる有害な元素であり、できる限り低減するのが望ましい。特に、0.03mass%を超えて含有すると、中央偏析を助長して鋼材組成の不均一化を招くとともに、靭性と耐食性が顕著に低下するようになるため、Pは0.03mass%以下とする。なお、Pを0.005mass%未満に低減することは、製造コストの増大を招くので、Pの下限は0.005mass%程度が好ましく、また、酸性環境における耐全面腐食性を向上させる観点からは、0.020mass%以下とするのが好ましい。
S:0.01mass%以下
Sは、非金属介在物であるMnSを形成して腐食の起点になり、耐全面腐食性を低下させる有害な元素であり、できる限り低減するのが望ましい。特に、0.01mass%を超える含有は、耐全面腐食性の顕著な低下を招く。よって、本発明では、Sの上限は0.01mass%とする。なお、より耐食性を向上する観点からは、0.005mass%以下が望ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招くので、Sの現実的な好ましい範囲としては、0.0010〜0.0050mass%である。
Al:0.005〜0.1mass%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では0.005mass%以上含有させる必要である。一方、0.1mass%を超えて添加すると、鋼の靭性が低下する。よって、Alは0.005〜0.1mass%の範囲とする。好ましくは、0.01〜0.05mass%の範囲である。
N:0.001〜0.008mass%
Nは、鋼の靭性向上および溶接継手部の機械的特性向上のために、0.001mass%以上の添加が必要である。しかし、0.008mass%を超える添加は、固溶Nの増加をもたらし、溶接条件によっては、継手部の靭性を著しく低下させる。よって、Nは0.001〜0.008mass%の範囲とする。
Cu:0.008〜0.35mass%
Cuは、防食皮膜を形成して全面腐食を抑制する作用があり、本発明では、添加が必須の元素である。しかし、0.008mass%よりも少ないと上記効果が得られない。一方、Cuは、Snと複合添加することで、耐全面腐食性を著しく向上するが、0.35mass%を超えて添加すると、熱間加工性が低下し、製造性を害するようになる。よって、Cuは0.008〜0.35mass%の範囲とする。なお、Cu添加の効果は、添加量の増加にともない飽和していくため、費用対効果の点からは、0.008〜0.15mass%の範囲が好ましい。
Cr:0.1mass%超0.5mass%以下
Crは、Cuとともに鋼材表面に保護皮膜を形成し、酸性環境における耐全面腐食性を向上させるほか、鋼材強度を高める作用があり、本発明では添加が必須の元素である。特に、硫酸イオンおよび塩化物イオンを含む酸性環境において、Crは酸化皮膜を形成して鋼材表面を覆い、全面腐食速度を低下する効果がある。また、Crは、Cuとともに錆層を緻密化するため、ジンクプライマー塗布された状態でもZn化合物を錆層中に長く留めるので、塗装後耐食性も含めて、耐食性の向上に大きく寄与する。さらに、Cr添加による耐食性向上効果により、Cuの添加量を抑制できるので、Cu,Sn共存下で生じる熱間加工性の低下を軽減する効果がある。しかし、Crの0.1mass%以下の添加では、上記の添加効果は得られず、一方、0.5mass%を超える添加は、上記効果が飽和するとともに、コストの上昇および溶接性の劣化を招く。よって、Crは、0.1mass%超0.5mass%以下の範囲で添加する。
Mo:0.01mass%以下
Moは、一般的にWと同様の作用を有し、耐食性を向上させる元素と考えられている。しかし、発明者らは、Wは酸性塩水環境下で不溶性の塩を形成するのに対して、Moは酸性塩水環境下では溶解性のある塩を形成し、バリア効果を発揮せず、特に、Mo含有量が0.01mass%を超えて多くなると、却って酸性塩水環境下における耐食性が劣化することを新規に見出した。そこで、本発明では、Moの含有量を0.01mass%以下に制限する。
Sn:0.005〜0.3mass%
Snは、Cuとの複合効果により、緻密な錆層を形成して酸性環境下における全面腐食を抑制する作用があり、本発明では添加が必須の元素である。しかし、0.005mass%未満では、上記の添加効果がなく、一方、0.3mass%を超える添加は、熱間加工性および靭性の劣化を招く。よって、Snは、0.005〜0.3mass%の範囲とする。
以上の元素が本発明に係る形鋼材の基本成分である。しかし、本発明の形鋼材が優れた耐全面腐食性を発揮するためには、上記成分が上記組成範囲にあるだけではなく、さらに、下記(1)式:
B1=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)−6
・・・(1)
ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
で定義されるB1の値が0以下となるよう含有していることが必要である。
上記(1)式は、本発明において行った腐食試験において得られた、耐全面腐食性に及ぼす各元素の影響を纏めた耐食性の指標を表す経験式であり、上記B1の値が0を超えると、耐全面腐食性を確保することができなくなることがわかっている。なお、上記(1)式では、各元素の耐食性に及ぼす影響について、1次および2次の項の元素は、その元素を添加するほど耐全面腐食性が低下することを、一方、逆数となっている項の元素は、添加するほど耐全面腐食性が向上することを示している。つまり、CおよびMoは耐食性低下元素、PおよびSは含有量の2乗で影響する耐食性低下元素、Cu,CrおよびSnは耐食性向上元素である。
本発明の形鋼材は、上記基本成分に加えてさらに、Niを下記の範囲で添加することができる。
Ni:0.005〜0.4mass%
Niは、Cuと複合して添加することにより、熱間加工性の劣化を抑制する働きがある。しかし、0.005mass%未満の添加では上記効果が得られず、一方、0.4mass%を超える添加は、コストの上昇を招く。よって、Niは0.005〜0.4mass%の範囲で添加するのが好ましい。なお、費用対効果の観点からは、0.005〜0.15mass%の範囲がより好ましい。
なお、Niを添加する場合は、上記B1の値に代えて、下記(2)式:
B2=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+2×Ni+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)−6
・・・(2)
ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
で定義されるB2の値を0以下となるよう各成分を含有させる必要がある。ここで、(2)式からわかるように、Niは、耐食性を低下する元素である。
また、本発明の鋼材は、上記成分に加えてさらに、WおよびSbのうちから選ばれる1種または2種を下記の範囲で添加することができる。
W:0.001〜0.5mass%
Wは、腐食環境で形成されるWO 2−イオンが、塩化物イオン等の陰イオンに対するバリア効果を発揮するとともに、不溶性のFeWOを形成して腐食の進行を抑制する。さらに、鋼材表面に形成される錆層を緻密化する効果もある。そして、Wは、これらの化学的、物理的な効果によって、HSおよびClが存在する腐食環境における全面腐食の進行を抑制する効果がある。しかし、0.001mass%よりも少ないと十分な添加効果が得られず、一方、0.5mass%を超える添加は、その効果が飽和するだけでなく、コストの上昇を招く。よって、Wを添加する場合には、0.001〜0.5mass%の範囲とするのが好ましい。
Sb:0.005〜0.3mass%
Sbは、Snと同様に、CuおよびWとの複合効果により緻密な錆層を形成して酸性環境における腐食を抑制する作用があり、本特性をより向上させたい場合に添加することができる。しかし、0.005mass%未満の添加では効果がなく、一方、0.3mass%を超える添加では、効果が飽和するととともに、加工性が低下するようになる。よって、Sbを添加する場合は、0.005〜0.3mass%の範囲とするのが好ましい。
なお、上記Niのほか、Wおよび/またはSbを添加する場合には、上記B1あるいはB2の値に代えて、下記(3)式:
B3=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+2×Ni+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)+0.0019×(1/(Sb+W))−6.5 ・・・(3)
ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
で定義されるB3の値を0以下にするよう、各元素を含有させる必要がある。ここで、(3)式からわかるように、WおよびSbは、耐食性を向上する元素である。
さらに、本発明の形鋼材は、強度および靭性を向上させるため、上記成分に加えてさらに、Nb,V,TiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上を下記に範囲で添加することができる。
Nb:0.002〜0.1mass%
Nbは、鋼の強度および靭性向上を目的に添加する元素である。しかし、0.002mass%未満ではその効果がなく、一方、0.1mass%を超えると、上記効果が飽和してしまう。よって、Nbを添加する場合は、0.002〜0.1mass%の範囲とするのが好ましい。
V:0.002〜0.1mass%
Vは、鋼の強度向上を目的に添加する元素である。しかし、0.002mass%未満では強度向上効果がなく、一方、0.1mass%を超える添加は、靭性の低下を招く。よって、添加する場合は、0.002〜0.1mass%の範囲とするのが好ましい。
Ti:0.001〜0.1mass%
Tiは、鋼の強度および靭性向上を目的に添加する元素である。しかし、0.001mass%未満ではその効果がなく、一方、0.1mass%を超えると効果が飽和してしまう。よって、添加する場合は、0.001〜0.1mass%の範囲とするのが好ましい。
B:0.01mass%以下
Bは、鋼の強度向上を目的に添加する元素であり、その効果は、0.0003mass%以上の添加によって得られるので、添加する場合には0.0003mass%以上添加するのが好ましい。しかし、0.01mass%を超える添加は、靭性を低下させるため、添加する場合は、0.01mass%以下にするのが好ましい。
さらに、本発明の形鋼材は、延性および靭性の向上を図るため、上記成分に加えてさらに、CaおよびREMのうちから選ばれる1種または2種を下記に範囲で添加することができる。
Ca:0.0002〜0.005mass%
Caは、介在物の形態制御によって延性および靭性を向上させる効果があるとともに、塗装状態における耐食性を向上する効果があるので、これらの特性向上を目的として添加することができる。しかし、0.0002mass%未満では、その効果がなく、一方、0.005mass%を超える添加は、靭性の低下を招く。よって、添加する場合には、0.0002〜0.005mass%の範囲とするのが好ましい。なお、耐食性向上の観点からは、0.001〜0.005mass%の範囲がより好ましい。
REM:0.0005〜0.015mass%
REM(Rare Earth Metal)は、原子番号が57〜71までの希土類元素を意味し、一般にはLa,Ce,Pr,Ndなどを含む混合物であるミッシュメタルを用いて添加することができる。このREMは、介在物の形態を制御し、延性および靭性を向上させる作用を有する。しかし、0.0005mass%未満では、その効果がなく、一方、0.015mass%を超える添加は、靭性が低下させる。よって、添加する場合は、0.0005〜0.015mass%の範囲とするのが好ましい。なお、耐食性を向上させる観点からは、0.005〜0.015mass%の範囲がより好ましい。
なお、本発明の形鋼材は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなるものである。ただし、本発明の形鋼材は、上記本発明の作用効果を害さない範囲であれば、他の元素の含有を拒むものではなく、例えば、Oであれば0.008mass%以下を含有することができる。
次に、本発明に係る原油タンク用形鋼材のミクロ組織について説明する。
一般に、船舶に用いられる鋼板、とりわけ、降伏応力YP:315MPa以上、引張強さTS:440MPa以上の高強度厚鋼板では、炭素当量を低く制御して高い溶接性を付与した鋼素材を、制御圧延と制御冷却を組み合わせたTMCPを採用して鋼板組織中に硬質のベイナイトを導入することで高強度化を達成している。そして、低温靭性が求められる場合や、厚肉化への要求に対しては、上記制御圧延および制御冷却の条件を最適化することで対応している。したがって、この場合、鋼板のミクロ組織は、通常、フェライト+ベイナイト組織である。
一方、形鋼の場合、短辺と長辺の幅や厚さが異なる場合が多く、例えば、断面が矩形ではない不等辺不等厚山形鋼の場合には、必然的に熱間圧延時やその後の冷却時に温度の不均一が生ずる。ここでさらに制御冷却(加速冷却)を適用した場合には、残留応力が不均一となり、ねじれや曲がり、反りを誘発し、寸法精度の低下を招くため、圧延後の形状矯正負荷が増大する。そのため、第2相として硬質のベイナイト組織を導入して高強度化するTMCPを形鋼に適用することは難しい。
したがって、船舶に用いられる形鋼には、加速冷却を行うことなく、通常の熱間圧延組織であるフェライト+パーライト組織で、降伏応力YP:315MPa以上、引張強さTS:440MPa以上の高強度を達成することが求められる。これを実現する手段としては、第2相のパーライト分率を増やす方法、フェライト組織を細粒化する方法、フェライトを固溶強化や析出強化して硬くする方法、あるいは(γ+α)2相域で熱間圧延してフェライトの一部を加工フェライトとする方法等が考えられる。
上記方法のうち、フェライトを細粒化する方法は、YPを上昇させるには有効な手段であるが、TSの上昇が小さいため、この方法のみでは十分な高強度化は図れない。また、パーライト分率を増加する方法は、Cを多量に添加する必要があるが、Cの過度な添加は、溶接性の低下を招くため好ましくない。また、固溶強化元素や析出強化元素を添加してフェライトを強化する方法は、合金元素の多量の添加により溶接性の低下を招いたり、素材コストの上昇を招いたりする。
一方、加工フェライトを活用する方法は、Cや合金元素の添加を最小限に抑制し、溶接性を維持した状態で、YPおよびTSを上昇させることができる。すなわち、この方法は、熱間圧延後、制御冷却(加速冷却)することなく高強度化を図ることができるので、形鋼製造時の固有の問題である圧延、冷却時の曲がりや反りの発生を抑えながら、高強度化することが可能である。そこで、本発明においては、原油タンク用形鋼の高強度化手段として、鋼のミクロ組織を、加工フェライトを含むフェライト+パーライト組織とする方法を採用することとした。
上記加工フェライトは、面積率にして鋼組織全体の10%以上であることが必要である。加工フェライトが10%未満では、鋼の強化が十分に得られない。なお、上限は特に規定しないが、70%超えでは、強度上昇が飽和すると共に、(α+γ)の2相域圧延時の荷重増大に伴うロール割損リスクが増加するため、上限は70%とするのが好ましい。ここで、上記加工フェライトとは、Ar変態点以下の(α+γ)2相域での熱間圧延によって形成された転位密度の高いフェライトのことであり、その分率は、扁平化した加工フェライトがミクロ組織全体に占める面積割合を、画像解析によって定量化することで求めることができる。ミクロ組織の測定位置は、最も板厚の厚い部位における板厚1/4部が好ましい。残部は、フェライト(加工フェライト以外)およびパーライト組織である。パーライト組織は、面積率で20%以下であることが好ましい。なお、フェライト・パーライト以外の組織、例えばベイナイト等は、面積率で20%以下なら存在してもよい。
次に、上記加工フェライトを含むフェライト+パーライト組織を有する原油タンク用形鋼を製造する方法について説明する。
本発明の原油タンク用形鋼の製造に当たっては、先ず、上記成分組成を有する鋼を転炉、電気炉等通常公知の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法等通常公知の方法でブルームやビレット等の鋼素材とするのが好ましい。なお、溶鋼を溶製後、取鍋精錬や真空脱ガス等の処理を付加しても良い。
次いで、上記鋼素材を、加熱炉で再加熱後、熱間圧延して所望の寸法、所望のミクロ組織および機械的特性を有する原油タンク用形鋼とする。この際、鋼素材の再加熱温度は1000〜1350℃の範囲とする必要がある。加熱温度が1000℃未満では変形抵抗が大きく、熱間圧延が難しくなる。一方、1350℃を超える加熱は、表面痕の発生原因となったり、スケールロスや燃料原単位が増加したりする。好ましくは、1100〜1300℃の範囲である。
続く熱間圧延は、Ar変態点以下での累積圧下率を10〜80%とする必要がある。圧延温度がAr変態点以上では、鋼のミクロ組織が加工フェライトを含まないものとなり、必要な強度、靭性を確保することができない。同様に、Ar変態点以下での累積圧下率が10%未満では、加工フェライトの生成量が少ないため、強靭化効果が小さい。逆に、80%を超える圧下率になると、圧延荷重が増大して圧延が困難となったり、圧延のパス回数が増えて生産性の低下を招いたりする。よって、Ar変態点以下での累積圧下率は10〜80%とする。好ましくは、10〜60%の範囲である。なお、Ar変態点以下での圧延は、少なくとも1パス以上行えばよく、複数パスとなっても構わない。ここで、Ar変態点以下での累積圧下率とは、Ar変態点における圧延材の断面積(S)に対する圧延終了後の圧延材の断面積(S)の断面減面率のことを指し、以下の式で表される。
(Ar変態点以下での累積圧下率〔%〕)=100×(S−S)/S
また、上記熱間圧延は、圧延仕上温度を(Ar変態点−30℃)〜(Ar変態点−180℃)とする条件で行う必要がある。圧延仕上温度が、(Ar変態点−30℃)超えでは、2相域圧延による転位密度の高い加工フェライト導入による強靭化効果が十分に得られず、一方、(Ar変態点−180℃)未満では、変形抵抗の増大により圧延荷重が増加し、圧延することが困難となるからである。
さらに、上記熱間圧延は、Ar変態点以下での圧延を行う前に、圧延途中の形鋼の部位(長辺、短辺、ウエブ、フランジなど)による温度差(すなわち、圧延途中の熱間圧延形鋼素材全体における温度差)を70℃以内としておくのが好ましく、50℃以下としておくのがより好ましい。例えば、長辺と短辺とで肉厚に差のある不等辺不等厚山形鋼については、肉厚の薄い長辺側よりも肉厚の厚い短辺側を圧延機の前後で水冷して、長辺側と短辺側の温度差を70℃以内に、さらには50℃以内に抑えておくことが好ましい。温度差が70℃を超えると、短辺側と長辺側の強度、靭性特性のばらつきが大きくなるばかりでなく、圧延後の冷却工程での曲がりや反りが大きくなり、矯正に要する負担が大きくなって生産性が低下するためである。さらに、50℃以下であれば、生産安定性が改善されるためより好ましい。なお、形鋼の各部位の温度差は、圧延途中の形鋼の各部位における表面温度を放射温度計で測定し、得られた最高温度と最低温度の差より求める。
形鋼の各部位(例えば、短辺側と長辺側)の温度差を70℃以内に、より好ましくは50℃以内に抑える手段としては、粗圧延機の前後に配置された冷却設備を用いて制御する方法が好ましい。具体的には、上記冷却設備により、肉厚の厚い短辺側を重点的に水冷し温度差を解消する方法が好ましい。この際の水冷は、圧延機前後の前面のみ、後面のみあるいは、前後の両方で行ってもよく、また、熱間圧延する形鋼の寸法や要求精度に応じて、複数回に分けて行ってもよい。なお、水冷の際の水量密度は、1m/m・min以上であることが好ましい。
熱間圧延に続く冷却は、空冷(放冷)とする。これにより、圧延後の冷却不均一から生じる曲がりや反りといった形状変化を低減することができ、圧延後の製品に対する矯正負担を軽減することができる。放冷の際の冷却速度は、板厚にもよるが、0.4〜1.0℃/sec程度である。上記冷却速度の範囲内で冷却を加減速する措置(強制冷却、保温など)を施すことは、実質的に放冷と同じなので、特にこれを除外しない。
一般に、タンカーの原油タンク等に用いられる形鋼材は、金属ZnあるいはZn化合物を含むプライマー等の塗料(以下、「ジンクプライマー」と総称する。)を塗布することにより、耐全面腐食性を向上させて使用されている。これらの形鋼材は、表面にショットブラスト処理を施した後、ジンクプライマー塗装されるため、鋼材の粗度等の表面状態によっては、下地を完全に覆い得ない場合がある。したがって、鋼材の表面全体を完全に覆うためには、一定以上の塗膜厚さが必要であり、好ましくはジンクプライマーの塗膜厚を平均厚さ15μm以上にすることで耐全面腐食性を格段に向上することができる。
この点、上記の成分組成を有する鋼素材を用いて上記の方法で製造された本発明の原油タンク用形鋼材は、無塗装の状態においても耐全面腐食性に優れているのみならず、塗装後の耐食性にも優れているところに特徴がある。特に、本発明の原油タンク用形鋼材は、金属ZnあるいはZn化合物を含むプライマーの塗布量を、Zn含有量に換算して1.0g/m以上とすることにより、耐全面腐食性を格段に向上するとともに塗装寿命を大幅に延長することができる。さらに、2.5g/m以上とすれば、より優れた耐全面腐食性を得ることができる。なお、耐全面腐食性の観点からは、ジンクプライマー塗布量の上限は設けないが、ジンクプライマーの塗膜が厚くなると、切断性や溶接性が低下するので、上限の厚さは100μm程度とするのが好ましい。
ジンクプライマーの塗膜厚と形鋼材表面のZn含有量との関係は、ジンクプライマー中のZn含有率に依存するが、一般的には平均塗装厚にして15μm以上であれば、形鋼材表面全体を覆うことができ、ジンクプライマーの種類によらず、Zn含有量に換算して1.0g/m以上の塗布量を確保することができる。
なお、鋼材表面のZn含有量は、例えば、鋼材から30mm角の小片を複数個(例えば、10個)切り出し、その表面の塗膜あるいはさび層をすべて溶解回収し、その中に含まれるZn量を分析することにより求めることができる。
以上のように、本発明の形鋼は、オイルタンクの油槽、原油を輸送するためのタンクまたは原油を貯蔵するためのタンクを構成する各種容器の構成材料(プライマーあるいは塗装を併用する場合も含む)として、広く用いることができる。
表1−1および表1−2に示したNo.1〜35の成分組成を有する鋼を真空溶解炉または転炉で溶製してブルームとし、このブルームを加熱炉で1300℃の温度に加熱後、表2−1および表2−2に示したAr変態点以下での累積圧下率を40%、圧延仕上温度を730℃とする熱間圧延後、空冷して、断面寸法が350×100×11/17mmの不等辺不等厚山形鋼(NAB)を製造した。一部の鋼については、本特許の範囲外の製造方法を行い、比較例とした。
上記のようにして得た形鋼の短辺部から以下の各種試験片を採取してそれぞれの試験を実施した。具体的には、日本海事協会の船級規格(いわゆるNK規格、2007年度版)の記載[K編3章の図K3.1の(2)]を参照し、これに準拠して試験片採取位置を決定した。まず、JIS1A号引張試験片を採取し、引張特性(降伏応力YP,引張強さTS,伸びEl)を測定した。また、組織観察用の試料を採取し、板厚1/4部の組織を顕微鏡で倍率200倍にて観察し、2相域圧延で生成した扁平化した加工フェライトをトレースし、ミクロ組織中に占める面積を画像解析により定量化し、フェライト、加工フェライトおよびパーライトの面積率を求めた。なお、加工フェライトを有する鋼において、加工フェライト以外の主要な相は、パーライトあるいはベイナイトと熱間圧延終了後に生成した加工を受けていないフェライトであった。
Figure 0005375246
Figure 0005375246
また、同じく、上記No.1〜35の形鋼の短辺部から、長さ50mm×幅25mm×厚さ4mmの小片を切り出し、その表面にショットブラストを施した後、無機系のジンクプライマーの塗装を施さない裸状態の試験片(塗膜厚0μm)と、塗膜厚を5〜10μm、15〜25μm、50〜70μmの3水準に塗布した試験片の合計4種類の腐食試験片を作製した。なお、ジンクプライマーを塗布した試験片には、腐食を加速するため、鋼材表面に達する、塗膜損傷面積率が1.0%のX字型のカッティングを被試験面に施し、これを模擬損傷箇所とした。
上記腐食試験片について、原油タンク上甲板裏の環境を模擬した全面腐食環境を再現できる図1に示した腐食試験装置を用いて、耐全面腐食性を評価した。
この腐食試験装置は、腐食試験槽2と、温度制御プレート3から構成されており、腐食試験槽2には、飽和蒸気圧に保つために水6が注入され、温度が30℃に保持されている。また、腐食試験槽2の内部には、原油タンク内の腐食環境を模擬するため、CO:13vol%、O:5vol%、SO:0.01vol%、HS:0.3vol%、残部がNの混合ガス4を導入し、飽和水蒸気圧の下に充満させている。試験片1は、上記腐食試験槽の上部に設置された温度制御プレート3の下方に取り付け、ヒーターと冷却装置によって25℃×1時間/50℃×5時間、昇温、降温時間:各1時間を1サイクル(8時間)とし、これを28日間付与することにより、結露水による全面腐食を模擬できるようにした。
なお、試験片の表面(被試験面)には、硫酸イオンおよび塩化物イオンを与えるため、硫酸イオン1000massppmおよび塩化物イオン10000massppmに相当する硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを混合した水溶液を500μL塗布・乾燥後、試験に供した。また、試験開始後は、硫酸イオンおよび塩化物イオンを一週間ごとに供給した。
上記腐食試験終了後、無塗装状態の試験片については、試験片表面に生成した錆を除去後、試験前後の質量変化から、腐食による板厚減量を求め、これを1年当たりの腐食板厚に換算して、以下の基準で耐全面腐食性を評価した。
<無塗装材の耐全面腐食性の評価>
○:腐食速度0.2mm/年未満
△:腐食速度0.2mm/年以上0.8mm/年未満
×:腐食速度0.8mm/年以上
また、プライマー塗布材については、各試験片の表面および塗膜下に進行した錆の面積率を測定し、以下の基準で耐全面腐食性を評価した。
<プライマー塗布材の耐全面腐食性の評価>
○:錆面積率25%未満
△:錆面積率25%以上50%未満
×:錆面積率50%以上
上記引張試験、ミクロ組織観察結果および全面腐食試験の結果を表2−1および表2−2に併記して示した。上記表から、成分組成および製造条件が本発明に適合するNo.1〜25の形鋼は、いずれの条件においても耐全面腐食性が○である、すなわち、無塗装の裸状態でも耐全面腐食性が良好であるとともに、ジンクプライマーを塗布した状態においても耐全面腐食性も優れた耐全面腐食性を有することが確認された。
一方、本発明の成分組成を満たしていても、製造条件が本発明の範囲を外れる形鋼No.9−3,23−2,23−3の形鋼は、耐食性の評価は○であるものの、形鋼No.9−3および23−2の形鋼は、加工フェライト分率が低いために目標強度を確保できず、また、形鋼No.23−3の形鋼は、水冷により形鋼の各部位での温度差が大きくなり、形状不良が発生した。
また、成分組成が本発明の範囲から外れるNo.26〜35の形鋼は、無機系ジンクプライマーを塗布していない場合のみならず、塗布している場合においても耐食性評価が×または△で耐全面腐食性が劣っていることがわかる。
さらに、本発明の範囲で加工フェライトを含むミクロ組織を有する形鋼は、降伏応力が315MPa以上、引張強さが440MPa以上の高強度の形鋼であることがわかる。
Figure 0005375246
Figure 0005375246
本発明の原油タンク用形鋼は、海水による腐食環境下で優れた耐食性を示すので、船舶の補修期間の延長を通じて船舶自体の寿命延長にも有効であるが、類似の腐食環境で使用される他の分野で用いられる形鋼としても用いることができる。
1:腐食試験片
2:試験槽
3:温度制御プレート
4:導入ガス
5:排出ガス
6:水

Claims (10)

  1. C:0.001〜0.16mass%、
    Si:1.5mass%以下、
    Mn:0.1〜2.5mass%、
    P:0.03mass%以下、
    S:0.01mass%以下、
    Al:0.005〜0.1mass%、
    N:0.001〜0.008mass%、
    Cu:0.008〜0.35mass%、
    Cr:0.1mass%超0.5mass%以下、
    Mo:0.01mass%以下、
    Sn:0.005〜0.3mass%を含有し、
    さらに上記成分が下記(1)式で定義するB1の値が0以下となるよう含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、加工フェライトを全組織に対して面積率で10%以上含むフェライトおよびパーライトからなるミクロ組織を有する原油タンク用耐食形鋼材。

    B1=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)−6
    ・・・(1)
    ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
  2. 上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.005〜0.4mass%を含有し、下記(2)式に定義するB2の値が0以下であることを特徴とする請求項1に記載の原油タンク用耐食形鋼材。

    B2=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+2×Ni+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)−6
    ・・・(2)
    ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
  3. 上記成分組成に加えてさらに、W:0.001〜0.5mass%およびSb:0.005〜0.3mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有し、下記(3)式に定義するB3の値が0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の原油タンク用耐食形鋼材。

    B3=28×C+2000×P+27000×S+0.0083×(1/Cu)+2×Ni+0.027×(1/Cr)+95×Mo+0.00098×(1/Sn)+0.0019×(1/(Sb+W))−6.5 ・・・(3)
    ここで、上記式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)
  4. 上記成分組成に加えてさらに、Nb:0.002〜0.1mass%、V:0.002〜0.1mass%、Ti:0.001〜0.1mass%およびB:0.01mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の原油タンク用耐食形鋼材。
  5. 上記成分組成に加えてさらに、Ca:0.0002〜0.005mass%およびREM:0.0005〜0.015mass%のうちから選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の原油タンク用耐食形鋼材。
  6. 降伏応力が315MPa以上、引張強さが440MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の原油タンク用耐食形鋼材。
  7. 鋼材の表面に、金属ZnあるいはZn化合物を含む塗膜が形成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の原油タンク用耐食形鋼材。
  8. 塗膜中におけるZnの含有量が1.0g/m以上であることを特徴とする請求項7に記載の原油タンク用耐食形鋼材。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の成分組成を有する鋼素材を1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延して形鋼材を製造する方法において、Ar変態点以下での累積圧下率を10〜80%、圧延仕上温度を(Ar変態点−30℃)〜(Ar変態点−180℃)とする熱間圧延後、放冷することを特徴とする原油タンク用耐食形鋼材の製造方法。
  10. 圧延中における被圧延材全体の表面温度差を70℃以内に制御して、上記熱間圧延することを特徴とする請求項9に記載の原油タンク用耐食形鋼材の製造方法。
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