JP5377230B2 - 通流積層シート - Google Patents

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Description

本発明は、液体やガスなどの流体の配管として使用される通流積層シートに関するものであり、より詳細には、互いに対面するように配置された2枚のプラスチックフィルムからなり、このシート間が流体流路となり、該シートの面方向に液やガスなどの流体を流す通流積層シートに関するものである。
電気透析による電解質溶液の脱塩技術は、かん水の脱塩を目的として1950年代に最初に開発された技術であり、その後、食塩の製造を目的とする海水濃縮、醤油やホエーの脱塩、各種化学製造プロセスの合理化、廃水処理、ワイン中の不純物の分離など、さまざまな電解質溶液からの脱塩に利用されている。
上記のような電気透析に用いる電気透析装置は、一対の電極の間に、多数の室枠(スペーサーとも呼ばれている)が重ねて配置されており、互いに隣り合う室枠の間には、アニオン交換膜或いはカチオン交換膜が挟持され、全体としてアニオン交換膜とカチオン交換膜とが交互に位置するように配置され、各室枠にアニオン交換膜とカチオン交換膜とによって区画されたイオン交換室(通電部)が形成されることとなる。このようなイオン交換室は、負極側にカチオン交換膜が位置し且つ正極側にアニオン交換膜が位置している室が脱塩室となり、負極側にアニオン交換膜が位置し且つ正極側にカチオン交換膜が位置している室が濃縮室となり、脱塩室と濃縮室とが交互に配置された構造となっている。即ち、脱塩室に処理液(電解質液)を循環供給しながら通電を行うと、脱塩室に供給された処理液中のカチオンはカチオン交換膜を通って隣の負極側の濃縮室に移行し、該処理液中のアニオンはアニオン交換膜を通って隣の正極側の濃縮室に移行することとなる。このようにして、脱塩室に処理液を循環供給すると同時に濃縮室に塩水溶液を循環すると、処理液の脱塩が行われると同時に、塩濃度が増大した濃縮液を得ることができるのである。
上記の説明から理解されるように、各室枠には、それぞれ、処理液及び濃縮液を流す流路となる連通孔と、該連通孔と脱塩室或いは濃縮室とを繋ぐ配流部とが形成されており、脱塩室或いは濃縮室に液を供給するための液供給部及び脱塩室或いは濃縮室から液を排出するための液排出部は、何れも、このような連通孔と配流部から形成されており、これにより、脱塩室での処理液の循環と濃縮室での濃縮液の循環とが行われるようになっている。
ところで、上記のような構造を有する電気透析装置においては、室枠と室枠の間にイオン交換膜(カチオン交換膜或いはアニオン交換膜)が挟持されているため、配流部でのアニオン交換膜とカチオン交換膜との接触を確実に防止し、配流部での通液路を安定に確保するため、配流部の内部に樹脂製のネットが配置されているが、イオン交換膜が室枠に被せられているため、配流部分からの液漏れを生じ易いという問題がある。即ち、配流部分において、イオン交換膜と室枠との間から液洩れを生じ、例えば脱塩室に供給する液の一部が液漏れによって濃縮室に流れ込んでしまうという問題を生じることがある。
このような問題を回避するため、特許文献1では、室枠(ガスケット)に形成されている配流部の一部(イオン交換室側の部分)を塞ぐように高弾性率の補強シートを設けることが提案されている。
特開2001−224930号公報
しかしながら、上記のように補強シートを設けた場合には、補強シートの柔軟性(弾性)が高いため、この補強シートが配流部に配置されているネット上に落ち込んでしまい、特に、隣り合うイオン交換室内での液圧が異なり、一方側のイオン交換室の液圧が高いような場合には、イオン交換膜と共に補強シートに撓みを生じてしまい、液漏れを効果的に抑制することが困難となってしまう。例えば、このような撓みなどの変形が生じると、配流部内の液圧は、イオン交換膜を室枠の壁面に押し付けるように作用するため、配流部分から隣のイオン交換室内への液漏れの問題はさほど生じないが、イオン交換室の液圧はイオン交換膜を室枠の壁面から遠ざける方向に作用するため、イオン交換室から隣の配流部への液漏れが生じるようになってしまう。
また、上記のような補強シートは、配流部を塞ぐように室枠に貼り付けられ、さらにこの補強シートを覆うように隣り合う室枠の間にイオン交換膜が挟持されることとなる。従って、配流部上に位置するイオン交換膜の部分には、どうしても補強シートの存在による段差を生じてしまい、段差に由来する隙間が形成されやすく、この結果、上記のような液漏れを生じ易く、液洩れ防止効果が低い。
さらに、補強シートは、配流部を覆うように設けられるが、その一部がイオン交換室側或いは連通孔にはみ出さないようにしなければならない。補強シートがイオン交換室側などにはみ出していると、このはみ出し部分は、空間上に位置し、フリーの状態にあるため、液圧の影響を受け易く、液圧による撓み等を生じ易く、補強シートの補強効果を低減させてしまうからである。従って、補強シートは、配流部のみを覆うように精度よく貼り付けることが必要であり、その貼り付け作業が極めて面倒であるという問題も内在している。
また、性能面からは、特許文献1で提案された方法では、補強シートの厚み分だけイオン交換室の厚み(隣り合うイオン交換膜の間隔)が増すことで電気抵抗値が上がってしまうという問題もある。
即ち、本発明の目的は、2枚のシート間に沿って流体の伝送を行うことが通流積層シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、特に電気透析装置における室枠に形成されている連通孔に配置され、液漏れを効果的に防止して液の伝送を行うことが可能であり、イオン交換室の厚みを増大することなく配設することが可能な通流積層シートを提供することにある。
本発明によれば、互いに対面するように配置された2枚のプラスチックフィルムの間の空間が流体流路となっており、該流体流路には、網目状に形成されたプラスチック線条体が配置され、該プラスチック線条体、該流体流路を遮断しないように、前記2枚のプラスチックフィルムに接着されている通流積層シートであって、電気透析装置における2枚のイオン交換膜により形成されたイオン交換室への液供給部または液排出部に設けられて使用されることを特徴とする通流積層シートが提供される。
本発明の通流積層シートにおいては、
(1)前記プラスチックフィルムの厚みが、それぞれ10乃至1000μmの範囲にあり、且つ前記流体流路を形成している2枚のプラスチックフィルムの間の空間の間隔が100乃至10000μmの範囲にあること、
(2)前記流体流路の空隙率が10乃至90%の範囲にあること、
(3)前記プラスチックフィルムがポリエステル製又はポリオレフィン製であり、該フィルムの剛性値(スティフネス)が15〜40℃において10N/m以上であり、前記網目状の線条体がポリオレフィン製であること、
(4)前記網目状の線条体は、押出成形により得られ、互いに交差している上方線条と下方線条とからなり、その交差部で該上方線条と下方線条とが一体に連なっていると共に、該上方線条の上面が上方に位置するプラスチックフィルムに接着され、該下方線条の下面が下方に位置するプラスチックフィルムに接着されていること
好適である。
本発明の通流積層シートは、2枚のプラスチックフィルムの間の流体流路となる空間に網目状のプラスチック線条体(即ち、ネット)が配置されており、2枚のプラスチックフィルムは、それぞれ、流体流路を遮断しないように、この線条体に接着固定されている。即ち、この通流積層シートは、プラスチックフィルムの面方向全体が線条体に均等に支持されているため、腰が強く、面圧に対する耐性が高い。例えばプラスチックフィルムに対して面方向に液圧等の圧力が加わった場合においても、その変形が有効に防止され、従って、面方向の圧力によって流体流路が閉じられてしまうという不都合を有効に回避することができる。
即ち、本発明によれば、前記プラスチックフィルムと、前記網目状の線条体を接着、一体化した後、配流部の型に精度良く切断加工することで、前記プラスチックフィルムと前記網目状の線条体とがずれることなく、液漏れを防止することができる。
上記の利点から理解されるように、本発明の通流積層シートは、電気透析装置における2枚のイオン交換膜により形成されたイオン交換室への液供給部または液排出部に配置されて使用されることが最も効果的である。即ち、この通流積層シートを液供給部または液排出部での配流部に配置することにより、これを覆うように室枠の間に挟持されているイオン交換膜の連通孔や配流部内への落ち込みを有効に防止することができ、安定して通液を行うことができる。
また、上記の通流積層シートは、従来、配流部に配置されていたネットを間に挟んで2枚のプラスチックフィルムが互いに対面するようにして接着された構造を有しているため、室枠に貼り付けられる従来公知の補強シートとは異なり、それ自体を配流部の内部に接着して固定することができる。従って、その大きさを、室枠を重ねることにより形成される配流部の大きさに適合するように設定しておけば、補強シートのように液洩れの要因となる段差は室枠の表面に形成されず、また配流部からの通流積層シートのはみ出しも効果的に防止される。更に、配流部の内部に固定されている通流積層シートが、仮に配流部からイオン交換室側或いは連通孔にはみ出したとしても、はみ出した部分のプラスチックフィルムは内部の網目状の線条体によって保持されているため、このようなはみ出しが液洩れに与える影響は極めて小さいという利点もある。
加えるに、上記の通流積層シートは、連通孔と同じ程度の大きさに設定しておけば、その側面の一部を熱溶着或いは接着剤を用いての接着によってスポット的に配流部の壁面に容易に固定することができる。しかも、上記で述べたように、この通流積層シートは、配流部からのはみ出し部分が液洩れに与える影響が小さいため、その位置精度もあまり要求されず、従って、配流部への取り付け作業は極めて容易である。
本発明の通流積層シートの分解斜視図である。 図1の通流積層シートの側面図である。 図1の通流積層シートに使用されている線条体を押出成形する際に用いるダイスの概略構造を示す図である。 図1の通流積層シートが使用される電気透析装置の原理を説明するための説明図である。 図4の電気透析を行う電気透析装置の要部の分解斜視図である。 図5に示されている電気透析装置の室枠の連通孔部分を拡大して示す斜視図である。 図5に示されている電気透析装置の要部の側断面図である。
<通流積層シートの構造>
図1の分解斜視図及び図2の側面図を参照して、全体として10で示す本発明の通流積層シートは、互いに対面するように配置された2枚のプラスチックフィルム11(上側のシートは11a,下側のシートは11bで示されている)と、その間に位置し且つ2枚のプラスチックフィルム11,11のそれぞれに接着固定されている網目状のプラスチック線条体(即ちネット)13とから構成されている。
即ち、2枚のプラスチックフィルム11の間の空間A(図2参照)が、流体が流れる流路となっており、この空間内に線条体13が配置されている。従って、線条体13は、この流路を遮断しないように、2枚のプラスチックフィルム11のそれぞれに接着されていなければならない。
上記のような線条体13は、種々の方法で作製することができ、例えば熱可塑性樹脂の糸(ストランド)の編成り、織成りなど、特に限定されないが、生産性やプラスチックフィルム11との接合強度の観点から、熱可塑性樹脂の一体押出成形により作製することが好ましい。図1及び図2では、熱可塑性樹脂の一体押出成形により作製された線条体3が示されている。
このような一体押出成形は、例えば特公昭34−4185号公報や特開昭53−49170号公報などに記載された公知の方法で行うことができる。その一例を例示すると、押出機先端に設けられるダイス金型として、例えば図3に示されるように、相対的に回転し得る外型1と外型の内部に設けられたコア型2とからなる構造のものを使用する。外型1の内面には、樹脂流路となる溝1aが適当な間隔で複数形成されており、一方、コア型2の外面にも、樹脂流路となる溝2aが適当な間隔で複数形成されている。従って、このような外型1とコア型2とを相対的に回転させながら(通常は、互いに逆方向に回転させる)、樹脂を溶融押出しすることにより、網目状の線条体13を得ることができる。即ち、溝1aと溝2aとが合致したときに押出される部分が、この線条体13の橋絡部(交点)Xとなる。このような方法によれば、外型1やコア型2の回転速度を調整することにより、容易に線条体13の開口部の大きさなどを調整することができる。
上記のようにして円筒状に押出された線条体は、冷却固化して形状を安定化させた後に、引き取り・切断される。冷却固化は、例えば押出し直後に水中に導入することにより行われるが、この際、円柱状のマンドレル(サイジング)を水中に配置しておき、このマンドレルを包み込むように押出しを行うことが好ましい。即ち、このマンドレルに溶融状態にある円筒状の線条体を押し付けながら冷却固化を行うことにより、マンドレルの外径に応じて、円筒状の線条体の内径を調整することができる。例えば、この円筒状線条体の周長を、その用途に応じた適宜のサイズに調整しておけば、形状調整等の後加工が容易となる。このように冷却固化された後の引き取り・切断は、それ自体公知の方法により行われ、これにより、シート状の網目状線条体13を得ることができる。
ところで、上記のような押出一体成形により得られた網目状の線条体13は、回転している外型1とコア型2とを用いて溶融押出を行って溶融樹脂流を合流させることにより作製されるため、上側に位置する上方線条13aと下側に位置する下方線条13bとが互いに交差する方向に延びており、その交差部が橋絡部Xとなっている。従って、このような構造の線条体13が2枚のプラスチックフィルム11に接着固定されている通流積層シート10では、上方線条13aの上面が上側のプラスチックフィルム11aの下面に接着され、下方線条13bの下面が下側のプラスチックフィルム11bの上面に接着されることとなる。従って、2枚のプラスチックフィルム11の間に流通路を遮断しないように、網目状の線条体13が設けられることとなる。しかも、この場合、上側フィルム11aとの接着部分及び下側フィルム11bとの接着部分は、それぞれ互いに交差するように線状に延びており、従って、各プラスチックフィルム11の全面にわたって均等に網目状の線条体13を強固に接着固定でき、しかも、このような線条体13が設けられている環状流路Z内の全体にわたって流体を通すことができる。
尚、ストランドの織りによって網目状の線条体13を形成する場合には、互いに交差する線条は同一平面内を延びており、両者の間に高低差はないが、その交差部分(即ち橋絡部X)は、他の部分に比して厚肉となっている。従って、この線条体13を2枚のプラスチックフィルム11の間に接着固定したとき、その接合部は、橋絡部Xの上面及び下面となり、プラスチックフィルム11の全面にわたって均等に網目状の線条体13を、流通路Aを遮断しないように固定することができる。
但し、ストランドの織りによって得られた線条体13では、プラスチックフィルム11との接合部が点在することとなるため、その接合強度の観点からは、このような線条体よりも、一体押出成形により得られる線条体13の方が好適である。
本発明において、フィルム11及び線条体13を形成するプラスチック素材としては、それ自体公知の熱可塑性樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体や、環状オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル系共重合体樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;ポリフエニレンオキサイド;ポリ乳酸などの生分解性樹脂;などを、この通流積層シートの要求特性に応じて使用することができる。勿論、これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合したブレンド物の形で使用することもできる。
また、この熱可塑性樹脂中には、種々の添加剤が配合されていてもよい
また、プラスチックフィルム11と線条体13を形成する素材とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。両者が同一の素材で形成されている場合には、接着剤を用いる必要は無く、2枚のプラスチックフィルム11の間にシート状の線条体13を挟んだ状態でのヒートシール(加熱圧着)により、両者を接合することができる。両者が異なる素材で形成されている場合には、適宜、塗布や共押出し等によって接着剤層をプラスチックフィルム11の接着側の面に形成しておき、このような状態で上記と同様にヒートシールを行うことにより、目的とする通流積層シート10を得ることができる。用いる接着剤としては、特に制限されず、フィルム11や線条体13の素材に応じて適宜のものが選択されるが、一般的には、ヒートシールにより容易に接着可能な接着剤、例えば無水マレイン等の不飽和カルボン酸で変性されたエチレン等の酸変性オレフィン系樹脂が使用される。
本発明の通流積層シート10、後述する電気透析装置の室枠の配流部に設置して使用するに当たっては、強度等の観点から、常温、特に15〜40℃の範囲の使用温度で10N/m以上の剛性(スティフネス)を持つプラスチックフィルム11を用いることが好ましく、このようなプラスチックフィルム11の素材としては、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルやポリオレフィンが好適である。また、コストや押出成形性などの観点から、線条体13の素材としては、ポリオレフィン系樹脂が好適である。
また、本発明において、プラスチックフィルム11の厚みや流路Zとなる2枚のプラスチックフィルム11の間隔d(線条体13の厚みに相当)は、特に制限されず、通流積層シート10の用途に応じて適宜の範囲であってよいが、一般的には、フィルム11の厚みは、その材質に応じて、上述した剛性が得られるように、10乃至1000μm、特に30乃至200μmの範囲が好ましい。この厚みが薄すぎると、この通流積層シート10の腰が弱くなり、特に電気透析装置に適用した場合には、液圧に対する耐性が低下し、イオン交換膜の支持機能が低くなり、例えば液圧によってイオン交換膜の連通孔内への落ち込みが生じ易くなり、液洩れを生じ易くなってしまう。さらには、容易に撓みやすくなってしまい、カッターなどによる切断が困難となり、用途に応じての形状調整が困難となる。
また、この厚みが厚すぎると、例えばヒートシールなどに際して過度の圧力や加熱が必要となり、この結果、線条体13自体が潰れてしまい、流路Zの閉塞を生じてしまうこともある
また、2枚のプラスチックフィルム11の間隔dは、一般的には、100乃至10000μm、特に30乃至2000μmの範囲にあることが好適である。即ち、この間隔d(線条体13の厚み)が小さすぎると、ヒートシールに際して、線条体13が潰れてしまい、流路Zが狭まり、流体の流れが悪くなったり、場合によっては、流路Zが閉塞して流体が流れなくなってしまうこともある。さらに、間隔dが上記範囲よりも大きいと、電気透析装置に通流積層シート10を適用するときには、この厚みが電気透析装置に使用される室枠の厚みよりもかなり厚くなってしまい、従って、イオン交換膜を室枠の間に挟んだとき、配流部と室枠との境界で段差を生じてしまい、この段差によって液洩れを生じ易くなってしまう。
本発明においては、上記のような厚みを有するプラスチックフィルム11が使用され且つ間隔dが上記の範囲に設定されている通流積層シート10は、その流体流路Zの空隙率(容積率)が10乃至90%、特に20乃至80%の範囲にあることが好適である。即ち、この容積率が小さいと、流体の流れが低下してしまい、このシート10を介しての流体の伝送効率が低下してしまうおそれがある。また、空隙率が大きすぎると、網目状の線条体13の支持体としての機能が低下してしまい、このフィルム11の剛性が低下する結果、電気透析装置に適用したときに、液圧によってイオン交換膜が連通孔の内部に落ち込んでしまい、液洩れを生じ易くなってしまう。
このような空隙率の調整は、網目状の線条体13によって形成されている開口の大きさの調整によって容易に行われる。
上記のような構造を有する本発明の通流積層シート10においては、プラスチックフィルム11の厚み、間隔d、空隙率は、上述した範囲内で、この積層シート10自体のヤング率が5GPa以上、特に6GPa以上の範囲となるように設定することが好適である。即ち、ヤング率をこのような範囲とし、剛性を付与することにより、その変形を効果的に防止し、面方向の外圧に対して優れた耐性を付与し、通流性を確保することができる。
また、本発明の通流積層シート10に類似の構造を有する積層体として、所謂プラスチック製ダンボールが知られているが、このようなプラスチック製ダンボールは、その面方向に流体を通流せしめる用途には不適当である。即ち、このダンボールは、2枚のプラスチックシートの間に波型形状のプラスチック製基材シートが設けられた構造を有するものであるため、2枚のプラスチックシートの間の空間は細かく分割されてしまっており、互いに連通しておらず、この結果、流体を流通せしめることは可能であるが、流通性能は極めて低い。さらに、2枚のプラスチックフィルムと波型のプラスチック製基材シートとの接合部分は、互いに交差せず、平行に延びているため、流体の流れが一方向に特定されてしまい、その方向を考慮して取り付けることが必要となり、取り付け作業が極めて面倒になることもある。さらには、剛性も低くなり、変形などを生じ易い。これに対して本発明の通流積層シート10においては、網目状の線条体13にプラスチックフィルム11が接着されているため、2枚のプラスチックフィルム11の間の流路Zは分割されておらず、全体にわたって連通しているため、流路全体に流体が流れ、その通流性能は極めて高く、しかも、2枚のプラスチックフィルム11と線条体13との接合部分は、互いに交差して線状に延びているため、その接合強度も極めて高く、従って、高い剛性を示す。さらに、流体の流れに指向性はなく、従って、流体の流れる方向を考慮せずに、この通流積層シート10の取り付け作業を行うことができるという利点もある。
上述した本発明の通流積層シート10は、既に述べたように、特に電気透析装置のイオン交換室の形成に用いる室枠に形成されている連通孔内に設けられて使用される。また、この通流積層シート10は、流体の入り口側と出口側とを特定する必要がある場合には、その入り口側と出口側の部分を除いて、上方のフィルム11aと下方のフィルム11bとをオーバーラップさせ、この部分をシールすることもできる。
<電気透析装置の原理>
以下、本発明の通流積層シート10を電気透析装置に適用した場合の態様について説明する。
図4を参照して、電気透析装置では、負極20と正極30との間にカチオン交換膜Cとアニオン交換膜Aとが交互に配置されており、これらのイオン交換膜の間にイオン交換室が形成されている。即ち、このイオン交換室は、脱塩室25及び濃縮室27であり、図4から理解されるように、脱塩室25は、カチオン交換膜Cと、このカチオン交換膜Cに対して正極30側に位置しているアニオン交換膜Aとからなっており、濃縮室27は、アニオン交換膜Aと、このアニオン交換膜Aに対して正極30側に位置しているカチオン交換膜Cとからなっている。従って、多数の脱塩室25と濃縮室27とが交互に配列された構造となっている。
このような構造の電気透析装置において、例えば正極30と負極20との間に電圧を印加し、脱塩室25にNaCl等の塩を含む処理液を循環して供給し且つ濃縮室27には希薄な電解液を循環しながら通電せしめると、処理液中の陽イオン(Naイオン)は、カチオン交換膜Cを通って負極20側に隣接している濃縮室27に移行する。一方、処理液中の陰イオン(Cl)は、アニオン交換膜Aを通って正極30側に隣接している濃縮室27に移行する。この場合、アニオン交換膜の特性によっても異なるが、通常、巨大アニオンの透過は阻止されるようになっている。このようにして、脱塩室25に循環して供給されている処理液中からの脱塩が行われ、濃縮室27に循環して供給されている希薄な電解液中の塩濃度は次第に上昇していき、最終的には高濃度の塩水溶液として回収されることとなる。
尚、上記のカチオン交換膜Cとして、一価選択性の高い交換膜を使用すると、例えば処理液中に含まれるCa2+等の多価陽イオンの濃縮室27側への移行は阻止され、Naイオン等の一価陽イオンのみを選択的に濃縮室27側へ移行させることができ、これにより高純度の一価の塩を回収することができる。
このようにして行われる電気透析では、当然のことながら、脱塩室25に循環して供給される処理液或いは濃縮室27に循環して供給されている希薄な電解液がイオン交換膜を通らずに隣接するイオン交換室に漏洩することを防止することが必要である。
従って、上記のような電気透析を効果的に行うための電気透析装置では、図5に示されているように、多数の室枠40が重ねて配置されており、これらの室枠40の間にはカチオン交換膜C或いはアニオンイオン交換膜Aが、図4に示されている構造となるように交互に挟持され、各室枠40内の空間が前述したイオン交換室(脱塩室25或いは濃縮室27)となっている。
また、各室枠40には、脱塩室25に供給する処理液及び脱塩室25から排出される処理液を流すための開口41,41と、濃縮室27に供給する希薄な電解液(或いは濃縮されて塩濃度が高められている電解液)及び濃縮室25から排出される電解液を流すための開口43,43が形成されている。
さらに、脱塩室25となる空間を有する室枠40には、上記の連通孔41と脱塩室25となる空間を繋ぐ配流部45が形成されている。同様に、濃縮室27となる空間を有する室枠40には、上記の連通孔43と濃縮室25となる空間を繋ぐ配流部47が形成されている。即ち、これらの連通孔41,43から配流部45,47を介して脱塩室25或いは濃縮室27に液が供給され、さらに脱塩室25或いは濃縮室27に供給された液が、配流部45或いは47を介して連通孔41或いは43に排出して戻されるような構造となっている。
上記のような室枠40の間にイオン交換膜(カチオン交換膜C或いはアニオン交換膜A)が挟持されるため、この室枠40は、隣り合うイオン交換膜同士の接触を防止するためのスペーサーとしての機能を有している。また、上記の連通孔41,43に液を流すために、室枠40の間に挟持されるイオン交換膜には、これらに対応して開口41’及び43’が形成されている。
即ち、上記のようにして処理液及び希薄な電解液を循環して流しながら通電を行うことにより、脱塩室25で脱塩が行われ、濃縮室27を流れる液の塩濃度が次第に上昇していくこととなる。
前述した本発明の通流積層シート10は、上述した室枠40の配流部45,47内に取り付けられ、連通孔41或いは連通孔43を流れる液は、このシート10の流路Zを通って脱塩室25或いは濃縮室27内に供給され、同時に脱塩室25或いは濃縮室27に供給された液が、このシート10の流路Zを通って連通孔41或いは連通孔43に戻されるわけである。
配流部を拡大して示す図6において、配流部45(47)に取り付けられるに通流積層シート10は、室枠40とほぼ同等の厚み、長さ及び幅を有しており、配流部45(47)とほぼ同等の大きさを有しており、その側面をスポット的に加熱しての熱融着により、配流部45(47)に固定されている。
また、電気透析装置の通電部分(イオン交換室)が示されている図7の側断面図を併せて参照して、イオン交換膜C,Aは、上記の配流部45(47)を覆うようにして室枠40の間に挟持されているため、配流部45(47)を覆っている部分は、通流積層シート10により支持されている。即ち、処理液及び希薄な電解液を循環しながらの通電により電気透析を行う場合、脱塩室25内の液圧と濃縮室27内の液圧とを常時同一に設定することは実質的に困難であるため、一般に、両者の間には圧力差が生じている。従って、このような差圧によって、イオン交換膜C,Aに撓みを生じ、この結果、配流部45(47)を覆っている部分が、配流部45(47)の内部に落ち込んでしまうことがある。このような落ち込みが生じると、本来、脱塩室25内へ供給する液が隣の濃縮室27内に漏洩したり、逆に濃縮室27内に導入される液が隣の脱塩室25内に漏洩してしまうことがある。さらには、配流部45から連通孔41に排出すべき脱塩室25内の液が隣の配流部47内に漏洩し或いは配流部47から連通孔43に排出すべき濃縮室27内の液が隣の配流部45内に漏洩してしまうこともある。このような漏洩が生じると、当然のことながら、電気透析による脱塩の処理効率が低下してしまう。
しかるに、本発明では、配流部45(47)に強度の高い通流積層シート10が取り付けられており、このシート10内の流路Zを通って液が流れるように構成されるため、上記のような差圧によるイオン交換膜C,Aの落ち込みを有効に防止することができる。
例えば、本発明の通流積層シート10を設けず、通常のネットを配流部45(47)内に取り付け、且つ配流部45(47)を覆うようにして柔軟な補強シートを室枠40の面に貼り付けた場合には、補強シートが柔軟であるため、差圧によるイオン交換膜C,Aの落ち込みを効果的に防止することができない。また、仮に補強シートとして高強度のものを用いたとしても、補強シートの貼り付けによって、配流部45(47)の近傍部分でイオン交換膜C,Aに段差を生じてしまい、このような段差によって、前述した液漏れが生じ易くなってしまう。しかるに、本発明では、通流積層シート10は、配流部45(47)とほぼ同じ大きさを有しており、その内部に設けられているため、イオン交換膜C,Aに段差は生ぜず、従って、このような段差による液漏れを有効に防止することができる。
また、補強シートを室枠40に貼り付ける場合では、この補強シートがイオン交換室25(27)側にはみ出ていると、はみ出ている部分がフリーの状態であるため、この補強シート自体が差圧によってイオン交換膜C,Aと共に撓んでしまい、全く補強効果を示さない。しかるに、本発明においては、通流積層シート10が配流部45(47)からはみ出ていたとしても、プラスチックフィルム11がしっかりと線条体13に接着固定されているため、差圧により、はみ出た部分が撓むことがなく、この部分においてもイオン交換膜C,Aをしっかりと保持し、その撓みを有効に防止し、液漏れを確実に防止することができる。
本発明の優れた効果を、次の実験例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例2及び実施例3は、参考例とする。
<実施例1>
(通流積層シートの作製)
65mm押出機先端に円筒ダイを装着した。この円筒ダイは、図3に示すような外型とコア型とを下端に備え、外型とコア型とが互いに逆方向に回転する構造となっているものである。上記の押出機に高密度ポリエチレンを投入し170〜210℃で加熱溶解させながら、上記円筒ダイを介しての押し出しを行い、下向きに連続したネットの円筒状物を押し出した。押し出されたネットは水槽中のマンドレル(サイジング)に導かれ、冷却固化した後、押出方向に切り開き、通流積層シートの内部に装着するネットを得た。得られたネットは、厚み850μm、単位面積あたりの遮蔽率が60%であった。
得られたネットを2枚のポリエステル(PET)フィルム(ホットメルト系接着剤をラミネートしたもので厚み50μm)で挟み込み、100〜120℃で加熱して接着させ通流積層シート(配流板)を作製した。得られた通流積層シートの空間の間隔は、840μmで、流体流路の空隙率は80%である。
(イオン交換膜の調製)
クロロメチルスチレン90重量部、ジビニルベンゼン(57%品)10重量部、過酸化ベンゾイル5重量部、アセチルクエン酸トリブチル10重量部からなる混合溶液に、厚み25μmと55μmのポリエチレン製微多孔性フィルムを浸漬して、微多孔性フィルムの空隙に混合溶液を充填した。次いで、微多孔性フィルムを混合溶液から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として微多孔性フィルムの両側を被覆した後、80℃で8時間加熱重合した。得られた膜状物をトリメチルアミン水溶液中、室温で24時間反応せしめ第4級アンモニウム型アニオン交換膜を得た。得られたアニオン交換膜の厚みは、29μmと62μmであった。
(内部漏洩試験)
株式会社アストム製の電気透析装置アシライザーAC02(濃縮室、脱塩室は、各10室で構成)を用い、配流部のネットを取り除き、取り除いたネットと同じ大きさに切り出した通流積層シートを装着した。イオン交換膜は、上記により調製したイオン交換膜を組み込んだ。次いで、電気透析装置へ水を通液し、通液の入口圧を0.05MPa、0.08MPa、0.10MPa、二調整し、各入口圧のときの脱塩室側から濃縮室側への水の移動量を測定した。結果を表1に示す。各実験終了後、イオン交換膜を取り出し観察した結果、配流部へのイオン交換膜の落ち込みにより生じるしわの発生は認められず平坦性を保持していた。
<比較例1〜2>
配流部を通流積層シートから既設のネットに取り替えた以外は、実施例と同様の方法により内部漏洩試験を実施した。測定結果を表1に示した。各実験終了後、イオン交換膜を取り出し観察した結果、配流部へのイオン交換膜の落ち込みによるしわが発生していた。
Figure 0005377230
更に比較例として、実施例1とその構成は同じであっても、ネットの上にフィルムを置いた場合には、フィルムとネットがずれを生じ易く、ずれを生じた部分からは漏れが生じやすい。また、この方法では作業効率が悪く、品質上安定した生産が困難である。
<実施例2>
(熱交換器としての利用)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム、厚さ750μmのポリエチレン製のネットを用いて、流通積層シートを作製した。作製した流通積層シートの200mm×200mmの内部に、15℃の冷却水を流し、流通積層シートの四隅表面部分の温度測定を行った結果、その測定点である4点の測定温度が1℃以内であった事から、シート内の冷却水が均一に行き渡っていることが確認できた。
<実施例3>
(スタティックミキサーとしての利用)
実施例2と同様に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム、厚さ750μmのポリエチレン製のネットを用いて、流通積層シートを作製した。作製した流通積層シートの300mm×100mmの内部に、長手方向である入口側の2方向より、異なる2液を流し、入口側とは反対側にある出口側から排出した。異なる2液には予め異なる指示薬を添加し着色ており、出口側で排出される2液の着色により均一に撹拌が行われた事を確認した。
10:通流積層シート
11:プラスチックフィルム
13:網目状の線条体
Z:流体流路
C:イオン交換膜
A:アニオン交換膜
25:脱塩室
27:濃縮室
40:室枠
41,43:連通孔
45,47:配流部

Claims (5)

  1. 互いに対面するように配置された2枚のプラスチックフィルムの間の空間が流体流路となっており、該流体流路には、網目状に形成されたプラスチック線条体が配置され、該プラスチック線条体、該流体流路を遮断しないように、前記2枚のプラスチックフィルムに接着されている通流積層シートであって、
    電気透析装置における2枚のイオン交換膜により形成されたイオン交換室への液供給部または液排出部に設けられて使用されることを特徴とする通流積層シート。
  2. 前記プラスチックフィルムの厚みが、それぞれ10乃至1000μmの範囲にあり、且つ前記流体流路を形成している2枚のプラスチックフィルムの間の空間の間隔が100乃至10000μmの範囲にある請求項1に記載の通流積層シート。
  3. 前記流体流路の空隙率が10乃至90%の範囲にある請求項1に記載の通流積層シート。
  4. 前記プラスチックフィルムがポリエステル製又はポリオレフィン製であり、該フィルムの剛性値(スティフネス)が15〜40℃において10N/m以上であり、前記網目状の線条体がポリオレフィン製である請求項1乃至3の何れかに記載の通流積層シート。
  5. 前記網目状の線条体は、押出成形により得られ、互いに交差している上方線条と下方線条とからなり、その交差部で該上方線条と下方線条とが一体に連なっていると共に、該上方線条の上面が上方に位置するプラスチックフィルムに接着され、該下方線条の下面が下方に位置するプラスチックフィルムに接着されている請求項1乃至4の何れかに記載の通流積層シート。
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