以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図5には、本発明に従う構造とされた防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、マウント本体11を有しており、このマウント本体11が第一の取付部材12と第二の取付部材14を本体ゴム弾性体16で連結した構造を備えている。そして、第一の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付られることにより、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、エンジンマウント10の弾性主軸であって、主たる振動入力方向でもある、図1中の上下方向を言う。また、図1〜図5に示されているのは、車両に装着する前の単体状態でのエンジンマウント10であって、第一の取付部材12と第二の取付部材14の間にパワーユニットの支持荷重が入力されていない状態となっている。
より詳細には、第一の取付部材12は、略円形ブロック形状を有する高剛性の部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成されている。また、第一の取付部材12の径方向中央には、上下方向に延びて上端面に開口する螺子孔18が形成されており、その内周面にねじ山が形成されている。更に、第一の取付部材12には、上方に向かって突出する突起20が一体形成されている。この突起20は、中心軸から外周側に外れた径方向中間部分に設けられた略円柱形状の突起であって、本実施形態では周上の1箇所に設けられている。
また、第一の取付部材12の上端部には、フランジ部22が一体形成されている。フランジ部22は、第一の取付部材12の全周に亘って連続的に形成されて環状となっており、第一の取付部材12の上端外周面から外周側に向かって突出している。なお、フランジ部22の上端面を含む第一の取付部材12の上端面が、軸直角方向に広がる平坦な外側端面23とされており、エンジンマウント10の中心軸方向(エンジンマウント10の弾性主軸の延出方向)における第一の取付部材12の軸方向外側の端面が外側端面23で構成されている。
一方、第二の取付部材14は、薄肉大径の略円筒形状とされており、第一の取付部材12と同様に高い剛性を有している。また、第二の取付部材14は、軸方向中間部分の段差を挟んだ上側が大径部24とされていると共に、段差を挟んだ下側が小径部26とされている。
そして、第一の取付部材12と第二の取付部材14は、同一中心軸上で第一の取付部材12が第二の取付部材14の上方に離隔するように配置されて、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状とされており、その小径側端部に第一の取付部材12が差し込まれて加硫接着されていると共に、大径側端部の外周面に第二の取付部材14が重ね合わされて加硫接着されている。なお、本実施形態において、本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12と第二の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、中央凹所28が開口している。中央凹所28は、上底側が逆向きの略すり鉢状とされて上方に向かって次第に小径となっていると共に、開口側が略一定の円形断面を有する円柱状とされている。更に、本体ゴム弾性体16における中央凹所28の開口周縁部には、薄肉大径の略円筒形状を有するシールゴム層30が一体形成されて、下方に向かって延び出しており、第二の取付部材14の小径部26の内周面を覆うように加硫接着されている。
また、第二の取付部材14の下側開口部には、可撓性膜32が取り付けられている。可撓性膜32は、薄肉の略円板形状を有するゴム膜であって、軸方向に充分な弛みを有している。更に、可撓性膜32の外周縁部には、環状の固定金具34が加硫接着されており、可撓性膜32が固定金具34を備えた一体加硫成形品として形成されている。そして、固定金具34が第二の取付部材14の小径部26の下端に差し入れられた後、第二の取付部材14に対して八方絞りなどの縮径加工が施されることにより、可撓性膜32が第二の取付部材14に取り付けられている。
このような可撓性膜32の装着状態において、第二の取付部材14の内周側には、本体ゴム弾性体16と可撓性膜32の対向面間に外部から流体密に隔てられた流体封入領域36が形成されており、非圧縮性流体が封入されている。なお、流体封入領域36に封入される非圧縮性流体としては、特に限定されるものではないが、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いはそれらの混合液等が好適に採用される。更に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を効率的に発揮させるためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
また、流体封入領域36には、仕切部材38が配設されている。仕切部材38は、略円板形状を有しており、仕切部材本体40と底金具42と可動ゴム膜44とを備えている。仕切部材本体40は、略円板形状を有する硬質の部材であって、径方向中央部分には、軸方向に貫通する円形の上側透孔46が形成されている。また、仕切部材本体40の外周縁部には、外周面に開口して周方向に1周弱の所定の長さで延びる周溝48が形成されている。
底金具42は、全体として薄肉の略円環板形状を有しており、径方向中央部分に円形の下側透孔50が形成されていると共に、径方向中間部分に設けられた段差を挟んで内周部分が外周部分よりも上方に位置している。そして、底金具42は、仕切部材本体40に対して下方から重ね合わされて固定されている。
また、仕切部材本体40と底金具42の間には、可動ゴム膜44が配設されている。可動ゴム膜44は、略円板形状を有するゴム弾性体であって、外周部分が周方向環状に延びる略円形断面の厚肉部となっている。また、可動ゴム膜44は、径方向中央部分の両面が径方向中央側に向かって次第に軸方向外側に傾斜するテーパ面となっており、可動ゴム膜44が径方向中央に向かって次第に厚肉となっている。そして、可動ゴム膜44は、仕切部材本体40と底金具42の間に挟み込まれて、径方向中央部分に配設されており、仕切部材本体40の上側透孔46と底金具42の下側透孔50を閉塞するように軸直角方向で広がって配設されている。
このような構造とされた仕切部材38は、流体封入領域36に収容されて、第二の取付部材14によって支持されている。即ち、流体封入領域36内で軸直角方向に広がるように配設された仕切部材38は、外周面が第二の取付部材14の内周面に対してシールゴム層30を介して押し当てられることによって固定的に支持されている。
そして、仕切部材38が流体封入領域36内に配設されることにより、流体封入領域36は、仕切部材38を挟んで上下に二分されている。即ち、仕切部材38を挟んだ上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に圧力変動が惹起される、受圧室52が形成されている一方、仕切部材38を挟んだ下方には、壁部の一部を可撓性膜32で構成されて、容積変化が容易に許容される、平衡室54が形成されている。なお、受圧室52と平衡室54には、それぞれ流体封入領域36に封入された非圧縮性流体が封入されている。
また、周溝48の開口部が第二の取付部材14によって覆われていると共に、周溝48の周方向両端部が受圧室52と平衡室54の各一方に連通されている。これにより、受圧室52と平衡室54を相互に連通するオリフィス通路55が、周溝48を利用して一周弱の所定長さで形成されている。なお、オリフィス通路55は、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を適当に調節することにより、チューニング周波数が調節されており、本実施形態では、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数にチューニングされている。
また、可動ゴム膜44には、その一方の面に受圧室52の圧力が及ぼされていると共に、他方の面に平衡室54の圧力が及ぼされている。そして、アイドリング振動等に相当する中乃至高周波数の振動入力時には、受圧室52と平衡室54の相対的な圧力差に基づいて、可動ゴム膜44が共振状態で積極的に微小変形するようになっている。
かくの如き構造とされたマウント本体11には、インナブラケット56が取り付けられている。インナブラケット56は、厚肉の略板形状であって、径方向一方向で外方(図1中、右方)に向かって延び出している。また、インナブラケット56の基端部分には、上下に貫通するボルト孔58が形成されている。更に、インナブラケット56の先端部分には、幅方向で互いに所定距離を隔てた3つのボルト孔59,59,59がそれぞれ上下に貫通するように設けられており、もって、パワーユニットへの取付部が構成されている。また、インナブラケット56における延出方向の基端部分には、第一の取付部材12の突起20と対応する形状で、下面に開口する凹所状とされた挿入凹所60が設けられている。更に、インナブラケット56には、幅方向一方の面に開口する図示しない係止凹溝が軸方向上下に延びるように形成されている。
そして、インナブラケット56は、延出方向の基端部分が第一の取付部材12に対して上方から重ね合わされてボルト固定されていると共に、ボルト孔59,59,59を備えたパワーユニットへの取付部が側方に延び出している。また、第一の取付部材12の突起20が挿入凹所60に挿入されることによって、インナブラケット56の第一の取付部材12に対するボルト中心軸周りでの回転が防止されて、インナブラケット56が第一の取付部材12に対して位置決めされている。本実施形態において、インナブラケット56におけるボルト孔58が形成された部分には、上面に開口する凹所が形成されており、ボルト孔58が該凹所の底壁部を貫通するように設けられている。これにより、ボルト孔58に挿通されたボルトの頭部が該凹所に収容されて、インナブラケット56上面からの突出量が抑えられている。なお、第一の取付部材12側に上方に向かって突出するボルトが設けられており、該ボルトがインナブラケット56のボルト孔58に挿通されると共に、該ボルトにナットが締結されることにより、第一の取付部材12とインナブラケット56が固定されるようになっていても良い。
一方、マウント本体11には、アウタブラケット62が取り付けられている。このアウタブラケット62は、略円筒形状の嵌着部64を有しており、嵌着部64が第二の取付部材14に外嵌されることによって、マウント本体11に固定されている。
また、嵌着部64には、当接部66が固定されている。当接部66は、周方向に所定の長さで延びる板状とされており、その周上の複数箇所には下方に延び出す固着片68が一体形成されている。そして、固着片68が嵌着部64の上端外周面に重ね合わされて溶接などの手段で固着されることにより、当接部66が嵌着部64に対して軸直角方向で広がるように固定されている。
さらに、嵌着部64には、連結部70が固定されている。連結部70は、幅方向両側に設けられたリブによって補強された略板状であって、嵌着部64の周上における当接部66と径方向で対向する部分に取り付けられて、インナブラケット56と反対側に向かって延び出している。なお、連結部70は、延出方向の基端側の端部が嵌着部64の外周面に対して溶接などの手段で固着されることにより、嵌着部64に対して固定されている。
更にまた、嵌着部64には、門形部材72が固定されている。門形部材72は、略上下方向に延びて互いに対向配置された一対の脚部74,74と、それら脚部74,74の上端を相互に繋ぐ梁部76とを一体的に備えている。また、門形部材72における開口方向(図1の左右方向)の両端部には、それら脚部74,74と梁部76の略全長に亘って当接リブ78が一体形成されており、それぞれ板状とされた脚部74,74と梁部76が当接リブ78によって補強されている。そして、門形部材72は、脚部74,74の中間部分が嵌着部64の外周面に固着されていると共に、脚部74,74を補強する当接リブ78が当接部66の周方向の両端部に固着されており、それらによって嵌着部64に固定されている。
かくの如き構造とされたアウタブラケット62は、嵌着部64が第二の取付部材14に外嵌固定されることにより、第二の取付部材14側に取り付けられている。なお、嵌着部64は、上端部が内周側に向かって屈曲しており、かかる屈曲部分が第二の取付部材14の上端面に当接することで、嵌着部64が第二の取付部材14に対して位置決めされて、アウタブラケット62がマウント本体11に対する適正な位置に装着されるようになっている。
このような構造を有するエンジンマウント10は、インナブラケット56の先端側が図示しないパワーユニットに対して取り付けられるようになっていると共に、アウタブラケット62の連結部70が図示しない車両ボデーに対して取り付けられるようになっている。なお、エンジンマウント10が車両に装着されることにより、パワーユニットの支持荷重が第一の取付部材12と第二の取付部材14の間に入力されて、第一の取付部材12と第二の取付部材14が軸方向で相対的に接近変位する。これにより、インナブラケット56と後述するストッパゴム80は、門形部材72の梁部76と当接部66との中間で、それらの何れからも離隔した位置に配される。
そして、第一の取付部材12と第二の取付部材14の間にエンジンシェイクに相当する低周波数の振動が入力されると、受圧室52と平衡室54の相対的な圧力変動によって、オリフィス通路55を通じて両室52,54間での流体流動が生ぜしめられる。これにより、流体の共振作用等の流動作用に基づいて、目的とする防振効果(高減衰効果)が発揮されるようになっている。
一方、アイドリング振動に相当する中乃至高周波数の振動入力時には、可動ゴム膜44が共振状態で積極的に微小変形することにより、目的とする防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
また、第二の取付部材14に固定されたアウタブラケット62の当接部66が、インナブラケット56に対して上下方向で所定距離を隔てて対向している。そして、それらインナブラケット56と当接部66の当接によって第一の取付部材12と第二の取付部材14の軸方向上下での相対的な接近変位量が制限されている。これにより、パワーユニットの車両ボデーに対する下方への相対変位量を制限するバウンドストッパ機構が構成されている。
また、アウタブラケット62の門形部材72は、インナブラケット56を跨ぐように配設されており、インナブラケット56が門形部材72の一方の開口を通じて側方に延び出している。そして、インナブラケット56と門形部材72の梁部76とが上下に対向しており、それらインナブラケット56と門形部材72の当接によって第一の取付部材12と第二の取付部材14の軸方向上下での離隔変位量が制限されている。これにより、パワーユニットの車両ボデーに対する上方への相対変位量を制限するリバウンドストッパ機構が構成されている。
さらに、インナブラケット56は、門形部材72の一対の脚部74,74に対して車両前後方向(図2中、左右方向)で対向しており、それらインナブラケット56と門形部材72の当接によって第一の取付部材12と第二の取付部材14の車両前後方向への相対変位量が制限されるようになっている。これにより、パワーユニットの車両ボデーに対する車両前後方向での相対変位量を制限する前後方向ストッパ機構が構成されている。
これらの各ストッパ機構で第一の取付部材12と第二の取付部材14の相対変位量が制限されていることにより、衝撃的な振動の入力時に本体ゴム弾性体16が過大に変形させられるのを防いで、耐久性の低下を防止することができる。
また、各ストッパ機構には、ストッパゴム80によって緩衝ゴムが与えられている。ストッパゴム80は、図8〜図12に示されているように、全体として略袋状とされており、図1,図2に示されているように、インナブラケット56に被せ付けられている。
より詳細には、ストッパゴム80は、インナブラケット56の基端側の端面および両側面に重ね合わされる周壁部82と、周壁部82の上側開口を覆うように設けられた上壁部84と、周壁部82の下側開口の一部を覆うように設けられた下壁部86とを、有している。
周壁部82は、それぞれが略板形状とされた3つの側壁部88a,88b,88cによって構成されており、側壁部88bと側壁部88cが側壁部88aの幅方向(図11中、上下方向)の両端部からインナブラケット56の延出方向(図11中、左方)に向かって延び出すように一体形成された構造を有している。そして、側壁部88aがインナブラケット56の基端側の端面に重ね合わされていると共に、互いに対向する側壁部88bと側壁部88cがインナブラケット56の幅方向両側面に重ね合わされている。
また、側壁部88aには幅方向の中間部分に上下に延びる凹所が設けられており、インナブラケット56に対して重ね合わされる面に開口している。また、側壁部88bには延出方向の中間部分に上下に延びる係止突起90が設けられており、側壁部88cとの対向方向の内側に向かって突出している。更に、側壁部88b,88cの側壁部88aと反対側の端面が傾斜面となっており、側壁部88b,88cの下端がインナブラケット56の延出方向で上端よりも大きく延び出している。
上壁部84は、図1,図8に示されているように、板状とされており、周壁部82と一体形成されて、周壁部82の上側開口を覆うように設けられている。そして、上壁部84は、インナブラケット56の基端部分の上面に重ね合わされて、インナブラケット56と門形部材72の梁部76との間に配設されている。なお、上壁部84には、上下に貫通する円形の挿通孔92が設けられており、ストッパゴム80の装着後に挿通孔92を通じて第一の取付部材12とインナブラケット56をボルトで締結できるようになっている。
下壁部86は、図1,図9に示されているように、上壁部84と略平行に広がる板状となっており、周壁部82と一体形成されて、下方に向かって開放された周壁部82の下側開口の一部を覆っている。また、下壁部86は、周壁部82における側壁部88b,88cの延出方向の先端部分(図1中、右端部分)に一体形成されており、第一の取付部材12とインナブラケット56の重ね合わせ部分を側壁部88aと反対側に外れた位置において側壁部88bと側壁部88cを繋ぐように一体形成されている。これにより、周壁部82の下端と下壁部86とで囲まれた領域が、下方に向かって開口する開口窓94とされている。
そして、ストッパゴム80は、インナブラケット56に対して基端側から先端側に向かって外挿されて、非接着で被せ付けられる。更に、ストッパゴム80の側壁部88bに設けられた係止突起90が、インナブラケット56の側面に設けられた図示しない係止凹溝に挿し入れられることにより、ストッパゴム80がインナブラケット56に対して位置決めされている。なお、ストッパゴム80の装着方向とは、インナブラケット56の先端側となる図1中の右方をいう。
かかるストッパゴム80のインナブラケット56への装着後、インナブラケット56が第一の取付部材12に対して開口窓94を通じて重ね合わされてボルト固定される。これにより、ストッパゴム80の上壁部84がインナブラケット56と門形部材72の梁部76との間に、下壁部86がインナブラケット56と当接部66との間に、側壁部88b,88cがインナブラケット56と門形部材72の脚部74,74との間に、それぞれ配設される。
また、ストッパゴム80の下壁部86は、インナブラケット56の第一の取付部材12への重ね合わせ部分よりも先端側において下面に重ね合わされており、側壁部88a側に位置する端面が、第一の取付部材12の外周面と対向して、インナブラケット56の延出方向で所定の距離を隔てて配置されている。
ここにおいて、第一の取付部材12には、図13に示されているように、環状突部96が一体形成されている。環状突部96は、第一の取付部材12におけるフランジ部22の外周面から径方向外側に向かって突出しており、全周に亘って連続的に形成されて環状となっている。また、環状突部96は、フランジ部22の下端側に設けられていると共に、フランジ部22よりも軸方向での厚さ寸法が小さくされており、第一の取付部材12の外側端面23(上端面)から下方に所定の距離を控えて突出形成されている。これにより、環状突部96とフランジ部22の境界部分には、周方向に延びる段差98が設けられている。
また、環状突部96は、図7に示されているように、周上に二組の二面幅を有する外形形状を有している。即ち、インナブラケット56が延び出す径方向(門形部材72の開口方向である図7中の左右方向)の両側と、それに直交する径方向(門形部材72の幅方向である図7中の上下方向)の両側とにおいて、環状突部96の外周面がそれぞれ対向する二組の平面とされている。
この環状突部96は、外周面において平面で構成された部分の1つが、ストッパゴム80の下壁部86の一面で構成された開口窓94の内周面(図1中の左端面)に対して、径方向で所定の距離を隔てて対向している。そして、ストッパゴム80は、インナブラケット56に対して基端側(図1中、左側)に変位する際に、環状突部96に当接することで位置ずれが防止されるようになっており、ストッパゴム80の抜止機構が構成されている。なお、環状突部96と軸直角方向で対向する開口窓94の内周面が平面とされており、抜止機構を構成する環状突部96とストッパゴム80の対向面が、周方向の所定範囲に亘って面で当接する対応形状とされている。
このことからも明らかなように、本実施形態では、環状突部96の周上の一部によって位置決め突部が構成されており、その位置決め突部がインナブラケット56の先端側に向かって突出して、ストッパゴム80に対して軸直角方向で対向している。
また、エンジンマウント10では、抜止機構を構成する環状突部96とストッパゴム80の下壁部86との離隔距離:dを充分に小さく設定することが可能となっている。即ち、フランジ部22と下壁部86との離隔距離:Dが、環状突部96と下壁部86との離隔距離:dよりも充分に大きくなっており、離隔距離:dが小さい場合にも、下壁部86の上端に形成されるばりが第一の取付部材12とインナブラケット56の重ね合わせ面間(第一の取付部材12の外側端面23とインナブラケット56の基端部下面との間)に噛み込まれるのを回避することができる。それ故、ばりの噛込みによる締結力の低下が防止されて、第一の取付部材12とインナブラケット56がボルトによって緩みなく固定される。更に、環状突部96への当接によるストッパゴム80の位置ずれが可及的速やかに防止されて、ストッパゴム80の部分的な磨耗等による耐久性の低下が防止されると共に、各ストッパ機構における緩衝性が維持されて乗り心地の悪化を防ぐことができる。
また、ストッパゴム80の下壁部86と環状突部96との各対向面が、互いに対応する形状とされて、面当たりするようになっている。それ故、ストッパゴム80と環状突部96の当接面積が大きく確保されて、ストッパゴム80において部分的な磨耗や応力集中に起因する損傷が回避されることにより、耐久性の向上が図られる。
また、環状突部96は、フランジ部22の先端から外周側に向かって突出するように一体形成されており、第一の取付部材12の一部として形成されている。それ故、第一の取付部材12とインナブラケット56の重ね合わせ面とストッパゴム80の下壁部86とが、特別な部材を用いることなく少ない部品点数で所定の距離を隔てて位置決めされる。
また、ストッパゴム80の周壁部82は、インナブラケット56への装着状態において、その下端が第一の取付部材12までは至らないようになっている。それ故、周壁部82の下端にばりが形成されたとしても、そのばりが第一の取付部材12とインナブラケット56の間に挟み込まれるのを回避することができて、第一の取付部材12とインナブラケット56が強固に固定される。
また、係止突起90が係止凹溝に挿入されることから、抜止機構との協働によって、ストッパゴム80のインナブラケット56に対する位置ずれが、より効果的に防止される。特に、係止突起90と係止凹溝との係合作用と、ストッパゴム80と第一の取付部材12の当接による直接的な変位規制とを、併用することにより、係止突起90と係止凹溝との係合だけでは難しかったストッパゴム80の位置決めを、有利に実現することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、第一の取付部材12の位置決め突部は、ストッパゴム80の下壁部86に対して、振動が入力されていない初期状態において当接していても良い。更にいえば、ストッパゴム80の下壁部86が位置決め突部に予め押し当てられて圧縮変形していても良い。
また、前記実施形態のように位置決め突部が環状突部96の一部で構成されている場合には、マウント本体11およびアウタブラケット62が周方向での向きを特定されない構造であれば、インナブラケット56のマウント本体に対する相対的な周方向での向きを任意に或いは複数のうちの1つに設定することができる。それ故、インナブラケット56の取付作業においてインナブラケット56の位置決めが不要或いは簡単になって、製造が容易になる。
しかしながら、位置決め突部は、必ずしも環状突部96の一部として形成されていなくても良く、例えば、位置決め突部が、第一の取付部材12の周上においてストッパゴム80の下壁部86と対向する一部にだけ形成されていても良い。これによれば、余分な突部を減らすことができて、軽量化や歩留りの向上が実現され得る。
また、位置決め突部と開口窓94の内周面との対向面は、平面に限定されるものではなく、例えば、互いに面当たりする対応形状の湾曲面であっても良い。また、それらの対向面は、必ずしも面当たりするものに限定されず、例えば、位置決め突部の先端面が湾曲面となっていると共に、開口窓94の内周面が平面となっていても良い。
また、抜止機構を構成する位置決め突部とストッパゴム80の対向面は、必ずしも周上の一部でのみ当接するようになっていなくても良く、周上の複数箇所で部分的に当接するようになっていても良い。なお、複数箇所で当接する場合には、各当接箇所が、それぞれ周方向に所定の長さをもって面当たりするようになっていることが望ましい。
また、フランジ部22は必須ではなく、例えば、環状突部96が、第一の取付部材12の外周面における上端から下方に所定距離を控えた位置において、直接突出するように設けられていても良い。
また、位置決め突部は、第一の取付部材12と一体形成されたものに限定されず、例えば、第一の取付部材12とは別部材とされて、第一の取付部材12の外周面に固定されていても良い。
また、マウント本体11としては、前記実施形態に示された流体封入式の他、流体封入領域36をもたず、本体ゴム弾性体16の変形により発揮される防振効果を利用するソリッドタイプのマウント本体も、採用可能である。更に、マウント本体11として、受圧室52に対して外部から加振力を能動的に及ぼして、入力振動を相殺乃至は低減する能動型の流体封入式防振装置を採用することもできる。
また、本発明の適用範囲は、自動車用に限定されるものではなく、例えば、自動二輪車や産業用車両,鉄道用車両等にも好適に採用される。更に、本発明は、エンジンマウント以外に、ボデーマウントやサブフレームマウント,デフマウント等にも適用され得る。