図1は本発明に係るアイドルストップ車の構成の一例を示す。エンジン1の出力軸1aは、無段変速機2を介してドライブシャフト(出力軸)32に接続されている。無段変速機2には、トルクコンバータ3、変速装置4、油圧制御装置7及びエンジン1により駆動されるオイルポンプ6などが設けられている。なお、エンジン1にはエンジン始動用のスタータ(セルモータ)1bが設けられている。
無段変速機2は、トルクコンバータ3のタービン軸5の回転を正逆切り替えてプライマリ軸10に伝達する前後進切替装置8、プライマリプーリ11、セカンダリプーリ21及び両プーリ間に巻き掛けられたVベルト15を有する変速装置4、セカンダリ軸20の動力をドライブシャフト32に伝達するデファレンシャル装置30などで構成されている。タービン軸5とプライマリ軸10とは同一軸線上に配置され、セカンダリ軸20とドライブシャフト32とがタービン軸5に対して平行でかつ非同軸に配置されている。したがって、この無段変速機2は全体として3軸構成とされている。ここで用いられるVベルト15は、例えば無端状張力帯とこの張力帯に摺動自在に支持された多数のブロックとで構成された公知の圧縮駆動タイプの金属ベルトである。
前後進切替装置8は、遊星歯車機構80と逆転ブレーキ(B1)85と直結クラッチ(C1)86とで構成され、逆転ブレーキ85又は直結クラッチ86が本発明における発進クラッチに相当する。逆転ブレーキ85と直結クラッチ86は、それぞれ湿式多板式のブレーキ及びクラッチである。遊星歯車機構80のサンギヤ81が入力部材であるタービン軸5に連結され、リングギヤ82が出力部材であるプライマリ軸10に連結されている。遊星歯車機構80はシングルピニオン方式であり、逆転ブレーキ85はピニオンギヤ83を支えるキャリア84とトランスミッションケースとの間に設けられ、直結クラッチ86はキャリア84とサンギヤ81との間に設けられている。直結クラッチ86を解放して逆転ブレーキ85を締結すると、タービン軸5の回転が逆転され、かつ減速されてプライマリ軸10へ伝えられる。そして、セカンダリ軸20を経てドライブシャフト32がエンジン回転方向と同方向に回転するため、前進走行状態となる。逆に、逆転ブレーキ85を解放して直結クラッチ86を締結すると、キャリア84とサンギヤ81とが一体に回転するので、タービン軸5とプライマリ軸10とが直結される。そして、セカンダリ軸20を経てドライブシャフト32がエンジン回転方向と逆方向に回転するため、後進走行状態となる。
変速装置4のプライマリプーリ11は、プライマリ軸10上に一体に固定された固定シーブ11aと、プライマリ軸10上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ11bとを備えている。可動シーブ11bの背後には、プライマリ軸10に固定されたシリンダ12が設けられ、可動シーブ11bとシリンダ12との間に油室13が形成されている。この油室13への供給油量を制御することにより、変速制御が実施される。
セカンダリプーリ21は、セカンダリ軸20上に一体に固定された固定シーブ21aと、セカンダリ軸20上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ21bとを備えている。可動シーブ21bの背後には、セカンダリ軸20に固定されたピストン22が設けられ、可動シーブ21bとピストン22との間に油室23が形成されている。この油室23への供給油圧を制御することにより、トルク伝達に必要なベルト挟圧力が与えられる。なお、油室23には初期挟圧力を与えるバイアススプリングを配置してもよい。セカンダリプーリ21の油室23の近傍の供給油路中には、後述するように油室23の供給油圧を検出する油圧センサ108が設けられている。
セカンダリ軸20の一方の端部はエンジン側に向かって延び、この端部に出力ギヤ27が固定されている。出力ギヤ27はデファレンシャル装置30のリングギヤ31に噛み合っており、デファレンシャル装置30から左右に延びるドライブシャフト32に動力が伝達され、車輪が駆動される。
エンジン1及び無段変速機2は電子制御装置100によって制御される。電子制御装置100には、エンジン回転数センサ101、車速(又はセカンダリプーリ回転数)センサ102、スロットル開度(又はアクセル開度)センサ103、シフトポジションセンサ104、プライマリプーリ回転数(又はタービン回転数)センサ105、ブレーキ信号センサ106、CVTの作動油温センサ107、及びセカンダリプーリ21への供給油圧を検出する油圧センサ108、バッテリ電圧を検出するためのバッテリ109から信号が入力されている。入力信号としては、そのほかに、路面傾斜角、アイドル信号、スタート信号、エンジン水温、吸入空気量、エアコン信号、イグニッション信号などを入力してもよい。なお、図1では説明を簡単にするため、単一の電子制御装置100によってエンジン1と無段変速機2の両方を制御する例を示したが、実際には個別の電子制御装置によって制御され、両電子制御装置は通信用バスによって相互に連携している。
電子制御装置100は、エンジン停止条件が成立したときにエンジン1を停止(アイドルストップ)させ、エンジン始動条件が成立したときにスタータ1bを駆動してエンジン1を始動させるアイドルストップ制御を実施する。エンジン停止条件としては、例えば車両停止かつブレーキON(ブレーキペダルの踏み込み)などがある。但し、エンジン水温が低いときや、バッテリ電圧の消耗時、電気負荷が大きいとき、アクセルペダルが踏まれているとき等には、アイドルストップを許可しない。一方、エンジン始動条件(アイドルストップ復帰条件)としては、例えばブレーキOFF、アクセルペダル踏み込み、車速信号の入力などがある。エンジン停止条件及び始動条件は公知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
電子制御装置100は、油圧制御装置7に内蔵されたソレノイド弁を制御している。油圧制御装置7は、オイルポンプ6、プライマリプーリ11の油室13、セカンダリプーリ21の油室23、逆転ブレーキ85、直結クラッチ86とそれぞれ接続されている。電子制御装置100は、車速とスロットル開度とに応じて予め設定された変速マップに従って目標プライマリ回転数を決定し、油圧制御装置7内のソレノイド弁を制御することによって、無段変速機2のプライマリプーリ11及びセカンダリプーリ21の油室13,23の油量/油圧を調整し、プライマリ回転数を目標値へと制御すると共に、セカンダリプーリ21のベルト挟圧力をベルト滑りを発生させない値へと制御している。また、油圧制御装置7は逆転ブレーキ85及び直結クラッチ86への供給油圧を制御する機能も有しており、この制御には後述するアイドルストップ状態からの逆転ブレーキ(発進クラッチ)85の係合制御も含まれる。
図2は油圧制御装置7の一例の油圧回路図である。図2において、71はレギュレータ弁、72はクラッチモジュレータ弁、73はソレノイドモジュレータ弁、74はガレージシフト弁、75はマニュアル弁、76はアップシフト用レシオ制御弁、77はダウンシフト用レシオ制御弁、78はレシオチェック弁、79は挟圧コントロール弁である。また、SLSはライン圧の調圧制御、逆転ブレーキ85(B1)及び直結クラッチ86(C1)の過渡制御、及びセカンダリプーリ21の油室23の調圧制御を行うため、ソレノイド圧Psls を出力する調圧用ソレノイド弁、DS1はアップシフト用信号圧Pds1 を調圧制御するアップシフト用ソレノイド弁、DS2はダウンシフト用信号圧Pds2 を調圧制御するダウンシフト用ソレノイド弁である。ソレノイド弁DS1,DS2は、ガレージシフト弁74を過渡圧側に切り替えるための信号圧を発生するソレノイド弁としての機能も有する。本実施形態では、ソレノイド弁SLSは常開型のリニアソレノイド弁、ソレノイド弁DS1,DS2は共に常閉型のデューティソレノイド弁を使用している。
図2では、プライマリプーリ11、セカンダリプーリ21、逆転ブレーキB1及び直結クラッチC1に関する油圧回路だけを示してあるが、トルクコンバータ3に内蔵されたロックアップクラッチ3aの油圧回路等については、本発明と直接関係がないので省略する。なお、油圧制御装置7の油圧源は、エンジン1によって駆動されるオイルポンプ6のみであり、電動ポンプなどの格別のオイルポンプは備えていない。
レギュレータ弁71は、オイルポンプ6の吐出圧を所定のライン圧PL に調圧する弁であり、信号ポート71aに入力されるソレノイド圧Psls に応じてライン圧PL を調圧している。
クラッチモジュレータ弁72は、直結クラッチC1および逆転ブレーキB1への供給圧(PC1,PB1)の元圧となるクラッチモジュレータ圧Pcmを出力する弁である。入力ポート72aにはライン圧PL が入力され、出力ポート72bからクラッチモジュレータ圧Pcmが出力される。また、第1信号ポート72cには出力圧がスプリング荷重と対向するようにフィードバックされている。そのため、クラッチモジュレータ圧Pcmは、スプリング荷重に相当する一定圧に調圧される。
ソレノイドモジュレータ弁73は、クラッチモジュレータ圧Pcmを調圧して、スプリング荷重に相当する一定のソレノイドモジュレータ圧Psmを発生する弁である。このソレノイドモジュレータ圧Psmは、アップシフト用ソレノイド弁DS1及びダウンシフト用ソレノイド弁DS2の元圧となると共に、ガレージシフト弁74及び挟圧コントロール弁79にも供給されている。
マニュアル弁75はシフトレバーと機械的に連結された手動操作弁であり、P、R、N、D、S、Bの各レンジに切り換えられ、ガレージシフト弁74から供給される油圧を直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1に選択的に導くものである。入力ポート75aにはガレージシフト弁74から油圧が供給され、出力ポート75bは直結クラッチC1と接続され、出力ポート75c,75dは共に逆転ブレーキB1に接続されている。マニュアル弁75は、Rレンジでは直結クラッチC1に油圧を供給するとともに逆転ブレーキB1の油圧をドレーンし、D、S、Bレンジでは逆転ブレーキB1に油圧を供給するとともに直結クラッチC1の油圧をドレーンし、非走行レンジであるP、Nレンジでは直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1の油圧を共にドレーンする。
アップシフト用レシオ制御弁76及びダウンシフト用レシオ制御弁77は、アップシフト用信号圧Pds1 とダウンシフト用信号圧Pds2 との相対関係によってプライマリプーリ11の油室12に給排される作動油量を調整する弁である。また、レシオチェック弁78は、閉じ込み制御のために、プライマリプーリ11の油室12を流量制御から油圧制御に切り替えて、プライマリプーリ11の油室12の油圧とセカンダリプーリ21の油室23の油圧との比率を予め設定された関係に保持し、変速比を保持するための弁である。アップシフト用レシオ制御弁76及びダウンシフト用レシオ制御弁77については、例えば特開2007−263207号公報等によって公知であるため、説明を省略する。
挟圧コントロール弁79は、セカンダリプーリ21の作動油室23の油圧を制御するための弁であり、スプリングによって一方向に付勢されたスプールを備えている。スプリング荷重と対向する一端側の信号ポート79aにソレノイドモジュレータ弁73から一定圧Psmが供給されている。入力ポート79bにはライン圧PL が供給されており、出力ポート79cはセカンダリプーリ21の作動油室23と接続され、出力圧はポート79dにフィードバックされている。スプリングが収容された他端側の信号ポート79eにはソレノイド圧Psls が供給される。そのため、信号ポート79eに入力されたソレノイド圧Psls を所定の増幅度で増幅した油圧をセカンダリプーリ21の作動油室23に供給することができる。作動油室23の供給油圧(セカンダリ圧)は油圧センサ108によって検出され、検出された油圧に基づいてベルト伝達トルクを求めることができる。
ガレージシフト弁74は、シフトレバーをNからD又はNからRへ切り替えた時(ガレージシフト時)に、直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1への供給圧を過渡制御できるように油路を切り替えるための切替弁である。図3にガレージシフト弁74の詳細な構造を示し、中心線より左側が過渡状態、右側が保持状態である。バルブボデー74a内にスプール74bが軸方向移動自在に挿入されており、このスプール74bを一方向に付勢するスプリング74cが一端部に設けられている。バルブボデー74aの一端側には、スプリング荷重と同方向にアップシフト用信号圧Pds1 とダウンシフト用信号圧Pds2 とが入力される信号ポート74d,74eが設けられている。バルブボデー74aの他端側には、スプリング荷重と対向方向にソレノイドモジュレータ圧Psmが入力されるカウンタポート74fが設けられている。カウンタポート74fにおけるスプール74bの受圧面積は、信号圧Pds1 ,Pds2 が入力される信号ポート74d,74eにおけるスプール74bの受圧面積の和と等しく設定されている。バルブボデー74aの中間部には、クラッチモジュレータ圧(保持圧)Pcmが入力される入力ポート74gと、ソレノイド圧(過渡圧)Psls が入力される入力ポート74hと、マニュアル弁75の入力ポート75aに接続された出力ポート74iとが設けられている。出力ポート74iから出力された油圧がマニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。
ここで、ガレージシフト弁74の作動について説明する。まず、シフトレバーをN→D又はN→Rへ切り替えた時(ガレージシフト時)における作動を説明する。N時には、ソレノイドモジュレータ圧Psmがカウンタポート74fに供給され、ソレノイド弁DS1,DS2の少なくとも一方がOFFするので、信号圧Pds1 ,Pds2 の少なくとも一方がドレーンされる。そのため、ソレノイドモジュレータ圧Psmによってガレージシフト弁74はスプリング荷重に打ち勝って保持位置に位置している。保持位置では、クラッチモジュレータ圧Pcmがマニュアル弁75へ供給されるが、マニュアル弁75が直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1への油路を遮断している。N→D又はN→Rへ切り替えると、ソレノイド弁DS1,DS2が共にONされるので、ポート74d,74eに供給された信号圧Pds1 ,Pds2 と、カウンタポート74fに供給されたソレノイドモジュレータ圧Psmとが釣り合うが、スプリング荷重が信号圧Pds1 ,Pds2 と同方向に作用するので、スプール74bは図3の中心線より左側の過渡位置に切り替わる。そのため、ソレノイド弁SLSによって緩やかに立ち上がるソレノイド圧Psls がポート74h,74i及びマニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給され、直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の係合ショックを回避しつつ係合を開始することができる。
ソレノイド弁SLSによって制御されたソレノイド圧Psls が必要油圧まで立ち上がる(直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の係合完了状態)と、ソレノイド弁DS1,DS2により信号圧Pds1 ,Pds2 の少なくとも一方をドレーンさせるので、カウンタポート74fに供給されるソレノイドモジュレータ圧Psmの働きにより、ガレージシフト弁74は図3の中心線より右側の保持位置に切り替わる。これにより、ソレノイド圧Psls に代わってクラッチモジュレータ圧Pcmがポート74g,74i及びマニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。そのため、ソレノイド弁SLSの作動如何にかかわらず直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の締結状態を保持できる。
アイドルストップ復帰後のエンジン始動時には、オイルポンプ6の吐出圧が低いので、ソレノイドモジュレータ圧Psmがカウンタポート74fに低圧状態のまま供給される一方、ソレノイド弁DS1,DS2からの信号圧Pds1 ,Pds2 も低圧状態のままポート74d,74eに供給される。ここで、ソレノイド弁DS1,DS2は共にON(全開)状態である。この状態では、スプリング74cの付勢力によりガレージシフト弁74は図3の中心線より左側の過渡位置に保持されている。その後、ソレノイドモジュレータ圧Psmが正規圧まで上昇した場合には、同時に信号圧Pds1 ,Pds2 も正規圧状態となるため、ガレージシフト弁74は正規圧状態でも左側の過渡位置に保持される。そして、ソレノイド弁SLSによって制御されたソレノイド圧Psls がマニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1に供給されるので、直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の伝達トルク容量をソレノイド弁SLSに入力される指示電流によって微細制御できる。
ソレノイド圧Psls が必要油圧まで立ち上がった後は、前述のN→D又はN→R時と同様に、ガレージシフト弁74は保持位置に切り替わり、クラッチモジュレータ圧Pcmがマニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。
このように、本実施形態のガレージシフト弁74は、アイドルストップ復帰直後のようにソレノイドモジュレータ圧Psmが低圧状態のまま供給される場合は、ソレノイド弁DS1,DS2からの信号圧Pds1 ,Pds2 も低圧状態となるので、過渡位置に保持され、さらにソレノイドモジュレータ圧Psmが正規圧まで上昇した場合には、同時に信号圧Pds1 ,Pds2 も正規圧状態となるので、この正規圧状態でもガレージシフト弁74は過渡位置に保持される。したがって、ソレノイド弁SLSによって制御されたソレノイド圧Psls が逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1に供給され、このソレノイド圧Psls によって遊星歯車機構80を介してプライマリ軸10に出力されるトルクがベルト伝達トルク容量を上回らないように逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1の伝達トルク容量を制御することにより、ベルト滑りを防止できる。
図4にソレノイド圧Psls に対する、ライン圧PL 、クラッチモジュレータ圧Pcm、クラッチ制御圧、及びセカンダリ圧の各特性を示す。ライン圧PL はソレノイド圧Psls にほぼ比例した油圧に調圧される。クラッチモジュレータ圧Pcmは、ソレノイド圧Psls が所定値に達するまではライン圧PL と同圧であり、所定値を超えると一定圧に制限される。また、逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1には過渡状態においてソレノイド圧Psls が直接供給されるので、クラッチ制御圧はソレノイド圧Psls そのものとなる。セカンダリ圧はソレノイド圧Psls に比例し、油圧ライン圧PL より僅かに低い油圧に調圧される。図4に示したように、クラッチ制御圧とセカンダリ圧は共にソレノイド圧Psls によって制御されるが、常にセカンダリ圧がクラッチ制御圧を上回るように設定されている。セカンダリ圧は、油圧センサ108によって検出される。
図5は、ソレノイド弁DS1,DS2の構造の一例を示す。両ソレノイド弁DS1,DS2は同じ構造であるため、一方のソレノイド弁DS1についてのみ説明する。図5の上半分が通電(ON)時、下半分は非通電(OFF)時である。ボデー90内にコイル91が固定され、コイル91の中心部にヨーク(固定磁極)92が固定されている。コイル91の内周には円筒状のガイド93が固定され、ガイド93の中をプランジャ(可動磁極)94がスライド自在に挿通されている。プランジャ94はスプリング95によってヨーク92から離れる方向に付勢されている。プランジャ94にはピン96が固定されており、このピン96の先端部がボール97に当接している。ボール97は流入口98を開閉自在であり、プランジャ94を付勢するスプリング95によって常時は流入口98を閉じている。コイル91に通電すると、プランジャ94がヨーク92に吸着されてピン96が一体に後退し、ボール97は流入口98を開く。そのため、流入口98から流入したオイルが直交方向に形成された流出口99から排出される。ソレノイド弁DS1をデューティ制御した場合には、流入口98から供給される一定油圧(ソレノイドモジュレータ圧Psm)をデューティ比に応じて制御し、流出口99からデューティ比に比例した出力油圧を出力することができる。
非通電(OFF)時には、プランジャ94とヨーク92との間に所定の磁気ギャップδが設けられており、プランジャ94の吸引力は、図6に示すように、磁気ギャップδの2乗に反比例する。なお、図6は電流が一定である場合であり、吸引力は電流の2乗に比例する。プランジャ94をヨーク92に吸着させるOFF→ON時においては、磁気ギャップが最大であるから、最大電流を必要とする。一方、プランジャ94をヨーク92に吸着状態(ON状態)で保持するには、磁気ギャップが小さいので、小さな電流で足りる。
ガレージシフト弁74の作動説明の中で述べたように、アイドルストップ復帰後のエンジン始動時に、ソレノイド弁DS1,DS2を共にON(全開)状態とする必要があるが、ソレノイド弁DS1,DS2はOFF→ON時において最大電流を必要とし、しかもエンジン始動時にはスタータ駆動に伴ってバッテリ電圧が一時的に低下するため、バッテリの消耗時にはソレノイド弁DS1,DS2が全開状態になるのが遅れ、ガレージシフト弁74を過渡位置に保持できない可能性がある。本発明では、最大電流を必要とするソレノイド弁DS1,DS2のONを電力消費の少ないアイドルストップ開始時に行い、スタータ駆動までON状態を継続することにより、アイドルストップ復帰時にバッテリ電圧が一時的に低下しても、ソレノイド弁DS1,DS2が信号圧Pds1,Pds2 を速やかに発生させ、ガレージシフト弁74を過渡位置に保持できるようにしている。そのため、アイドルストップ復帰時に発進クラッチB1に高い保持圧(クラッチモジュレータ圧Pcm)が作用することがなく、ベルト滑りを防止することができる。
ここで、本発明におけるアイドルストップ開始時及びアイドルストップ復帰時における、スタータ、エンジン回転数、ソレノイド弁DS1,DS2、バッテリ電圧、セカンダリプーリ21及び発進クラッチB1の油圧の時間変化について、図7を参照しながら説明する。
例えばDレンジにおいて、時刻t1でエンジン停止条件が成立(アイドルストップ判定)すると、エンジンは停止し、クラッチ圧及びセカンダリ圧が共にドレーンされる。アイドルストップ判定と共に、ソレノイド弁DS1,DS2はONされ、アイドルストップ期間中、ON状態を維持する。但し、エンジンが停止すると、オイルポンプも停止するので、全ての油圧はドレーンされ、ガレージシフト弁74はスプリング74cのばね力により過渡位置に切り替わる。
時刻t2でエンジン始動条件が成立(アイドルストップ復帰判定)すると、スタータ1bによってエンジンが始動される。この時、スタータを駆動するために大電流を必要とするので、バッテリ電圧が一時的に低下するが、ソレノイド弁DS1,DS2はアイドルストップ期間中もON状態を維持しているので、一時的なバッテリ電圧の低下によってOFF状態に切り替わることがない。エンジン回転数の上昇に伴ってセカンダリ圧及びクラッチ圧は上昇するが、セカンダリ圧を調圧する挟圧コントロール弁79は、エンジン始動時にはスプリングによって解放位置にある。また、既述のようにアイドルストップ期間中ソレノイド弁DS1,DS2がON状態で保持され、ガレージシフト弁74はアイドルストップ復帰時の低圧状態において過渡位置にあるので、発進クラッチB1には必ず過渡圧(ソレノイド圧Psls )が供給される。そのため、遊星歯車機構80を介してプライマリ軸10に出力される発進クラッチのクラッチ伝達トルクが無段変速装置のベルト伝達トルクを上回ることがなく、ベルト滑りの発生を回避できる。クラッチ圧が必要油圧まで上昇した後、ソレノイド弁DS1,DS2の少なくとも一方がOFFされるので、ガレージシフト弁74が保持位置へ切り替わり、発進クラッチB1には保持圧(クラッチモジュレータ圧Pcm)が供給され、締結状態で保持される。
図8は本発明に係るソレノイド弁DS1,DS2の制御方法の一例を示す。制御がスタートすると、クラッチ制御中であるかどうかを判定し(ステップS1)、クラッチ制御中であればソレノイドをONさせる(ステップS2)。ステップS1の判定は、図7におけるB条件に相当する。B条件は、公知のガレージシフト時の判定条件と同様で、クラッチ制御中の間成立する。クラッチ制御中でないときには、次にアイドルストップ要求があったかどうかを判定する(ステップS3)。アイドルストップ要求がない時には、ソレノイドをOFF(ステップS4)してリターンする。アイドルストップ要求があった時には、次にアイドルストップ復帰したかどうかを判定する(ステップS5)。アイドルストップ復帰していない時には、アイドルストップ中であることを意味するので、ソレノイドを継続してONさせる(ステップS2)。アイドルストップ復帰した時には、次にアイドルストップ復帰からの経過時間が一定時間を経過したかどうかを判定する(ステップS6)。一定時間とは、アイドルストップ復帰後のスタータ指令から実作動するまでの時間を基にして決定される。一定時間経過未満であれば、スタータが実作動していないと判断してソレノイドを継続してONさせ(ステップS2)、一定時間経過後であれば、次にソレノイド電圧が一定値より低いかどうかを判定する(ステップS7)。この一定値とはスタータ駆動開始時のバッテリ電圧の降下中の値であり、例えば8V程度である。ソレノイド電圧が一定値より低い場合には、ソレノイドを継続してONさせ(ステップS2)、ソレノイド電圧が一定値より高い場合には、ソレノイドをOFFさせる(ステップS4)。上述のステップS3、S5〜S7の判定は図7におけるA条件に相当し、少なくともアイドルストップ開始からバッテリ電圧の始動時降下(アイドルストップ復帰後の一定時間後)まで継続して成立する。A条件とB条件のいずれか一方でも満足すればソレノイドが作動される。
前記実施例では、ガレージシフト弁(切替弁)を過渡圧側に切り替えるための信号圧を発生するソレノイド弁として、2個のデューティソレノイド弁DS1,DS2を使用したが、単一のソレノイド弁を使用してもよく、ソレノイド弁はデューティソレノイド弁に限らず、ON/OFFソレノイド弁でもよい。また、ソレノイド弁として常閉型のソレノイド弁を使用しているが、常開型のソレノイド弁を使用してもよい。
図9は、1個の常開型ソレノイド弁を使用した場合のガレージシフト弁の第2実施例を示す。ガレージシフト弁110の中心線より左側が過渡状態、右側が保持状態である。バルブボデー111内にスプール112が軸方向移動自在に挿入されており、バルブボデー111の一端部にはスプール112を一方向に付勢するスプリング113が配置されている。バルブボデー111の他端部には、スプリング荷重と対向方向に信号圧Pdsが入力される信号ポート114が設けられている。ソレノイド弁120は常開型(N/O)ソレノイド弁であり、ソレノイドモジュレータ圧Psmを電気信号に応じて調圧して信号圧Pdsを発生している。バルブボデー111の中間部には、クラッチモジュレータ圧(保持圧)Pcmが入力される入力ポート115と、マニュアル弁75の入力ポート75aに接続された出力ポート116と、ソレノイド圧(過渡圧)Psls が入力される入力ポート117とが一端側から他端側にかけて順次設けられている。出力ポート116から出力された油圧がマニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。
この実施例のガレージシフト弁110では、電気的フェイル時を考慮して、ソレノイド弁120のOFF時にマニュアル弁75へ保持圧(クラッチモジュレータ圧)を供給できるように設定している。第1実施例(図3参照)と比べて信号圧ポート114とスプリング荷重との関係が逆転しており、クラッチモジュレータ圧(保持圧)Pcmが入力される入力ポート115とソレノイド圧(過渡圧)Psls が入力される入力ポート117との位置が逆転している。ソレノイド弁120をON(信号圧PdsがOFF)とすることで、スプリング荷重によってガレージシフト弁110が過渡側になり、ソレノイド圧Psls がマニュアル弁75へ供給される。
前記実施例では、切替弁を切り替えるための信号圧を発生するソレノイド弁への通電をアイドルストップ開始から継続するよう制御したが、エンジン始動開始前にソレノイド弁への通電が開始されればよく、例えばアイドルストップ復帰判定後、まずソレノイド弁に通電開始し、スタータ駆動を一定時間(例えばソレノイド弁のプランジャが吸着されるまでの時間)だけ遅延させてもよい。
無段変速機及び発進クラッチの油圧回路は、図2,図3に示すものに限らない。例えば、リニアソレノイド弁SLSによるソレノイド圧Psls を発進クラッチへ直接供給する例に代えて、ソレノイド圧Psls をコントロール弁に信号油圧として供給し、コントロール弁の出力油圧(過渡圧)を発進クラッチへ供給することも可能である。また、前記実施例では、共通のソレノイド弁SLSを用いてセカンダリプーリ21の挟圧制御と発進クラッチ85の過渡制御とを実施したが、これに限るものではなく、個別のソレノイド弁を用いて両者の油圧制御を実施してもよい。
前記実施例では、アイドルストップ復帰時に前進走行を開始するため、発進クラッチが逆転ブレーキ(B1)85である場合を例にして説明したが、後進走行を開始する場合には、発進クラッチは直結クラッチ(C1)86になる。