JP5480680B2 - 高芳香族炭化水素油を原料とするガソリン基材の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、最近の重油の需要が低下したことにより、分解軽油留分を有効活用する新しい技術の開発が期待されている。
例えば、分解軽油留分を水素化して、軽油として用いる方法が挙げられる。しかし、この技術は、これまで芳香族炭化水素を水素化してナフテンに転換するものであったため、セタン価がそれほど向上しなかった。したがって、水素化処理に多量の水素を投入してもその水素の消費量に見合った品質改善が図れず、分解軽油の直留軽油への配合割合を高めることができないという問題があった。
一方、近年分解軽油留分に芳香族炭化水素が多く含まれる性質を利用して、一環芳香族炭化水素留分に富むガソリン留分に転換する試みが行なわれてきた。例えば、非特許文献1には、水素化分解装置に分解軽油留分を通油し、水素化・分解して軽質油に転化する方法が開示されている。
しかしながら、これらの水素化分解法では高オクタン価ガソリンを直接製造することができなかったとされている。その理由は、これらの方法は通常高い水素分圧と比較的高い転化レベルで操業されて、芳香族の飽和、無機形態での異種原子の除去およびそれに続く水素化芳香族のパラフィンへの転化が最高になるように運転されてきたからであると、特許文献1(第3〜4頁)に記載されている。
例えば、前記特許文献1では、高オクタン価ガソリンの製造に適した原料油ならびに、水素分圧、分解率についての制御により、少なくとも87のオクタン価を有するガソリン沸点範囲の生成物を製造する発明が記載されている。この発明において、水素化処理は、水素化処理後無機質の窒素と硫黄とを中間段階で分離すれば、水素化分解装置で触媒のサイクル寿命を延ばすことができるからであるという理由により、有効であるかもしれないと記載されているに過ぎない。
特許文献2では、「ガソリンの沸点以上の温度で沸騰する装入原料(分解軽油相当)を触媒と接触させ、装入原料をガソリン沸点範囲生成物へクラッキングすることからなる高オクタンガソリンの製造方法において、実質上脱アルキル化した装入原料を、水素分圧7MPa以下、温度371〜482℃、および1通過当たりのガソリンへの転化率50%以下で、制御指数2以下をもつゼオライト触媒と接触させる」ことを特徴としている。ここでは、水素化クラッキングする前の水素化処理がガソリンのオクタン価あるいはガソリンの得率等に及ぼす影響についての言及はなく、水素化処理は、水素化処理中に触媒毒の多くを好都合に転化し、かつ水素化処理触媒上に触媒毒を沈着することができること、すなわち水素化クラッキング触媒の寿命を延ばす効果しか期待されていない。
特許文献3では、「重質炭化水素油を精製する第一工程、第一工程で生成したガス中不純物を低減する第二工程、及び第二工程で得られた生成油を水素化分解することにより、少なくとも重質炭化水素油に含まれる沸点215℃以上留分の10容量%以上を215℃未満留分に転化し、1環芳香族炭化水素を10容量%以上含有する水素化分解生成油を得る第三工程を含むアルキルベンゼン類の製造方法」が記載されている。この発明には、「第一工程の処理により、硫黄分は好ましくは500質量ppm以下、窒素分は好ましくは100質量ppm以下に低減され、容量ベースで反応後の全芳香族炭化水素量が反応前の0.50以上が残存するように制御することがこのましい」と記載されている。しかしながら、例えば、アルキルベンゼン類をより多く得るための第一工程の運転方法についての明確な記載がない。
以上のように、上記のいずれの方法においても、接触分解軽油(LCO)などの高芳香族炭化水素油を原料とし、水素化分解等を行い、一環芳香族炭化水素を多く含む有用な留分を得る方法についての技術は、いまだ開示されていない。
したがって、このような、処理が困難な高芳香族炭化水素油を用いる場合であっても、効率よく、有用な留分、例えば高オクタン価のガソリン留分を製造できる技術の出現が求められている。
[1]高芳香族炭化水素油を原料とし、水素化処理する第一工程、第一工程で得られた生成油を水素化分解処理する第二工程、及び第二工程で得られた分解生成油を分留する第三工程を有するガソリン留分を製造する方法であって、
前記水素化処理工程及び前記水素化分解処理工程における水素分圧を各々6〜12MPaの範囲とし、該水素化処理工程による下記の式(1)で計算される多環芳香族転化率を70%以上、かつ下記の式(2)で計算される芳香族転化率を2.0%以下となるように、水素化処理条件を調整するとともに、該水素化分解処理工程における水素化分解触媒として、SiO 2 /Al 2 O 3 (モル比)が25以上、格子定数が2.440nm以下及び結晶化度が50%以上である超安定Y型ゼオライトを用いることを特徴とする高芳香族炭化水素油を原料とするガソリン基材の製造方法、
多環芳香族転化率(%)=(a/b)×100(%) ・・・(1)
(式中、aは、水素化工程における多環芳香族濃度の減少幅,bは原料中の多環芳香族濃度を示す。)
芳香族転化率(%)=(A/B)×100(%) ・・・(2)
(式中、Aは、水素化工程における芳香族濃度の減少幅,Bは原料中の芳香族濃度を示す。)
[2]水素化処理条件を制御する方法が、反応温度を調整するものである前記[1]に記載の高芳香族炭化水素油を原料とするガソリン基材の製造方法、
[3]前記水素化分解処理における反応温度が、320〜430℃の範囲であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の高芳香族炭化水素油を原料とするガソリン基材の製造方法、
を提供するものである。
また、本発明によれば、圧力・温度が比較的温和な条件で高オクタン価のガソリン留分を製造できるため、省資源・省エネルギーに資する高オクタン価ガソリン留分の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高オクタン価を付与するガソリン留分であるとともに、ベンゼン、トルエン、キシレン等の基礎化学原料として有用な炭素数6〜8の芳香族化合物を多く含む留分を提供することができる。
本発明において、水素化処理する第一工程と水素化分解処理する第二工程とを必要とするのは、以下のような反応を実施するためである。
すなわち、
(1)まず、水素化処理によって、高芳香族炭化水素油に含まれる各々の多環芳香族炭化水素分子一個について、芳香族環が一個ずつ残るように部分的に水素化し、余分の芳香族環を水素で飽和されたナフテン環に転換する。
(2)次いで、水素化分解処理において、主として、結晶性アルミノシリケート含有触媒の適度な分解作用に基づいて、芳香族環とナフテン環の間のC−C単結合を切断する。これによって、一環芳香族分子一個と飽和炭化水素分子(パラフィンまたはナフテン炭化水素)を生成する。
(3)上記反応機構は、結晶性アルミノシリケートなどの固体酸のプロトンが芳香族環とσ結合を形成し、芳香族環の炭素と芳香族環につながっている炭素の間の単結合をβ切断機構により切断するものと考えられる。(芳香族環内の炭素は二重結合性を帯び強固に結合しているので固体酸では切断されない。)
以下に、それぞれの工程について説明する。
本発明における原料としては、高芳香族炭化水素油が用いられる。
高芳香族炭化水素油の芳香族分は、特に制限はないが、芳香族分を50容量%以上含む炭化水素油であるものが好ましく、60容量%以上がより好ましく、70容量%以上がさらに好ましく、80容量%以上が特に好ましい。このような炭化水素油は、水素化分解によって、オクタン価が高い芳香族化合物を多く含む留分を得るのに有利だからである。一方、高芳香族炭化水素油の芳香族分の上限については、特に制限はないが、苛酷な分解が要求されることによる水素化分解触媒の劣化を抑制する観点から、95容量%以下のものが好ましい。
なお、ここでいう芳香族炭化水素は、一環、二環、及び三環以上の芳香族炭化水素の合計量である。
一環芳香族炭化水素とは、アルキルベンゼン類の他にアルキルテトラリン類、アルキルインダン類、オクタヒドロアントラセン類、オクタヒドロフェナントレン類なども含まれる。二環芳香族炭化水素とは、ナフタレン類やジヒドロフェナントレン類、ジヒドロアントラセン類、ビフェニル類、フルオレン類、アセナフテン類、テトラヒドロアントラセン類、テトラヒドロフェナントレン類等が該当する。三環以上の芳香族炭化水素とは、フェナントレン類、アントラセン類、ピレン類、フルオランテン類などである。
このような一環、二環、及び三環以上芳香族分の分離・定量は、HPLC分析法によって測定できる。
このような、高芳香族炭化水素油の具体例としては、例えば、流動接触分解装置(FCC),重質油流動接触分解装置(RFCC)またはコーカー等の熱分解装置由来のものや、オイルサンドビチューメンなどのオイルサンド劣質油を起源としたものなどが挙げられる。
密度は、通常0.86〜1.00g/cm3の範囲のものが好ましく、0.89〜0.99、さらには0.92〜0.98g/cm3が好適である。密度が0.86g/cm3以上であれば、有効な芳香族炭化水素量を確保することができ、1.00g/cm3以下であれば、触媒の劣化を抑制することができる。
硫黄分については、通常、0.02〜4.0質量%のものが好適である。硫黄分が0.02質量%以上であれば、水素化触媒や水素化分解触媒が還元されて活性が低下することがなく、硫黄分が4.0質量%以下であれば、水素化生成物や水素化分解生成物中に硫黄分が残留する恐れがない。したがって、硫黄分が0.02質量%未満の場合は、硫化水素、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド等の硫黄化合物を添加して使用することが、好ましい。
原料油の窒素分については、2,000質量ppm以下、さらには1,500質量ppm以下、特に1,000質量ppm以下が好適である。また、窒素分の下限については、20質量ppm以上が好ましく、50質量ppm以上がより好ましい。窒素分20質量ppm以上であれば、水素化処理工程において、一環芳香族炭化水素の水素添加が過剰に進行し、開環や飽和環まで進むことが抑制され、また、窒素分が2,000質量ppm以下であれば、触媒活性が低下する恐れがない。
本発明の第一工程である水素化処理は、前記のとおり、高芳香族炭化水素油に含まれる各々の多環芳香族炭化水素分子一個について、芳香族環が一個ずつ残るように部分的に水素化し、それ以外の芳香族環を水素で飽和されたナフテン環に転換する役割を有する。
この役割を実現するために本発明の水素化処理工程においては、下記の式(1)で計算される多環芳香族転化率を70%以上、かつ下記の式(2)で計算される芳香族転化率を2.0%以下となるように、水素化処理条件を調整する。芳香族転化率は好ましくは1.0%以下に調整する。
多環芳香族転化率(%)=(a/b)×100(%) ・・・(1)
(式中、aは、水素化工程における多環芳香族濃度の減少幅,bは原料中の多環芳香族濃度を示す。)
芳香族転化率(%)=(A/B)×100(%) ・・・(2)
(式中、Aは、水素化工程における芳香族濃度の減少幅,Bは原料中の芳香族濃度を示す。)
このように水素化処理反応を調整することによって、目的とする多環芳香族炭化水素分子一個について、芳香族環が一個ずつ残るように部分的に水素化し、それ以外の芳香族環を水素で飽和されたナフテン環に転換することができる。
(i)反応温度:250〜420℃(280〜400℃)
なお、ここでいう反応温度は、重量平均温度(WAT)である。
(ii)水素分圧:5〜15MPa(6〜12MPa)
(iii)水素/油比:300〜3,000Nm3/kl(500〜2,000Nm3/kl)
(iv)液空間速度(LHSV):0.2〜3.0h-1(0.3〜2.5h-1)
このような条件で水素化処理反応を行えば、目的に近い性状を有する水素化生成物を得ることができる。
反応温度が250〜420℃であれば、二環以上の多環芳香族炭化水素の芳香族環を1個残す部分水素化反応が良好に進行し、水素化分解工程入口の反応温度が低下し水素化分解工程における分解率が上がらない恐れも無い。
水素分圧が5〜15MPaであれば、前記部分水素化反応で必要な水素量及びクエンチに必要な水素量が反応系内に確保でき、芳香族転化率が高くなりすぎる等の過剰な水素化が進行したり、水素化触媒がコーキング劣化する恐れが無い。
水素/油比は、300〜3,000Nm3/klであれば、水素化処理に必要な水素量、触媒の冷却に必要な水素量を適切に確保でき、また経済性も確保できる。
液空間速度(LHSV)が0.2〜3.0h-1であれば、前記良好な反応温度を保つことができる。
また、多環芳香族転化率を高めるためには、水素化反応を進行させるため、水素分圧や水素/油比を調整することも可能である。通常、水素分圧や水素/油比は高める方向で調整するが、原料油の気液の状態によっては、水素/油比を上げるとかえって水素化反応が抑制されることがあり、このような場合には水素/油比を下げる方向で調整する。
多環芳香族転化率を高くしすぎると過剰な水素化反応が進み、芳香族転化率が2.0%を超える場合が有る。その場合、又は芳香族転化率が2.0%以内であるが、より低くしたい場合、通常は前記範囲内で反応温度や水素分圧を下げる方向で調整する。原料油の気液の状態によっては水素/油比を上げるとかえって水素化反応が抑制されることも有るが、このような場合には水素/油比を下げる方向で調整する。
反応温度や水素分圧、水素/油比を調整し難い場合は、液空間速度(LHSV)を高くすると、多環芳香族転化率や芳香族転化率は小さくなり、低くすると両転化率とも高くなる方向に反応が進む。
以上の調整を連続的に行うときは、水素化処理の入り口と出口における油の性状(例えば、密度、動粘度、液体クロマト分析値など)を連続的に監視し、多環芳香族転化率及び芳香族転化率の変化を解析するシステムを有することが好ましい。
水素化活性金属成分としては、例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等が好適である。モリブデン化合物としては三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等が好ましく、タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム等が好ましい。コバルト化合物としては、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト等が好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケル等が好ましい。さらに、リン化合物を担持させることができ、このリン化合物としては、五酸化リン、正リン酸等の各種リン酸が使用される。担持量は触媒体として、酸化物基準で、モリブデン、タングステンが10〜40質量%、コバルト、ニッケルが1〜10質量%、リンが1〜10質量%が好適である。
中でも、水素化活性金属成分としてモリブデン、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも一種、特にモリブデンとニッケル、もしくはモリブデンとコバルトを組合せたものが好ましい。
本発明の第二工程である水素化分解処理は、前記のとおり、主として、結晶性アルミノシリケート含有触媒の適度な分解作用に基づいて、芳香族環とナフテン環の間のC−C単結合を切断する役割を有する。これによって、一環芳香族分子一個と飽和炭化水素分子(パラフィンまたはナフテン炭化水素)を生成するものである。
この役割を実現するために本発明の水素化分解処理工程においては、以下のような条件で水素化分解反応を行う。
例えば、以下の(V)〜(VIII)を満たす条件下で実施するのが好ましい(括弧内は、より好ましい範囲である)。
(V)反応温度:320〜440℃(330〜430℃)
(VI)水素分圧:5〜15MPa(6〜12MPa)
(VII)水素/油比:1,000〜3,000Nm3/kl
(VIII)液空間速度(LHSV):0.3〜3.0h-1
このような条件で水素化分解反応を行えば、芳香族環とナフテン環の間のC−C単結合を切断し、一環芳香族分子一個と飽和炭化水素分子を生成することができる。
水素分圧や水素/油比がこの範囲であると水素化分解やクエンチに必要な水素量を確保でき、触媒のコーキング劣化を防ぎつつ、水素化分解が進みすぎることも抑制できる。
液空間速度(LHSV)が低すぎると、水素化分解工程においても過剰な水素化、すなわち、処理後の油中の一環芳香族含有量が少なくなる恐れが有る。LHSVが高すぎると分解率を調整するために反応温度が高くなりすぎ、コーキング劣化を招くため好ましくない。
前記耐火性無機酸化物のうちSiO2/Al2O3(モル比)が20以上80以下の結晶性アルミノシリケートを除く耐火性無機酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−ボリア、アルミナ−ボリア、粘土鉱物などが挙げられ、通常これらから選ばれる1種以上を用いる。
一方、SiO2/Al2O3(モル比)が20以上80以下の結晶性アルミノシリケートとしては、β型ゼオライトや超安定Y型ゼオライトが好ましく、特に超安定Y型ゼオライトが好ましい。
中でも、酸量が0.2mmol/g以上のものが好ましい。酸量は、アンモニアTPD法により測定した値である。
このような、超安定Y型ゼオライトは、水素化分解反応において、コーキング劣化を生ずることがなく、良好な分解反応を行うことができる。
このような超安定Y型ゼオライトの製造方法は、通常Y型ゼオライトを水蒸気下にてスチーミング処理し、次いで酸処理を行う方法が好適である。この場合、スチーミング処理は540〜810℃で行い、酸処理は、硫酸、硝酸、塩酸などの鉱酸を加えて、脱アルミニウムおよび脱落アルミニウムの洗浄を行う方法が好ましい。この酸処理において、遷移金属の酸性塩を加えて、ゼオライトを修飾することができる。その中で、鉄の硫酸塩または硝酸塩を加えて混合攪拌することにより、鉄の担持ならびに脱アルミニウムおよび脱落アルミニウムの洗浄をおこなってもよい。
結晶性アルミノシリケートの含有割合は、40〜70質量%であることがより好ましい。
これらの金属の担持量は、周期表第6族金属の場合は、通常金属酸化物として触媒基準で、3〜40質量%、さらに好ましくは5〜35質量%である。第8〜10族金属の場合は、通常1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。
本発明の第三工程である分留工程は、前記第二工程で得られた分解生成油を分留し、例えば、ガス、LPG、軽質ガソリン、重質ガソリン、灯軽油留分等に分留する。これらの分留は、それぞれの沸点範囲によって、通常の方法で分留すればよい。
例えば、重質ガソリン留分をガソリンに適用するにはベンゼンが含まれない方が好適であることから、ベンゼンの沸点80℃以上で分留することがある。またベンゼンが含まれるように重質ガソリン留分を分留し、次いで蒸留により脱ベンゼン処理することもある。重質ガソリン留分を、ガスクロ蒸留の終点が180〜210℃となるように分留すると、炭素数7、8、9の芳香族炭化水素が濃縮されるため、オクタン価が高くガソリンとして好適である。該留分を精密蒸留して、炭素数7、8の留分、すなわち、トルエン、キシレン類を得る場合、ガスクロ蒸留の終点をより低く設定することが好適である。
なお、得られた重質ガソリン基材を白金/アルミナ系の改質触媒を用いて脱水素することにより、重質ガソリン基材に含まれる炭素数7〜9のナフテン炭化水素を、炭素数7〜9の芳香族炭化水素に転換することも可能である。この場合においても、本発明により芳香族炭化水素とナフテン炭化水素の比率が高く維持されるので、脱水素塔の能力、負荷を低減することができ有利である。
このような条件に調整して水素化を行うことによって、得られるガソリン基材のオクタン価が高く、重質ガソリン基材に含まれる一環芳香族とC8芳香族の収率をより高く維持することができる。
表2に示す性状を有する分解軽油を用いた。LCO−1は、重質油流動接触分解(RFCC)装置から得られた分解軽油、LCO−2は流動接触分解(FCC)装置から得られた分解軽油である。本文中に記載の無い、実施例及び比較例の評価項目の測定方法は表1に示す。
国際公開特許WO2002/049963に基づき、チタン含有水溶液を調製した。500℃で4時間焼成することにより求めたチタン酸化物(TiO2)の割合が85質量%である含水酸化チタン粉末12.7gと70gの純水を、内容積1Lのガラス製ビーカーに入れ、攪拌しスラリー化した。次に、35質量%過酸化水素水78.7gと26質量%のアンモニア水26.5gを混合した水溶液を該含水酸化チタンスラリーに添加した。その後、25℃を維持したまま3時間攪拌し、黄緑色で透明なチタン含有水溶液を得た。そこへ、クエン酸第1水和物28.4gを添加した。その後、30℃以下の温度で6時間保持した後、80〜95℃で12時間保持することによりpH6.2で透明なチタン含有水溶液120gを得た。得られたチタン含有水溶液を58.5g分取し、純水で希釈し80ミリリットルとし、細孔容量0.8ミリリットル/gで四葉のアルミナ100gに、常圧下で含浸(ポアフィリング法)した。その後、ロータリーエバポレータを用い減圧下、70℃で1時間乾燥した後に、120℃で3時間乾燥し、最後に500℃で4時間焼成し、TiO2−5質量%担持アルミナ担体を得た。
水素化分解触媒を、特許公報第2908959号を参照して、下記のようにニッケル・モリブデンを含む金属溶液を改質ゼオライト含有アルミナ担体に含浸担持して調製した。
Na2O含量が1.2質量%、SiO2/Al2O3比(モル比)が5.0である粉末状のNaNH4Y型ゼオライト2kgをロータリーキルン内に投入し、700℃で3時間セルフスチーミング処理を行い、スチーミングゼオライトを得た。このスチーミングゼオライト400gに、濃度1.0モル/リットルの硝酸第二鉄水溶液4kgと、該ゼオライト1kg当たりHNO3が10モル量となる量の硝酸(濃度1.5モル/リットル)を添加し、攪拌下で75℃にて2時間処理した。次いで、ろ過し、得られた固体分を温水にて数回洗浄し、所定の鉄含有酸処理ゼオライトをスラリー状態で回収し、改質ゼオライトを得た。改質ゼオライトのSiO2/Al2O3(モル比)は40、格子定数は2.432nm、比表面積は736m2/g、Fe2O3の担持量は2.2質量%、Na2Oの含有量は0.13質量%であった。酸量は0.48mmol/gであった。
なお、ゼオライトの酸量は、アンモニア昇温脱離法(NH3−TPD)法で、以下のようにして測定した。
ゼオライトを測定セルに充填し、Heガスフローで400℃、2時間処理して吸着水の除去を行った。100℃で0.5%NH3/Heガスを60分流して吸着を行った後、Heに室温の飽和水蒸気(25Torr)を同伴させ、100℃で4時間を流通させた。その後、Heを減圧下(140Torr)にて100℃で60分流通させた。次いで、10〜700℃まで20℃/分で昇温して、脱離してくるNH3の定量を質量検出計にて行った。
高圧固定床流通式のベンチ反応器を2基直列に連結し、水素化分解反応を実施した。触媒は、前段(水素化反応器)に水素化触媒1を50ミリリットル、後段(水素化分解反応器)に水素化分解触媒1を50ミリリットル充填した。原料油は水素ガス(ボンベの純水素を昇圧して使用)とともに反応管の上段から導入するダウンフロー形式で流通させて反応評価を行った。前処理として、DMDS(ジメチルジスルフィド)を添加し硫黄濃度を2.0質量%に調整した、密度0.844g/cm3の中東系軽油をベースとする予備硫化油を、水素ガスとともに流通させて温度240℃で4時間、290℃で9時間予備硫化を行なった。予備硫化後、硫黄分1.1質量%、密度0.846g/cm3の中東系原油に切り替え、310℃で24時間原料油硫化を行なった。次に、表2に記載した分解軽油に切り替えて、水素化分解実験を行なった。反応温度は前段、後段、各々の温度を310〜410℃の範囲で等温に制御した。反応圧力は水素化分解反応器出口で6.9MPa、水素/原料油比は水素化反応器入口で2,000Nm3/キロリットル、LHSV(液空間速度)は水素化触媒1と水素化分解触媒1合計で0.6〜0.8h-1の条件に調整し、ベンチ試験を行なった。実施例1〜3、比較例1,2の反応条件を表3に記す。
水素化触媒通過後の油については、硫化水素を除去するため、窒素ガスを流通し硫化水素ストリッピングを行なった。得られた試料の密度、動粘度(30℃)を評価し、HPLC分析を行って各留分の容量(%)を求め、芳香族転化率、多環芳香族転化率を求めた。結果を表3に示す。
水素化分解触媒通過後のガスについては流量を測定するとともにガスクロにて分析し、生成油については秤量し、物質収支をとったところ、最低でも96質量%以上の回収率が得られた。生成油については、2リットルないし4リットル回収し、15段蒸留を行い、LPG、軽質ガソリン(〜90℃)、重質ガソリン(90〜190℃)、軽油(190℃〜)に分留し、各々の質量を秤量した。軽質ガソリン、重質ガソリンについては、密度、硫黄分、窒素分、エングラー蒸留、ガソリン全組成分析、リサーチオクタン価の実測を行なった。結果を表3に示す。
反応圧力を6.86MPa、水素/油比を2,000Nm3/kl、LHSVを0.8h-1として、表2に記載のLCO−1を通油してベンチ試験を行なった。水素化反応器の温度を350℃(実施例1)、360℃(実施例2)とし、水素化分解反応器の温度を405℃(実施例1)、401℃(実施例2)とした。ベンチ試験の実験条件と生成油の分析結果を表3に示す。
比較例1
水素化反応器の温度を380℃、水素化分解反応器の温度を396℃とした以外は実施例1、2と同様にベンチ試験を行なった。このときのベンチ試験の実験条件と生成油の分析結果を表3に示す。
水素化反応器における多環芳香族転化率は、実施例1で76.8%、実施例2で74.4%、比較例1で68.4%であった。一方、芳香族転化率は、実施例1で0.4%、実施例2で1.2%、比較例1で3.5%であった。得られた重質ガソリン基材の得率(原料油基準)と蒸留性状は実施例1、実施例2と比較例1とで同じであるが、比較例1は、重質ガソリンのRON、重質ガソリンに含まれる一環芳香族(C7〜C9)とC8芳香族の収率が実施例1、実施例2より少ないことがわかる。これは水素化反応器における多環芳香族転化率が68.4%と低いにもかかわらず、芳香族転化率が3.5%と高すぎることに起因している。すなわち、水素化反応器において、多環芳香族炭化水素の一環芳香族炭化水素への転換は不十分でありながら、一環芳香族を過剰に水素化し、ナフテン炭化水素に添加したため、と考えられる。なお、軽質ガソリンのRONは実施例1、2の方が比較例1より高い。これは実施例の方が比較例よりもベンゼンの濃度が高く、シクロヘキサンやメチルシクロペンタンのようなナフテン炭化水素の濃度が低いためであり、重質ガソリンと同様の傾向を示した。よって、重質ガソリン基材中の有用成分である一環芳香族成分、特にC8芳香族成分を高収率で得るには、水素化反応器における多環芳香族転化率ならびに芳香族転化率を本発明の範囲に制御することの重要性がここに示された。
反応圧力を6.86MPa、水素/油比を2,000Nm3/kl、LHSVを0.8h-1として、表1記載のLCO−2を通油してベンチ試験を行なった。実施例3では水素化反応器の温度を310℃、水素化分解反応器の温度を393℃に設定した。比較例1では水素化反応器の温度を330℃、水素化分解反応器の温度を390℃に設定した。ベンチ試験の実験条件と生成油の分析結果を表3に示す。
芳香族転化率が2.7%と高い場合(比較例2)よりも、芳香族転化率が−0.4%と低い場合(実施例3)の方が重質ガソリン基材のオクタン価、重質ガソリン基材に含まれる一環芳香族とC8芳香族の収率が高いことがわかる。軽質ガソリンのRONは実施例3の方が比較例2より高い。これは、実施例の方が比較例よりもベンゼンの濃度が高く、シクロヘキサンやメチルシクロペンタンのようなナフテン炭化水素の濃度が低いためであり、重質ガソリンと同様の傾向を示した。このように、原料油の高芳香族含有炭化水素油の種類が変っても、芳香族転化率を本発明の範囲に制御することの重要性がここに示された。
尚、実施例3で、芳香族転化率(容量%)が負の値を示し、芳香族分が微増したように見えるのは、水素化工程で部分的に(不完全に)水素化された芳香族化合物の容積が、元の芳香族化合物の容積と比較して増大したことによると考えられる。
前記ベンチ試験方法(I)で用いた高圧固定床流通式のベンチ反応器を2基連結せずに設置し、前段(水素化反応器)の出口油を回収し、その性状を確認した後に、後段(水素化分解反応器)に導入し、水素化分解反応を実施した。
用いた触媒及びその充填量、予備硫化方法は、ベンチ試験方法(I)と同様の方法で行った。また、反応条件は、実施例4では、芳香族転化率が1.0質量%、比較例3では、芳香族転化率が7.3質量%になるように設定して調整し、ベンチ試験を行った。実施例4、比較例3の反応条件を表4に示す。
水素化反応器の反応圧力を6.86MPa、反応温度を348℃、水素/油比を1,700Nm3/kl、LHSVを1.6h-1として、表2に記載のLCO−1を通油してベンチ試験を行なった。水素化分解反応器の反応圧力を6.86MPa、反応温度を382℃、水素/油比を2,000Nm3/kl、LHSVを1.0h-1とした。ベンチ試験の実験条件と生成油の分析結果を表4に示す。
比較例3
水素化反応器の反応圧力を7.84MPa、反応温度を340℃、水素/油比を1,300Nm3/kl、LHSVを2.0h-1とし、水素化分解反応器の温度を368℃とした以外は実施例4と同様にベンチ試験を行なった。このときのベンチ試験の実験条件と生成油の分析結果を表4に示す。
芳香族転化率が7.3%と高い場合(比較例4)よりも、芳香族転化率が1.0%と低い場合(実施例4)の方が重質ガソリン基材のオクタン価、重質ガソリン基材に含まれるC8芳香族、及びC7、C9芳香族の収率が高いことがわかる。このように、水素化反応器の設置方法が変っても、芳香族転化率を本発明の範囲に制御することの重要性がここに示された。
また、本発明によれば、圧力・温度が比較的温和な条件で高オクタン価のガソリン留分を製造できるため、省資源・省エネルギーに資する製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高オクタン価を付与する留分であるとともに、基礎化学原料として有用な炭素数6〜8の芳香族化合物を多く含む留分を提供することができる。したがって、広く産業界において有用な技術として利用できる。
Claims (3)
- 高芳香族炭化水素油を原料とし、水素化処理する第一工程、第一工程で得られた生成油を水素化分解処理する第二工程、及び第二工程で得られた分解生成油を分留する第三工程を有するガソリン留分を製造する方法であって、
前記水素化処理工程及び前記水素化分解処理工程における水素分圧を各々6〜12MPaの範囲とし、該水素化処理工程による下記の式(1)で計算される多環芳香族転化率を70%以上、かつ下記の式(2)で計算される芳香族転化率を2.0%以下となるように、水素化処理条件を調整するとともに、該水素化分解処理工程における水素化分解触媒として、SiO 2 /Al 2 O 3 (モル比)が25以上、格子定数が2.440nm以下及び結晶化度が50%以上である超安定Y型ゼオライトを用いることを特徴とする高芳香族炭化水素油を原料とするガソリン基材の製造方法。
多環芳香族転化率(%)=(a/b)×100(%) ・・・(1)
(式中、aは、水素化工程における多環芳香族濃度の減少幅,bは原料中の多環芳香族濃度を示す。)
芳香族転化率(%)=(A/B)×100(%) ・・・(2)
(式中、Aは、水素化工程における芳香族濃度の減少幅,Bは原料中の芳香族濃度を示す。) - 水素化処理条件を制御する方法が、反応温度を調整するものである請求項1に記載の高芳香族炭化水素油を原料とするガソリン基材の製造方法。
- 前記水素化分解処理における反応温度が、320〜430℃の範囲である請求項1又は2に記載の高芳香族炭化水素油を原料とするガソリン基材の製造方法。
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