JP5481976B2 - 高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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なお、ここでいう「高強度電縫鋼管」とは、引張り強さTS:760MPa以上(API5L−X100級相当)の高強度を有する電縫鋼管をいうものとする。また、ここでいう「高強度スパイラル鋼管」とは、API5L−X80級以上の高強度を有するスパイラル鋼管をいうものとする。なお、「鋼板」は、鋼板および鋼帯を含むものとする。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、多量の合金元素添加を必要とすることなく、引張り強さTS:760MPa以上の高強度と、優れた低温靭性とを兼備する高強度電縫鋼管用、あるいはX80級以上の高強度と、優れた低温靭性とを兼備する高強度スパイラル鋼管用として好適な、引張強さTS:760MPa以上の高強度と破面遷移温度vTrs:−100℃以下の高靭性と、さらには破面遷移温度vTrs:−40℃以下の優れた溶接熱影響部靭性とを兼備する高張力熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
(1)質量%で、C:0.03〜0.06%、Si:1.0%以下、Mn:1〜2%、Al:0.1%以下、Nb:0.05〜0.08%、V:0.05〜0.15%、Mo:0.10〜0.30%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、表面から板厚の5%までの領域を除いた組織が、主相と7体積%以下の第二相からなり、前記主相がベイニティックフェライト相であり、前記主相中にNbおよびVの炭窒化物がNbおよびVの合計量換算で0.06%以上分散してなる組織であり、引張強さTS:760MPa以上の高強度と破面遷移温度vTrs:−100℃以下の高靭性とを有することを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%でB:0.0050%以下を含有する組成とすることを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.03%以下を含有する組成とすることを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下、REM:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載の組成を有する鋼素材に、加熱したのち、950℃以下の温度域における累積圧下率が45%以上で、仕上圧延終了温度が(Ar3変態点−30℃)以上である熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後、10s以内に、板厚中央で20℃/s以上の平均冷却速度で550〜650℃の温度域まで冷却する加速冷却処理を施し、該加速冷却処理終了後30s以内の間、空冷する空冷処理を施したのち、コイル状に巻き取り、該巻き取ったコイルをコイル厚さの1/2位置で1℃/s以下の平均冷却速度で放冷することで、表面から板厚の5%までの領域を除いた組織を、主相と7体積%以下の第二相からなり、前記主相がベイニティックフェライト相であり、前記主相中にNbおよびVの炭窒化物がNbおよびVの合計量換算で0.06%以上分散してなる組織とすることを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板の製造方法。
C:0.03〜0.06%
Cは、鋼の強度を上昇させる作用を有する元素であり、本発明では所望の高強度を確保するために、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.06%を超える過剰な含有は、母材靭性および溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、Cは0.03〜0.06%の範囲に限定した。
Siは、固溶強化、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する。このような効果は0.01%以上の含有で認められる。一方、Siは、電縫溶接時にSiを含有する酸化物を形成し、溶接部品質を低下させるとともに、溶接熱影響部靭性を低下させる。このような観点から、Siはできるだけ低減することが望ましいが、1.0%までは許容できる。このようなことから、Siは1.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.4%以下である。
Mnは、焼入性を向上させる作用を有し、焼入性向上を介し鋼板の強度を増加させる。また、Mnは、MnSを形成しSを固定することにより、Sの粒界偏析を防止してスラブ(鋼素材)割れを抑制する。このような効果を得るためには、1%以上の含有を必要とする。一方、2%を超える含有は、スラブ鋳造時の凝固偏析を助長し、鋼板にMn濃化部を残存させ、セパレーションの発生を増加させる。このMn濃化部を消失させるには、1300℃を超える温度に加熱する必要があり、このような熱処理を工業的規模で実施することは現実的でない。このため、Mnは1〜2%の範囲に限定した。なお、好ましくは1.4〜1.8%である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超える含有は、電縫溶接時の、溶接部の清浄性を著しく損なう。また、Alは鋼中に固溶されると、Siと同様にフェライト相の形成を促進する作用を有する。このようなことから、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.07%以下である。
Nbは、オーステナイトの粒界移動を抑制し、オーステナイト粒の粗大化、再結晶を抑制する作用を有する元素であり、熱間仕上圧延におけるオーステナイト未再結晶温度域圧延を可能にするとともに、オーステナイト未再結晶温度域直上での粗大粒の発生を防止する効果を有する。また、Nbは炭窒化物(析出物)として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.08%を超える過剰な含有は、熱間仕上圧延中の圧延荷重の増大をもたらし、熱間圧延が困難となる場合がある。このため、Nbは0.05〜0.08%の範囲に限定した。
Vは、Nbと同様に、炭窒化物(析出物)として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.15%を超える過剰な含有は、溶接性を低下させる。このため、Vは0.05〜0.15%の範囲に限定した。
Moは、焼入性を向上させるとともに、炭窒化物(析出物)を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果を得るためには0.10%以上の含有を必要とする。一方、0.30%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Moは0.10〜0.30%に限定した。
Cr、Ni、Cuは、いずれも焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を増加させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Crは、焼入性の向上を介して、鋼板の強度を増加させる。このような効果は、0.05%以上の含有で顕著となる。一方、0.5%を超える過剰の含有は、抵抗溶接時に溶接欠陥を多発させる傾向となる。このため、Crは0.5%以下に限定することが好ましい。
Cuは、焼入れ性を向上させるとともに、固溶強化あるいは析出強化により鋼板の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は熱間加工性を低下させる。このため、Cuは0.5%以下に限定することが好ましい。
Tiは、窒化物を形成し、Nを固定してスラブ(鋼素材)割れを防止する作用を有するとともに、高温における結晶粒の粗大化を防止する作用も有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.005%以上含有をすることが好ましいが、0.03%を超えて多量に含有すると、溶接熱影響部靭性が低下する。このため、Tiは0.03%以下に限定することが好ましい。
Bは焼入性向上を介して鋼の強度を増加させる元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、0.0001%以上含有することが好ましいが、0.0050%を超える含有はかえって靱性を低下させる。
Ca:0.005%以下、REM:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種
Ca、REMはいずれも、展伸した粗大な硫化物を球状の硫化物とする硫化物の形態制御に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るためには、0.0005%以上含有することが望ましいが、0.005%を超える多量の含有は、鋼板の清浄度を低下させる。このため、Ca、REMはいずれも0.005%以下に限定することが好ましい。
なお、不可避的不純物としては、P:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.008%以下が許容できる。
鋼素材の製造方法としては、上記した組成の溶鋼を転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましいが、本発明では、これに限定されることはない。
加熱温度が1100℃未満では、変形抵抗が高く圧延負荷が増大し圧延能率が低下する。一方、加熱温度が1300℃を超えて高温になると、結晶粒が粗大して低温靭性が低下するうえ、スケール生成量が増大し表面性状が低下する恐れがある。このため、熱間圧延における加熱温度は1100〜1300℃とすることが好ましい。
熱間圧延は、粗圧延と仕上圧延からなる圧延とする。粗圧延は、所望の寸法形状のシートバーが確保できればよく、とくにその条件を限定する必要はない。一方、仕上圧延は、950℃以下の温度域における累積圧下率が45%以上で、仕上圧延終了温度が(Ar3変態点−30℃)以上である圧延とする。
また、加速冷却処理における冷却停止温度は、550〜650℃の温度域の温度とする。冷却停止温度が、550℃未満と低温になると、Nb、Vの炭窒化物の析出量が不十分となり、所望の高強度を確保できなくなる。一方、650℃を超えて高くなると、その後の冷却(空冷)でフェライト、パーライトが顕著に析出するため、低温靭性の顕著な向上が得られない。なお、加速冷却処理の冷却停止温度は板厚中央位置の温度とする。
なお、マレイン酸系電解液の組成は、10%マレイン酸―2%アセチルアセトン−5%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノールとした。また、電解抽出にあたっては、低電流電解(約20mA/cm2)し、残渣をメンブレンフィルターで補集するものとする。その後、フィルターおよび残渣を圧下したのち、ホウ酸リチウムと過酸化ナトリウムの混合融剤を用いて融解し、融成物を塩酸で溶解し、水で一定量に希釈し、ICP発光分析法で定量化するものとする。
なお、本発明の「ベイナイト相単相」とはベイナイト相以外に、7体積%以下の第二相が許容できる。第二相が7体積%を超えて多量となると、靱性が低下する。第二相としては、パーライト、マルテンサイト等が例示される。なお、上記した組織は表層(表面から板厚の5%)領域の組織を除いたものを意味する。
以下、さらに実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板から組織観察用試験片を採取し、圧延方向断面を研磨、腐食し、光学顕微鏡(倍率:500倍)で各5視野以上観察し、組織の種類、およびその組織分率を測定した。
(2)引張試験
得られた熱延鋼板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるように、ASTM A370の規定に準拠して,板状試験片(ケージ長さ50mm)を採取し、引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTSを求めた。
(3)衝撃試験
得られた熱延鋼板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrs(℃)を求め、母材靭性を評価した。
(4)溶接熱影響部衝撃試験
得られた熱延鋼板(鋼帯)から、再現熱サイクル試験片を採取し、シームアニール後の電縫溶接部相当の熱サイクルを付与し、シャルピー衝撃試験を実施し、溶接熱影響部靭性を評価した。なお、鋼種が同じものについては代表鋼板についてのみ実施した。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.03〜0.06%、 Si:1.0%以下、
Mn:1〜2%、 Al:0.1%以下、
Nb:0.05〜0.08%、 V:0.05〜0.15%、
Mo:0.10〜0.30%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、表面から板厚の5%までの領域を除いた組織が、主相と7体積%以下の第二相からなり、前記主相がベイニティックフェライト相であり、前記主相中にNbおよびVの炭窒化物がNbおよびVの合計量換算で0.06%以上分散してなる組織であり、引張強さTS:760MPa以上の高強度と破面遷移温度vTrs:−100℃以下の高靭性とを有することを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%でB:0.0050%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.03%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下、REM:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の組成を有する鋼素材に、加熱したのち、950℃以下の温度域における累積圧下率が45%以上で、仕上圧延終了温度が(Ar3変態点−30℃)以上とする熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後、10s以内に、板厚中央で20℃/s以上の平均冷却速度で550〜650℃の温度域まで冷却する加速冷却処理を施し、該加速冷却処理終了後30s以内の間、空冷する空冷処理を施したのち、コイル状に巻き取り、該巻き取ったコイルをコイル厚さの1/2位置で1℃/s以下の平均冷却速度で放冷することで、表面から板厚の5%までの領域を除いた組織を、主相と7体積%以下の第二相からなり、前記主相がベイニティックフェライト相であり、前記主相中にNbおよびVの炭窒化物がNbおよびVの合計量換算で0.06%以上分散してなる組織とすることを特徴とする高強度溶接鋼管用高張力熱延鋼板の製造方法。
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