JP5487655B2 - [1]ベンゾチエノ[3,2‐b][1]ベンゾチオフェン化合物およびその製造方法、それを用いた有機電子デバイス - Google Patents
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Description
これまでに、低分子化合物の有機半導体材料としてペンタセン等のアセン系材料が報告されている(例えば、特許文献1および非特許文献1)。このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対し極めて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経る必要がある。ゆえに、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
ところで、ペンタセンと同様のアセン系材料の一つとして、[1]ベンゾチエノ[3, 2−b]ベンゾチオフェンの誘導体である下記式(1)の構造の2,7―ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3, 2−b][1]ベンゾチオフェン(特許文献2、非特許文献2)は、オクタデシルトリクロロシランで処理した基板上に蒸着することにより、ペンタセンに匹敵する移動度(約2.0cm2/V・s程度)を示し、また大気下での長期安定性も有する。
また、同じく誘導体である下記式(2)の構造の2,7―ジアルキル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(非特許文献3)は、液晶相を有し、かつ高い溶解性を有し、スピンコート、キャストなどで塗布可能であり、比較的低温の熱処理により、同じくペンタセンに匹敵する移動度(約2.0cm2/V・s程度)を示す。しかしながら、前者はペンタセン同様真空蒸着工程を経る必要があり、塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではなく、後者は液晶相への転移温度が100℃程度と比較的低く、製膜後も熱処理により膜構造の変化が生じ得るため、有機半導体デバイス作製におけるプロセス適応性に問題がある。
近年、溶媒溶解性の高い低分子化合物を半導体前駆体(以下前駆体)とし、これを溶剤などに溶解し塗布プロセスで膜を形成し、そののち半導体に変換して有機半導体膜を得、電界効果トランジスタを作製する方法が報告されている。例えば、ペンタセンあるいは類似の芳香族炭化水素(非特許文献5、6)、ポルフィリン(例えば、非特許文献7、8)等を用いた例がある。
また、この例におけるペンタセン前駆体からはテトラクロロベンゼン分子が脱離するが、テトラクロロベンゼンは、沸点が高く反応系外に取り除くことが難しいことに加え、その毒性が懸念される。
加えて、これらのいずれの例も変換後の半導体分子が酸素や水に対して安定ではないため、大気下での取り扱いが難しいという問題点がある。
上記の理由から、従来公知である上記した化合物およびそれらの前駆体では、プロセス適応性に問題があることは明らかであり、新たな前駆体およびその製造方法が求められていた。
(1) 一般式(I)で表わされる[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物。
(3) 脱離性基を有する[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物前駆体から変換させる請求項1または2に記載の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物の製造方法であって、前記脱離性基が、下記一般式(V)乃至(VII)で表わされる部分構造を有する基から選択されるものであることを特徴とする前記第(5)項に記載の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物の製造方法。
(4) 前記第(1)項または第(2)項に記載の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物を含有することを特徴とする有機電子デバイス。
(5) 前記第(3)項に記載の製造法により得られた[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物を含有することを特徴とする第(4)項に記載の有機電子デバイス。
(6) 有機電子デバイスが有機薄膜トランジスタである前記第(4)項又は第(5)項に記載の有機電子デバイス。
また、本発明に係る特定化合物は有機溶剤に対する十分な溶解性を有する特定化合物前駆体(以下、前駆体)から簡便に製造することが可能である。
また、本発明に係る電界効果トランジスタは、キャリア移動度が大きく、オンオフ比が大きく、リーク電流が小さいという利点がある。
[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンは高度に発達したπ共役系と高い平面構造を有しており、またイオン化ポテンシャルがペンタセンなどの他のアセン系材料と比べて比較的高いため、酸化安定性に優れた有機半導体材料として用途が提案されている。具体的には、非特許文献3、4に示される。しかしながら、溶解性の置換基を有しない場合では製膜に高真空が必要である。脂肪族アルキル基などの溶解性基で置換した場合においては、比較的溶解性が得られるものの、低い温度に複数の相転移点を有することが多く、デバイス作製時の熱処理等により膜構造の乱れが生じ得ることが問題である。そこで、本発明者らは、溶解性の高い脱離性基を導入した同前駆体からエネルギーの印加により簡便に形成可能であるアルケニル基、チオール基、カルボキシル基を部分構造として含む特定化合物により上記課題を解決できることを見いだした。
下記一般式(VIII)で表わされる[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン誘導体(2,7-ハロゲン化[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン)と、下記一般式(IX)で表わされるボロン酸誘導体(Suzukiカップリング反応の場合)または有機スズ誘導体(Stileカップリングの場合)と、さらにSuzukiカップリング反応においては塩基を加え、それぞれパラジウム触媒の存在下で、反応させることにより前記一般式(I)乃至(VII)で表わされる本発明の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物が製造される。
上記反応における反応時間は、用いる原料の反応性において適宜設定することができ、1〜72時間が好適であり、さらには、1〜24時間がより好ましい。
ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、[2,2]−パラシクロファン、トリフェニルアミン、チオフェン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、(フラン、ベンゾフラン、カルバゾール)、ベンゾジチアゾール等の2価基が挙げられ、これらはアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ハロゲン基を置換基として有していてもよい。
さらに、詳細な本発明の特定化合物の構造を以下に例示する。
上記脱離性基を有する前駆体にエネルギーを印加することにより、脱離性基の構造変化に伴い、本発明の化合物を得ることができる。
上記脱離性基としては、炭酸エステル、カルボン酸エステル、キサントゲン酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステルに代表わされるエステル類およびβ水素を有するアミンオキシドおよびスルホキシドおよびセレノキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、蟻酸、リン酸等、2‐ブチルオクタン酸を用いることができる。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
上記加熱の時間については、前駆体の反応性、量にもよるが、通常0.5〜120分、好ましくは1〜60分、特に好ましくは1分〜30分である。
本発明の特定化合物は、例えば、電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例を挙げると、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置などが挙げられる。また、例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子などが挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振等が挙げられる。
図5の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造である。本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、本発明の特定化合物を含有する。本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)およびゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
本発明に係わる有機半導体材料は、真空蒸着法等の気相製膜が可能である。加えて、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができるほか、前駆体からなる膜に対してエネルギーを印加し、特定化合物の膜に変換することによっても形成することができる。これら有機半導体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5〜200nmが好ましい。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記化合物を成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成される。
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けてもよい。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、有機EL、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
(特定化合物中間体の合成)
(1) [1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンユニットの合成
本発明の化合物を製造する際に用いられる[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンのジハロゲン誘導体は、Zh.Org.Khim.,16,2,383(1980)およびJ.Am.Chem.Soc.128,12604(2006)を参考にして下記のスキーム1の手順で行ない、誘導体7のジハロゲン体を得た。(収量5g、収率30.5%)
1H NMR (400 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.62 (d, 2H, J =8.4 Hz), 7.75 (dd, 2H, J1 =8.4 Hz J2 =1.4 Hz), 8.26 (d, 2H, J =1.4 Hz)
質量分析:GC-MS m/z = 492 (M+)
元素分析値:C, 34.40; H, 1.19 (実測値) C, 34.17; H, 1.23(計算値)
融点300℃以上
本発明の特定化合物を製造する際に用いられる溶解性の脱離性基ユニットは、Chem. Mater. 16, 4783(2004)およびJ.Am.Chem.Soc.126,1596(2006)を参考にして下記の〈スキーム2〉乃至〈5〉に従って合成を行なった。
トリブチルスズ誘導体11の合成(8→11)
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.13 (d, 1H, J =2.9 Hz), 7.00 (d, 1H, J =3.5 Hz), 6.03 (t, 1H, J =4 Hz), 2.29-2.36 (m, 1H), 1.89-2.05 (m, 2H), 1.50-1.64 (m, 6H), 1.37-1.45 (m, 2H), 1.31-1.36(m, 6H), 1.11-1.28 (m, 12H), 1.08 (t, J=8.0 Hz , 6H), 0.95 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 0.78-0.90 (m, 15 H)
質量分析:GC-MS m/z = 614 (M+)
ボロン酸エステル誘導体15の合成(12→15)
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.77 (d, J = 8 .0 Hz, 2H,), 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.68 (t, J = 6.9 Hz, 1H), 2.32-2.38 (m, 1H), 1.85-1.93 (m, 1H), 1.78-1.84 (m, 1H), 1.53-1.62 (m, 2H), 1.37-1.47 (m, 2H), 1.33 (s, 12H), 1.1-1..32 (m, 12H), 0.79-0.91 (m, 9H)
質量分析:GC-MS m/z = 444 (M+)
トリブチルスズ誘導体20の合成(16→20)
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.25 (d, J = 3.4 Hz, 1H,), 7.04 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 5.92 (t, J = 6.9 Hz, 1H), 2.31-2.37 (m, 1H), 1.88-2.05 (m, 2H), 1.54-1.64 (m, 6H), 1.38-1.47 (m, 2H), 1.31-1.38 (m, 6H), 1.14-1.28 (m, 12H), 1.11 (t, J = 8.0 Hz, 6H), 0.97 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 0.90 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 0.78-0.86 (m, 9H)
質量分析:GC-MS m/z = 696 (M+)
トリブチルスズ誘導体22の合成(9→22)
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ):7.08 (d, 1H, J =3.2 Hz), 6.97 (d, 1H, J =3.2 Hz), 5.01 (t, 1H, J =4 Hz), 2.99 (td, J1 =7.2 Hz, J2 = 2.0 Hz, 2H), 2.03-2.10 (quint, J = 7.2 Hz, 2H), 1.52-1.64 (m, 6 H), 1.28-1.43 (m, 10 H), 1.08 (t, J=8.0 Hz , 6H), 0.99 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 0.87-0.94 (m, 12 H)
質量分析:GC-MS m/z = 564 (M+)
アルケニル基を有するボロン酸エステルユニットは下記の〈スキーム6〉に従って合成を行なった。
アルケニルボロン酸エステル誘導体の合成(23→26)
ボロン酸エステル誘導体26の分析結果を示す。
質量分析:GC-MS m/z = 258 (M+)
スキーム7に従って下記前駆体Precursor1の合成を行なった。
〈スキーム7〉
カラム精製(溶離液:トルエン)を行ない、オレンジ色の固体(収量800mg)を得た。さらに、リサイクルGPC(溶離液:テトラヒドロフラン(以下THF)、日本分析社製)により精製を行ない、黄色の結晶(収量500mg、収率56.5%)を得た。
質量分析:GC-MS m/z = 884 (M+)
元素分析値:C, 70.40; H, 7.94;S,14.2 (実測値) C, 70.54; H, 7.74; S, 14.49(計算値)
融点:93.2―94.2 ℃
スキーム8に従って下記前駆体Precursor2の合成を行なった。
カラム精製(溶離液:トルエン/ヘキサン(6/4→10/0))を行ない、黄色の固体 (収量2.38g、収率66.0%)を得た。このうち800mgをリサイクルGPC(溶離液:THF、日本分析社製)により精製を行ない、淡黄色の結晶(収量708mg、収率88.5%)を得た。
質量分析:GC-MS m/z = 872 (M+)
元素分析値:C, 76.90; H, 8.54; S, 7.20 (実測値) C, 77.02; H, 8.31; S, 7.34 (計算値)
融点:87.5―90.0℃
スキーム9に従って下記前駆体Precursor3の合成を行なった。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ):8.17 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 7.87 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.70 (dd, J1 = 1.7 Hz, J2 = 8.0 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 7.15 (d, J = 3.4 Hz, 2H), 7.07 (d, J = 3.4 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 3.4 Hz, 2H), 5.94 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.32-2.39 (m, 2H), 1.91-2.08 (m, 4H), 1.57-1.66 (m, 4H), 1.40-1.49 (m, 4H), 1.11-1.36 (m, 24H), 0.99 (t, J = 6.9 Hz,6H), 0.81-0.90 (m, 12H)
質量分析:GC-MS m/z = 1050 (M+)
元素分析値:C, 68.26; H, 6.91; S, 18.93 (実測値) C, 68.19; H, 6.71; S, 18.83 (計算値)
融点:134.0―135.4 ℃
以上の分析結果から、合成したものが、前駆体Precursor3の構造と矛盾がないことを
〈スキーム10〉に従って下記前駆体Precursor4の合成を行った。
カラム精製(溶離液:トルエン)を行ない、オレンジ色の固体(収量590 mg)を得た。さらに、リサイクルGPC(溶離液:テトラヒドロフラン(以下THF)、日本分析社製)により精製を行ない、黄色の結晶(収量435mg、収率57.8 %)を得た。
得られた前駆体Precursor4の分析結果を示す。
元素分析値:C, 60.15; H, 5.68; S, 29.30 (実測値) C, 60.60; H, 5.35; S, 29.80 (計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、前駆体Precursor4の構造と矛盾が無いことを確認した。
スキーム11に従って前駆体Precursor1から下記特定化合物OSC1の合成を行なった。
得られた特定化合物OSC1の分析結果を示す。
元素分析値:C, 69.38; H, 4.16;S, 26.46 (実測値) C, 69.22; H, 4.26; S, 26.52(計算値)
分解点:406℃
〈スキーム12〉に従って前駆体Precursor2から特定化合物OSC2の合成を行なった。
得られた特定化合物OSC2の分析結果を示す。
元素分析値:C, 81.11; H, 5.26;S, 13.51 (実測値) C, 81.31; H, 5.12; S, 13.57(計算値)
分解点:382℃
スキーム13に従って前駆体Precursor3から特定化合物OSC3の合成を行なった。
得られた特定化合物OSC3の分析結果を示す。
元素分析値:C, 66.43; H, 3.92; S, 29.45 (実測値) C, 66.63; H, 3.73; S, 29.65 (計算値)
分解点:402 ℃
スキーム14に従って下記特定化合物OSC4の合成を行なった。
最後に、得られた固体を温度勾配昇華法(ソース温度:340℃, 圧力:〜10‐4Pa)により精製することで、黄色の結晶として特定化合物OSC4を得た。(収量120 mg、 収率12.0 %)
得られた特定化合物OSC4の分析結果を示す。
元素分析値:C, 81.41; H, 5.76;S, 12.51 (実測値) C, 81.56; H, 5.64; S, 12.81 (計算値)
分解点:414℃
以上の分析結果から、合成したものが、特定化合物OSC4の構造と矛盾がないことを確認した。
スキーム15に従って下記特定化合物OSC5の合成を行なった。
さらにカラム精製(溶離液:ジクロロメタン/ヘキサン(1/3)を行ない、無色の固体 (収量380 mg)を得た。この固体を酢酸エチル溶液から再結晶することにより、淡黄色の結晶を得た(収量300 mg)。
最後に、得られた結晶を温度勾配昇華法(ソース温度:185℃, 圧力:〜10‐4Pa)により精製することで、黄色の結晶として特定化合物OSC5を得た。(収量100 mg、 収率15.6 %)
得られた特定化合物OSC5の分析結果を示す。
質量分析:GC-MS m/z = 320 (M+)
元素分析値:C, 81.41; H, 5.76;S, 12.51 (実測値) C, 81.56; H, 5.64; S, 12.81 (計算値)
融点:246.0―246.6 ℃
スキーム16に従って前駆体Precursor4から下記特定化合物OSC1の合成を行なった。
得られた特定化合物OSC1の分析結果を示す。
元素分析値:C, 69.28; H, 4.39;S, 26.42 (実測値) C, 69.22; H, 4.26; S, 26.52(計算値)
分解点:407 ℃
実施例1で合成した前駆体Precursor1(5mg)を、シリコンウェハを介して200℃および330℃のホットプレート上でそれぞれ30分間加熱し、サンプル調整を行なった。上記サンプルおよび加熱前の前駆体、加えて脱離反応によって発生する、2―ブチルオクタン酸のIRスペクトル(KBr法、パーキンエルマー社製)を測定した。その結果を、図1に示す。
200℃の加熱により、―O―の吸収(1166 cm−1)が消失し、C=Oの吸収のシフト(1730cm-1から1707 cm−1への)が見られた。このことより、前駆体分子中より2−ブチルオクタン酸が遊離していることが分かる。
また、330℃の加熱により、2−ブチルオクタン酸由来のC=Oの吸収(1707 cm−1)が消失し、芳香族とオレフィンのピークのみとなった。
また、前駆体Precursor1の熱分解挙動を、TG-DTA(サンプル量5mg、リファレンスAl2O3 5mg、窒素雰囲気下、SII社製)を用いて観察した。その結果を図2に示す。
290〜330℃にかけて、2-ブチルオクタン酸2分子に相当する割合の重量減少が確認された。これにより、前駆体Precursor1から特定化合物OSC1への変換が確認された。
実施例2で合成した前駆体Precursor2(5mg)を、シリコンウェハを介して任意の温度(150, 160, 170, 180, 200, 220, 270, 330℃)に設定したホットプレート上でそれぞれ30分間加熱し、サンプル調整を行なった。
上記サンプルおよび加熱前の前駆体、加えて脱離反応によって発生する、2―ブチルオクタン酸のIRスペクトル(KBr法、パーキンエルマー社製)を測定した。その結果を、図3に示す。
図3において、180℃を閾値として―O―の吸収(1166 cm−1)が消失し、C=Oの吸収のシフト(1730cm-1から1707 cm−1への)が見られた。
これにより、TG‐DTAの重量減少量のみだけでは見積りが難しかった前駆体分子から2−ブチルオクタン酸が遊離する温度を求めることができた。
また末端オレフィンのピーク(800cm‐1付近)が2つ存在(cis体およびtrans体)することも分かる。
また、330℃の加熱により、2−ブチルオクタン酸由来のC=Oの吸収(1707 cm−1)が消失し、オレフィンのピークが1つとなった。
これにより、前駆体Precursor2から特定化合物OSC2への変換が確認された。
実施例1で合成した前駆体Precursor1を、クロロホルム、トルエン、THFにそれぞれ1.0, 5.0 wt%の濃度になるように溶解させ、フィルターに通し、溶液を調製した。溶媒・濃度に関わらず、溶液を室温で一晩放置した後においても、溶質の析出は全く見られなかった。
次に、それぞれの溶液から、スピンコート(回転条件:500回転/分,5秒 +3000回転/分, 30秒により、シリコン基板上に製膜を行なった。
いずれの溶液を用いても、平滑で均質な連続膜が得られた。膜の観察は、光学顕微鏡およびAFM(SII製、コンタクトモード)によって行なった。
また、膜の耐溶剤性試験として製膜した膜を、大気下のホットプレート上で200℃で30分間アニールした後、ベンコットン(M−3、 旭化成せんい社製)にクロロホルム、トルエン、THFを染みこませたもので、往復一回擦った後の膜の剥離状態を観察したところ、いずれの溶媒においても膜は溶解、剥離することなく、製膜時の状態を維持していた。
また、アニール処理前後の偏光顕微鏡像を図4に示した。アニール前は一面が暗い像が得られ、等方的な膜であった。従って、アニール処理を施す前の膜は非晶質であることが分かる。
一方アニール処理後は、色のついたドメインが複数観測された。従って、アニール処理を施した膜は結晶質であることが分かる。これは、前駆体が、溶解性基を脱離することにより、本発明の特定化合物に変換され、結晶質になったためである。
実施例13の前駆体Precursor1を、実施例2で合成した前駆体Precursor2に変えた以外は以下同様にして溶液の調整、製膜化を行ない、膜の耐溶剤性試験を行なった。
実施例13の前駆体Precursor1を、実施例3で合成した前駆体Precursor3に変えた以外は以下同様にして溶液の調整、製膜化を行ない、膜の耐溶剤性試験を行なった。
実施例13の前駆体Precursor1を、実施例4で合成した前駆体Precursor4に変えた以外は以下同様にして溶液の調整、製膜化を行ない、膜の耐溶剤性試験を行なった。
比較例1として、実施例13の前駆体Precursor1を2,7―ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3, 2‐b][1]ベンゾチオフェンに変えた以外は以下同様にして溶液の調整、製膜化を行ない、膜の耐溶剤性試験を行った。
比較例1として、実施例13の前駆体Precursor1を2,7―ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3, 2‐b] [1]ベンゾチオフェンに変えた以外は以下同様にして溶液の調整、製膜化を行い、膜の耐溶剤性試験を行った。
実施例13乃至16および比較例1、2の結果を表1に示す。
実施例5で作製した作製した特定化合物OSC1を用いて、以下の要領で、図5‐(A)の構造の電界効果型トランジスタを作製した。
濃硫酸に24時間浸漬洗浄した膜厚300nmの熱酸化膜を有するN型のシリコン基板をフェニルトリクロロシランのトルエン溶液 (濃度1 mM、液量8mL)に浸漬し、容器を密封し、容器に超音波を30分当てたのち、基板をトルエン、アセトンで超音波洗浄することでシリコン酸化膜表面を単分子膜処理した。
上記で作製した基板に対して、実施例5で得られた特定化合物OSC1を真空蒸着(背圧〜10‐4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、半導体膜厚:60nm)することにより、有機半導体層を形成した。
この有機半導体層上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧 〜10‐4Pa、 蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅2mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製 半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。有機薄膜トランジスタの電流−電圧(I―V)特性を図6に示す。この飽和領域から、電界効果移動度を求めた。
なお、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
実施例17の特定化合物OSC1を実施例6で得られた特定化合物OSC2に変えた以外は同様にして、電界効果型トランジスタを作製し、作製した素子の電気特性を評価した。
その結果、いずれも実施例17と同様のp型の半導体特性を示した。
また、作製した上記化合物の蒸着膜の面外および面内のX線回折パターンを図8および図9に示す。
実施例17の特定化合物OSC1を実施例7で得られた特定化合物OSC3に変えた以外は同様にして、電界効果型トランジスタを作製し、作製した素子の電気特性を評価した。
その結果、いずれも実施例17と同様のp型の半導体特性を示した。
実施例17の特定化合物OSC1を実施例8で得られた特定化合物OSC4に変えた以外は同様にして、電界効果型トランジスタを作製し、作製した素子の電気特性を評価した。
その結果、いずれも実施例17と同様のp型の半導体特性を示した。
実施例17の特定化合物OSC1を実施例9で得られた特定化合物OSC5に変えた以外は同様にして、電界効果型トランジスタを作製し、作製した素子の電気特性を評価した。
その結果、いずれも実施例17と同様のp型の半導体特性を示した。
実施例1で合成した前駆体Precursor1を用いて、以下の要領で、図5−(D)の構造の電界効果型トランジスタを作製した。
実施17に記載の方法で単分子膜処理を施したシリコン基板上に、前駆体Precursor1のクロロホルム溶液(0.2t%)を滴下し、クロロホルムが蒸発することで、厚さ100nmの連続した前駆体膜が形成された。
この基板を200℃ホットプレート上で加熱することで、前駆体膜を有機半導体膜へと変換した。
この有機半導体膜上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10‐4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することによりソース、ドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅2mm)。電極とは異なる部位の有機半導体層およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性をAgilent社製 半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。有機薄膜トランジスタの電流―電圧(I―V)特性を図7に示す。この飽和領域から、電界効果移動度を求めた。
なお、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
実施例22の前駆体Precursor1を実施例2で得られた前駆体Precursor2に変えた以外は同様にして、電界効果型トランジスタを作製し、作製した素子の電気特性を評価した。
その結果、いずれも実施例22と同様のp型の半導体特性を示した。
実施例22の前駆体Precursor1を実施例3で得られた前駆体Precursor3に変えた以外は同様にして、電界効果型トランジスタを作製し、作製した素子の電気特性を評価した。
その結果、いずれも実施例22と同様のp型の半導体特性を示した。
実施例22の前駆体Precursor1を実施例4で得られた前駆体Precursor4に変えた以外は同様にして、電界効果型トランジスタを作製し、作製した素子の電気特性を評価した。
その結果、いずれも実施例22と同様のp型の半導体特性を示した。
実施例22乃至25の電界効果移動度および電流オンオフ比を表3に示す。
また、本発明の化合物を用いた有機トランジスタは、高い移動度、大きな電流オンオフ比を有しているため、液晶表示素子、EL発光素子、電子ペーパー、各種センサー、RFIDs(radio frequency identification)などに応用できる可能性がある。
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁膜
Claims (6)
- 一般式(I)で表される[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物。
(ここで、X、Yは直鎖または分岐の脂肪族アルケニル基および脂環式のアルケニル基を部分構造として有する官能基であり、X、Yは同一であってもそれぞれ異なっていても良いが、前記直鎖または分岐の脂肪族アルケニル基および脂環式のアルケニル基を部分構造として有する官能基は、下記一般式(II)に記載される構造である。)
(ここでArはベンゼン、チオフェン、ナフタレン、チエノチオフェンで構成される群から選択される二価の官能基であり、nは0以上の整数であり、nが2以上の場合、Arはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R1乃至R2は水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖または分岐の脂肪族アルキル基及び脂環式のアルキル基から選択される基であり、R 1 R 2 のうちいずれか一方は脂肪族アルキル基または脂環式のアルキル基である。) - 前記nが0〜2の範囲である請求項1に記載の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物。
- 脱離性基を有する[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物前駆体から変換させる請求項1または2に記載の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物の製造方法であって、前記脱離性基が、下記一般式(V)乃至(VII)で表わされる部分構造を有する基から選択されるものであることを特徴とする[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物の製造方法。
(ここで、nは0以上の整数であり、Arは置換基を有していても良い二価の基であり、nが2以上の整数の場合、Arはそれぞれ同一であっても異なっていても良く、Zは酸素原子または硫黄原子であり、R1乃至R3は水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖または分岐の脂肪族アルキル基及び脂環式のアルキル基、R4は水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1以上の脂肪族アルキル基および脂環式のアルキル基、炭素数1以上の直鎖または分岐のアルコキシル基、炭素数1以上の直鎖または分岐のチオアルコキシル基から選択される基であり、R5は炭素数1以上の直鎖または分岐のアルコキシル基である。) - 請求項1または2に記載の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物を含有することを特徴とする有機電子デバイス。
- 請求項3に記載の製造法により得られた[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン化合物を含有することを特徴とする請求項4に記載の有機電子デバイス。
- 有機電子デバイスが有機薄膜トランジスタである請求項4又は5に記載の有機電子デバイス。
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