JP5501151B2 - 黒色インクジェット用記録シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット印字適性に優れたインクジェット用記録シートに関し、特に白色インク対応に特化した黒色インクジェット用記録シートの製造方法及び黒色インクジェット用記録シートに関する。すなわち、黒色の色相を有し、記録シートの表面がマット調で光の反射が少ないため、記録シートの表面と白色の印字部との明度差が大きく、印字部が映えるという特徴をもつ黒色インクジェット用記録シートを経済的に製造する方法及び黒色インクジェット用記録シートに関する。
近年、インクジェットプリンター及びプロッターの進歩によってフルカラーで、しかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によってインクの微小液滴を飛翔させて、紙などの記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行うものである。インクジェットプリンター及びプロッターは、コンピューターによって作成した文字、各種図形などの画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において近年急速に普及している。特に、多色インクジェット方式によって形成されるカラー画像は、製版方式による多色印刷又はカラー写真方式による印画と比較しても、遜色無い記録を得ることが可能であり、更に作成部数が少ない用途においては、他の印刷技術又は写真技術よりも安価にカラー画像を得られることから広く応用されつつある。
インクジェット記録用紙には、インク吸収性、色彩再現性などが要求され、顔料、バインダー及び各種添加剤を含有するインク受容層が形成されている。インク受容層に使用する顔料、バインダー及び各種添加剤には、各種要求を満たすための工夫がなされている。顔料としては、インク吸収性を得るために多孔性の合成顔料を使用することが多い。さらに、インクジェット画像の色彩性を鮮明にするために、白色度を上げたり、微妙な色度の調整をしたりするのが通常である。顔料には、例えば、多孔性合成非晶質シリカがインクジェットインクの吸収性に優れるため利用できる。また、バインダーは、顔料を繋ぎ留めることを目的として使用される。バインダーには、各種水系のバインダーが利用され、特に、インクジェットインクの吸収性に優れるバインダーが利用されてきた。
プロッター分野では、特色インク及び不透明性の高い顔料インクが開発されてきており、記録媒体の色は必ずしも白色に準じたものである必要がなくなってきた。むしろ、商用広告など芸術性を志向する印刷物は、特色インク、白色顔料インクのような不透明度の高いインクが印字されるケースが多く、その場合は、濃い色調の記録媒体が必要になる。不透明度の高い白色インクとしては、例えば、ミマキ社製、JV‐33用白色インクが挙げられる。また、特に、明度の高いインクが映える黒色を基調としたインクジェット記録媒体が有益になる事例もある。黒色を基調としたインクジェット記録媒体は、ネガ調の立体反転された独特の画調を経済的に得ることもできる。例えば、モノトーンの代表である水墨画において、白黒が逆転しているような新規な画風への展開を容易に行える媒体となり得る。さらに、黒色を基調としたインクジェット記録媒体は、印字されるワンポイントのロゴ、各種イラスト、文字などが白色を基調とした媒体よりも優れた誘目性を有するケースがあり、広告用又は芸術分野においても利用価値は極めて高い。また、稀少価値もある。従来は、黒色を基調とし、白色インクでのモノトーン画調の印字をする場合には、着色されてない白色を基調とするインクジェット記録媒体に黒色インクを多量に飛翔していたため、黒色インクが予想以上に消費され、印刷関係者又はパーソナルユーザーにとっては、不経済であった。
印刷物全体から発せられる心理的に影響を及ぼす情報として、印刷物の画線部のほかに、印刷物の地色、印刷物表面の光沢度などが挙げられるが、記録媒体が白色であると、主に画線部だけの情報伝達に留まってしまい、文字及び画像以外の伝達情報が有効とはなっていない。
前記背景があるものの、色味付けされたインクジェット用記録シートはあまり商用としては存在していない。インク受容層の色調を調整する試みとして、インク受容層に着色顔料を添加する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2001−277702号公報
白色インクで印刷する場合、印刷される媒体の表面の白色度がある閾値以下でないと、前記のような不透明度の高い白色インクの性能が引き出せないばかりか、その他の各種インクの誘目性を際立たせる効果が低くなってしまう。特許文献1をはじめとするインク受容層の色調を調整する試みでは、着色剤の添加量は少量であり、白色度をある閾値以下にすることができず、白色インクでの印刷には適さない。
印刷される媒体の表面の白色度をある閾値以下にするには、インクジェット記録媒体においては、インク受容層を着色することによって実現可能である。しかし、前述のとおり、インク受容層には、顔料、バインダー及び各種添加剤が含有されている。特に、バインダーの種類、総量、及び複数使用の場合の配合比率は、適宜適切に選択されなければならず、目的に応じて変わってくるものである。さらに、塗料の中に、凝集を起こさせるような薬品、塗工層強度を低下させるような薬品が使用される場合には、適正粘度を保持でき、かつ、塗工層強度を十分維持できるようなバインダーの添加総量を適切に選択する必要がある。また、衝撃を緩衝するようなバインダーを複数種使用する場合には、配合比率の選定及びバインダーの添加総量を適切に選択する必要がある。そして、バインダーの添加総量が多過ぎる場合には、インク吸収性に劣るようになる。反対に、少な過ぎる場合には、インク吸収性は良好なものの、塗工層強度が低くなり、塗工層の脱落又は磨耗が生じるようになり、印字後の品質及び印字品の耐久性に懸念が出てくる。先行技術として、インク受容層に多量の着色顔料を含有させた場合のバインダーの種類、配合比率及び添加総量の選択が明記されているものが無く、こうした色付きのインクジェット記録用紙を製造しようとしても、試行錯誤せざるを得ないのが現状である。
インク受容層に色味付けしようとすると、着色顔料の種類及び添加量によっては、塗料調製条件を適切に管理しなければ、塗料の凝集による色むらが発生しやすくなる。また、着色顔料は、バインダーの結合力を阻害するため、塗工層強度が極端に低くなり、商品価値を付与させることが困難である。特に黒色顔料による塗工層の色味付けには、多量の黒色顔料を使用するため、均質な塗工面の品質を有する色むらのないインクジェット記録用紙の製造は困難である。従来、塗料の凝集を適正に制御し、塗工層強度の低下が無いような製造方法は確立していなかった。特許文献1にもこうした問題の記載が無く、このような技術的な困難さが推して測られる。
本発明の目的は、インクジェット記録面におけるインクジェットプリンターでの印字の滲みが無く、記録面に設けられたインク受容層の強度も実用に耐えるものであり、表面の白色度が低く、特に白色インクの印字が映えるような色むらの無い無彩色系である黒色インクジェット用記録シートを提供することである。また、塗料調製において凝集・増粘が無く、経済的に黒色インクジェット用記録シートを製造する方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意調査、検討及び研究の結果、木材繊維を主体とした白色の支持体の少なくとも片面に、顔料とバインダーとを主成分とするインク受容層を設けたインクジェット記録面において、複数の顔料を用いて色調調整されても構わないが、主に黒色顔料で色調調整したことを特徴とする黒色インクジェット用記録シートを完成するに至った。色調の度合いに関して、白色度、明度及び色度の範囲を所定条件に設定することで、白色インクの印字が冴える記録シートが完成した。簡単には、目視で感じる白さの程度がある閾値以下で黒さの濃度が高く、白色インクの白さが顕著に感じる条件である。また、明度及び色度の範囲は、有彩色を感じない条件であり、無彩色の黒さを目視で感じることができることに伴い、白色の印字が冴え、その印字品位、誘目性が有意となるような効果が生じる。この黒さの濃度が不足したり、色調に有彩色の影響が大きくなったりすると、白色の印字が際立たなくなってしまう。そして、インク受容層の塗料に、顔料であるインク吸収剤として多孔性合成シリカと、バインダーとして所定量のポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル系樹脂と、白色インク対応を主目的とする記録シートの黒色の色調調整用として黒系着色顔料と、を含ませることを必須とする。バインダーの添加量を適正範囲内に設定することで、インク受容層の強度及びインク吸収性を維持できる。
また、インク受容層用塗料の調製においては、各薬品の添加、混合順序及び薬品投入のタイミングを所定条件に規定することで、塗料の凝集を抑制し、塗工層強度の確保、印字品質を維持した色むらの無い黒色インクジェット用記録シートを効率良く製造することができ、前記課題を達成するに至った。
本発明に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法は、顔料として合成シリカと、バインダーとしてポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル系樹脂と、インク定着剤としてカチオン性樹脂と、着色剤としてノニオン性の黒系着色顔料と、を必須成分として含有する塗料を、木材繊維を主体とした支持体の少なくとも片面に塗工して1層以上のインク受容層を設けた黒色インクジェット用記録シートの製造方法であって、前記インク受容層を形成するための塗料は、前記バインダーを前記合成シリカ100質量部に対して40〜60質量部含有し、かつ、前記黒系着色顔料を前記塗料の全固形分のうち3.5〜5.5質量%含有し、前記合成シリカは、水に分散されたシリカスラリーとし、該シリカスラリーに、前記必須成分のうち、前記ポリビニルアルコールを少なくとも前記エチレン酢酸ビニル系樹脂及び前記カチオン性樹脂より先に添加して混合し、前記カチオン性樹脂の添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、40L/分未満であることを特徴とする。
本発明に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、前記塗料は、前記シリカスラリーへ前記ポリビニルアルコールを添加して完全に混合した第一次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.1と数1から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.1との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであり、かつ、前記第一次混合液へ前記エチレン酢酸ビニル系樹脂又は前記カチオン性樹脂のいずれか一方を添加して完全に混合した第二次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.2と数2から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.2との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであり、かつ、前記第二次混合液へ前記エチレン酢酸ビニル系樹脂又は前記カチオン性樹脂のいずれか他方を添加して完全に混合した第三次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.3と数3から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.3との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであることが好ましい。
(数1)ηaverage calc.1=(η×V)/V
(数2)ηaverage calc.2={(η×V)+(η×V)}/(V+V
(数3)ηaverage calc.3={(η×V)+(η×V)+(η×V)}/(V+V+V
数1、数2及び数3において、η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定したポリビニルアルコール10%水溶液の単独での粘度であり、V[L]はポリビニルアルコール水溶液の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の添加量である。塗料の状態を、凝集、増粘などのない良好な状態とすることができ、結果として、塗工層強度を確保し、色むらの無い塗工面とすることができる。
本発明に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、前記塗料の調製方式は、回分式であることが好ましい。各工程では、混合が完全に達成されているため、凝集しやすい薬品同士の接触を最小とすることができる。
本発明に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、前記カチオン性樹脂の添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、5L/分を超えることが好ましい。凝集を分散することができ、塗料の状態を良好な状態とすることができる。また、生産速度を落とすことなく、不要なエネルギーの消費を抑えることができるため、より経済的に製造することができる。
本発明に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、前記ポリビニルアルコールの添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、20L/分を超え、前記エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、20L/分を超えることが好ましい。生産速度を落とすことなく、不要なエネルギーの消費を抑えることができるため、より経済的に製造することができる。
本発明は、インクジェット記録面におけるインクジェットプリンターでの印字の滲みが無く、記録面に設けたインク受容層の強度も実用に耐えるものであり、表面の白色度が低く、特に白色インクの印字が映えるような色むらの無い無彩色系である黒色インクジェット用記録シートを提供することができる。また、塗料調製において凝集・増粘が無く、経済的に黒色インクジェット用記録シートを製造する方法を提供することである。
インク受容層用塗料の調製フローのモデルを示す。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートは、木材繊維を主体とした支持体の少なくとも片面に、顔料とバインダーと着色剤とを含有する1層以上のインク受容層を設けた黒色インクジェット用記録シートであって、前記インク受容層は、前記顔料として合成シリカを含有し、かつ、前記バインダーとしてポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル系樹脂とを含有し、かつ、前記着色剤としてノニオン性の着色顔料だけを含有し、該着色顔料は、黒系着色顔料を含有し、前記インク受容層は、前記黒系着色顔料を前記インク受容層の全固形分に対して、3.5〜5.5質量%含有し、かつ、前記バインダーを、前記合成シリカ100質量部に対して40〜60質量部含有し、前記インク受容層の表面は、(I)(1)JIS P 8150:2004「紙及び板紙−色(C/2°)の測定方法−拡散照明法」で規定する明度指数(L)が20≦L≦28、色度指数(a、b)が−0.4≦a≦0.2、−0.7≦b≦0.3の範囲内である、(2)商工会議所色彩体系である「商工会議所カラーコーディネーション・チャート:The Chamber of Commerce and Industry Color Coordination Chart(CCIC)」におけるBk(20)Black又はBk(10)Blackに相当する視感色度を有する、の(1)又は(2)の少なくともいずれかを満たし、かつ、(II)JIS P 8148:2001「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」で規定するISO白色度が10%以下であり、かつ、(III)10cm×10cm角における前記明度指数(L)、前記知覚色度指数(a、b)から算出する方法を用いて求めた最大色差ΔEが0.5以下である領域を有する。以下、インク受容層が設けられた面をインクジェット記録面と、インク受容層が設けられた面と反対の面を裏面ということもある。
インク受容層は、着色剤としてノニオン性の着色顔料だけを含有する。着色顔料は黒系着色顔料を含有するので、インクジェット記録面を黒色に着色する。インク受容層を形成するための塗料(以降、インク受容層用塗料と称す。)には、インク定着剤などのイオン性が強い助剤を使用するので、イオン性を有する着色顔料は凝集しやすく、色むらの原因となる。
インクジェット記録面の色調は、黒系着色顔料の含有量によって調整することができる。本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートは、インク受容層に黒系着色顔料をインク受容層の全固形分に対して、3.5〜5.5質量%含有する。より好ましくは、4.5〜5.5質量%である。この範囲にすることによって、目視で感じる黒さの濃度を高くすることができるため、従来、使用法が限定されていた白色インクの印字適性を得ることができる。3.5質量%未満では、黒さの濃度が不足し、白色などの明度の高いインクによる印字部との明度差が小さくなり、印字部が際立たない。5.5質量%を超えると、バインダーの結合力を阻害し、塗工層の強度が低下する。また、黒系着色顔料が過剰となり、不経済である。
黒系着色顔料は、単独で黒色を呈する黒色着色顔料だけを使用してもよいが、黒色着色顔料を主体とし、更に色調を微調整する目的で、有彩色着色顔料を適宜添加することができる。有彩色着色顔料を添加する場合には、インク受容層中の着色顔料のうち、有彩色着色顔料の割合が、0.17質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.10質量%以下である。色調を微調整することができ、色のバリエーションを豊富にし、かつ、有彩色を感じない色調に調整できるため、白色インクの印字が映える用紙を得ることができる。
黒色着色顔料は、例えば、チタンブラック、カーボンブラック、鉄黒が挙げられる。有彩色着色顔料は、ノニオン性であれば、商用公知のものが使用可能である。有彩色着色顔料の色は、特に限定されないが、例えば、青、紫である。青色着色顔料は、例えば、コバルトブルー、アルカリブルー、フタロシアニンブルーが挙げられる。紫色着色顔料は、例えば、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレットが挙げられる。
インク受容層の表面は、JIS P 8150:2004「紙及び板紙−色(C/2°)の測定方法−拡散照明法」で規定する明度指数(L)が20≦L≦28、色度指数(a、b)が−0.4≦a≦0.2、−0.7≦b≦0.3の範囲内にある。明度指数(L)は、より好ましくは、22≦L≦26であり、色度指数(a、b)は、より好ましくは、−0.3≦a≦0.1、−0.6≦b≦0.2である。この範囲とすることで、インクジェット記録面を目視で感じる無彩色で、かつ、黒さの濃度を高くすることができ、白色などの明度の高いインクによる印字部を際立たせることができる。20>Lでは、下地が黒くなり過ぎ、隠蔽性が乏しい白色インクでは、白色印字が映えない。L>28では、目視で感じる黒さの濃度が低くなり、白色印字が映えない。−0.4>a及びa>0.2では、有彩色を感じるようになり、白色印字が映えない。−0.7>b及びb>0.3では、有彩色を感じるようになり、白色印字が映えない。
インク受容層の表面は、商工会議所色彩体系である「商工会議所カラーコーディネーション・チャート:The Chamber of Commerce and Industry Color Coordination Chart(CCIC)」におけるBk(20)Black又はBk(10)Blackに相当する視感色度を有する。CCICは、トーンと明度との組合せで色を表現したものであり、色を直感的に理解するのに適している。インク受容層の表面を前記の視感色度とすることで、目視で感じる白さの程度が低く、黒さの濃度を高くすることができ、白色などの明度の高いインクによる印字部を際立たせることができる。
本実施形態では、(1)JIS P 8150:2004「紙及び板紙−色(C/2°)の測定方法−拡散照明法」で規定する明度指数(L)及び色度指数(a、b)を前記の範囲とすること若しくは(2)商工会議所色彩体系である「商工会議所カラーコーディネーション・チャート:The Chamber of Commerce and Industry Color Coordination Chart(CCIC)」を前記の範囲とすること、の(1)又は(2)のうちいずれか一方を満たせばよい。(1)及び(2)は、目視においてほぼ同等である。
インク受容層の表面は、JIS P 8148:2001「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」で規定するISO白色度が10%以下である。より好ましくは8%以下である。10%を超えると、黒さの濃度が不足し、白色などの明度の高いインクによる印字部との明度差が小さくなり、印字部を際立たせることができない。
インク受容層の表面は、JIS P 8150:2004で規定する明度指数(L)、前記知覚色度指数(a、b)から算出する方法を用いて求める10cm×10cm角における最大色差ΔEが0.5以下である領域を有する。より好ましくは、0.4以下である。最大色差ΔEが0.5を超えると、色むら感が大きくなり、商品価値が低下する。評価するシートにおいて、インクジェット記録面の任意のどの領域を10cm×10cm角に設定しても、最大色差ΔEが0.5以下であることが、色むらが少ない均一な色調を有する記録シートとすることができる点で、より好ましい。なお、ΔEは、任意に設定した10cm×10cm角における任意のn箇所で測定した明度指数(L)及び知覚色度指数(a、b)の各々の最大値と最小値との差を用いて数4から求めることができる。具体的には、例えば、10cm×10cm角を2cm間隔の格子状に分割し、縦横の接点上の36箇所を測定して、明度指数(L)及び知覚色度指数(a、b)の各々の最大値と最小値との差を用いて数4から求める方法である。
Figure 0005501151
なお、数4において、インクジェット記録面の10cm×10cm角中における明度指数(L)及び色度指数(a、b)の各々の最大値をLx、ax、bxと表記し、各々の最小値をL、a、bと表記する。また、本実施形態において、測定機器は、分光式白色度計・色差計(商品名:SPECTRO COLOR METER、型式:MODEL PF−10、日本電色工業社製)を用いて測定した。
塗工支持体原紙(以降、原紙という。)に用いる木材繊維としては、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)などの化学パルプ、グランドパルプ、加圧式砕木パルプ、リファイナー砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミメカニカルパルプ、ケミグランドパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプなどの古紙パルプなどの木材パルプを例示できる。フレッシュなさらしパルプの場合は、環境を考慮し、ECFパルプ又はTCFパルプが望ましい。白色度などの品質面を考慮すると、ECFパルプが最適である。
前記パルプは、適切な叩解度を有するパルプスラリーとする。各層のパルプの叩解度は、本実施形態では、限定されるものではないが、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、350〜600mlCSFとすることが好ましい。より好ましくは、400〜570mlCSFである。350mlCSF未満では、パルプの繊維間結合が強くなるため空隙率が減少し、透気抵抗度の増加及びインク吸収性の低下が生じる傾向がある。600mlCSFを超えると、支持体の強度が低下し、ギロチン断裁時に紙粉が発生しやすくなる。また、繊維の脱落によるパイリングの発生、インク転写時の紙剥けなど印刷トラブルが発生するおそれがある。
また、前記パルプスラリーには、必要に応じて従来公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤などの各種抄紙用薬品を1種類以上適宜用いることができる。パルプスラリーの調製方法、配合、各抄紙薬品の添加方法については、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されない。調製されたパルプスラリーは、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機にて紙匹を形成し、その後乾燥させて原紙を得ることができる。特に、インク吸収性に優れた原紙を使用することが望ましい。
原紙構造としては、単層又は多層のどちらでもよい。適宜目的に応じて設計変更が可能である。多層である場合には、表裏で非対称構造とすることも可能である。特に、3層以上で構成する場合には、中層に古紙パルプを使用することで、古紙のリサイクルによる環境対応及びコストダウンを可能にすることができる。また、不透明度改善のため、中層を各種顔料・染料で着色するということも製造上可能である。また、各層の紙力剤、填料の添加率を調整することで、後加工適性も自由にコントロールできるメリットがある。
原紙の両面には、強度の付与などを目的として、サイズプレス、ゲートロール、サイザーなどの装置を用いて、サイズ剤として澱粉、ポリアクリルアマイド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどのいずれか一つ又は複数を含有するサイズ液を塗布して、支持体としてもよい。
支持体の繊維としては、木材繊維を主体とする。支持体の乾燥質量のうち、繊維中の木材繊維の占める割合が、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは70質量%以上である。より好ましくは、90質量%以上である。最も好ましくは、繊維として木材繊維だけ(100質量%)とすることである。
インク受容層は、高いインク吸収性から、顔料として合成シリカを含有する。合成シリカを単独で含有させてもよいし、その他の顔料と併用して、2種類以上をブレンドして使用してもよい。併用可能なその他の顔料として、焼成クレー、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、天然ゼオライト、合成ゼオライト、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、各種層間化合物、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイトなどの白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、各種マイクロカプセルなどの有機顔料を例示できる。その他、多元的な機能を所持させる目的で、顔料粒子をシード粒子にし、水系析出法又は水熱合成法による異種材料の複合粒子を形成させた材料、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、MOCVD(Metal Organic CVD)、MBE法(Molecular Beam Epitaxy)、各種イオン交換法などの表面処理によって得られた異種金属酸化物の複合材料、ゾルゲル法などで異種金属酸化物複合体をビルドアップさせた材料、無機顔料表面に各種重合反応によって有機物を化学的に結合させた材料、物理的に混和させた材料などのハイブリッド型顔料粒子を適宜使用しても構わない。DNA(デオキシリボ核酸)が有する製造プログラミングをもって形成される生体セラミックス又はスケーリングによって蓄積するような無機物質を主成分とする材料を適宜使用しても構わない。また、好適に使用される合成シリカでも、プラズマエッチングなどの物理的手法を用いて表面構造だけを変質させた材料、メカノケミカル反応を利用し表面改質された材料(水系で水以外の物質が無い場合には、合成シリカ表面の水酸基の数が多くなる。)、カップリング剤、各種熱処理によって表面改質された材料(この場合には、合成シリカ表面の水酸基の数が少なくなる。)などを目的に応じて使用しても構わない。また、前記に示した各種鉱物は、天然又は合成の表記がなくとも、所望する性能が満たされるならば、いずれでもよく、合成である場合は、合成法も特に制限されるものではない。
本実施形態では、インク受容層には、インクジェットインクの吸収性、親和性などの点から、バインダーとしてポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル系樹脂とを含有する。ポリビニルアルコールは、変性ポリビニルアルコールを包含する。ここで、ポリビニルアルコールだけであると、印字濃度が上がり、印字品質は良好となるが、湿度条件によっては、インク受容層の変質が起こり、それに伴い、耐水性が劣るようになる。一方、エチレン酢酸ビニル系樹脂だけであると、耐水性は十分であるものの印字濃度が上がらず、印字品質を確保できない。したがって、バインダーの種類としては、ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル系樹脂との併用が望ましい。さらに、これらの分子鎖中に架橋性の官能基を付加することも可能である。
ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル系樹脂との配合割合は、合成シリカなどの無機白色顔料を100質量部とした場合、ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル系樹脂の質量部の比率は15:35〜10:30とすることが好ましい。より好ましくは、14:34〜12:32である。ポリビニルアルコールの比率がこの範囲より高いと、湿度条件によっては耐水性が劣る場合がある。反対に低いと、印字濃度が上がらず、所望の印字品質を確保できない場合がある。
インク受容層には、更に、その他のバインダーを併用することができる。併用可能なバインダーとしては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、澱粉、変性澱粉(物理的構造変性のバイオラテックスを含む。)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エチル、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペンなどの水溶性バインダー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−P−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体などのエマルジョン型バインダー、又はエマルジョン型であるウレタン樹脂バインダーを例示することができる。これらのバインダーの重合度、ケン化度、Tg(ガラス転移温度)、MFT(最低造膜温度)などは、限定されない。また、前記のバインダーは、2種類以上ブレンドして使用してもよいし、各種ポリマー、モノマーを物理的に混ぜるだけでなく、化学的に組み合わせて使用してもよい。また、官能基の修飾のほかに、電磁波(放射線、光を含む。)、電気エネルギー、熱エネルギー、機械的エネルギー(音波を含む。)、磁気、生物などによる改質がなされても構わない。さらに、目的に応じて、各種エネルギーに応答するようなエンジニアリングポリマー、生体高分子、イオン交換樹脂などを適宜適用しても構わない。そして、前記に示したバインダーは、合成法も特に制限されるものではない。
その他のバインダーをポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル系樹脂と併用する場合には、ポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル系樹脂の合計含有量は、インク受容層中に含有する全バインダーの合計含有量のうち、90質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは、100質量%である。
インク受容層は、バインダーを、合成シリカ100質量部に対して40〜60質量部含有する。より好ましくは、45〜55質量部である。40質量部未満では、塗工層の強度が弱くなり、塗工層の脱落又は磨耗が生じ、印字後の品質及び印字品の耐久性に懸念が出る。60質量部を超えると、インク吸収性に劣る。
本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートでは、インク受容層は、インクジェットインクの定着性及び発色性を向上させるために、更にインク定着剤としてカチオン性樹脂を含有することが好ましい。カチオン性樹脂としては、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合物、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、カチオン変性ポリビニルアルコール、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型化合物、その他、第4級アンモニウム塩類、ポリアミンなどを例示できる。インク定着剤は、所望する性能を得るために、2種類以上ブレンドしてもよい。そして、化学的組成が同一のものでも分子量の異なるものをブレンドしても構わない。また、物理的に混ぜるだけでなく、共重合の構成体の組合せを変化させながら、化学的に組み合わせて使用してもよい。さらに、インクジェットインクの耐水性強化を目的として、カチオン化度を上げたもの、耐光性強化を目的としたカチオン化度を減らしたものなどを適宜使用しても構わない。
インク受容層には、顔料、バインダー及び着色剤のほかに、更に、必要に応じて分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、粘度調整剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤、防炎剤、忌避剤、防錆剤などの助剤を、本発明の効果を損なわない限り、含有させることができる。さらに、医薬用外の使用目的で各種薬効成分、精油成分、抗菌剤、各種酵素などもインクジェット印字適性を損なわない範囲内で使用が可能である。そして、それらの形態は、単純な物理的な混合体のほか、カプセル化若しくは反応性の官能基導入による化学結合タイプのもの、又は、ポリイオンコンプレックスによる樹脂内部への内包型複合材料の中から適宜適切に選ばれるものである。また、例えばシリカスラリーに含有させる、又はバインダーに含有させるなど、これらを添加させる工程、方法については特に限定されない。
インク受容層は、支持体の片面だけに設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面だけにインク受容層を設ける場合には、インク受容層を設けた面の反対の面には、支持体を剥き出しの状態としてもよいし、鉛筆筆記性、水性・油性ボールペン適性、クレヨン筆記性、水性・油性絵の具吸収適性、版画適性、捺印適性などを付与させてもよい。また、次に列記するが如く目的に応じて、適宜、各種目的別の塗料を塗工してよい。例えば、カール止めを目的として非ピグメント系塗料を塗工してもよい。水性インクのインクジェット適性を付与させるため、例えば合成シリカと、ポリビニルアルコールと、エチレン酢酸ビニル系高分子と、を組み合わせた高い吸収性を有した塗料を塗工しても構わない。インクジェット適性の中でも、特に、溶剤インク又はUVインクに適するように、例えば、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレンブタジエンラテックス、アクリロニトリルラテックス、クロロプレンラテックスなどの樹脂を含有させた塗料を塗工しても構わない。熱転写記録適性又はグラビア印刷適性を付与させるため、例えば、炭酸カルシウムと、クレーと、有機ピグメントと、合成シリカと、を組み合わせた断熱性、高い表面平滑性及び高いクッション性を有した塗料を塗工しても構わない。トナー定着性を付与させるため、トナーとの親和性が高く、適切な誘電率を有している各種バインダーと、断熱性が高くなるような各種ピグメントと、各種電解質と、を組み合わせた塗料を塗工しても構わない。一般のオフセット枚葉印刷適性を付与させるため、例えば、炭酸カルシウムと、クレーと、スチレンブタジエンラテックスと、を組み合わせた塗料を塗工しても構わない。また、ヒートセットが工程にあるオフセット輪転印刷適性を付与させるため、耐熱性を有するラテックス、印刷適性向上剤などを含有させた塗料を塗工しても構わない。感圧接着性を付与させるため、天然ゴムなどを含有させた塗料を塗工しても構わない。また、特殊用途として、感熱発色層、感圧発色層、感光発色層などを設けてもよい。さらに、炙り出しなどに対応させる目的で、自己消火性、難燃性を有する各種燐、不活性物質を含む化合物を含浸させてもよい。その他、記録適性以外の機能を付与させるため、各種機能性の薬品、資材など適宜適用が可能である。
塗料調製・各種処理液の調製において、人体に対し有害、又は危険な薬品の使用・取扱いを極力避けるべきであるが、可能な限り、有害性の少ない薬品の選定が前提である。それ故に、自然環境で容易に分解し、分解後は有害な物質を排出することの無い薬品であれば、最善の選択といえる。使用する薬品は、自然界に無いような極度に化学修飾されたもの、重合度がかなり進んだ物質などの選択は賢明ではない。また、ハンドリングが良好であったり、容易に溶解、分散、又は混合が可能といった作業性が良好であったりする薬品の選定も製造工程において、非常に重要な項目となり得る。作業効率、有害性のほかに、トラブルフリーな安全性の高い薬品を使うことも重要である。
インク受容層用塗料の調製時には、各種薬品を混合する工程が存在するが、攪拌の方式によって生産効率は変化してくる。また、効率だけでなく、塗料の物性にも影響を及ぼす。一般的に、製紙業界における塗料の調製は、回分式であり、連続式ではない。本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、塗料の調製方式は、回分式であることが好ましい。回分式では、各工程において、混合が完全に達成されてから次の薬品を添加するため、各種薬品の添加順を所定の条件にすることによって、凝集しやすい薬品同士の接触を最小とすることができる。結果として、生産効率を向上でき、更に塗料の物性が低下することを防止することができる。また、回分あたりの所要時間は、必要最低限の短時間であることが望ましい。さらに、攪拌槽の形状、大きさ、棒・板・プロペラ状の攪拌子、バッフルなどの周辺機の差異などを含む攪拌条件によって、諸効率は変化する。塗料調製時に完全混合を達成するために、攪拌槽は、次に示す形状比とすることが好ましい。すなわち、攪拌槽内装の直径をD(m)、液面高さをH(m)、攪拌子の直径をd(m)、攪拌槽の底面から攪拌子の中心までの高さをh(m)としたときに、d/D(−)を3.0/7.5〜5.0/5.5とし、h/H(−)を1.0/9.0〜3.0/7.0とし、H/D(−)を7.0/7.5〜9.0/5.5とすること好ましい。攪拌条件は、攪拌子の周速が攪拌子の半径と角速度とを乗じた計算値で求めた値で2.8〜9.4(km/時)の範囲内で行うことが好ましい。また、攪拌子の形状は、例えば、プロペラ型、タービン型、アンカー型、櫂型、プラネット型、スクリュー型、リボン型、インテンシブ型、ヘリカルリボン型が挙げられる。なお、攪拌装置の攪拌子の直径、形状は、塗料全体を均一に攪拌できるものであれば、特に限定されない。
概して、インクジェット用記録シートの製造は、高価な塗料をシート表面に塗工するため、製造コストが一般の印刷シートよりも高くなる。また、その塗料の成分には、反応性の高いもの、分散性があまりよくないものなどが含まれることがあり、このような成分を含む場合には、塗料の調製に時間がかかる。製造費は、製造時間にも依存するため、調製工程時間の延長は、コストアップを助長するケースがある。インク受容層用塗料の調製時に、薬品を添加する速度、添加順などによって、各種薬品同士の物理的な相互作用が大きい系又は不可逆的な化学反応を伴う系では、凝集、増粘などのトラブルが起こり、調製が困難となる。また、このようなトラブルを起こした塗料は、塗工適性を損ねてしまっているため、塗工すると、適正塗工量の制御が不良となり、塗りむらが発生する。得られた塗工面では、平滑不良などの欠陥が生じ、インクジェット印字、印刷、各種断裁、ブリスターパック加工などの後加工適性が劣るようになり、商品価値がなくなる場合がある。したがって、塗料の調製時には、各種薬品の添加順、添加速度などを考慮しなくてはいけない。特に、本実施形態では、インク受容層を黒色に着色しているので、色むらがわかりやすい。また、黒色顔料のほとんどが塗工層強度を低下させてしまうことから、塗料の凝集を起こさないように、最大限注意しなくてはならない。さらに、完全混合が達成された状態にあっては、それ以降の攪拌は蛇足となり、時間に依存する製造コストを浪費するばかりでなく、余剰の回転体の所要動力費が計上され、経済性としては好ましい状態ではない。
塗料の調製では、投入することで大きくpHが変化するような薬品、疎水場効果のあるような親水性と疎水性との不均衡を大きく変化するような薬品、分子鎖などの立体障害をもたらす薬品、又は誘電作用による比較的弱いモーメント力がもたらす粘度上昇などを引き起こす薬品を使用する場合には、投入順、投入速度、投入のタイミングなどが重要な管理項目となってくる。電荷数、pHなどが大きく変化するに伴い、塗料の粘度が大きく変化する現象(ほとんどの場合が増粘する傾向にある。)が見受けられ、特に、増粘の程度が限度を超えると、凝集を生じ、その後の調製が困難になる。また、塗工できたとしても、塗工面がざらついたり、塗工層の強度が弱くなったりし、その影響は無視できなくなる。特に、着色顔料の添加量が多くなるほど、塗工層強度が低くなる傾向にある。塗料が凝集状態にあった場合には、形成される塗工層に悪影響を及ぼす。さらに、着色顔料の凝集があった場合には、色むらが顕著になってくる。黒色は、その他の色に比較し、色むらが視認されやすく、欠陥商品となる確率が高くなってしまう。ただし、形成された塗工層の多孔性構造が適正に保持されていなくては、インクジェットのインク吸収性が十分とはいいがたくなるため、軟凝集(程度の軽い凝集)は必要である。ここで、薬品の投入時間をある程度、遅延させることで、このような現象を改善できる場合があるが、あまりにも、投入時間が長過ぎると、不要なエネルギーを消費してしまい、また生産速度を落としてしまうため、経済性の面で好ましくない。
図1は、インク受容層用塗料の調製フローのモデルを示す。本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法は、顔料として合成シリカと、バインダーとしてポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル系樹脂と、インク定着剤としてカチオン性樹脂と、着色剤としてノニオン性の黒系着色顔料と、を必須成分として含有する塗料を、木材繊維を主体とした支持体の少なくとも片面に塗工して1層以上のインク受容層を設けた黒色インクジェット用記録シートの製造方法であって、前記インク受容層を形成するための塗料は、前記バインダーを前記合成シリカ100質量部に対して40〜60質量部含有し、かつ、前記黒系着色顔料を前記塗料の全固形分のうち3.5〜5.5質量%含有し、前記合成シリカは、水に分散されたシリカスラリーとし、図1に示すごとく、該シリカスラリーに、前記必須成分のうち、前記ポリビニルアルコールを少なくとも前記エチレン酢酸ビニル系樹脂及び前記カチオン性樹脂より先に添加して混合し、前記カチオン性樹脂の添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、40L/分未満である。
本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、インク受容層用塗料の調製において、まず、インク受容層に顔料として含有させる合成シリカは、水に分散したシリカスラリーとする。シリカスラリーは、合成シリカと水とを配合し、公知の分散機を用いて得ることができる。分散時には、合成シリカと水との他に、pH調整剤を配合することが好ましい。pH調整剤は、例えば、酢酸、蟻酸シュウ酸、酒石酸である。公知の分散機は、例えば、カウレス分散機である。
次いで、シリカスラリーに、ポリビニルアルコールを少なくともエチレン酢酸ビニル系樹脂及びカチオン性樹脂より先に添加して混合する。シリカスラリー中の合成シリカの表面は、アニオン性であるため、合成シリカとカチオン性樹脂とが接触すると、凝集及び増粘を起こして、塗料調製及び得られる塗工層に前記の悪影響を及ぼすところ、ポリビニルアルコールを先に添加することで、ポリビニルアルコールが合成シリカの表面を保護し、次にカチオン性樹脂を添加しても凝集及び増粘を起こしにくくなる。一方、エチレン酢酸ビニル系樹脂も同様に、合成シリカと接触すると、凝集及び増粘を起こしやすい。そのメカニズムは不明だが、ポリビニルアルコールを先に添加することで、ポリビニルアルコールが合成シリカの表面を保護し、次にエチレン酢酸ビニル系樹脂を添加しても凝集及び増粘を起こしにくくなる。
インク受容層用塗料の調製において、シリカスラリーへ添加するポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル系樹脂、カチオン性樹脂、黒系着色顔料などの各種薬品は、凝集抑制効果、作業性の点から、水溶液又は水分散液として添加することが好ましい。本実施形態では、10%ポリビニルアルコール水溶液、固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液、固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液を用いているが、本発明は水溶液又は水分散液の濃度に制限されない。
インク受容層用塗料の調製時に、各薬品を添加する時の添加始まりから終わりまでの時間、すなわち、投入時間をt(分)とし、薬品の投入量をV(L)として、薬品の添加速度を数5で規定した。
(数5)V/t
数5において、nは、1〜3の正の整数であり、図1の添加ステップ1〜3に対応した数字である。
数5で求めた薬品の添加速度の値が小さいほど、製造時間を短縮でき、経済性に優れるといえる。反対に、添加速度の値が大きいほど、製造時間は延長するので、経済性に劣る。よって、記録シートの製造において、添加速度の値を経済性の指標として管理することで、経済的に記録シートを製造することができる。ただし、前述のとおり、pHを大きく変化させる薬品など塗料の液性に与える影響が大きい薬品の場合には、添加速度が速すぎると、その後の塗料物性に悪影響を及ぼすので、その事象に考慮する必要がある。
カチオン性樹脂は、投入することで塗料のpHが大きく変化するため、添加速度が速すぎると、塗料の粘度が大きく上昇するなど塗料物性に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、カチオン性樹脂の添加速度を、シリカスラリー1000Lに対して、40L/分未満とする。より好ましくは、39L/分未満である。また、カチオン性樹脂の添加速度は、シリカスラリー1000Lに対して、5L/分を超えることが好ましい。より好ましくは、20L/分超えであり、特に好ましくは、30L/分超えである。5L/分以下では、シリカスラリー及び先に添加した薬品との反応が緩慢となるものの、発生した凝集を分散することができず、塗料及び塗工層に前述の悪影響を及ぼす場合がある。また、塗料の粘度が大きく上昇するのを抑制でき、塗料液性及び塗工面の物性を良好にすることが可能であるが、投入時間が長くなるため、不要なエネルギーを消費してしまい、不経済である。一方、40L/分以上では、塗料の粘度が大きく上昇し、完全に混合するのに必要な時間が延長し、消費する電力量が多くなるため、不経済である。また、完全混合できないほど、粘度が上昇した場合には、塗料及び塗工層に前述の悪影響を及ぼす。
本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、ポリビニルアルコールの添加速度は、シリカスラリー1000Lに対して、20L/分を超えることが好ましい。より好ましくは、30L/分超えである。生産速度を落とすことなく、不要なエネルギーの消費を抑えることができるため、より経済的に製造することができる。ただし、凝集が発生するおそれがあるため、添加速度の上限値は、40L/分を超えてはならないことが好ましい。
本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加速度は、シリカスラリー1000Lに対して、20L/分を超えることが好ましい。より好ましくは、30L/分超えである。生産速度を落とすことなく、不要なエネルギーの消費を抑えることができるため、より経済的に製造することができる。ただし、凝集が発生するおそれがあるため、添加速度の上限値は、40L/分を超えてはならないことが好ましい。
前述のとおり、塗料を調製するにあたって、塗料の粘度変化(増粘又は減粘であり、特には増粘である。)の程度を適正な範囲にすることが、塗料の状態及び得られる塗工層の物性を良好にできる点で重要である。そこで、本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートの製造方法では、塗料を構成する各薬品単独での20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度及びそれぞれの体積を用いて求めた各薬品を添加したときの理論的な体積平均粘度ηaverage calc.nと各薬品を添加したときの粘度の実測値ηobs.nとの差異量Δηを、薬品同士の化学反応などの相互作用の度合いの指標として、管理することとした。インク受容層用塗料の調製で、シリカスラリーへの薬品添加の順番をnとしたとき、20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した薬品の単独での粘度をηとし、その体積をVとして、薬品添加順n番目のときの理論的な体積平均粘度ηaverage calc.nを数6で一般化する。なお、物性測定時は、完全混合を前提としている。
(数6)ηaverage calc.n=[(η×V)+(η×V)+ … +(η/V)]/(V+V+…+V)=Σ(η×V)/ΣV
また、n番目の薬品添加時の20℃条件下で60rpmにおける実測のB型粘度をηobs.nと規定し、ηobs.nとηaverage calc.nとの差異量Δηを薬品同士の化学反応などの相互作用の度合いと位置付けた指標とし、数7で規定した。
(数7)Δη=ηobs.n−ηaverage calc.n
数7において、nは正の整数であり、薬品を添加する順位を示す。
図1のフローモデルを用いて説明すると、塗料は、シリカスラリーへポリビニルアルコールを添加して完全に混合した第一次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.1と数1から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.1との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであり、かつ、第一次混合液へエチレン酢酸ビニル系樹脂又はカチオン性樹脂のいずれか一方を添加して完全に混合した第二次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.2と数2から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.2との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであり、かつ、第二次混合液へエチレン酢酸ビニル系樹脂又はカチオン性樹脂のいずれか他方を添加して完全に混合した第三次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.3と数3から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.3との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであることが好ましい。
(数1)ηaverage calc.1=(η×V)/V
(数2)ηaverage calc.2={(η×V)+(η×V)}/(V+V
(数3)ηaverage calc.3={(η×V)+(η×V)+(η×V)}/(V+V+V
数1、数2及び数3において、η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定したポリビニルアルコール10%水溶液の単独での粘度であり、V[L]はポリビニルアルコール水溶液の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の添加量である。以下、Δη、Δη及びΔηをΔηと総称することもある。
シリカスラリーへ、ポリビニルアルコールを添加し、次にカチオン性樹脂を添加した場合には、η[mPa・s]は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液の単独での粘度であり、V[L]はカチオン性樹脂の水分散液の添加量である。η[mPa・s]は固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液の添加量である。また、ポリビニルアルコールの次にエチレン酢酸ビニル系樹脂を添加した場合には、η[mPa・s]は固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液の添加量である。η[mPa・s]は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液の単独での粘度であり、V[L]はカチオン性樹脂の水分散液の添加量である。
20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した薬品の単独での粘度をηと薬品添加順n番目のときの理論的な体積平均粘度ηaverage calc.nとの差異量Δηは、より好ましくは、|Δη|<650mPa・sである。|Δη|≧700mPa・sでは、塗料の粘度変化が大きいため、塗料の状態を塗工に適した状態に維持することが困難となる場合がある。
インク受容層用塗料の調製において、着色剤を添加するタイミングは、本発明の効果を奏する限り、制限されない。例えば、シリカスラリー調製時に合成シリカとともに添加して分散させてもよいし、調製したシリカスラリーに添加してもよい。調製したシリカスラリーに添加する場合には、他の必須成分である、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル系樹脂又はカチオン性樹脂より先に添加してもよいし、ポリビニルアルコールの後に添加してもよい。また、他の必須成分を添加した後に添加してもよい。
塗工層を視感で黒色を感ずる色調に調整する場合には、塗料には、ある閾値以上での色味付けが必要となる。塗料の塗工方式には、一般に、ロッドコーター、ブレードコーターなどの平坦化塗工方式、エアーナイフコーターなどの輪郭塗工方式がある。色味付けがある閾値以下であると、平坦化塗工方式では、塗工する原紙表面の凹凸に起因する塗工量の多少によって、色濃度に差異が生じ、製品の色調均一性が損なわれることがある。また、輪郭塗工方式では、風紋パターンが発生することがある。一方、塗工量が、原紙に対して一定となっているが、キャレンダー処理などによって、緊度差が生じ、下地の凹凸の不均一性が視感で感じられるようになる事例もある。このように、塗料のある閾値以上での色味付けは、製品表面の均一性を確保するために、有効な手段である。本実施形態に係る黒色インクジェット用記録シートは、インク受容層に黒系着色顔料をインク受容層の全固形分に対して、3.5〜5.5質量%含有するため、所定の閾値以上の色味付けが実現できる。
インク受容層用塗料の塗工方式は、本実施形態では特に限定されず、公知一般の塗工機を使用できる。公知一般の塗工機は、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、チャンブレックスコーター、チップブレード−コータ、ラボスケールでのスピニングコーターである。また、塗工時は、塗工層構造を制御する目的で常圧、減圧、加圧のいずれの状態下を選んでも構わない。
インク受容層の片面当たりの乾燥塗工量は、5〜20g/mが好ましい。より好ましくは、10〜15g/mである。5g/m未満では、塗料で支持体の表面を完全に覆うことが難しく、塗工層によるインク吸収性が不十分となり、吸収むらが発生する場合がある。逆に、乾燥塗工量が20g/mを超えると、インク受容層と支持体との間の接着強度が実用に耐えられないレベルとなる場合があり、粉落ちと呼ばれる支持体からの塗工層の脱落、剥離などが発生し、重大な問題となるおそれがある。インク吸収性に優れていても、その後の後加工でのトラブルは、顧客の信用を失墜させるほか、多大な経済的損失を被ることになる。また、インク受容層用塗料を2回以上塗工して、インク受容層を2層以上で構成してもよい。
塗工方法には、抄紙機とは別工程のオフマシン塗工機と抄紙機に付属されたオンマシン塗工機とがある。本実施形態では、オンマシンであることが望ましい。例えば、葉書用紙として使用する場合では、裏面には宛名面としての適性を付与するために、水溶性高分子などで調製したクリア液を塗工することがある。このとき、支持体としてオンマシンで着色度合いの少ない原紙を抄紙し、引続きサイズプレスでサイズ液を両面に塗布し、得られた支持体の通信面となる面にインク受容層用塗料の塗工と、反対の宛名面となる面にクリア液の塗工と、を連続して行うことによって、効率良く生産することができる。色替わりのときには、各塗料を入れ替えるだけで行うことができる。塗工をオフマシン塗工機で行うオフコートは、枠替え時のダウンタイムなどの時間損失が発生する上、実作業においても、のべ工程時間が長くなる分、エネルギー消費量の損失を計上する。したがって、生産の主目的である利潤の追求が不十分となってしまう。さらに、虫などの異物混入、工程内のコンタミネーションなどの商品欠陥が発生する確率が高まり、製品の仕上げ率の低下が避けられない。また、工程内品質保証を行う場合には、管理事項が増えるため、試験員への負荷がかかり、更には人員を増員せざるを得なくなるという不利点もある。
塗工後の乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥などが挙げられるが、本実施形態においては、特に限定されるものではない。バインダーマイグレーション及び/又は塗工層構造の制御を目的として、適宜適切に乾燥温度、乾燥温度勾配、乾燥時間などの乾燥条件を変更し適用してよい。
また、インク受容層の表面の平滑性を制御する目的で、必要に応じてキャレンダー処理を行ってもよい。キャレンダー処理は、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダーなどが挙げられる。また、キャレンダー前後の工程にて、加湿機などを配置することも可能である。また、キャレンダー配置については、縦型、横型のいずれでもよく、所望する物性が得られる限りにおいては、縦型においてのスタック数又は横型においての台数は何ら制限を受けるものではない。また、処理速度、処理温度、処理圧力、ロール表面の硬度・粗さなどの処理条件も適宜適切に選ばれる。塗工と同様に、オンマシンで行うことが、経済的な利点が多く望ましい。キャレンダー処理をオフマシンで行うことは、オフコートと同様に、枠替え時のダウンタイムなどの時間損失が発生する上、実作業においても、のべ工程時間が長くなる分、エネルギー消費量の損失も計上することになる。したがって、生産の主目的である利潤の追求が不十分となってしまう。さらに、虫などの異物混入、工程内のコンタミネーションなどの商品欠陥が発生する確率が高まり、製品の仕上げ率の低下が避けられない。また、工程内品質保証を行う場合には、管理事項が増えるため、試験員への負荷がかかり、更には人員を増員せざるを得なくなるという不利点もある。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ、「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
(実施例1)
<原紙の作製>
LBKP100部(カナダ標準ろ水度500mlCSF)のパルプスラリーに、パルプ(乾燥固形分)に対し、カチオン澱粉(商品名:ネオタック40T、日本食品加工社製)1.00部と、タルク(商品名:NTL、日本タルク社製)5.00部と、酸性ロジンサイズ剤(商品名:AL1203、星光PMC社製)0.200部と、液体硫酸バンド1.00部とを配合して紙料を得た。得られた紙料を長網式抄紙機で抄紙し、坪量180g/mの原紙を得た。
<サイズプレス塗布による支持体の作製>
引続き、前記原紙上にサイズ液として酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コンスターチ社製)の固形分濃度6%水溶液をサイズプレスによって乾燥塗布量が片面当たり1.5g/mとなるようにオンマシンで両面に塗布し、シリンダードライヤーで乾燥し、支持体を得た。
<インク受容層の塗料の調製>
顔料として平均粒子径7μmの合成非晶質シリカ(商品名:サイロジェットP407、グレースデビソン社製)50.0部と、平均粒子径6μmの合成非晶質シリカ(商品名:サイロイド74X6500、グレースデビソン社製)50.0部と、水と、pH調整剤として酢酸0.500部とを配合し、カウレス分散機にて固形分濃度28%のシリカスラリーを調製した。このシリカスラリーにバインダーとしてポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ社製)15.0部と、インク定着剤としてカチオン性樹脂(商品名:スミレッズレジンSR1001、住友化学社製)15.0部と、バインダーとしてエチレン酢酸ビニル系樹脂(商品名:スミカフレックス401、住友化学製)35.0部と、着色剤として黒色着色顔料(商品名:TB510 BlackTR、大日精化社製)9.00部とを順次、添加・攪拌し、更に水を添加して固形分濃度が25%のインク受容層用塗料を得た。インク受容層用塗料の調製において、一の薬品を添加して完全混合した後、次の薬品を添加することを基本とするが、凝集又は増粘によって、完全混合が困難な場合には、途中で攪拌を中断して、次の順番の薬品を添加した。
インク受容層用塗料の調製において、攪拌槽及び攪拌条件は、次に示す形状比のとおりである。攪拌槽は、前述のとおり、攪拌槽内装の直径をD(m)、液面高さをH(m)、攪拌子の直径をd(m)、攪拌槽の底面から攪拌子の中心までの高さをh(m)としたときに、
d/D(−):3.0/7.5〜5/5.5
h/H(−):1.0/9.0〜3.0/7.0
H/D(−):7.0/7.5〜9.0/5.5
とすること好ましいが、本実施例では、
d/D=4.0/6.5
h/H=2.0/8.0
H/D=8.0/6.5
とした。なお、攪拌時での液ホールドアップによる値の変動を加味しない条件である。また、攪拌条件は、前述のとおり、攪拌子の周速が攪拌子の半径と角速度とを乗じた計算値で求めた値で2.8〜9.4(km/時)の範囲内で行うことが好ましいが、本実施例では、4.7(km/時)とした。
インク受容層用塗料の調製において、攪拌時の完全混合を判定する方法として、事前に前記の形状比を保持したスケールダウン条件下にて、流れを可視化する手法を用いて行った。すなわち、スケールダウン条件下でポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル系樹脂又はカチオン性樹脂を添加するときにノニオン性染料を同時に添加して、染料の色が均一に分散した状態を完全混合状態として目視によって判定し、添加開始時から染料の色が均一に分散した時までの時間を完全混合に必要な時間として、この時間を実機で調製するときの攪拌時間に適用した。ノニオン性染料として、日本化薬社製のBlack CN Liquidを用いた。
また、カチオン性樹脂の数5から求めた添加速度(V/t)を、シリカスラリー1000Lに対して39L/分とした。その他の薬品の添加速度は、シリカスラリー1000Lに対して22L/分とした。
<インク受容層の形成>
得られたインク受容層用塗料を前記支持体のインクジェット記録面となる面に乾燥塗工量が10g/mとなるように、引続き、オンマシンでエアーナイフコーターを用いて塗工し、エアードライヤーで熱風乾燥してインク受容層を形成した。
<平滑処理>
引続き、オンマシンにてソフトカレンダーを用いて、線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行い、黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここで、インクジェット記録面の明度(以降、Lと称す。)、色度(以降、a、bと称す。)、ISO白色度及び商工会議所カラーコーディネーション・チャート(以降、CCICと称す。)は、次のとおりとなった。なお、インクジェット記録面のL、a、b及びISO白色度は、分光式白色度計・色差計(商品名:SPECTRO COLOR METER、型式:MODEL PF−10、日本電色工業社製)を用いて測定した。CCICは、商工会議所カラーコーディネーション・チャート(CCIC)を用いて、色彩の感覚値を判断・評価した。
:22.0、a:0.14、b:−0.20、ISO白色度:4.91、CCIC:Bk(10)Black相当
(実施例2)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、黒色着色顔料を2/3倍に減らして6.00部とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、次のとおりとなった。
:26.76、a:0.16、b:−0.03、ISO白色度:7.17、CCIC:Bk(20)Black相当
(実施例3)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、更にバイオレット系顔料(商品名:TB1500 Violet3R、大日精化社製)を0.015部添加した以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、次のとおりとなった。
:21.7、a:−0.21、b:0.21、ISO白色度:5.24、CCIC:Bk(10)Black相当
(実施例4)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、更にブルー系顔料(商品名:TB520 Blue2B、大日精化社製)を0.0008部添加した以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、次のとおりとなった。
:21.8、a:0.12、b:−0.57、ISO白色度:5.29CCIC:Bk(10)Black相当
(実施例5)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、カチオン性樹脂の添加速度を6L/分とした以外は、実施例に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(実施例6)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、薬品の添加順をポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル系樹脂、カチオン性樹脂の順とした以外は実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(実施例7)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、ポリビニルアルコールの添加量を10.0部とし、エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加量を30.0部とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(実施例8)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、ポリビニルアルコールの添加量を20.0部とし、エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加量を40.0部とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(実施例9)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、ポリビニルアルコールの添加速度を20L/分とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(実施例10)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加速度を20L/分とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(実施例11)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、カチオン性樹脂の添加速度を5L/分とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例1)
実施例1において、インク受容層を設けなかった以外は、実施例1に準じてインクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、次のとおりとなった。
:93.80、a:−0.90、b:3.78、ISO白色度:80.12、CCIC:Wt(95)White相当
(比較例2)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、黒色着色顔料を添加しなかった以外は、実施例1に準じてインクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、次のとおりとなった。
:92.63、a:−0.82、b:2.01、ISO白色度:83.42、CCIC:Wt(95)White相当
(比較例3)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、黒色着色顔料を1/10倍に減らして0.90部とした以外は、実施例1に準じてインクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、次のとおりとなった。
:52.17、a:0.56、b:2.95、ISO白色度:25.07、CCIC:mG(60)Medium grayish相当
(比較例4)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、カチオン性樹脂の添加速度を40L/分とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例5)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、薬品の添加順をエチレン酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、カチオン性樹脂の順とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例6)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、薬品の添加順をエチレン酢酸ビニル系樹脂、カチオン性樹脂、ポリビニルアルコールの順とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例7)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、薬品の添加順をカチオン性樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル系樹脂の順とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例8)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、薬品の添加順をカチオン性樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコールの順とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例9)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、ポリビニルアルコールの添加量を5.00部とし、エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加量を25.0部とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例10)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、ポリビニルアルコールの添加量を25.0部とし、エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加量を45.0部とした以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、実施例1と同一となった。
(比較例11)
実施例1において、インク受容層用塗料の調製で、ノニオン性黒色着色顔料に替えて、アニオン性黒色着色顔料(商品名:TB786 Black、大日精化工業社製)を添加した以外は、実施例1に準じて黒色インクジェット用記録シートを作製した。ここでインクジェット記録面のL、a、b、ISO白色度及びCCICは、次のとおりとなった。
:21.0、a:0.16、b:−0.15、ISO白色度:4.70、CCIC:Bk(10)Black相当
得られた黒色インクジェット用記録シート及びインクジェット用記録シートについて、次の方法によって評価を行い、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル系樹脂及びカチオン性樹脂をそれぞれ添加したときの体積平均粘度ηaverage calc.nと各薬品を添加したときの粘度の実測値ηobs.nとの差異量Δηを表1に示す。また、面感均一性、色むら感、IJ印字品位、学振式摩擦堅牢度及び経済性の評価結果を表2に示す。
<塗料のB型粘度差異量(B型粘度差異量)>
薬品添加時の塗料又は各薬品単独での20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を、B粘度計(型式:B−8L、東京計器社製)を用いて測定し、次に示す要領でB型粘度差異量Δη(n=1、2、3)を算出した。なお、実測粘度の測定時は、完全混合を前提とした。ただし、凝集又は増粘によって完全混合が困難な場合には、攪拌を途中で中断して粘度を測定した。シリカスラリーへポリビニルアルコールの10%水溶液を添加して完全に混合した第一次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.1と数1から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.1との差異量をΔηとした。第一次混合液へ固形分濃度50%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方を添加して完全に混合した第二次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.2と数2から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.2との差異量をΔηとした。第二次混合液へ固形分濃度50%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方を添加して完全に混合した第三次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.3と数3から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.3との差異量をΔηとした。
(数1)ηaverage calc.1=(η×V)/V
(数2)ηaverage calc.2={(η×V)+(η×V)}/(V+V
(数3)ηaverage calc.3={(η×V)+(η×V)+(η×V)}/(V+V+V
数1、数2及び数3において、η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定したポリビニルアルコール10%水溶液の単独での粘度であり、V[L]はポリビニルアルコール水溶液の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の添加量である。
前記塗料のB型粘度差異量は、次に示す要領によって表1に記述した。
Δη(n=1、2、3)が、|Δη|<700mPa・s・・・○(実用レベル)、
Δη(n=1、2、3)が、|Δη|≧700cps・・・×(実用に適さない。)。
<インクジェット記録面の面感均一性(面感均一性)>
インクジェット記録面の面感均一性、すなわち、表面の平滑性を目視で総合評価し、次に示す要領によって表2に記述した。
○:表面の平滑性が高く、良好である(実用レベル)、△:表面の平滑性が若干劣り、やや不良である(実用下限レベル)、×:表面の平滑性が低く、不良である(実用に適さない。)。
<インクジェット記録面の最大色差(色むら感)>
インクジェット記録面の色むら感を10cm×10cm角における最大色差ΔEで評価した。ΔEは、JIS P 8150:2004で規定する明度指数L、知覚色度指数a及びbから算出する方法を用いて、インクジェット記録面の任意に設定した10cm×10cm角の範囲中における、任意の10箇所で測定した明度指数(L)及び知覚色度指数(a、b)の各々の最大値と最小値との差をΔEとして、評価した。ΔEは、数4から求めた。
Figure 0005501151
なお、数4において、明度指数(L)及び知覚色度指数(a、b)の最大値をLx、ax、bxと表記し、明度指数(L)及び知覚色度指数(a、b)の最小値をL、a、bと表記する。また、測定機器は、分光式白色度計・色差計(商品名:SPECTRO COLOR METER、型式:MODEL PF−10、日本電色工業社製)を用いて測定した。
前記色むら感を、次に示す要領によって表2に記述した。
○…ΔEが0.5以下である(実用レベル)、×…ΔEが0.5を超える(実用に適さない)。
<インクの印字品位(IJ印字品位(IJ印字適性・白色印字の鮮明さ))>
インクジェットプリンター(型式:JV−33、ミマキ社製)を用いて、JV−33用白色インクでインクジェット記録面にテスト印字パターン(文字、線及びベタ)を印字して、視感で評価した。
前記IJ印字品位は、印字の滲みなどのIJ印字適性及び白色印字の鮮明さをそれぞれ評価し、次に示す要領によって表2に記述した。
IJ印字適性:
○:印字の滲みが無く、良好である(実用レベル)、△:印字の滲みが若干あり、やや不良である(実用下限レベル)、×:印字の滲みがあり、不良である(実用に適さない。)。
白色印字の鮮明さ:
○:白色インクの印字が映え、良好である(実用レベル)、△:白色インクの印字が映えにくく、やや不良である(実用下限レベル)、×:白色インクの印字が映えず、不良である(実用に適さない。)。
<インクジェット記録面の学振式摩擦堅牢度試験(学振式摩擦)>
インクジェット記録面の表面強度を表面の擦れ強度を学振式摩擦堅牢度試験機(AB−301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER、テスター産業社製)を用いて測定した。試験条件は、300gの荷重の条件下、得られた記録シートのインク受容層とコピー用紙(商品名:マリコピーR70、北越紀州製紙社製)とが接するようにして20回往復させ、塗工層の削れ具合及びコピー用紙への脱落した塗工層の程度を目視によって評価し、次に示す要領によって表2に記述した。
○:塗工層が擦れず良好である(実用レベル)、△:塗工層がやや削れ、弱い(実用下限レベル)、×:塗工層が削れ、明らかに弱い(実用に適さない。)。
<経済性指標(経済性)>
インク受容層用塗料の調製時に、シリカスラリーへポリビニルアルコール、カチオン性樹脂又はエチレン酢酸ビニル系樹脂を添加する時の添加始まりから終わりまでの時間を投入時間:t(分)とし、薬品の投入量:V(L)として、薬品の添加速度を数5で規定し、その値を経済性の指標とした。すなわち、数5で求めた計算値が小さいほど経済性に優れ、反対に大きいほど劣る。しかし、pHを大きく変化させる薬品(本実施例ではカチオン性樹脂)の添加速度が速すぎると、その後の塗料物性に悪影響を及ぼすので、その事象も考慮して評価した。
(数5)V/t
数5において、nは、1〜3の正の整数であり、シリカスラリーへポリビニルアルコール、カチオン性樹脂又はエチレン酢酸ビニル系樹脂を添加した順番に対応した数字である。
前記経済性は、次に示す要領によって表2に記述した。
1)カチオン性樹脂の添加
5L/分<V/t<40L/分の場合 ・・・○(実用レベル)、
V/t≦5L/分又は40L/分≦V/tの場合 ・・・×(実用に適さない。)。
2)カチオン性樹脂以外の添加
20L/分<V/tの場合 ・・・○(実用レベル)、
20L/分≧V/tの場合 ・・・×(実用に適さない。)。
Figure 0005501151
Figure 0005501151
実施例1〜11は、比較例1〜11と比較して、インクジェット記録面の面感均一性に優れ、学振式摩擦堅牢度試験でのインクジェット記録面の表面強度が良好で、かつ、インクジェットプリンターでの印字品位に優れ、インクジェット記録面の白色度が低く、明度指数及び色度指数が所定の範囲内であり、CCICがBk(10)又はBk(20)であったため、白色インクの印字が映えるものであった。さらに、経済的に製造することができた。
実施例9は、ポリビニルアルコールの添加速度が遅かったために、他の実施例と比較して、経済性に劣るものの、インクジェット記録面の面感均一性に優れ、学振式摩擦堅牢度試験でのインクジェット記録面の表面強度が良好で、かつ、インクジェットプリンターでの印字品位に優れ、インクジェット記録面の白色度が低く、明度指数及び色度指数が所定の範囲内であり、CCICがBk(10)又はBk(20)であったため、白色インクの印字が映えるものであった。実施例10は、エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加速度が遅かったために、他の実施例と比較して、経済性に劣るものの、インクジェット記録面の面感均一性に優れ、学振式摩擦堅牢度試験でのインクジェット記録面の表面強度が良好で、かつ、インクジェットプリンターでの印字品位に優れ、インクジェット記録面の白色度が低く、明度指数及び色度指数が所定の範囲内であり、CCICがBk(10)又はBk(20)であったため、白色インクの印字が映えるものであった。実施例11は、カチオン性樹脂の添加速度が遅かったために、塗料の増粘を抑制できたが、凝集を分散することができず、面感均一性、インクジェット印字品位及び学振摩擦堅牢度が若干劣った。また、他の実施例と比較して、経済性に劣った。
比較例1は、インク受容層を設けないため、白色度が高くなり、白色インキの印字が映えなかった。比較例2は、インク受容層に黒色着色顔料を添加しないため、白色度が高くなり、白色インキの印字が映えなかった。比較例3は、黒色着色顔料を過少としたため、白色度が高くなり、白色インキの印字が映えなかった。比較例4は、カチオン性樹脂の添加速度が速かったため、カチオン性樹脂添加時に塗料が増粘して、面感均一性、色むら感及び学振摩擦堅牢度が劣った。また、色むら部分の白色インキの印字が映えなかった。比較例5は、シリカスラリーへポリビニルアルコールより先にエチレン酢酸ビニル系樹脂を添加したため、凝集が起こり、面感均一性、色むら感及び学振摩擦堅牢度が劣った。また、色むら部分の白色インキの印字が映えなかった。比較例6は、シリカスラリーへポリビニルアルコールより先にエチレン酢酸ビニル系樹脂及びカチオン性樹脂を添加したため、凝集が起こり、面感均一性、色むら感及び学振摩擦堅牢度が劣った。また、色むら部分の白色インキの印字が映えなかった。比較例7は、シリカスラリーへポリビニルアルコールより先にカチオン性樹脂を添加したため、凝集が起こり、面感均一性、色むら感及び学振摩擦堅牢度が劣った。また、色むら部分の白色インキの印字が映えなかった。比較例8は、シリカスラリーへポリビニルアルコールより先にカチオン性樹脂及びエチレン酢酸ビニル系樹脂を添加したため、凝集が起こり、面感均一性、色むら感及び学振摩擦堅牢度が劣った。また、色むら部分の白色インキの印字が映えなかった。比較例9は、バインダーの添加量を過少としたため、学振摩擦堅牢度が劣った。比較例10は、バインダーの添加量を過多としたため、インク吸収性に劣り、印字の滲みが見られた。比較例11は、黒系着色顔料がアニオン性としたため、凝集が起こり、面感均一性、色むら感及び学振摩擦堅牢度が劣った。また、色むら部分の白色インキの印字が映えなかった。
前記結果から明らかなように、本発明に係る実施例で得られた黒色インクジェット用記録シートは、インクジェット記録面において隠蔽性を有する明度の高い顔料インク、特に白色インクの印字において、良好なインクジェット印字適性を有していた。また、該黒色インクジェット用記録シートを経済的に製造することができた。

Claims (5)

  1. 顔料として合成シリカと、バインダーとしてポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル系樹脂と、インク定着剤としてカチオン性樹脂と、着色剤としてノニオン性の黒系着色顔料と、を必須成分として含有する塗料を、木材繊維を主体とした支持体の少なくとも片面に塗工して1層以上のインク受容層を設けた黒色インクジェット用記録シートの製造方法であって、
    前記インク受容層を形成するための塗料は、前記バインダーを前記合成シリカ100質量部に対して40〜60質量部含有し、かつ、前記黒系着色顔料を前記塗料の全固形分のうち3.5〜5.5質量%含有し、
    前記合成シリカは、水に分散されたシリカスラリーとし、
    該シリカスラリーに、前記必須成分のうち、前記ポリビニルアルコールを少なくとも前記エチレン酢酸ビニル系樹脂及び前記カチオン性樹脂より先に添加して混合し、
    前記カチオン性樹脂の添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、40L/分未満であることを特徴とする黒色インクジェット用記録シートの製造方法。
  2. 前記塗料は、前記シリカスラリーへ前記ポリビニルアルコールを添加して完全に混合した第一次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.1と数1から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.1との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであり、かつ、前記第一次混合液へ前記エチレン酢酸ビニル系樹脂又は前記カチオン性樹脂のいずれか一方を添加して完全に混合した第二次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.2と数2から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.2との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであり、かつ、前記第二次混合液へ前記エチレン酢酸ビニル系樹脂又は前記カチオン性樹脂のいずれか他方を添加して完全に混合した第三次混合液の20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した実測粘度ηobs.3と数3から求めた理論的計算値である体積平均粘度ηaverage calc.3との差異量Δηが、|Δη|<700mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の黒色インクジェット用記録シートの製造方法。
    (数1)ηaverage calc.1=(η×V)/V
    (数2)ηaverage calc.2={(η×V)+(η×V)}/(V+V
    (数3)ηaverage calc.3={(η×V)+(η×V)+(η×V)}/(V+V+V
    数1、数2及び数3において、η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定したポリビニルアルコール10%水溶液の単独での粘度であり、V[L]はポリビニルアルコール水溶液の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか一方の添加量である。η[mPa・s]は20℃条件下で60rpmにおけるB型粘度を測定した固形分濃度50質量%のエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又は固形分濃度30質量%のカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の単独での粘度であり、V[L]はエチレン酢酸ビニル系樹脂の水分散液又はカチオン性樹脂の水分散液のいずれか他方の添加量である。
  3. 前記塗料の調製方式は、回分式であることを特徴とする請求項1又は2に記載の黒色インクジェット用記録シートの製造方法。
  4. 前記カチオン性樹脂の添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、5L/分を超えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の黒色インクジェット用記録シートの製造方法。
  5. 前記ポリビニルアルコールの添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、20L/分を超え、
    前記エチレン酢酸ビニル系樹脂の添加速度が、前記シリカスラリー1000Lに対して、20L/分を超えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の黒色インクジェット用記録シートの製造方法。
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