以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に、第1実施形態による直流モータ装置2を示す。直流モータ装置2は、モータ20と、モータ20の回転状態を検出する回転検出装置100とから主に構成されている。
(モータ20)
モータ20は、回転方向に180°離れ互いに対向して配置された一対のブラシ22、24と電機子30とを備えており、電機子コイルとして3相の相コイルを有するブラシ付きの3相直流モータである。電機子30は、ブラシ22、24と接触する3つの整流子片41、42、43からなる整流子40を備えている。電機子コイルを構成する3つ(3相)の各相コイルL1、L2、L3は、それぞれデルタ結線されている。
すなわち、第3整流子片43と第1整流子片41との間に第1相コイルL1が接続され、第1整流子片41と第2整流子片42との間に第2相コイルL2が接続され、第2整流子片42と第3整流子片43との間に第3相コイルL3が接続されている。これら3つの相コイルL1、L2、L3からなる電機子コイルおよび整流子40により、電機子30が構成されている。
なお、各相コイルL1、L2、L3のインダクタンスは同じ値(L1=L2=L3)である。また、各相コイルL1、L2、L3は、互いに電気角で2π/3ずつ離れるように配置されている。
整流子片41、42、43の回転方向の長さは等しく、3つの整流子片41、42、43のうちいずれか2つが、ブラシ22、24にそれぞれ接触している。電機子30の回転による整流子40の回転に伴って、ブラシ22、24と接触する2つの整流子片は切り替わっていく。
本実施形態のモータ20は、図示は省略したもの、ヨークハウジングを有すると共に、ヨークハウジングの内壁側に永久磁石からなる界磁が設けられており、この界磁と対向するように電機子30が配置されている。
さらに、本実施形態では、モータ20において、第1相コイルL1と並列にコンデンサC1が接続されている。つまり、コンデンサC1は、第1整流子片41と第3整流子片43とを接続している。
そのため、後述する交流電源106から出力されてカップリングコンデンサ108により直流電源102からの直流電圧に重畳される交流重畳電圧は、ブラシ22、24およびこれらに接触しているいずれか2つの整流子片を介して、モータ20内部の各相コイルL1、L2、L3およびコンデンサC1からなるモータ回路に印加される。そして、このように直流電圧に交流電圧が重畳された電源電圧が印加されることにより、モータ回路には交流電流成分を含む電流が流れる。
コンデンサC1は、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には電流が流れやすい低リアクタンス特性、つまり低インピーダンス特性を有する。
そのため、直流電源102からみれば、コンデンサC1は等価的に存在しないものとして扱うことができる。したがって、直流電源102からの直流電流は各相コイルL1、L2、L3にのみ流れることとなる。
一方、交流電源106からみれば、各相コイルL1、L2、L3は高リアクタンス、つまり高インピーダンスであるのに対してコンデンサC1は低インピーダンスとなり、両者の差は大きい。そのため、例えば図1に示す状態から電機子30が時計回りに回転し、ブラシ24に第1整流子片41が接触するようになると、ブラシ22、24間に、第1相コイルL1とコンデンサC1の並列回路が形成される。
すなわち、ブラシ22、24間にコンデンサC1のみの通電経路が形成される。この状態では、ブラシ22、24間のモータ回路のインピーダンスは図1に示した状態とは異なり、例えば特定の周波数以上の領域では非常に小さいインピーダンスとなる。
つまり、直流的にみればモータ回路は3つの相コイルL1、L2、L3のみからなる回路とみなせる。それ故、直流電源102からの直流電流によって回転するモータ20の回転速度やトルクにコンデンサC1の存在が影響することはない。
これに対し、交流的にみれば、モータ20の回転角に応じてブラシ22、24と接触する2つの整流子片が切り替わる毎にブラシ22、24間に形成されるモータ回路の構成が変化するので、モータ回路においてリアクタンスとして静電容量値、つまりインピーダンスが変化する。但し、本実施形態では、第1相コイルL1に対してのみコンデンサC1を一つ接続しているため、モータ20の電機子30が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるものインピーダンスの変化は2段である。これについては後で図4を用いて詳しく説明する。
そして、インピーダンス(リアクタンス)の変化は、モータ20に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流電流成分)の振幅変化、或いはそのモータ電流が流れる通電経路の電圧(経路電圧)に含まれる交流成分(交流電圧成分)の振幅変化として現れる。
したがって、回転角に応じて変化するモータ電流または経路電圧の交流成分の振幅変化を検出できれば、モータ20の回転状態として、回転角および回転速度を検出することができる。そこで本実施形態の回転検出装置100では、回転信号検出部120がモータ電流に含まれる交流成分の振幅変化を検出する。これにより、交流成分の変化から、ブラシ間におけるモータ回路のリアクタンスの変化を間接的に検出する。そして、検出した交流電流成分の振幅の変化に基づいて、後述するように検出パルスSpを生成する。
(回転検出装置100)
回転検出装置100は、モータ20の回転角を検出するための装置であり、直流電源102、交流重畳部104、スイッチ(SW)110、112、NOT回路114、116、回転信号検出部120、回転状態検出部150、およびフリップフロップ(以下、単に「FF」とも言う。)160等を備えている。回転検出装置100は、例えば車両の空調装置における各ダンパーを駆動するモータ、あるいはパワーウィンドウを駆動するモータの回転角を検出するために用いられるものである。もちろん、車両の空調装置またはパワーウィンドウへの適用は本発明の実施態様としてのあくまでも一例である。
(電源部)
本実施形態の電源部は、直流電源102と、交流重畳部104とを備えている。直流電源102は、モータ20を回転駆動さるトルクを発生させるための電圧を発生する。
交流重畳部104は、交流電源106とカップリングコンデンサ108とから構成されており、モータ20の定常回転時および短絡制動時の双方ともにブラシ22、24間に流れるモータ電流の通電経路となる共通通電経路に電気的に接続している。交流電源106は、所定の周波数の交流電圧を発生する。カップリングコンデンサ108は、直流電源102から出力される直流電圧に交流電源106から出力される交流電圧を重畳させる。
図2に示すように、モータ20に印加される交流重畳電圧は、直流電圧Vbに、振幅Vsで周波数fの交流電圧が重畳された交直混在(脈流の一種)である。この交流重畳電圧がモータ20に印加されることにより、モータ20に流れるモータ電流も直流電流に交流電流が重畳された電流となる。
そして、モータ20に加わる電源電圧を制御してモータ20を定常回転させるか停止させるかは、SW110、112のオン、オフによりモータ20の通電経路を切り切替えることにより行われる。
図1に示すように、SW110にはFF160のQ端子の出力(Q出力とも言う。)の論理値がそのまま加わり、SW112にはFF160のQ出力の論理値がNOT回路114により反転して加わる。したがって、SW110、112の一方がオンであれば、他方はオフになる。
SW110がオンでSW112がオフの場合には、直流電源102から直流電圧がモータ20に加わるので、モータ20は定常回転する。SW110がオフでSW112がオンの場合には、モータ20と直流電源102との接続が遮断され、ブラシ22、24間で回路が短絡される。すると、モータ20が発電機として作動し、その発電エネルギーが電流検出抵抗R1によって消費され、これによりモータ20が短絡制動されてやがて停止する。
(回転信号検出部120)
回転信号検出部120は、電流検出部122と信号処理部130とを備えており、交流重畳部104と同様に前述した共通通電経路に電気的に接続している。回転信号検出部120は、交流重畳部104から直流モータ20に供給される交流電流または交流電圧または交流電力を検出し、検出した交流電流または交流電圧または交流電力に基づいてモータ20の回転角に応じた検出パルスSpを生成し出力する。
電流検出部122は、モータ20の共通通電経路上(詳しくはグランド電位側のブラシ24からグランド電位に至る通電経路上)に設けられている。信号処理部130は、電流検出部122により検出された通電電流(モータ電流)に基づく各種信号処理を行って検出パルスSpを生成する。
電流検出部122は、モータ20の共通通電経路上に挿入された電流検出抵抗R1からなり、この電流検出抵抗R1の両端の電圧が、モータ電流に応じた検出信号として信号処理部130へ取り込まれる。モータ電流については後述する。
尚、電流検出部122において、モータ20の通電経路上に設置した電流検出抵抗R1に代えて、コイルを設置してもよい。
図3に示すように、信号処理部130は、ハイパスフィルタ(HPF)132と、増幅部134と、包絡線検波部138と、ローパスフィルタ(LPF)140、比較部142とを備えている。
HPF132は、コンデンサC10および抵抗R2からなる周知の構成のものである。信号処理部130に取り込まれた電流検出抵抗R1による検出信号は、このHPF132によって、直流電流成分を含む所定の遮断周波数以下の帯域の信号がカットされ、交流電源106にて生成される交流電圧の周波数を含む、上記遮断周波数より高い周波数成分が抽出されて増幅部134に入力される。そのため、検出されたモータ電流(検出信号)のうち、直流電流成分はこのHPF132によって遮断され、交流電流成分のみが増幅部134へ入力されることとなる。
なお、HPF132に代えて、例えば、交流電流成分の周波数を含む所定の帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを用いるようにしてもよい。
電流検出抵抗R1により検出され、HPF132によって抽出された検出信号(交流電流成分)は、増幅部134にて増幅される。
増幅部134は、オペアンプ136と、オペアンプ136の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R3と、オペアンプ136の反転入力端子とグランド電位との間に接続された抵抗R4とを備え、HPF132から非反転入力端子に入力される検出信号が所定の増幅率にて増幅される。
増幅部134にて増幅された検出信号は、包絡線検波部138にて包絡線検波される。包絡線検波部138は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R5と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC11とを備えてなる。ダイオードD1のアノードには、増幅部134にて増幅された検出信号が入力される。
包絡線検波部138により、増幅部134から入力された交流の検出信号が包絡線検波され、交流電流成分の振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される。尚、包絡線検波部138から出力される検波信号の立ち下がりのなまりは、抵抗R5およびコンデンサC11の時定数に応じて変化する。
包絡線検波部138から出力された検波信号は、LPF140にて高周波成分がカットされた上で、比較部142に入力される。LPF140は、抵抗R6およびコンデンサC12からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R6にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
比較部142は、コンパレータ144と、一端がコンパレータ144の非反転入力端子に接続されて他端がLPF140に接続された抵抗R7と、コンパレータ144の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R8と、一端がコンパレータ144の反転入力端子に接続されて他端が抵抗R10に接続された抵抗R9とを備えている。
包絡線検波部138から出力された検波信号は、LPF140を介して比較部142に入力され、この比較部142において抵抗R7を介してコンパレータ144の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ144の反転入力端子には、抵抗R9、抵抗R10を介して設定される閾値が入力される。これにより、コンパレータ144では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
比較部142に入力される閾値は、本実施形態では、図5に示したモータ電流波形のうち振幅が小さい期間での検波信号よりも大きく、且つ、振幅が大きい期間での検波信号よりも小さい所定の値が設定されている。
そのため、振幅の小さい期間では、LPF140を介して包絡線検波部138から比較部142へ入力される検波信号はコンパレータ144の反転入力端子に入力される閾値よりも小さいため、コンパレータ144からはローレベルの信号が出力される。一方、振幅の大きい期間では、LPF140を介して包絡線検波部138から比較部142へ入力される検波信号はコンパレータ144の反転入力端子に入力される閾値よりも大きくなるため、コンパレータ144からはハイレベルの信号が出力される。
そして、コンパレータ144から出力されたローレベル、ハイレベルのパルス信号は、検出パルスSpとして、回転状態検出部150に入力される。
このように、信号処理部130では、電流検出抵抗R1にて検出されたモータ電流(検出信号)に対して低周波領域のカット、交流電流成分の増幅、包絡線検波といった各種信号処理を行った上で検出パルスSpが生成されるため、外乱やノイズが低減された正確な検出パルスSpが生成される。
(回転状態検出部150)
図1に示すように、回転状態検出部150は、パルスカウント部152とモータ制御部154とを備えており、回転信号検出部120から出力される検出パルスSpに基づいてモータ20の回転角および回転速度を検出する。
パルスカウント部152は、比較部142から検出パルスとしてパルス信号が出力される毎にカウントアップする。尚、コンパレータ144から出力されるパルス信号をパルスカウント部152に入力する前に、適宜波形整形およびレベル調整してもよい。
モータ制御部154は、例えばマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」とも言う。)から主に構成されており、パルスカウント部152から入力された検出パルスのパルス数に基づき、モータ20の回転角および回転速度を算出する。回転角は、パルスカウント部152が検出パルスをカウントするカウント数に基づいて算出される。また、回転速度は、単位時間当たりの検出パルスのカウント数に基づいて算出される。
そして、モータ制御部154は、検出した回転角を、モータ20の駆動対象である空調ダンパ、パワーウィンドウ等の位置を制御するために、モータ20を駆動制御するフィードバック信号として用いる。
また、モータ制御部154は、モータ20を短絡制動させて停止させる制動指令信号を出力する。制動指令信号については、後で詳細に説明する。
FF160(74HC74AP:東芝製)は、モータ制御部154から出力される制動指令信号と、回転信号検出部120から出力される検出パルスとに応じて変化するQ出力により、SW110、112のオンオフを切り替える。
(回転に伴うモータ回路の変化)
次に、モータ20が180°回転する間におけるモータ20内部の結線状態の変化、すなわちブラシ22、24間に形成されるモータ回路の変化を、図4の(A)に示す。図4の(A)に示すように、本実施形態のモータ20のモータ回路は、モータ20が180°回転する間に、状態A、状態B、および状態Cの3種類に変化する。
状態Aは、直流電源102の正極側(以下「Vb側」とも言う。)のブラシ22に第1整流子片41が接触し、グランド電位側(以下「GND側」とも言う。)のブラシ24に第2整流子片42が接触した状態である。この状態Aでのモータ20の等価回路、すなわちブラシ22、24間に形成されるモータ回路は、図中右側に示す回路となる。なお、Vbとは、図2で説明したように、直流電源102から出力される直流電圧を示すものである。
この状態Aでは、コンデンサC1と第3相コイルL3とが直列に接続された状態となっているため、ブラシ22、24間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ22から他方のブラシ24に至るまでの経路上には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Aでは、回路全体のインピーダンスが高くなるので、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅は小さい。
状態Bは、状態Aから時計回りに約50°回転した状態であり、Vb側のブラシ22に接触する整流子片が、状態Aのときの第1整流子片41から第3整流子片43へと切り替わっている。GND側のブラシ24には第2整流子片42が接触している。
この状態Bでも、コンデンサC1と第2相コイルL2とが直列に接続された状態となっているため、ブラシ22、24間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ22から他方のブラシ24に至るまでの経路上には必ずいずれかのコイルが存在することになる。そのため、この状態Bでも回路全体のインピーダンスは高く、故に、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅は小さい。なお、この状態Bと状態Aは、図の等価回路を比較して明らかなように、回路全体のインピーダンスは同じである。そのため、交流電流成分の振幅も同じ大きさである。
状態Cは、状態Bからさらに時計回りに約50°回転した状態であり、GND側のブラシ24に接触する整流子片が、状態A、Bのときの第2整流子片42から第1整流子片41へと切り替わっている。Vb側のブラシ22には第3整流子片43が接触している。つまり、状態Cでは、コンデンサC1が接続している一対の第1整流子片41と第3整流子片43の両方に一対のブラシ22、24が同時に接触している。
この状態Cでは、第2相コイルL2および第3相コイルL3の直列回路と、第1相コイルL1と、コンデンサC1とが、それぞれ並列接続された状態となる。そのため、ブラシ22、24間には、コンデンサC1のみの通電経路が存在する。これにより、回路全体のインピーダンスが低くなるので、モータ電流に含まれる交流電流成分の振幅は大きくなる。
このように、モータ20が180°回転する間には、ブラシ22、24と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴ってブラシ22、24間のモータ回路は状態A、B、Cの3種類に切り替わる。しかし前述したように、状態Aと状態Bは回路全体のインピーダンスが等しいため、180°回転の間に生じるインピーダンスの変化は2段である。
なお、モータ20の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスは変化するが、この切り替わり期間はモータ20が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
状態Cから更に回転が進むと、Vb側のブラシ22に接触する整流子片が、状態Cのときの第3整流子片43から第2整流子片42へと切り替わる。GND側のブラシ24には第1整流子片41が接触している。この状態は、上述した状態Aにおいて、Vb側のブラシ22とGND側のブラシ24とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Aと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態A’という。
この状態A’から更に回転が進むと、GND側のブラシ24に接触する整流子片が、状態A’のときの第1整流子片41から第3整流子片43へと切り替わる。Vb側のブラシ22には第2整流子片42が接触している。この状態は、上述した状態Bにおいて、Vb側のブラシ22とGND側のブラシ24とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Bと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態B’という。
この状態B’から更に回転が進むと、Vb側のブラシ22に接触する整流子片が、状態B’のときの第2整流子片42から第1整流子片41へと切り替わる。GND側のブラシ24には第3整流子片43が接触している。この状態は、上述した状態Cにおいて、Vb側のブラシ22とGND側のブラシ24とが入れ替わった状態であり、回路全体のインピーダンスは状態Cと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態C’という。
そして、この状態C’から更に回転が進むと、再び状態Aに切り替わり、以下、回転が進むにつれて状態B→状態C→状態A’→状態B’→状態C’→状態A→・・・と切り替わる。
つまり、モータ20は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が状態A、B、C、A’、B’、C’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、状態A、B、A’、B’は、いずれも同じインピーダンス(高インピーダンス)である。また、状態C、C’も同じインピーダンスであり、その値は状態A等のインピーダンスよりも非常に低い。
そのため、モータ電流は、図5に示すように、状態A、B、A’、B’のときは交流電流成分の振幅が小さく、状態C、C’のときは交流電流成分の振幅が大きくなる。
しかも、本実施形態では、モータ20の回転角によって変化するインピーダンスの差が大きくなるよう構成されている。すなわち、図4の(A)で説明したように、状態A、B、A’、B’のインピーダンスは、ブラシ22、24間にコンデンサC1のみの経路が生じないために高いインピーダンスとなるのに対し、状態C、C’のインピーダンスは、ブラシ22、24間にコンデンサC1のみの経路が生じて非常に低いインピーダンスとなる。
このように、状態A、B、A’、B’のときのインピーダンスと状態C、C’のときのインピーダンスに大きな差があるため、モータ電流中の交流電流成分の振幅も、状態A、B、A’、B’のときと状態C、C’のときとで、図5に示すように大きな差が生じる。なお、図5は、状態A、B、A’、B’のときのインピーダンスが状態C、C’のときのインピーダンスの約4倍の場合の波形を例示している。
そのため、信号処理部130において比較部142のコンパレータ144の反転入力端子に入力すべき閾値を、より高い自由度・範囲内で設定することができる。そして、例えば、閾値を、状態Aのときの検波信号と状態Cのときの検波信号の中間値付近の値に設定すれば、比較部142による比較がより正確に行われ、図5に示すように、回転角に応じた正確な検出パルスSpを確実に生成することができる。
ここで、前述したように、電機子30が180°回転する間に、モータ回路は状態A、状態B、および状態Cの3種類に変化し、状態Cのインピーダンスが状態A、状態Bよりも小さくなる。すなわち、電機子30が180°回転する間の120°の期間は交流成分の振幅が小さくなり、60°の期間は振幅が大きくなる。したがって、振幅が大きい期間をTon、振幅が小さい期間をToffとすると、定常回転時においては、Ton:Toff=1:2なる。
ところで、交流電源106から出力される交流電圧の周波数は、本実施形態では、状態A、B、A’、B’のモータ回路における共振周波数をf1、状態C、C’のモータ回路における共振周波数をf2としたとき、これら各共振周波数とはいずれも異なる周波数に設定されている。より具体的には、これら各周波数f1、f2のいずれよりも大きい所定の周波数の交流電流が交流電源106から供給されるように構成されている。
図4の(B)に、図4の(A)に示した各状態におけるインピーダンスの周波数特性を示す。上述の通り、状態A、B、A’、B’のモータ回路のインピーダンスは同じである。この状態A、B、A’、B’の場合、コンデンサC1の影響はほとんどなく、共振周波数f1で小さなピーク値が生じるもの、全体としてみれば周波数が高くなるほどインピーダンスが増加する特性となる。
これに対し、状態C、C’の場合、各相コイルL1、L2、L3とコンデンサC1との共振によってインピーダンス特性は大きく変化し、共振周波数f2を中心(最大値)としてインピーダンスは小さくなる。そのため、状態A、B、A’、B’と状態C、C’とでは、インピーダンスが一致(特性が交差)する周波数f3を除き、インピーダンスが異なる。特に、共振周波数f1を中心とする所定帯域や、周波数f3よりもある程度高い周波数以上の帯域では、インピーダンスの比が大きくなる。そのうち特に、周波数f3よりもある程度高い周波数以上の領域では、例えば周囲温度の変化によってコンデンサC1の静電容量値が変化して共振周波数f1、f2が変化しても、インピーダンス比の変化が少ないため、回路設計上の観点からも、交流電源106の交流電圧の周波数として使用しやすい領域である。
そのため、本実施形態では、交流電源106の交流電圧の周波数を、周波数f3よりも高い所定の周波数としている。
(短絡制動時のモータ電流)
続いて、回転中のモータ20が停止する際のモータ電流を図6に示す。なお、図6では、インピーダンスが大きくて交流電流成分の振幅の小さい期間(状態A、B、A’B’となる期間)については,モータ電流の交流電流成分の波形が非常に小さいため図示を省略している。
図6に示す例では、回転中のモータ20に短絡制動をかけて停止させる際、モータ20への直流電源102からの直流電圧の印加(直流電流の電源供給)をSW110をオフすることにより停止させる。一方、交流電源106からの交流電圧(交流電流)については、モータ20の駆動に関与するものではなく、あくまでもモータ20の回転角を検出する目的で供給されるものであるため、回転中か短絡制動中かに関わらず、モータ20の回転が制御されている間は常時モータ20に印加される。
そのため、短絡制動開始後(直流電源102からの直流電圧印加停止後)のモータ電流は、図示の如く、誘導起電力によって生じる電流に交流電源106からの交流電流が重畳したものとなる。このうち、誘導起電力による電流の大きさは、モータ20の回転速度が低くなるほど小さくなるため、この誘導起電力による電流は徐々に小さくなり、モータ20が停止したときにはこの電流もゼロになる。
一方、交流電流は、上記のように回転角検出のために常に交流電源106から供給されるものであるため、図6に示すように、モータ20の回転速度に関係なく、回転角に応じた(モータ回路のインピーダンスの変化に応じた)振幅の交流電流が流れる。そのため、モータ20の回転速度に関係なく、モータ20の回転角を検出することができる。
モータ20が停止するときには、電機子30の回転速度が遅くなるので、図6に示すように、インピーダンスの変化に伴う検出パルスの発生間隔およびパルス幅も長くなる。
そして、本実施形態では、検出パルスSpはモータ20が180°回転する毎に生成される。そのため、この検出パルスSpが生成される毎にモータ20が180°回転したものとして、モータ20の回転角を検出することができる。
(短絡制動の開始タイミング)
モータ制御部154は、モータ20が回転している定常回転時には、制動指令信号を「Low(L)」にしてFF160に出力する。図1に示すように、FF160のD端子およびCK(クロック)端子はグランドに接続されているので、D端子およびCK端子の入力(D入力、CK入力とも言う。)は常に「L」である。したがって、図7の(A)の真理値表に示すように、否定入力を表すnotPR端子の入力(notPR入力とも言う。)となる制動指令信号が「L」の場合、Q出力は「H」になる。
尚、D端子およびCK端子をグランドに接続していない、東芝製のFF(74HC74AP)の真理値表を図7の(B)に示しておく。
Q出力が「H」の場合、SW110はオンになり、SW112はオフになる。これにより、直流電源102の直流電圧がモータ20に加わるので、モータ20は回転する。
一方、モータ制御部154は、パルスカウント部152が出力するカウント数から、モータ20の駆動対象である空調用のダンパ、パワーウィンドウ等が目標位置に達したことを検出すると、図6に示すように、制動指令信号を「High(H)」にしてFF160に出力する。
notPR入力となる制動指令信号が「H」になると、Q出力は、否定入力を表すnotCLR端子の入力(notCLR入力とも言う。)によって決定される。notCLR端子には、NOT回路116を介して信号処理部130の出力である検出パルスが入力される。
制動指令信号(notPR入力)が「L」から「H」になった状態で、検出パルスが「L」、つまりnotCLR入力が「H」のときには、Q出力の値は一つ前のQ出力の値になる。このときの一つ前のQ出力の値は、notPR入力が「L」のときの値であるから「H」である。
Q出力が「H」の場合、SW110はオン、SW112はオフになる。この状態では、モータ20への直流電圧の印加は続き、短絡制動は実行されない。すなわち、制動指令信号が「H」になっても、検出パルスが「L」の間は短絡制動は実行されない。そして、制動指令信号(notPR入力)が「H」の状態で、検出パルスが「L」から「H」、つまりnotCLR入力が「H」から「L」になると、Q出力は「L」になる。
Q出力が「L」になると、SW110はオフになり、SW112はオンになるので、モータ20への直流電圧の印加は遮断され、ブラシ22、24間が短絡される。したがって、短絡制動が開始される。
尚、NOT回路114を介してSW112に加わるQ出力の否定信号を制動開始信号とも言う。
一方、制動指令信号(notPR入力)が「L」から「H」になったときに検出パルスが「H」、つまりnotCLR入力が既に「L」の状態であれば、Q出力は「L」になる。この場合には、制動指令信号(notPR入力)が「L」から「H」になったときにSW110はオフになり、SW112はオンになるので、モータ20への直流電圧の印加は遮断され、ブラシ22、24間が短絡される。
このように、制動指令信号(notPR入力)が「H」のときに検出パルスが「H」であれば、短絡制動が開始される。
図6に示すように、短絡制動が開始されると、モータ電流にサージ電流300が発生するので、HPF後の検出電流の振幅の大きい期間にサージ電流300の成分302が検出される。この成分302は、信号処理部130の比較部142が振幅の大きい交流成分の出力として生成するパルス信号の「H」部分に点線304で示すように吸収される。その結果、短絡制動によりサージ電流が発生しても、サージ電流により新たなパルス信号は発生しない。
このように、モータ20の駆動対象が目標位置に達したことをモータ制御部154が検出し、制動指令信号を「H」にしても、検出パルスが「L」のときにはQ出力の否定信号、つまり制動開始信号は「H」にならず、検出パルスが「H」のときに制動開始信号は「H」になる。
これにより、サージ電流により発生するパルス成分は、交流成分の振幅の小さい期間に対応する検出パルスの「L」の期間には生成されず、交流成分の振幅の大きい期間に対応する検出パルスの「H」の期間に生成される。したがって、サージ電流により発生するパルス成分を、検出パルスの「H」の期間に吸収させることができる。
このように、短絡制動を開始してサージ電流が発生しても新たなパルス信号は発生しないので、パルスカウント部152が出力するカウント数に基づいて、モータ制御部154は、モータ20が停止するときの回転角を誤検出することなく、高精度に検出できる。
(モータ制御ルーチン)
図8に、モータ制御ルーチンを示す。図8において「S」はステップを表している。
まず、モータ20を駆動せず、モータ20が停止している状態では、S400においてモータ制御部154は、制動指令信号を「H」にする。これにより、FF160のnotPR入力は「H」になる。モータ20には交流電源106から交流電圧が印加されているので、信号処理部130の出力であるnotCLR入力の値は、「H」または「L」のいずれかである。
ただし、回転検出装置100への通電開始時には、Q出力は「L」であるから、notPR入力が「H」であれば、notCLR入力の値に関わらず、Q出力は「L」である。この状態では、SW110はオフであり、SW112はオンであるから、モータ20への直流電圧の印加が遮断され、モータ20は回転停止状態を継続する。
次に、S402においてモータ制御部154は、モータ20を駆動する条件が成立しているか否かを判定する。モータ20の駆動条件の成立は、例えば、空調の風量調整が指令されたか、パワーウィンドウの上げ下げが指令されたかによって判定する。モータ20の駆動条件が成立していない場合(S402:No)、モータ制御部154は本ルーチンを終了する。
モータ20の駆動条件が成立している場合(S402:Yes)、S404においてモータ制御部154は、制動指令信号を「L」にする。これにより、notPR入力は「L」になり、notCLR入力の値に関わらずQ出力は「H」になる。この状態では、SW110はオンであり、SW112はオフである。
これにより、モータ20に直流電圧が印加されるので、モータ20は回転する(S406)。
モータ20が回転すると、モータ制御部154は、パルスカウント部152から出力されるカウント数に基づいて、モータ20の回転状態として回転角および回転速度を算出する(S408)。
次に、モータ制御部154は、モータ20の制動条件が成立しているか否かを判定する(S410)。モータ20の制動条件の成立は、モータ20の駆動対象である空調ダンパまたはパワーウィンドウが目標位置に達したか否かをパルスカウント部152のカウント数で判定する。駆動対象が目標位置に達していない場合にはモータの制動条件が成立していないと判定する(S410:No)。この場合、モータ制御部154は本ルーチンを終了する。
駆動対象が目標位置に達しモータの制動条件が成立している場合(S410:Yes)、S412においてモータ制御部154は、制動指令信号を「H」にする。これにより、notPR入力は「H」になる。
そして、制動指令信号(notPR入力)が「H」の状態で検出パルスが「H」、つまりnotCLR入力が「L」であれば(S414:Yes)、Q出力は「L」になる(S416)。
Q出力が「L」であれば、SW110はオフになり、SW112はオンになる(S418)。これにより、モータ20への直流電圧の印加は遮断され、ブラシ22、24間が短絡されるので、モータ20に対する短絡制動が開始される。
すると、一定時間後にモータ20は完全に停止する。これに伴い新たな検出パルスが発生しないので、パルスカウント部152によるカウントは終了する(S420)。
以上説明した第1実施形態では、モータ20が目標回転角まで回転し、モータ制御部154から出力される制動指令信号が「H」になっても、検出パルスが「L」、つまりHPF132の出力において交流成分の振幅が小さい期間では、制動開始信号であるFF160のQ出力は「L」であり短絡制動を開始しない。
これに対し、モータ制御部154から出力される制動指令信号が「H」であり、かつ検出パルスが「H」、つまりHPF132の出力において交流成分の振幅が大きいときには短絡制動を開始する。
これにより、短絡制動を開始するときにモータ電流にサージ電流が発生しても、交流成分の振幅の大きい期間に吸収されるので、サージ電流が発生しても新たな検出パルスは発生しない。したがって、サージ電流により発生する検出パルスをカウントすることを防止し、モータ20の回転状態を誤検出することを防止できる。
尚、本発明では、検出パルスではなく、HPF132から出力される交流成分のまま、交流成分の振幅の変化に基づいてモータ20の回転状態を検出してもよい。
尚、本実施形態において、相コイルL1に並列にコンデンサC1を接続し、電機子30の回転に伴いブラシ22、24間でリアクタンスが周期的に変化する構成が、本発明の可変機構に相当し、交流重畳部104が本発明の交流重畳手段に相当し、電流検出部122および信号処理部130を有する回転信号検出部120が本発明の通電検出手段に相当する。また、パルスカウント部152およびモータ制御部154を有する回転状態検出部150が本発明の回転状態検出手段に相当し、SW110およびSW112が本発明の制動手段に相当し、NOT回路116、モータ制御部154およびFF160が本発明のタイミング制御手段に相当し、信号処理部130が本発明のパルス生成手段に相当する。
また、図8のS412〜S418の処理は本発明の制動手段およびタイミング制御手段により実行される機能に相当する。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図9および図10に示す。図9に示すように、第2実施形態の直流モータ装置4の回転検出装置170は、上記第1実施形態のFF160に代えて、マイコン172を使用し、第1実施形態のNOT回路116を除去したものである。
マイコン172には、モータ制御部154からの制動指令信号(IN1)と、信号処理部130から検出パルス(IN2)とがそれぞれ入力される。
モータ20が定常回転しているときには、モータ制御部154から制動指令信号として「L」がIN1に出力される。この場合には、図10に示すマイコン172の入出力信号の真理値表に示すように、マイコン172のOUT出力は「H」である。この場合、SW110はオンであるから、直流電源102からモータ20に直流電圧が印加され、モータ20は回転する。一方、SW112はオフであるから、ブラシ22、24間は短絡されず、モータ20に制動力は加わらない。
モータ20が目標回転角まで回転すると、モータ制御部154は、制動指令信号を「H」にする。そして、マイコン172は、制動指令信号(IN1)が「L」から「H」になった状態で、検出パルス(IN2)が「L」のときには、OUT出力を一つ前のOUT出力の値にする。このときの一つ前のOUT出力の値は、制動指令信号(IN1)が「L」のときの値であるから「H」である。
OUT出力が「H」の場合、SW110はオン、SW112はオフになる。この状態では、モータ20への直流電圧の印加は続き、短絡制動は実行されない。すなわち、制動指令信号が「H」になっても、検出パルスが「L」の間は短絡制動は実行されない。そして、制動指令信号(IN1)が「H」の状態で、検出パルス(IN2)が「L」から「H」になると、OUT出力は「L」になる。
OUT出力が「L」になると、SW110はオフになり、SW112はオンになるので、モータ20への直流電圧の印加は遮断され、ブラシ22、24間が短絡される。したがって、短絡制動が開始される。
一方、制動指令信号(IN1)が「L」から「H」になったときに既に検出パルス(IN2)が「H」であれば、OUT出力は「L」になる。この場合には、制動指令信号が「L」から「H」になったときにSW110はオフになり、SW112はオンになるので、モータ20への直流電圧の印加は遮断され、ブラシ22、24間が短絡される。
第2実施形態では、マイコン172は、モータ20が目標回転角まで回転したことをモータ制御部154が検出して出力する制動指令信号をIN1の入力信号とし、信号処理部130から出力される検出パルスをIN2の入力信号とした。
これに対し、マイコン172は、信号処理部130から検出パルス、ならびにモータ制御部154から制動指令信号を入力せず、信号処理部130のHPF132で抽出され増幅部134で増幅された交流成分の信号を直接入力してもよい。
マイコン172の処理速度が高速であれば、マイコン172は、HPF後の交流成分の振幅の変化からモータ20の回転状態を検出し、モータ20が目標回転角まで回転したことを検出できる。そして、モータ20が目標回転角まで回転し、交流成分の振幅が大きい期間で、制動開始信号(OUT)を出力できる。
尚、第2実施形態では、モータ制御部154およびマイコン172が本発明のタイミング制御手段に相当する。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を図11および図12に示す。第3実施形態の直流モータ装置6の回転検出装置180は、検出パルスの立ち上がりに同期して制動開始信号を出力することが、第1、第2実施形態の回転検出装置と異なっている。
図11に示すように、FF160のD入力は「L」に固定され、notCLR入力は「H」に固定されている。そして、検出パルスがCK端子に入力されている。
これにより、図12に示すように、モータ制御部154から出力される制動指令信号(notPR入力)が「L」の場合、検出パルス(CK入力)の値に関わらず、Q出力は「H」である。この場合、SW110はオンであり、SW112はオフであるから、モータ20に対して短絡制動は開始されない。
制動指令信号(notPR入力)が「H」の場合、Q出力は検出パルス(CK入力)の立ち上がりで「L」になる。Q出力が「L」になると、SW110はオフになり、SW112はオンになるので、モータ20に対する短絡制動が開始される。つまり、モータ制御部154から出力される制動指令信号が「H」の場合、検出パルスの立ち上がりに同期して短絡制動が開始される。
検出パルス(CK入力)の立ち下がりでは、一つ前のQ出力が保持される。したがって、制動指令信号が「H」であっても、一つ前のQ出力が「H」であればQ出力は「H」のままであるから、モータ20に対して短絡制動は開始されない。一つ前のQ出力が「L」であればQ出力は「L」のままであるから、モータ20に対して実行されていた短絡制動は継続される。
第3実施形態では、制動指令信号が「H」のときに、検出パルスの立ち上がりに同期してモータ20に対する短絡制動が開始されるので、検出パルスが「H」になる期間の初期に、短絡制動によるサージ電流が発生する。したがって、短絡制動の開始タイミングが遅れ、パルス信号が「H」から「L」になってからサージ電流が発生することを防止できる。
これにより、検出パルスが「H」になる期間内でサージ電流を発生させることができるので、短絡制動によるサージ電流が検出パルスとして新たに生成されることはない。したがって、信号処理部130が生成する検出パルスに対して何らかの処理をすることなく、検出パルスに基づいて直流モータ20が停止するときの回転角を高精度に検出できる。
第3実施形態では、モータ制御部154およびFF160が、制動指令信号が「H」のときに、検出パルスの立ち上がりに同期してモータ20に対する短絡制動を開始させる本発明のタイミング調整手段に相当する。
尚、制動指令信号が「H」のときに、検出パルスの立ち上がりに同期してモータ20に対する短絡制動を開始させる機能を、モータ制御部154およびFF160に代えてマイコンで実行してもよい。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態を図13および図14に示す。第4実施形態の直流モータ装置8の回転検出装置190は、検出パルスの立ち下がりに同期して制動開始信号を出力することが、第3実施形態の回転検出装置180と異なっている。これ以外の構成は、実質的に第3実施形態と同一である。
図13に示すように、FF160のCK端子には、信号処理部130から出力される検出パルスがNOT回路192を介して入力されている。
これにより、制動指令信号(notPR入力)が「H」の場合、Q出力は、CK入力の立ち上がり、つまり検出パルスの立ち下がりで「L」になる。Q出力が「L」になると、SW110はオフになり、SW112はオンになるので、モータ20に対する短絡制動が開始される。つまり、モータ制御部154から出力される制動指令信号が「H」の場合、検出パルスの立ち下がりに同期して短絡制動が開始される。
CK入力の立ち下がり、つまり検出パルスの立ち上がりでは、一つ前のQ出力が保持される。したがって、制動指令信号が「H」であっても、一つ前のQ出力が「H」であればQ出力は「H」のままであるから、モータ20に対して短絡制動は開始されない。一つ前のQ出力が「L」であればQ出力は「L」のままであるから、モータ20に対して実行されていた短絡制動は継続される。
第4実施形態では、制動指令信号が「H」のときに、検出パルスの立ち下がりに同期してモータ20に対する短絡制動が開始されるので、検出パルスが立ち下がり、「L」になる期間の初期に、図14の(B)に示すように、短絡制動によるサージ電流310がモータ電流に発生する。すると、HPF後の検出電流の振幅の小さい期間にサージ電流310の成分312が検出される。
これにより、検出パルスが「L」になる期間でサージ電流が発生するので、短絡制動によるサージ電流310が点線に示す検出パルス314として新たに生成される。この検出パルス314はモータ20の回転角を検出する際の誤信号であるから、モータ制御部154は、パルスカウント部152がカウントするパルスカウント数を−1することにより、モータ20が停止するときの回転角を正しく検出できる。
第4実施形態では、モータ制御部154、FF160およびNOT回路192が、制動指令信号が「H」のときに、検出パルスの立ち下がりに同期してモータ20に対する短絡制動を開始させる本発明のタイミング調整手段に相当する。
尚、制動指令信号が「H」のときに、検出パルスの立ち下がりに同期してモータ20に対する短絡制動を開始させる機能を、モータ制御部154、FF160およびNOT回路192に代えてマイコンで実行してもよい。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態を図15に示す。図15の直流モータ装置10では、第1実施形態〜第4実施形態と比較して、短絡制動用のSW112を除去し、SW110と並列にダイオード202を接続している点が異なっている。尚、図15では、SW110のオン、オフの切り替えを、第1実施形態〜第4実施形態と同様に回転状態検出部150とFFとの組み合わせで制御してもよいし、SW112を除去したためにSW110だけの切り替えであるから、回転状態検出部150だけで制御してもよい。
ダイオード202は、直流電源202からモータ20への電流流れは許可するが、モータ20から直流電源102への電流流れは禁止する向きに接続されている。そして、モータ20を定常回転させるときにはSW110をオンにし、モータ20を制動させるときにはSW110をオフにする。
SW110をオフにしても、ダイオード202を介しモータ20と直流電源102との間の通電経路は保持される。したがって、モータ20が回転中にSW110をオフにし、直流電源102からモータ20への電力供給が遮断されると、回転中のモータ20は発電機として作動し、ダイオード202を通して直流電源102側に電流を流す。これにより、モータ20に回生制動力が働くので、モータ20は停止する。
第5実施形態では、SW110およびダイオード202が本発明の制動手段に相当する。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態を図16〜図20に示す。図16および図17に示すように、第6実施形態の直流モータ装置12の回転検出装置210は、上記第1実施形態から第5実施形態と比較して、主として、直流電源102、交流重畳部104からモータ20への電源供給がモータドライバ212を介して行われることが異なっている。尚、第1実施形態の回転検出装置100と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。
図16に示すように、モータドライバ212は、4つのスイッチからなる周知のHブリッジ回路(いわゆるフルブリッジ)にて構成されたものである。
モータドライバ212は、例えばMOSFETからなるSW1、SW2、SW3、SW4を備えている。ハイサイド側のSW1とローサイド側のSW3との接続点(即ちHブリッジ回路の一方の中点)はモータ20における一方のブラシ22に接続されている。同様に、ハイサイド側における他方のSW2とローサイド側のSW4との接続点(ブリッジ回路の他方の中点)はモータ20における他方のブラシ24に接続されている。
ドライバ制御部214は、後述するドライバ信号1、2に基づいて、図18に示す真理値表に示すように、SW1、2、3、4のオン、オフを制御する。
(停止制御)
モータ20が停止しモータ20の回転角を検出しない場合、図17に示す回転状態検出部220のモータ制御部222は、制動指令信号1、2を「L」にする。
制動指令信号1、2が「L」の場合、FF160、162のnotPR入力、D入力およびnotCLR入力が「L」であるから、図19の真理値表からFF160、162のQ出力は「H」になる。しかし、制動指令信号1、2が「L」であるから、AND回路230、232の出力であるドライバ信号1、2は「L」である。
図18に示すように、ドライバ信号1、2が「L」の場合、ドライバ制御部214は、モータドライバ212のSW1〜4をオフにする。したがって、制動指令信号1、2が「L」の場合、モータ20には直流電源102から直流電圧が印加されないので、モータ20は停止状態を継続する。また、交流電圧も印加されないので、モータ20の回転角も検出されない。
(正転制御)
正転制御の場合、モータ制御部222は、制動指令信号1を「H」にし、制動指令信号2を「L」にする。
制動指令信号1が「H」、制動指令信号2が「L」の場合、FF160のnotPR入力およびD入力が「L」、notCLR入力が「H」であるから、図19の真理値表からFF160のQ出力は「H」である。そして、制動指令信号1が「H」であるから、AND回路230の出力であるドライバ信号1は「H」である。
一方、制動指令信号1が「H」、制動指令信号2が「L」の場合、FF162のnotPR入力およびD入力が「H」、notCLR入力が「L」、であるから、図19の真理値表から、FF162のQ出力は「L」である。そして、制動指令信号2が「L」であるから、AND回路232の出力であるドライバ信号2は「L」である。
図18に示すように、ドライバ信号1が「H」、ドライバ信号2が「L」になることにより、ドライバ制御部214は、モータドライバ212のSW1、4をオンにし、SW2、3をオフにする。したがって、制動指令信号1が「H」、制動指令信号2が「L」の場合、モータ20は正転する。
(逆転制御)
逆転制御の場合、モータ制御部222は、制動指令信号1を「L」にし、制動指令信号2を「H」にする。
制動指令信号1が「L」、制動指令信号2が「H」の場合、FF160のnotPR入力およびD入力が「H」、notCLR入力が「L」であるから、図19の真理値表からFF160のQ出力は「L」である。そして、制動指令信号1が「L」であるから、AND回路230の出力であるドライバ信号1は「L」である。
一方、制動指令信号1が「L」、制動指令信号2が「H」の場合、FF162のnotPR入力およびD入力が「L」、notCLR入力が「H」、であるから、図19の真理値表から、FF162のQ出力は「H」である。そして、制動指令信号2が「H」であるから、AND回路232の出力であるドライバ信号2は「H」である。
図18に示すように、ドライバ信号1が「L」、ドライバ信号2が「H」になることにより、ドライバ制御部214は、モータドライバ212のSW1、4をオフにし、SW2、3をオンにする。したがって、制動指令信号1が「L」、制動指令信号2が「H」の場合、モータ20は逆転する。
(短絡制動制御)
モータ20が目標回転角に達すると、モータ制御部222は、制動指令信号1、2を「H」にする。
制動指令信号1、2が「H」の場合、FF160、162のnotPR入力、D入力およびnotCLR入力が「H」であるから、図19の真理値表からFF160、162のQ出力は、CK入力の立ち上がりで「H」になり、立ち下がりで一つ前のQ出力の値になる。
正転制御時および逆転制御時では、FF160、162の一方のQ出力は「H」で他方は「L」であるから、制動指令信号1、2、FF160、162のnotPR入力、D入力およびnotCLR入力が「H」のときに、両方のQ出力が「H」、つまりドライバ信号1、2が「H」になるのは、CK入力の立ち上がりである。
制動指令信号1、2、FF160、162のnotPR入力、D入力およびnotCLR入力が「H」であり、両方のQ出力が「H」であれば、Q出力、ドライバ信号1、2の状態は「H」のまま継続する。
図18に示すように、ドライバ信号1、2が「H」になることにより、ドライバ制御部214は、SW1、2をオフにし、SW3、4をオンにする。これにより、回転中のモータ20のブラシ22、24間が短絡するので、短絡時に発生するモータ20の逆起電力によるエネルギーが、ローサイド側のSW3、4、およびモータ20によって消費される。その結果、モータ20が制動され、やがて停止する。
(モータ制御ルーチン)
次に、図20に基づいて第6実施形態のモータ制御ルーチンを説明する。図20において「S」はステップを表している。
まず、モータ20を駆動せず、モータ20が停止している状態では、S430においてモータ制御部222は、制動指令信号1、2を「L」にする。これにより、ドライバ信号1、2は「L」になるので、SW1〜SW4はオフになる。この場合には、モータ20に直流電圧および交流電圧は印加されず、モータ20は回転停止状態を継続する。
次に、S432においてモータ制御部222は、モータ20を駆動する条件が成立しているか否かを判定する。モータ20の駆動条件の成立は、例えば、空調の風量調整が指令されたか、パワーウィンドウの上げ下げが指令されたかによって判定する。モータ20の駆動条件が成立していない場合(S432:No)、モータ制御部222は本ルーチンを終了する。
モータ20の駆動条件が成立している場合(S432:Yes)、S434においてモータ制御部222は、例えば正転制御の場合には、制動指令信号1を「H」にし、制動指令信号2を「L」にする。これにより、FF160のQ出力は「H」になり、FF160のQ出力は「L」になる。そして、ドライバ信号1は「H」になり、ドライバ信号2は「L」になる。その結果、SW1、4がオンになり、SW2、3がオフになるので、モータ20は正転方向に回転する(S436)。
モータ20が回転すると、モータ制御部222は、パルスカウント部152から出力されるカウント数に基づいて、モータ20の回転状態として回転角および回転速度を算出する(S438)。
次に、モータ制御部222は、モータ20の駆動対象である空調ダンパまたはパワーウィンドウが目標位置に達したか否かにより、モータ20の制動条件が成立しているか否かを判定する(S440)。モータ制御部222は、モータ20の回転角が目標回転角に達しているか否かにより、駆動対象が目標位置に達したか否かを判定する。
駆動対象が目標位置に達していない場合にはモータの制動条件が成立していないと判定する(S440:No)。この場合、モータ制御部222は本ルーチンを終了する。
駆動対象が目標位置に達しモータの制動条件が成立している場合(S440:Yes)、S442においてモータ制御部222は、制動指令信号1、2を「H」にする。これにより、CKが立ち上がるまで、FF160のQ出力は前の状態である「H」のまま、FF160のQ出力は前の状態である「L」のままである。したがって、ドライバ信号1は「H」であり、ドライバ信号2は「L」である。
CKが立ち上がると(S444:Yes)、FF160、162の両方のQ出力が「H」になるので、ドライバ信号1、2の両方が「H」になる(S446)。
その結果、SW1、2がオフになり、SW3、4がオンになるので、モータ20に対する短絡制動が開催される(S448)。
すると、一定時間後にモータ20は完全に停止する。これに伴い新たな検出パルスが発生しないので、パルスカウント部152によるカウントは終了する(S450)。モータが完全に停止すると、モータ制御部222は、制動指令信号1、2を「L」にする(S452)。これにより、ドライバ信号1、2が「L」になるので、SW1〜SW4はオフになる。その結果、モータ20は回転停止状態を継続する。
尚、モータ20を逆転する場合には、S434で制動指令信号1を「L」にし、制動指令信号2を「H」にする。これにより、S436においてSW1、4がオフになり、SW2、3がオンになる。
このように、第6実施形態では、Hブリッジ回路で構成されたモータドライバ212により、モータ20を正転又は逆転できる。
第6実施形態では、モータドライバ212が本発明の制動手段に相当し、パルスカウント部152およびモータ制御部222を有する回転状態検出部220が本発明の回転状態検出手段に相当し、モータ制御部222およびFF160、162、AND回路230、232が、制動指令信号1、2が「H」のときに、検出パルスの立ち上がりに同期してモータ20に対する短絡制動を開始させる本発明のタイミング調整手段に相当する。
また、図20のS442〜S448の処理は本発明の制動手段およびタイミング制御手段により実行される機能に相当する。
尚、第6実施形態では、モータ20を制動させるときに、図16に示すモータドライバ212のSW1、2をオフにし、SW3、4をオンにすることにより、モータ20を短絡制動させた。
これに対し、SW1、2、3、4のオン、オフを所定のデューティ比にて切り替えることによりモータ20を制動させるPWM制動を行ってもよい。
具体的には、SW1およびSW4をオンさせてSW2およびSW3をオフさせることによりモータ20の一方のブラシ22が高電位となる期間(つまりモータ20が正転しようとする期間)と、SW2およびSW3をオンさせてSW1およびSW4をオフさせることにより他方のブラシ24が高電位となる期間(つまりモータ20が逆転しようとする期間)とを、デューティ比に基づいて交互に切り替える。
例えば、モータ20に印加される直流電圧の平均値が0となるように、デューティ比を50[%]とする。このように、デューティ比50%でモータ20に印加される直流電源の極性を切り替える(回転方向を切り替える)ことにより、モータ20には特定方向への回転トルクが与えられず、回転中のモータ20に制動がかかって停止することになる。
尚、デューティ比Swを50[%]としたのはあくまでも一例であり、デューティ比は、モータ20の回転を停止し得る程度の範囲の値を適宜設定することができる。
また、モータ20に印加される直流電源102からの直流電圧の印加極性を上記デューティ比にて切り替える際における、その切り替えのPWM周波数は、適宜設定することができる。ただし、交流重畳部104から印加される交流電圧の周波数(即ち交流電源106から出力される交流電圧の周波数)とは異なる周波数とする必要がある。より具体的には、交流電圧の周波数の方がPWM周波数よりも高い値となるようにするとよい。
これにより、信号処理部130の入力段にあるHPF132にて、PWM周波数の成分を除去して交流重畳部104からの交流電圧による交流成分のみを容易に取り出すことができる。そのようにして交流重畳部104による交流成分を取り出せれば、その後、包絡線検波部138によって包絡線検波を行い、その包絡線検波後の検波信号に基づいて回転パルスSpを生成することができる。
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態を図21に示す。上記第1実施形態から第6実施形態では、複数の相コイルをデルタ結線した例について述べたが、第7実施形態のモータ240では、3つの相コイルL11、L12、L13をスター結線している。
そして、コイルL11、L12にそれぞれコンデンサC1、C2が並列接続されている。これにより、電機子242の回転に伴い、ブラシ22、24間のリアクタンスが変化し、HPF132から出力される交流成分の振幅の大きさが変化する。したがって、この交流成分の振幅変化から生成される検出パルスに基づいて、上記第1実施形態〜第6実施形態と同様に、モータ240に対する短絡制動の開始タイミングを決定できる。
第7実施形態では、コンデンサC1、C2が本発明の可変機構に相当する。
[第8実施形態]
本発明の第8実施形態を図22および図23に示す。
図22に示すように、モータ250は、ブラシ22、24、整流子40、ハウジング252と、このハウジング252内に収容された電機子270と、回転軸280とを備えている。電機子270は、ハウジング252の軸心に配置されている回転軸280に固定され、この回転軸280と共に回転する。
第8実施形態のモータ250は、コンデンサC1を相コイルL1に並列に接続していない点と、ハウジング252の内周面に凸部254を設けている点とが第1実施形態のモータ20と異なっている。一方、それ以外の構成、つまり、ブラシ22、24、整流子40、相コイルL1、L2、L3の構成、ならびに第1実施形態の図1には図示していないが、ハウジング252、永久磁石260、262、ロータコア272、回転軸280の構成は、第1実施形態のモータ20と実質的に同一である。
ハウジング252は、略円筒形の形状をなし、その内周面には、界磁発生用の2つの永久磁石260、262が径方向に互いに対向するように固定されている。周方向で見れば、2つの永久磁石が所定間隔を隔てて固定されている。電機子270のロータコア272と対向する面側の永久磁石260、262の極性は、一方がN極で他方がS極である。つまり、本実施形態のモータ250は界磁が2極の直流モータとして構成されている。
また、ハウジング252は軟磁性体である継鉄(ヨーク)にて形成されたものであり、内周面に固定された2つの永久磁石260、262と共にモータ250の磁気回路を構成している。
電機子270は、ロータコア272と電機子コイル278とから主に構成されている。ロータコア272は、軟磁性体にて形成されたものであり、3つのティース(突極)274、275、276を有し、電機子コイル278が巻回されている。具体的には、第1ティース274に第1相コイルL1が巻回され、第2ティース275に第2相コイルL2が巻回され、第3ティース276に第3相コイルL3が巻回されている。これら3つの相コイルL1、L2、L3はデルタ結線されており、電機子コイル278を構成している。
また、回転軸280には、整流子40が固定されており、この整流子40には、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ22、24が摺接している。
ハウジング252の内周面において、2つの永久磁石260、262の間に、凸部254が設けられている。ハウジング252の内周面には、2つの永久磁石260、262が周方向において所定の間隔を隔てて固定されているため、周方向において永久磁石260、262の存在しない領域(磁石間領域)が2箇所存在している。本実施形態では、図22に示す通り、このうち1箇所の磁石間領域に、ハウジング252の内周面から径方向内側へ突出するように凸部254が設けられている。また、この凸部254は、2つの永久磁石260、262のいずれとも接触しないよう、周方向において各永久磁石260、262の双方からそれぞれ所定間隔を隔てて設けられている。
凸部254は、軟磁性体の材料で形成されたものであり、周方向に所定の長さを有し、かつ、径方向に所定の厚みを有している。そして、この凸部254が設けられていることにより、ロータコア272とハウジング252により構成される磁気回路の磁気抵抗は、ロータコア272の回転に伴って変化する。なお、以下の説明で「磁気抵抗」とは、特に断りのない限り、ロータコア272とハウジング252により構成される磁気回路の磁気抵抗を意味するものとする。
ここで、モータ250における、ロータコア272とハウジング252とのギャップ、および磁気抵抗について、具体的に説明する。
上述の通り、ロータコア272およびハウジング252はいずれも軟磁性体にて形成されており、その透磁率は空気の透磁率よりも非常に大きい。そのため、モータ250の磁気抵抗は、ロータコア272(詳しくは各ティース274、275、276の外周面)とハウジング252の内周面または永久磁石260、262との間のエアギャップ、および各永久磁石260、262の厚みの和に大きく依存する。つまり、エアギャップが大きいほど磁気抵抗は大きくなり、逆にエアギャップが小さいほど、磁気抵抗は小さくなる。
但し、各永久磁石260、262については、その透磁率は空気の透磁率とほぼ同じである。そのため、各永久磁石260、262は、磁気的にみれば空気が存在していることと等価となる。つまり、モータ250の磁気抵抗を考慮する上では、空気と同じ透磁率である各永久磁石260、262の存在は無視することができ、各永久磁石260、262はいずれもエアギャップとして扱うことができる。そのため、仮に凸部254がないならば、ロータコア272とハウジング252の内周面とのエアギャップはロータコア272が回転しても一定であり、故に、回転に伴って磁気抵抗が変化することはない。
しかし、本実施形態では、ハウジング252の内周面に、ハウジング252とほぼ同じ透磁率を有する軟磁性の凸部254が設けられている。そのため、電機子270の回転角によって、すなわちロータコア272の各ティース274、275、276の外周面がこの凸部254と対向しているか否かによって、モータ250の磁気抵抗は異なった値となる。つまり、電機子270の回転に伴ってその磁気抵抗が変化する。そして、磁気抵抗が変化すると、モータ回路のインピーダンスとしてインダクタンス、つまりリアクタンスも変化するため、モータ回路に流れる電流のうち、交流成分については、その振幅が変化する。
図22の(A)に示すように、凸部254がロータコア272と対向している状態Aでは、ロータコア272と凸部254との間のエアギャップが小さくなるため、モータ250の磁気抵抗は全体として小さくなる。一般的にインダクタンスは磁気抵抗の逆数に比例するため、磁気抵抗が変化すればそれに伴ってモータ回路のインダクタンスも変化する。そのため、状態Aのように磁気抵抗が小さくなると、モータ回路のインダクタンスは大きくなる。
一方、図22の(B)に示すように、ロータコア272が凸部254と対向していない状態Bでは、図22の(A)に比べてエアギャップが大きくなり、モータ250の磁気抵抗は全体として大きくなる。そのため、モータ回路のインダクタンスは小さくなる。
このように、モータ回路のインダクタンスは、電機子270の回転に伴って周期的に変化する。
本実施形態では、ロータコア272が3つのティース274、275、276を有していることにより、回転に伴う周期的なインダクタンスの変化は、電機子270が120°回転する毎に生じる。そのため、上述した交流成分の振幅変化も、電機子270が120°回転する度に周期的に生じる。
図23に、モータ電流波形と、比較部142から出力される検出パルスの一例を示す。本実施形態では、モータ250が120°回転する度に回転パルスが生成されることとなる。
そこで本実施形態では、電機子270の回転に伴ってインダクタンスが変化し、このインダクタンスの変化によって生じる交流成分の振幅の変化を検出する。そして、HPF132から出力される交流成分の振幅変化から生成される検出パルスに基づいて、上記第1実施形態〜第6実施形態と同様に、モータ250に対する短絡制動の開始タイミングを決定できる。
本実施形態では、凸部254が本発明の可変機構に相当し、電機子270の回転に伴い、ブラシ22、24間のインダクタンスが変化する。
尚、ハウジング252とは別部材の凸部254を可変機構として設置する代わりに、凸部254に該当する位置のハウジング自体を内周側に突出させて、電機子270の回転に伴い、ブラシ22、24間のインダクタンスを変化させてもよい。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、直流モータとして、3つの相コイルL1、L2、L3のうち1つの相コイルにのみコンデンサC1を接続した例(第1実施形態)を示したが、例えば、3つの相コイルの各々に、容量の異なるコンデンサを接続するようにしてもよい。この構成によれば、モータの回転に伴うリアクタンスの変化により交流成分の振幅が3段に変化するので、その振幅変化の順番を検出することにより、回転角および回転速度に加え、回転方向の検出が可能である。
例えば、振幅変化の順番が「大」、「中」、「小」の順番であれば正転し、「小」、「中」、「大」の順番であれば逆転していると検出できる。
なお、3つの相コイルの各々にコンデンサを接続する場合、いずれか2つのコンデンサは同じ静電容量値のものとすることもできる。但しその場合、回転角や回転速度の検出は可能であるものの、回転方向の検出はできなくなる。
また、上記各実施形態では、電機子コイルの相数が3相の3相直流モータを例に挙げて説明したが、本発明の適用は、3相のモータに限定されるものではなく、4相以上のモータであっても適用可能である。
4相以上のモータにおいて、いずれか一つの相コイルにのみコンデンサを並列接続すれば、少なくとも回転角や回転速度の検出は可能となる。
また、3相以上のモータにおいて、少なくとも2つの相コイルにそれぞれ静電容量値の異なるコンデンサを接続すれば、回転に伴うインピーダンスの段階的変化の変化パターンによる交流成分の変化パターンに基づいて回転方向の検出が可能となる。
また、上記第1実施形態から第6実施形態では、3相のモータ20において、コンデンサC1が一対の整流子片41、43を接続し、この一対の整流子片41、43の両方と同時にブラシ22、24が摺接する可変機構について説明した。これに対し、4相以上のモータにおいて、コンデンサが一対の整流子片を接続している場合、この一対の整流子片の両方と同時にブラシ22、24が摺接しないように可変機構を構成してもよい。
この可変機構の構成においても、電機子の回転に伴い一対のブラシ22、24間のリアクタンスが変化することにより、交流成分の振幅が変化する。したがって、交流成分の振幅変化に基づいて、直流モータを制動する開始タイミングを制御できる。
また、上記実施形態で説明した、相コイルにコンデンサを並列に接続する構成、ならびにモータハウジングの内周面に磁性を有する凸部を設ける構成に限らず、モータの回転に伴ってブラシ間においてインピーダンスのリアクタンスが変化するのであれば、どのような構成で可変機構を実現してもよい。
例えば、相コイルにコンデンサを並列に接続する構成と、モータハウジングの内周面に磁性を有する凸部を設ける構成とを併用してもよいし、各相コイルにインダクタンスの異なるコイルを設置してもよい。
また、上記実施形態の構成を採用せず、インダクタンスの等しい相コイルで電機子コイルを構成している通常の直流モータであっても、ブラシに接触する整流子片の切り替わり時に2個の整流子片が同時に1個のブラシに接触するときに、モータ回路の構成が変化しリアクタンスが変化する。したがって、通常の直流モータであっても、直流電圧に交流電圧を重畳し、電機子の回転に伴って変化する交流成分の振幅の変化に基づいて、モータの回転状態を検出できる。
上記実施形態では、モータの可変機構のインピーダンスとして、電機子の回転に伴い一対のブラシ間におけるリアクタンスを変化させた。これに対し、可変機構のインピーダンスとして、例えば3つの相コイルL1、L2、L3のうち1つの相コイルに抵抗を並列に接続し、電機子の回転に伴い一対のブラシ間における抵抗値を変化させてもよい。
この構成においては、抵抗値の変化によりモータ電流の交流成分の振幅とともに、モータ電流の直流成分が変動する。この場合にも、交流成分抽出手段としてHPFを通すことにより、モータ電流から直流成分を除去し交流成分を抽出できる。そして、電機子の回転に伴って変化する交流成分の振幅の変化に基づいて、モータ電流の直流成分の大きさに関わらず、例えば制動中であってもモータの回転状態を検出できる。
また、上記実施形態では、モータへ直流電圧および交流電圧を印加(すなわち直流電流および交流電流を供給)する電源部として、直流電源102と交流電源106とを別々に設け、各電源102、106からの電圧(電流)をカップリングコンデンサ108を介して重畳させてモータへ印加(供給)するようにしたが、このような電源部の構成はあくまでも一例であり、例えば、直流電流と交流電流とが重畳された交直混在の電流(脈流)を生成して供給する1つの電源部を用いてもよく、結果としてモータを回転させる場合に交流電流および直流電流をモータへ供給し、制動する場合に直流電流の供給を遮断し、交流電流を供給できる限り、電源の具体的構成は特に限定されない。
また、上記第6実施形態では、モータドライバとして、4つのスイッチング素子からなるHブリッジ回路(フルブリッジ)を示したが、Hブリッジ回路以外の回路にてモータドライバを構成してもよい。