JP5539802B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池 Download PDF

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本発明は、非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池に関し、更に詳しくは、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を与える非水電解質二次電池用正極活物質、それを用いた非水電解質二次電池用正極および非水電解質二次電池に関する。
非水電解質二次電池として、リチウム二次電池が実用化されており、広く普及している。更に近年、リチウム二次電池は、ポータブル電子機器用の小型のものだけでなく、車載用や電力貯蔵用等の大容量のデバイスとしても注目されている。そのため、安全性やコスト、寿命等の要求がより高くなっている。
リチウム二次電池は、その主たる構成要素として正極、負極、電解液、セパレータ、及び外装材を有する。また、上記正極は、正極活物質、導電材、集電体及びバインダー(結着剤)により構成される。
一般に、正極活物質としては、LiCoOに代表される層状遷移金属酸化物が用いられている。しかしながら、層状遷移金属酸化物は、満充電状態において、150℃前後の比較的低温で酸素脱離を起こし易く、当該酸素脱離により電池の熱暴走反応が起こり得る。従って、このような正極活物質を有する電池をポータブル電子機器に用いる場合、電池の発熱、発火等の事故が発生する恐れがある。
このため、構造が安定し異常時に酸素を放出せず、LiCoOより安価なオリビン型構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO)が期待されている。しかし、LiFePOは、充放電サイクルを繰り返すことにより、サイクル特性が低下する、すなわち容量低下を生じることが知られている。ここで、容量低下とは、最初の放電時の容量(以下、初回容量という。)が理論容量に比べ低いこと、および充放電サイクルを繰り返すことにより経時的に容量が低下することの両方を含むものである。この容量低下を生じる理由は、Li挿入時と脱離時の間の体積変化率が約7%と大きく、充放電の繰返しによる体積変化によりLiFePOからなる粒子状の正極活物質の破壊や導電パスの断絶等が生じ、正極内の内部抵抗の上昇や不活性な部分が発生するためであることが知られている。ここで、体積変化率は、以下の式で定義され、式中、Aはリチウム脱離前の結晶格子体積、Bはリチウム脱離後の結晶格子体積である。
体積変化率(%)=[(A−B)/A]×100
また、高温においては非水電解質と正極界面との間で生成する反応物により、容量が低下することも知られている。
この容量低下を解決するため、例えば、特許文献1では、正極中に充放電に寄与しないAlを含有させ、容量低下を抑制する試みがなされている。また、特許文献2では、正極中に充放電に寄与しない無機物を含有させ、正極活物質の分散性を上げることで、容量低下を抑制する試みがなされている。
特開2005−340056号公報 特開2008−166207号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されたいずれの方法でも、リン酸鉄リチウム(LiFePO)を活物質に用いた場合の容量低下、すなわち、初回容量の低下および充放電サイクルに伴う経時的な容量低下を十分に抑制できないという問題があった。
そこで、本発明は、容量低下を抑制することの可能な非水電解質用正極活物質、およびそれを用いた非水電解質用正極並びに非水電解質二次電池を提供することを目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決する過程において、LiFePOのリンサイトの一部をSiで置換するとともに、鉄サイトの一部を置換すると、リチウムサイトを占有する鉄の割合が10%以上に増加すること、さらに鉄の割合が増加するとリチウムの拡散経路が断絶されてリチウムが脱離できなくなり、その結果、初回容量が低下することを見出した。この知見に基づき、LiFePOのリンサイトの一部をSiで置換するとともに、鉄サイトの一部を置換し、かつリチウムサイト中の鉄の占有率を所定値以下にしたリチウム含有複合金属酸化物を正極活物質に用いると、その正極活物質の体積変化率を抑制でき、その結果、初回容量の低下および充放電サイクルに伴う経時的な容量低下を抑制できることを見出して、本発明を完成させたものである。
なお、本発明におけるリチウムサイト、鉄サイトおよびリンサイトとは、結晶学的にLiFePOにおけるリチウム、鉄およびリンが占有する等価位置のことを示す。結晶性の物質の原子配列は幾何学的に分類が可能であり、全ての結晶性物質の原子配列は230の空間群として定義される種類に分類できる。これ等の空間群に対して、結晶構造内に存在する原子は対称性や繰返し性等を考慮し結晶学的にみて同じ環境にある等価位置に存在すると定義される。LiFePOは具体的には空間群Pnmaに属することが知られており、リチウム、鉄、およびリンはそれぞれ、4aサイト、4cサイト、4cサイトに位置する。なお空間群や等価位置の定義はInternational Union of Crystallography 発行の“INTERNATIONAL TABLE FOR CRYSTALLOGRAPHY Volume A”の記載に従った。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質は、下記一般式(1)表される組成を有するリチウム含有複合金属酸化物を含むことを特徴とするものである。
(Li1−a)M(P1−ySi)O (1)
(但し、式中、MはFe1−xで表され、ZはZr、Sn、YおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、xは0.05≦x≦0.25、yは0.10≦y≦0.50、aは0≦a≦0.05、bは0.9≦b<1である。ここで、aおよびbはCuKα線を線源に用いた粉末X線回折パターンからリートベルト解析を用いて求められる等価位置中の元素の占有率であり、aはリチウムサイト中のMの占有率であり、bは鉄サイト中のMの占有率である。)。
また、本発明の非水電解質二次電池用正極は、上記非水電解質二次電池用正極活物質と、導電材と、バインダーとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極と、負極と、電解質と、セパレータとを含むことを特徴とするものである。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム含有複合金属酸化物のリンサイトの一部をSiで置換するとともに、鉄サイトの一部を置換し、かつリチウムサイト中の鉄の占有率を所定値以下にしたものであり、これにより、初回容量の低下および充放電サイクルに伴う経時的な容量低下を抑制できる。
実施例1の正極活物質の粉末X線回折パターンである。 実施例2の正極活物質の粉末X線回折パターンである。 比較例1の正極活物質の粉末X線回折パターンである。 本発明の二次電池の構造の一例を示す模式縦断面図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質は、下記一般式(1)で表される組成を有す
るリチウム含有複合金属酸化物を含むことを特徴とするものである。
(Li1−a)M(P1−ySi)O (1)
(但し、式中、MはFe1−xで表される混合金属種、ZはZr、Sn、YおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、xは0.05≦x≦0.25、yは0.10≦y≦0.50、aは0≦a≦0.05、bは0.9≦b<1である。ここで、aおよびbはCuKα線を線源に用いた粉末X線回折パターンからリートベルト解析を用いて求められる等価位置中の元素の占有率であり、aはリチウムサイト中のMの占有率であり、bは鉄サイト中のMの占有率である。)
本発明に用いるリチウム含有複合金属酸化物は、LiFePOのリンサイトの一部をSiで置換するとともに、鉄サイトの一部を置換し、かつリチウムサイト中の混合金属種Mの占有率を所定値以下とし、かつ鉄サイトの元素占有率を所定範囲内にすることが重要である。ここで、リチウムサイト中の混合金属種の占有率aは、全リチウムサイトに対する混合金属種Mが占有している割合、鉄サイト中の混合金属種Mの占有率bは、鉄サイトに対する混合金属種Mが占有している割合である。鉄サイト中の混合金属種Mの占有率bが1より小さい場合は、鉄サイト中に欠損が出来ていることを示している。これ等の占有率は具体的にはCuKα線を線源に用いた粉末X線回折パターンからリートベルト解析を用いて算出する。
リチウムサイト中の混合金属種Mの占有率aは、0〜0.05の範囲である。aはゼロあるいはできるだけ小さい方が、正極活物質中のリチウム量が多くなり、特に初回容量の低下を抑制(初回の放電容量を大きく)できる。また、aが0.05より多いと、結晶構造内のリチウム拡散パスが分断され、容量が低下する。
リチウムサイト中の混合金属種Mは、鉄と、Zr、Sn、Y、及びAlから選択される少なくとも1種の金属元素からなり、一般式Fe1−xで表される。ここで、xは、0.05<x<1の範囲の値をとる。xが1以上になると、酸化還元種である鉄が少なくなるので、電池としての容量が小さくなり、xが0.05より小さいと体積膨張収縮の効果が小さくなり、サイクル特性が劣化するからである。
鉄サイト中の混合金属種Mの占有率bは、0.9≦b<1の範囲の値をとる。bが1より小さいことは、結晶格子中の鉄サイトに欠損を有していることを意味している。ここで、欠損とは、通常等価位置に100%存在するはずの元素が一部不足しており、元素が存在しない空孔が生じていることを意味する。通常オリビン型の結晶構造ではb軸方向にのみリチウムが拡散するが、鉄サイトに欠損を有する場合、その欠損サイトを介してリチウムイオンが拡散することができるために、容量が向上したり、リチウムイオンの拡散が早くなる等の効果を有する。なお、この鉄サイトの欠損にリチウムが存在してもよい。また、bが0.9より小さいと、結晶格子そのものの形状を保つことが難しくなり、不純物が生成するからである。
なお、詳細な欠損発生のメカニズムは明確になっていないが、5価のリンを4価のシリコンで置換を行うことは、リンサイトの電子が見かけ上1個増えることを意味しており、電荷の中性を保つためにシリコン近傍の鉄サイトが欠損しているのではないかと考えられる。
一般式(1)の組成を有するリチウム含有複合金属酸化物はオリビン型構造に限定されず、それ以外の構造を有するものであってもよい。
一般式(1)中、Zは、Sn、Zr、YおよびAlから選択される少なくとも1種の金属元素である。また、Zの価数は、特に限定されない。YおよびAlは3価であり、Snは2価および4価を、Zrは2〜4価を取り得る。また、Feは2〜4価および6価を取り得る。Sn、ZrおよびFeについては、単一の価数を有する金属元素を使用することもでき、複数の価数を有する金属元素の混合物も使用できる。SnおよびZrについては、リチウム含有複合金属酸化物の製造時及び充放電時に価数の変化が少ないという観点から、4価のものを使用することが好ましい。YおよびAlは3価のみであるので、これらを使用すれば、リチウム含有金属酸化物の製造時及び充放電時における価数の変化を少なくすることができる。Feについては、Liの挿入及び脱離性を向上させる観点から、2価のものを使用することが好ましい。なお、混合物を使用する場合、便宜上一般式(1)中のcを規定するための価数は、平均値を用いる。
チウム含有金属酸化物の体積変化率をより小さくさせる観点から、xは0.05≦x≦0.25の範囲及び/又はyは0.10≦y≦0.50の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.075≦x≦0.25及び/又は0.15≦y≦0.5である。
より具体的には、xの値が大きい(FeサイトのMでの置換量が多い)及び/又はyの値が大きい(PサイトのSiの置換量が多い)場合、体積変化率が小さくなり、放電容量が小さくなる傾向がある。従って、選択したMの種類について、所望の体積変化率及び放電容量が得られるように、xとyの値を決めることができる。
ここで、リチウム含有複合金属酸化物は、5%以下の体積変化率を有することが好ましい。その理由は、5%を境に容量維持率(初回容量に対する充放電サイクル後の容量の割合)の体積変化率に対する傾きが変化するリチウム含有複合金属酸化物が多いためである。つまり、体積変化率が約5%より高くなると、体積変化率の増加に対する容量維持率の低下の度合いが大きくなることがある。よって、体積変化率が5%以下であれば、容量維持率の低下をより抑制できる。
体積変化率を5%以下にする観点から、xは0.05≦x≦0.25の範囲及び/又はyは0.1≦y≦0.5の範囲であること好ましい。この範囲内であれば、電池とした場合の放電容量を大きく減少させることなく、リチウム挿入脱離時に生じる体積変化を抑制できる。
本発明では、xが大きいほど及び/又はyの値が大きいほど、体積変化率を抑制できるので、容量維持率を向上できる。例えば、体積変化率が4%以下であれば、容量維持率を90%以上とすることができる。
一方、置換金属Mの種類によっては、xが大きいほど及び/又はyの値が大きいほど、初回容量が減少する場合がある。初回容量を向上させるためには、例えば、以下の方法を用いることができる。
例えば、FeをZrで置換する場合、100mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xは0.35以下及び/又はyは0.7以下であることが好ましい。また、110mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.3以下及び/又はyは0.6以下であることがより好ましい。また、120mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.25以下及び/又はyは0.5以下であることが好ましい。
FeをSnで置換する場合、100mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xは0.33以下及び/又はyは0.66以下であることが好ましい。また、110mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.29以下及び/又はyは0.58以下であることがより好ましい。また、120mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.23以下及び/又はyは0.46以下であることが好ましい。
FeをYで置換する場合、100mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xは0.35以下及び/又はyは0.35以下であることが好ましい。また、110mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.35以下及び/又はyは0.35以下であることがより好ましい。また、120mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.25以下及び/又はyは0.25以下であることが好ましい。
FeをAlで置換する場合、100mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xは0.45以下及び/又はyは0.45以下であることが好ましい。また、110mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.4以下及び/又はyは0.4以下であることがより好ましい。また、120mAh/g以上の初回容量を得る観点からは、xが0.35以下及び/又はyは0.35以下であることが好ましい。
Feを3価の金属元素で置換し、Feが全て2価である場合は、電気的中性を保つためにSiはFeの置換量と同量とすることができる。この場合、体積変化率を4%以下とする観点から、置換量としてはそれぞれ、Alでは0.35以上が好ましく、Yでは0.2以上が好ましい。
Feを+4価の金属元素で置換し、Feが全て+2価である場合は、電気的中性を保つためにSiはFeの置換量の2倍量とすることができる。この場合、体積変化率を4%以下とする観点から、置換量としては、Zrでは0.15以上が好ましく、Snでは0.25以上が好ましい。また、体積変化率を3%以下とする観点から、置換量としては、Zrでは0.2以上が好ましく、Snでは0.3以上が好ましい。また、体積変化率を2%以下とする観点から、置換量としては、Zrでは0.25以上が好ましい。
本発明に用いるリチウム含有金属酸化物としては、例えば、以下の一般式で表されるものを用いることができる。
(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−xZr、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−xSn、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−x、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−xAl、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.25)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−x(Zr,Sn)、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5、ZrとSnの原子比0.99:0.01〜0.01:0.99)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−x(Zr,Y)、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5、ZrとYの原子比0.99:0.01〜0.01:0.99)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−x(Zr,Al)、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5、ZrとAlの原子比0.99:0.01〜0.01:0.99)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−x(Sn,Y)、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5、SnとYの原子比0.99:0.01〜0.01:0.99)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−x(Sn,Al)、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.5、SnとAlの原子比0.99:0.01〜0.01:0.99)

(Li1−a)M(P1−ySi)O(0≦a≦0.05、0.9≦b≦1.0、M=Fe1−x(Y,Al)、0.05≦x<0.25、0.1≦y≦0.25、YとAlの原子比0.99:0.01〜0.01:0.99)、が挙げられる。
更に、Mの平均価数が+4価の場合には、bとyが、2b≦yの関係を有することが好ましい。また、Mの平均価数が+3価の場合には、bとyが、x≦yの関係を有することが好ましい。この関係を有するリチウム含有金属酸化物は、正極活物質に酸素欠損やPやLi等の元素欠陥が生じにくくなり、結晶構造が強固になるというという効果を与える。
(b)正極活物質の製造方法
リチウム含有金属酸化物は、原料として、各元素の炭酸塩、水酸化物、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、酸化物、シュウ酸塩、硝酸塩等の組合せを用いることにより製造できる。製造方法としては、焼成法、固相法、ゾルゲル法、溶融急冷法、メカノケミカル法、共沈法、水熱法、噴霧熱分解法等の方法を用いることができる。
(2)リチウム含有複合酸化物の製造方法
本発明は、上記一般式のリチウム含有複合酸化物を製造する方法であり、原料物質となるリチウム源、鉄源、ジルコニウム源、リン源およびシリコン源を溶媒に溶解させる工程(以下、溶解工程という。)、得られた溶液をゲル化させる工程(以下、ゲル化工程という。)、得られたゲルを焼成する工程(以下、焼成工程という。)を少なくとも含む。なお、必要に応じて、ゲル化工程で得られたゲルから溶媒を除去する工程(以下、乾燥工程という。)や、焼成前のゲルを粉砕する工程(以下、粉砕工程という。)や、焼成前のゲルに炭素源となる物質を混合する工程(以下、炭素源混合工程という。)を設けることもできる。
(i)溶解工程
原料物質であるリチウム源、鉄源、ジルコニウム源、リン源及びシリコン源は、溶媒に溶解しうる物質であれば特に限定されない。これらの物質は、100gの溶媒に10mmol以上溶解する物質であることが好ましい。
(リチウム源)
リチウム源となる物質には、リチウムの無機塩、水酸化物、有機酸塩、金属アルコキシドおよびこれら塩の水和物を用いることができる。具体的には、無機塩としては、弱酸との塩(以下、弱酸塩という。)である炭酸リチウム(LiCO)、強酸との塩(以下、強酸塩という。)である硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)を挙げることができる。また、有機塩としては、弱酸塩である、酢酸リチウム(LiCHCOO)、シュウ酸リチウム(COOLi)を挙げることができる。また、金属アルコキシドとしては、リチウムメトキシド(LiOCH)、リチウムエトキシド(LiOC)、リチウム−n−プロポキシド(LiO-n-C)、リチウム−i−プロポキシド(LiO-i-C)、リチウム−n−ブトキシド(LiO-n-C)、リチウム−t−ブトキシド(LiO-t-C)、リチウム−sec−ブトキシド(LiO-sec-C)等を挙げることができる。無機塩および有機塩については、水和物であってもよい。これらの中でも、大気雰囲気下で均一な溶液を作製しやすい、安価であるという観点から弱酸塩または強酸塩が好ましく、その中でも酢酸リチウムまたは硝酸リチウムが好ましい。
以下、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
リチウム源として、弱酸塩の無水物を用いる場合は、エタノールへの溶解性が低いため、鉄源の塩の水和物あるいはジルコニウム源の塩の水和物を溶解した後に溶解させることが好ましい。鉄源の塩の水和物あるいはジルコニウム源の塩の水和物を加える前に溶解させる場合は、予め水に溶解させておくことが好ましい。あるいは、弱酸塩の無水物が溶解するのに必要な量の水をエタノールへ添加しておいてもよい。弱酸塩の無水物を溶解させる水の量としては、Liのモル数の1倍〜100倍の水が好ましく、より好ましくは4倍〜20倍である。
また、弱酸塩の無水物は、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源との任意の組合せにおいて、任意の順番で溶解させても均一な溶液を得ることができる。得られた均一な溶液を予め反応させた後に、残りの原料を加えてもよい。弱酸塩の無水物は鉄源の塩の水和物と予め反応させておくことが好ましい。弱酸塩の無水物と鉄源の塩の水和物を予め反応させることにより、リン酸を加えた際に沈殿物ができるのを抑制することができる。
また、弱酸塩の無水物はテトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランと予め反応させておくことが好ましく、特にテトラメトキシシランと反応させることが好ましい。このときの混合の手順としては、弱酸塩の無水物を水に溶解させた後、エタノールを加え、テトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランを加えることが好ましい。これらを混合した後に30℃から60℃に加熱する事で、より反応を促進させることができる。加熱の時間は特に限定されないが、30分から12時間程度が適当である。弱酸塩の無水物とシリコン源を予め反応させることにより、焼成後の不純物の発生やリチウム複合酸化物におけるリチウムサイトへのFeの置換を抑制できる。
(鉄源)
鉄源となる物質には、鉄の無機塩、水酸化物、有機酸塩、金属アルコキシドおよびこれら塩の水和物を用いることができる。鉄源としては、無機塩として、弱酸塩である炭酸鉄(II)(Fe(CO))、強酸塩である硝酸鉄(II)(Fe(NO))、硝酸鉄(III)(Fe(NO))、塩化鉄(II)(FeCl)および塩化鉄(III)(FeCl)を挙げることができる。また、有機塩としては、弱酸塩である、シュウ酸鉄(II)(FeC)、シュウ酸鉄(III)(Fe(C))、酢酸鉄(II)(Fe(CHCOO))および酢酸鉄(III)(Fe(CHCOO))を挙げることができる。好ましくは強酸塩の水和物、その中でも硝酸鉄(III)の9水和物が好ましい。
以下、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
強酸塩の水和物は、リチウム源、ジルコニウム源、シリコン源との任意の組合せにおいて、任意の順番に溶解させても均一な溶液を得ることができる。得られた均一な溶液を予め反応させた後に、残りの原料を加えてもよい。強酸塩の水和物はリン酸よりも先に溶媒に加えることが好ましい。強酸塩の水和物のみを予め反応させることにより、焼成後の不純物の生成を抑制できるので、強酸塩の水和物は、強酸塩の水和物のみをエタノール中に溶解させた後に、沈殿物が生じない程度に熱をかけることにより予め反応させてもよい。
(ジルコニウム源)
ジルコニウム源となる物質には、ジルコニウムの無機塩、有機酸塩、金属アルコキシドおよびこれら塩の水和物を用いることができる。ジルコニウム源としては、無機塩として、ジルコニウムハロゲン化物である塩化ジルコニウム(ZrCl)、臭化ジルコニウム(ZrBr)、ヨウ化ジルコニウム(ZrI)、オキシジルコニウム塩である、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl)、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO))を挙げることができる。また、金属アルコキシドとしては、ジルコニウムメトキシド(Zr(OCH)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC)、ジルコニウム-n-プロポキシド(Zr(O-n-C)、ジルコニウム-i-プロポキシド(Zr(O-i-C)、ジルコニウム-n-ブトキシド(Zr(O-n-C)、ジルコニウム-t-ブトキシド(Zr(O-t-C)、ジルコニウム-sec-ブトキシド(Zr(O-t-C)等を挙げることができる。好ましくはジルコニウムハロゲン化物、その中でも塩化ジルコニウムが好ましい。
ジルコニウムハロゲン化物は、リチウム源、鉄源、シリコン源との任意の組合せにおいて、任意の順番に溶解させても均一な溶液を得ることができる。ジルコニウムハロゲン化物を、強酸塩の水和物からなる鉄源と予め反応させておくことが好ましい。ジルコニウムハロゲン化物を強酸塩の水和物からなる鉄源と予め反応させることにより、焼成後にジルコニアやリン酸ジルコニウムなどの不純物が形成するのを抑制できる。また、ジルコニウムハロゲン化物はテトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランと予め反応させておくことが好ましく、特にテトラメトキシシランと反応させることが好ましい。ジルコニウムハロゲン化物とシリコン源を予め反応させることにより、焼成後の不純物の発生やリチウム複合酸化物におけるLiサイトへのFeの置換を抑制できる。
(リン源)
リン源となる物質には、リン酸(HPO)、リン酸水素アンモニウム((NH)HPO)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)等を挙げることができる。これらの中でも、リン酸が好ましい。
以下、リン源の溶解方法について、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
リン酸は、少なくともリチウム源、鉄源およびジルコニウム源を溶解させた後で、投入する必要がある。リン酸をリチウムの弱酸塩無水物やジルコニウムハロゲン化物と混合すると、沈殿物が生成するからである。リン酸を加える際は、過剰にリン酸を加えてもよい。リン酸を過剰に加えることにより、焼成後の不純物の発生やリチウム複合酸化物におけるLiサイトへのFeの置換を抑制できる。過剰にリン酸を加える場合、化学量論比のリン酸に対して5〜20重量%の範囲で、より好ましくは5〜15重量%の範囲で過剰に加えることができる。
(シリコン源)
シリコン源となる物質には、シリコンの金属アルコキシドを用いることができる。具体例としては、テトラエトキシシラン(Si(OC))、テトラメトキシシラン(Si(OCH))、メチルトリエトキシシラン(CHSi(OC))、メチルトリメトキシシラン(CHSi(OCH))、エチルメトキシシラン(CSi(OCH))、エチルトリエトキシシラン(CSi(OC))等の種々のシリコンアルコキシドを挙げることができる。好ましくはテトラエトキシシランあるいはテトラメトキシシランである。
以下、シリコン源の溶解方法について、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
シリコンアルコキシドは、リチウム源、鉄源、ジルコニウム源との任意の組合せにおいて、任意の順番に溶解させても均一な溶液を得ることができる。シリコンアルコキシドの反応を促進するため、水を加えてもよい。加える水の量としては、シリコンのモル数の1倍〜100倍、より好ましくは2倍〜20倍である。水を加えることにより加水分解が進み、反応を促進させることができる。シリコンアルコキシドをリン酸と予め反応させることもできる。テトラエトキシシランを用いる場合は、40℃〜80℃で反応をさせることが好ましく、より好ましくは50℃〜80℃で反応させることが好ましい。テトラメトキシシランを用いる場合は、20℃〜60℃で反応させることが好ましい。テトラメトキシシランと、リチウム源となる弱酸塩の無水物を反応させる場合、(リチウム源のLiのモル数/シリコン源のSiのモル数)≧2であることが好ましい。
溶媒には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびn−ブタノールからなる群から選択された少なくとも1種のアルコールを用いることができる。好ましくは、エタノールである。なお、アルコールへの溶解性が低い原料物質を溶解させるために、必要に応じて水との混合溶媒としてもよい。溶媒の量は、全原料物質を溶解させることができれば特に限定されない。但し、溶媒の回収コストを考慮すると、溶媒の量は、全原料物質の総モルに対して、1〜100倍のモル比の範囲、より好ましくは、2〜15倍のモル比の範囲である。
(溶解方法)
溶解工程においては、原料物質を溶解させる順番によっては沈殿物が生成して均一な溶液ができない場合がある。そのため、原料物質を溶解させる順番が重要となる。前述のように、リン酸をジルコニウム源と混合すると沈殿物が生成するが、鉄イオンが存在するとジルコニウムイオンは安定化され沈殿物の生成が抑制される。そのため、本発明においては、少なくとも鉄源およびジルコニウム源を溶解させた溶媒にリン源を溶解させる必要がある。シリコン源は、リン源を溶解させる前に溶解させてもよく、あるいはリン源を溶解させた後に溶解させてもよい。
なお、本発明において、原料物質を溶解させる順番とは、溶媒に順次原料物質を投入する場合には、投入する原料物質の順番をいうが、予め複数の原料物質を溶媒に溶解させた溶液を準備し、その溶液を混合する場合には、その混合する順番をいう。
鉄源およびジルコニウム源を溶解させた溶媒を調製する順番としては、ジルコニウムイオンを鉄イオンにより安定化させることができれば特に限定されない。ジルコニウムイオンを鉄イオンにより安定化させる方法としては、溶媒中に鉄の強酸塩水和物を溶解させた後に、ジルコニウムハロゲン化物を溶解させる方法や、溶媒中にジルコニウムハロゲン化物を溶解させた後に、鉄の強酸塩水和物を溶解させる方法や、溶媒中に鉄の強酸塩水和物とジルコニウムハロゲン化物を同時に溶解させる方法を挙げることができる。なお、鉄源とジルコニウム源の溶解の順番は特に限定されず、いずれが一方を先に溶解させても、あるいは両者を同時に溶解させてもよい。
また、リチウム源に塩無水物、例えば酢酸リチウムを用いると、溶媒中に水が含まれていないと溶解しない。そのため、リチウム源に無水塩を用いる場合には、鉄の塩の水和物とジルコニウムの塩の水和物を溶媒に溶解させた後に投入して、溶解させることが好ましい。
原料物質を溶媒に溶解させる際、室温以上となるように加熱してもよい。加熱温度としては、室温から使用する溶媒の沸点の範囲、好ましくは30℃〜80℃、より好ましくは30℃〜60℃である。なお、本発明では、室温とは20±10℃の範囲をいう。
(ii)ゲル化工程
本工程では、溶解工程により得られた溶液をゲル化させる。ゲル化は、Li、Fe、Zr、PおよびSiが酸素原子を介して結合する一群の集合体となり、この集合体がゲル中で数nmから数十nmの粒径の微粒子として析出することで溶液の粘度が上昇することにより行われると発明者等は考えている。
ゲル化方法は、溶液を静置してもよく、あるいは溶液を攪拌してもよい。また、ゲル化を促進させるため、室温以上の温度に加熱してもよい。加熱温度は、室温から使用する溶媒の沸点の範囲であり、好ましくは30℃〜80℃、より好ましくは40℃〜60℃である。また、加熱時間は、10分〜48時間、好ましくは30分〜24時間である。
(iii)乾燥工程
本工程では、ゲル化したゲルから残留する溶媒を除去する。溶媒の除去方法としては、室温で静置する方法や、30〜80℃に加熱して溶媒を除去する方法や、ロータリーポンプなど用いたチャンバー内にゲルを設置し、減圧して溶媒を除去する方法等を用いることができる。また、溶液調製時に使用した溶媒よりも揮発性の高い溶媒や表面張力の異なる溶媒と溶媒交換を行った後に前述と同じ方法で溶媒を除去してもよい。溶媒交換に用いる溶媒としてはトルエン、ベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノールおよびこれらの混合溶媒を挙げることができる。また、本工程で得られたゲルを超臨界状態の二酸化炭素に浸して溶媒を抽出することで溶媒を除去することもできる。これらの除去した溶媒は工業的観点から回収して再利用することが好ましい。
(iv)粉砕工程
得られたゲルを機械的に粉砕することで二次粒子のサイズを制御してもよい。粉砕方法は特に限定されず、必要に応じて加温、冷却および雰囲気制御をする方法を挙げることができる。
(v)炭素源混合工程
糖類、油脂類や合成樹脂材料を、粉砕したゲルと混合してもよい。これら化合物は、焼成時に炭化することにより正極活物質の表面の少なくとも一部、好ましくは全面に炭素被覆を形成し、正極活物質の導電性を向上させることができる。これにより充放電サイクルの繰返しによる容量低下、及び初回容量低下をさらに抑制できる。糖類としては、スクロース、フルクトース等を用いることができる。また、合成樹脂材料としては、ポリエーテル類としてはポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテル類や、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリ酢酸ビニル等を用いることができる。
(vi)焼成工程
本工程では、得られたゲルを焼成することでリチウム含有複合酸化物を得る。焼成は、400〜700℃、好ましくは400〜600℃の温度範囲で、1〜24時間をかけて行う。焼成時の雰囲気は、不活性雰囲気(アルゴン、窒素、真空等の雰囲気)又は還元性雰囲気(水素含有不活性ガス、一酸化炭素等の雰囲気)を用いることができる。均一に焼成を行うため、ゲルを攪拌してもよく、焼成時にNOやSO、塩素などの有毒なガスが発生する場合は、除去装置を設けてもよい。
(vii)その他の工程
得られたリチウム含有複合酸化物は、必要に応じて、粉砕工程及び/又は分級工程に付すことで、所望の粒径に調製してもよい。
なお、a値を0.05付近に調製するには、焼成温度を700℃よりも低くすること、仕込み組成を鉄が過剰になるように、Li:Mの比を0.95:1.05とすること等を挙げることができる。また、a値を0付近に調製するには、焼成温度を650〜700℃とすること、Li:Mの比を1:1とすること等を挙げることができる。
(3)用途
得られたリチウム含有複合酸化物は、非水系電解質二次電池の正極活物質に使用できる。正極活物質には、上記リチウム含有複合酸化物以外に、LiCoO、LiNiO、LiFeO、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、LiFePO等の他の酸化物が含まれていてもよい。
非水系電解質二次電池は、正極と負極と非水系電解質とセパレータとを有する。以下、各構成材料について説明する。
(a)正極
正極は、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、正極活物質と導電材とバインダーとを有機溶剤を用いて混練分散してペーストを得、該ペーストを集電体に塗布することによって作製できる。なお、得られたリチウム含有複合酸化物が十分に高い導電性を有する場合には、導電材は必ずしも添加する必要はない。
バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース、スチレンーブタジエンゴム等を用いることができる。必要に応じてカルボキシメチルセルロース等の増粘材を使用することもできる。
導電材としては、アセチレンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、ニードルコークス等を用いることができる。
集電体としては、連続孔を持つ発泡(多孔質)金属、ハニカム状に形成された金属、焼結金属、エキスパンドメタル、不織布、板、孔開きの板、箔等を用いることができる。
有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等を用いることができる。バインダーに水溶性のものを使用する場合は溶媒として水を用いることもできる。
正極の厚さは、0.01〜20mm程度が好ましい。厚すぎると導電性が低下し、薄すぎると単位面積当たりの容量が低下するので好ましくない。なお、塗布並びに乾燥によって得られた正極は、活物質の充填密度を高めるためローラープレス等により圧密してもよい。
(b)負極
負極は公知の方法により作製できる。例えば、負極活物質とバインダーと導電材とを混合し、得られた混合粉末をシート状に成形し、得られた成形体を集電体、例えばステンレスまたは銅製のメッシュ状集電体に圧着して作製できる。また、上記(a)正極で説明したようなペーストを用いる方法を用いて作製することができ、その場合、負極活物質と導電材とバインダーとを有機溶剤を用いて混練分散してペーストを得、該ペーストを集電体に塗布することによって作製できる。
負極活物質としては公知の材料を用いることができる。高エネルギー密度電池を構成するためには、リチウムの挿入/脱離する電位が金属リチウムの析出/溶解電位に近いものが好ましい。その典型例は、粒子状(鱗片状、塊状、繊維状、ウィスカー状、球状、粉砕粒子状等)の天然もしくは人造黒鉛のような炭素材料である。
人造黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末等を黒鉛化して得られる黒鉛を挙げることができる。また、非晶質炭素を表面に付着させた黒鉛粒子も使用できる。これらの中で、天然黒鉛は、安価でかつリチウムの酸化還元電位に近く、高エネルギー密度電池が構成できるため好ましい。
また、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物、遷移金属酸化物、酸化シリコン等も負極活物質として使用可能である。これらの中では、LiTi12は電位の平坦性が高く、かつ充放電による体積変化が小さいため好ましい。
(c)非水系電解質
非水系電解質としては、例えば、有機電解液、ゲル状電解質、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができる。
有機電解液を構成する有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル等を挙げることができ、これらの1種以上を混合して用いることができる。
また、PC、EC及びブチレンカーボネート等の環状カーボネート類は高沸点溶媒であるため、GBLと混合する溶媒として好適である。
有機電解液を構成する電解質塩としては、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCFCOO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(CFSO)等のリチウム塩を挙げることができ、これらの1種以上を混合して用いることができる。電解液の塩濃度は、0.5〜3mol/Lが好適である。
(d)セパレータ
セパレータとしては、多孔質材料や不織布等の公知の材料を用いることができる。セパレータの材質としては、電解液中の有機溶媒に対して溶解したり膨潤したりしないものが好ましい。具体的には、ポリエステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、エーテル系ポリマー、ガラス繊維等を挙げることができる。
(e)他の部材
電池容器のような他の部材についても公知の各種材料を使用でき、特に制限はない。
(f)二次電池の製造方法
二次電池は、例えば、正極と負極と、それらの間に挟まれたセパレータとからなる積層体を備えている。積層体は、例えば短冊状の平面形状を有していてもよい。また、円筒型や扁平型の電池を作製する場合は、積層体を巻き取って巻回体としてもよい。
積層体は、その1つ又は複数が電池容器の内部に挿入される。通常、正極及び負極は電池の外部導電端子に接続される。その後に、正極、負極及びセパレータを外気より遮断するために電池容器を密閉する。
密封の方法は、円筒電池の場合、電池容器の開口部に樹脂製のパッキンを有する蓋をはめ込み、電池容器と蓋とをかしめる方法が一般的である。また、角型電池の場合、金属性の封口板と呼ばれる蓋を開口部に取りつけ、溶接を行う方法を使用できる。これらの方法以外に、結着剤で密封する方法、ガスケットを介してボルトで固定する方法も使用できる。更に、金属箔に熱可塑性樹脂を貼り付けたラミネート膜で密封する方法も使用できる。なお、密封時に電解質注入用の開口部を設けてもよい。有機電解液を用いる場合、その開口部から有機電解液を注入し、その後でその開口部を封止する。封止の前に通電し発生したガスを取り除いてもよい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1.
<i.溶解工程>
以下のように、鉄源、リチウム源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源の順番で溶媒に溶解させた。
Liのモル量に対して30倍のモル量のエタノールに、鉄源としてFe(NO3・9HOを量りとり、完全に溶解するまで撹拌した。完全に溶解したことを確認した後、リチウム源としてLiCHCOOを量りとり、ジルコニウム源としてZrCl、シリコン源としてSi(OCを量りとり、順に溶解させていき、均一溶液を調製した。最後にリン源としてHPO(85重量%)を量りとり均一な溶液になるまで撹拌した。リチウム源であるLiCHCOOを0.9899gとして、Li:Fe:Zr:P:Si=0.98:0.73:0.24:0.51:0.49(モル比)、となるように各原料物質を秤量した。得られた均一な溶液を、室温でスターラーにて1時間攪拌した。
<ii.ゲル化工程>
室温で1時間攪拌した均一な溶液を60℃の恒温槽にて24時間、保管することにより、ゲル化を行った。ゲル化時には、容器の蓋をして、溶媒の蒸発を抑制した。
<iii.乾燥工程>
ゲル化工程により、得られたゲルの容器の蓋を開け、60℃の恒温槽にて1晩放置することにより、溶媒を揮発させた。
<iv.粉砕工程>
ゲルを乾燥することにより得られた前駆体を、乳鉢で粉砕した。
<v.炭素源混合工程>
粉砕した前駆体を水に溶かした炭素源を加えた。炭素源としては、スクロースを使用した。加えた量としては、前駆体の重量に対して15重量%とした。スクロースを加えた前駆体を乾燥後、乳鉢で粉砕した。
<vi.焼成工程>
粉砕工程により得られた前駆体を550℃で12時間焼成した。焼成プロセスとしては、まず炉内を真空にした後、窒素をフローし、200℃/hの昇温速度で加熱した。降温速度は、炉冷とした。得られた試料をA1とした。
(結果)
得られた複合酸化物について、株式会社理学社製粉末X線回折装置MiniFlex IIを用いて粉末X線回折パターンの測定を行った。結果を図1に示す。オリビン型構造の結晶相の生成を確認した。また、ZrO等の不純物に帰属されるピークがないことを確認した。
参考例1
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=1:0.90:0.10:0.80:0.10とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をA2とした。
実施例
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=0.93:0.83:0.09:0.81:0.19とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をA3とした。
実施例
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=0.96:0.91:0.05:0.9:0.1とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をA4とした。
実施例
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=0.96:0.89:0.10:0.8:0.2とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をA5とした。
比較例1
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=0.93:0.83:0.09:0.81:0.09とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をB1とした。
比較例2
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=0.93:0.9:0.10:0.8:0.2とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をB2とした。
比較例3
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=1:0.98:0.02:0.96:0.04とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をB3とした。
比較例4
溶解工程において、以下のように、鉄源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源、リチウム源の比をLi:Fe:Zr:P:Si=0.98:0.7:0.3:0.4:0.6とした以外は、実施例1と同様の方法により、リチウム含有複合酸化物を製造した。得られた試料をB4とした。
(粉末X線回折)
試料をメノウ乳鉢にて粉砕し、理学社製X線解析装置MiniFlexIIにより、図1に示すような粉末X線回折パターンを得た。測定条件は2θの範囲が10°〜90°、1ステップ0.02°で1ステップ当りの計測時間を3sのFTモードとした。
次に、得られた粉末X線回折パターンについて、「RIETAN−2000」(F.IzumI AND T.Ikeda,Mater.Sci.Forum,321−324(2000)198−203)を用いて、表1に示すパラメータを初期値として使用するリートベルト解析による構造解析を行った。なお、表1の下線のパラメータは固定して、表1中の条件を設定して精密化を行った。ここで、精密化とは、粉末X線回折パターンの実測値と、これらのパラメータから計算されるX線回折パターンとが最も一致するように、パラメータを適宜変更してパラメータを決定する手法である。
Figure 0005539802
表1中、4a、4c、8dは、それぞれ、空間群Pnmaにおける等価位置を表す。また、x、y、zは、各原子のポジションを示すパラメータであり、x、y、zはそれぞれ、a軸、b軸、c軸の長さを1と規格化した場合の3次元中の座標を表す。また、Mは鉄とジルコニウムの仕込み組成比どおりに平均して原子が混合された状態であると仮定し、MがFe:Zr=Fe1-x:Zrからなる仮想原子とした。
構造解析結果より得られた、4aサイト中のリチウムおよびMの占有率、4cサイト中のMの占有率を表2に示す。
Figure 0005539802
表2に示すように、実施例1からのリチウム含有複合酸化物は、4aサイト中のMの占有率aが0≦a≦0.05の範囲内であり、かつ4cサイト中のMの占有率bが0.9≦b<1での範囲である。一方、比較例1から3は、aまたはbが本発明の範囲外である。また、比較例4は、aとbは本発明の範囲内にあるが、リンサイトのSiの置換率yは0.5を越えており本発明の範囲外である。
(正極容量及び体積変化率の測定)
各試料について以下の方法で、正極容量及び体積変化率測定用のセルを作製した。
A1〜A5及びB1〜B4をそれぞれ約1g秤量しメノウ乳鉢にて粉砕し、これに導電剤として約10wt%のアセチレンブラック(電気化学工業社製デンカブラック)と、結着剤として約10wt%のテフロン(登録商標)樹脂粉末(呉羽化学社製クレハKFポリマー)とを混合した。
この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに溶解してスラリー状にし、これを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法で塗布した。塗布量としては約5mg/cmとなるようした。この塗膜を乾燥した後に、電極塗布面が2cm×2cmとなるように切断し、プレスを行って正極を得た。
50mlのビーカーに、1mol/lのLiPFを溶解させた50体積%のエチレンカーボネートと50体積%のジエチルカーボネートとからなる約30mlの電解質を注入した。電解質に、正極と、負極活物質としての金属リチウムを対極として浸漬することで、セルを得た。
25℃の環境下で得られたセルの初回充電を行った。充電電流は0.1mAとし、セルの電位が4Vに到達した時点で充電を終了させた。充電が終了後1mAで放電を行いセルの電位が2.0Vに到達した時点で放電を終了した。この充電と放電条件から容量(実測容量:初回放電容量)を算出した。得られた実測容量を、各正極の理論容量及び容量比(実測容量×100/理論容量)と共に表3に示す。
Figure 0005539802
セルを更に、0.1mAの電流で4Vまで充電を行い、リチウムを脱離させた状態とした。この状態の正極を取り出しCuKα線を用いた粉末X線回折測定を行い、リチウム脱離前後の正極活物質の格子定数(a軸、b軸及びc軸)を求めた。a軸、b軸及びc軸を積算することでリチウム脱離前後の格子体積を算出し、以下の式により体積変化率を算出した。
体積変化率=[(A−B)/A]×100
ここで、上記式中、Aはリチウム脱離前の結晶格子体積、Bはリチウム脱離後の結晶格子体積を表す。充電前後の格子定数、格子体積及び体積変化率を表4に示す。
Figure 0005539802
(二次電池特性の評価)
得られた試料について以下の方法で、二次電池を作製した。A1〜A5及びB1〜B4をそれぞれ約1g秤量しメノウ乳鉢にて粉砕し、これに導電剤として約10wt%のアセチレンブラックと、結着剤として約10wt%のテフロン(登録商標)樹脂粉末とを混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに溶解してスラリー状にし、これを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法で塗布した。塗布量としては約5mg/cmとなるようした。この塗膜を乾燥した後に、プレスを行って正極を作製した。
負極活物質として、天然黒鉛粉末又はチタン酸リチウム(LiTi12)を使用した。この負極活物質に結着剤として約10wt%のテフロン樹脂粉末を混合した。更に負極活物質にチタン酸リチウムを使用する場合には、10wt%のアセチレンブラックを導電剤として更に混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに溶解してスラリー状にし、これを厚さ20μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥した後に、プレスを行って負極を作製した。
上記のようにして作製した正極と負極をそれぞれ30mm×30mmの大きさに切り抜き、電池の電流導入端子として正極には幅3mm、長さ50mmのアルミニウム製タブを、負極には幅3mm、長さ50mm銅製タブを溶接した。
これらの正極と負極との間に多孔質ポリエチレン製のセパレータを挟んだ。得られた積層体を、電池外装として2枚の金属箔に熱可塑性樹脂を貼り付けたラミネート膜の間に挟み、周囲を熱溶着することにより密封した。なおこのラミネートには電解質注入用の開口部が設けられている。
開口部に1mol/lのLiPFを溶解させた50体積%のエチレンカーボネートと50体積%のジエチルカーボネートとを電解質として含浸させた。次いで、開口部を封止して図4に示す二次電池を得た。図4は二次電池の構造を示す模式縦断面図である。図4中、1は正極、2は負極、3はセパレータ、4は正極及び負極タブ、5はラミネートを表す。
このように作製した電池を25℃の環境下で充放電した。充電電流は0.3mAとし、電池の電位が4Vに到達した時点で充電を終了させた。充電が終了後0.3mAで放電を行い電池の電位が2.0Vに到達した時点で放電を終了した。更に0.3mAの電流にて充放電を繰返し、100回目の放電容量を計測し、下記の式にて容量保持率を求めた。結果を表5に示す。
容量保持率(%)=(100回目の放電容量/初回の放電容量)×100
Figure 0005539802
表5に示すように、A1〜A5を用いた正極活物質は、B1〜B4を用いた正極活物質に比べて、負極活物質の種類や充放電温度が同じであれば、90mAh/g以上の高い放電容量と優れた90%以上の容量保持率を有する二次電池が得られることがわかった。
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極タブ及び負極タブ
5 ラミネート

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)表される組成を有するリチウム含有複合金属酸化物を含む非水電解質二次電池用正極活物質。
    (Li1−a)M(P1−ySi)O (1)
    (但し、式中、MはFe1−xで表され、ZはZr、Sn、YおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、xは0.05≦x≦0.25、yは0.10≦y≦0.50、aは0≦a≦0.05、bは0.9≦b<1である。ここで、aおよびbはCuKα線を線源に用いた粉末X線回折パターンからリートベルト解析を用いて求められる等価位置中の元素の占有率であり、aはリチウムサイト中のMの占有率であり、bは鉄サイト中のMの占有率である。)
  2. 体積変化率が5%以下である請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  3. 上記Mの平均価数が4価である請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  4. 上記ZがZrである請求項1から3のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  5. 上記正極活物質の表面の少なくとも一部が、炭素で被覆されている請求項1から4のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  6. 請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質と、導電材と、バインダーとを含む非水電解質二次電池用正極。
  7. 請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極と、負極と、電解質と、セパレータとを有する非水電解質二次電池。
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