JP5540367B2 - シャペロニン変異体およびこれをコードするdna - Google Patents
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Description
シャペロニンGroELは、GroELサブユニットの7量体が1つのリングを構成し、このリングがさらに背中合わせに2つ重なった状態の合計で14量体の構造をしている。また、ひとつのGroELサブユニットはATP結合部位を含む赤道ドメインと、基質タンパク質とGroESの結合部位を含む頂点ドメインと、その両ドメインをつなぐ中間ドメインとから構成されている。
ATPの加水分解の時間は、野生型GroELでは約8秒である。一方、野生型GroELのアミノ酸配列のうち、398番のアスパラギン酸がアラニンに置換されたGroEL変異体(以下、「GroEL(D398A)」ということがある)では、ATPの加水分解活性が野生型の2%以下となり複合体の半減期が30分以上となることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
Cell、Vol.97、p325〜338、1999.
本発明は、従来のシャペロニン変異体よりもATPの加水分解活性が低下し、シャペロニン複合体の保持時間が延長されるシャペロニン変異体および該シャペロニン変異体をコードするDNAを提供することを課題とする。
すなわち本発明の第1の態様は、配列番号1のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、または、配列番号1のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有するGroELサブユニット変異体である。
また本発明の第2の態様は、前記GroELサブユニット変異体を少なくとも1つ含むシャペロニン変異体である。
さらに本発明の第7の態様は、前記シャペロニン変異体と目的タンパク質とを接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記タンパク質を内包することと、目的タンパク質の構造を解析することと、を含む目的タンパク質の構造解析方法である。
かかる構成のGroELサブユニット変異体は、野生型のGroELサブユニットのアミノ酸配列における52番目と398番目のアスパラギン酸がアラニンに変異しているため、ATPの加水分解活性が顕著に低下している。このため、これを含んで構成されるシャペロニン変異体の反応サイクルを従来のシャペロニン変異体、例えば、GroEL(D398A)と比べて、フォールディング活性を低下させることなく、飛躍的に延ばすことができる。
尚、本明細書においては、GroELサブユニットの14量体を「シャペロニンGroEL」、GroELサブユニット変異体の14量体を「シャペロニンGroEL変異体」、「シャペロニンGroEL」と基質タンパク質等との複合体を「シャペロニン複合体」と称する。
本発明において、配列番号1のアミノ酸配列のうち52番および398番のアラニン以外の位置における、アミノ酸の置換、欠失、もしくは付加した変異部位の数としては、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である。
一般にタンパク質の機能を維持するためには、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸であることが好ましい。このようなアミノ酸の置換は、保存的置換と呼ばれている。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有する。また、非荷電性としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。また、酸性アミノ酸としては、Asp及びGluが挙げられる。また、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。これらの各グループ内のアミノ酸置換は好ましく許容される。
更に本発明におけるGroELサブユニット変異体は、用途に応じて、1以上のアミノ酸がさらに付加したものであってもよい。このような付加可能なアミノ酸としては、シグナルペプチド、タグ配列等を挙げることができる。
変異の導入方法としては、通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。例えば、PCRを用いる方法や、部位特異的突然変異導入キット(例えば、Stratagene社製等)を用いる方法等を挙げることができる。
本発明における配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ分子シャペロン活性を有するタンパク質をコードするDNAは、対応するGroELサブユニットのアミノ酸配列のうち52番目と398番目に相当するアスパラギン酸がアラニンに変異しているタンパク質をコードすることが必要である。
宿主細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110(1972)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えば、エレクトロポレーション法[Becker, D.M. et al.:Methods. Enzymol., 194: 182(1990)]、スフェロプラスト法[Hinnen, A. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929(1978)]、酢酸リチウム法[Itoh, H.:J.Bacteriol., 153:163(1983)]等が挙げられる。
すなわち、本発明のシャペロニン変異体を構成する7以上(好ましくは14)のGroELサブユニットのうち、少なくとも1つは上記のGroELサブユニット変異体である。
尚、本発明のシャペロニン変異体は、GroELサブユニット変異体を含むGroELサブユニットの集合から、通常の条件下、例えば、ATP依存的(Nature, 1990 Nov 22; 348(6299): 339-42)に形成される。
本発明においては、シャペロニン変異体のATP加水分解活性が低下していることで、被内包物を内包したシャペロニン複合体の状態を長時間維持することができる。
また本発明における被内包物は、シャペロニン変異体に内包されることから、例えば、タンパク質の場合、60kDa以下の大きさであることが好ましい。
ATP代替化合物として、GroELのATP加水分解部位で加水分解されない化合物(例えば、ADPとフッ化ベリリウムの付加物等)を用いることで、さらに長時間にわたって被内包物が内包されたシャペロニン複合体を維持することができる。
このようなシャペロニン複合体の徐放性は、例えば、被内包物の構造解析、フォールディングされたタンパク質の製造方法、ドラッグデリバリーシステム等に応用することができる。
本発明のシャペロニン変異体内に目的タンパク質を内包することで、目的タンパク質の構造を正しいフォールディング状態で構造解析を行うことができる。また、目的タンパク質の内包状態を長時間維持可能であることから、通常用いられる種々の構造解析方法を適用することが可能となる。
また本発明におけるシャペロニン複合体は、通常は凝集体を形成しやすい目的タンパク質を正しいフォールディング状態で長時間にわたって徐放することが可能であるため、例えば、NMRを用いた溶液状態での目的タンパク質の構造解析や結晶構造解析のための目的タンパク質の結晶成長が可能となる。
出発遺伝子材料として、Escherichia coliのシャペロニンGroELをコードする遺伝子断片を含有するプラスミドpET−EL(Biochem. Biophys. Res. Commun. 267, 842-849(2000))を用いた。pET−ELプラスミドの1本鎖DNAは、大腸菌CJ236にヘルパーファージM13KO7(Amersham Pharmacia Biotech)を感染させることで調製した。
次いで、下記表1に示した合成DNA1(配列番号3)を用いて、kunkel法(Methods Enzymol. 154, 367-382)により、野生型GroELのアミノ酸配列のうち、398番のアスパラギン酸がアラニンに変異した変異体GroEL(D398A)をコードするDNAを持つプラスミドpET−EL(D398A)を作製した。
得られたpET−EL(D52A)のCla I−Hind III断片を切り出し、上記で得られたpET−EL(D398A)のCla I−Hind III断片と入れ替えることで、野生型GroELのアミノ酸配列の52番と398番のアスパラギン酸がそれぞれアラニンに変異した変異体GroEL(D52,398A)をコードするDNAを持つプラスミドpET−EL(D52,398A)を作製した。
上記で得られたプラスミドpET−EL(D52,398A)を保有する大腸菌BL21(DE3)をLB培地中、37℃の温度条件で、600nmにおける吸光度が0.8になるまで培養し、1mMのisopropyl-β-D-thiogalactopyranosideを加えてさらに2時間培養した。
遠心により集菌し、超音波破砕用緩衝液(25mM Tris(pH 7.5)、1mM EDTA、1mM dithiothreitol(DTT)、1mM 4-(2-aminoethyl)-benzene-sulfonyl fluoride hydrochloride)で懸濁した後、超音波破砕した。遠心分離した上清をBiochem. Biophys. Res. Commun. 267, 842-849(2000)に記載された方法で精製し、野生型GroELのアミノ酸配列の52番と398番のアスパラギン酸がそれぞれアラニンに変異したシャペロニンGroEL(D52,398A)変異体を得た。
また、補因子であるGroESタンパク質は、GroES発現用プラスミドpET−ES2を用いてBiochem. Biophys. Res. Commun. 267, 842-849(2000)に記載された方法で調製した。
シャペロニンGroEL変異体からのADPの解離を、ATP再生法(Mol. Cell 114,423-434(2004))を用いて測定することで、シャペロニンGroEL変異体のATP加水分解活性を測定した。
反応溶液はHKM緩衝液(20mM HEPES-KOH (pH 7.4)、100mM KCl、5mM MgCl2)中に0.2mM NADH、5mM phosphoenolpyruvate、100μg/ml pyruvate kinase、100μg/ml lactate dehydrogenase、5mM dithiothreitol(DTT)、20μM lactalbumin、および、0.2μM GroELと0.6μM GroES(図1)または2.5μM GroELと5μM GroES(図2)を含む。
反応液に1mMのATPを加えることで反応を開始し、NADHの酸化に由来する340nmの吸光度の減少を連続的に計測した。
結果を図1および図2に示した。なお、図1はGroEL変異体の濃度が0.2μMおよびGroESの濃度が0.6μMの結果を示し、図2はGroEL変異体の濃度が2.5μMおよびGroESの濃度が5μMの結果を示す。
自発的にフォールディングできないタンパク質であるRhodaneseを用いて、以下のようにしてGroEL(D52,398A)変異体のフォールディング活性を測定した。
6M 塩酸グアニジンと1mM DTTを含む溶液中で変性したRhodaneseを、1μM GroEL変異体、2μM GroES、20mM Na2S2O3、1mM DTT、4mM ATPを含むHKM緩衝液中で40倍に希釈して反応液とした。
それぞれの時間で反応液5μLをサンプリングし、750μLのアッセイ溶液(100mM KH2PO4、150mM Na2S2O3、1mM EDTA)に添加して、反応を停止した。
Rhodanese活性の測定は、チオ硫酸イオンに由来するチオシアン酸イオンと硝酸鉄とによるチオシアン酸鉄の生成を460nmの吸光度で計測する方法で行った(Acta Chem. Scand.7,1129-1136(1953))。天然型Rhodaneseは、チオ硫酸イオンとシアン化物からチオシアン酸イオンを生成する反応を触媒するが、変性Rhodaneseはこの反応を触媒することができない。従って生成したチオシアン酸鉄の濃度を測定することで、シャペロニン変異体における変性Rhodaneseから天然型Rhodaneseへのフォールディング活性を測定できる。
結果を図3に示した。図3より、GroEL(D52,398A)変異体は、野生型GroELと全く変わらないRhodaneseフォールディング活性を示したことがわかる。
上記で得られたGroEL(D52,398A)変異体が形成するシャペロニン複合体の構造を以下のようにしてゲルろ過クロマトグラフィーを用いて解析した。
1mM DTTと1mM ATPとを含むHKM緩衝液中で、0.3μM GroEL(D52,398A)と0.3μM GroES(常法によりCy3にて蛍光ラベルしたGroES、以下、「Cy3−GroES」という)と混合し、HPLCゲルろ過クロマトグラフィー(G3000SWXL、Tosoh社製)で分離した。結果を図4Aに示した。
図4Aから、GroEL(D52,398A)変異体は、GroESと1:1の弾丸型複合体を形成していることがわかる。
図4Bから、GroEL(D52,398A)変異体とGroESとは、ADP存在下では弾丸型複合体を形成するが、ATP存在下ではGroEL(D52,398A):GroES=1:2のフットボール型複合体を形成することがわかる。
このようなフットボール型複合体は基質タンパク質を閉じ込めてフォールディングするチャンバー(空洞)が2つとも活性化された高効率の複合体である(J. Biol. Chem. 283, 23774-23781(2008))。
次に、シャペロニン複合体への新たなGroESまたは基質タンパク質の結合に要する時間を以下のようにして測定した。
1mM DTTと1mM ATPを含むHKM緩衝液中で1.5μM GroEL(D52,398A)と3μMのGroES(非蛍光ラベル体)と混合することでフットボール型複合体を形成した(t=0とする)。30秒のインキュベーションの後、複合体をゲルろ過クロマトグラフィー(PD−10カラム、GE Healthcare社製)で精製した。
複合体濃度を0.5μMに調製し、1μM Cy3−GroESと1mM ATPを加えた後、所定時間ごとにHPLCゲルろ過クロマトグラフィー(G3000SWXL、Tosoh社製)で分離し、新たなGroES(Cy3−GroES)の結合をCy3の蛍光を測定して観察した(励起波長550nm、蛍光波長570nm)。結果を図5に示した。
新たなGroESとの結合は、フットボール型複合体の2つのチャンバー(空洞)の少なくとも一方の反応サイクルが一巡して、GroESが解離することにより起こることがわかっている(J. Biol. Chem. 283, 23774-23781(2008))。したがって、GroEL(D52,398A)変異体では、反応開始5日後から最初に結合したGroESが解離し始めることが示された。
2μM GroEL(D52,398A)、4μM GroES(Cy3−GroES)、1mM DTT、1mM ATP、20mM HEPES−KOH(pH 7.4)、50mM KCl、5mM MgSO4を混合し、5分後にTSK-GEL guard column(Tosoh社製)でシャペロニン複合体を単離した。
所定時間経過ごとに、1.0%過塩素酸で処理して上清をK2CO3で中和し、逆相HPLCカラム(ODS−80Ts、Tosoh社製)でADPとATPを分離して、260nmにおける吸光度から、ATPとADPとをそれぞれ定量し、全ヌクレオチド中のATPおよびADPの割合を計算し、結果を図7に示した。
また、「(2)シャペロニン複合体への新たなGroESの結合性の評価」と同様にしてGroESの結合量の相対値を計算した。結果を図7に示した。
また、「(2)シャペロニン複合体への新たなGroESの結合性の評価」と同様にして、GroESおよび基質タンパク質(Cy3−Rhodanese)の結合量を計算した。結果を図8に示した。尚、空のGroEL(D398A)へのGroESまたは基質タンパク質の結合量をそれぞれ200%、100%とした。
Claims (8)
- 配列番号1のアミノ酸配列からなるGroELサブユニット変異体、または、
配列番号1のアミノ酸配列中、52番および398番のアラニン以外の1もしくは2以上のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、分子シャペロン活性を有するGroELサブユニット変異体。 - 請求項1に記載のGroELサブユニット変異体を少なくとも1つ含むシャペロニン変異体。
- 請求項1に記載のGroELサブユニット変異体をコードする塩基配列からなるDNA。
- 配列番号2の塩基配列からなるDNA、または、
配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ分子シャペロン活性を有するタンパク質をコードするDNAである請求項3に記載のDNA。 - 請求項3または請求項4に記載のDNAを含む組換えベクター。
- 請求項5に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
- 請求項2に記載のシャペロニン変異体および被内包物を接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記被内包物を内包すること、を含むシャペロニン複合体の製造方法。
- 請求項2に記載のシャペロニン変異体と目的タンパク質とを接触させて、前記シャペロニン変異体内に前記目的タンパク質を内包することと、前記目的タンパク質の構造を解析することと、を含む目的タンパク質の構造解析方法。
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