JP5543321B2 - 植物原料を含む食品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、好ましい物性を有する植物原料を含む食品を製造するための方法に関する発明である。
果実等の植物原料を含有する食品は、例えばゼリー等のゲル状食品の形態として提供され一般に賞味される。
特許文献1には、果実を含有する酸性ゲル状デザートの製造法が開示されている。この方法は、少なくとも低メトキシルペクチン、糖類、有機酸、及び有機酸塩からなり、必要に応じてこれらに果実等を加えたデザート組成物において、有機酸としてクエン酸、有機酸塩としてクエン酸ナトリウムを使用すると共に、該クエン酸と該クエン酸ナトリウムの重量比を1対1〜1.5となし、かつ該デザート組成物のpHを3.8〜4.3に調整した後密封した状態で加熱処理し、その後牛乳等のカルシウムを含有する礎材をこれに添加することを特徴とする酸性ゲル状デザートの製造法である。
特公昭59−4104号公報
食品を工業的に製造する場合、殺菌のための加熱処理が必要である。植物原料を含む食品を加熱処理する場合、植物原料の組織が崩壊してしまい、生の植物原料に近い食感を付与することができないという問題があった。
食品のpH値が4.6以上である場合は、100℃を超える温度での高温加熱処理(レトルト処理)を行う必要がある。高温加熱処理では植物原料の組織が崩壊する傾向が顕著である。また、特許文献1のように低pH食品は100℃以下の温度での低温加熱処理が可能であるが、低温加熱処理であっても同様の問題は依然として存在する。
前記の特許文献1は、本願発明の出願人のもので内容は熟知するものであり、植物原料としてバナナを用い得ることが記載されている。しかし、バナナを加えて前記のデザートを製造した場合に、低温加熱処理したものであるにも拘らず、バナナが極端に軟化して生のものとは著しく異なる不良な食感になってしまう。
本発明者らは前記の新たな課題を解決するために研究を重ねた結果、驚くべきことに、乾燥したバナナを用いて前記のデザートを製造した場合に、バナナが生のものと同等の好ましい食感となることを見出した。同時に、酸と、乾燥した植物原料と、水とを少なくとも含む、pHが3.6〜4.3に調整された原料混合物を容器に密封し、100℃以下の温度で低温加熱処理して得られる食品では、喫食時の植物原料の食感が、生の植物原料を喫食したときに感じられるような好ましい食感となることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は以下の発明を包含する。
(1)酸、乾燥した植物原料、及び水を含む、pHが3.6〜4.3に調整された原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、原料混合物を容器に密封した状態で100℃以下の温度にて加熱処理する工程を含むことを特徴とする、植物原料を含む食品の製造方法。
(2)乾燥した植物原料が、乾燥バナナ、乾燥リンゴ、乾燥イチゴ、乾燥メロン、乾燥柿、乾燥ブドウ、乾燥プルーンから選ばれる1つ以上である、(1)に記載の食品の製造方法。
(3)原料混合物が増粘剤及び/又はゲル化剤を更に含む、(1)又は(2)に記載の食品の製造方法。
(4)増粘剤及び/又はゲル化剤が低メトキシルペクチンであり、食品が、カルシウム及び/又はマグネシウムを含有する素材と混合された後に喫食される食品である、(3)に記載の食品の製造方法。
(5)酸がクエン酸及び乳酸である、(4)に記載の食品の製造方法。
(6)原料混合物がクエン酸ナトリウムを更に含む、(4)又は(5)に記載の食品の製造方法。
本発明の方法により製造される食品中の植物原料は、喫食時に、生の植物原料を喫食したときに感じられるような好ましい食感を呈する。
本発明において乾燥した植物原料とは、果実、野菜等の食用の植物原料を乾燥したものである。植物原料としては好ましくはバナナ、リンゴ、イチゴ、メロン、柿、ブドウ、プルーン等が挙げられる。植物原料としてはバナナや果菜が好ましく、特にバナナが好ましい。バナナは果肉組織が柔らかいため、従来の食品の製造方法では組織の崩壊が特に激しいという問題があったが、本発明の方法において乾燥バナナを用いることによりこの問題を解決することができる。乾燥方法は特に限定されず、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、油揚乾燥等の種々の方法により乾燥した植物原料を用いることができる。熱風乾燥及び減圧乾燥により乾燥した植物原料が特に好適である。乾燥した植物原料の配合量は特に限定されず、目的とする食品の形態に応じて適宜調節することができるが、典型的には、原料混合物の総重量に対して、乾燥した植物原料の重量として1〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%である。
乾燥した植物原料は、常法に従い選別・皮むきした後、乾燥を行い適当な大きさにカットしたものを用いる。乾燥した植物原料の大きさは、個々の片の最長径が5〜15mm程度になるようにカットされていることが好ましい。乾燥した植物原料の製造には、必要に応じて、漂白剤を使用することや、澱粉・粉糖などの果肉結着防止剤を使用することができる。カット前に予備乾燥を行うこともできる。
酸としては食品として許容される酸であれば特に限定されないが、好ましくはクエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、フィチン酸、リン酸等の有機酸である。
本発明の方法では、加熱処理前の原料混合物のpH値(25℃におけるpH値を指す。以下同じ)が3.6〜4.3であることを特徴とする。pH値が4.3よりも大きい値(特に4.6よりも大きい値)の場合、殺菌のために100℃を超える温度での加熱処理が必要となり、植物原料の物性が保持されないという問題がある。pH値が3.6よりも小さい値の場合、喫食時の酸味が強いため好ましくない。
加熱処理条件は、100℃以下での処理であれば特に限定されないが、好ましくは80〜95℃で、15〜30分間の範囲内の処理である。
原料混合物が収容される容器は、密封可能であり、且つ、密封された状態で加熱処理を施すことが可能な容器であれば特に限定されないが、典型的には、合成樹脂製のパウチ、缶、ビン、ペットボトル等である。
原料混合物は、製造される食品の形態に応じて増粘剤及び/又はゲル化剤を更に含むことができる。増粘剤及び/又はゲル化剤の添加が必要な食品としては、デザートベース、ゼリー等が挙げられる。増粘剤及び/又はゲル化剤としては、低メトキシルペクチン、高メトキシルペクチン、カラギーナン、ゼラチン、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム等が挙げられる。一般に増粘剤とはゾル状態での粘度を高める能力を有する物質であり、ゲル化剤とはゾルからゲルに変化する性能を有する物質である。
以上の酸、乾燥した植物原料、及び水を含み、必要により増粘剤及び/又はゲル化剤を含む、pHが3.6〜4.3に調整された原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、原料混合物を容器に密封した状態で100℃以下の温度にて加熱処理する工程を含む構成により植物原料を含む食品を製造する。
本発明の方法により製造される食品の形態は上記には限定されず、容器入りの植物素材、ゲル状デザート、ゼリー、プリン、ムース、ババロア等のデザート食品やこれらのベース等の種々の形態とすることができる。
具体的には、低メトキシルペクチン、酸、乾燥した植物原料、及び水を含む、pHが3.6〜4.3に調整された原料混合物を100℃以下の温度にて加熱処理して製造される食品は、それ自体は通常流動状乃至ゲル状であるが、カルシウム(牛乳等)及び/又はマグネシウム(にがり等)を含有する素材と混合されると、デザート食品として好適なゲル状物を形成する。原料混合物のpHが3.6〜4.3、好ましくは3.8〜4.3である場合に、カルシウム含有素材と混合後のゲル状物が好ましい物性となる。カルシウム含有素材としては牛乳のほかに、加工乳、乳飲料、脱脂乳、練乳、粉乳、乳製品、豆乳等を使用することができる。
上記食品の製造のために用いられる低メトキシルペクチンは、エステル化度が50%以下、好ましくは25〜40%のメトキシルペクチンである。
本発明の方法により製造される食品と、カルシウム及び/又はマグネシウムを含有する素材とを組み合わせて得られるゲル状物はpH値が5.5程度にまで高まる。本発明者らは驚くべきことに、原料混合物中の酸として乳酸とクエン酸とを組み合わせて配合した場合に、牛乳などのカルシウム含有素材の添加によりpH値が高められたゲル状物において植物原料の酸味が抑制され、調和のとれた良好な風味となることを見出した。この効果は、酸味が感じられることが好ましくないバナナ等の植物原料を用いる場合に特に好ましい効果である。クエン酸と乳酸との重量比は、好ましくは、クエン酸:乳酸=1:0.2〜5である。
低メトキシルペクチン、酸、乾燥した植物原料、及び水を含む、pHが3.6〜4.3に調整された原料混合物は更にクエン酸ナトリウムを含有することが好ましい。酸とクエン酸ナトリウムとを組み合わせることにより、低メトキシルペクチンのゲル状物に爽快な酸味と、やわらかく、まろやかな食感が付与される。この場合、酸としてはクエン酸が用いられることが好ましい。クエン酸とクエン酸ナトリウムとは、重量比でクエン酸:クエン酸ナトリウム=1:1〜1.5となるように配合されることが好ましい。この比率でクエン酸とクエン酸ナトリウムとが配合された低メトキシルペクチンを含む原料混合物を加熱処理し、それを牛乳と混合したときに、牛乳中のタンパク質が低メトキシルペクチンとカルシウムとのゲル化反応にうまく適合した状態となり、所望のゲルを得ることができる(特許文献1参照)。
なお、酸、具体的にはクエン酸、乳酸等とクエン酸ナトリウムは、原料混合物のpHが3.6〜4.3に調整されるように各々適宜の量で用いることができる。
増粘剤及び/又はゲル化剤としてカラギーナン等の他の増粘剤及び/又はゲル化剤を用いた場合、本発明の方法により製造される食品はゼリー等の形態とすることができる。
原料混合物には必要に応じて食品として許容される他の成分を適宜配合することができる。他の成分としては、糖類、香料、色素、リキュール、果汁、ピューレ、チョコレート等の通常の食品成分が例示できる。
実施例1
後記の表の配合で乾燥バナナ(5〜7mmダイス)、LMペクチン(低メトキシルペクチン、増粘剤及び/又はゲル化剤)、グラニュー糖、クエン酸三ナトリウム、乳酸、クエン酸、香料、色素、水残余を混合し、デザートベース100重量部を得た。このベースのpHは4.2であった。乾燥バナナとして、常法に従い選別・皮むきした後、熱風乾燥を行い、5〜7mmダイス形状にカットしたものを用いた。当該乾燥バナナは、果肉結着防止のための粉糖を少量含有する。
次に、上記デザートベースを合成樹脂製のパウチに充填密封して容器入りデザートベースとし、95℃、20分の熱水中に浸漬して加熱殺菌処理を施した。その後、上記ベースを常温まで冷却した。
冷却後のデザートベースを、5℃の牛乳100重量部に加え、スプーンで約20秒間攪拌し、ミルクデザート200重量部を得た。このミルクデザートのpHは6.5であった。
ミルクデザート中のバナナは生バナナと同等の良好な食感で、違和感のある酸味は感じられなかった。ミルクデザートはすっきりとした酸味で中性風味のバナナとマッチした良好な風味で、バナナと合せて口どけのよいものであった。
更に、果肉の食感及び酸味を官能評価した。評価は5段階で行った。評価基準は次のとおりである。バナナ果肉の食感は、5(非常に良好)、4(良好)、3(普通)、2(不良)、1(極めて不良)の5段階評価を行った。また、バナナ果肉の酸味は、5(酸味が全くない)、4(酸味をほとんど感じない)、3(酸味を感じる)、2(酸味を強く感じる)、1(非常に強い酸味を感じる)の5段階評価を行った。
上記評価の結果を表1に示す。
実施例2
乳酸を使用せず、等重量のクエン酸に置換した以外は実施例1と同様の配合及び手順に従い、デザートベース及びミルクデザートを調製した。
実施例1と比較して、バナナ、ミルクデザートの風味に差異が認められた。バナナ果肉の食感は実施例1と同じく非常に良好であった。
比較例1〜2
乾燥バナナに代えて生バナナ(比較例1)又は冷凍バナナ(比較例2)を用いた。乾燥バナナとの水分含有量の相違を考慮して、バナナ乾燥物換算での配合量が同等となるように、生バナナ、冷凍バナナ、水の配合量を適宜調整した以外は実施例1と同様の配合及び手順に従い、デザートベース及びミルクデザートを調製した。
実施例1と比較して、バナナの食感及び風味に差異が認められた。生バナナはとろけてしまい、バナナ本来の食感で無くなると共に歩留まりが低く問題があった。冷凍バナナは筋っぽい食感が残ると共に歩留まりが低く問題があった。
比較例3
加熱殺菌処理条件として120℃、20分の条件を用いた以外は実施例1と同様の配合及び手順に従い、デザートベース及びミルクデザートを調製した。
実施例1と比較して、バナナはとろけ、本来の食感を失うと共に歩留まりが低い点で差異が認められた。
実施例3
乾燥リンゴ、増粘剤及び/又はゲル化剤であるカラギーナン、及びその他の材料を含有する表1記載の実施例3の配合の原料を加温混合し、カップ容器に充填密封した。容器充填後、95℃、20分の熱水中に浸漬して加熱殺菌処理を施した。加熱殺菌処理後に冷却し、冷蔵して、カップ容器入りゼリーを調製した。乾燥リンゴとして、常法に従い選別した後、熱風乾燥を行い、5〜7mmダイス形状にカットしたものを用いた。当該乾燥リンゴは、果肉結着防止のための澱粉及び粉糖を少量含有する。
このゼリーを食した場合に、リンゴの食感は良好で、ゼリーの風味も良好であった。
比較例4
乾燥リンゴに代えてシロップ漬けしたリンゴを用いた。乾燥リンゴとの水分含有量の相違を考慮して、リンゴ乾燥物換算での配合量が同等となるように、シロップ漬けしたリンゴ及び水の配合量を適宜調整した以外は実施例3と同様の配合及び手順に従い、カップ容器入りゼリーを調製した。実施例3と比較して、りんごがとろけ、本来の食感を失うと共に歩留まりが低い点で差異が認められた。
Figure 0005543321

Claims (6)

  1. 酸、乾燥した植物原料、及び水を含む、pHが3.6〜4.3に調整された原料混合物を容器に収容し密封する工程、並びに、原料混合物を容器に密封した状態で100℃以下の温度にて加熱処理する工程を含むことを特徴とする、植物原料を含む食品の製造方法。
  2. 乾燥した植物原料が、乾燥バナナ、乾燥リンゴ、乾燥イチゴ、乾燥メロン、乾燥柿、乾燥ブドウ、乾燥プルーンから選ばれる1つ以上である、請求項1に記載の食品の製造方法。
  3. 原料混合物が増粘剤及び/又はゲル化剤を更に含む、請求項1又は2に記載の食品の製造方法。
  4. 増粘剤及び/又はゲル化剤が低メトキシルペクチンであり、食品が、カルシウム及び/又はマグネシウムを含有する素材と混合された後に喫食される食品である、請求項3に記載の食品の製造方法。
  5. 酸がクエン酸及び乳酸である、請求項4に記載の食品の製造方法。
  6. 原料混合物がクエン酸ナトリウムを更に含む、請求項4又は5に記載の食品の製造方法。
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