JP5545991B2 - ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリオキシメチレン樹脂組成物及び成形体に関する。
従来、ポリオキシメチレン樹脂は、バランスのとれた機械的特性と、優れた耐熱特性とを併せ持つエンジニアリング樹脂として、各種の機構部品をはじめ、OA機器等に広く用いられている。
特に、優れた摩擦磨耗特性をもつことから、プリンター等の歯車の素材として好適に使用されている。
しかし、近年の機器の高精度化、高機能化に伴い、機器を使用することにより発生する振動・騒音の低減化が重要な課題となり、これに伴い、素材樹脂としても、より高度な柔軟性能が要求されるようになってきている。
従来から、柔軟性能を有している材料としては、一般的に、ゴム系又は熱可塑性エラストマー系のもの、あるいは金属板と金属板との間に樹脂系又はゴム系材料を挟んだもの等が用いられている。
しかし、前記ゴム系又は熱可塑性エラストマー系のものは、発熱による部品の高温条件下に対する耐熱性、対金属、対樹脂との摩擦磨耗特性、インク等の薬物との接触に対する耐薬品性等に問題があり、また前記金属板と金属板との間に樹脂系又はゴム系材料を挟んだものは、成形加工上問題がある。
また、特許文献1には、ホルムアルデヒドを、ある特定のビニル芳香族化合物のブロック共重合体の存在下で重合した重合体組成物が、特許文献2には、ポリオキシメチレン樹脂と官能基を有するスチレン系樹脂との混合物が、それぞれ開示されている。
特開平8−165405号公報 特開平10−60224号公報
しかしながら、 特許文献1、2に開示されている材料は、いずれも耐衝撃性については改良が試みられてはいるものの、機器の発生する振動・騒音を低減化できるまでの高度な柔軟性能を有しているとは言えない。
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑みて、優れた摩擦磨耗特性を有しつつ、さらに、高度な柔軟性能が付与された成形体を製造可能なポリオキシメチレン樹脂組成物、及び当該特性を有する成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリオキシメチレン樹脂が本来有している優れた耐衝撃性、摩擦磨耗特性に加え、さらに、高度な柔軟性能をも付与すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリオキシメチレン樹脂に、ある特定のスチレン系エラストマーを添加した組成物が、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
(A)ポリオキシメチレン樹脂:100質量部と、
(B)−10℃以下に粘弾性測定により得られるtanδの主分散ピーク温度を有し、
核磁気共鳴装置(NMR)測定により得られるスチレン量が30質量%以下であるスチレ
ン系エラストマー:1〜100質量部と、
を、含有し、
前記(B)のスチレン系エラストマーが、分散平均粒径10μm以下で分散しているポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔2〕
前記(A)成分は、メルトフローレイト(ASTM−D1238−57Tの条件で測定)が、1.0〜80g/10分である、前記〔1〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
〔3〕
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される数平均分子量10000〜500000のポリオキシメチレンブロック共重合体を含む、前記〔1〕に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
H−R3−O−(CR1 2k−R4−(CR1 2k−O−R3−H ・・・(1)
(一般式(1)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、及び置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる化学種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、
kは、それぞれ独立して2〜6の整数を示す。
3は、下記一般式(2a)で表されるオキシメチレン単位と下記一般式(2b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位とは互いにランダムに存在し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、前記オキシメチレン単位の含有量は95〜99.9モル%、前記オキシ炭化水素単位の含有量が0.1〜5モル%であり、2つのR3の平均の数平均分子量は5000〜250000である。
下記一般式(2b)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、及び置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる化学種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、jは2〜6の整数を示す。
4は、下記一般式(3a)で表されるエチレン単位と下記一般式(3b)で表されるn−ブチレン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位とは互いにランダム又はブロックに存在し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位との総量100モル%に対して、前記エチレン単位の含有量は2〜98モル%、前記n−ブチレン単位の含有量は2〜98モル%である。R4は、数平均分子量が500〜10000であり、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。)
−(CH2O)− ・・・(2a)
−((CR2 2j−O)− ・・・(2b)
−(CH2CH2)− ・・・(3a)
−(CH2CH2CH2CH2)− ・・・(3b)
〔4〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて成形された成形体。
本発明によれば、優れた摩擦磨耗特性及び柔軟性能を有する成形体を製造可能なポリオキシメチレン樹脂組成物及び前記特性を有する成形体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、説明する。
本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物〕
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、
(A)ポリオキシメチレン樹脂:100質量部と、
(B)−10℃以下に粘弾性測定により得られるtanδの主分散ピーク温度を有し、
スチレン量が30質量%以下であるスチレン系エラストマー:1〜100質量部と、
を、含有する。
本明細書において、これらはそれぞれ、(A)成分、(B)成分とも表記する。
((A)ポリオキシメチレン樹脂)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(A)ポリオキシメチレン樹脂を含有している。
(A)ポリオキシメチレン樹脂としては、ポリオキシメチレン単独重合体及びポリオキシメチレン共重合体が挙げられる。
ポリオキシメチレン単独重合体は、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。従って、ポリオキシメチレン単独重合体は、実質的にオキシメチレン単位からなる。
一方、ポリオキシメチレン共重合体は、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールと、を共重合させて得られるものである。
また、ポリオキシメチレン共重合体としては、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリオキシメチレン共重合体、並びに、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルと、を共重合させて得られる架橋構造を有するポリオキシメチレン共重合体も用いることができる。
さらに、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、両末端又は片末端に、水酸基等の官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコール、の存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリオキシメチレン単独重合体であってもよい。
同様に、(A)ポリオキシメチレン樹脂は、両末端又は片末端に、水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコール、の存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリオキシメチレン共重合体であってもよい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物を構成する(A)ポリオキシメチレン樹脂は、ブロック成分を有するポリオキシメチレン共重合体を含むものであることが好ましい。
<ポリオキシメチレン共重合体の製造方法>
ポリオキシメチレン共重合体の一例として、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)と、1,3−ジオキソランとを、共重合させたものが挙げられる。
このポリオキシメチレン共重合体を得る場合、上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーは、一般的には、トリオキサン100molに対して0.1〜60mol、好ましくは0.1〜20mol、更に好ましくは0.13〜10mol用いる。
ポリオキシメチレン共重合体の融点は、162℃〜173℃であることが好ましく、より好ましくは167℃〜173℃、さらに好ましくは167℃〜171℃である。
融点が167℃〜171℃であるポリオキシメチレン共重合体は、トリオキサン100molに対して1.3〜3.5mol程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。
ポリオキシメチレン共重合体の融点は、当該ポリオキシメチレン共重合体を圧縮プレス機でフィルム状にし、パーキンエルマー社製(DSC−7)を用いて、室温から200℃まで40℃/minで昇温させ、200℃で1分間保持し、130℃まで40℃/minで降温させた後、200℃まで2.5℃/minで昇温させた時の吸熱曲線のピークトップを測定することにより得られる。
ポリオキシメチレン共重合体の重合工程においては、所定の重合触媒を用いることが好ましい。
ポリオキシメチレン共重合体の重合に用いられる重合触媒としては、例えば、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
また、プロトン酸、そのエステル又は無水物としては、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
これらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好ましい。
ポリオキシメチレン共重合体を製造する重合方法については、従来公知の方法を適用できる。
例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。
上記の重合により得られたポリオキシメチレン共重合体には、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕が存在するため、そのままでは実用に供することは困難である。そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましく、具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好適である。
すなわち、下記一般式(4)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリオキシメチレン共重合体の融点以上260℃以下の温度で、ポリオキシメチレン共重合体に対して、それを溶融させた状態で加熱処理を施すことにより、特定の不安定末端部の分解除去処理を行う。
[R5678+n-n ・・・(4)
一般式(4)中、R5、R6、R7及びR8は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。
上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。
また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
nは、1〜3の整数を示す。
Xは、水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
前記ポリオキシメチレン共重合体の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕を、分解除去処理するために用いる第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(4)で表わされるものであれば特に制限はないが、一般式(4)における、R5、R6、R7、及びR8が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらには、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものがより好ましい。
第4級アンモニウム化合物は、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、ヨウ素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4 -、SO4 2-)、炭酸(HCO3 -、CO3 2-)、ホウ酸(B(OH)4 -)、及びカルボン酸の塩が好ましい。
前記カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。
第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
前記ポリオキシメチレン共重合体の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕を、分解除去処理するために用いる第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリオキシメチレン共重合体と第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する、下記一般式(5)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
第4級アンモニウム化合物の使用量(質量ppm)=P×14/Q ・・・(5)
ここで、式(5)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレン共重合体に対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
前記ポリオキシメチレン共重合体の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕を、分解除去処理する際の、第4級アンモニウム化合物の使用量が、0.05〜50質量ppmの範囲であると、実用上十分な不安定末端部の分解除去速度が確保でき、分解除去後に得られるポリオキシメチレン共重合体の色調も良好なものとなる。
上述したように、本実施形態において用いる(A)ポリオキシメチレン樹脂の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕は、融点以上260℃以下の温度で、(A)ポリオキシメチレン樹脂を溶融させた状態で熱処理すると、分解除去される。
この分解除去処理に用いる装置としては、特に制限はないが、押出機、ニーダー等が好適である。
分解によりホルムアルデヒドが発生するが、通常、減圧下で除去される。
熱的に不安定な末端部を分解除去する際に、上述した第4級アンモニウム化合物をポリオキシメチレン共重合体中に存在させる方法には特に制約はなく、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリオキシメチレン共重合体パウダーに吹きかける方法が挙げられる。
いずれの方法を用いても、ポリオキシメチレン共重合体を加熱処理する工程において、ポリオキシメチレン共重合体中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。
例えば、ポリオキシメチレン共重合体が溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリオキシメチレン共重合体にフィラーやピグメントを配合する場合、ポリオキシメチレン共重合体の樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
(A)ポリオキシメチレン樹脂の熱的に不安定な末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリオキシメチレン共重合体と共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。
重合触媒の失活処理としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。
重合触媒の失活を行わない場合、ポリオキシメチレン共重合体の融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてその共重合体を加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れた、(A)ポリオキシメチレン樹脂として好適なポリオキシメチレン共重合体を得ることができる。
本実施形態において、(A)ポリオキシメチレン樹脂としては、後述する(A−1):下記一般式(1)で表される、数平均分子量10000〜500000のポリオキシメチレンブロック共重合体を含むものであることが好ましい。
この(A−1)ポリオキシメチレンブロック共重合体は、国際公開第01/009213号に示す方法により製造することが可能である。
H−R3−O−(CR1 2k−R4−(CR1 2k−O−R3−H ・・・(1)
ここで、一般式(1)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、及び置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれるいずれかの化学種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい、
kは、それぞれ独立して2〜6の整数を示す。
3は、下記一般式(2a)で表されるオキシメチレン単位と下記一般式(2b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、オキシメチレン単位とオキシ炭化水素単位とは互いにランダムに存在し、オキシメチレン単位とオキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、オキシメチレン単位の含有量は95〜99.9モル%、オキシ炭化水素単位の含有量は0.1〜5モル%であり、2つのR3の平均の数平均分子量は5000〜250000である。
下記一般式(2b)中、R2は、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、及び置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれるいずれかの化学種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
jは2〜6の整数を示す。
上記一般式(1)中の両端の水素原子は、下記一般式(2a)又は(2b)における酸素原子と結合する。
4は、下記一般式(3a)で表されるエチレン単位と下記一般式(3b)で表されるn−ブチレン単位とを複数有するブロックを示し、エチレン単位とn−ブチレン単位とは互いにランダム又はブロックに存在し、エチレン単位とn−ブチレン単位との総量100モル%に対して、エチレン単位の含有量は2〜98モル%、n−ブチレン単位の含有量は2〜98モル%である。また、R4は、その数平均分子量が500〜10000であり、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。
本実施形態において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるPMMA(ポリメチルメタクリレート)換算の分子量である。
−(CH2O)− ・・・(2a)
−((CR2 2j−O)− ・・・(2b)
−(CH2CH2)− ・・・(3a)
−(CH2CH2CH2CH2)− ・・・(3b)
上記置換アルキル基及び置換アリール基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基が挙げられる。
上記(A−1)成分は、オレフィン成分を含むポリマーとの相容性改良に効果がある。
<(A)ポリオキシメチレン樹脂の物性>
(A)ポリオキシメチレン樹脂のメルトフローレイト(ASTM−D1238−57Tの条件で測定)は、成形加工の面から0.5g/10分以上であると好ましく、耐久性の面から100g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは1.0〜80g/10分、さらに好ましくは5〜60g/10分、さらにより好ましくは7〜50g/10分の範囲である。
<(A)ポリオキシメチレン樹脂に含有させるその他の成分>
本実施形態で用いられる(A)ポリオキシメチレン樹脂には、従来のポリオキシメチレン樹脂に使用されている安定剤、例えば熱安定剤の1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
熱安定剤としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤及びこれらの組合せが好適である。
前記酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
前記ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体としては、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。
具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられ、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
前記安定剤の好ましい組合せは、特にトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、特にポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、特に脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せである。
それぞれの安定剤の添加量は、(A)ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量%の範囲であると好ましい。
((B)スチレン系エラストマー)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、(B)スチレン系エラストマーを含有している。
この(B)成分であるスチレン系エラストマーについて説明する。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物に含有されている(B)スチレン系エラストマーは、ランダム、ブロック、グラフト等の共重合の形態、側鎖や分岐の有無とその程度、共重合組成の割合、水素添加の有無等、特に制限はないが、粘弾性測定により得られるtanδの主分散ピーク温度が−10℃以下であり、スチレン量が30質量%以下であることが必要である。この範囲とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物において、高度な柔軟性能が得られる。
粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピークは下記のようにして測定される。
まず、シート状の試料を、幅10mm、長さ35mmのサイズに切断し、レオメーター装置(商品名「ARES」、ティーエイインスツルメントー株式会社製)の捻りタイプのジオメトリーに試料をセットする。
次いで、実効測定長さを25mm、ひずみを0.5%、周波数を1Hzに設定し、−80℃から80℃まで昇温速度3℃/分で昇温して粘弾性スペクトルを得る。
得られた粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピーク温度は、所定のソフトウェア(商品名「RSI Orchestrator」、ティーエイインスツルメントー株式会社製)の自動測定により検出されるピークから求められる。
粘弾性測定により得られるtanδの主分散ピーク温度は、好ましくは−20℃以下であり、より好ましくは−30℃である。
水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量、すなわちスチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量は、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka、et al.、RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54、685(1981)に記載の方法で知ることができる。また、スチレン量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
(B)スチレン系エラストマーは、数平均分子量が、10000〜500000であることが好ましい。
この範囲とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物において、高度な柔軟性能が得られる。
本実施形態において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量である。
また、(B)スチレン系エラストマーの中でも好ましいものは、下記で示されるスチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合しうる単量体との共重合体である。
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン、エチルスチレン等の芳香族ビニル単量体を含むものであり、中でもスチレンが好ましい。
また、前記スチレン系単量体と共重合しうる単量体とは、共重合性不飽和単量体の他、エラストマー等も含まれる。
前記共重合性不飽和単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド系単量体、ジエンモノマー(例えば、ブタジエン、イソプレン等)、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等)等が例示できる。
前記エラストマーには、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンープロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィン等が挙げられ、水素添加物であってもよい。
<(B)スチレン系エラストマーの含有量>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物における(B)スチレン系エラストマーの含有量は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が1〜100質量部の範囲である。この範囲にあることにより、成形加工時の流動性と成形品の外観とが良好であり、かつ優れた柔軟性能が付与される。
(B)成分の含有量は、10〜80質量部が好ましく、20〜60質量部がより好ましい。
<(B)スチレン系エラストマーの分散平均粒径>
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物において、(B)スチレン系エラストマーの分散平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。
(B)成分の分散平均粒径は、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物の成形体(試験片)を用いて、表層部分の直角方向(成形時の流れに対して)を、0.3mm四方の厚さ80nm超薄フィルムに切り出し、透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、H−7500)で観察する方法にて、測定できる。
分散平均粒径が10μm以下であることにより、機械的物性が良好であり、柔軟性にも優れ、摩擦磨耗特性にも優れた成形体が得られる。
分散平均粒径は、8μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂組成物は、上述した(A)成分、(B)成分、必要に応じてその他の添加剤を溶融混練することにより製造できる。
溶融混練機としては、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機が挙げられる。
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物を用いた成形体〕
本実施形態の成形体は、上述したポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、所定の成形方法により成形したものである。
成形方法としては、例えば、射出成形法、ホットランナー射出成形法、アウトサート成形法、インサート成形法、ガスアシスト中空射出成形法、金型の高周波加熱射出成形法、圧縮成形法、インフレーション成形、ブロー成形、押出成形又は押出成形品の切削加工等の成形法が挙げられる。
成形体の用途としては、例えば、ギヤ、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及びガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品が挙げられる。
また、成形体の他の用途としては、例えば、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(CompactDisk)(CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む。)、DVD(Digital Versatile Disk)(DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む)、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品が挙げられる。
また、上記成形体の他の用途としては、自動車用の部品であるガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジに代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリルに代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン、スルーアンカー、タングに代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類及びクリップ類の部品が挙げられる。
さらに、上記成形体の他の用途として、シャープペンシルのペン先及びシャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台及び排水口、排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター及びボタン、散水用のノズル及び散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び床材の支持具である建築用品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び住宅設備機器に代表される工業部品が好適に挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
先ず、後述する実施例及び比較例で用いる成分及び評価方法を以下に示す。
〔成分〕
((A)ポリオキシメチレン樹脂)
熱媒を通すことのできるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整した。
水及び蟻酸を合わせて4ppm含むトリオキサンを40モル/時間、同時に、環状ホルマールとして1,3−ジオキソランを2モル/時間、重合触媒としてシクロヘキサンに溶解させた三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対し5×10-5モルとなる量、連鎖移動剤として下記式(6)で表される両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(Mn=2330)をトリオキサン1モルに対し1×10-3モルになる量で、前記重合機に連続的に供給し重合を行った。
前記重合機から排出されたポリマーを、トリエチルアミン1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を完全に行った後、そのポリマーを濾過、洗浄した。
濾過洗浄後の粗ポリオキシメチレン共重合体1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物として、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を窒素の量に換算して20質量ppmになるよう添加し、それらを均一に混合した後、120℃で乾燥した。
これにより、下記式(7)のブロック共重合体である(A)ポリオキシメチレン樹脂を得た。
得られたブロック共重合体である(A)ポリオキシメチレン樹脂の曲げ弾性率は2550MPaであり、メルトフローレイトは9.3g/10分(ASTM D−1238−57T)であり、数平均分子量は52000であった。
なお、本実施例において、曲げ弾性率はISO178に基づき測定し、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてPMMA(ポリメチルメタクリレート)換算により算出した。
Figure 0005545991
Figure 0005545991
((B)スチレン系エラストマー)
(B−1)スチレン−ポリエチレン・ブチレン−スチレン共重合体(商品名「タフテックH1221」、旭化成工業(株)社製、tanδ−33℃、スチレン量13質量%)
(B−2)スチレン−ポリエチレン・ブチレン−スチレン共重合体(商品名「タフテックM1913」、旭化成工業(株)社製、tanδ−45℃、スチレン量30質量%)
(B−3)スチレン−水素添加ビニルポリイソプレン−スチレン共重合体(商品名「ハイブラー7311」、クラレ(株)社製、tanδ−17℃、スチレン量12質量%)
(B−4)スチレン−水素添加ビニルポリイソプレン−スチレン共重合体(商品名「ハイブラー7125」、クラレ(株)社製、tanδ−5℃、スチレン量20質量%)
(B−5)水素添加スチレン/ブタジエン共重合体(商品名「S.O.E L606」、旭化成工業(株)社製、tanδ−13℃、スチレン量40質量%以上)
(B−6)スチレン−ポリエチレン・ブチレン−スチレン共重合体(商品名「タフテックH1041」、旭化成工業(株)社製、tanδ−45℃、スチレン量32質量%)
前記(B−1)〜(B−6)の、粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピーク温度は、下記のようにして測定した。
まず、幅10mm、長さ35mmのサイズの測定用のシート状試料を、レオメーター装置(商品名「ARES」、ティーエイインスツルメントー株式会社製)の捻りタイプのジオメトリーに試料をセットした。
次いで、実効測定長さを25mm、ひずみを0.5%、周波数を1Hzに設定し、−80℃から80℃まで昇温速度3℃/分で昇温して粘弾性スペクトルを得た。
得られた粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピーク温度は、所定のソフトウェア(商品名「RSI Orchestrator」、ティーエイインスツルメントー株式会社製)の自動測定により検出されるピークから求めた。
また、前記スチレン量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka、et al.、RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54、685(1981)に記載の方法により得た。
〔評価方法〕
(1)機械的特性評価
実施例及び比較例で得られたペレットを80℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度205℃に設定された5オンス成形機(東芝機械(株)製、商品名「IS−100GN」)を用いて、金型温度90℃、射出時間35秒、冷却時間15秒の条件で物性評価用ISOダンベル試験片を成形した。
この試験片に対して下記の試験を行った。
(i)引張伸度;ISO527−1&−2に基づいて測定した。
(ii)シャルピー衝撃強度;ISO179/1eAに基づいて測定した。
(2)分散平均粒径
前記(1)機械的特性評価に用いたものと同様の試験片を用いて、表層部分の直角方向(成形時の流れに対して)を、0.3mm四方の厚さ80nm超薄フィルムに切り出し、透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、H−7500)で観察する方法にて、スチレン系エラストマーの分散平均粒径(μm)を求めた。
〔実施例1〕
前記(A)成分50質量部と、前記(B−1)成分50質量部と、安定剤としてトリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.3質量部と、ポリアミド66 0.05質量部と、ステアリン酸カルシウム0.13質量部とをブレンダーで均一に混合し、混合物を得た。
その後、その混合物を200℃に設定されたL/D=48の26mmφ二軸押出機(東芝機械(株)製、商品名「TEM−26SS」)のトップに重量式フィーダーを用いて供給して、スクリュー回転数120rpm、押出速度11kg/時間の条件でそれらの溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
押し出された樹脂組成物をストランドカッターでペレット化とした。
前記(1)機械的特性評価、(2)分散平均粒径の評価結果を表1に示す。
〔実施例2〕
前記(A)成分50質量部と、前記(B−1)成分50質量部とを、ブレンダーで均一に混合し、混合物を得た後、その混合物を200℃に設定されたL/D=48の26mmφ二軸押出機(東芝機械(株)製、商品名「TEM−26SS」)のトップに重量式フィーダーを用いて供給して、スクリュー回転数120rpm、押出速度11kg/時間の条件でそれらの溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
押し出された樹脂組成物をストランドカッターでペレット化とした。
前記(1)機械的特性評価、(2)分散平均粒径の評価結果を表1に示す。
〔実施例3〜6〕
前記(B)成分、及びその組成比(単位:質量部、以下同様。)を、下記表1に示すように変更し、樹脂組成物を得た。
その他の条件は、実施例1と同様にしてペレットを得た。
前記(1)機械的特性評価、(2)分散平均粒径の評価結果を表1に示す。
〔比較例1〜3〕
前記(B)成分、及びその組成比(単位:質量部、以下同様。)を、下記表1に示すように変更し、樹脂組成物を得た。
その他の条件は、実施例1と同様にしてペレットを得た。
前記(1)機械的特性評価、(2)分散平均粒径の評価結果を表1に示す。
Figure 0005545991
表1に示すように、実施例1〜6のポリオキシメチレン樹脂組成物は、いずれも成形体の機械的物性が良好であり、柔軟性が付加されていることが分かった。
また、スチレン系エラストマーの分散粒子径が微細であり、優れた摩擦磨耗特性を有していることが分かった。
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、成形、切削、又は成形・切削加工して得られる機構部品(例えば、ギヤ、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、関節、軸、軸受け、キーステム及びキートップからなる群から選ばれる少なくとも一種)、アウトサートシャーシの樹脂部品、シャーシ、トレー及び側板からなる群から選ばれる少なくとも一種の部品として用いることができ、下記の用途に利用可能性がある。
すなわち、(1)プリンター及び複写機に代表されるOA機器に使用される部品、(2)VTR及びビデオムービーに代表されるビデオ機器に使用される部品、(3)カセットプレーヤー、LD、MD、CD(含CD−ROM、CD−R、CD−RW)、DVD(含DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−Audio)、ナビゲーションシステム及びモバイルコンピューターに代表される音楽、映像、又は情報機器に使用される部品、(4)携帯電話、及びファクシミリに代表される通信機器に使用される部品、(5)自動車内外装部品に使用されるクリップ、スルーアンカー、タング、燃料タンク、燃料タンク及びその周辺部品に使用される部品、並びに、(6)使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、コンベア、バックル、及び住設機器に代表される工業雑貨に使用される部品として、産業上利用可能性がある。

Claims (4)

  1. (A)ポリオキシメチレン樹脂:100質量部と、
    (B)−10℃以下に粘弾性測定により得られるtanδの主分散ピーク温度を有し、
    核磁気共鳴装置(NMR)測定により得られるスチレン量が30質量%以下であるスチレ
    ン系エラストマー:1〜100質量部と、
    を、含有し、
    前記(B)のスチレン系エラストマーが、分散平均粒径10μm以下で分散しているポリオキシメチレン樹脂組成物。
  2. 前記(A)成分は、メルトフローレイト(ASTM−D1238−57Tの条件で測定)が、1.0〜80g/10分である、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
  3. 前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される数平均分子量10000〜50000
    0のポリオキシメチレンブロック共重合体を含む、請求項1に記載のポリオキシメチレン
    樹脂組成物。
    H−R3−O−(CR1 2k−R4−(CR1 2k−O−R3−H ・・・(1)
    (一般式(1)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は未置換のアルキル基
    、及び置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる化学種を示し、互いに同一で
    あっても異なっていてもよく、
    kは、それぞれ独立して2〜6の整数を示す。
    3は、下記一般式(2a)で表されるオキシメチレン単位と下記一般式(2b)で表
    されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、前記オキシメチレン単位と前
    記オキシ炭化水素単位とは互いにランダムに存在し、前記オキシメチレン単位と前記オキ
    シ炭化水素単位との総量100モル%に対して、前記オキシメチレン単位の含有量は95
    〜99.9モル%、前記オキシ炭化水素単位の含有量が0.1〜5モル%であり、2つの
    3の平均の数平均分子量は5000〜250000である。
    下記一般式(2b)中、R2は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は未置換のアル
    キル基、及び置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる化学種を示し、互いに
    同一であっても異なっていてもよく、jは2〜6の整数を示す。
    4は、下記一般式(3a)で表されるエチレン単位と下記一般式(3b)で表される
    n−ブチレン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン
    単位とは互いにランダム又はブロックに存在し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単
    位との総量100モル%に対して、前記エチレン単位の含有量は2〜98モル%、前記n
    −ブチレン単位の含有量は2〜98モル%である。また、R4は、数平均分子量が500〜10000であり、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい
    。)
    −(CH2O)− ・・・(2a)
    −((CR2 2j−O)− ・・・(2b)
    −(CH2CH2)− ・・・(3a)
    −(CH2CH2CH2CH2)− ・・・(3b)
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて成形された成形体。
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