JP5568806B2 - 糖尿病または糖尿病合併症予防剤 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤に関する。より詳細には、甘藷茎葉に由来する成分を含む、糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤に関する。
先進国においては、生活水準が向上し、食生活が豊かになるに伴って、生活習慣病の発症率が増加し、大きな問題となっている。生活習慣病の1つである糖尿病においては、糖尿病患者とその予備軍との合計は日本で1400万人に達するといわれ、特に40歳以降になると糖尿病を発症する確率が高くなる。
このような糖尿病は、インスリンの分泌能が低下することによって起こるI型糖尿病と、インスリンに対する感受性が低下し、血中の糖を細胞内に取り込む能力が低下するII型糖尿病とに大別される。特に現代人は、日常生活において運動不足の傾向にあり、運動によってエネルギーを十分に消費することができないため肥満になりやすく、そのためII型糖尿病となる可能性が高くなっている。
糖尿病は、その進行により、腎障害、神経障害、網膜障害などの合併症を併発し得る。特に現代人は、上記のように肥満になりやすく、さらに運動不足に起因して血管が脆弱になりやすいため、重篤な糖尿病合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、動脈硬化など)を併発する可能性が高い。
このようなことから、糖尿病および糖尿病合併症を予防または治療することが重要である。一般的に、糖尿病患者に対しては、インスリンの投与が行われ、そして糖尿病合併症に対しては、アルドースレダクターゼ阻害剤を投与することにより、症状の軽減が図られている。
近年、人体に対する毒性や安全性を考慮して、天然の植物由来の物質を用いた糖尿病または糖尿病合併症予防剤が提案されている。例えば、ブドウ種子などに由来するプロアントシアニジンオリゴマーや、このプロアントシアニジンとトマトなどに由来するリコピンとを含む組成物が、糖尿病および糖尿病合併症の予防または治療効果を有することが知られている(特許文献1および2参照)。また、松樹皮抽出物と麦若葉またはケール由来の食物繊維とを含む食品は、血糖上昇抑制作用を有する(特許文献3参照)。これら以外にも、天然の植物由来の物質を用いた糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤が求められている。
特開2000−44472号公報 特開2004−35510号公報 特開2002−275076号公報
本発明の目的は、新規の糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤およびそれを含有する食品を提供することである。
本発明者らは、このような天然物由来の成分について鋭意検討したところ、甘藷茎葉中に含まれる成分が抗糖尿病または抗糖尿病合併症効果を有することを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は、キナ酸またはその誘導体1分子とカフェー酸またはその誘導体1〜3分子との結合体を含む、糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤を提供する。
好ましい実施態様では、上記結合体は、キナ酸またはその誘導体1分子とカフェー酸またはその誘導体2〜3分子との結合体である。
好ましい実施態様では、上記結合体を含有する甘藷茎葉またはその加工物を含む、糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤を提供する。
本発明はまた、上記のいずれかの糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤を含有する食品組成物を提供する。
本発明によれば、甘藷茎葉より見出されたキナ酸またはその誘導体1分子とカフェー酸またはその誘導体1〜3分子との結合体は、抗糖尿病または抗糖尿病合併症効果(血糖値上昇抑制効果、インスリン値改善効果、アルドースレダクターゼ阻害効果など)を有する。このような結合体を含有する植物体の加工物もその効果を有する。よって、甘藷茎葉中の成分ならびにこれを含有する甘藷茎葉加工物は、単なる栄養素としてだけでなく、機能性食品や医薬品、医薬部外品として利用するのに好適である。
(本発明の結合体)
本発明の糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤には、カフェー酸(3,4−ジヒドロキシケイ皮酸)またはその誘導体とキナ酸またはその誘導体との結合体(例えば、カフェオイルキナ酸)が含まれる。カフェー酸およびキナ酸は、それぞれ以下の式:
Figure 0005568806
および
Figure 0005568806
で表される化合物である。ここで、誘導体としては、フェルラ酸(カフェー酸の誘導体);カフェー酸またはキナ酸の配糖体、塩類、またはエステル結合体(ロズマリン酸等)などが挙げられる。
本発明において、上記結合体は、キナ酸またはその誘導体1分子に対して、カフェー酸またはその誘導体1〜3分子が結合している。好適には、キナ酸とカフェー酸とは、キナ酸の3、4、および5位の任意の水酸基とカフェー酸のカルボキシル基との脱水縮合により形成された、エステル結合によって結合している。
例えば、このキナ酸とカフェー酸との1分子同士の結合体は、以下の式:
Figure 0005568806
に示される、クロロゲン酸が挙げられる。
また、例えば、キナ酸1分子とカフェー酸2分子とが結合している結合体としては、以下の式で表される3,5−ジカフェオイルキナ酸:
Figure 0005568806
以下の式で表される4,5−ジカフェオイルキナ酸:
Figure 0005568806
以下の式で表される3,4−ジカフェオイルキナ酸:
Figure 0005568806
が挙げられる。
さらに、キナ酸1分子とカフェー酸3分子とが結合している結合体としては、以下の式で表される3,4,5−トリカフェオイルキナ酸:
Figure 0005568806
が挙げられる。
これらの結合体は、血糖値の上昇抑制や糖尿病合併症に有効なアルドースレダクターゼ阻害効果を有し、特にI型糖尿病およびII型糖尿病の何れに対しても、血糖値の上昇を抑制し、あるいは血糖値を低下させることができる。そのため、抗糖尿病または抗糖尿病合併症に有用である。結合しているカフェー酸またはその誘導体の数が多いほど、より強い抗糖尿病または抗糖尿病合併症効果(例えば、アルドースレダクターゼ阻害効果、血糖値上昇抑制効果、インスリン分泌促進効果など)が得られる傾向がある。したがって、2分子のカフェー酸部分を有する結合体(例えば、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸またはこれらの誘導体)および3分子のカフェー酸部分を有する結合体(例えば、3,4,5−トリカフェオイルキナ酸またはその誘導体)が好ましく、3分子のカフェー酸部分を有する結合体がより好ましい。2分子のカフェー酸部分を有する結合体の中では、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、またはこれらの誘導体が、高いアルドースレダクターゼ阻害活性を有する点から好ましい。
上記結合体は、ポリフェノールの一種であり、主に甘藷茎葉中に見い出され得る。甘藷は、一般にサツマイモと呼ばれる、ヒルガオ科に属する植物であり、例えば、ジョイホワイト、コガネセンガン、シロユタカ、サツマスターチ、アヤムラサキ、すいおうなどの品種が知られている。このような結合体は、甘藷茎葉だけでなくコーヒー豆などにも含まれている。このような結合体を含有する植物体としては、結合体の含有量が多く、そして生理活性の高い2〜3分子のカフェー酸部分を有する結合体が多い点で、甘藷茎葉が好ましい。
上記結合体は、このような結合体を含有している植物体またはその加工物から抽出するか、あるいは化学合成によって得ることができる。例えば、植物体からの抽出は、植物体にエタノールやメタノールなどの極性有機溶媒またはこれらと水との混合物を加え、好ましくは60℃程度の温度で攪拌することにより行われる。さらに、必要に応じて、合成吸着剤(ダイアイオンHP20、セファビースSP825、アンバーライトXAD2000、MCIgelCHP20P、クロマトレックスODSなど)やデキストラン樹脂(セファデックスLH−20など)などの、当業者が通常用いる天然のポリフェノールを分離する方法により精製することもできる。
また、本発明においては、結合体として、植物体(好ましくは甘藷茎葉)を加工したもの(甘藷茎葉加工物)を用いて、例えば、そのまま経口摂取しても、同様な効果を得ることができる。なお、本発明において「甘藷茎葉加工物」とは、甘藷茎葉を乾燥した乾燥粉末、甘藷茎葉より得られた搾汁およびこの乾燥粉末、またはこれらの抽出物をいう。
(甘藷茎葉)
本発明において、甘藷「茎葉」とは、甘藷の栽培時における地上部の茎および/または葉をいう。特に、地上から5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上に成長した茎葉が用いられ得る。さらに、緑色を保持している茎葉を用いることが好ましい。予め、茎部と葉部とに篩別してもよい。
収穫した茎葉は、収穫後、通常、付着した泥などを洗浄する。また、茎葉は、必要に応じて、適切な長さ(例えば、長径が10〜30cm程度)に裁断する。この甘藷茎葉は、上記のとおり極性有機溶媒や水との混合溶媒を用いる抽出に供して上記結合体を精製してもよく、あるいは、上記甘藷茎葉加工物に加工してもよい。
(甘藷茎葉の加工)
上記茎葉は、通常、まず、加熱処理を行う。加熱処理としては、ブランチング処理(湯通し)、乾熱処理、マイクロウェーブ処理、赤外線や遠赤外線処理、水蒸気処理などが挙げられる。これらの中でもブランチング処理、水蒸気処理が好ましい。
これらの加熱処理は、植物体の種類によって条件が大きく異なり、さらに風味や栄養素が損なわれたり、有用成分の生理活性が失活しやすいなどの問題が起こりやすい。本発明では、pH5.4以上、好ましくはpH5.6〜8.4未満、より好ましくは5.6〜8.0、最も好ましくは5.6〜7.6で加熱処理を行うことにより、上記結合体の含有量が高い甘藷茎葉加工物を得ることができる。ブランチング処理の場合は、上記のpHの熱水を用いて加熱処理すればよい。また、乾熱処理、マイクロウェーブ処理、赤外線または遠赤外線処理、あるいは水蒸気処理を行う場合は、予め上記の範囲のpHに調製した溶液を茎葉へ噴霧するなどの処理を行ってから、加熱処理をすればよい。風味を改善する観点から、0.01〜5.0質量%、好ましくは0.2〜3.0質量%の食塩を添加してもよい。食塩を添加することにより、さらに緑色が鮮やかで風味がよい甘藷茎葉加工物を得ることができる。
pHの調整は、当業者が通常用いる方法で行われ得る。例えば、塩基性に調整する場合は、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、重曹、炭酸カルシウム(卵殻カルシウム、ホタテ貝殻カルシウム、サンゴカルシウムなど)、これらの炭酸カルシウムを焼成して得られる酸化カルシウムなどを用い得る。また、所定のpHに調整した水溶液として、アルカリイオン水などを用いてもよい。酸性に調整する場合は、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸などの有機酸が用いられ得る。これらのpH調整剤の量は、用いるpH調整剤によって適宜調整される。
加熱温度については、80℃より高い温度、好ましくは90℃以上の温度で行う。また、加熱時間は、5分未満、好ましくは3分以下、最も好ましくは10秒〜3分である。
加熱処理後、甘藷茎葉の緑色および風味を維持する上で、直ちに冷却することが好ましい。冷却は、冷水中への浸漬、冷風による急冷など、当業者が通常用いる手段で行われる。冷却の温度が低いほど、甘藷茎葉の緑色が映えるようになり、見た目に美しい。例えば、冷水への浸漬処理は、30℃以下の水、好ましくは20℃以下の水を用いて行われる。冷却時間は、甘藷茎葉の処理量に応じた任意の時間であるが、甘藷茎葉自身が冷却温度と同等になるまで行うことが好ましい。
上記のようにして加熱処理された甘藷茎葉は、例えば、粉末状、ペースト状、液状などの種々の形態に処理され、食品原料として利用でき、食品組成物とすることができる。
上記ペーストは、フードプロセッサ、マスコロイダーなどの当業者が通常用いる破砕手段を行うことによって得られる。破砕を容易にする観点から、フードプロセッサなどで粗く破砕した後に、マスコロイダーを用いてさらに細かく破砕することが好ましい。
上記液状物は、例えば、上記加熱処理した甘藷茎葉を圧搾機などで搾汁するか、あるいは上記ペーストの固形分を濾過などの当業者が通常用いる分離手段によって除去することによって得られる。この液状物はそのまま飲料などとして利用され得る。液状物を食品原料とする場合、80℃〜130℃で加熱殺菌して用いることが好ましい。
上記粉末は、例えば、上記加熱処理した甘藷茎葉を乾燥し、粉砕することにより、あるいはそのペーストまたはその液状物を乾燥し、必要に応じて、さらに粉砕することによって、得られる。
粉末化する場合、乾燥手段は、上記加熱処理した甘藷茎葉を、熱風乾燥機、高圧蒸気乾燥機、電磁波乾燥機、凍結乾燥機などの当業者が通常用いる乾燥手段が用いられ得る。あるいは、直火式加熱機や回転式乾燥機などが用いられ得る。この中でも、製造上のコストや乾燥の効率の面から、熱風乾燥機、直火式加熱機、回転式乾燥機が最も好ましい。なお、乾燥温度は、風味が良く、色鮮やかな甘藷茎葉粉末が得られる点で、60℃〜150℃程度が好ましい。
例えば、回転式乾燥機を用いる場合は、上記加熱処理した甘藷茎葉を、フードプロセッサやマスコロイダーを用いて破砕し、ペースト状にしてから行う。この場合、後述の甘藷茎葉をペースト化する場合と同様に、フードプロセッサなどで破砕した後に、マスコロイダーなどを用いてさらに細かく破砕することが好ましい。100℃〜150℃、好ましくは110℃〜130℃の加熱温度で回転ドラムへ投入することにより、水分含有量が5質量%以下の甘藷茎葉粉末を得ることができる。加熱温度が高温であるため、同時に殺菌も行うことができる。なお、この場合の加熱時間は、甘藷茎葉が変色する恐れがあるため、30秒〜2分程度とすることが好ましい。
熱風乾燥機を用いる場合は、甘藷茎葉の水分含量が5質量%となるまで1段階で乾燥を行ってもよいが、2段階乾燥が好ましい。2段階乾燥は、水分含有量が25質量%以下となるまで60〜80℃の温度で一次乾燥した後、この一次乾燥した甘藷茎葉の水分含量が5質量%以下となるまで一次乾燥よりも高い温度で二次乾燥することが好ましい。乾燥温度が60℃未満では、乾燥速度が遅くなるため、好ましくない。乾燥温度が100℃を超える場合は焦げを生じることがあるため、温度を80℃前後に調整することにより上記結合体の含有量が多く色鮮やかな甘藷茎葉粉末を得ることができる。例えば、90℃で乾燥する場合は一次乾燥と二次乾燥との好ましい温度差は、約5〜15℃であり、約10℃であることがより好ましい。この2段階の乾燥工程を行うことにより、乾燥時間が短縮されると同時に、甘藷茎葉の緑色および風味が維持される。また、温度差を上記のように一定範囲に設定することにより、乾燥工程における甘藷茎葉の水分管理が容易になり、効率的に乾燥が行われる。
乾燥した甘藷茎葉は、さらに粉砕することで微粉末化し、甘藷茎葉微粉末とすることができる。甘藷茎葉は、茎部、葉部、葉柄部などの異なる大きさ、硬さなどの部分を含む。そのため、粉砕の効率を上げる観点から、粗粉砕工程を行った後に微粉砕工程を行うことが好ましい。
粗粉砕工程は、乾燥した甘藷茎葉をカッター、スライサー、ダイサーなどの当業者が通常用いる任意の機械または道具により、乾燥した甘藷茎葉をカットする工程である。カットされた甘藷茎葉の大きさは、長径が20mm以下であり、好ましくは0.1〜10mmである。なお、乾燥の前に予めペースト状に破砕されている場合は、この工程を省略することができる。
続いて、粗粉砕した甘藷茎葉を均一に加熱して殺菌を要する場合は、微粉砕工程の前に加熱処理が施される。この加熱処理を施すことにより、粗粉砕した甘藷茎葉加工物を均一に加熱することができ、甘藷茎葉の香味を良好にし、効率の良い殺菌を行うことができる。この加熱処理は、110℃以上で行い、高圧殺菌機、加熱殺菌機、加圧蒸気殺菌機などを用いることができる。例えば、加圧蒸気殺菌による加熱処理の場合、粗粉砕した甘藷茎葉は、例えば、0.5〜10kg/cmの加圧下、110〜200℃の飽和水蒸気により、2〜10秒間加熱処理される。必要に応じて、飽和蒸気による加熱時に含有した水分を、さらに乾燥させる。
微粉砕の工程では、90質量%が200メッシュ区分を通過するように、粗粉砕した甘藷茎葉を微粉砕する。微粉砕は、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの当業者が通常用いる任意の機械または道具を用いて行われる。微粉砕することにより食感がよくなる。特に、粗粉砕、加熱、および微粉砕の工程を順に行うことにより、さらに食感がよくなる。
甘藷茎葉の液状物から粉末を得る場合、液状物を、加熱乾燥機、減圧濃縮機、凍結乾燥機などを用いて乾燥させた後粉砕するか、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機を用いて直接粉末化してもよい。噴霧乾燥機を用いる場合は、回収率を上げるために、必要に応じて、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトースのような賦形剤を添加する。好適にはデキストリンが用いられる。液状物とデキストリンとの比は、より粉末化を容易にするため、質量比で1:10〜5:1が好ましい。
このような種々の加工によって得られた甘藷茎葉加工物から、さらに上記結合体を抽出してもよい。
(本発明の糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤、あるいは食品組成物)
本発明の糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤あるいは食品組成物に含まれる結合体は、上記のように、キナ酸またはその誘導体1分子に対して、カフェー酸またはその誘導体1〜3分子が結合している。本発明の予防または治療剤あるいは食品組成物に含有される上記結合体の量は、特に制限されないが、好ましくは0.000001質量%〜60質量%、より好ましくは0.00001質量%〜50質量%、さらに好ましくは0.0001質量%〜30質量%である。この結合体は、抗糖尿病または抗糖尿病合併症効果(例えば、アルドースレダクターゼ阻害効果、血糖値上昇抑制効果、インスリン分泌促進効果など)を示す。II型糖尿病に特有のインスリンの感受性が低下した状態においても、血糖値の上昇抑制効果または血糖値低下効果を発揮する。この結合体は、上記のように、甘藷茎葉などの植物体からの精製物、または化学合成物であり得る。このような結合体の摂取量は、特に制限されない。上記の生理作用を得る目的では、成人一日当たり、キナ酸に2分子のカフェー酸が結合しているジカフェオイルキナ酸を0.1mg〜4000mgまたはキナ酸に3分子のカフェー酸が結合しているトリカフェオイルキナ酸を0.001mg〜300mg、好ましくは0.01mg〜300mg摂取することが好ましい。結合体全量としては、0.2mg〜5000mg、好ましくは0.5mg〜3000mg、より好ましくは1mg〜5000mg、最も好ましくは2mg〜3000mgである。
あるいは、精製または合成された結合体の代わりに、この結合体を含んでいる甘藷茎葉加工物を用いてもよい。このような甘藷茎葉加工物としては、材料となる甘藷茎葉の種類、部位、収穫時期などによって異なるが、これらの結合体の総量、すなわちポリフェノール含有量として、少なくとも乾燥質量中に0.01質量%以上含有するものが好ましく用いられる。
特に、甘藷茎葉加工物の中でも、ペースト状物、または搾汁せずに乾燥して得た粉末状物は、食物繊維、栄養素などの甘藷茎葉由来の全ての成分を含むため、機能性食品として利用する場合に好ましい。このような機能性食品としては、例えば、粉末を水や湯などに懸濁させた食品、いわゆる青汁としての形態が挙げられる。この甘藷茎葉は、他の青汁に用いられる素材に比べ嗜好性にも優れている。甘薯茎葉加工物の摂取量は特に制限されないが、上記の生理作用を得る目的では、成人一日当たり好ましくは0.1g〜30g、より好ましくは0.1g〜10gである。
このような結合体または甘藷茎葉加工物は、そのまま飲食に供することができ、あるいは、必要に応じて、糖代謝促進作用を有する成分、糖吸収抑制作用を有する成分、脂質代謝亢進作用を有する成分、および脂質吸収抑制作用を有する成分の少なくとも1種、およびその他の成分と混合することにより、食品組成物または医薬組成物とすることができる。
上記糖代謝促進作用を有する成分、糖吸収抑制作用を有する成分、脂質代謝亢進作用を有する成分、または脂質吸収抑制作用を有する成分は、より効果的なII型糖尿病予防効果または治療効果を得る目的で含有される。
上記糖代謝促進作用を有する成分としては、例えば、チアミンおよびその誘導体、ピリドキシンおよびその誘導体、アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、バリン、セリン、プロリン、グリシン、アラニン、スレオニン等)、α−リポ酸およびその誘導体、クエン酸、リンゴ酸、モリブデン、リン、イオウ、クロム、カリウム、マンガン、カプサイシノイド、サポニンなどの成分や、レイシ、黒酢、大豆、菊芋、ビール酵母などが挙げられる。糖の代謝を促進し得る成分を混合することによって、体内での糖の蓄積を抑制し、糖尿病を予防し得る。
上記糖吸収抑制作用を有する成分としては、例えば、α―アミラーゼ阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤などの糖分解酵素の阻害作用を有する成分(糖質消化酵素阻害成分)および糖の吸収を直接的に阻害する効果を有する成分(糖吸収阻害成分)が挙げられる。
糖質消化酵素阻害成分の1つであるα―アミラーゼ阻害剤としては、例えば、小麦、ライ麦などに含有されるα−アミラーゼ阻害タンパク質;大麦、茶、グァバ、ビワなどに含有されるタンニンなどが挙げられる。
糖質消化酵素阻害成分の1つであるα−グルコシダーゼ阻害剤としては、例えば、1−デオキシノジリマイシンやサラシノール、1−デオキシノジリマイシン、およびこれらを含有すサラシア・レティキュラタおよび桑葉;ボタンピ;カシュウ;ゲットウ;アカメガシワ;ヒラミレモン;クダモノトケイソウ;ストレリチア;阿仙薬;サッサフラス;イエロードック;メドウスィート;ウンシュウミカン、ダイダイ、ハッサク、ナツミカン、イヨカン、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ユズ、ライムなどの柑橘類に含まれるジヒドロカルコン化合物またはフラバノン配糖体;ウラジロガシ;オオボウシバナ;芍薬;チョウジ;ラフマ;ケイヒ;ユーカリ;エゾイシゲ;カモミール;シソ;ノイチゴ;トウチ;クローブ;ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
上記α―アミラーゼ阻害剤およびα−グルコシダーゼ阻害剤以外の糖質消化酵素阻害成分としては、ポリフェノール(茶、グァバ、テンチャ、イチョウ葉、ブドウ種子、松樹皮抽出物などに含まれる)、あるいはマオウ、カリン、インゲン豆、ナンバンカラスウリ、カキ葉、プーアル茶の茶葉、オトギリソウ、リンゴ、タラ、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉などが挙げられる。
上記糖質消化酵素阻害成分は、必要に応じて、加工して用いてもよい。例えば、上記植物体の粉末や、上記植物体からの抽出物などが糖質消化酵素阻害成分として用いられる。
糖吸収阻害成分としては、サポニン(例えば、ギムネマ・シルベスタ、ギムネマ・イノドラム、およびタラまたはトンブリ由来のサポニン)、コンズリトールA(例えば、ギムネマ・シルベスタに含有される)、グルマリン(例えば、ギムネマ・シルベスタに含有される)、食物繊維(例えば、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、可溶性アルギン酸ナトリウム、イヌリンなどの水溶性食物繊維)が挙げられる。食物繊維は食餌をゲル化することで糖の腸管からの吸収を阻害すると考えられている。糖吸収阻害成分を混合することによって、食後の血糖値の上昇を抑えるとともに血中の糖のレベルを低下させることができる。
上記脂質代謝亢進作用を有する成分および脂質吸収抑制作用を有する成分は、特に糖の代謝を亢進する目的で含有される。
上記脂質代謝亢進作用を有する成分としては、例えば、リボフラビンおよびその誘導体、イソフラボン類、カテキン類、異性化リノール酸、カフェイン、カプサイシン、カルニチン、コエンザイムQ10、α−リノレン酸、大豆ペプチド、分岐アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)、アルギニン、フォスファチジルコリン、アリルスルフィド化合物、フォルスコリン、ベルゲニン、ケルセチン、アスチルビン、ヒドロキシクエン酸などが挙げられる。これらを多く含む植物抽出物、例えば、茶、コレウスフォコリ、アカショウマ、黄杞、大豆、唐辛子、ソバ、ニンニク、タマネギなどの抽出物を脂質代謝亢進作用を有する成分として用いることも可能である。
上記脂質吸収抑制作用を有する成分としては、例えば、キトサンおよびその誘導体、サイリウム、プロアントシアニジンなどの胆汁酸を排泄する作用を有する成分;葛花、ガロタンニン、ビワ葉等の乾燥粉末または抽出物などが挙げられる。これらを多く含む植物抽出物、例えば、プロアントシアニジンを多く含む松樹皮抽出物を脂質吸収抑制作用を有する成分として用いることも可能である。
本発明の組成物中に、糖代謝促進作用を有する成分、糖吸収抑制作用を有する成分、脂質代謝亢進作用を有する成分、および脂質吸収抑制作用を有する成分の少なくとも1種が含有される場合、その含有量は特に制限されない。好ましくは上記成分の合計量が組成物中に0.0001質量%〜95質量%、より好ましくは0.0001質量%〜70質量%となるように含有される。
本発明の組成物に含有され得るその他の成分としては、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などが挙げられる。食品添加物としては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、B、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、キチン・キトサン、レシチン、ポリフェノール(フラボノイドおよびその誘導体等)、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、キサンチン誘導体(カフェイン等)、脂肪酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ケタラン、これらの塩等)、アミノ糖(グルコサミン、アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、アセチルノイラミン酸、ヘキソサミン、それらの塩等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)、スフィンゴ脂質またはリン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、麦若葉末等のイネ科植物の緑葉、ケール等のアブラナ科植物の緑葉などが挙げられる。調味料としては、例えば、糖液、糖アルコール液などが甘味の調整などに用いられる。
本発明の組成物は、目的に応じて、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒、ティーバッグ、飴状の粘稠な液体、液体などの当業者が通常用いる種々の形態で利用される。これらは、形状または好みに応じて、そのまま食してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでもよく、成分を浸出させたものを摂取してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明がこの実施例に限定されないことはいうまでもない。
(原料の調製)
すいおうの種芋を植え込み、栽培して、地上から30cm程度に成長した茎葉を刈り取り、水で2回洗浄して、付着した土などを取り除き、30kgの甘藷茎葉を得た。
(実施例1:クロロゲン酸、ジカフェオイルキナ酸、およびトリカフェオイルキナ酸の調製)
上記甘藷茎葉を用いて、以下のようにして、クロロゲン酸、ジカフェオイルキナ酸およびトリカフェオイルキナ酸を分離した。まず甘藷茎葉3kgを凍結乾燥し、乾燥粉末150gを100%(v/v)メタノール2Lに懸濁し、25℃で一晩攪拌して抽出した後、上清を回収した。さらに、残渣へ再度2Lの100%(v/v)メタノールを加え、同様に抽出して上清を回収した。回収した上清を合わせて減圧濃縮乾固して、500mLの蒸留水に溶解した。この溶液に、さらに等容量のヘキサンを添加して攪拌した後、水層画分を回収した。得られた水層画分をMCI gelCHP20Pカラム(50×350mm:三菱化学株式会社製)へ吸着させ、20、40、60、80、および100%(v/v)メタノールの各1000mLを順にカラムへ通液し、カラムからの溶出液をそれぞれ回収した。このうち60%(v/v)メタノール水溶液で溶出した画分をクロマトレックスODSカラム(25×140mm:フジシリシア製)に吸着させ、水−メタノールの20%−70%のグラジエントによりカラムから吸着成分を溶出させた。得られた画分から、400mgのクロロゲン酸(ChA)、21mgの4,5−ジカフェオイルキナ酸(4,5−diCQA)、60mgの3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5−diCQA)、2mgの3,4−ジカェオイルキナ酸(3,4−diCQA)、および2mgの3,4,5−トリカフェオイルキナ酸(3,4,5−triCQA)を得た。なお、各成分の測定方法については、Md. Shahidul Islamらの方法(Journal of Agricultural and Food Chemistry、第50巻、第13号、3718頁〜3722頁)に従って行った。
(実施例2:甘藷茎葉微粉末の調製)
上記甘藷茎葉1kgをpH8.0に調整した熱水(97℃)に1分間浸漬し、ブランチング処理を行った。ブランチング処理後、直ちに20℃の水へ浸漬して冷却し、熱風乾燥を行い、ダイサーで長径が1mm程度になるように粉砕した。加圧蒸気殺菌機で殺菌後、ハンマーミルを用いて80gの微粉末を得た(甘藷茎葉微粉末1とする)。得られた微粉末について、フォーリンチオカルト法にてポリフェノール含有量を測定したところ、微粉末1g当たり10mgのポリフェノール(カテキン量に換算して1質量%)が含まれていることがわかった。なお、フォーリンチオカルト法によるポリフェノールの測定は、甘藷茎葉1gを20mLの80容量%エタノール水溶液に混合し、加熱還流して抽出した抽出液を用いて行った。
(実施例3:結合体のアルドースレダクターゼ阻害試験)
上記実施例1にて得られた各成分を30μMとなるように70%(v/v)エタノール水溶液に溶解し、この溶液から3倍希釈系列を調製し(10、3.3、1.1、0.37、0.12、0.04、および0.01μMの計7つ)、これらを検体として以下のようにして、アルドースレダクターゼ阻害効果を評価した。なお、比較のためにカフェー酸(CA)、キナ酸(QA)、およびクェルセチンについてもそれぞれ30〜0.01μMの希釈系列を調製し、検体とした。
まず、150μLの緩衝液(0.1Mリン酸、0.5M硫酸リチウム、および1.5mM NADPHを含有)に59μLの蒸留水を添加し、次いで各30μLの検体を添加した。さらに1μLの0.25ユニット/mLの酵素溶液(アルドースレダクターゼ:ヒト筋肉由来、和光純薬工業株式会社製)を添加して、混合した後に、37℃にて5分間静置した。次いで、60μLの基質溶液(0.1M DL−グリセロアルデヒド溶液)を添加して、37℃にて5分間インキュベートした。インキュベーション後、直ちに340nmの吸光度を測定した(実測値)。これと同時に、酵素を添加しないこと以外は全く同様の操作を行ったブランクの吸光度(実測値)も測定した。検体の吸光度からブランクの吸光度を差し引くことにより、検体の吸光度値を得た。また、陽性コントロールは、検体の代わりに検体の溶解液(すなわち、70%(v/v)エタノール水溶液)を添加したこと以外は全く同様に操作し、陽性コントロールの吸光度値を算出した。これらの吸光度値を用いて、陽性コントロールの吸光度値を100%としたときの各検体の吸光度値から、各成分の反応溶液中における酵素反応の50%阻害濃度(IC50)を算出した。結果を表1に示す。
なお、試験の対象として、既にアルドースレダクターゼ阻害効果を有することがわかっているクェルセチン(ナカライテスク株式会社製)の測定結果を併せて示す。
Figure 0005568806
表1から、上記実施例1で得た結合体は、カフェー酸やキナ酸と比較して、いずれも優れた阻害活性を示し、キナ酸と結合しているカフェー酸の分子数が多い結合体ほど、その活性が強いことがわかる。キナ酸1分子に対して3分子のカフェー酸が結合している3,4,5−triCQAが最も阻害活性が強く、次いでキナ酸1分子に対して2分子のカフェー酸が結合しているジカフェオイルキナ酸において強い活性を示した。また、クロロゲン酸(キナ酸1分子に対して1分子のカフェー酸が結合した結合体)は、クェルセチンと同等程度のアルドースレダクターゼ阻害活性を示した。このことより、上記の結合体は、アルドースレダクターゼ阻害剤として利用でき、したがって、糖尿病合併症の予防または治療剤として利用できることがわかった。
(実施例4:甘藷茎葉抽出物のアルドースレダクターゼ阻害試験)
上記甘藷茎葉を用いて、以下のようにして甘藷茎葉のアルドースレダクターゼ阻害効果について検討した。まず、甘藷茎葉100gを凍結乾燥し、乾燥粉末50mgを80%(v/v)エタノール5mLに懸濁して、100℃で5分間抽出した。次いで、その上清を回収して、減圧濃縮乾固し、精製水1mLを加えて溶解し、甘藷茎葉粗抽出液とした。また、アントシアニンを含有するアヤムラサキの塊根部より、甘藷茎葉粗抽出液と同様に抽出して得たアヤムラサキ粗抽出液も調製した。これらの抽出液を、実施例3と同様に希釈して検体を調製し、甘藷茎葉抽出物の50%阻害濃度(IC50)を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0005568806
表2から、甘藷茎葉は、各有効成分を精製しなくとも、その粗抽出液が、アルドースレダクターゼ阻害効果を有することが知られているアヤムラサキの塊根部の粗抽出液よりも、非常に優れた阻害効果を有することがわかった。
(実施例5:インスリン分泌促進作用の検討)
ラット膵β細胞を用いて、上記実施例1にて得られた各成分、CA、QA、およびインスリン分泌促進効果を有することが知られているフェルラ酸(和光純薬株式会社製)をそれぞれ検体として、これらのインスリン分泌促進作用について検証した。まず、ラット膵β細胞(RIN-5F:ATCCより分与)を、24穴プレートに1穴あたり2.0×10個/mLとなるように10%(v/v)非動化ウシ胎児血清を含有するRPM1640培地1mL中で培養した。培養後、1%(v/v)非動化ウシ胎児血清を含有するRPM1640培地1mLに交換した。この培地に、所定の濃度(甘藷茎葉粗抽出液の場合は甘藷茎葉乾燥粉末換算量)の各検体を含有する70%(v/v)エタノール水溶液の10μLを添加して培養した。培養開始から3時間後に培地を回収し、ラットインスリン測定キット(商品名:ラットインシュリンELISAキット、Mercodia社製)を用いて、各培養液中に含有されるインスリン濃度を測定した。結果を表3に示す。なお、表中のコントロールとは、標準培地のみで培養したときの培地中に含まれるインスリンの値を示す。
Figure 0005568806
表3から、甘藷茎葉から得られた結合体は、カフェー酸やキナ酸よりもいずれも優れたインスリン分泌促進作用を有することがわかった。特にこの効果は、キナ酸に3分子のカフェー酸が結合している3,4,5−triCQAが最も阻害活性が強く、次いでキナ酸に2分子のカフェー酸が結合しているジカフェオイルキナ酸において強い効果を示した。このことから、上記結合体ならびに甘藷茎葉は、抗糖尿病効果、特にI型糖尿病に対して優れた予防ならびに治療効果が期待できる。
(実施例6:抗糖尿病効果1(血糖値上昇抑制効果))
6週齢の雄性のSDラット(九動株式会社)25匹を標準飼料(MF、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。馴化後、ストレプトゾトシンを30mg/kg体重となるように尾静脈から投与し、4日後に眼窩静脈より血液を採取し、この血液中の血糖値が200mg/dL以上となった20匹を選定し、試験用ラット(I型糖尿病モデル)とした。さらにこの20匹のラットを血糖値の平均値が同等(431〜433mg/dL)になるように4群に分けた。このうちの3群を試験群とし、これらのラット群に以下の試験液を1日1回の割合で強制経口投与した。残りの1群のラットには、0.5%Tween生理食塩水を強制経口投与した(対照群)。なお、試験中は、標準飼料を自由摂食とし、水についても自由飲水とした。
ラット群1には、実施例2で得られた甘藷茎葉微粉末1が溶解された0.5%Tween生理食塩水(試験液1)を、該微粉末が100mg/kg体重となるように投与した(試験群1)。
ラット群2には、実施例2で得られた甘藷茎葉微粉末1が溶解された0.5%Tween生理食塩水(試験液2)を、該微粉末が1000mg/kg体重となるように投与した(試験群2)。
ラット群3には、グァバ葉抽出物(商品名:グァバフェノン、備前化成社製)が溶解された0.5%Tween生理食塩水(試験液3)を、該抽出物が1000mg/kg体重となるように投与した(試験群3)。
上記強制経口投与を18日間行い、投与開始後7日目に眼窩静脈より血液を採取し、血液中の血糖値(mg/dL)を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005568806
表4の結果から、本発明の甘藷茎葉微粉末は、既に血糖値の上昇を抑制することが明らかとなっているグァバ葉抽出物よりも優れた血糖値上昇抑制効果、すなわち抗糖尿病効果を有することが分かる。なお、7日後における各群のデータについて、二元配置法(繰返しあり)による分散分析を行ったところ、試験群1(甘藷茎葉微粉末100mg/kg体重投与)、試験群2(甘藷茎葉微粉末1000mg/kg体重投与)、試験群3(グァバ葉抽出物1000mg/kg体重投与)、および対照群(非投与)の血糖値間に、有意水準5%で有意差が認められた。さらに、Turkey-Kramer法による多重比較を行なったところ、ラット群2(甘藷茎葉微粉末1000mg/kg体重投与)と対照群との血糖値の間に、有意水準1%で有意差が認められた。
(実施例7:抗糖尿病効果2(インスリン分泌促進効果))
6週齢の雄性のSDラット(日本チャールス・リバー株式会社)20匹を標準飼料(MF、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。馴化後、ストレプトゾトシンを35mg/kg体重となるように尾静脈から投与し、4日後に尾静脈より採血し、摂食時における血糖値を測定し、血糖値が200mg/dL以上となった10匹を選定し、試験用ラット(I型糖尿病モデル)とした。さらにこの10匹を血糖値の平均値が同等になるように2群に分けた。このうち1群を試験群とし、実施例2で得られた甘藷茎葉微粉末1を3質量%となるように標準飼料に混合した試験飼料を自由摂取させた。また、残りの1群は対照群とし、試験飼料の代わりに標準飼料を与えた。試験飼料摂取開始から21日目に採血し、血液中のインスリン濃度を実施例5と同様にして測定した。結果を表5に示す。
Figure 0005568806
表5の結果から、甘藷茎葉微粉末1を摂取した試験群は、血中のインスリン値が上昇しており、試験群は対照群に対して有意水準5%で有意差が認められ、甘藷茎葉加工物の経口投与によって、インスリン分泌促進効果が得られることが分かった。
(実施例8:抗糖尿病効果3(インスリンの感受性に対する効果))
実施例6の試験群2(甘藷茎葉微粉末1000mg/kg体重投与)、試験群3(グァバ葉抽出物1000mg/kg体重投与)、および対照群(非投与)と同様に、強制経口投与を16日間行った3群のラットについて、16日目の強制投与の後から16時間の絶食を行い、絶食後にラットの腹腔にインスリンを0.5ユニット/kg体重となるように投与し、投与前、投与30分後、および投与60分後に眼窩静脈より血液を採取し、血糖値を測定し、平均値を求めた。結果を表6に示す。
Figure 0005568806
表6の結果から、本発明の試験群2(甘藷茎葉微粉末1000mg/kg体重投与)は、インスリン投与後に血糖値の低下が認められることから、インスリンの感受性が高められていることが分かる。この作用は、インスリンの感受性が低下するII型糖尿病においても抗糖尿病効果が得られることが期待できる結果であった。
(実施例9:抗糖尿病効果4(耐糖能試験))
実施例6の試験群2(甘藷茎葉微粉末1000mg/kg体重投与)、試験群3(グァバ葉抽出物1000mg/kg体重投与)、および対照群(非投与)と同様に、強制経口投与を18日間行った3群のラットについて、18日目の強制投与の後から16時間の絶食を行い、絶食後にショ糖を1.5g/kg体重となるように強制経口投与した。そして、投与前、投与60分後、および投与120分後に眼窩眼窩静脈より血液を採取し、血糖値を測定した。測定して得られた値から、投与前の血糖値を100%としたときの各時間の変化率(%)を求め、平均値を算出した。結果を表7に示す。
Figure 0005568806
表7の結果から、本発明の試験群2(甘藷茎葉微粉末1000mg/kg体重投与)は、試験群3(グァバ葉抽出物1000mg/kg体重投与)と同様に糖負荷による血糖値の上昇を抑制し得ることが分かる。一方、試験群2(甘藷茎葉微粉末1000mg/kg体重投与)の投与120分後の血糖値は、減少したのに対して、試験群3(グァバ葉抽出物1000mg/kg体重投与)では、血糖値の減少が見られなかった。このことから、甘藷茎葉微粉末は、単に血糖値の上昇を抑制するだけではなく、耐糖能の低下を改善するため、糖尿病の症状自体を改善することができる。
(実施例10:甘藷茎葉微粉末の調製およびII型糖尿病予防および治療効果(血糖値上昇抑制効果または血糖値低下効果)))
(1)甘藷茎葉微粉末の調製
すいおうの種芋を植え込み、栽培して、地上から30cm程度に成長した茎葉を刈り取り、水で2回洗浄して、付着した土などを取り除き、30kgの甘藷茎葉を得た。この甘藷茎葉1kgをpH8.0に調整した熱水(97℃)に1分間浸漬し、ブランチング処理を行った。ブランチング処理後、直ちに20℃の水へ浸漬して冷却し、熱風乾燥を行い、ダイサーで長径が1mm程度になるように粉砕した。加圧蒸気殺菌機で殺菌後、ハンマーミルを用いて80gの微粉末を得た(甘藷茎葉微粉末2とする)。得られた甘藷茎葉1gを20mLの99.5容量%エタノール水溶液に混合し、加熱還流して抽出した抽出液を用いるフォーリンチオカルト法にてポリフェノール含有量を測定したところ、1gの微粉末あたり1mgのポリフェノール(カテキン量に換算して0.1質量%)が含まれていることがわかった。なお、同じ甘藷茎葉微粉末を、99.5容量%エタノール水溶液の代わりに80容量%エタノール水溶液を用い、フォーリンチオカルト法にてポリフェノール含有量を測定したところ、1gあたり、9.5mgのポリフェノール(カテキン量に換算して0.95質量%)が含まれていることがわかり、実施例1と同等の甘藷茎葉微粉末であることが解った。
(2)II型糖尿病予防および治療効果
上記の甘藷茎葉微粉末2を用いて、以下のようにしてII型糖尿病予防および治療効果を評価した。まず、5週齢の雄性のII型糖尿病モデルマウス(KK−Ayマウス)(日本チャールズリバー社)28匹を標準飼料(MF、オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。馴化後、眼底より採血を行い、血糖値を測定し(グルテストセンサー、三和科学社製)、血糖値の平均値が均一になるように(257〜258mg/dL)4群に分けた。このうちの3群を試験群とし、以下の試験飼料を自由摂取させた。残りの1群のラットには、標準飼料を摂取させた(対照群)。なお、試験中、水については自由飲水とした。
ラット群1には、上記甘藷茎葉微粉末2の含有量が0.1質量%となるように標準飼料に混合した試験飼料を摂取させた(試験群4)。
ラット群2には、上記甘藷茎葉微粉末2の含有量が1.0質量%となるように標準飼料に混合した試験飼料を摂取させた(試験群5)。
ラット群3には、グァバ葉抽出物(商品名:グァバフェノン2、備前化成株式会社製)の含有量が1.0質量%となるように標準飼料に混合した試験飼料を摂取させた(試験群6)。
上記自由摂取開始後28日目に眼窩静脈より採血し、血糖値(mg/dL)を測定した。測定後、全ての群を標準飼料に切り替え、1週間摂取させた後に、再度血糖値を測定した。得られた血糖値について、一元配置分散分析を行い、さらにTurkey-Kramer法により検定を行った。結果を表8に示す。
Figure 0005568806
表8の結果から、甘藷茎葉微粉末2を含有する飼料を摂取した群(試験群4および5)は、甘藷茎葉微粉末を含有しない飼料を摂取した群(対照群)に比べて、インスリンの感受性が低下した状態において、有意に血糖値の上昇が抑制される、あるいは血糖値が低下することが分かる。これらの効果は、既に血糖値の上昇を抑制することが明らかとなっているグァバ葉抽出物を摂取した群(試験群6)に比べても優れていた。また、試験飼料摂取後に標準飼料に1週間切り替えた後でも、試験群4および5は、対照群に比べて、血糖値が有意に低いことから、II型糖尿病の予防効果または治療効果が得られることが分かる。特に、甘藷茎微粉末を0.1質量%含有する飼料を摂取した試験群4は、グァバ葉抽出物を1.0質量%含有する飼料を摂取した試験群6に比べて優れた効果を有していた。このことは、甘藷茎微粉末(本発明の結合体)が、少量で優れた効果を発揮し(グァバ葉抽出物の約10分の1量)、II型糖尿病の予防または治療に有用であることを示す。
(実施例11:ヒトにおける血糖値上昇抑制効果の評価)
上記実施例2にて得られた甘藷茎葉微粉末1を用いて、ヒトにおける血糖値上昇抑制効果について検討した。まず、朝食を抜いた被験者2名(健常人)において空腹時の血糖値を測定した。次いで、25質量%ブドウ糖溶液(標準液とする)を200mL摂取させ、摂取後30分の血糖値を測定した。そして、得られた値から、以下の式により、血糖値上昇率を算出した:
血糖値上昇率(%)=((糖摂取時血糖値/空腹時血糖値)−1)×100
次いで、翌日、200mLの25質量%ブドウ糖溶液の代わりに、10gの甘藷茎葉微粉末を含む200mLの25質量%ブドウ糖溶液(試験液とする)を摂取させたこと以外は、前日と同様にして測定し、血糖値上昇率を算出した。結果を表9に示す。
Figure 0005568806
表9の結果から、甘藷茎葉加工物は、ヒトにおいても食物摂取時における血糖値上昇を抑制できることがわかった。すなわち、糖尿病予防効果を有することがわかる。
(実施例12:甘藷茎葉加工物の嗜好性の検証)
上記実施例2にて得られた甘藷茎葉微粉末1、青汁の原料に用いられるケール加工粉末(株式会社東洋新薬)、および桑葉加工粉末(こだま食品株式会社)を、それぞれ3gを水100mLに溶解し、飲料(青汁)を調製した。この飲料を10名のパネラーに内容物を開示せずにランダムに試飲させて、下記評価項目にて評価させた。結果を表10に示す。
(苦味および生臭さ)
感じられない : 2点
やや感じられる : 1点
感じられる : 0点
やや強く感じられる : −1点
強く感じられる : −2点
(嗜好性)
好ましい : 2点
どちらかといえば好ましい : 1点
どちらともいえない : 0点
どちらかといえば好ましくない : −1点
好ましくない : −2点
Figure 0005568806
表10の結果から、甘藷茎葉加工物は、苦味および生臭さがほとんど感じられず、優れた嗜好性を有することがわかった。すなわち、甘藷加工物を含む食品は、機能性に優れるだけでなく嗜好性にも優れ、青汁として利用することが好適であることがわかる。
甘藷茎葉より見出されたキナ酸またはその誘導体1分子とカフェー酸またはその誘導体1〜3分子との結合体は、抗糖尿病または抗糖尿病合併症効果(血糖値上昇抑制効果、インスリン値改善効果、アルドースレダクターゼ阻害効果など)を有し、これを含有する植物体の加工物もその効果を有する。したがって、甘藷茎葉中の成分ならびにこれを含有する甘藷茎葉加工物は、単なる栄養素としてだけでなく、I型糖尿病またはII型糖尿病、あるいはこれらの糖尿病に起因する糖尿病合併症の予防または治療剤として、機能性食品や医薬品、医薬部外品として利用するのに好適である。

Claims (1)

  1. キナ酸またはその塩類1分子とカフェー酸もしくはフェルラ酸、またはそれらの塩類3分子との結合体を含む、糖尿病または糖尿病合併症の予防または治療剤。
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