JP5577672B2 - 水素吸蔵合金電極およびそれを用いたニッケル水素電池 - Google Patents

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Description

本発明は、水素吸蔵合金電極および該水素吸蔵合金を含有する負極を備えたニッケル水素蓄電池に関する。
ニッケル水素蓄電池は、高エネルギー密度を有することから、デジタルカメラ、ノート型パソコン等の小型電子機器類の電源として、また、作動電圧がアルカリマンガン電池等の一次電池と同等で互換性があることから、該一次電池の代替として、広く利用されており、その需要は飛躍的に拡大している。
この種のニッケル水素蓄電池は、通常、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含んでなるニッケル電極、水素吸蔵合金を主材料とする負極、セパレータ、及びアルカリ電解液を備えて構成されている。これらの電池構成材料のうち、特に、負極の主材料となる水素吸蔵合金は、放電容量やエネルギー密度といったニッケル水素蓄電池の性能に大きな影響を及ぼすものであり、該水素吸蔵合金としては、従来、種々のものが検討されている。
近年、AB5系希土類−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の放電容量を上回る放電容量を示し、しかも充放電の繰り返しに伴う電池容量の低下を抑制し得る(サイクル特性に優れる)合金として、希土類元素、Mg、およびNiを含んでいる希土類−Mg−Ni系の水素吸蔵合金が注目されており、例えば、LaCaMgNi合金を用いた電極が開示されている(特許文献1)。
また、GdCo型結晶構造からなる相を含む水素吸蔵合金において、イットリウムを2 原子%以上10原子%以下の範囲で配合することにより、水素吸蔵合金のアルカリに対する耐腐食性が高まり、サイクル寿命特性が向上することが開示されている(特許文献2)。このようなサイクル特性向上が起こる機構は、おそらくLa、Ce、Pr、Ndなどに比べて原子半径の小さいY(イットリウム)が希土類サイトを置換することにより、歪みが取り除かれ、構造が安定化するためと考えられる。
特開平11−217643号公報 特再2007−23901号公報
斯かる希土類−Mg−Ni系の水素吸蔵合金においては、その水素吸蔵合金を含む負極を備えたニッケル水素蓄電池の高い放電容量を維持しながらサイクル特性を上げるべく、水素吸蔵合金にさらに加える金属の種類や量を調整することがおこなわれている。しかしながら、斯かる希土類−Mg−Ni系の水素吸蔵合金は、未だサイクル特性を必ずしも満足させるものではない。
そこで、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性を優れたものとし得る水素吸蔵合金が要望されている。
本発明は、上記の問題点、要望点等に鑑み、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性を優れたものとし得る水素吸蔵合金を提供することを課題とする。また、該水素貯蔵合金を含む負極を備えサイクル特性に優れたニッケル水素蓄電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明に係る水素吸蔵合金は、組成が一般式:M1tYuCavMgwNixM2y(但し3.20≦(x + y)/(t + u + v + w)≦3.75、3.4≦w≦4.7、0.6≦u≦5.0、1.1≦v≦6.6、0≦y≦0.7、t + u + v + w + x + y = 100 で表され、M1はYを除く希土類元素、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfからなる群から選択される1種または2種以上の元素、M2はCo、Mn、Al、Cu、Fe、CrおよびZnからなる群から選択される1種または2種以上の元素)で表されることを特徴とする。
本発明に係る水素吸蔵合金は、Yを除く希土類元素の割合が11.1原子%以上15.1原子%以下であることが好ましい。斯かる構成により、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性をより優れたものにし得るという利点がある。
本発明に係る水素吸蔵合金は、V, Nb, Ta, Ti, ZrおよびHfからなる群から選択される1種または2種以上の元素の割合が0原子%以上0.7原子%以下であり、Niの割合が76.5原子%以上78.7原子%以下であることが好ましい。斯かる構成により、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性をより優れたものにし得るという利点がある。
本発明に係る水素吸蔵合金は、前記希土類元素がLa, Pr, Nd, Smから選択される1種又は2種以上の元素であることが好ましい。斯かる構成により、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性をより優れたものにし得るという利点がある。
また、本発明に係るニッケル水素蓄電池は、前記水素吸蔵合金を含む負極を備えたことを特徴とする。
なお、本明細書において、原子%とは、存在する原子の全数に対する特定の原子の数の百分率をいう。従って、例えばニッケルを1原子%含む合金は、合金の原子100個のうちニッケル原子を1個含むような比率を有するものを意味するものである。
本発明に係る水素吸蔵合金は、ニッケル水素蓄電池の負極に含有され得るものであって、ニッケル水素蓄電池の放電特性とサイクル特性を優れたものにし得るという効果を奏する。
水素吸蔵合金の各Ca含有比率におけるYの含有比率とニッケル水素蓄電池のサイクル特性との関係を表す図。
以下、本発明に係る水素吸蔵合金の一実施形態について説明する。
本実施形態の水素吸蔵合金は、組成が一般式:M1tYuCavMgwM2x(但し, 0.6≦u≦5.0, 1.1≦v≦6.6, 3.4≦w≦4.7, t + u + v + w + x = 100, 3.20≦x/(t + u + v + w ) ≦3.75 で表され、M1はYを除く希土類元素, V, Nb, Ta, Ti, ZrおよびHfからなる群から選択される1種または2種以上の元素、M2はNi, Co, Mn, Al, Cu, Fe, CrおよびZnからなる群から選択される1種または2種以上の元素) で表されるものである。
水素吸蔵合金を実用化するに際しては、既存の化学組成をベースにして様々な元素を少量添加する程度の設計変更がよくおこなわれる。そのため、本発明に係る水素吸蔵合金においてもそのような設計変更が行われることが想定され、その結果として、本願発明における一般式では規定されていない元素を含む化学組成のものが実施される場合が有り得る。そのような場合の化学組成は、規定外の元素を含む点で本願発明の一般式に厳密には当てはまらないのであるが、本発明の作用メカニズムが発揮されている場合には実質的には本発明の実施形態に含まれるといえる。したがって、本願において「一般式で表される」の意味はつぎのように解釈されるものとする。つまり、本願発明の一般式で規定されていない元素を含む場合においては、前記規定されていない元素を含んでも本発明の目的を達することができるときには、その化学組成は本願発明の一般式で表されるものと解釈する。
即ち、本実施形態の水素吸蔵合金においては、全体に対するYの割合が0.6原子%以上5.0原子%以下であり、全体に対するCaの割合が1.1原子%以上6.6原子%以下であり、全体に対するMgの割合が3.4原子%以上4.7原子%以下であり、B/A比が3.20以上3.75以下である。このため、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池の放電特性とサイクル特性が優れたものとなり得る。
なお、B/A比におけるAは、La、Y、Sm、Pr、Ndといった希土類元素と、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、及びCaからなる群より選択される元素を表しすものである。また、B/A比におけるBは、Ni、Co、Mn、Al、Cu、Fe、Cr及びZnからなる群より選択される元素を表すものである。
詳しくは、前記水素吸蔵合金においては、全体に対してCaの割合が1.1原子%以上6.6原子%以下であることにより、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものとなり得る。これは、Caには格子体積を調整する働きがあることによるものと推定される。この格子体積を調整する働きはCaがAユニットのLaサイトに入ることによって生じる可能性がある。格子体積を調整する働きが作用すれば、水素の吸蔵放出を妨げる合金中の歪みが抑制され、多くの水素を安定に吸蔵することできる。
前記水素吸蔵合金は、全体に対してCaの割合が1.7原子%以上4.4原子%以下であることが好ましい。全体に対してCaの割合が1.7原子%以上4.4原子%以下であることにより、電池のサイクル寿命性能が顕著に向上するという利点がある。
さらに全体に対してCaの割合が1.7原子%以上3.4原子%以下であることがより好ましい。全体に対してCaの割合が1.7原子%以上3.4原子%以下であることにより、電池のサイクル寿命性能が格別顕著に向上するという利点がある。
また、前記水素吸蔵合金においては、全体に対してYの割合が0.6原子%以上5.0原子%以下で、かつ、Caの割合が1.1原子%以上6.6原子%以下であることにより、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル特性が顕著に優れた効果が認められる。この効果は、Ce2Ni7相またはGd2Co7相が安定化することによって、結晶構造が膨張収縮しても微粉化されにくくなったことに起因すると考えられる。Ce2Ni7相またはGd2Co7相が安定化する機構は、Yが、ABユニットと比べて優先的にAユニットに置換されることに関連があると想定される。もともとABユニットとAユニットのc軸長/a軸長の比は異なり、Aユニットの方が大きいとされている。Yの置換量が大きくなると、YがABユニットへ優先的に選択置換することにより、Aユニットのc軸長/a軸長の比は小さくなる。その結果、ABユニットとAユニットのc軸長/a軸長の比の差は縮まるので、合金のひずみが減少するとともに、水素が合金内に均一に吸蔵されて、水素吸蔵時のひずみも抑制され、合金の耐久性が向上することが予想される。
前記水素吸蔵合金は、全体に対してYの割合が1.2原子%以上4.7原子%以下であることが好ましい。全体に対してYの割合が1.2原子%以上4.7原子%以下であることにより、電池のサイクル寿命性能が顕著に向上するという利点がある。
さらに全体に対してYの割合が1.6原子%以上3.5原子%以下であることがより好ましい。全体に対してYの割合が1.6原子%以上3.5原子%以下であることにより、電池のサイクル寿命性能が格別顕著に向上するという利点がある。
なお、水素吸蔵合金において形成される結晶相の構造と膨張収縮による合金の微粉化との関係については、後述する。
また、前記水素吸蔵合金においては、全体に対してMgの割合が3.4原子%以上4.7原子%以下であることにより、水素吸蔵合金が耐久性を維持し、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものになり得る。
また、前記水素吸蔵合金においては、B/A比が3.20以上3.75以下であることにより、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものになり得る。これはCe2Ni7相またはGd2Co7相の割合が高まり、結晶相の構造が水素吸蔵放出に伴う膨張収縮によっても微粉化されにくいことに起因するものと考えられる。
前記水素吸蔵合金は、B/A比が3.30以上3.70以下であることが好ましい。B/A比が3.30以上3.70以下であることにより、電池のサイクル寿命性能が顕著に向上するという利点がある。
前記水素吸蔵合金においては、上述したように、一般式M1tYuCavMgwM2xで表される化学組成において、元素添加の割合における条件を同時に満たすことにより、微粉化が抑制され、ニッケル水素蓄電池においてサイクル特性に優れたものとなり得る。
ここで、前記水素吸蔵合金において形成される結晶相の構造と膨張収縮による微粉化と
の関係について以下に説明する。
前記水素吸蔵合金は、互いに異なる結晶構造を有する2以上の結晶相を備えた希土類―Mg−Ni系の水素吸蔵合金であり、好ましくは、これら2以上の結晶相が、該結晶構造のc軸方向に積層されてなる希土類−Mg−Ni系の水素吸蔵合金である。
前記結晶相としては、菱面体晶La5MgNi24型結晶構造からなる結晶相(以下、単にLa5MgNi24相ともいう)、六方晶Pr5Co19型結晶構造からなる結晶相(以下、単にPr5Co19相ともいう)、菱面体晶Ce5Co19型結晶構造からなる結晶相(以下、単にCe5Co19相ともいう)、六方晶Ce2Ni7型の結晶構造からなる結晶相(以下、単にCe2Ni7相ともいう)、菱面体晶Gd2Co7型の結晶構造からなる結晶相(以下、単にGd2Co7相ともいう)、六方晶CaCu5型結晶構造からなる結晶相(以下、単にCaCu5相ともいう)、立方晶AuBe5型結晶構造からなる結晶相(以下、単にAuBe5相ともいう)菱面体晶PuNi3型結晶構造からなる結晶相(以下、単にPuNi3相ともいう)などを挙げることができる。
なかでも、Ce2Ni7相又はGdCo相が主相である水素吸蔵合金が好適である。これらの結晶相を有する水素吸蔵合金は、水素の吸蔵放出を繰り返した際の劣化(微粉化)が起こりにくいという優れた特性を有する。これは各結晶相間の膨張収縮率の差が小さいために歪みが生じ難いことに起因すると考えられる。
なお、Ce2Ni7型の結晶構造又はGd2Co7型の結晶構造とは、A24ユニット間にAB5ユニットが2ユニット分挿入された結晶構造である。
また、A24ユニットとは、六方晶MgZn2型結晶構造(C14構造)又は六方晶M
gCu2型結晶構造(C15構造)を持つ構造ユニットであり、AB5ユニットとは、六方
晶CaCu5型結晶構造を持つ構造ユニットである。
前記結晶相が積層されたものである場合、各結晶相の積層順については特に限定されず、特定の結晶相の組み合わせが繰返し周期性をもって積層されたようなものであってもよく、各結晶相が無秩序に周期性なく積層されたものであってもよい。
前記結晶相は、例えば、粉砕した合金粉末についてX線回折測定を行い、得られたX線回折パターンをリートベルト法により解析することによって結晶構造を特定することができる。
前記結晶相の積層構造については、例えば、TEMによって合金の格子像を観察することにより、互いに異なる結晶構造を有する2以上の結晶相が、該結晶構造のc軸方向に積層されていることを確認することができる。
前記水素吸蔵合金が、互いに異なる結晶構造を有する2以上の結晶相を該結晶構造のc軸方向に積層したものである場合、充電によって水素を吸蔵した際の結晶相の歪みが、隣接する他の結晶相によって緩和されることとなる。従って、該水素吸蔵合金を含んでなる負極は、充放電によって水素の吸蔵及び放出を繰り返しても合金の微粉化が生じにくく、劣化が抑制され、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものになり得るという利点がある。
また、該水素吸蔵合金は比較的高容量を持つ希土類−Mg−Ni系の水素吸蔵合金であることから、比較的少ない使用量で電池における所望の容量を達成し得る。そして、その使用量が少なくなった分だけ、限られた電池スペースにおける正極活物質の使用量を増加できることから、ニッケル水素蓄電池の放電容量を比較的大きくできるという作用も有する。
前記水素吸蔵合金の組成は、一般式M1tYuCavMgwM2xで表される化学組成において、特に限定されるものではないが、Yを除く希土類元素の割合が11.1原子%以上15.1原子%以下であり、Co, Mn, Al, Cu, Fe, CrおよびZnからなる群から選択される1種または2種以上の元素の割合が0原子%以上0.7原子%以下であることを満たすことが好ましい。
斯かる構成により、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性をより優れたものにできるという利点がある。
詳しくは、特に限定されるものではないが、前記水素吸蔵合金において、全体に対してYを除く希土類元素から選択される1種または2種以上の元素の割合が11.1原子%以上15.1原子%以下であることが好ましい。斯かる構成により、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものとなり得る。これはアルカリに対する耐食性が向上し、構造が安定化することに起因すると考えられる。
また詳しくは、特に限定されるものではないが、前記水素吸蔵合金において、全体に対してCo, Mn, Al, Cu, Fe, CrおよびZnからなる群から選択される1種または2種以上の元素の割合が0原子%以上0.7原子%以下であることが好ましい。斯かる構成により、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものとなり得る。これはCeNi相またはGdCo相の割合が高まったことに起因すると考えられる。
前記水素吸蔵合金は、特に限定されるものではないが、V, Nb, Ta, Ti, ZrおよびHfからなる群から選択される1種または2種以上の元素の割合が0原子%以上0.7原子%以下であり、Niの割合が76.5原子%以上78.7原子%以下であることを満たすことが好ましい。
斯かる構成により、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性をより優れたものにできるという利点がある。
詳しくは、特に限定されるものではないが、前記水素吸蔵合金において、全体に対してV, Nb, Ta, Ti, ZrおよびHfからなる群から選択される1種または2種以上の元素の割合が0原子%以上0.7原子%以下であることが好ましい。斯かる構成により、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものとなり得る。これは該水素吸蔵合金に表面相を形成して、腐食を抑制することに起因するものと考えられる。
また詳しくは、特に限定されるものではないが、前記水素吸蔵合金において、全体に対してNiの割合が76.5原子%以上78.7原子%以下であることが好ましい。斯かる構成により、ニッケル水素蓄電池のサイクル特性が優れたものになり得る。これはCeNi相またはGdCo相の割合が高まり、結晶相の構造が膨張収縮によっても微粉化されにくいことに起因するものと考えられる。
前記水素吸蔵合金は、特に限定されるものではないが、前記M1がLa, Pr, Nd, Smから選択される1種又は2種以上の元素であることが好ましい。
斯かる構成により、希土類―Mg−Ca−Ni系合金において多くの水素を吸蔵しながら微粉化されにくいという利点がある。これはLa, Pr, Nd, Smを添加することで、結晶構造の格子の大きさが大きくなることに起因すると考えられる。
前記水素吸蔵合金は、特に限定されるものではないが、主相の結晶構造がCeNi相又はGd2Co7相であることが好ましい。斯かる構成により、ニッケル水素蓄電池の容量とサイクル特性をより優れたものにできるという利点がある。これは結晶構造にCaが固溶しやすいことに起因すると考えられる。
次に、本実施形態の水素吸蔵合金の製造方法について説明する。
本実施形態の水素吸蔵合金の製造方法においては、例えば、上述のような所定の組成比となるように配合された合金原料を溶融する溶融工程と、溶融した合金原料を凝固する冷却工程と、冷却された合金を加圧状態の不活性ガス雰囲気下で860℃以上1000℃以下の温度範囲で焼鈍する焼鈍工程と、該合金を粉砕する粉砕工程とをおこなう。
各工程についてより具体的に説明すると、まず、目的とする水素吸蔵合金の化学組成に基づいて、原料インゴッド(合金原料)を所定量秤量する。
溶融工程においては、前記合金原料をルツボに入れ、不活性ガス雰囲気中又は真空中で高周波溶融炉を用い、例えば、1200℃以上1600℃以下に加熱して合金原料を溶融させる。
冷却工程においては、溶融した合金原料を冷却して固化させる。冷却速度は、いわゆる徐冷でもよく、1000K/秒以上(急冷ともいう)でもよい。1000K/秒以上で急冷することにより、合金組成が微細化し、均質化するという効果がある。また、該冷却速度は、1000000K/秒以下の範囲に設定することができる。
該冷却方法としては、具体的には、水冷金型法、冷却速度が100000K/秒以上であるメルトスピニング法、冷却速度が10000K/秒程度であるガスアトマイズ法などを好適に用いることができる。
焼鈍工程においては、不活性ガス雰囲気下の加圧状態において、例えば、電気炉等を用いて860℃以上1000℃以下に加熱する。加圧条件としては、0.2MPa(ゲージ圧)以上1.0MPa(ゲージ圧)以下が好ましい。また、該焼鈍工程における処理時間は、3時間以上50時間以下とすることが好ましい。
前記粉砕工程は、焼鈍の前後のどちらで行ってもよいが、粉砕により表面積が大きくなるため、合金の表面酸化を防止する観点から、焼鈍工程の後に粉砕工程を実施するのが望ましい。粉砕は、合金表面の酸化防止のために不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
粉砕手段としては、例えば、機械粉砕、水素化粉砕などが用いられ、粉砕後の水素吸蔵合金粒子の粒径が、概ね20〜70[μm]となるように行うことが好ましい。
以下、本発明に係るニッケル水素蓄電池の一実施形態について説明する。
本実施形態のニッケル水素蓄電池は、上述の水素吸蔵合金を水素吸蔵媒体として含有する負極を備えたものである。
本実施形態のニッケル水素蓄電池は、前記水素吸蔵合金を含有する負極を備えたものであるため、サイクル特性が優れたものとなり得る。
本実施形態のニッケル水素蓄電池は、詳しくは、上述の水素吸蔵合金を主材料とする負極を備え、さらに例えば、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含む正極(ニッケル電極)、セパレータ、及びアルカリ電解液を備えて構成されている。
前記負極としては、例えば、前記水素吸蔵合金の粉末が導電剤、結着剤、又は増粘剤等と混合され、所定形状に加圧成形されたものが挙げられる。
本実施形態のニッケル水素蓄電池の正極としては、特に限定されるものではないが、一般的には、水酸化ニッケルを主成分とし且つ水酸化亜鉛や水酸化コバルトが混合されてなる水酸化ニッケル複合酸化物を正極活物質として含む正極が挙げられ、好ましくは、共沈法によって均一分散した該水酸化ニッケル複合酸化物を含む正極が挙げられる。
水酸化ニッケル複合酸化物以外の添加物としては、導電改質剤としての水酸化コバルト、酸化コバルト等を用いることができ、また、前記水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトをコートしたものや、これらの水酸化ニッケル複合酸化物の一部を酸素又は酸素含有気体、又は、K228、次亜塩素酸などの薬剤を用いて酸化したものが挙げられる。
また、添加剤としては、酸素過電圧を向上させる物質として、Y、Yb等の希土類元素の化合物や、Ca化合物が例示される。Y、Yb等の希土類元素は、その一部が溶解して、負極表面に配置されるため、負極活物質の腐食を抑制する効果も期待できる。なお、前記正極には、上述したような主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤等が、他の構成成分として含有されていてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(ニッケル、金等)粉、金属繊維等の導電性材料の1種単独物又は2種以上を混合したものが挙げられる。
これらを混合する方法としては、できる限り均一な状態とし得るものが好ましく、例えば、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといった粉体混合機を、乾式、あるいは湿式で用いる方法を採用しうる。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーの1種単独物又は2種以上を混合したものが挙げられる。該結着剤の添加量は、正極又は負極の総量に対して、0.1〜3質量%が好ましい。
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム等の多糖類等の1種単独物又は2種以上を混合したものが挙げられる。増粘剤の添加量は、正極又は負極の総量に対して、0.1〜0.3質量%が好ましい。
正極及び負極は、前記活物質、導電剤および結着剤を、水やアルコール、トルエン等の有機溶媒に混合した後、得られた混合液を集電体の上に塗布し、乾燥することによって好適に作製される。前記塗布方法としては、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、パーコーティング等の手段を用い、任意の厚み及び任意の形状に塗布する方法が好適であるが、これらに限定されるものではない。
前記集電体としては、構成された電池において前記活物質との電子の授受に悪影響を及ぼさない電子伝導体が特に制限されることなく使用され得る。該集電体としては、例えば、耐還元性及び耐酸化性の観点から、ニッケルやニッケルメッキした鋼板をその材料としたものが挙げられる。該集電体の形状としては、発泡体、繊維群の成形体、凹凸加工を施した3次元基材、或いは、パンチング板等の2次元基材が挙げられる。また、該集電体の厚みについても特に限定はなく、通常、5〜700μmのものが例示される。
これらの集電体のうち、正極用としては、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れたニッケルを材料とし、集電性に優れた構造である多孔体構造の発泡体としたものが好ましい。また、負極用としては、安価で、且つ導電性に優れる鉄箔に、ニッケルメッキを施した、パンチング板が好ましい。
パンチング径は2.0mm以下、開口率は40%以上であることが好ましく、これにより、少量の結着剤でも負極活物質と集電体との密着性を高めることができる。
ニッケル水素蓄電池のセパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独で、あるいは2以上併用して構成されていることが好ましい。該セパレータを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。
該セパレータの目付は、40g/m2から100g/m2が好ましい。40g/m2未満であると、短絡や自己放電性能が低下する虞があり、100g/m2を超えると単位体積当たりに占めるセパレータの割合が増加するため、電池容量が下がる傾向にある。該セパレータの通気度は、1cm/sから50cm/sが好ましい。1cm/s未満であると、電池内圧が上昇する虞があり、50cm/sを超えると、短絡や自己放電性能が低下する虞がある。該セパレータの平均繊維径は、1μmから20μmが好ましい。1μm未満であるとセパレータの強度が低下し、電池組み立て工程での不良率が増加する虞があり、20μmを超えると、短絡や自己放電性能が低下する虞がある。
また、該セパレータは、親水化処理が施されていることが好ましい。該セパレータとしては、例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂繊維の表面にスルフォン化処理、コロナ処理、フッ素ガス処理、プラズマ処理を施したり、これらの処理を既に施されたものを混合したものが挙げられる。特に、スルフォン化処理を施されたセパレータは、シャトル現象を引き起こすNO3 -、NO2 -、NH3 -等の不純物や負極からの溶出元素を吸着する能力が高いため、自己放電抑制効果が高く、好ましい。
ニッケル水素蓄電池を構成するアルカリ電解液としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンの少なくとも何れか一方を含み、イオン濃度の合計が9.0mol/l以下であるものが好ましく、イオン濃度の合計が5.0〜8.0mol/lであるものがより一層好ましい。
また、該電解液には、合金への防食性向上、正極での過電圧向上、負極の耐食性の向上、自己放電向上のため、種々の添加剤が添加され得る。該添加剤としては、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、カルシウム、亜鉛などの酸化物、水酸化物等の1種単独物又は2種以上混合したものが挙げられる。
本実施形態のニッケル水素蓄電池が開放型ニッケル水素蓄電池である場合、該電池は、例えば、セパレータを介して負極を正極で挟み込み、これらの電極に所定の圧力がかかるようにこれらの電極を固定して、電解液を注液し、開放形セルを組み立てることにより作製できる。
本実施形態の水素吸蔵合金及び本実施形態のニッケル水素蓄電池は上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の水素吸蔵合金、及び上記例示のニッケル水素蓄電池に限定されるものではない。
即ち、一般的な水素吸蔵合金において用いられる種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。また、一般的なニッケル水素蓄電池において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
例えば、本実施形態の水素吸蔵合金は、上述のごとく化学組成が一般式 M1tYuCavMgwM2xで表されるものであるところ、本発明の水素吸蔵合金においては、該一般式を満たしている限り、本発明の効果を損ねない範囲において、該一般式で規定されていない元素が含まれ得る。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
以下に示す方法により、水素吸蔵合金を作製した。
作製後の化学組成が表1の実施例1となるように、原料インゴットを所定量秤量してルツボに入れ、減圧アルゴンガス雰囲気下で高周波溶解炉を用いて150℃に加熱し、材料を溶解した。溶融後、メルトスピニング法を適用して急冷し、合金を固化させた。
次に、得られた合金を0.2MPa(ゲージ圧,以下同じ)に加圧されたアルゴンガス雰囲気下で、910℃にて熱処理を5時間おこなった後、得られた水素吸蔵合金を粉砕して、平均粒径(D50)が50μmの水素吸蔵合金粉末とした。
(実施例2〜13)
水素吸蔵合金の組成を表1の実施例2〜13に示した組成とした以外は、実施例1と同様にして水素吸蔵合金をそれぞれ作製した。
(比較例1)
水素吸蔵合金の組成を表1の比較例1に示した組成とした以外は、実施例1と同様にして水素吸蔵合金を作製した。
(比較例2〜23)
水素吸蔵合金の組成を表1および表2の比較例2〜23に示した組成とした以外は、実施例1と同様にして水素吸蔵合金をそれぞれ作製した。
各実施例、各比較例の水素吸蔵合金の組成(作製後の分析値)、最大放電容量、容量維持率をそれぞれ表1および表2に示す。
Figure 0005577672
Figure 0005577672
(開放形ニッケル水素電池の作製)
上記のようにして得られた水素吸蔵合金粉末100質量部に、ニッケル粉末(INCO製#210)3質量部を加えて混合した後、増粘剤(メチルセルロース)を溶解した水溶液を加え、さらに,結着剤(スチレンブタジエンゴム)を1質量部加えてペースト状にしたものを厚さ35μmの穿孔鋼板(開口率50%)の両面に塗布して乾燥させた後、厚さ0.33mmにプレスして、負極板とした。
また,正極板には負極容量の3倍の容量をもつシンター式水酸化ニッケル電極を用いた。
セパレータを介して負極を正極で挟み込み、これらの電極に1kgfの圧力がかかるようにこれらの電極を固定して7Mの水酸化カリウム水溶液を注入し、開放形セルを組み立てた。
<最大放電容量の評価>
20℃で、0.1ItA(30mA/g)で15時間の充電、休止1時間、0.2ItAでHg/HgO参照電極に対して−0.6Vまで放電をおこなう充放電サイクルを10回繰り返し、最大容量に達したところで0.2ItA(mAh/g)放電容量を求めた。
最大放電容量について、結果を表1および表2に示す。
<容量維持率の評価>
20℃で、充放電サイクル試験がおこなわれた。そして、10サイクル目と50サイクル目の放電容量から、次式により容量維持率を求めた。
容量維持率(%)=(50サイクル目放電容量)/(10サイクル目放電容量)×100
50サイクル後容量維持率について、結果を表1および表2に示す。
なお、充放電サイクル時の充電条件・放電条件は次のとおりである。
(1〜10サイクル目)
充電:0.1ItAで100%
放電:0.2ItAで終止電位−0.6V(vs. Hg/HgO)
(11〜49サイクル目)
充電:1.0ItAで75%
放電:0.5ItAで終止電位−0.6V(vs. Hg/HgO)
(50サイクル目)
充電:0.1ItAで100%
放電:0.2ItAで終止電位−0.6V(vs. Hg/HgO)
表1および表2に示すように、実施例1〜13の水素吸蔵合金のサイクル寿命特性は、比較例1〜23の水素吸蔵合金のサイクル寿命特性に比べて優れていた。
化学組成が、一般式M1tYuCavMgwM2xで表され、3.20≦x/(t + u + v + w ) ≦3.75, 3.4≦w≦4.7, t + u + v + w + x = 100の各条件を満たす水素吸蔵合金においては、微粉化が抑制され得るものの、式(1)又は式(2)を満たさない場合には、サイクル寿命が十分でない。一方、さらに式(1)及び式(2)を満たす場合には、微粉化が抑制され、サイクル寿命に優れたものとなっている。
0.6≦u≦5.0 式(1)
1.1≦v≦6.6 式(2)
より詳しくは、式(1)を満たすことにより、各生成相間の水素吸蔵による格子膨張の差を少なくすることで、充放電サイクル特性が向上すると考えられる。また、式(2)を満たすことにより、格子体積が調整され、水素の吸蔵放出を妨げる合金中の歪みが抑制されると考えられる。そして、式(1)と式(2)を同時に満たすことで、該水素吸蔵合金は、多くの水素を吸蔵しながら微粉化と腐食を抑制することができると考えられる。
元素全体に対するYの割合を横軸に、サイクル寿命を縦軸にして、実施例1〜13及び比較例4〜23について表したグラフを図1に示す。B/A比が3.20から3.75までの範囲、Mgが3.4原子%から4.7原子%の範囲の実施例、比較例のみをプロットし、範囲外の比較例1〜3は除いた。
また、各実施例、各比較例で作製された水素吸蔵合金の結晶構造について調べた。
<TEM観察による結晶相の積層構造解析>
各実施例、各比較例で作製された水素吸蔵合金を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、一次粒子は、多結晶体となっていることが確認された。
<エックス線回折による結晶相の構造解析>
各実施例、各比較例で作製された水素吸蔵合金について、エックス線回折測定による構造解析を行った。
具体的には、得られた水素吸蔵合金を乳鉢で粉砕した後、粉末X線回折装置(リガク社製、RINT2400)を用い、ゴニオ半径185mm、発散スリット1deg.、散乱スリット1deg.、受光スリット0.15mm、X線源CuKα線、管電圧50kV、 管電流200mAの条件で測定した。なお、回折角は、2θ=15.0〜85.0°の範囲とし、スキャンスピードは4.000°/min.、スキャンステップは0.020°とした。得られたX線回折結果に基づいてリートベルト法(解析ソフト、RIETAN2000使用)により構造解析を行なった。
各実施例、各比較例で作製された水素吸蔵合金におけるCeNi相の含有量、GdCo相の含有量を表3に示す。
Figure 0005577672
表3に示すように、実施例1〜23の水素吸蔵合金は、CeNi相およびGdCo相の割合が大きく、ニッケル水素蓄電池の容量とサイクル特性が優れたものとなっている。これは、結晶構造にCaが固溶しやすくなったことに起因すると考えられる。

Claims (5)

  1. 組成が一般式:M1CaMgNiM2 (但し3.20≦(x + y)/(t + u + v + w)≦3.75、3.4≦w≦4.7、0.6≦u≦5.0、1.1≦v≦6.6、0≦y≦0.7、t + u + v + w + x + y = 100 で表され、M1はYを除く希土類元素、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfからなる群から選択される1種または2種以上の元素、M2はCo、Mn、Al、Cu、Fe、CrおよびZnからなる群から選択される1種または2種以上の元素)で表されることを特徴とする水素吸蔵合金。
  2. Yを除く希土類元素の割合が11.1原子%以上15.1原子%以下であることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金。
  3. V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfからなる群から選択される1種または2種以上の元素の割合が0原子%以上0.7原子%以下であり、Niの割合が76.5原子%以上78.7原子%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の水素吸蔵合金。
  4. 前記希土類元素がLa、Pr、Nd、Smから選択される1種又は2種以上の元素であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水素吸蔵合金。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載された水素吸蔵合金を含む負極を備えたことを特徴とする二次電池。

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