JP5583934B2 - コンクリートの化学的な劣化度の評価方法 - Google Patents

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本発明は、コンクリートの化学的な劣化度の評価方法に関し、特に現場で検査対象のコンクリートの劣化度を評価する方法に関する。
トンネル、橋、堤防、建築物等のコンクリートからなる構造物では、種々の検査を行って劣化した部分を特定し、その劣化した部位を補修することによって維持管理されている。検査の態様としては、コンクリートの浮き、剥離、ヒビ割れなどの物理的な劣化状態の検査と、コンクリート構造物の中性化、塩害などの化学的な劣化状態の検査がある。物理的な劣化状態の検査には超音波法、レーダー法、赤外線法、X線法、打音法などが用いられる。また、化学的な劣化状態の検査は、コンクリート構造物にボーリングなどを行って当該構造物によりサンプルを採取し、その採取したサンプルを分析する方法や、サンプルに対して試薬などを用い、その反応を調べる方法が提案されている。ここで、化学的な劣化とは、コンクリートの中性化、塩害が挙げられる。中性化に対する検査方法としては、フェノールフタレイン法、示差熱重量分析法、X線回折装置及びX線マイクロアナライザ装置(EPMA)による分析方法が挙げられる。また塩害に対する検査方法としては、硬化コンクリート中に含まれる全塩分の簡易分析方法(JCCI−SC5)、硬化コンクリート中に含まれる塩分の分析方法(JCI−SC4)が挙げられる。
ところが、このようにサンプルを採取する方法は、サンプル採取後、新たなコンクリートで埋め戻しても構造物にダメージを与える。また劣化が進行していない構造物に適用した場合、無意味な検査となって検査費用が増加するとともに、当該構造物にダメージを与える。さらに劣化が進行している構造物であっても一般には部位によって劣化の進行度が異なるため、無作為にサンプルを収集することは必ずしも進行している部位をサンプリングしているとは限らず、検査としての正確性に欠けている、といった問題を有している。
そのため、コンクリート構造物の化学的な劣化状態をサンプル採取せずに検出できる装置の開発が望まれており、特許文献1において、コンクリート構造物から反射する近赤外線の所定波長における吸光度に基づき、当該コンクリート構造物の劣化状態を検出可能な劣化検出装置が提案されている。特許文献1の発明は、中性化や塩害が進行したコンクリートと進行していないコンクリートの違いを、近赤外線の所定波長の吸光度の違いにより検出しようとするものである。
特開2005−2919881号公報
しかし、赤外線以降の高い周波数帯域はコンクリート内部での分子・原子の振動エネルギーにより吸収されることが知られており、得られる情報はコンクリートの表面付近に限定され、コンクリート内部の化学的な劣化状態を評価することは困難である。
そこで本発明は、コンクリート内部の化学的劣化状態を検出可能なコンクリートの劣化度の評価方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリートの劣化度の評価方法は、第1には、コンクリートに照射されたテラヘルツ波の吸光度を用いたコンクリートの化学的な劣化度の評価方法であって、前記コンクリートに一対のボーリング孔を形成し、第1光ファイバにより一方のボーリング孔の所定の深さ位置まで前記テラヘルツ波を導入して他方のボーリング孔に向けて前記テラヘルツ波を照射し、前記他方のボーリング孔に導入された第2光ファイバを介して、前記テラヘルツ波の透過波を検出して前記吸光度を算出し、前記吸光度と、前記コンクリートと同一組成を有し劣化度が既知のコンクリートの吸光度と、を対比することを特徴とする。
第2には、コンクリートに照射されたテラヘルツ波の吸光度を用いたコンクリートの化学的な劣化度の評価方法であって、パルス状のポンプ光により生成されたテラヘルツ波を前記コンクリートに照射しその反射波を、前記ポンプ光に同期するパルス状のプローブ光を受光したときのみ前記テラヘルツ波を検出可能な検出手段により検出して前記吸光度を算出し、前記吸光度と、前記コンクリートと同一組成を有し劣化度が既知のコンクリートの吸光度と、を対比するとともに、前記検出手段は、前記コンクリートの所定の深さ位置で反射された反射波が前記検出手段に到達する時刻に合わせて前記プローブ光を前記検出手段に受光させることにより、前記反射波を選択的に検出することを特徴とする。
第3には、コンクリートに照射されたテラヘルツ波の吸光度を用いたコンクリートの化学的な劣化度の評価方法であって、前記コンクリートにボーリング孔を形成し、第1光ファイバにより前記ボーリング孔の所定の深さ位置までパルス状のポンプ光により生成されたテラヘルツ光を導入して前記ボーリング孔の内壁に前記テラヘルツを照射し、前記ポンプ光に同期するパルス状のプローブ光を受光したときのみ前記テラヘルツ波を検出可能な検出手段により、前記テラヘルツ波の反射波を前記ボーリング孔に導入された第2光ファイバを介して検出して前記吸光度を算出し、前記吸光度と、前記コンクリートと同一組成を有し劣化度が既知のコンクリートの吸光度と、を対比するとともに、前記検出手段は、前記内壁から所定の距離離れた位置で反射された反射波が検出手段に到達する時刻に合わせて前記プローブ光を前記検出手段に受光させることにより、前記反射波を選択的に検出することを特徴とするコンクリートの化学的な劣化度の評価方法。
第4には、前記反射波は、前記コンクリート内部に埋設された骨材表面からの反射波であることを特徴とする。
第5には、前記劣化度の評価は、前記コンクリート中の塩化物イオンの吸収帯の吸光度と、塩化物イオン濃度が既知のコンクリートの塩化物イオンの吸収帯の吸光度とを対比することにより行われることを特徴する。
第6には、前記劣化度の評価は、前記コンクリート中の中性化に起因する吸収帯の吸光度と、中性化度が既知のコンクリートの中性化に起因する吸収帯の吸光度とを対比することにより行われることを特徴とする。
本発明に係るコンクリートの劣化度の評価方法によれば、吸光度を測定する手段としてコンクリートをある程度透過可能なテラヘルツ波を用いているので、コンクリートの表面状態の影響を受けずに良好な吸光度を透過測定により得ることができる。またボーリング孔はテラヘルツ波を導入する光ファイバを挿通するのに必要な程度の内径を有すれば十分であるので、コンクリートへのダメージを低減できる。また光ファイバの先端をボーリング孔の所定の深さ位置にまで導入することにより、コンクリートの所定の深さ位置における劣化度を評価することができる。
また、吸光度を反射測定により得る場合でも、テラヘルツ波をパルス状とすることで、所定の深さ位置から反射されたテラヘルツ波の反射波を選択的に検出することができるので、表面状態に左右されない反射測定が行えるとともに、光学系を変えることなく信頼性の高いコンクリートの劣化度の深さ分布を評価することができる。なお、コンクリート内部の骨材表面からの反射波は反射強度が高いため、この反射波を選択的に検出することにより、S/N比の高い吸光度を算出することができる。
さらに、吸光度を評価する指標として塩化物イオン濃度、及び中性化度を用いるため、再現性のよい化学的な劣化度の評価を行うことができる。
第1実施形態に係る評価方法の配置図である。 第1実施形態に係る評価方法を構成するテラヘルツ−TDS装置の模式図である。 テラヘルツ−TDS装置を構成するテラヘルツ波発生装置、及びテラヘルツ波検出素子の模式図である。 第1実施形態に係る評価方法のフロー図である。 第2実施形態に係る評価方法の概念図である。 第3実施形態に係る評価方法の配置図である。 各コンクリート材料の透過測定による吸光度を示す図である。 各コンクリート材料の透過測定による吸光度を示す図である。 68GHz、及び100GHzにおける透過率と塩化物イオン濃度との関係を示す図である。
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
第1実施形態に係るコンクリートの劣化度の評価システムを図1に示す。
第1実施形態に係る評価システム10は、テラヘルツ−TDS装置18、解析装置48、第1光ファイバ42、第2光ファイバ46、取り付け治具16等から構成される。
上述の評価システム10を用いた第1実施形態に係るコンクリートの劣化度の評価方法は、コンクリート12に照射されたテラヘルツ波の吸光度を用いたコンクリートの化学的な劣化度の評価方法であって、前記コンクリート12に一対のボーリング孔14を形成し、第1光ファイバ42により一方のボーリング孔14aの所定の深さ位置までテラヘルツ波50を導入して他方のボーリング孔14bに向けて前記テラヘルツ波50を照射し、前記他方のボーリング孔14bに導入された第2光ファイバ46を介して、前記テラヘルツ波50の透過波を検出して前記吸光度を算出し、前記吸光度と、前記コンクリート12と同一組成を有し劣化度が既知のコンクリートの吸光度と、を対比することによって行われる。
検査対象となるコンクリート12には、ボーリング孔14が一対形成され、ボーリング孔14同士の間隔はテラヘルツ波50(30GHz〜3THz)が透過可能な距離を維持しつつ互いに平行に形成されている。またボーリング孔14は後述の取り付け冶具16等が導入可能な直径を有している。
第1光ファイバ42、及び第2光ファイバ46は、テラヘルツ波50を伝播可能とするため、例えば図1(図6参照)に示すように、中空状のガラス若しくはプラスティックチューブに内壁に金属や樹脂の薄膜を形成したものが用いられる。この構造により伝播可能波長領域はテラヘルツ領域のみならず、軟X線領域にまで広範囲に及ぶ光ファイバとなる。第1光ファイバ42の一端はテラヘルツ波発生素子22に接続され、前記一端の反対の他端にはミラー42bが配設されている。同様に、第2光ファイバの46一端はテラヘルツ波検出素子24に接続され、前記一端の反対側の他端にはミラー46aが配設されている。
取り付け冶具16は、一対のボーリング孔14に同時に挿入可能なフォーク型の形状を有する部材であって、コンクリート12面から所定の高さ位置に固定可能となっている。取り付け冶具16は、一方の枝には第1光ファイバ42が取り付けられ、他方の枝には第2光ファイバ46が取り付けられている。またこのとき第1光ファイバ42の先端にあるミラー42aと、第2光ファイバ46の先端にあるミラー46aは同じ高さ位置となり、かつ互いに対向する位置に取り付けられる。これにより第1光ファイバ42のミラー42aから出射したテラヘルツ波50を第2光ファイバ46のミラー46aが検出(受光)可能となる。そして取り付け冶具16をボーリング孔14に挿入し、所定の位置で固定することにより、ボーリング孔14aの所定の深さ位置においてミラー42aから出射されたテラヘルツ波50は検査対象のコンクリート12を透過し、もう一方のボーリング孔14bにあるミラー46aがテラヘルツ波50の透過波(透過光)を検出(受光)することができる。
テラヘルツ波50を発生、検出(受光)、及び解析する構成としては、例えば図2に示すように、テラヘルツ時間分解分光法(テラヘルツ−TDS)で用いられるテラヘルツ−TDS装置18を用いることができる。
テラヘルツ−TDS装置18は、時間方向にフェムト秒のパルス幅を発生させるフェムト秒レーザ20、テラヘルツ波の発振源となるテラヘルツ波発生素子22、テラヘルツ波の検出手段(受光手段)となるテラヘルツ波検出素子24、ロックインアンプ26等で構成される。
フェムト秒レーザ20は100フェムト秒程度の時間幅の光パルスを放射するものであり、光パルスはビームスプリッタ28によってポンプ光30とプローブ光32に分割される。ポンプ光30はテラヘルツ波発生素子22へ導かれ、プローブ光32は光路上に時間遅延を行う可動鏡34を介してテラヘルツ光検出素子24へ導かれる。
テラヘルツ波発生素子22は、図3(a)に示すように、テラヘルツ波50を発生させる半導体基板22aと発生した電磁波をコリメートするための超半球レンズ22bから成り立っている。超半球レンズ22bの材料は、一般に吸収損失の少ない高抵抗シリコン(Si)が用いられる。半導体基板22aは、半絶縁性ガリウムヒ素(semi−insulating GaAs,SI−GaAs)上に低温結晶成長させたガリウムヒ素(low−temperature grown GaAs、LT−GaAs)を用いる。さらにLT−GaAs上に合金製の平行伝送線路(電極も兼ねる)をつけた形になっている。電極中央に張り出した部分は微小ダイポールアンテナ22cとして作用する。アンテナ中央には微小ギャップ22d(数μm)があり、ギャップ間には数10Vの電圧を印加する。微小ギャップ22dに半導体のバンドギャップより高い光子エネルギーを持ったポンプ光30をレンズ38を用いて収束させて照射すると、半導体中に光励起キャリア(電子と正孔)が生成され、微小ギャップ22d間の電圧でキャリアが加速されて瞬時電流が流れる。微小ダイポールアンテナ22cから放射されるテラヘルツ波50の振動電場は、半導体中に流れる電流の時間微分に比例する。テラヘルツ波50は、誘電率の大きなSI−GaAs基板側に強く放射される。放射されるテラヘルツ波50のパルス幅は1ピコ秒程度である。超半球レンズ22bの後段には、放射されたテラヘルツ波50を収束させる軸外し放物面鏡36及びレンズ40を介して、テラヘルツ波50を透過する光ファイバである第1光ファイバ42がテラヘルツ波50の光路上に配置され、第1光ファイバ42の端部からテラヘルツ波50が導入され、テラヘルツ波50はファイバ内を反射しながら前記端部の反対側のミラー42a側に伝播される。
テラヘルツ波検出素子24は、図3(b)に示すように、上述のテラヘルツ波発生素子22の半導体基板22aと同様の構成を有しているが、微小ダイポールアンテナ24cには電流計24dが接続されている。テラヘルツ波検出素子24の微小ダイポールアンテナ24cの半導体基板側から第2光ファイバ46を伝播してきたテラヘルツ波50をレンズ44により収束させ、反対側からフェムト秒のプローブ光32を微小ダイポールアンテナ22cの微小ギャップ22dに収束させながら照射する。ここでテラヘルツ波検出素子24はプローブ光32が当ったときのみ動作する仕組みとなっているので、プローブ光32は可動鏡34により、テラヘルツ波50が微小ダイポールアンテナ24cと同時に到達するように光路長が調整されている。プローブ光32によって半導体基板中に生成されたキャリアはテラヘルツ波50に伴う振動電場で加速されるので、テラヘルツ波50の振動電場に比例して瞬時電流が流れる。テラヘルツ波検出素子24の出力側はロックインアンプ26に接続されている。
ロックインアンプ26は前記瞬時電流のS/N比を向上させるため、ポンプ光30に光チョッパーで数kHzの変調をかけ、参照信号をロックインアンプ26に入力することで同期検波を行うものである。ロックインアンプ26の出力電流を解析装置でAD変換及びフーリエ変換することで吸光度を得ることができる。
解析装置48はテラヘルツ波検出素子24からの瞬時電流をロックインアンプ26を介してAD変換した後、フーリエ変換してテラヘルツ波50の吸光度(吸収スペクトル)を算出し、解析するものである。
ここで、吸光度には、測定対象のコンクリート12に含まれる塩化物イオン、及びコンクリート12の中性化により固有の周波数帯に吸収ピークが表れる。
塩化物イオンの場合は、約2264nmの波長を中心として2220nm〜2280nmの範囲で吸光度が高くなる。中性化とはコンクリート中の水酸化カルシウム濃度が低下することにより起こるものである。よって中性化していないコンクリートには水酸化カルシウムが多く含まれるため、約1415nmの波長を中心として、1380nm〜1430nmの範囲で吸光度が高くなるが、水酸化カルシウムの濃度が低下すると上述の範囲の吸光度が低くなる。
そこで、解析装置48には塩化物イオン濃度及び組成が既知のコンクリート材料の様々な塩化物イオン濃度における第1標準吸光度と、及び水酸化カルシウム濃度(中性化度)及び組成が既知のコンクリート材料の様々な水酸化カルシウム濃度における第2標準吸光度と、を記憶媒体(不図示)に格納している。
また解析装置48は、前記第1標準吸光度における塩化物イオンの吸収ピークの塩化物イオンの濃度依存性を示す第1標準データを所定の組成を有するコンクリート材料ごとに記憶媒体(不図示)に格納している。同様に、前記第2標準吸光度の水酸化カルシウムの吸収ピークの水酸化カルシウムの濃度依存性を示す第2標準データを所定に組成を有するコンクリート材料ごとに記憶媒体(不図示)に格納している。
そして解析装置48は、測定されるコンクリート12の組成情報が入力され、吸光度を算出すると、塩化物イオン(水酸化カルシウム)の第1測定吸収ピーク値(第2測定吸収ピーク値)を算出し、同一の組成に係る第1標準吸収ピーク値群(第2標準吸収ピーク値群)を読み出し、第1標準ピーク値群(第2標準ピーク値群)の中から第1吸収ピーク値(第2吸収ピーク値)と一致する、若しくは一番近い値の第1標準吸収ピーク値(第2標準吸収ピーク値)に係る、塩化物イオン濃度(水酸化カルシウム濃度)を出力することができる。ここで解析装置48はキーボード操作、マウス操作等により第1測定吸収ピーク値、または第2測定吸収ピーク値のいずれか片方について処理を行うことが可能であり、また両方同時に行うことも可能である。
さらに解析装置48は、前記第1標準吸収ピーク値及び前記第2標準吸収ピーク値に対応する第1標準吸光度、または第2標準吸光度を読み出し、ディスプレイ48a上に表示して測定された吸光度と第1標準吸光度、または第2標準吸光度とを同時にディスプレイ48a上の同一座標上に出力することができるように構成されている。これにより作業者は、測定されたコンクリートの塩化物イオン濃度及び水酸化カルシウム濃度をディスプレイ48a上で確認することができるとともに、吸光度全体の形状を見て、測定されたコンクリートの塩化物イオン濃度、または水酸化カルシウム濃度を目視により確認することができ、コンクリートの塩化物イオン濃度、及び中性化度を指標とするコンクリートの劣化度を評価することができる。
図4に第1実施形態のフロー図を示す。まず解析装置48にコンクリート12の組成情報を入力する。そして解析装置48はテラヘルツ−TDS装置18を起動してテラヘルツ波50を測定対象のコンクリート12に照射してその透過波(後述の第2実施形態、第3実施形態においては反射波)を検出する。検出した透過波は解析装置48にてAD変換及びフーリエ変換されて吸光度が導き出される。解析装置48は、前記吸光度から塩化物イオン(水酸化カルシウム)の吸収帯のピークから第1測定吸収ピーク値(第2測定吸収ピーク値)を算出する。そして先に入力された組成情報に係る組成と同一の組成を有する第1標準吸収ピーク値群(第2標準吸収ピーク値群)の中から第1吸収ピーク値(第2吸収ピーク値)と一致する、若しくは一番近い値の第1標準吸収ピーク値(第2標準吸収ピーク値)を記憶媒体から選択して、第1測定吸収ピーク値(第2測定吸収ピーク値)と第1標準吸収ピーク値(第2標準吸収ピーク値)、及び前記第1標準吸収ピーク値に対応する塩化物イオン濃度(水酸化カルシウム濃度)をディスプレイ48a上に出力する。さらに解析装置48は第1標準吸収ピーク値(第2標準吸収ピーク値)に対応するコンクリート材料の第1標準吸光度(第2標準吸光度)を記憶媒体から読み出し、測定された吸光度とともにディスプレイ48a上に出力する。なお、第1標準吸光度及び第2標準吸光度は同時に出力することができる。
図5に、第2実施形態に係るコンクリートの化学的な劣化度の評価方法の概念図を示す。第2実施形態に係るコンクリートの化学的な劣化度の評価方法は、コンクリート12に照射されたテラヘルツ波の吸光度を用いたコンクリートの化学的な劣化度の評価方法であって、パルス状に生成されたテラヘルツ波50を前記コンクリート12に照射してその反射波を検出手段(テラヘルツ検出素子24)により検出して前記吸光度を算出し、前記吸光度と、前記コンクリート12と同一組成を有し劣化度が既知のコンクリートの吸光度と、を対比するとともに、前記検出手段は、前記コンクリート12の所定の深さ位置で反射された反射波54が検出手段に到達する時刻に合わせて前記検出手段の開閉制御を行うことにより、前記反射波54を検出することを目的としている。これを具現化する基本的な装置構成及びフローは第1実施形態と同様であるが、コンクリート12の表面にテラヘルツ波50を当て、その反射波54を選択的に検出することが特徴である。
コンクリート12は層状の構造を有する場合が多く、反射波は、コンクリート12の表面のみならず所定の深さ位置(各層の境界)からも反射される。よって第2実施形態においてはこの所定の深さ位置から反射される反射波を選択的に検出する。第1実施形態と同様に本実施形態で用いられるテラヘルツ−TDS装置18はパルス状のテラヘルツ波を発生するが、そのパルス幅は1ピコ秒であるから、その長さは0.3mm程度である。一方、テラヘルツ波はミリオーダでコンクリート12を透過可能であるから、ミリオーダの深さ位置からのテラヘルツ波の反射波が測定可能となる。よって、同一の照射パルスであって表面で反射された反射波52とミリオーダの深さ位置から反射された反射波54は空間的に重なることはなく、以下に説明するように両者を分離して測定可能である。
ここで、図5に示すように、角度θで入射したテラヘルツ波50が深さdの位置で反射された場合を考える。なお、テラヘルツ波50は入射した際に屈折はしないものと考える。すると、表面で反射された反射波52と、深さdの位置で反射された反射波54との光路差はd/cosθとなる。このときテラヘルツ波の検出面(微小ダイポールアンテナ24c)には反射波54が反射波52よりd/(c・cosθ)(c:光速)だけ遅れて到達するが、テラヘルツ−TDS装置18において、可動鏡34が形成する光路の遅延の長さを第1実施形態の場合よりさらに上述の光路差であるd/cosθだけ長くなるように調整すれば、テラヘルツ波検出素子24は、反射波52は検出せず、反射波54のみを検出することができる。よってテラヘルツ波検出素子24を上述のように反射波54が到達する時刻に合わせて開閉制御することにより、反射波54を選択的に検出することができる。本実施形態はコンクリート12表面にテラヘルツ波50を照射するので第1光ファイバ42、及び第2光ファイバ46を用いる必要はない。すなわちテラヘルツ波発生素子22のテラヘルツ波50の出射方向をコンクリート12の法線に対して角度θとなるように設置した上でテラヘルツ波50をコンクリート12に照射し、テラヘルツ波50の反射波52、54の光路上にテラヘルツ波の受光側をコンクリート12側に向けたテラヘルツ波検出素子24を配置すればよい。このとき反射波54はコンクリート12内において2d/cosθの長さ分だけ透過したテラヘルツ波として検出される。
第3実施形態に係る配置図を図6に示す。図6(a)は模式図、図6(b)は図6(a)の部分詳細図である。第3実施形態に係るコンクリートの化学的な劣化度の評価方法は、第2実施形態と同様に、所定の深さ位置から反射される反射波58を選択的に検出するものであるが、コンクリート12にボーリング孔14cを形成し、所定の深さ位置において、ボーリング孔14cに導入された第1光ファイバ42を介してテラヘルツ波50をボーリング孔14cの壁面に照射し、テラヘルツ波50の反射波58をボーリング孔14cに導入された第2光ファイバ46を介して受光する構成である。図6に示すように、第1光ファイバ42及び第2光ファイバ46は所定の高さ位置で固定可能な取り付け冶具56に固定され第1光ファイバ42と第2光ファイバ46の先端の高さ位置を変えミラー42a、ミラー46aを所定の角度にすることにより第1光ファイバ42からボーリング孔14cの内壁に所定の角度で照射される。よって、テラヘルツ波検出素子24は、ボーリング孔14cの内壁より所定の深さ位置から反射された反射波58を第2光ファイバ46のミラー46aを介して検出することができる。
第2実施形態及び第3実施形態において、反射波52、58は層状構造を有するコンクリートの層の境界で反射されたものを前提として述べてきた。しかし、コンクリート12の内部にはコンクリート12の強度を補強する骨材(例えば金属製)が埋設されている。このような骨材はコンクリートより強度が高く、テラヘルツ波の反射波を効果的に反射することができる。そこで、このような骨材から反射された反射波を選択的に検出することにより、反射波の検出が容易となりS/N比の高い吸光度を算出することができる。
以上述べたように、第1実施形態乃至第3実施形態に係るコンクリートの劣化度の評価方法によれば、吸光度を測定する手段としてコンクリート12をある程度透過可能なテラヘルツ波50を用いているので、コンクリート12の表面状態の影響を受けずに良好な吸光度を透過測定により得ることができる。またボーリング孔14はテラヘルツ波50を導入する光ファイバ(第1光ファイバ42、第2光ファイバ46)を挿通するのに必要な程度の内径を有すれば十分であるので、コンクリートへのダメージを低減できる。また光ファイバの先端をボーリング孔14の所定の深さ位置にまで導入することにより、コンクリート12の所定の深さ位置における劣化度を評価することができる。
また、第2実施形態及び第3実施形態のように、吸光度を反射測定により得る場合でも、テラヘルツ波50をパルス状とすることで、所定の深さ位置から反射されたテラヘルツ波の反射波54、58を選択的に検出することができるので、表面状態に左右されない反射測定が行えるとともに、光学系を変えることなく信頼性の高いコンクリート12の劣化度の深さ分布を評価することができる。なお、コンクリート12内部の骨材表面からの反射波は反射強度が高いため、この反射波を選択的に検出することにより、S/N比の高い吸光度を算出することができる。
さらに、吸光度を評価する指標として塩化物イオン濃度、及び中性化度を用いるため、再現性のよい化学的な劣化度の評価を行うことができる。
本願発明者は、コンクリートの分光スペクトルの塩化物イオン濃度による変化について調査した。用いた材料は、材料1:セメントペースト(COP)、材料2:セメントペーストを高炉スラブで50%置換(COS)したもの、材料3:モルタル(MOP)、材料4:モルタルを高炉スラブで50%置換(MOS)したものを用いた。いずれの材料についても塩化物イオン濃度が0.0、1.2、4.8、9.6、19.2(kg/m)のものを用いた。また全ての材料の厚みは3mmとした。
図7、図8に各コンクリート材料の透過測定による吸光度を示す。図7(a)はCOP、図7(b)はCOS、図8(a)はMOP、図8(b)はMOSである。なお、いずれの材料においても中性化された場合の吸光度を参考として表示している。図7、図8に示されるように厚さ3mmのいずれのコンクリート材料であってもテラヘルツ波を透過可能であることが分かる。よってこの透過スペクトルを上述の第1標準吸光度及び第2標準吸光度として用いることができる。なお、スペクトル全体に表れている振動はテラヘルツ波がコンクリート内部で多重反射されることによって生じる干渉縞である。
この透過測定による吸光度のうち、68GHz、及び100GHzにおいて塩化物イオンに係る吸収ピークが存在することが知られている。そこで図9に68GHz、及び100GHzにおける、透過率(吸収ピーク値)と塩化物イオン濃度との関係を示す。図に示すように、材料によって透過率は異なるが、塩化物イオン濃度と透過率とは一定の関係を有することが分かるため、この関係を示すデータを上述の第1標準吸収ピーク値群として利用することができる。塩化物イオン濃度が増加するにつれて透過率が単調に減少することが望ましいが、図9のデータにおいてはプロットに極値が見受けられる。これは上述の干渉縞の位置が、測定したコンクリートの厚みのばらつきにより周波数方向でずれたこと、または測定誤差が考えられる。よって測定試料の厚みを正確に制御して干渉縞の位置のずれをなくし、また測定誤差も改善することにより、単調減少する曲線が得られるものと考えられる。
一方、反射測定においてはこのような干渉縞は発生しないため、より正確に塩化物イオン濃度に対応した第1吸収ピーク値を第1標準吸収ピーク値群から抽出することができると考えられる。またデータとしては示されていないが、透過率と水酸化カルシウム濃度との関係も塩化物イオン濃度と同様に一定の関係を有することが期待され、この関係を示すデータもコンクリートの中性化度の指標となる第2標準ピーク値群として利用できるものと本願発明者は考えている。
簡易な構成で、検査対象であるコンクリートの劣化度の評価をその場観察により行うことが可能なコンクリートの化学的な劣化度の評価方法として利用できる。
10………評価システム、12………コンクリート、14………ボーリング孔、16………取り付け冶具、18………テラヘルツ−TDS装置、20………フェムト秒レーザ、22………テラヘルツ波発生素子、24………テラヘルツ波検出素子、26………ロックインアンプ、28………ビームスプリッタ、30………ポンプ光、32………プローブ光、34………可動鏡、36………軸外し放物面鏡、38………レンズ、40………レンズ、42………第1光ファイバ、44………レンズ、46………第2光ファイバ、48………解析装置、50………テラヘルツ波、52………反射波、54………反射波、56………取り付け冶具、58………反射波。

Claims (3)

  1. コンクリートに照射されたテラヘルツ波の吸光度を用いたコンクリートの化学的な劣化度の評価方法であって、
    前記コンクリートに一対のボーリング孔を形成し、
    第1光ファイバにより一方のボーリング孔の所定の深さ位置まで前記テラヘルツ波を導入して他方のボーリング孔に向けて前記テラヘルツ波を照射し、
    前記他方のボーリング孔に導入された第2光ファイバを介して、前記テラヘルツ波の透過波を検出して前記吸光度を算出し、
    前記吸光度と、前記コンクリートと同一組成を有し劣化度が既知のコンクリートの吸光度と、を対比することを特徴とするコンクリートの化学的な劣化度の評価方法。
  2. 前記劣化度の評価は、前記コンクリート中の塩化物イオンの吸収帯の吸光度と、塩化物イオン濃度が既知のコンクリートの塩化物イオンの吸収帯の吸光度とを対比することにより行われることを特徴する請求項1記載のコンクリートの化学的な劣化度の評価方法。
  3. 前記劣化度の評価は、前記コンクリート中の中性化に起因する吸収帯の吸光度と、中性化度が既知のコンクリートの中性化に起因する吸収帯の吸光度とを対比することにより行われることを特徴とする請求項1記載のコンクリートの化学的な劣化度の評価方法。
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