JP5597190B2 - 高病原性鳥インフルエンザh5n1亜型ウイルスの検出キット - Google Patents
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Description
(1)第一試薬を判定部位に有するクロマトグラフ媒体、第二試薬と標識物質が結合した標識試薬及び展開液を含有し、イムノクロマトグラフ法によって試料中の被検物質を検出するためのキットであって、第一試薬及び第二試薬の両方又はいずれか一方が、A型インフルエンザウイルスH5N1亜型を特異的に認識する抗体である、A型インフルエンザウイルスH5N1亜型の検出キット。
(2)第一試薬が、A型インフルエンザウイルスH5N1亜型を特異的に認識する抗体である、(1)に記載の検出キット。
(3)A型インフルエンザウイルスH5N1亜型を特異的に認識する抗体が、H5N1亜型ウイルスのヘムアグルチニンの59番目のアミノ酸であるアスパラギン酸を含む立体構造的なエピトープを認識するモノクローナル抗体である、(1)又は(2)に記載の検出キット。
(4)H5N1亜型ウイルスのヘムアグルチニンの59番目のアミノ酸であるアスパラギン酸を含む立体構造的なエピトープを認識するモノクローナル抗体が、マウス−マウスハイブリドーマ4G6(受託番号FERM BP-11130)によって産生されるモノクローナル抗体である、(3)に記載の検出キット。
(5)他方の第一試薬又は第二試薬が、H5N1亜型インフルエンザウイルスのヘムアグルチニンHA1ドメインの273-342aa領域に存在する連続的なエピトープを認識するモノクローナル抗体である、(1)から(4)のいずれかに記載の検出キット。
(6)H5N1亜型インフルエンザウイルスのヘムアグルチニンHA1ドメインの273-342 aa領域に存在する連続的なエピトープを認識するモノクローナル抗体が、マウス−マウスハイブリドーマ3H4(受託番号FERM BP-11173)又はマウス−マウスハイブリドーマ3H12(受託番号FERM BP-11174)によって産生されるモノクローナル抗体である、(5)に記載の検出キット。
(7)展開液が、HLB値が13〜18である非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする、(1)から(6)のいずれかに記載の検出キット。
(8)非イオン性界面活性剤の濃度が0.1〜1.0%である、(7)に記載の検出キット。
(9)展開液が、さらに酸素原子及び窒素原子含有極性基を有するビニル系水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、(1)から(8)のいずれかに記載の検出キット。
(10)ビニル系水溶性ポリマーの濃度が0.5〜2.0%である、(9)に記載の検出キット。
(11)ビニル系水溶性ポリマーがポリビニルピロリドンである、(9)又は(10)に記載の検出キット。
(12)標識物質が、不溶性担体である、(7)から(11)のいずれかに記載の検出キット。
(13)不溶性担体が、コロイド状金粒子である、(12)に記載の検出キット。
(14)試料をクロマトグラフ媒体に接触させる工程、標識試薬を試料と同時に又は試料に次いでクロマトグラフ媒体に接触させる工程、及び、展開液により試料及び標識試薬を展開する工程、を含有する、(1)から(13)のいずれかに記載の検出キットを用いた試料中のA型インフルエンザウイルスH5N1亜型を検出する方法。
クロマトグラフ媒体の形態及び大きさは特に制限されるものではなく、実際の操作の点及び結果の観察の点において適切であればよい。操作をより簡便にするために、判定部位が表面に形成されているクロマトグラフ媒体の裏面に、プラスチック等からなる支持体を設けることもできる。この支持体の性状は特に制限されるものではないが、目視判定によって測定結果の観察を行う場合には、支持体は、標識物質によりもたらされる色彩と類似しない色彩を有するものであることが好ましく、通常、無色又は白色であることが好ましい。
クロマトグラフ媒体には、任意で、被検物質を含む試料を添加するための試料添加部位(サンプルパッド等)、試料中の固形成分を除去する部位(固形成分分離部位等)、展開液を添加するための展開液添加部位、判定部位に捕捉されなかった標識試薬や展開液を吸い取る吸収部位(吸収パッド等)、測定が正常に行われたことを示す対照部位等を組み入れてもよい。これらの部位の部材は、毛管現象により試料溶液や展開液が移動できれば特に限定されず、一般的には、ニトロセルロース膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等の複数の多孔性物質からその目的に応じたものを選択して用い、第一試薬が固定化されたクロマトグラフ媒体と毛管で繋がるように配置する。
直接的に固定化する方法としては、物理吸着を利用しても良いし、共有結合によってもよい。一般にクロマトグラフ媒体がニトロセルロース膜又は混合ニトロセルロースエステル膜の場合、物理吸着を行うことができる。共有結合ではクロマトグラフ媒体の活性化には一般的に臭化シアン、グルタルアルデヒド、カルボジイミド等が用いられるが、いずれの方法も用いることができる。間接的に固定化する方法としては、不溶性微粒子に第一試薬を結合した後、クロマトグラフ媒体に固定化する方法がある。不溶性微粒子の粒径はクロマトグラフ媒体に捕捉されるが移動することのできないサイズのものを選択することができ、好ましくは平均粒径10μm程度以下の微粒子である。このような粒子として抗原抗体反応に使用されるものが種々知られている。本発明においては、感度調整の容易さ等の点から直接固定化の方が好ましい。また、クロマトグラフ媒体への第一試薬の固定化には、いろいろな方法が使用できる。例えば、マイクロシリンジ、調節ポンプ付きペン、インキ噴射印刷等、種々の技術が使用可能である。判定部位の形態としては特に限定されないが、円形のスポット、クロマトグラフ媒体の展開方向に垂直に延びるライン、数字、文字や+、−などの記号等として固定化することもできる。
さらに、必要に応じて、第一試薬を固定化した後のクロマトグラフ媒体に、ブロッキング処理を行うこともできる。ブロッキング処理に用いることのできるブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン、スキムミルク、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質の他、Blocking Peptide Fragment(TOYOBO)や親水性高分子ポリマー等の市販のブロッキング剤が挙げられる。
コロイド状金属粒子として、例えばコロイド状金粒子を用いる場合には、市販のものを用いてもよい。あるいは、常法、例えば塩化金酸をクエン酸ナトリウムで還元する方法によりコロイド状金粒子を調製することができる。
本発明で用いる第二試薬を標識物質で標識化する方法としては、物理吸着や化学結合などの公知の方法により行うことができる。例えば、第二試薬をコロイド状金粒子で標識化する場合は、金粒子がコロイド状に分散した溶液に第二試薬である抗体を加えて物理吸着させた後、牛血清アルブミン溶液や前述の市販ブロッキング剤などを添加して抗体が未結合である粒子表面をブロッキングすることにより調製する。
本発明で用いられるAIV H5N1に特異的な抗体は、AIV H5N1抗原を特異的に認識する限りにおいて、抗体の供給源、またはそれが作製される様式に関して限定することを意図していない。また、AIV H5N1に特異的なエピトープに対して特異的な反応性を有する限り、Fab、Fab’、 F(ab’)2、又はFv等のフラグメントも用いることもでき、抗体の可変領域のCDR部分とFR部分の由来が異なっていてもよい。
抗体をモノクローナル抗体として得る場合には、免疫原を投与された免疫動物から脾細胞を採取し、公知の標準的な手法を用いてミエローマ細胞と融合して、抗体産生ハイブリドーマを作製する。あるいは、抗体遺伝子のライブラリをAIV H5N1抗原でスクリーニングすることにより、ハイブリドーマを作製することなく、モノクローナル抗体を得ることもできる。モノクローナル抗体の取得に用いられるライブラリでは、抗体タンパク質とそれをコードする遺伝子がディスプレイ技術により1対1で対応付けられており、目的とする抗原に対してスクリーニングすることにより、直ちに所望の抗体の遺伝子を取得することができる。ディスプレイ技術としては、ファージディスプレイが代表的なものであるが、イーストディスプレイ、バクテリアディスプレイ等の細胞を用いる方法の他、cDNAディスプレイ、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ等の無細胞翻訳系を用いる方法も知られている。
A型インフルエンザウイルスH5N1亜型を特異的に認識する抗体をスクリーニングする方法としては、AIV H5N1、AIV H5N1が感染した細胞又はAIV H5N1のHA等を抗原として用い、免疫蛍光アッセイ(IFA)、ウエスタンブロッティング等により、他の亜型ウイルスと比較してAIV H5N1抗原により強い反応性を示す抗体を選択する方法が挙げられる。特に、H5N1 HAのAsp59を含む立体構造的なエピトープを認識する抗体をスクリーニングするためには、AIV H5N1又はAIV H5N1が感染した細胞等のHAタンパク質の立体構造を保持しているものを抗原として用い、ハイブリドーマの培養上清又はライブラリのメンバーが抗体4G6と抗原の結合を阻害する活性を指標として、抗体を選択することができる。他のスクリーニング方法としては、H5N1に由来するHAを発現する形質転換細胞と、当該HAのAsp59を他のアミノ酸に置換したH5N1 HA変異体を発現する形質転換細胞を用いて、Asp59を有するH5N1 HAを発現する細胞への特異的な反応性を指標として、抗体をスクリーニングすることもできる。
抗体4G6の認識エピトープを詳細に解析するために、H5N1-HA及びH5N3-HA由来の6のキメラpPolI-HAプラスミドを、H5N1-HA及びH5N3-HAの1-86 aa、1-194 aa又は1-340 aaのドメインを交換することで構築した。一連のpPolI-キメラHAプラスミドをpCAGGS-PB2、-PB1、-PA及び-NPと共に293T細胞にトランスフェクトし、細胞を固定してIFAの抗原として用いた。抗体4G6は、H5N1-HA(1-86 aa)−H5N3-HA(87-567 aa)キメラHA、H5N1-HA(1-194 aa)−H5N3-HA(195-567 aa)キメラHA及びH5N1-HA(1-340 aa)−H5N3-HA(341-567 aa)キメラHAを発現する293T細胞を認識したが、H5N3-HA(1-86 aa)−H5N1-HA(87-567 aa)キメラHA、H5N3-HA(1-194 aa)−H5N1-HA(195-567 aa)キメラHA及びH5N3-HA(1-340 aa)−H5N1-HA(341-567 aa)キメラHAを発現する293T細胞を認識しなかった。すなわち、抗体4G6は、H5N1に由来するHAの1-86 aa領域の立体構造的なエピトープと結合した。A/crow/Kyoto/53/2004(H5N1)、A/Thailand/Kan353/2004(H5N1)、A/Duck/Hong Kong/342/78(H5N2)及びA/Duck/Hong Kong/820/80(H5N3)それぞれのHAの1-86 aa領域における推定アミノ酸配列のアラインメントを行ったところ、H5N1 HAにおいてH5N2 HA及びH5N3 HAとはアミノ酸が異なる部位が3箇所見出された(51、59及び61位)。そこで、これらの部位のH5N1亜型のアミノ酸を、それぞれH5N2亜型又はH5N3亜型の対応するアミノ酸と同一になるよう置換した、1アミノ酸置換変異HAタンパク質(K51R、D59S又はD61N)を作製し、293T細胞で発現させた。この発現細胞に対してIFAを行ったところ、抗体4G6は、H5N1 HAの51位のLysをArgに置換した変異体及び61位のAspをAsnに置換した変異体を認識したものの、H5N1 HAの59位のAspをSerに置換した変異体は認識しなかった。このことから、抗体4G6は、H5N1亜型ウイルスのHAの59番目のアミノ酸であるアスパラギン酸を含む立体構造的なエピトープを認識する抗体であることが示された。
モノクローナル抗体4G6を産生するマウス−マウスハイブリドーマ4G6は、日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託日2009年5月21日、受託番号FERM BP-11130で寄託されている。
AIV H5N1に結合する抗体は、H5亜型サブタイプを有するインフルエンザウイルス又はウイルス感染細胞等を免疫原として公知の標準的な方法で作製することができる。また、AIV H5N1ヘムアグルチニンのHA1ドメインの273-342aa領域に存在する連続的な配列を認識する抗体は、マウス−マウスハイブリドーマ3C11、4C12、3H4及び3H12が産生する抗体として得ることもできる(特許文献3)。これらのハイブリドーマのうち、3C11と4C12は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、それぞれ受託番号FERM P-21027、FERM P-21028で寄託されている。また、3H4と3H12は日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託日2006年9月20日でそれぞれ受託番号FERM P-21029、FERM P-21030として寄託されたあと、2009年8月20日付けでそれぞれ受託番号FERM BP-11173、FERM BP-11174として国際寄託へ移管されている。
本発明の展開液は、通常、水を溶媒とし、リン酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩、HEPES、グッド等の緩衝剤、塩化ナトリウムなどの無機塩を含有することが好ましい。さらに、必要に応じて、ウシ血清アルブミン(BSA)等のタンパク質成分(含有量は通常0.01重量%〜10重量%)、防腐剤等を含んでいてもよい。本発明で用いられる展開液は、さらに非イオン性界面活性剤を含有し、より好ましくはさらにポリビニルピロリドンを代表とする酸素原子含有極性基を有するビニル系水溶性ポリマーを含有する。
これらのビニル系水溶性ポリマーは、本発明の効果が損なわれない程度に、酢酸ビニル、アルキル(メタ)アクリレートなどの他のビニル系モノマーが、例えば50モル%以下、好ましくは30モル%以下、特に好ましくは15モル%以下の割合で共重合されたものであってもよい。
好ましい具体例としては、ポリビニルピロリドン(以下、PVPともいう。)、ジメチルアクリルアミド/ビニルピロリドン共重合体(ジメチルアクリルアミドの共重合割合が50モル%以下のもの)、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体(ビニルアルコールの共重合割合が50モル%以下のもの)、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体(酢酸ビニルの共重合割合が20モル%以下のもの)などを挙げることができる。
これらのビニル系水溶性ポリマーの分子量は、通常1万〜100万、特に10万〜100万であることが好ましく、20万〜50万であることがより好ましい。また、ビニル系水溶性ポリマーの濃度は、展開液全体の重量に対して0.01〜5.0重量%であることが好ましく、0.1〜3.0重量%、さらには0.5〜2.0重量%であることがより好ましい。
先の出願の明細書中では、被検物質としてインフルエンザウイルス核タンパク質又はヒトヘモグロビンタンパク質を検出するイムノクロマトグラフ法で検討が行われた。非イオン性界面活性剤であるTween20を展開液に添加すると測定感度が上昇し、さらに酸素原子含有極性基を有するビニル系水溶性ポリマーであるPVPを展開液に添加するとその効果が増強された。一方、イオン性界面活性剤であるコール酸ナトリウムを展開液に添加した場合には、有意な測定感度の上昇は見られなかった。また、水溶性ポリマーとしてカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC・Na)又はポリエチレングリコール(PEG)を用いた場合には、被検物質を含まない陰性試料において顕著な非特異的反応があった。展開液に加えられた非イオン性界面活性剤及び酸素原子含有極性基を有するビニル系水溶性ポリマーの奏する効果は、被検物質がヒトヘモグロビンタンパク質であるイムノクロマトグラフ法の場合にも同様に奏された。展開液に非イオン性界面活性剤及びPVPに代表される酸素原子含有極性基を有するビニル系水溶性ポリマーを添加することで、被検物質を含む陽性試料を測定した際の判定部位での発色強度(シグナル)は増強するが、被検物質を含まない陰性試料を測定した際の発色強度(ノイズ)は抑制され、良好なシグナル/ノイズ比を得ることができた。展開液中のビニル系水溶性ポリマーの濃度は、非イオン性界面活性剤の存在下(例えば0.05重量% Tween20及び0.3重量% TritonX-100)において、0.3重量%で有意な感度の上昇が観察され、0.6重量%及び1.5重量%で用いた場合には、その効果が顕著であった。これらの結果をまとめて次の表1に示す。
イムノクロマトグラフ法の標識試薬に標識物質としてラテックス粒子又はコロイド状金属粒子等の不溶性担体が用いられる場合、それらの粒子の表面は負に荷電していることが知られている(例えば、特開平5−133956号公報参照)。例えば、コロイド状金属粒子では、その製造過程で添加される還元剤由来のアニオンがその表面に吸着しており、相互の凝集が妨げられて分散した状態を保っている。そして、この状態のコロイド状金属粒子に、表面電荷を中和しない程度の低濃度の界面活性剤を添加すると、粒子が鎖状に数個程度凝集することが知られている(特開2006−58781号公報)。本発明で用いられる展開液は、非イオン性界面活性剤に加えて、粒子の分散剤としても知られるビニル系水溶性ポリマーを含有する。そして、両者の効果のバランスにより、クロマトグラフ媒体上の判定部位において、間接的に捕捉された不溶性担体が数個程度凝集することにより、判定部位で観察される陽性シグナルの増幅が起きているのではないかと考えられる。特に、コロイド状金属粒子においては、凝集によって判定部位に蓄積する粒子の数が増加することにより、目視判定される発色強度が増強するのみならず、粒子の光吸収スペクトル特性が変化することにより、判定部位においてより明瞭な陽性シグナルを得ることができると考えられている。
試料が液体である場合には、クロマトグラフ媒体に直接適用することもできるが、通常、試料は展開液に懸濁又は希釈して、クロマトグラフ媒体に接触させる。
本発明の1態様としては、被検物質を含む試料溶液を、予め標識試薬と混合し、液相中で被検物質−標識試薬複合体を形成した後、クロマトグラフ媒体と接触させる。試料溶液と共に又は遅れて、展開液をクロマトグラフ媒体と接触させる。展開液は移動相を構成し、被検物質−標識試薬複合体と共に移動(展開)する。被検物質−標識試薬複合体が、クロマトグラフ媒体の判定部位を移動する際に、固定化された第一試薬がこれを捕捉し、標識試薬が間接的に判定部位に結合することとなる。判定部位に存在する標識試薬を、標識物質が不溶性担体である場合には直接、標識物質が酵素である場合には基質を作用させ反応産物について、目視又はデンシトメーター等により、発色強度の確認を行うことで検出又は定量することができる。
本発明のさらなる態様では、標識試薬を、クロマトグラフ媒体における移動相の展開移動経路上、すなわち展開液が適用される端部と判定部位との間の領域に存在させることもできる。クロマトグラフ媒体に標識試薬を存在させる場合、標識試薬が展開液に速やかに溶解して毛管作用によって自由に移動できるように標識試薬を支持させるのが好ましい。支持させる部位には、それらの試薬の再溶解性を良好にするため、サッカロース、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース等の糖類、マンニトール等の糖アルコールを添加して塗布したり、これらの物質を予めコーティングしたりしておくこともできる。標識試薬を塗布し乾燥することによりクロマトグラフ媒体に存在させる場合には、クロマトグラフ媒体に直接行うこともできるし、別の多孔性物質、例えばセルロース濾紙、ガラス繊維濾紙、ナイロン不織布に塗布、乾燥し標識試薬保持部材を形成した後、第一試薬が固定化されたクロマトグラフ媒体と毛管で繋がるように配置してもよい。
先の検討では、非イオン性界面活性剤を含む展開液として、120mM NaCl、50mM Tris-HClに0.7重量%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.3重量% TritonX-100、0.1重量% Tween20を加えたもの(展開液A)を用いた。この展開液に、さらなる添加剤として、ポリビニルピロリドンを用いることを検討した。結果を表5及び図1に示す。
これらの結果からも明らかなように、展開液を調整することにより、現在市販されているヒトのインフルエンザ感染の迅速診断キットの測定感度である、試料の添加後15分の時点において104pfu/mL濃度のウイルスを目視判定できるという感度で、H5N1亜型ウイルスの検出も可能となることが分かった。一方、展開液の組成を変えても106pfu/mL濃度のH5N2亜型ウイルス又はH5N3亜型ウイルスは検出されなかった。
1.クロマトグラフ媒体上への判定部位の作製
25×2.5cmのニトロセルロース膜(ミリポア社製:HF120)に、抗体塗布機(BioDot社製)を用いて、5重量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝液(pH7.4)で1.3mg/mLの濃度になるように希釈した抗高病原性インフルエンザウイルスA(H5N1)モノクローナル抗体3H4、3H12又は4G6のいずれか(第一試薬)を塗布し、42℃で60分間乾燥させ、クロマトグラフ媒体上へ判定部位を作製した。
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:平均粒子径60nm)0.5mLに0.1mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.4)を加え混和し、5mMリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈した抗高病原性インフルエンザウイルスA(H5N1)モノクローナル抗体3H4、3H12又は4G6のいずれか(第二試薬)を0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10mMリン酸緩衝液で希釈された10重量%のウシ血清アルブミン(BSA)を0.1mL加え、十分撹絆した後、8000×gで15分間遠心分離を行った。上清を除去した後、pH7.4の10mMリン酸緩衝液を1mL加えた。超音波破砕機を用いてコロイド状の標識試薬をよく分散させた後、8000×gで15分間遠心分離した。上清を除去し、前記リン酸緩衝液を加えて超音波破砕機にてよく分散し、標識試薬溶液とした。
上記作製した標識試薬溶液を16×100mmのグラスファイバー製パッド(ミリポア社製:GFCP203000)に均一に添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識試薬保持部材とした。次いで、バッキングシートから成る基材に、上記にて判定部位を作製したニトロセルロース膜、標識試薬保持部材、試料を添加する部分に用いるグラスファイバー製サンプルパッド(ポール社製:8000006801)、および展開した試料や標識試薬などを吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。最後に、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、クロマトグラフ媒体を作製した。
上記3にて作製したクロマトグラフ媒体を用いて、被検物質である高病原性インフルエンザウイルスA/crow/Kyoto/53(H5N1)を含む試料を用いてその存在の有無を測定した。すなわち、0.3重量%Triton X-100(登録商標、HLB値13.5)、0.1重量%Tween20(登録商標、HLB値16.7)、0.7重量%牛血清アルブミンと120mM塩化ナトリウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝溶液(pH8.0)から成る液を展開液(展開液A、表5参照)とし、ここにpH7.4の10mMリン酸緩衝生理食塩水で希釈された各種インフルエンザウイルスを加え120μLとしたものを検体とした。すなわち、106pfu/mL(表2)または104pfu/mL(表3)の高病原性インフルエンザウイルスA/crow/Kyoto/53(H5N1)を陽性検体、106pfu/mLのインフルエンザウイルスA/Puertorico/8/34(H1N1)(表4)を陰性検体として、クロマトグラフ媒体のサンプルパッド上に載せて展開させ、15分後に目視判定をした。判定部位におけるテストラインの赤い線を確認できるものを「+」、赤い線は確認できるが、非常に色が薄いものを「±」、赤い線を確認できないものを「−」とした。表2〜4に結果を示す。
第一試薬および第二試薬ともに抗高病原性インフルエンザウイルスA(H5N1)ポリクローナル抗体を用いたことを除いては、実施例1と同様に測定した。表2〜4に結果を示す。
第一試薬に抗体4G6を、第二試薬に抗体3H4を用いて、表5に記載の各種組成の展開液を使用し、被検物質として2ng/mLのH5N1 HAリコンビナントタンパク質(ABR社)を用い、イムノクロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)による発色強度測定を行ったことを除いては、実施例1と同様に測定した。表5及び図1に結果を示す。
第一試薬に抗体4G6を、第二試薬に抗体3H4を用いて、表5に記載の展開液A、C、FおよびHを使用し、被検物質である各種インフルエンザウイルス、すなわち106pfu/mL、105pfu/mL、104pfu/mLまたは103pfu/mLの高病原性インフルエンザウイルスA/crow/Kyoto/53/2004(H5N1)、106pfu/mL、105pfu/mL、104pfu/mLまたは103pfu/mLの高病原性インフルエンザウイルスA/chicken/Egypt/CL-61/2007(H5N1)、106pfu/mLのインフルエンザウイルスA/duck/HongKong/342/78(H5N2)、106pfu/mLのインフルエンザウイルスA/duck/HongKong/820/80(H5N3)またはインフルエンザウイルスA/Puertorico/8/34(H1N1)を用い、イムノクロマトリーダー(田中貴金属工業社製)による発色強度測定を行ったことを除いては、実施例1と同様に測定した。表6及び図2に結果を示す。
第一試薬に抗体4G6を、第二試薬に抗体3H4を用いて、表5に記載の展開液Hを使用し、105pfu/mLの表7に記載の各種インフルエンザウイルスを用い、目視判定と共にイムノクロマトリーダー(田中貴金属工業社製)による発色強度測定を行ったことを除いては、実施例1と同様に測定した。表7及び図3に結果を示す。
Claims (13)
- 第一試薬を判定部位に有するクロマトグラフ媒体、第二試薬と標識物質が結合した標識試薬及び展開液を含有し、イムノクロマトグラフ法によって試料中の被検物質を検出するためのキットであって、
第一試薬及び第二試薬の両方又はいずれか一方が、A型インフルエンザウイルスH5N1亜型を特異的に認識する抗体であり、当該A型インフルエンザウイルスH5N1亜型を特異的に認識する抗体が、H5N1亜型ウイルスのヘムアグルチニンの59番目のアミノ酸であるアスパラギン酸を含む立体構造的なエピトープを認識するモノクローナル抗体である、
A型インフルエンザウイルスH5N1亜型の検出キット。 - 第一試薬が、A型インフルエンザウイルスH5N1亜型を特異的に認識する抗体である、請求項1に記載の検出キット。
- H5N1亜型ウイルスのヘムアグルチニンの59番目のアミノ酸であるアスパラギン酸を含む立体構造的なエピトープを認識するモノクローナル抗体が、マウス−マウスハイブリドーマ4G6(受託番号FERM BP-11130)によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の検出キット。
- 他方の第一試薬又は第二試薬が、H5N1亜型インフルエンザウイルスのヘムアグルチニンHA1ドメインの273-342aa領域に存在する連続的なエピトープを認識するモノクローナル抗体である、請求項1から3のいずれかに記載の検出キット。
- H5N1亜型インフルエンザウイルスのヘムアグルチニンHA1ドメインの273-342aa領域に存在する連続的なエピトープを認識するモノクローナル抗体が、マウス−マウスハイブリドーマ3H4(受託番号FERM BP-11173)又はマウス−マウスハイブリドーマ3H12(受託番号FERM BP-11174)によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項4に記載の検出キット。
- 展開液が、HLB値が13〜18である非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の検出キット。
- 非イオン性界面活性剤の濃度が0.1〜1.0%である、請求項6に記載の検出キット。
- 展開液が、さらに酸素原子及び窒素原子含有極性基を有するビニル系水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の検出キット。
- ビニル系水溶性ポリマーの濃度が0.5〜2.0%である、請求項8に記載の検出キット。
- ビニル系水溶性ポリマーがポリビニルピロリドンである、請求項8又は9に記載の検出キット。
- 標識物質が、不溶性担体である、請求項1から10のいずれかに記載の検出キット。
- 不溶性担体が、コロイド状金粒子である、請求項11に記載の検出キット。
- 試料をクロマトグラフ媒体に接触させる工程、標識試薬を試料と同時に又は試料に次いでクロマトグラフ媒体に接触させる工程、及び、展開液により試料及び標識試薬を展開する工程を含有する、請求項1から12のいずれかに記載の検出キットを用いた試料中のA型インフルエンザウイルスH5N1亜型を検出する方法。
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