<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるTFT1を備えるTFTアレイ基板20の構成を示す平面図である。図2は、図1に示すTFT基板20の画素部21の構成を示す平面図である。図3は、図2の切断面線A−A、B−B、C−Cから見た断面図である。図3では、図2の切断面線A−A、B−B、C−Cから見た断面図を並べて示す。
本実施の形態では、TFTアレイ基板20として、表示素子に液晶を用いる液晶表示装置用のアクティブマトリックス型TFTアレイ基板(以下「TFT基板」という場合がある)、より詳細には、ゲートドライバを内蔵したTFT基板を例に挙げて説明する。TFT基板20は、画素部21およびゲートドライバ部22を備えて構成される。図1では図示を省略するが、TFT1は、画素部21およびゲートドライバ部22に形成される。画素部21では、複数のTFT1が、マトリックス状に配置される。画素部21には、ゲート配線33およびソース配線40が形成される。ゲート配線33およびソース配線40は、各TFT1に電気的に接続される。画素部21に形成されるTFT1と、ゲートドライバ部22に形成されるTFT1とは、同一の構成であるので、以下では、画素部21に形成されるTFT1を代表として説明する。
図3に示すように、TFT基板20は、透明絶縁性基板31、ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34、補助容量電極35、ゲート絶縁膜36、活性層37、ソース電極38、ドレイン電極39、ソース配線40、ソース端子部41、層間絶縁膜42、透明画素電極43、ゲート端子パッド44およびソース端子パッド45を備えて構成される。ゲート電極32、ゲート絶縁膜36、活性層37、ソース電極38、ドレイン電極39および層間絶縁膜42は、TFT1を構成する。
透明絶縁性基板31は、ガラスおよびプラスチックなどの透光性絶縁材料から成る。透明絶縁性基板31上、具体的には、透明絶縁性基板31の厚み方向一方側の表面部には、ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34および補助容量電極35が少なくとも形成されている。ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34および補助容量電極35は、金属材料から成る金属膜によって形成される。ゲート配線33は、ゲート電極32と電気的に接続される。ゲート端子部34は、ゲート配線33と電気的に接続される。ゲート端子部34には、ゲートドライバ部22から、映像の走査信号が入力される。
ゲート電極32の近傍には、ゲート絶縁膜36を介して、TFT1の構成要素である活性層37が設けられる。活性層37は、チャネル層60と、N型半導体層61とを含む。N型半導体層61は、N型不純物を添加した非晶質シリコンから成るN型非晶質シリコン膜によって実現される。以下、N型半導体層61を、N型非晶質シリコン膜61という場合がある。
チャネル層60は、不純物が添加されていないノンドープの半導体層である。チャネル層60は、シリコン半導体層であり、不純物が添加されていないノンドープの微結晶シリコン膜62と、不純物が添加されていないノンドープの非晶質シリコン膜(以下「i型非晶質シリコン膜」という)63とを含む。本実施の形態では、チャネル層60は、微結晶シリコン膜62とi型非晶質シリコン膜63との2層構造のシリコン半導体層である。ここで、「微結晶シリコン膜」とは、結晶相と非晶質相との混合相を呈するシリコン膜をいう。
微結晶シリコン膜62は、ゲート絶縁膜36を介して、ゲート電極32上に設けられる。換言すれば、微結晶シリコン膜62は、ゲート電極32を覆う部分のゲート絶縁膜36上、具体的には、ゲート電極32を覆う部分のゲート絶縁膜36の厚み方向一方側の表面部に設けられる。すなわち、微結晶シリコン膜62は、ゲート絶縁膜36に接して設けられる。i型非晶質シリコン膜63は、微結晶シリコン膜62上、具体的には微結晶シリコン膜62の厚み方向一方側の表面部に設けられる。N型非晶質シリコン膜61は、i型非晶質シリコン膜63上、具体的にはi型非晶質シリコン膜63の厚み方向一方側の表面部に設けられる。
ゲート絶縁膜36は、第1ゲート絶縁膜50と第2ゲート絶縁膜53とを含む。第1ゲート絶縁膜50は、透明絶縁性基板31上、具体的には透明絶縁性基板31の厚み方向一方側の表面部に、ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34および補助容量電極35を覆うように設けられる。第1ゲート絶縁膜50は、本実施の形態では、窒化シリコン(SiN)から成る窒化シリコン膜である。第2ゲート絶縁膜53は、第1ゲート絶縁膜50上、具体的には、第1ゲート絶縁膜50の厚み方向一方側の表面部に設けられる。第2ゲート絶縁膜53は、酸化シリコンから成る酸化シリコン膜である。
このように本実施の形態では、ゲート絶縁膜36は、第1ゲート絶縁膜50である窒化シリコン膜と、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜との2層構造を有する。ゲート絶縁膜36は、第1ゲート絶縁膜50である窒化シリコン膜でゲート電極32に接し、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜で活性層37の微結晶シリコン膜62に接する。
第2ゲート絶縁膜53は、二酸化シリコン(SiO2)から成る二酸化シリコン(SiO2)膜51と、酸化シリコンの酸素原子(O)とシリコン原子(Si)との組成比(O/Si)が2未満、すなわち組成式SiOxのxが2未満である酸化シリコンから成る低酸化シリコン膜(以下「SiOx膜」という場合がある)52とを含む。本実施の形態では、SiOx膜52は、酸素原子(O)とシリコン原子(Si)との組成比(O/Si)が1.2以上2未満、すなわち組成式SiOxのxが1.2以上2未満である酸化シリコンから成る。SiOx膜52は、第2ゲート絶縁膜53の微結晶シリコン膜62に接する部分である上部、具体的には、第2ゲート絶縁膜53の厚み方向一方側の表面部を構成する。したがって本実施の形態では、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜の微結晶シリコン膜62と接する部分は、組成式SiOx(xは1.2以上2未満の数)で表される組成を有する。
ソース電極38およびドレイン電極39は、N型非晶質シリコン膜61と直接に電気的に接続される。ソース電極38およびドレイン電極39は、金属材料から成る金属膜によって形成される。N型非晶質シリコン膜61は、チャネル層60上の一部分が除去されて、ソース電極38に接する部分であるソース層61aと、ドレイン電極39に接する部分であるドレイン層61bとに分離されている。このように本実施の形態のTFT1は、チャネル層60上において直接、ソース層61aおよびドレイン層61bがパターンエッチングされた、いわゆるチャネルエッチ型のボトムゲート構造の薄膜トランジスタである。ボトムゲート構造の薄膜トランジスタを、逆スタガ型薄膜トランジスタともいう。
ソース電極38とドレイン電極39とが分離され、さらにN型非晶質シリコン膜61の一部分が除去されて形成された領域を、TFTチャネル部46という。すなわち、ソース電極38およびドレイン電極39間、ならびにN型非晶質シリコン膜61のソース層61aおよびドレイン層61b間は、TFTチャネル部46において分離されている。
ソース配線40は、第2ゲート絶縁膜53のSiOx膜52上、具体的にはSiOx膜52の厚み方向一方側の表面部に設けられ、ソース電極38と電気的に接続される。ソース端子部41は、第2ゲート絶縁膜53のSiOx膜52上、具体的にはSiOx膜52の厚み方向一方側の表面部に設けられ、ソース配線40と電気的に接続される。ソース端子部41には、外部から映像信号が入力される。
層間絶縁膜42は、たとえばSiNから成り、TFTチャネル部46を含む基板全体を覆うように形成される。層間絶縁膜42内には、層間絶縁膜42の膜厚方向に貫通して、下層のドレイン電極39にまで達する画素ドレインコンタクトホール47が形成されている。また層間絶縁膜42内には、層間絶縁膜42の膜厚方向に貫通して、下層のゲート端子部34にまで達するゲート端子部コンタクトホール48が形成されている。また層間絶縁膜42内には、層間絶縁膜42の膜厚方向に貫通して、下層のソース端子部41にまで達するソース端子部コンタクトホール49が形成されている。
透明画素電極43は、画素ドレインコンタクトホール47を介してドレイン電極39と電気的に接続される。ゲート端子パッド44は、ゲート端子部コンタクトホール48を介してゲート端子部34と電気的に接続される。ソース端子パッド45は、ソース端子部コンタクトホール49を介してソース端子部41と電気的に接続される。
以上のように構成されるTFT基板20は、液晶表示装置に用いられる。液晶表示装置は、TFT基板20と、カラー表示用のカラーフィルタおよび対向電極などを具備した不図示の対向基板とを、セルギャップと呼ばれる予め定める間隙を空けて貼り合わせ、この間隙に液晶を注入して封止することによって製造される。TFT基板20は、液晶表示装置に限定されず、たとえばディスプレイ用途の光学表示用装置などの他の半導体デバイスに用いられてもよい。
次に、本発明の第1の実施の形態におけるTFT1の製造方法について説明する。本実施の形態では、TFT1の製造方法を用いたTFT基板20の製造方法について説明する。図4〜図8は、本発明の第1の実施の形態におけるTFT基板20の製造方法を説明するための図である。図4〜図8では、図3と同様に、TFT基板20の画素部21となる部分を示す。図4〜図8は、図2の切断面線A−A、B−B、C−Cから見た断面図に相当する。
図4は、SiOx膜52の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。まず、ガラスおよびプラスチックなどの透光性絶縁材料から成る透明絶縁性基板31を、洗浄液または純水を用いて洗浄した後、透明絶縁性基板31上に金属膜(以下「メタル膜」という場合がある)を成膜する。その後、第1回目のフォトリソグラフィプロセスによってメタル膜をパターニングして、ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34および補助容量電極35を形成する。
次いで、ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34および補助容量電極35を覆うように、第1ゲート絶縁膜50として窒化シリコン膜を成膜する。次いで、第1ゲート絶縁膜50上に二酸化シリコン(SiO2)膜51を成膜した後、SiO2膜51上に低酸化シリコン(SiOx)膜52を形成する。このようにして酸化シリコン膜から成る第2ゲート絶縁膜53を形成し、第1ゲート絶縁膜50と第2ゲート絶縁膜53とを含むゲート絶縁膜36を形成する。第2ゲート絶縁膜53の膜厚、すなわちSiO2膜51およびSiOx膜52の合計膜厚は、100nm以下に選ばれる。
SiO2膜51およびSiOx膜52は、以下のようにして形成する。SiO2膜51は、プラズマCVD装置で、たとえば、基板温度を200〜400℃とし、圧力を100〜200Paとし、周波数を13.56MHzとし、パワー密度を0.1W/cm2とし、SiH4ガスの流量を90sccmとし、N2Oガスの流量を220sccmとして堆積することによって形成することができる。ここで、sccm(Standard cc per minute)とは、気体の流量(cc/min)を表す単位であり、1分間あたりに流れる気体の体積を0℃かつ1atm(101325Pa)の状態に換算したときの気体の流量を表す。
SiOx膜52は、SiO2膜51の形成後、SiO2膜51の形成に用いたプラズマCVD装置で、真空を保持したまま連続で、たとえば、基板温度を200〜400℃とし、圧力を100〜200Paとし、周波数を13.56MHzとし、パワー密度を0.1〜0.5W/cm2とし、SiH4ガスの流量を130sccmとし、N2Oガスの流量を220sccmとして堆積することによって形成することができる。
このように、SiO2膜51とSiOx膜52とは、SiH4ガスとN2Oガスとの流量比を変化させることによって作り分けることができる。具体的には、N2Oガスの流量に対するSiH4ガスの流量の比率(SiH4/N2O)を90/220=0.40程度、すなわちSiH4ガスの流量をN2Oガスの流量の0.40倍程度にして堆積することによって、SiO2膜51を形成することができる。またN2Oガスの流量に対するSiH4ガスの流量の比率(SiH4/N2O)を100/220〜160/220=0.45〜0.73程度、すなわちSiH4ガスの流量をN2Oガスの流量の0.45倍〜0.73倍程度にして堆積することによって、組成式SiOxのxが1.2以上2未満であるSiOx膜52を形成することができる。
図5は、微結晶シリコン膜62、i型非晶質シリコン膜63およびN型非晶質シリコン膜61のパターニングが終了した段階の状態を示す断面図である。SiOx膜52の形成後は、SiOx膜52上に、半導体能動膜となる微結晶シリコン膜62と、ノンドープの非晶質シリコン膜であるi型非晶質シリコン膜63と、N型不純物を添加した非晶質シリコン膜であるN型非晶質シリコン膜61とを、この順に順次成膜する。微結晶シリコン膜62は、SiOx膜52に接するように成膜される。
微結晶シリコン膜62は、シラン(SiH4)ガスと水素(H2)ガスとの混合ガスによって成膜される。具体的に述べると、微結晶シリコン膜62は、プラズマCVD装置で、たとえば、基板温度を200〜400℃とし、圧力を100〜150Paとし、周波数を13.56MHzとし、パワー密度を0.1W/cm2とし、SiH4ガスとH2ガスとの流量比を、H2ガスの流量に対するSiH4ガスの流量の比率(SiH4/H2)で200〜300、すなわちH2ガスの流量を1としたときにSiH4ガスの流量を200〜300として堆積することによって形成することができる。
N型非晶質シリコン膜61の形成後は、第2回目のフォトリソグラフィプロセスによって、微結晶シリコン膜62、i型非晶質シリコン膜63およびN型非晶質シリコン膜61を、TFT1の構成要素となる形状にパターニング形成する。このようにしてゲート絶縁膜36上に、微結晶シリコン膜62およびi型非晶質シリコン膜63を含むチャネル層60と、N型非晶質シリコン膜61とを含む活性層37Aを形成する。ここで形成された活性層37Aは、後述する図6に示す工程で、N型非晶質シリコン膜61がソース層61aとドレイン層61bとに分離されて、前述の図3に示す活性層37となる。
図6は、TFTチャネル部46の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして活性層37Aを形成した後、活性層37Aを含む基板の厚み方向一方側全体を覆うように、ソース電極38およびドレイン電極39となる金属膜、たとえばアルミニウム(Al)合金膜を成膜する。その後、第3回目のフォトリソグラフィプロセスによって金属膜およびその下層のN型非晶質シリコン膜61をパターニングして、ソース電極38、ドレイン電極39、ソース配線40およびソース端子部41を形成するとともに、N型非晶質シリコン膜61をソース層61aとドレイン層61bとに分離する。これによって、TFTチャネル部46を形成するとともに、前述の図3に示す活性層37を形成する。このようにして活性層37上に、ソース電極38およびドレイン電極39を形成する。
図7は、画素ドレインコンタクトホール47、ゲート端子部コンタクトホール48およびソース端子部コンタクトホール49の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてTFTチャネル部46を形成した後、TFTチャネル部46を含む基板の厚み方向一方側全体を覆うように、パッシベーション膜として層間絶縁膜42を成膜する。層間絶縁膜42としては、たとえばSiN膜を成膜する。
その後、第4回目のフォトリソグラフィプロセスによって層間絶縁膜42をパターニングする。これによって、層間絶縁膜42を貫通してドレイン電極39の表面まで達する画素ドレインコンタクトホール47と、層間絶縁膜42を貫通してゲート端子部34の表面まで達するゲート端子部コンタクトホール48と、層間絶縁膜42を貫通してソース端子部41の表面まで達するソース端子部コンタクトホール49とを少なくとも形成する。画素ドレインコンタクトホール47、ゲート端子部コンタクトホール48およびソース端子部コンタクトホール49は、1回のフォトリソグラフィプロセスで同時に形成することができる。
図8は、透明画素電極43、ゲート端子パッド44およびソース端子パッド45のパターン形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして形成された画素ドレインコンタクトホール47、ゲート端子部コンタクトホール48およびソース端子部コンタクトホール49の内表面を含む基板の厚み方向一方側全体を覆うように、透明画素電極43、ゲート端子パッド44およびソース端子パッド45となる透明導電性膜を成膜する。透明導電性膜としては、たとえばスズを添加したインジウム酸化物(Indium Tin Oxide;略称:ITO)膜を成膜する。
次いで、第5回目のフォトリソグラフィプロセスによって透明導電性膜をパターニングする。これによって、画素ドレインコンタクトホール47を介して下層のドレイン電極39と電気的に接続するように透明画素電極43を形成する。また、ゲート端子部コンタクトホール48を介して下層のゲート端子部34に電気的に接続されるゲート端子パッド44のパターンを形成する。またソース端子部コンタクトホール49を介して下層のソース端子部41に電気的に接続されるソース端子パッド45のパターンを形成する。以上の手順によって、液晶表示装置用途として好適に用いられる前述の図3に示すTFT基板20が完成する。
完成したTFT基板20には、約200〜350℃の温度で熱処理を加えてもよい。これによって、TFT基板20全体に蓄積された静電荷および応力などを除去または緩和することができる。またゲート電極32、ソース電極38およびドレイン電極39などを構成するメタル膜の電気的比抵抗を下げることができる。したがって、TFT特性を向上して安定化させることができる。本実施の形態では、画素部21におけるTFT1の製造方法について説明したが、画素部21へのTFT1の形成と同時に、ゲートドライバ部22においてもTFTが形成される。
以上のように本実施の形態によれば、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜(以下、酸化シリコン膜53という場合がある)の微結晶シリコン膜62と接する部分は、組成式SiOx(xは1.2以上2未満の数)で表される組成を有する低酸化シリコン(SiOx)膜52で構成される。つまり、酸化シリコン膜53は、微結晶シリコン膜62と接する部分が、組成式SiOx(xは1.2以上2未満の数)で表される組成を有するように形成される。これによって、酸化シリコン膜53の微結晶シリコン膜62が形成されるべき表面であるSiOx膜52の表面を、結晶成長核である酸素欠損が存在する状態にすることができる。
このSiOx膜52に接するように微結晶シリコン膜62を形成するので、酸化シリコン膜53上に微結晶シリコン膜62を高密度に成長させることができ、結晶性に優れた微結晶シリコン膜62を形成することができる。これによって、ボイドによるオン特性の低下を抑えて、酸化シリコン膜53を含むゲート絶縁膜36、および微結晶シリコン膜62を含む活性層37を設けることができる。酸化シリコン膜53を含むようにゲート絶縁膜36を構成することによって、ゲート絶縁膜36へのホットキャリアの注入を防ぐことができるので、ホットキャリア劣化を抑制することができる。また微結晶シリコン膜62を含むように活性層37を構成することによって、微結晶シリコン膜62を含まない場合に比べて、しきい値電圧の経時変化を小さく抑えることができる。したがって、しきい値電圧の経時変化およびホットキャリア劣化が可及的に小さく、かつオン特性の低下が可及的に小さいTFT1を実現することができる。
以上のように、本実施の形態のTFT1である微結晶シリコンTFTは、充分なオン特性を確保しながら、大きな駆動電圧に対して劣化が少ない。したがって、本実施の形態のTFT1を用いることによって、TFTの書込み不足に起因する表示不良および回路動作不良を発生させることなく、高寿命の液晶表示装置を実現することができる。
表2に、酸化シリコン膜の成膜条件と、その成膜条件下で堆積した酸化シリコン膜の組成および屈折率、ならびに、その酸化シリコン膜上に堆積した微結晶シリコン膜の結晶化率との関係を示す。表2では、プラズマCVD装置にてSiH4ガスの流量(sccm)およびN2Oガスの流量(sccm)を変化させて酸化シリコン膜を堆積した場合について、酸化シリコン膜における酸素原子(O)の組成比x、すなわち組成式SiOxのxの値と、酸化シリコン膜の屈折率nと、酸化シリコン膜上に堆積した微結晶シリコン膜の結晶化率(%)とをまとめて示す。表2には、後述する本発明の第2の実施の形態におけるアルゴン(Ar)を添加した微結晶シリコン膜の結晶化率を、Ar添加結晶化率(%)として併せて示す。
表2に示すように、SiH4ガスの流量が増加すると、酸化シリコン膜の屈折率nは増大し、酸素原子(O)の組成比xは減少する。これは、SiH4ガスの流量が増大すると、酸化シリコン膜中のシリコン原子(Si)の割合が増えて、屈折率が増大するためである。したがって、本実施の形態および後述する本発明の第2の実施の形態の酸化シリコン膜の作製プロセスにおいては、酸化シリコン膜における酸素原子(O)の組成比xの値の代わりに、酸化シリコン膜の屈折率nの値を使用して、酸化シリコン膜の制御を行ってもよい。酸化シリコン膜の制御を酸素原子(O)の組成比xおよび屈折率nのいずれで行うかは重要ではなく、微結晶シリコン膜の結晶化率を向上させることが重要である。
表2に示すように、微結晶シリコン膜の結晶化率は、酸化シリコン膜における酸素原子(O)の組成比xが2.0より少しでも小さくなると、換言すれば酸化シリコン膜の屈折率nが1.46より少しでも大きくなると、大きく増加する。この理由について説明する。
573℃以下で安定なα石英の結晶格子は、一辺が4.9Åの正六角形であることが知られている。すなわちα石英を平面上から見た場合、結晶格子の一つの単位格子の面積は、62.38Å2となる。本実施の形態で形成される酸化シリコン膜も、このようなα石英の結晶を構成していると仮定して考察する。酸素原子(O)の組成比xが1.99の場合、SiO2が99個、SiOが1個ある、すなわち酸化シリコン分子100個中に1個の酸素欠損があることになる。これは、単位格子100個毎に1つの酸素欠損があることに等しいので、面積に換算すると、単位格子の100倍の面積である6238Å2=62.38nm2毎に1つの酸素欠損があることに等しい。この酸素欠損が、結晶成長核として機能する。
他方、微結晶シリコン膜において、得られる微結晶の大きさは、直径が10〜50nm程度である。直径が30nmの微結晶を平面視した場合の面積は、706.9nm2であり、直径が10nmの微結晶を平面視した場合の面積は、78.5nm2である。これらの値と前述の酸化シリコン膜における結晶成長核となる酸素欠損の形成面積とを比較すると、酸化シリコン膜における酸素原子(O)の組成比xが1.99の場合でも、充分な密度で結晶成長核ができていることが判る。酸素原子(O)の組成比xが1.99の場合、酸化シリコン膜の屈折率nは1.462になる。
したがって、酸化シリコン膜における酸素原子(O)の組成比xが2.0より少しでも小さくなると、または酸化シリコン膜の屈折率nが1.46より少しでも大きくなると、前述のように微結晶シリコン膜の結晶化率が大きく向上する。
以上のことから、本実施の形態では、低酸化シリコン(SiOx)膜52における酸素原子(O)の組成比xを2未満としている。屈折率nで表現すれば、本実施の形態では、低酸化シリコン(SiOx)膜52の屈折率nを、1.46を超える値とする。実際には、SiH4およびN2Oのガス流量制御の精度などから、実用上充分な再現性および均一性が得られる条件を考慮すると、SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xは、1.9以下、より詳細には1.89以下であることが好ましく、SiOx膜52の屈折率nは、1.48以上であることが好ましい。
また低酸化シリコン(SiOx)膜52における酸素原子(O)の組成比xが1.2未満になると、またはSiOx膜52の屈折率nが1.7を超えると、微結晶シリコン膜62の結晶化率はさらに向上するが、SiOx膜52中の欠陥準位密度が増大し、ホットキャリア劣化が増大するので、高寿命の液晶表示装置が得られなくなる。したがって、SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xは、1.2以上であることが好ましく、SiOx膜52の屈折率nは、1.7以下であることが好ましい。
以上のことから、本実施の形態では、SiOx膜52を、組成式SiOx(xは1.2以上2未満の数)で表される組成を有するように構成している。屈折率nで表現して、SiOx膜52を、屈折率nが1.46を超えて1.7以下となるように構成してもよい。
屈折率nで表現して、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜の微結晶シリコン膜62と接する部分を、屈折率nが1.46を超えて1.7以下(1.46<n≦1.7)である低酸化シリコン(SiOx)膜52で構成した場合でも、組成式SiOx(式中、xは1.2以上2未満の数である)で表される組成を有するSiOx膜52で構成した場合と同様の効果を達成することができる。
本実施の形態では、酸化シリコン膜における酸素原子(O)の組成比xに対する屈折率nの値は、文献等の値よりも若干大きくなっている。これは、本実施の形態において、酸化シリコン膜中に、N2Oガスからの窒素原子(N)が混入しているためである。屈折率nの値は、完全なSiO2である石英基板などを用いて校正を常に行うことが必要である。本実施の形態では、完全なSiO2である石英基板の組成xを2.0、屈折率nを1.46として校正した。
実施例として、プラズマCVD装置を用いて、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜を構成する二酸化シリコン(SiO2)膜51および低酸化シリコン(SiOx)膜52を形成した。SiO2膜51は、SiH4ガスの流量を90sccmとし、N2Oガスの流量を220sccmとして形成した。SiOx膜52は、SiH4ガスの流量を130sccmとし、N2Oガスの流量を220sccmとして形成した。SiO2膜51およびSiOx膜52はいずれも、基板温度を300℃とし、圧力を150Paとし、パワー密度を0.2W/cm2として形成した。
形成したSiO2膜51およびSiOx膜52について、組成式SiOxのxの値、すなわち酸素原子(O)の組成比xを、X線光電子分光(X-Ray Photoelectron Spectroscopy;略称:XPS)を用いて測定した。また屈折率nを、発振波長が633nmのヘリウムネオン(He−Ne)レーザを光源に用いた分光エリプソメトリ(spectro-elipsometory)を用いて測定した。SiO2膜51における酸素原子(O)の組成比xは、2.0であり、屈折率nは、1.46であった。SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xは、1.54であり、屈折率nは、1.55であった。
図9は、ゲート端子パッド44に断線不良が生じた状態を示す断面図である。本実施の形態では、前述のように、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜の膜厚、すなわちSiO2膜51の膜厚とSiOx膜52の膜厚との合計の膜厚は、100nm以下に選ばれる。酸化シリコン膜53の膜厚が大きい場合、エッチングレートの差によって、図9に示すようにゲート端子部34において、酸化シリコン膜53が突き出してしまう。これによって、ゲート端子パッド44に断線不良が生じやすい。
酸化シリコン膜53の膜厚、すなわちSiO2膜51およびSiOx膜52の合計膜厚を100nm以下としてSiO2膜51およびSiOx膜52を形成したところ、断線不良は確認されなかった。このとき、SiO2膜51の膜厚を80nmとし、SiOx膜52の膜厚を20nmとした。以上の結果から、本実施の形態では、前述のように第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜の膜厚、すなわちSiO2膜51の膜厚とSiOx膜52の膜厚との合計の膜厚を100nm以下としている。これによって、ゲート端子パッド44の断線不良を防ぐことができる。
以下、低酸化シリコン(SiOx)膜52の効果について、検証を行なった。二酸化シリコン(SiO2)膜51を成膜した後に、SiOx膜52を成膜した場合と、SiOx膜52を成膜しなかった場合とについて、微結晶シリコン膜62を成膜した直後に、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;略称:SEM、日立株式会社製、S−806)を用いて表面写真を観察した。
SiO2膜51は、プラズマCVD装置で、基板温度を300℃とし、圧力を150Paとし、パワー密度を0.2W/cm2とし、SiH4ガスの流量を90sccmとし、N2Oガスの流量を220sccmとして形成した。SiOx膜52は、プラズマCVD装置で、基板温度を300℃とし、圧力を150Paとし、パワー密度を0.2W/cm2とし、SiH4ガスの流量を130sccmとし、N2Oガスの流量を220sccmとして形成した。微結晶シリコン膜62は、プラズマCVD装置で、基板温度を250℃とし、圧力を150Paとし、SiH4ガスとH2ガスとの流量比(SiH4/H2)を300にして堆積した。
SiOx膜52を成膜しなかったサンプルの微結晶シリコンは、島状に成長しており、多数のボイドが観測された。これに対し、SiOx膜52を成膜したサンプルの微結晶シリコンは、高密度でかつ均一に成長しており、ボイドは殆ど観測されなかった。
さらに、これらのサンプルについて、ラマン分光装置(JASCO社製、MRS−3100)を用いて、微結晶シリコン膜62の結晶化率を測定した。SiOx膜52を成膜しなかったサンプルの結晶化率は40%であった。これに対し、SiOx膜52を成膜したサンプルでは、60%の結晶化率が得られた。
また、SiO2膜51を成膜した後に、SiOx膜52を成膜した場合と、SiOx膜52を成膜しなかった場合とについて、微結晶シリコンTFTをそれぞれ作製し、ゲート電圧−ドレイン電流特性を測定した。測定したTFTのチャネル幅は25μmであり、チャネル長は4μmである。測定結果から、SiOx膜52を成膜した場合には、SiOx膜52を成膜しなかった場合に比べて、ドレイン電圧を10V印加したときで約3.5倍の値のドレイン電流が得られることが確認された。このことから、SiOx膜52を成膜した場合には、良好なオン特性が得られることがわかった。
またSiOx膜52の組成を変えて微結晶シリコンTFTをそれぞれ作製し、ゲート電圧−ドレイン電流特性を測定した。測定結果から、ドレイン電圧を10V印加し、ゲート電圧を20V印加したときのドレイン電流であるオン電流について、SiOx膜52の組成に対する依存性(以下「SiOx組成依存性」という場合がある)を評価した。図10は、本発明の第1の実施の形態における微結晶シリコンTFTのオン電流のSiOx組成依存性を示すグラフである。図10において、縦軸は、SiOx膜52に代えて、組成式SiOxのxが2.0の酸化シリコン膜を用いて作製した微結晶シリコンTFTのオン電流(Ion(x=2.0))で規格化したオン電流の値Ion/Ion(x=2.0)を示し、横軸は、SiOx膜52の組成を示す。図10では、SiOx膜52の組成を、組成式SiOxのxの値、すなわちシリコン原子(Si)に対する酸素原子(O)の組成比(O/Si)で表す。
図10から、オン電流は、SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xが2.0よりも小さくなると増大し、酸素原子の組成比xが小さくなるにつれて大きくなることがわかる。これは、SiOx膜52における酸素原子の組成比xが小さくなるにつれて、SiOx膜52における結晶成長核である酸素欠損が増え、これによって、微結晶シリコン膜62が高密度に成長するためである。
また微結晶シリコン膜62の膜厚を10nmから70nmまで10nmずつ変化させた微結晶シリコンTFTをそれぞれ作製し、ゲート電圧−ドレイン電流特性を測定した。SiOx膜52における酸素原子の組成比xは1.54とした。測定結果から、ドレイン電圧を10V印加したときのドレイン電流の最小値であるオフ電流(Imin)について、微結晶シリコン膜62の膜厚に対する依存性(以下「微結晶シリコン膜厚依存性」という場合がある)を評価した。ドレイン電流が最小になるゲート電圧は、TFTによって異なっている。
図11は、本発明の第1の実施の形態における微結晶シリコンTFTのオフ電流の微結晶シリコン膜厚依存性を示すグラフである。図11において、縦軸は、微結晶シリコンの膜厚を50nmとしたTFTのオフ電流(Imin(50nm))で規格化したオフ電流の値Imin/Imin(50nm)を示し、横軸は、微結晶シリコン膜62の膜厚(nm)を示す。
微結晶シリコン膜62の膜厚が小さくなっても、オン電流は一定となるが、オフ電流は、図11に示すように微結晶シリコン膜62の膜厚によって変化する。微結晶シリコン膜62の膜厚が70nmから30nmまでの間では、膜厚を小さくするに従って、オフ電流の最小値が減少する傾向を示した。しかし、微結晶シリコン膜62の膜厚を30nm以下に小さくしても、オフ電流の最小値はあまり小さくならずに飽和傾向を示した。このことから、微結晶シリコン膜62の膜厚を30nm以下にすることで、オン特性を低下させずにリーク電流を小さくできることがわかる。
したがって、微結晶シリコン膜62の膜厚は、30nm以下であることが好ましい。微結晶シリコン膜62は、ホール移動度が大きいので、チャネル方向のオフ抵抗が小さく、リーク電流が増加する原因となる。微結晶シリコン膜62の膜厚を比較的小さく、具体的には30nm以下にすることによって、チャネル方向の抵抗を大きくすることができるので、リーク電流を減少させることができる。
また本実施の形態では、ゲート絶縁膜36は、ゲート電極32と第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜との間に介在される第1ゲート絶縁膜50である窒化シリコン膜(以下、窒化シリコン膜50という場合がある)を含んでおり、窒化シリコン膜50と酸化シリコン膜53との積層構造を有する。酸化シリコン膜の比誘電率は1.46であるのに対し、窒化シリコン膜の比誘電率は2.0であるので、前述のようにゲート絶縁膜36を窒化シリコン膜50と酸化シリコン膜53との積層構造にすることによって、酸化シリコン膜のみでゲート絶縁膜を構成する場合と比べて、ゲート絶縁膜36の誘電率が増大する。このため、同一膜厚で比較すると、酸化シリコン膜のみでゲート絶縁膜を構成する場合と比べて、積層構造の場合はオン電流を増大させることができる。したがって、ゲート絶縁膜36の膜厚を増大させずに、TFT1の性能を向上させることができる。
また本実施の形態では、活性層37は、微結晶シリコン膜62上に設けられるi型非晶質シリコン膜63を含んでおり、チャネル層60が、微結晶シリコン膜62とi型非晶質シリコン膜63との積層構造を有する。これによって、バンドギャップの不整合を抑えて、チャネル層60上にN型非晶質シリコン膜61を形成することができる。したがって、ゲート電極32に逆バイアス電圧を印加したときに、微結晶シリコン膜62とN型非晶質シリコン膜61との間で、バンド間トンネリングによるホール注入が起こることを防ぐことができるので、リーク電流を抑制することができる。
<第2の実施の形態>
図12は、本発明の第2の実施の形態におけるTFT基板20Aの画素部21Aの構成を示す平面図である。図13は、図12の切断面線A−A、B−B、C−Cから見た断面図である。本実施の形態のTFT基板20Aにおいて、前述の第1の実施の形態におけるTFT基板20の微結晶シリコン膜62を除くその他の構成は、第1の実施の形態におけるTFT基板20と同様であるので、異なる部分についてのみ説明し、同様の構成には同一の参照符を付して共通する説明を省略する。
本実施の形態のTFT基板20Aは、第1の実施の形態におけるTFT基板20に備えられるTFT1と同様の構成のTFT2を備える。本実施の形態のTFT2は、活性層72のチャネル層71を構成する微結晶シリコン膜として、アルゴン(Ar)を含有する微結晶シリコン膜70を備えている。本実施の形態のTFT2は、前述の第1の実施の形態におけるTFT1に備えられる微結晶シリコン膜62に代えて、Arを含有する微結晶シリコン膜70を備えている。微結晶シリコン膜70は、第2ゲート絶縁膜53を構成する低酸化シリコン(SiOx)膜52と接する部分、より詳細には微結晶シリコン膜70全体に、アルゴンを含有する。
次に、本発明の第2の実施の形態におけるTFT2の製造方法について説明する。本実施の形態におけるTFT2の製造方法は、第1の実施の形態におけるTFT2の製造方法と類似するので、同様の工程については説明を省略する。本実施の形態では、TFT2の製造方法を用いたTFT基板20Aの製造方法について説明する。図14および図15は、本発明の第2の実施の形態におけるTFT基板20Aの製造方法を説明するための図である。図14および図15では、図13と同様に、TFT基板20Aの画素部21Aとなる部分を示す。図14および図15は、図12の切断面線A−A、B−B、C−Cから見た断面図に相当する。
図14は、低酸化シリコン(SiOx)膜52の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。第1の実施の形態と同様に、まずガラス基板などの透明絶縁性基板31を、洗浄液または純水を用いて洗浄した後、透明絶縁性基板31上にメタル膜を成膜する。その後、第1回目のフォトリソグラフィプロセスで前記メタル膜をパターニングして、ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34および補助容量電極35を形成する。次いで、ゲート電極32、ゲート配線33、ゲート端子部34および補助容量電極35を覆うように、第1ゲート絶縁膜50を成膜した後、第1ゲート絶縁膜50上に、第2ゲート絶縁膜53となる二酸化シリコン(SiO2)膜51および低酸化シリコン(SiOx)膜52を成膜する。SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xは、たとえば1.54である。SiO2膜51とSiOx膜52との合計の膜厚は、100nm以下に選ばれる。
図15は、微結晶シリコン膜70、i型非晶質シリコン膜63およびN型非晶質シリコン膜61のパターニングが終了した段階の状態を示す断面図である。次いで、SiOx膜52上に、半導体能動膜となる、Arを含有する微結晶シリコン膜(以下「Ar含有微結晶シリコン膜」という場合がある)70と、ノンドープの非晶質シリコン膜であるi型非晶質シリコン膜63と、N型不純物を添加した非晶質シリコン膜であるN型非晶質シリコン膜61とを、この順に順次成膜する。
微結晶シリコン膜70は、プラズマCVD法を用いて、SiH4ガス、H2ガスおよびArガスを含む混合ガス、本実施の形態では、SiH4ガスとH2ガスとArガスとの混合ガスによって成膜する。微結晶シリコン膜70は、プラズマCVD法にて、SiH4ガスとH2ガスとArガスとの流量比(SiH4/H2/Ar)を1:150:150〜300、すなわちSiH4ガスの流量を1としたときにH2ガスの流量を150とし、Arガスの流量を200〜300とし、圧力を100〜150Paとし、パワー密度を0.05〜0.2W/cm2とし、成膜温度を200〜300℃として堆積することによって、形成することができる。
その後、第1の実施の形態と同様にして、第2回目のフォトリソグラフィプロセスによって、Ar含有微結晶シリコン膜70とi型非晶質シリコン膜63とN型非晶質シリコン膜61とを、TFT2の構成要素となる形状にパターニングして、活性層72Aを形成する。ここで形成された活性層72Aは、後の工程でN型非晶質シリコン膜61がソース層61aとドレイン層61bとに分離されて、前述の図13に示す活性層72となる。これ以降の製造工程は、前述の第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。以上のようにして、前述の図13に示すTFT2を備えるTFT基板20Aを製造する。
以上のように本実施の形態によれば、微結晶シリコン膜70は、SiH4ガス、N2OガスおよびArガスを含む混合ガスによって成膜される。これによって、微結晶シリコン膜70の結晶性を高め、結晶化率を向上させることができるので、TFT2のオン特性を向上させることができる。
また本実施の形態では、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜の膜厚、すなわちSiO2膜51とSiOx膜52との合計の膜厚は、100nm以下に選ばれる。酸化シリコン膜53の膜厚が大きい場合、エッチングレートの差によって、前述の図9に示すように、ゲート端子部34において、酸化シリコン膜53が突き出してしまう。これによって、ゲート端子パッド44に断線不良が生じやすい。
酸化シリコン膜53の膜厚、すなわちSiO2膜51とSiOx膜52との合計の膜厚を100nm以下としてSiO2膜51およびSiOx膜52を形成したところ、断線不良は確認されなかった。このとき、SiO2膜51の膜厚を80nmとし、SiOx膜52の膜厚を20nmとした。以上の結果から、本実施の形態では、前述のように第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜の膜厚、すなわちSiO2膜51の膜厚とSiOx膜52との合計の膜厚を100nm以下としている。これによって、ゲート端子パッド44の断線不良を防ぐことができる。
以下、Arを含有する微結晶シリコン膜70による効果について、検証を行った。Arを含有する微結晶シリコン膜70は、原料ガスであるSiH4ガスおよびH2ガスにArガスを混合した混合ガスを用いて、プラズマCVD法にて、SiH4ガス、H2ガス、Arガスの流量比(SiH4/H2/Ar)を1:150:150とし、圧力を150Paとし、パワー密度を0.06W/cm2とし、成膜温度を300℃として形成した。このとき、形成されたTFTチャネル部46の深さ方向の元素分布を、二次イオン質量分析計(Secondary Ion Mass Spectrometer;略称:SIMS、CAMECA社製、IMS−6F)を用いて調べたところ、微結晶シリコン膜70中にArが検出された。
また、混合ガス中にArを含有させた場合と、含有させなかった場合とについて、微結晶シリコン膜を成膜した直後に、SEM(日立株式会社製、S−806)を用いて表面写真を観察した。Arを含有させなかったサンプルおよび含有させたサンプルのいずれにおいても、微結晶シリコンは、高密度でかつ均一に成長しており、ボイドは殆ど観測されなかった。
さらに、これらのサンプルについて、ラマン分光装置(JASCO社製、MRS−3100)を用いて結晶化率を測定した。Arを含有させなかったサンプルの結晶化率は、60%であった。これに対し、Arを含有させたサンプルでは、67%の結晶化率が得られた。
混合ガス中にArを含有させることによって結晶化率が向上する理由は、以下のように説明できる。SiH4ガスとH2ガスとの混合ガスでシリコン膜を成膜する結晶成長過程では、非晶質シリコン膜(a−Si膜)と、微結晶シリコン膜とが同時に堆積する。混合ガス中にH2ガスが大量に含まれていると、プラズマ中で分解した大量の水素原子(H)が非晶質シリコン膜中の弱いシリコン結合(Si−Si結合)を切り、Siと化合し、SiH4(気体)となって膜から除去される。すなわち、混合ガス中に大量のH2ガスが存在すると、非晶質シリコン膜よりも微結晶シリコン膜がより多く成長する。この水素原子が非晶質シリコン膜中の弱いシリコン結合を切る効果は、成膜温度が低温であるほど顕著になる。この混合ガスにArガスをさらに混合すると、ArはHよりも質量が大きいので、非晶質シリコン膜中の弱いシリコン結合を切る作用がHよりも大きくなり、より結晶性の良好な、すなわち結晶化率の高い微結晶シリコン膜が形成できる。
さらに、Arガスを混合すると、弱いシリコン結合を切る作用が、より高温でも起こるようになる。すなわち、微結晶シリコン膜70をより高温で堆積することができる。前述の第1の実施の形態の実施例では、微結晶シリコン膜62を形成するにあたって、成膜温度を250℃としたが、本実施の形態の実施例では成膜温度を300℃とした。Arガスを混合した場合、微結晶シリコン膜の成長速度は、Arガスを混合しない場合に比べて1.5倍に向上した。したがって、Arガスを混合すると、結晶化率が向上するだけではなく、スループットも向上する。
またSiOx膜52の組成を変えて、微結晶シリコン膜70にArを含有させた微結晶シリコンTFTをそれぞれ作製し、ゲート電圧−ドレイン電流特性を測定した。測定結果から、ドレイン電圧を10V印加し、ゲート電圧を20V印加したときのドレイン電流であるオン電流について、SiOx膜52の組成に対する依存性、すなわちSiOx組成依存性を評価した。
図16は、本発明の第2の実施の形態における微結晶シリコンTFTのオン電流のSiOx組成依存性を示すグラフである。図16において、縦軸は、SiOx膜52に代えて、組成式SiOxのxが2.0の酸化シリコン膜を用いて作製した微結晶シリコンTFTのオン電流(Ion(x=2.0))で規格化したオン電流の値Ion/Ion(x=2.0)を示し、横軸は、SiOx膜52の組成を示す。図16では、SiOx膜52の組成を、組成式SiOxのxの値、すなわちシリコン原子(Si)に対する酸素原子(O)の組成比(O/Si)で表す。
図16から、オン電流は、SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xが2.0よりも小さくなると増大し、酸素原子の組成比xが小さくなるにつれて大きくなることがわかる。
また図16に示す結果と、前述の図10に示す微結晶シリコン膜62にArを含有させない場合の結果とを比較した。その結果、微結晶シリコン膜70にArを含有させると、Arを含有させない場合に比べて、SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xが1.98の場合で1.05倍、組成比xが1.54の場合で1.51倍、組成比xが1.20の場合で1.65倍の値となり、オン電流が1.05倍から1.65倍向上することが確認された。
またArを含有させた微結晶シリコン膜70の膜厚を10nmから70nmまで10nmずつ変化させた微結晶シリコンTFTをそれぞれ作製し、ゲート電圧−ドレイン電流特性を測定した。SiOx膜52における酸素原子の組成比xは、1.54とした。測定結果から、ドレイン電圧を10V印加したときのドレイン電流の最小値であるオフ電流(Imin)について、微結晶シリコン膜70の膜厚に対する依存性、すなわち微結晶シリコン膜厚依存性を評価した。ドレイン電流が最小になるゲート電圧は、TFTによって異なっている。
図17は、本発明の第2の実施の形態における微結晶シリコンTFTのオフ電流の微結晶シリコン膜厚依存性を示すグラフである。図17において、縦軸は、微結晶シリコン膜70の膜厚を50nmとしたTFTのオフ電流(Imin(50nm))で規格化した値Imin/Imin(50nm)を示し、横軸は、微結晶シリコン膜70の膜厚(nm)を示す。
前述の第1の実施の形態と同様に、Arを含有させた微結晶シリコン膜70の膜厚が小さくなっても、オン電流は一定となるが、オフ電流は、図17に示すように微結晶シリコン膜70の膜厚によって変化する。微結晶シリコン膜70の膜厚が70nmから30nmまでの間では、膜厚を小さくするに従って、オフ電流の最小値が減少する傾向を示した。しかし、微結晶シリコン膜70の膜厚を30nm以下に小さくしても、オフ電流の最小値はあまり小さくならずに飽和傾向を示した。このことから、微結晶シリコン膜70の膜厚を30nm以下にすることで、オン特性を低下させずにリーク電流を小さくできることがわかる。
したがって、微結晶シリコン膜70の膜厚は、30nm以下であることが好ましい。微結晶シリコン膜70は、ホール移動度が大きいので、チャネル方向のオフ抵抗が小さく、リーク電流が増加する原因となる。微結晶シリコン膜70の膜厚を比較的小さく、具体的には30nm以下にすることによって、チャネル方向の抵抗を大きくすることができるので、リーク電流を減少させることができる。
また図17に示す結果と、前述の図11に示す微結晶シリコン膜62にArを含有させない場合の結果とを比較した。その結果、微結晶シリコン膜70にArを含有させると、Arを含有させない場合に比べて、オフ電流が若干増加することがわかった。より詳細には、オフ電流は、微結晶シリコン膜70の膜厚が50nmの場合で0.9%増加し、膜厚が30nmの場合で6.3%増加し、膜厚が10nmの場合で10.0%増加することがわかった。これは、Arが微結晶シリコン膜70中に欠陥を作っているためと考えられるが、増加率は最大でも10%であるので、問題はない。
以上のように、本実施の形態のTFT2である微結晶シリコンTFTは、前述の第1の実施の形態のTFT1に比べて、より大きなオン特性を確保しつつ、大きな駆動電圧に対して劣化が少ない。したがって、本実施の形態のTFT2を用いることによって、TFTの書込み不足に起因する表示不良および回路動作不良を発生させることなく、高寿命の液晶表示装置を実現することができる。
また本実施の形態では、前述の第1の実施の形態に比べて、微結晶シリコン膜70を高速で成膜できるので、スループットが向上し、製造コストを低減することができる。
また本実施の形態では、低酸化シリコン(SiOx)膜52における酸素原子(O)の組成比xが1.2未満になると、または屈折率nが1.7を超えると、前述の第1の実施の形態に比べて、微結晶シリコン膜70の結晶化率はさらに向上する。具体的には、前述の表2に示すように、Arが添加されていない場合、結晶化率は66%以上となるのに対し、Arが添加されている場合、結晶化率は74%以上となる。しかし、SiOx膜52中の欠陥準位密度が増大し、ホットキャリア劣化が増大するので、高寿命の液晶表示装置が得られなくなる。したがって、SiOx膜52における酸素原子(O)の組成比xは、1.2以上であることが好ましく、SiOx膜52の屈折率nは、1.7以下であることが好ましい。
前述の各実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば、前述の各実施の形態では、ゲート絶縁膜36を第1ゲート絶縁膜である窒化シリコン(SiN)膜50と、第2ゲート絶縁膜53である酸化シリコン膜、具体的には二酸化シリコン(SiO2)膜51および低酸化シリコン(SiOx)膜52とで構成したが、ゲート絶縁膜36は、これに限定されない。たとえば、SiO2膜51を設けずに、SiOxのxが2未満の低酸化シリコン(SiOx)膜52単独で第2ゲート絶縁膜53を構成し、SiN膜50およびSiOx膜52のみでゲート絶縁膜36を構成してもよい。このように第2ゲート絶縁膜53は、SiO2膜51を含まなくてもよいが、ゲート絶縁膜36へのホットキャリアの注入を防ぐという観点からは、SiO2膜51を含んで構成されることが好ましい。
また第2ゲート絶縁膜53は、前述の各実施の形態では、SiO2膜51とSiOx膜52との積層構造を有するが、これに限定されず、たとえば、単層膜で構成されてもよい。単層膜で第2ゲート絶縁膜53を構成する場合、少なくとも微結晶シリコン膜62,70と接する部分が、組成式SiOx(xは1.2以上2未満の数)で表される組成を有するか、または屈折率が1.46よりも大きく1.7以下であればよい。たとえば、第2ゲート絶縁膜53は、酸素原子(O)の組成比xが第1ゲート絶縁膜50側から微結晶シリコン膜62,70側に向かって減少して、微結晶シリコン膜62,70と接する部分で、1.2以上2未満になるように構成されてもよい。また第2ゲート絶縁膜53は、屈折率が第1ゲート絶縁膜50側から微結晶シリコン膜62,70側に向かって増加して、微結晶シリコン膜62,70と接する部分で、1.46よりも大きく1.7以下の値になるように構成されてもよい。
また前述の各実施の形態では、チャネルエッチ型のTFTの製造方法を説明したが、エッチストッパー型のTFTであっても、同様にして製造することができる。