JP5658536B2 - 塗装アルミニウムめっき鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性および非粘着性に優れた塗装アルミニウムめっき鋼板に関する。
フッ素樹脂を含有する塗膜が形成された塗装鋼板は、耐熱性や非粘着性、耐汚染性などに優れており、フライパンやパンの焼き型などの食品調理器具、電子レンジやガステーブルなどの加熱調理器具、摺動部材などに使用されている。耐熱性および非粘着性の両方に優れた塗装鋼板は、鋼板表面に耐熱性を有するプライマー塗膜を形成し、さらにその上にフッ素樹脂をその表面に偏在させたトップ塗膜を形成することで製造される(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1には、フッ素樹脂が塗膜の表面に偏在している塗装鋼板を短時間の焼き付け処理で製造する方法が記載されている。この方法では、プライマー塗膜用の塗料(以下「プライマー塗料」という)として、分子鎖の両末端に水酸基を有する耐熱性樹脂(ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂またはポリアミドイミド樹脂)をベースとする塗料を使用している。分子鎖の両末端に水酸基を有する耐熱性樹脂は、焼き付けの際に脱水縮重合する。したがって、プライマー塗料を焼き付けた後にトップ塗膜用の塗料(以下「トップ塗料」という)をプライマー塗膜の上に塗布しても、トップ塗料に含まれる溶剤にプライマー塗膜内の耐熱性樹脂は溶解せず、トップ塗料の粘度は上昇しない。その結果、トップ塗料を焼き付ける際にフッ素樹脂を円滑に塗膜の表面に移行させることが可能となり、耐熱性および非粘着性を有する塗装鋼板を短時間の焼き付け処理で製造することができる。
特許文献2には、トップ塗膜内のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面形状を波状にして、フッ素樹脂層の密着性を向上させる方法が記載されている。この方法では、トップ塗料を400℃を超える高温で焼き付けることで、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面形状を波状にしている。このようにフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面形状を波状にすることで、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との接触面積を増大させ、かつフッ素樹脂層にアンカー効果を付与することができる。その結果、耐熱性樹脂層に対するフッ素樹脂層の密着性が向上する。
特許文献3には、耐熱性および非粘着性だけでなく、耐食性にも優れた塗装鋼板を製造する方法が記載されている。この方法では、溶融アルミニウムめっき鋼板(塗装原板)の表面に化成皮膜としてフルオロアシッド皮膜を形成し、その上に耐熱性樹脂をベースとするプライマー塗膜およびトップ塗膜を形成している。また、プライマー塗膜にはリン酸系防錆顔料を配合している。
特開2006−168251号公報 特開2005−262465号公報 特開2005−186287号公報
特許文献2に記載されているように、トップ塗膜内のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面形状を波状にすることで、フッ素樹脂層の剥離を抑制することができる(図2A参照)。特許文献2に記載されている方法では、トップ塗料を400℃を超える高温で焼き付けることで界面形状を波状にしているが、トップ塗料を400℃を超える高温で焼き付けても界面形状が部分的に平滑となってしまい、加工時にフッ素樹脂層が剥離してしまうことがあった(図2B参照)。また、400℃を超える高温とすることは、省エネルギーの観点から好ましくなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、トップ塗料を比較的低温の加熱で焼き付けてもフッ素樹脂層の剥離を抑制することができる塗装アルミニウムめっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者は、フッ素樹脂層が剥離する原因について検討したところ、プライマー塗料の焼き付け温度を高めることにより、界面形状が平滑になることを抑制し、フッ素樹脂層の剥離を防げることを見出した。この結果を基にさらに詳細に検討した結果、結晶水を含有する防錆顔料をプライマー塗料に配合した場合に、フッ素樹脂層が剥離しやすくなることを見出した。
そして、本発明者は、プライマー塗膜に配合する防錆顔料として、結晶水を含有しない化合物を使用することで上記課題を解決しうることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の耐熱非粘着塗装鋼板に関する。
[1]アルミニウムめっき鋼板と;前記アルミニウムめっき鋼板の表面に形成され、耐熱性樹脂および防錆顔料を含むプライマー塗膜と;前記プライマー塗膜の表面に形成され、耐熱性樹脂およびテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含み、前記テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が塗膜の表面側に偏在している、トップ塗膜と;を有する塗装アルミニウムめっき鋼板であって:前記プライマー塗膜に含まれる耐熱性樹脂および前記トップ塗膜に含まれる耐熱性樹脂は、その分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせの脱水縮合物であり;前記防錆顔料は、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウムもしくはリン酸ジルコニウムまたはこれらの組み合わせである;塗装アルミニウムめっき鋼板。
[2]前記防錆顔料はモリブデン酸亜鉛である、[1]に記載の塗装アルミニウムめっき鋼板。
[3]食品調理器具または加熱調理器具用のプレコート鋼板である、[1]または[2]に記載の塗装アルミニウムめっき鋼板。
本発明によれば、耐熱性および非粘着性に優れ、かつフッ素樹脂層が剥離しにくい塗装アルミニウムめっき鋼板を提供することができる。また、防錆顔料としてモリブデン酸亜鉛を配合した場合には、さらに耐食性にも優れた塗装アルミニウムめっき鋼板を提供することができる。本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板は、例えば食品調理器具または加熱調理器具用のプレコート鋼板として有用である。
図1Aは参考例3の塗装鋼板の断面を示す写真である。図1Bは比較例1の塗装鋼板の断面を示す写真である。 図2Aはフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面形状が波状の塗装鋼板の断面模式図である。図2Bはフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面形状が平滑な塗装鋼板の断面模式図である。
1.本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板
本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板は、アルミニウムめっき鋼板(塗装原板)と、前記アルミニウムめっき鋼板の表面に形成されたプライマー塗膜と、前記プライマー塗膜の表面に形成されたトップ塗膜とを有する。本発明の塗装鋼板は、プライマー塗膜に配合されている防錆顔料が、結晶水を含まない化合物(モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウムまたはリン酸ジルコニウム)であることを一つの特徴とする。
[塗装原板]
塗装原板には、耐熱性および耐食性に優れる、アルミニウムめっき層が鋼板表面に形成されたアルミニウムめっき鋼板が使用される。アルミニウムめっき層は、必要に応じて、SiやZn、Mg、Ti、Ni、Cuなどを含んでいてもよい。
また、耐熱性および耐食性に加えて、さらに加工部耐食性も要求される場合は、塗装原板となる鋼板としては、めっき層を形成した後にさらに焼鈍した溶融Al−Siめっき鋼板が好ましい。180度折り曲げ加工などの曲げ加工を行った部位では、めっき層にクラックや剥離などの欠陥が発生して、下地鋼が露出する可能性がある。このように下地鋼が露出してしまうと、スチーム機能を有する電子レンジの庫内などの厳しい腐食環境下では、下地鋼が露出している部位において赤錆が発生してしまい、見栄えが低下するおそれがある。このように加工部耐食性が問題となる場合は、めっき層を形成した後にさらに焼鈍した溶融Al−Siめっき鋼板を使用すればよい。溶融Al−Siめっき層を形成した後にさらに焼鈍することで、溶融Al−Siめっき層を軟質化することができる。その結果、溶融Al−Siめっき層は、圧縮、引っ張りを伴う複合加工によってもクラックの発生や剥離が生じず、加工に追従した変形が可能になる。したがって、複合加工を行っても、下地鋼を露出させるクラックや剥離などの欠陥が発生せず、加工部耐食性を向上させることができる。
溶融Al−Siめっき層を焼鈍するには、めっき層を形成した溶融Al−Siめっき鋼板を350〜500℃で30分間以上保持すればよい(特開昭62−50454号公報参照)。このとき、溶融Al−Siめっき浴から引き上げてから焼鈍するまでの冷却速度を調整することで、めっき層と下地鋼との界面に形成される合金層の膜厚を薄くすることができ、溶融Al−Siめっき層の加工性をより向上させることができる。具体的には、溶融Al−Siめっき浴(浴温640℃以上)から引き上げられた鋼板(鋼帯)を平均冷却速度10℃/秒以上で400℃まで冷却した後に、350〜500℃で30分間以上加熱することが好ましい(特開2000−256816号公報参照)。
アルミニウムめっき鋼板は、塗膜密着性を向上させる化成皮膜を形成されていてもよい。化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、リン酸塩処理、クロメート処理、クロムフリー処理などが含まれる。化成皮膜の膜厚は、塗装原板の腐食の抑制および塗膜密着性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、クロメート皮膜の場合、全Cr換算付着量が5〜100mg/mとなるように膜厚を調整すればよい。また、リン酸塩皮膜の場合、付着量が5〜500mg/mとなるように膜厚を調整すればよい。Ti−Mo複合皮膜の場合、付着量が10〜500mg/mとなるように膜厚を調整すればよい。
化成処理の種類は、環境保護の観点からはクロムフリー処理が好ましい。クロムフリー処理の中では、耐食性および塗膜密着性の観点から、フルオロアシッド水溶液を用いた処理が好ましい。フルオロアシッドの例には、HTiF、HZrF、HHfF、HSiF、HGeF、FSnF、HBFなどが含まれる。この中では、HTiFが最も優れた防錆効果を示す。これらの化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
フルオロアシッド水溶液は、エッチング性が強く、一般的な無機酸では活性化処理が困難なアルミニウムめっき層に含まれるAl−Siの共晶部も活性化することができる。また、フッ素成分がアルミニウムめっき層のAlと反応し、難溶性のAlFが形成される。アルミニウムめっき層との反応により形成されたフルオロアシッド皮膜は、従来のクロメート処理に匹敵する塗膜密着性を示す。また、フルオロアシッド皮膜は、緻密であることから環境遮断能にも優れている。
フルオロアシッド皮膜の膜厚は、塗装原板の腐食の抑制および塗膜密着性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、総金属(Ti、Zr、Hf、Si、Ge、Sn、B)の元素換算付着量またはフッ素の元素換算付着量が1〜500mg/mとなるように膜厚を調整すればよい。付着量が1mg/m未満の場合、耐食性、塗膜密着性および耐熱性を十分に発揮させることができない。また、付着量が500mg/m超の場合、配合量に見合うだけの防錆効果は得られず、かつ塗膜の加工性および密着性が低下してしまう。
[プライマー塗膜]
プライマー塗膜は、アルミニウムめっき鋼板の表面に形成されている。ここで「アルミニウムめっき鋼板の表面」とは、アルミニウムめっき鋼板の表面だけでなく、化成皮膜の表面も含む。すなわち、プライマー塗膜は、化成皮膜上に形成されていてもよい。プライマー塗膜は、耐熱性樹脂をベースとして防錆顔料を含有する。
ベースとなる耐熱性樹脂としては、分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせの脱水縮合物が使用される。分子鎖の両末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン樹脂は、例えば式(1)で示される。分子鎖の両末端に水酸基を有するポリフェニルスルフィド樹脂は、例えば式(2)で示される。分子鎖の両末端に水酸基を有するポリアミドイミド樹脂は、例えば式(3)で示される。式(1)〜(3)におけるl〜nを調整して、後述の樹脂分子量に調整すればよい。
ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂およびポリアミドイミド樹脂は、塗装鋼板の切断端面や塗膜欠陥を起点とするフクレや錆などの防止に優れており、塗装鋼板の耐食性を向上させる。後述するように、分子鎖の両末端に水酸基を有する耐熱性樹脂の脱水縮合物を用いることで、トップ塗膜を形成するときにプライマー塗膜が溶剤に溶解するのを防ぐことができ、その結果トップ層におけるフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面の形状を所望の形状とすることができる。
焼き付ける前の耐熱性樹脂の分子量(数平均分子量)は、特に限定されないが、5000〜50000の範囲内が好ましく、15000〜30000の範囲内がより好ましい。分子量が小さすぎる場合、脱水縮重合による分子間の架橋密度が大きくなりすぎ、プライマー塗膜の加工性が低下するとともに、プライマー塗膜とトップ塗膜との間の密着性が低下してしまう。また、分子量が大きすぎる場合、溶剤に対する溶解度が低下して塗料を形成するのが困難となり、かつ軟化点が高くなって塗料の焼き付け温度が上昇してしまう。
防錆顔料としては、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウムもしくはリン酸ジルコニウムまたはこれらの組み合わせが使用される。後述するように、これらの化合物は、結晶水を含有しないため、フッ素樹脂層の剥離を抑制する観点から結晶水を含有する防錆顔料(リン酸亜鉛マグネシウムなど)よりも好ましい。防錆効果(赤錆の抑制)の観点からは、モリブデン酸亜鉛は、モリブデン酸カルシウムおよびリン酸ジルコニウムよりも好ましい。モリブデン酸亜鉛は、酸性、中性、アルカリ性のいずれの環境下でも安定的にモリブデン酸イオン(MoO 2−)を溶出させる。このモリブデン酸イオン(MoO 2−)は、強力な酸化剤であり、塗装原板由来のFe2+と反応して不溶性のモリブデン酸塩(FeMoO)を形成する。この不溶性のモリブデン酸塩は、鉄素地の表面にバリア皮膜を形成し、赤錆の発生を抑制する。一方、モリブデン酸カルシウムおよびリン酸ジルコニウムは、溶解性が低いため、モリブデン酸亜鉛ほどの防錆効果は期待できない。
防錆顔料の粒径(平均粒径)は、特に限定されないが、0.1〜10μmの範囲内が好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、塗料中で防錆顔料が凝集しやすくなり、防錆顔料を均一に分散させることが困難となる。一方、平均粒径が10μm超の場合、プライマー塗膜の本来の性質が損なわれてしまい、平滑性が低下するとともに塗膜表面が柚子肌状になって外観が著しく劣化してしまう。防錆顔料の量は、プライマー塗膜中の樹脂固形分100質量部に対し5〜150質量部の範囲内が好ましい。防錆顔料の量が5質量部未満の場合、耐食性を十分に発揮させることができない。また、防錆顔料の量が150質量部超の場合、配合量に見合うだけの防錆効果は得られず、かつ塗膜の加工性および密着性が低下してしまう。
プライマー塗膜は、透明でもよいが、任意の着色顔料を加えて着色されていてもよい。着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄などが含まれる。また、プライマー塗膜には、鱗片状無機質添加材や無機質繊維などを加えて塗膜硬度および耐摩耗性を向上させてもよい。鱗片状無機質添加材の例には、ガラスフレーク、硫酸バリウムフレーク、グラファイトフレーク、合成マイカフレーク、合成アルミナフレーク、シリカフレークなどが含まれる。また、無機質繊維の例には、チタン酸カリウム繊維、ウォラスナイト繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維、ロックウール、スラグウール、ガラス繊維、炭素繊維などが含まれる。
プライマー塗膜の膜厚は、特に限定されないが、0.5〜30μmの範囲内が好ましい。膜厚が0.5μm未満の場合、耐食性および塗膜密着性の効果が十分に得られない可能性がある。また、プライマー塗膜が着色塗膜の場合は、塗装原板を隠蔽するために3μm以上の膜厚が好ましい。一方、膜厚が30μm超の場合、塗膜表面が柚子肌状になって外観が劣化するとともに、焼き付けする際にワキが発生しやすくなる。
[トップ塗膜]
トップ塗膜は、プライマー塗膜の表面に形成されている。トップ塗膜は、耐熱性樹脂をベースとしてフッ素樹脂を含有する。フッ素樹脂は、トップ塗膜の表面に偏在してフッ素樹脂層を形成する。
耐熱性樹脂は、プライマー塗膜と同様のものが用いられるが、必ずしもプライマー塗膜と同一である必要はない。すなわち、トップ塗膜に含まれる耐熱性樹脂は、分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせの脱水縮合物であれば、プライマー塗膜に含まれる耐熱性樹脂と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
フッ素樹脂としては、耐熱性および非粘着性を付与する観点から融点が270℃以上の熱溶融性フッ素樹脂が好ましい。そのようなフッ素樹脂の例には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレンなどの重合体または共重合体が含まれる。これらの中では、非粘着性の持続性および耐熱性の観点から、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が特に好ましい。
フッ素樹脂の量は、トップ塗膜中の樹脂固形分100質量部に対し10〜200質量部の範囲内が好ましい。フッ素樹脂の量が10質量部未満の場合、非粘着性を十分に発揮させることができない。一方、フッ素樹脂の量が200質量部超の場合、プライマー塗膜に対するトップ塗膜の密着性が低下しやすい。非粘着性の持続性と密着性とを両立させる観点からは、フッ素樹脂の量は、トップ塗膜中の樹脂固形分100質量部に対し50〜150質量部の範囲内がより好ましく、80〜120質量部の範囲内が特に好ましい。
トップ塗膜には、防錆顔料を配合してもよい。この場合、プライマー塗膜と同様に結晶水を含まない防錆顔料を配合することが好ましい。たとえば、防錆顔料としては、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウムもしくはリン酸ジルコニウムまたはこれらの組み合わせが使用される。
トップ塗膜は、透明でもよいが、任意の着色顔料を加えて着色されていてもよい。着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄などが含まれる。
トップ塗膜には、着色顔料として濃色系(黒色系)近赤外線反射顔料を配合してもよい。たとえば、本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板をオーブンレンジの庫内材に適用する場合、オーブンレンジの庫内材としては、意匠性の観点から濃色系の色調が好まれることが多い。しかし、オーブンレンジの庫内材に濃色系の色調のトップ塗膜が形成されている場合、オーブンの加熱時に放射される赤外線がトップ塗膜に吸収されてしまうため、加熱効率の低下および消費電力の増加に繋がる。このように本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板をオーブンレンジの庫内材などに適用する場合は、濃色系の色調を維持しつつ加熱効率を向上させる観点から、400〜750nmの波長域(可視光)における平均反射率が10%以下であり、かつ750〜2500nmの波長域(近赤外線)における平均反射率が20%以上の濃色系(黒色系)近赤外線反射顔料をトップ塗膜に配合することが好ましい。濃色系(黒色系)近赤外線反射顔料の例には、Fe、Cr、CoOまたはこれらの組み合わせを含有する焼成顔料が含まれる。濃色系(黒色系)近赤外線反射顔料の含有量は、耐熱性樹脂に対して5〜35質量部の範囲内が好ましい。含有量が5質量部未満の場合、濃い色調を付与することができない。一方、含有量が35質量部超の場合、塗膜の凝集力が低下し、加工性が劣るおそれがある。
また、トップ塗膜には、鱗片状無機質添加材や無機質繊維などを加えて塗膜硬度および耐摩耗性を向上させてもよい。鱗片状無機質添加材の例には、ガラスフレーク、硫酸バリウムフレーク、グラファイトフレーク、合成マイカフレーク、合成アルミナフレーク、シリカフレークなどが含まれる。また、無機質繊維の例には、チタン酸カリウム繊維、ウォラスナイト繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維、ロックウール、スラグウール、ガラス繊維、炭素繊維などが含まれる。
トップ塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5〜40μmの範囲内が好ましい。膜厚が5μm未満の場合、非粘着性を十分に持続させることができない。一方、膜厚が40μm超の場合、塗膜表面が柚子肌状になって外観が劣化するとともに、焼き付けする際にワキが発生しやすくなる。加工性の観点からは、トップ塗膜の膜厚は、5〜20μmの範囲内が好ましい。
フッ素樹脂は、トップ塗膜の表面に偏在してフッ素樹脂層を形成する。一方、耐熱性樹脂は、フッ素樹脂層の下に耐熱性樹脂層を形成する。フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面の形状は、波状であることが好ましい(図2A参照)。より具体的には、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面の最大高低差が0.4μm以上であることが好ましい。界面形状を波状にすることで、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との接触面積を増大させ、かつフッ素樹脂層にアンカー効果を付与することができる。その結果、耐熱性樹脂層に対するフッ素樹脂層の密着性を向上させることができ、フッ素樹脂層が剥離しにくくなる。界面形状が平滑な場合、耐熱性樹脂層に対するフッ素樹脂層の密着性が低く、フッ素樹脂層が剥離しやすい(図2B参照)。後述するように、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面の形状をより容易に(トップ塗料の焼き付け温度が低くても)波状にするためには、防錆顔料として結晶水を含まない防錆顔料をプライマー塗膜に配合すればよい。
本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板は、フッ素樹脂層が剥離しにくいため、長期間にわたり、耐熱性、非粘着性および耐汚染性を発揮することができる。また、防錆顔料としてモリブデン酸亜鉛を含有する本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板は、上記特性に加え、さらに耐食性も長期間にわたり発揮することができる。
本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法により製造されうる。
2.本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板の製造方法
本発明の塗装鋼板の製造方法は、1)アルミニウムめっき鋼板(塗装原板)を準備する第1のステップと、2)プライマー塗膜を形成する第2のステップと、3)トップ塗膜を形成する第3のステップとを含む。
[塗装原板の準備]
第1のステップでは、塗装原板としてアルミニウムめっき鋼板を準備する。前述の通り、耐熱性および耐食性に加えて加工部耐食性も要求される場合は、塗装原板として、めっき層を形成した後にさらに焼鈍した溶融Al−Siめっき鋼板が好ましい。塗装原板は、塗装される前に塗膜密着性を向上させるために脱脂されることが好ましい。脱脂方法は、特に限定されない。たとえば、ロールコート法や浸漬引き上げ法などで弱アルカリ性または中性の脱脂液を塗布すればよい。また、必要に応じて、酸洗やリン酸塩処理などにより、めっき層表面の濡れ性を向上させてもよい。
また、塗装原板は、塗装される前に塗膜密着性を向上させるために化成処理されることが好ましい。化成処理は、例えばロールコート法やカーテンフロー法、浸漬引き上げ法などで化成処理液を鋼板表面に塗布し、リンガーロールなどで絞った後、水洗することなく80〜200℃で乾燥すればよい。前述の通り、化成処理の種類は、特に限定されないがフルオロアシッド水溶液を用いた処理が好ましい。また、化成皮膜の膜厚は、塗装原板の腐食の抑制および塗膜密着性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。
[プライマー塗膜の形成]
第2のステップでは、アルミニウムめっき鋼板の表面にプライマー塗膜を形成する。前述の通り、「溶融アルミニウムめっき鋼板の表面」とは、アルミニウムめっき鋼板の表面だけでなく、化成皮膜の表面も含む。
プライマー塗膜を形成するには、所定の耐熱性樹脂および防錆顔料を含有するプライマー塗料をアルミニウムめっき鋼板の表面に塗布し、焼き付ければよい。プライマー塗料の塗布方法は、特に限定されず、プレコート鋼板の製造に使用されている方法から適宜選択すればよい。そのような塗布方法の例には、ロールコート法、フローコート法、カーテンフロー法、スプレー法などが含まれる。
プライマー塗料に配合する耐熱性樹脂としては、分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせが使用される。また、防錆顔料としては、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウムもしくはリン酸ジルコニウムまたはこれらの組み合わせが使用される。プライマー塗料には、着色顔料や鱗片状無機質添加材、無機質繊維などを添加してもよい。
プライマー塗料の溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの非プロトン性極性溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)やジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)などのエーテル類;塩化メチレンや四塩化炭素などの脂肪族炭化水素の塩化物などが用いられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、これらの溶剤に、樹脂の溶解性を低下させない範囲でキシレンなどの炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコールなどの溶剤を添加してもよい。
プライマー塗料を溶融アルミニウムめっき鋼板の表面に塗布した後、300〜400℃で30〜180秒間焼き付けることで、プライマー塗膜を形成することができる。このとき、耐熱性樹脂の分子鎖の両末端にある水酸基同士の脱水縮重合反応によって、耐熱性樹脂が高分子量化して硬化する。すなわち、プライマー塗料に含まれる耐熱性樹脂は、熱硬化性樹脂である。このように高分子量化した耐熱性樹脂は、トップ塗料の溶媒にも溶解せず、安定したプライマー塗膜を形成する。
従来の方法のように、結晶水を含む防錆顔料をプライマー塗料に配合した場合、防錆顔料中の結晶水の除去に熱エネルギーが消費されるため、脱水縮重合反応が不十分となることがあった。また、耐熱性樹脂分子の周囲に水分子が存在するため、水分子が発生する脱水縮重合反応が進行しにくいということもあった(ルシャトリエの法則)。その結果、プライマー塗膜の硬化が不十分となることがあった。これらの問題は、プライマー塗料の焼き付け温度を上昇させることである程度解決できるが、省エネルギーの観点からは好ましくない。
これに対し、本発明の製造方法では、結晶水を含まない防錆顔料をプライマー塗料に配合しており、結晶水の除去に熱エネルギーが消費されず、かつ耐熱性樹脂分子の周囲に水分子が存在しないため、脱水縮重合反応を効率的に進めることができる。したがって、プライマー塗料の焼き付け温度を必要以上に上昇させることなく、プライマー塗膜を十分に硬化させることができる。
[トップ塗膜の形成]
第3のステップでは、プライマー塗膜の上にトップ塗膜を形成する。トップ塗膜を形成するには、所定の耐熱性樹脂およびフッ素樹脂粒子を含有するトップ塗料をプライマー塗膜の表面に塗布し、焼き付ければよい。トップ塗料の塗布方法は、特に限定されず、プライマー塗料の塗布方法と同じでよい。また、トップ塗料には、防錆顔料や着色顔料、近赤外線反射顔料、鱗片状無機質添加材、無機質繊維などを添加してもよい。防錆顔料をトップ塗料に添加する場合は、プライマー塗料と同様に、結晶水を含まない防錆顔料がトップ塗料に添加される。
トップ塗料に配合する耐熱性樹脂としては、分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせが使用される。
フッ素樹脂粒子としては、融点が270℃以上の熱溶融性フッ素樹脂を含む粒子が使用される。前述の通り、熱溶融性フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が好ましい。フッ素樹脂粒子の粒径(平均粒径)は、特に限定されないが、1μm以下が好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。平均粒径が1μm以下のフッ素樹脂粒子は、トップ塗料を焼き付ける際に容易に溶融し、トップ塗膜の表面にフッ素樹脂層を形成する。フッ素樹脂粒子は、懸濁重合法や乳化重合法などで製造されうる。たとえば、乳化重合法を用いれば、平均粒径が小さいフッ素樹脂粒子を製造することができる(例えば、平均粒径0.05〜1μm)。
トップ塗料の溶剤としては、プライマー塗料の溶剤と同様に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの非プロトン性極性溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)やジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)などのエーテル類;塩化メチレンや四塩化炭素などの脂肪族炭化水素の塩化物などが用いられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、これらの溶剤に、樹脂の溶解性を低下させない範囲でキシレンなどの炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコールなどの溶剤を添加してもよい。トップ塗料の溶剤は、プライマー塗料の溶剤と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
トップ塗料をプライマー塗膜の表面に塗布した後、350〜400℃で60〜300秒間焼き付けることで、耐熱性樹脂を高分子量化(硬化)させてトップ塗膜を形成することができる。このとき、トップ塗料中のフッ素樹脂粒子は塗膜表面方向に移行しながら溶融し、耐熱性樹脂はプライマー塗膜の方向に移行する。したがって、塗膜表面にフッ素樹脂層が形成され、その下に耐熱性樹脂層が形成される。
トップ塗料の溶剤は、プライマー塗膜の耐熱性樹脂の良溶媒でもある。したがって、プライマー塗膜の耐熱性樹脂が十分に硬化していない場合は、プライマー塗膜の上にトップ塗料を塗布すると、プライマー塗膜の表面部分がトップ塗料に溶解してしまう。このようにプライマー塗膜の表面部分がトップ塗料に溶解してしまうと、トップ塗料中の耐熱性樹脂は、溶解した耐熱性樹脂との相溶性が高いため、プライマー塗膜側への移行がより促進される。一方、トップ塗料中のフッ素樹脂は、溶解した耐熱性樹脂との相溶性が低いため、塗膜表面方向への移行がより促進される。このようにフッ素樹脂の移行速度が速すぎる場合、耐熱性樹脂が硬化する前にフッ素樹脂が完全に移行してしまうため、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面が平滑になってしまう。
一方、本発明の製造方法では、プライマー塗膜の耐熱性樹脂が十分に硬化されているため、プライマー塗膜の上にトップ塗料を塗布しても、プライマー塗膜の表面部分はトップ塗料に溶解しない。このようにプライマー塗膜が安定だと、トップ塗料中のフッ素樹脂の移行速度は適切な速度となり、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面が波状になる。
また、本発明の製造方法では、プライマー塗料および/またはトップ塗料に、防錆顔料として結晶水を含まない防錆顔料を配合している。これにより、結晶水の除去に熱エネルギーが消費されず、かつ耐熱性樹脂分子の周囲に水分子が存在しないため、耐熱性樹脂の脱水縮重合反応を効率的に進めることができる。したがって、トップ塗料の焼き付け温度を400℃を越える高温に上昇させなくても、トップ塗膜を迅速に硬化させることができる。その結果、フッ素樹脂が完全に移行してしまう前にトップ塗膜を硬化させることができるため、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面が波状になる。
以上の手順により、トップ塗料を低温(400℃以下)で焼き付けても、耐熱性および非粘着性に優れ、かつフッ素樹脂層が剥離しにくい塗装アルミニウムめっき鋼板を製造することができる。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実1]
1.塗装鋼板の準備
塗装原板として、板厚0.5mm、片面めっき付着量40g/mの溶融Al−9Siめっき鋼板を12枚(実施例1、参考例2、3、比較例1〜9)準備した。塗装原板の表面を脱脂した後、表1に示す組成のクロムフリー化成処理液をフッ素換算付着量が20mg/m、総金属付着量が17.5mg/mとなるようにバーコーターで塗布した。その鋼板を100℃で加熱して、化成処理液を乾燥させた。
次いで、化成処理された塗装原板の表面に、プライマー塗料を塗布し、380℃で120秒間焼き付けて、乾燥膜厚5μmのプライマー塗膜を形成した。プライマー塗料は、溶剤(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)25%、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)35%、メチルイソブチルケトン(MIBK)10%、キシレン30%)に耐熱性樹脂および防錆顔料を添加して調製した。表2に、プライマー塗料(実施例1、参考例2、3、比較例1〜9)の組成を示す。6種類の防錆顔料のうち、リン酸ジルコニウム、モリブデン酸カルシウムおよびモリブデン酸亜鉛は、いずれも結晶水を含まない。一方、リン酸亜鉛マグネシウム、トリポリリン酸2水素AlMgおよび亜リン酸亜鉛は、いずれも結晶水を含む。
両末端に水酸基(−OH基)を有するポリエーテルスルホン樹脂の数平均分子量は、22000〜24000であり、両末端に塩素基(−Cl基)を有するポリエーテルスルホン樹脂の数平均分子量は、17000〜19000である。防錆顔料の配合量は、耐熱性樹脂100質量部に対し65質量部とした。
次いで、プライマー皮膜の上にトップ塗料を塗布し、400℃で120秒間焼き付けて、乾燥膜厚10μmのトップ塗膜を形成した。トップ塗料は、プライマー塗料と同じ溶剤に耐熱性樹脂および熱溶融性フッ素樹脂を添加して調製した。表3に、トップ塗料(実施例1、参考例2、3、比較例1〜9)の組成を示す。各実施例、参考例および比較例において、耐熱性樹脂の種類および配合量は、プライマー塗料と同じである。熱溶融性フッ素樹脂粒子(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)の平均粒径は、0.2μmである。熱溶融性フッ素樹脂粒子の配合量は、耐熱性樹脂100質量部に対し50質量部とした。
2.断面分析
各塗装鋼板について、トップ塗膜の断面を顕微鏡で観察した。図1Aは、参考例3の塗装鋼板の断面写真である。図1Bは、比較例1の塗装鋼板の断面写真である。500倍の視野でフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面を観察した。図2Aに示されるように、フッ素樹脂層100と耐熱性樹脂層200との界面の最大高低差が0.4μm以上の場合は、界面の形状が波状であると判定した。一方、図2Bに示されるように、界面の最大高低差が0.4μm未満の場合は、界面の形状が平滑であると判定した。
3.耐汚染性試験
各塗装鋼板から試験片を切り出し、耐汚染性試験を実施した。各試験片の表面に、汚染液(醤油:砂糖:卵=1:1:1(質量比))を0.5mL滴下した。各試験片を260℃の加熱炉に1時間入れ、十分に冷却した後、中性洗剤で洗浄した。洗浄後、各試験片について汚染物の焦げ付きを除去できるか否かを確認した。上記手順を1サイクルとし、焦げ付きが除去できなくなるまでのサイクル数をカウントした。
4.塗膜密着性試験
各塗装鋼板から試験片を切り出し、塗膜密着性試験を実施した。各試験片について180度密着折り曲げ加工を行った。各試験片の折り曲げ部に感圧接着テープを貼り付け、瞬時にテープを引き剥がした。テープ剥離後、塗膜(フッ素樹脂層)が剥離しているか否かを観察した。
5.加工部耐食性試験
各塗装鋼板から試験片を切り出し、耐食性試験を実施した。180度密着折り曲げ加工を行った後、各試験片の端面をシールした。加工後の各試験片について、JIS K2246に準拠して70℃で120時間湿潤試験を行った。試験後、各試験片の表面に赤錆が発生しているか否かを観察した。
6.分析結果
表4は、各塗装鋼板の分析結果を示す表である。「塗膜状態(うねり)」の列では、耐熱性樹脂層とフッ素樹脂層との界面の形状が波状である場合を「○」、平坦である場合を「×」とした。「耐汚染性」の列では、10サイクル繰り返しても焦げ付きの除去が可能である場合を「○」、不可能である場合を「×」とした。「フッ素剥離」の列では、塗膜(フッ素樹脂層)の剥離が検出されなかった場合を「○」、剥離が検出された場合を「×」とした。「耐食性(赤錆)」の列では、赤錆の発生が無い場合を「○」、赤錆の発生がある場合を「×」とした。
分子鎖の両末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン樹脂(熱硬化性樹脂)をベースとする塗膜を形成した実施例1、参考例2、3および比較例1〜3の塗装鋼板は、耐汚染性に優れていた。これは、これらの塗装鋼板では、トップ塗料を焼き付ける際にフッ素樹脂が表面に移行してフッ素樹脂層を形成したためである(図1A参照)。一方、分子鎖の両末端に塩素基を有するポリエーテルスルホン樹脂(熱可塑性樹脂)をベースとする塗膜を形成した比較例4〜9の塗装鋼板では、10サイクル以内に焦げ付きを除去できなくなった。これは、これらの塗装鋼板では、トップ塗料を塗布した際にプライマー塗膜がトップ塗料に再溶解し、トップ塗料の粘度が上昇したため、トップ塗膜を焼き付ける際にフッ素樹脂が表面に移行できず、フッ素樹脂層を形成できなかったためと考えられる。
フッ素樹脂層が形成された塗装鋼板(実施例1、参考例2、3、比較例1〜3)の中でも、実施例1、参考例2、3の塗装鋼板では、フッ素樹脂層の剥離は観察されなかった。これは、結晶水を含まない化合物を防錆顔料として使用したため、トップ塗膜を400℃以下で焼き付けてもフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面の形状を波状とすることができたためである。一方、比較例1〜3の塗装鋼板では、フッ素樹脂層の剥離が観察された。これは、耐熱性樹脂層とフッ素樹脂層との界面の形状が平滑になってしまったためである。界面の形状が平滑になってしまったのは、結晶水を含む化合物を防錆顔料として使用したため、プライマー塗膜の硬化を十分に行うことができなかったからだと考えられる。
また、塗膜密着性が優れていた実施例1、参考例2、3の塗装鋼板の中でも、参考例3の塗装鋼板では、赤錆が全く発生しなかった。これは、モリブデン酸亜鉛由来のモリブデン酸イオンが鉄素地の露出部位にバリア皮膜を形成したためと考えられる。
以上の結果から、実施例1、参考例2、3の塗装鋼板は、非粘着性および耐汚染性に優れており、かつフッ素樹脂層が剥離しにくいことがわかる。
[実2]
2では、塗装原板のめっき層を焼鈍することで、塗装鋼板の加工部耐食性も向上させうることを示す。
1.塗装鋼板の準備
塗装原板として、以下の2種類の溶融Al−9Siめっき鋼板を準備した。塗装原板Aと塗装原板Bとは、めっき層を形成した後に焼鈍処理を行ったかどうかという点のみ異なる。
[塗装原板A]
・溶融Al−9Siめっき鋼板(板厚0.5mm、片面めっき付着量40g/m
・めっき層を形成した後に焼鈍処理無し
[塗装原板B]
・溶融Al−9Siめっき鋼板(板厚0.5mm、片面めっき付着量40g/m
・めっき層を形成した後に焼鈍処理有り(420℃で30時間加熱)
塗装原板(塗装原板Aまたは塗装原板B)の表面を脱脂した後、前述のクロムフリー化成処理液をフッ素換算付着量が20mg/m、総金属付着量が17.5mg/mとなるようにバーコーターで塗布した。その鋼板を100℃で加熱して、化成処理液を乾燥させた。
次いで、化成処理された塗装原板の表面に、プライマー塗料を塗布し、380℃で120秒間焼き付けて、乾燥膜厚5μmのプライマー塗膜を形成した。プライマー塗料は、前述の溶剤に耐熱性樹脂(両末端に水酸基(−OH基)を有するポリエーテルスルホン樹脂;数平均分子量:22000〜24000)および防錆顔料(リン酸ジルコニウム)を添加して調製した。防錆顔料の配合量は、ポリエーテルスルホン樹脂100質量部に対し65質量部とした。
次いで、プライマー皮膜の上にトップ塗料を塗布し、400℃で120秒間焼き付けて、乾燥膜厚10μmのトップ塗膜を形成した。トップ塗料は、プライマー塗料と同じ溶剤に、プライマー塗料と同じ耐熱性樹脂および熱溶融性フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を添加して調製した。ポリエーテルスルホン樹脂の配合量は、プライマー塗料と同じである。熱溶融性フッ素樹脂粒子の配合量は、ポリエーテルスルホン樹脂100質量部に対し50質量部とした。
2.加工部耐食性試験
各塗装鋼板(実施例4、5)から試験片を切り出し、加工部耐食性試験を実施した。180度密着折り曲げ加工を行った後、各試験片の端面をシールした。加工後の各試験片について、JIS K2246に準拠して70℃で120時間湿潤試験を行った。試験後、各試験片の表面に赤錆が発生しているか否かを観察した。
3.分析結果
表5は、各塗装鋼板の分析結果を示す表である。「耐食性(赤錆)」の列では、赤錆の発生が無い場合を「○」、赤錆の発生がある場合を「×」とした。なお、塗装原板Aを用いた実施例4の塗装鋼板は、実施例1の塗装鋼板と同じものである。また、実施例4(実施例1)の塗装鋼板と実施例5の塗装鋼板とは、塗装原板の種類(めっき層を形成した後に焼鈍処理を行ったかどうか)のみが異なる。
表5に示されるように、めっき層を焼鈍していない塗装原板Aを使用した実施例4(実施例1)の塗装鋼板では、加工部において赤錆が発生していた。これは、加工時にめっき層などにクラックが発生して、下地鋼が露出したためと考えられる。一方、めっき層を焼鈍した塗装原板Bを使用した実施例5の塗装鋼板では、赤錆が全く発生しなかった。これは、めっき層を焼鈍して軟質化することで、加工時にめっき層にクラックが発生するのが抑制されたためと考えられる。
以上の結果から、本発明の塗装鋼板は、めっき層を焼鈍した塗装原板を使用することで、加工部耐食性も向上させうることがわかる。
[実3]
3では、トップ塗膜に近赤外線反射顔料を配合することで、塗装鋼板の熱反射特性も向上させうることを示す。
1.塗装鋼板の準備
塗装原板として、板厚0.5mm、片面めっき付着量40g/mの溶融Al−9Siめっき鋼板を準備した。
塗装原板の表面を脱脂した後、前述のクロムフリー化成処理液をフッ素換算付着量が20mg/m、総金属付着量が17.5mg/mとなるようにバーコーターで塗布した。その鋼板を100℃で加熱して、化成処理液を乾燥させた。
次いで、化成処理された塗装原板の表面に、プライマー塗料を塗布し、380℃で120秒間焼き付けて、乾燥膜厚5μmのプライマー塗膜を形成した。プライマー塗料は、前述の溶剤に耐熱性樹脂(両末端に水酸基(−OH基)を有するポリエーテルスルホン樹脂;数平均分子量:22000〜24000)および防錆顔料(リン酸ジルコニウム)を添加して調製した。防錆顔料の配合量は、ポリエーテルスルホン樹脂100質量部に対し65質量部とした。
次いで、プライマー皮膜の上にトップ塗料を塗布し、400℃で120秒間焼き付けて、乾燥膜厚10μmのトップ塗膜を形成した。トップ塗料は、プライマー塗料と同じ溶剤に、プライマー塗料と同じ耐熱性樹脂、熱溶融性フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)および黒色顔料(鉄・クロム系近赤外線反射顔料またはカーボンブラック顔料)を添加して調製した。ポリエーテルスルホン樹脂の配合量は、プライマー塗料と同じである。熱溶融性フッ素樹脂粒子の配合量は、ポリエーテルスルホン樹脂100質量部に対し50質量部とした。黒色顔料の配合量は、ポリエーテルスルホン樹脂100質量部に対し20質量部とした。
鉄・クロム系近赤外線反射顔料としては、42−706A(東罐マテリアル・テクノロジー株式会社)を使用した。カーボンブラック顔料としては、MA−100(三菱カーボン株式会社)を使用した。
2.熱反射性試験
各塗装鋼板(実施例6、7)について、熱反射性試験を実施した。実施例6または実施例7の塗装鋼板を壁面材として用いて加熱室(幅34cm×奥行36cm×高さ23cm)を作製し、加熱室内にはガラスセラミックプレートを設置した。ガラスセラミックプレートを用いて加熱室内を赤外線加熱し、加熱室の壁面の温度を経時的に測定した。表6に、加熱室の天井面温度の測定結果を示す。
表6に示されるように、トップ塗膜に一般的な黒色系顔料(カーボンブラック)を配合した実施例6の塗装鋼板では、加熱開始してから3分過ぎには壁面の温度が100℃を超えてしまい、5分後には134.2℃まで上昇していた。これは、黒色系顔料が近赤外線を吸収してしまったためと考えられる。一方、トップ塗膜に黒色系熱反射顔料を配合した実施例7の塗装鋼板では、5分経過しても壁面の温度が80℃に達しておらず、優れた熱反射特性を有していた。壁面の温度の上昇速度を比較すると、黒色系熱反射顔料を配合した実施例7の塗装鋼板の壁面の温度の上昇速度は、一般的な黒色系顔料を配合した実施例6の塗装鋼板の壁面の温度の上昇速度の約50%であった。
以上の結果から、本発明の塗装鋼板は、トップ塗膜に熱反射顔料を配合することで、塗装鋼板の熱反射特性も向上させうることがわかる。
本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板は、長期間にわたり耐熱性、非粘着性、耐汚染性を維持することができる。したがって、本発明の塗装アルミニウムめっき鋼板は、例えば、フライパンやパンの焼き型などの食品調理器具、電子レンジやガステーブルなどの加熱調理器具に用いられるプレコート鋼板として有用である。
100 フッ素樹脂層
200 耐熱性樹脂層

Claims (2)

  1. アルミニウムめっき鋼板と、
    前記アルミニウムめっき鋼板の表面に形成され、耐熱性樹脂および防錆顔料を含むプライマー塗膜と、
    前記プライマー塗膜の表面に形成され、耐熱性樹脂およびテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含み、前記テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が塗膜の表面側に偏在している、トップ塗膜と、を有する塗装アルミニウムめっき鋼板であって、
    前記プライマー塗膜に含まれる耐熱性樹脂および前記トップ塗膜に含まれる耐熱性樹脂は、その分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせの脱水縮合物であり、
    前記防錆顔料は、リン酸ジルコニウムである、
    塗装アルミニウムめっき鋼板。
  2. 食品調理器具または加熱調理器具用のプレコート鋼板である、請求項1に記載の塗装アルミニウムめっき鋼板。
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