JP5689378B2 - 透明導電膜 - Google Patents

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本発明は、透明導電膜及びその製造方法に関する。
無機・有機エレクトロルミネッセンス素子、液晶素子等における透明電極基板、電磁波遮蔽シート、透明フィルム基板等として、透明導電基板が用いられている。該透明導電膜は、ガラスや石英等の無機透明基板や、PET、PES、PC等からなる基材フィルムの表面に、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又は蒸着法によって成膜されるインジウム錫酸化物(ITO)が主流を占めている。
しかしながら、上記従来の透明導電酸化物は、ITOやインジウム亜鉛酸化物が代表的であり、いずれも酸化インジウムを90モル%以上含むため、原材料費が高いという課題があった。酸化インジウムを用いない透明導電酸化物としては、ZnOにAlやGaを添加したAZOやGZOがあるが、これらは耐候性や薬液耐性に劣り、用途が著しく限定されている。
酸化インジウムの含有量を減らした材料としては、In,Sn,Znを同時に含む透明導電材料が開示されている(特許文献1)。
特許文献1は、原子比In/(In+Sn+Zn)が0.25〜0.6、原子比Sn/(In+Sn+Zn)が0.15〜0.3、原子比Zn/(In+Sn+Zn)が0.15〜0.5であるスパッタリングターゲットを用い、比抵抗が400μΩcm〜900μΩcmであるインジウム錫亜鉛酸化物(ITZO)透明電極をスパッタリング法により得る。
しかしながら、このITZOを透明電極や熱線反射膜として使用すると、キャリア濃度が低下して抵抗が上昇したり、熱線反射能が低いという課題があった。
特開2007−63649号公報
本発明の目的は、高コストのインジウムの含有量を抑制しつつ、キャリアが高濃度、安定に存在し、赤外光透過率が低い透明導電膜を提供することである。
本発明によれば、以下の透明導電膜等が提供される。
1.少なくともインジウム、錫及び亜鉛を含有し、
In/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.25〜0.6であり、Sn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.3であり、かつZn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.5であり、
可視領域の光線透過率が70%以上であり、赤外領域の光線透過率が65%以下である透明導電膜。
2.アニール処理が施されている1に記載の透明導電膜。
3.耐熱試験後の赤外領域の光線透過率が65%以下である1又は2に記載の透明導電膜。
4.活性化エネルギーが1meV以上15meV以下である1〜3のいずれかに記載の透明導電膜。
5.少なくともインジウム、錫及び亜鉛を含有し、In/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.25〜0.6であり、Sn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.3であり、Zn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.5であるスパッタリングターゲットを用いて、基板上にスパッタリング法により膜を形成し、前記膜を基板温度〜700℃の範囲でアニールすることを含む透明導電膜の製造方法。
6.前記アニールを、酸素分圧50〜200hPaの雰囲気で行う5に記載の透明導電膜の製造方法。
本発明によれば、高コストのインジウムの含有量を抑制しつつ、キャリアが高濃度、安定に存在し、赤外光透過率が低い透明導電膜が提供できる。
実施例1及び比較例2で得た透明導電膜の光線透過率を示す図である。 実施例1及び比較例2で得た透明導電膜のキャリア移動度と温度の依存性、及び活性化エネルギーを示す図である。
本発明の透明導電膜は、少なくともインジウム、錫及び亜鉛を含有し、以下の原子比を満たす。
In/(In+Sn+Zn)=0.25〜0.6
Sn/(In+Sn+Zn)=0.15〜0.3
Zn/(In+Sn+Zn)=0.15〜0.5
また、上記透明導電膜は、可視領域の光線透過率が70%以上であり、赤外領域の光線透過率が65%以下である。
上記原子比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析によって測定することができる。
原子比In/(In+Sn+Zn)が0.25より小さいと、スパッタリングによって得られる透明導電膜の抵抗が高くなる恐れがある。0.6より大きいとインジウム削減効果が得られない恐れがある。
原子比In/(In+Sn+Zn)は、好ましくは0.44〜0.55である。
原子比Sn/(In+Sn+Zn)が0.15より小さいと、透明導電膜の大気下での耐熱性が低下する恐れがある。0.3より大きいと透明性が損なわれる恐れがある
原子比Sn/(In+Sn+Zn)は、好ましくは0.20〜0.25である。
原子比Zn/(In+Sn+Zn)が0.15より小さいと、透明導電膜を製品用に所望の形状に加工するにあたり、ウェットエッチングが困難となる恐れがある。0.5より大きいとスパッタリングによって得られる透明導電膜の耐熱性や導電性が低下する恐れがある。
原子比Zn/(In+Sn+Zn)は、好ましくは0.20〜0.40である。
可視領域の光線透過率は、波長380〜780nmの電磁波の光線透過率の平均値であり、赤外領域の光線透過率とは波長1200〜2600nmの電磁波の光線透過率の平均値である。
光線透過率は、分光光度計により測定できる。
可視領域の平均透過率が70%未満では、透明度が悪く、表示素子用透明電極や透明熱線反射膜の用途としては不適合である。
また、赤外領域の透過率が65%を超えると熱線反射率が低下し、建材においては、断熱効果の低下、防曇ガラスにおいては通電時の発熱不十分等の不具合が生ずる恐れがある。
可視領域の平均透過率は好ましくは80%以上であり、赤外領域の光線透過率は好ましくは60%以下である。
また、本発明の透明導電膜は、好ましくは耐熱試験を行った後であっても赤外領域の光線透過率が65%以下である。耐熱試験は、実施例に記載の方法で行う。
また、本発明の透明導電膜は、好ましくは活性化エネルギーが1〜15meVである。
活性化エネルギーはホール効果の温度依存性を測定して算出する。具体的には以下のように測定する。
ホール効果により得られたホール移動度の値を、それぞれ温度T1のときμ1、温度T2のときμ2とする。ここで、T1は室温近傍で270〜330K程度が好ましい。T2はT1よりも100K程度低温であることが好ましい。
μ1、μ2は以下のように表すことができる。
μ1=Aexp(−E/kT1)、μ2=Aexp(−E/kT2)
(式中、Aは定数、Eは活性化エネルギー、kはボルツマン定数である。)
μ1、μ2から以下のように活性化エネルギーEを求めることができる。
E=−{k×log(μ1/μ2)}/{(1/T1)−(1/T2)}
活性化エネルギーは、電子の動きやすさの温度依存性を示す。
活性化エネルギーが15meVを超えると、特に低温時において電子の速度が落ちてしまい、熱線反射能が失われる恐れがある。活性化エネルギーは小さければ小さいほどよいが、1meVを下回ると半金属状態であることを意味し、透明性が失われる恐れがある。
活性化エネルギーは、好ましくは2〜10meVである。
本発明の透明導電膜は、本発明の効果を損ねない範囲において、上述したIn、Sn及びZn以外の他の金属元素を含有していてもよいし、実質的にIn、Sn及びZnのみからなっていてもよい。
本発明において「実質的」とは、透明導電膜としての効果が上記In、Sn、及びZnに起因すること、又は透明導電膜の金属元素の98重量%以上100重量%以下(好ましくは99重量%以上100重量%以下)がIn、Sn及びZnであることを意味する。
上記のように、透明導電膜に含有される金属元素は、実質的にIn、Sn及びZnからなっており、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでいてもよい。
本発明の透明導電膜の製造方法は、スパッタリングターゲットを用いて、基板上にスパッタリング法により成膜し、基板温度〜700℃の範囲でアニールすることを含む。
成膜に用いるスパッタリングターゲットは、少なくともインジウム、錫及び亜鉛を含有し、原子比In/(In+Sn+Zn)が0.25〜0.6であり、原子比Sn/(In+Sn+Zn)が0.15〜0.3であり、原子比Zn/(In+Sn+Zn)が0.15〜0.5である。
スパッタリングターゲットは公知の方法により製造することができる。
アニール温度が成膜時の基板温度を下回ると、アニールの効果が得られず、キャリア濃度の安定性が欠しい透明導電膜となる可能性がある。アニール温度が700℃を超えると、キャリア濃度が減少し、導電膜としての機能を果たさなくなる恐れがある。
アニール温度は、通常100〜500℃、好ましくは300〜500℃である。
また、上記アニールを酸素分圧50〜200hPaの雰囲気で行うと好ましい。
酸素分圧が50hPa以上であると、還元による着色の耐性に優れる。酸素分圧が200hPa以下であると、導電度に優れる。
酸素分圧は、好ましくは100〜190hPaである。
アニール処理を行わない場合、透明電極としての使用過程で、キャリア濃度が低下して抵抗が上昇したり、熱線反射能が低下する。これは、スパッタリングで得られた透明電極が熱力学的に非平衡であり、キャリアを担う酸素欠損が安定に存在しないことに由来する。
アニール処理を施すことにより酸素欠損を安定化できるが、単にアニールしただけでは、キャリア濃度が減少したり、透過率が減少する場合がある。
上記特定温度のアニール処理により、キャリア濃度及び熱線反射能の低下を防ぐことができる。
用いるスパッタリング法及びスパッタリング条件には特に制限はないが、直流(DC)マグネトロン法、交流(AC)マグネトロン法、高周波(RF)マグネトロン法が好ましい。液晶ディスプレイ(LCD)パネル用途では装置が大型化するためDCマグネトロン法、ACマグネトロン法が好ましく、安定成膜可能なACマグネトロン法が特に好ましい。
スパッタ圧力は通常0.05〜2Pa、到達圧力は通常10-3〜10-7Paである。基板温度は通常25〜500℃、好ましくは50〜300℃、より好ましくは100〜250℃である。
導入ガスとして、通常Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスを用いることができるが、これらのうち、成膜速度が速い点でArが好ましい。また、導入ガスに酸素を0.01〜5%含ませると、比抵抗が下がりやすく好ましい。また、導入ガスに水素を0.01〜5%含ませると、得られる透明導電膜の抵抗が下がりやすく好ましい。
本発明の透明導電膜は、非晶質あるいは微結晶のものが好ましく、非晶質のものが特に好ましい。本発明の透明導電膜が非晶質であるか否かは、X線回折法によって判定することができる。透明導電膜が非晶質であることにより、エッチングが容易になる、エッチングの残渣が発生し難い、また、大面積でも均一な膜が得られるという効果が得られる。
本発明の透明導電膜は、エッチング等の処理を施して、薄膜トランジスタの透明電極等として用いることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)スパッタリングターゲットの製造及び評価
(i)ターゲットの製造
ターゲットの製造原料として、平均粒径3.4μm、純度4Nの酸化インジウム、平均粒径0.6μm、純度4Nの酸化亜鉛、及び平均粒径0.5μm、純度4Nの酸化錫を、原子比〔In/(In+Sn+Zn)〕が0.53、原子比〔Sn/(In+Sn+Zn)〕が0.17、原子比〔Zn/(In+Sn+Zn)〕が0.30となるように混合し、これを湿式ボールミルに供給し、72時間混合粉砕して原料微粉末を得た。
得られた原料微粉末を造粒した後、直径10cm、厚さ5mmの寸法にプレス成形して焼成炉に装入し、酸素ガス加圧下、1400℃で48時間焼成して焼結体(ターゲット)を得た。焼成時の昇温速度は3℃/分であった。
(ii)ターゲットの評価
得られたターゲットの理論相対密度は97%であり、四探針法により測定したバルク抵抗値は1.3mΩ・cmであった。
ICP発光分析法で元素分析を行ったところ、In/(In+Sn+Zn)=0.53、Sn/(In+Sn+Zn)=0.17、Zn/(In+Sn+Zn)=0.30であった。
(2)透明導電膜の成膜及び評価
(i)透明導電膜の成膜
得られたスパッタリングターゲットをDCマグネトロンスパッタリング装置に装着し、室温(RT)においてスパッタリングを行い、ガラス基板上に透明導電膜を成膜した。
このときのスパッタ条件は、スパッタ圧力1×10-1Pa、到達圧力5×10-4Pa、基板温度RT、投入電力120W、成膜時間45分間、導入ガスはアルゴンガス100%とした。
このようにして得られた透明導電基板を大気圧下、酸素分圧50hPa、300℃、1時間の条件でアニールを行い、膜厚が約300nmの透明導電性酸化物が形成された透明導電ガラスが得られた。
(ii)透明導電膜の物性の評価
(i)で得られた透明導電膜の導電性について、以下のように物性を評価した。結果を表1に示す。
四探針法により比抵抗を測定したところ、5×10-4Ω・cmであった。また、ホール効果によりキャリア濃度を測定したところ、2.0×1020cm-3であった。
また、この透明導電性酸化物は、平均の可視領域(波長380〜780nm)の光線透過率が72%であり、透明性においても優れたものであった。また、近赤外領域(波長1200〜2600nm)の平均透過率は63%であり、熱線反射効果にも優れたものであった。光線透過率は島津製作所のUV3600を用いて測定した。
この透明導電膜を蓚酸45℃でエッチングを行ったところ、エッチング速度は150nm/分であった。
また、PAN(リン酸−酢酸−硝酸系エッチング剤)によるエッチング速度は50℃で20nm/分以下であり、PAN耐性は良好であった。
また、この透明導電膜について、空気中、120℃、1000時間の条件で耐久性試験(耐熱試験)を行い、抵抗及びキャリア濃度の変化を確認した。
その結果、抵抗は5.1×10-4Ω・cm、キャリア濃度は1.9×1020cm-3であり高耐久であることが確認された。
また、可視領域、近赤外領域の光線透過率はそれぞれ83%、56%となった。
耐熱試験後の熱線(赤外光)反射能は、可視域(380〜780nm)の平均透過率70%以上、及び赤外線領域(1200〜2600nm)の透過率65%以下を同時に満たす場合を○とし、それ以外を×とした。
また、この透明導電ガラスのホール移動度の温度依存性を測定し、活性化エネルギーを求めたところ、10.3meVとなった。結果を図2に示す。
このことは、低温で測定しても移動度の低下が抑制されるため、赤外光透過率の変化が小さいことを意味する。
参考例2及び実施例〜6
ターゲットの組成、成膜時の基板温度、アニール酸素分圧、及びアニール温度を表1のように変更した他は、実施例1と同様にして薄膜を作製し、評価した。結果を表1に示す。
比較例1
ターゲットの組成、成膜時の基板温度、アニール酸素分圧、及びアニール温度を表1のように変更した他は、実施例1と同様にして薄膜を作製し、評価した。結果を表1に示す。
比較例1で作製した薄膜は、Inが少なすぎるため、赤外光遮閉能に劣った。
比較例2
ターゲットの組成をインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)に変更し、成膜時の基板温度、アニール酸素分圧、及びアニール温度を表1のように変更した他は、実施例1と同様にして薄膜を作製し、評価した。結果を表1、図1、2に示す。
IGZO膜は赤外光遮蔽能に劣り、さらに活性化エネルギーが高いため、低温での赤外光遮蔽能がさらに大きく低下する。
比較例3
ターゲットの組成、成膜時の基板温度、アニール酸素分圧、及びアニール温度を表1のように変更した他は、実施例1と同様にして薄膜を作製し、評価した。結果を表1に示す。
活性化エネルギーが大きいため、低温でのキャリア移動度が大きく低下し、赤外光吸収率が低下した。
比較例4
成膜時間を15分とし、アニール処理を行わなかった他は、実施例1と同様にして薄膜を作製し、評価した。結果を表1に示す。
この結果、ガラス基板上に、膜厚が約100nmの透明導電性酸化物が形成された透明導電ガラスが得られた。
参考例1
ターゲットにITOを用い、成膜時の基板温度、及びアニール酸素分圧を表1のように変更した他は、実施例1と同様にして薄膜を作製し、評価した。結果を表1に示す。
ITOは優れた性能を有するが、Inの含有量が90%以上であるため原材料コストに課題が残る。
本発明の透明導電膜は薄膜トランジスタの透明電極等に用いることができる。

Claims (8)

  1. 酸素分圧50〜200hPaの雰囲気でアニール処理して得られる透明導電膜であって、
    前記透明導電膜は、
    少なくともインジウム、錫及び亜鉛を含有し、
    In/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.25〜0.6であり、Sn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.3であり、かつZn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.5であり、
    可視領域の光線透過率が70%以上であり、赤外領域の光線透過率が65%以下である透明導電膜。
  2. 耐熱試験後の赤外領域の光線透過率が65%以下である請求項に記載の透明導電膜。
  3. 活性化エネルギーが1meV以上15meV以下である請求項1又は2に記載の透明導電膜。
  4. In/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.44〜0.6である請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電膜。
  5. 少なくともインジウム、錫及び亜鉛を含有し、In/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.25〜0.6であり、Sn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.3であり、Zn/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.15〜0.5であるスパッタリングターゲットを用いて、基板上にスパッタリング法により膜を形成し、前記膜を基板温度〜700℃の範囲で酸素分圧50〜200hPaの雰囲気でアニールすることを含む透明導電膜の製造方法。
  6. In/(In+Sn+Zn)で表わされる原子比が0.44〜0.6である請求項5に記載の透明導電膜の製造方法。
  7. 前記アニールを、基板温度以上であって400〜700℃の範囲で行う請求項5又は6に記載の透明導電膜の製造方法。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法で得られる透明導電膜。
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