JP5772792B2 - 電池用電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電池用電極の製造方法、特には転写技術を利用した電池用電極の製造方法に関する。
携帯電話やデジタルカメラなどの携帯機器用電源としてリチウムイオン電池が広く利用されている。また、自動車業界においても、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)等に搭載するための高出力かつ高容量のリチウムイオン電池の開発が進められている。
リチウムイオン電池等の非水電解質電池における正極及び負極の各電極は、従来、電極活物質をバインダー等と混合し適切な溶媒を加えてスラリー状にしたものを、金属箔等からなる集電体の片面に所定の厚さで塗工(塗布)して乾燥させ、続いて当該集電体のもう一方の面に同じ操作を繰り返すことによって製造されている。
しかしながら、電極活物質及びバインダーを含むスラリーを集電体に片面ずつ塗工する従来の方法では、1回目の塗工操作と2回目の塗工操作とが時間的に間隔を置いて行われるため、その間にスラリーの状態変化、例えばスラリーの粘度変化や沈降などが生じることがある。このような場合には、たとえ同じスラリーを用いて同じ条件の下で1回目の塗工操作と2回目の塗工操作を行ったとしても、集電体の両面で塗工量や塗工厚さが変化してバラツキが生じるという問題がある。
特許文献1では、電極活物質及びバインダーを含む電極合剤塗料を両面に塗布すべき帯状電極集電体を一定経路に沿って走行させ、集電体の一方の面には、集電体の走行方向とは逆方向に回転する塗布ロールを介して電極合剤塗料を転写塗布し、集電体の他方の面には、ダイノズルコータにより電極合剤塗料を直接的に塗布し、集電体両面に電極合剤塗料層を形成し、その後、両面の電極合剤塗料層を乾燥して、電極集電体の両面に電極活物質層を有するシート状電極を形成することを含む電池用電極の製造方法、及び当該方法を実施するための両面塗布装置が記載されている。また、特許文献1では、当該特許文献に記載の両面塗布装置によれば、効率良く電極集電体の両面に塗料を塗布することができ、均一厚みの塗布層を形成することができると記載されている。
特開2002−361152号公報
特許文献1に記載の発明のように、集電体の両面に同時又はほぼ同時に電極合剤塗料を塗工する方法では、時間的に間隔を置いて片面ずつ電極合剤塗料を塗工する場合に生じる問題、すなわち1回目の塗工操作と2回目の塗工操作との間でスラリー状の電極合剤塗料の状態が変化することにより集電体の両面で塗工量や塗工厚さなどにバラツキが生じるという問題を回避しうる。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、例えば、塗工操作の際に抜き取り検査等で集電体の塗工量などを測定したとしても、集電体の両面に塗工がされているために片面ずつの正確な塗工データを得ることはできない。したがって、特許文献1に記載の方法では、このような測定によって得られた情報をその後の塗工操作にうまくフィードバックして集電体の片面及び/又は両面の塗工条件等を調整することができないため、集電体の両面において均一な電極層を継続的に形成することは難しい。
そこで、本発明は、集電体の両面においてより均一な電極層を確実に形成することができる新規な電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)集電体の第1面に電極活物質及びバインダーを含有するスラリーを塗工して前記集電体の第1面上に第1電極層を形成する第1塗工工程、
前記第1塗工工程と同時に、前記集電体とは別のシート材料の一方の面に前記スラリーと同じスラリーを塗工して前記シート材料上に第2電極層を形成する第2塗工工程、
前記第1面とは反対側の前記集電体の第2面と前記シート材料上の前記第2電極層とが接触するように前記集電体と前記シート材料を積層させた積層体をプレスすることにより、前記集電体の第2面上に前記第2電極層を転写する転写工程、並びに
前記積層体から前記シート材料を剥離する剥離工程
を含み、前記集電体の少なくとも第2面が1.8μm以上の表面粗さ(Rz)を有することを特徴とする、電池用電極の製造方法。
)前記集電体の少なくとも第2面が2.0μm以上の表面粗さ(Rz)を有することを特徴とする、上記()に記載の方法。
)前記集電体の第2面が、前記集電体の第1面よりも高い表面粗さ(Rz)を有することを特徴とする、上記()又は()に記載の方法。
)前記スラリーが固体電解質をさらに含むことを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載の方法。
)前記集電体が貫通孔を有していないことを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載の方法。
)前記シート材料が樹脂シートであることを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載の方法。
本発明の方法によれば、同じスラリーを用いて集電体と当該集電体とは異なるシート材料のそれぞれ一方の面に同時に電極層を形成し、次いで凹凸形状を有する集電体のもう一方の面とシート材料上の電極層とを接触させてそれらをプレスすることにより、当該集電体のもう一方の面上に第2電極層を転写することができ、しかも当該集電体の一方の面ともう一方の面の間で塗工量において高い均一性を有する電池用電極を製造することができる。また、本発明の方法によれば、上記のスラリーが固体電解質を含む場合においても、同様に集電体の両面においてより均一な電極層を確実に形成することができるので、本発明の方法は、従来の電解液を用いた電池のための電極だけでなく、固体電解質を用いた全固体電池のための電極の製造においても適用することが可能である。さらに、本発明の方法では、塗工操作は別々の材料すなわち集電体とシート材料の一方の面にのみ実施されるので、例えばそれぞれの塗工操作においてより均一な電極層が形成された集電体及びシート材料のみを次の転写工程において使用することもできる。このような場合には、集電体の両面に同時又はほぼ同時にスラリーを塗工して電極層を形成する方法と比較しても、集電体の両面においてより均一な電極層を確実に形成することが可能である。
本発明の方法における転写工程を模式的に示す図である。 (a)は、貫通孔を有していない集電体を用いた電極を含む電池の模式断面図であり、(b)は、貫通孔を有する集電体を用いた電極を含む電池の模式断面図である。 実施例1並びに比較例1及び2の各負極材料に関する塗工量の均一性についての測定結果を示すグラフである。 (a)は比較例2の負極材料の転写状態を示す写真であり、(b)は実施例1の負極材料の転写状態を示す写真である。 集電体の表面粗さ(Rz)と転写率(%)との関係を示すグラフである。
本発明の電池用電極の製造方法は、集電体の第1面に電極活物質及びバインダーを含有するスラリーを塗工して前記集電体の第1面上に第1電極層を形成する第1塗工工程、前記第1塗工工程と同時に、前記集電体とは別のシート材料の一方の面に前記スラリーと同じスラリーを塗工して前記シート材料上に第2電極層を形成する第2塗工工程、前記第1面とは反対側の前記集電体の第2面と前記シート材料上の前記第2電極層とが接触するように前記集電体と前記シート材料を積層させた積層体をプレスすることにより、前記集電体の第2面上に前記第2電極層を転写する転写工程、並びに前記積層体から前記シート材料を剥離する剥離工程を含み、前記集電体の少なくとも第2面が凹凸形状を有することを特徴としている。
先に記載したとおり、電極活物質を含むスラリーを集電体に片面ずつ塗工する従来の方法では、1回目の塗工操作と2回目の塗工操作の間でスラリーの状態が変化して集電体の両面で塗工量や塗工厚さにバラツキが生じるという問題がある。一方で、集電体の両面に同時にスラリーを塗工する方法においては、片面ずつの塗工量等を容易かつ正確に測定することができないために、塗工操作の際の測定等によって得られた情報をその後の塗工操作にうまくフィードバックして、集電体の両面において均一な電極層を継続的かつ確実に形成することができないという問題がある。
例えば、リチウムイオン電池においては、正極及び負極のそれぞれがリチウムイオンを吸蔵及び放出し、そうしてこれらの電極間でリチウムイオンをやり取りすることによって充電と放電が行われている。しかしながら、これらの電極を構成する集電体上の電極層が厚さに関して均一ではなくムラがある場合には、正極と負極との間で容量のバランスが崩れるために、これらの電極間でのリチウムイオンのやり取りをうまく行うことができなくなる場合がある。その結果として、例えば、負極にリチウムが金属として析出し、電池容量の低下や安全性の低下といった問題を引き起こす場合がある。したがって、リチウムイオン電池等の電極を製造する際には、集電体上に形成される電極層の均一性を向上させることが極めて重要である。
本発明者らは、集電体の一方の面に電極活物質及びバインダーを含有するスラリーを塗工して第1電極層を形成し、それと同時に別のシート材料の一方の面に同じスラリーを塗工して第2電極層を形成し、次いで凹凸形状を有する集電体のもう一方の面とシート材料上の第2電極層とを接触させた状態で加圧することにより、当該集電体のもう一方の面上に第2電極層を確実に転写することができ、しかも当該集電体の一方の面ともう一方の面との間で塗工量において高い均一性を達成することができることを見出した。
以下、本発明の方法は、理解を容易にするため、リチウムイオン電池において用いられる電極(正極及び負極)を製造する場合について詳しく説明される。しかしながら、本発明の方法は、このような特定の電池における電極の製造に何ら限定されるものではなく、同様の構成を有する他の電池、例えばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの電極の製造においても幅広く適用できることは言うまでもない。
本発明の方法によれば、まず、第1塗工工程において、集電体の一方の面すなわち第1面に電極活物質及びバインダーを含有するスラリーが塗工され、当該集電体の第1面上に第1電極層が形成される。ここで、集電体としては、特に限定されないが、例えば金属製の箔等からなる材料を使用することができる。例えば、本発明の方法によってリチウムイオン電池の正極を製造する場合には、集電体としてはアルミニウム箔等の材料を使用することができ、一方で、本発明の方法によってリチウムイオン電池の負極を製造する場合には、集電体としては銅箔等の材料を使用することができる。
本発明の方法によれば、電極活物質としては、当業者に公知の任意の材料を使用することができる。特に限定されないが、例えば、正極の電極活物質としては、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物などを使用することができ、一方で、負極の電極活物質としては、非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、黒鉛等のカーボン系材料を使用することができる。
本発明の方法によれば、バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂,酢酸ビニル共重合体、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)、アラビアゴム等のゴム、あるいはそれらの組み合わせを使用することができる。
なお、本発明の方法においては、上記の電極活物質及びバインダーを含有するスラリーを調製するのに溶媒が使用される。このような溶媒としては、上記の電極活物質及びバインダーを溶解及び分散できるものであればよく特に限定されないが、例えば、ヘプタン、ペンタン、オクタン、プロパン、ブタン等の化合物を使用することができる。
また、例えば、本発明の方法によってリチウムイオン電池等の正極を製造する場合には、任意選択で、上記のスラリーにアセチレンブラック(AB)、天然黒鉛、人造黒鉛等の導電助剤をさらに添加することができる。
上記のようにして調製されたスラリーは、従来公知の任意の方法又は手段、例えば、スリットコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の適切な塗工装置を用いて集電体の第1面上に、一般的には約1mg/cm2〜30mg/cm2(集電体の片面あたりの量)の範囲で塗工され、次いで乾燥されて第1電極層が形成される。なお、乾燥操作は、例えば、自然乾燥、熱風、低湿風、真空、赤外線、遠赤外線及び/又は電子線によって実施することができる。
本発明の方法によれば、第2塗工工程では、上記第1塗工工程と同時に、集電体とは別のシート材料の一方の面に上記第1塗工工程で使用したスラリーと同じスラリーが、第1塗工工程の場合と同様にスリットコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の適切な塗工装置を用いて塗工され、次いで同様に乾燥されて当該シート材料上に第2電極層が形成される。このように第1塗工工程と第2塗工工程を同時に実施することで、時間的に間隔を置いて片面ずつ塗工操作を行う場合のようなスラリーの状態変化に起因する集電体両面での塗工量等のバラツキを確実に抑えることができる。したがって、本発明の方法によれば、最終的に得られる電極において、集電体の両面でより均一な電極層を確実に形成することが可能である。
ここで、上記のシート材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる樹脂シートを使用することができる。このような樹脂シートを本発明の方法におけるシート材料として使用することで、後で説明する転写工程において当該シート材料上の第2電極層を上記の集電体に転写した後、得られた電極から比較的容易に当該シート材料を剥離させることができる。
次に、本発明の方法によれば、転写工程において、上記第1電極層が形成された集電体の第1面とは反対側の当該集電体の第2面に上記シート材料上の第2電極層が加圧転写される。図1は、本発明の方法における転写工程を模式的に示す図である。図1を参照して説明すると、本発明の方法における転写工程では、第1電極層12が形成された集電体11の第1面とは反対側の当該集電体11の第2面と、シート材料13上の第2電極層14とが接触するように集電体11とシート材料13を積層させた積層体を転写ロール15によってプレスすることにより、集電体11の第2面上に第2電極層14が転写される。なお、図1では、本発明の理解を容易にするため、転写ロール15によって集電体11の第2面上に第2電極層14が転写された後、シート材料13を引き剥がすようにして積層体からシート材料13を剥離させることが描かれている。
上記のように、本発明の方法によれば、同じスラリーを用いて同時に塗工操作が行われるものの、それぞれの塗工操作は別々の材料、すなわち集電体とシート材料の一方の面にのみ実施される。それゆえ、それぞれの塗工操作について、例えば、塗工操作の際に抜き取りで又は塗工操作の後で品質検査等を実施することで、集電体及びシート材料の片面のみの正確な塗工データを得ることができる。
したがって、例えば、塗工操作の際に抜き取りで品質検査を行った場合には、そのような品質検査によって得られた情報をその後の塗工操作にうまくフィードバックして集電体又はシート材料上により均一な電極層を形成することができ、そうして得られた集電体又はシート材料を次の転写工程において使用することができる。一方で、塗工操作の後で品質検査を行った場合には、形成された電極層について基準を満たす集電体又はシート材料のみを次の転写工程において使用することができる。したがって、本発明の方法によれば、集電体の両面に同時又はほぼ同時にスラリーを塗工して電極層を形成する方法と比較しても、集電体の両面においてより均一な電極層を確実に形成することが可能である。
なお、本発明の方法における転写工程の際の圧力については、集電体の第2面にシート材料上の第2電極層を確実に転写することができる範囲内のものであればよく特に限定されないが、一般的には、約0.01ton/cm2〜約10ton/cm2、好ましくは約0.1ton/cm2〜約5ton/cm2であってよい。
本発明の方法によれば、集電体の少なくとも第2面は凹凸形状を有する。このように集電体の第2面が凹凸形状を有することで、上記の転写工程において集電体とシート材料をプレスした際に、集電体の第2面の凹凸部分にシート材料上の第2電極層が食い込むようにして圧接され、それゆえ集電体の第2面にシート材料上の第2電極層を高い密着性で以って確実に転写することができる。
なお、このような凹凸形状は、集電体の第2面にシート材料上の第2電極層を確実に転写することができるものであればよく特に限定されないが、例えば1.8μm以上、特には2.0μm以上の表面粗さ(Rz)を有するようなものであることが好ましい。一方で、集電体の第2面の表面粗さ(Rz)が高すぎる場合には、当該集電体の機械的強度や導電性が低下してしまう場合がある。したがって、集電体の第2面の表面粗さ(Rz)は、例えば5.0μm以下、特には4.0μm以下とすることが好ましい。
一方で、集電体の第1面は、当該集電体の第2面と同様の凹凸形状を有していてもよいし又は有していなくてもよく、特には当該集電体の第2面と同様の表面粗さ(Rz)を有していてもよいし又は有していなくてもよい。なお、本発明の方法の好ましい態様によれば、集電体の第2面は、当該集電体の第1面よりも高い表面粗さ(Rz)を有する。例えば、集電体の第1面と第2面の両方が高い表面粗さ(Rz)を有する場合には、集電体の機械的強度や導電性が低下してしまう場合がある。したがって、集電体の第2面のみを上で述べたような範囲の表面粗さ(Rz)にしてそれによって当該集電体の第2面にシート材料上の第2電極層を確実に転写できるようにしつつ、一方で、集電体の第1面は第2面よりも低い表面粗さ(Rz)にし、特には滑らかな表面にして当該集電体の機械的強度や導電性を確保するようにすることが好ましい。
さらに本発明の方法の好ましい態様によれば、集電体としては、貫通孔を有していない材料が使用される。当技術分野においては、集電体と電極層との間の密着性を改善するために、例えば複数の貫通孔を有する材料、例えば金属メッシュシート等からなる集電体を使用することがある。というのも、このような材料を集電体として使用することで、当該集電体の両面に形成される電極層がこれらの貫通孔を介して結着され、いわゆるアンカー効果によって強固な密着状態を得ることができるからである。
一方で、リチウムイオン電池は、一般的には、図2(a)に示すように、正極集電体21及び当該正極集電体21の両面に形成された正極電極層22を含む正極20と、同様に負極集電体31及び負極電極層32を含む負極30とがセパレータ又は固体電解質層40を介して多数積層された構造を有し、そして当該セパレータ又は固体電解質層40を介して対面した正極電極層22と負極電極層32の間でリチウムイオンをやり取りすることによって充電及び放電が行われる。
ここで、正極集電体21及び負極集電体31として、例えば、複数の貫通孔を有する材料を使用した場合には、図2(b)に示すように、セパレータ又は固体電解質層40を介して互いに対面している正極電極層22と負極電極層32の間だけでなく、特に電気的な抵抗が低い場所ではこれらの各電極層の反対側にある電極層との間でもリチウムイオンのやり取りが行われる場合がある。このような場合には、正極20及び負極30との間で容量のバランスが著しく崩れてしまい、その結果として電池の性能低下を引き起こすことがある。そこで、本発明の方法では、集電体としては貫通孔を有していない材料を使用し、それによって最終的に得られる電池において上記のような問題が生じることを回避することが好ましい。
本発明の方法によれば、電極活物質及びバインダーを含む上記のスラリーは、固体電解質をさらに含むことができる。一般的に、スラリー又はそれによって得られる電極層が電極活物質やバインダー以外に固体電解質を含む場合には、上記のような加圧転写によって集電体に電極層を転写しても、当該固体電解質を含まない場合と比較して当該電極層が剥れ易いという問題がある。しかしながら、本発明の方法によれば、電極層が転写される集電体の第2面が上記のように凹凸形状、例えば1.8μm以上、特には2.0μm以上の表面粗さ(Rz)によって構成される凹凸形状を有することで、固体電解質を含む電極層を当該集電体の第2面上の凹凸部分に食い込むようにして高い密着性で以って確実に転写することができる。したがって、本発明の方法は、固体電解質を含まない従来の電解液を用いた電池のための電極だけでなく、固体電解質を用いた全固体電池のための電極の製造においても適用することが可能である。
なお、上記の固体電解質としては、当業者に公知の任意の材料を使用することができ、特に限定されないが、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などを使用することができる。硫化物系固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、Li2S−P25(Li2S:P25=50:50〜100:0)、Li2S−P25−Li2O、Li2S−P25−LiI、Li2S−P25−Li2O−LiI、Li2S−SiS2、Li2S−SiS2−LiI、Li2S−SiS2−LiBr、Li2S−SiS2−LiCl、Li2S−SiS2−B23−LiI、Li2S−SiS2−P25−LiI、Li2S−B23、Li2S−P25−Zmn(Z=Ge、Zn、Ga)、Li2S−GeS2、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li2S−SiS2−LixMOy(M=P、Si、Ge、B、Al、Ga、In)等を使用することができる。一方で、酸化物系固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、LiPON(リン酸リチウムオキシナイトライド)、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO43、La0.51Li0.34TiO0.74、Li3PO4、Li2SiO2、Li2SiO4等を使用することができる。
最後に、本発明の方法によれば、剥離工程において、上記の転写工程で得られた積層体からシート材料を単に引き剥がす等して剥離させることにより電池用電極を得ることができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
本実施例では、本発明の方法によって電極を製造し、得られた電極の両面に形成された電極層の均一性などについて調べた。
[実施例1]
[スラリーの調製]
負極活物質としてのカーボンと、固体電解質としての8Li2O・67Li2S・25P25と、バインダーとしてのブタジエンゴム(BR)とを65:30:5の重量比で混合し、ヘプタンを溶媒として負極用スラリーを調製した。
[電極の製造]
集電体として2つの面の表面粗さ(Rz)がそれぞれ0.8μm及び2.0μmである銅箔を使用し、この銅箔の平滑側の面(すなわちRz=0.8μm)に上で調製したスラリーを塗工すると同時に、同じスラリーを別の樹脂シートの一方の面に同ギャップ(すなわち樹脂シートとコータとの間の距離を銅箔とコータとの間の距離と同じにして)で塗工した。なお、塗工面積はそれぞれ5×5cm2であり、塗工量はそれぞれ15mg/cm2であった。
次いで、銅箔のもう一方の粗い面(すなわちRz=2.0μm)と樹脂シート上の電極層とが接触するようにして銅箔と樹脂シートを積層し、得られた積層体を転写ロールを用いて1ton/cm2の圧力でプレスすることにより銅箔の粗面上に樹脂シート上の電極層を転写した。最後に、積層体から樹脂シートを剥離して、銅箔の両面に電極層が形成された負極材料を得た。
[比較例1]
本比較例では、集電体として両面とも平滑(Rz=0.8μm)な銅箔を使用し、当該銅箔に片面ずつスラリーを塗工して負極材料を製造した。具体的には、実施例1で調製したスラリーをこの銅箔の一方の面に塗工した後、銅箔を巻き返してもう一方の面に同ギャップで同じスラリーを塗工した。なお、銅箔の両面の塗工面積はそれぞれ5×5cm2であり、塗工量はそれぞれ15mg/cm2であった。
[比較例2]
集電体として両面とも平滑(Rz=0.8μm)な銅箔を使用したこと以外は実施例1と同様にして、銅箔の両面に電極層が形成された負極材料を得た。
[電極層の均一性の評価]
実施例1並びに比較例1及び2において得られた各負極材料に関し、集電体である銅箔の両面に形成された2つの電極層の間の塗工量の均一性(バラツキ)について調べた。具体的には、まず、実施例1並びに比較例1及び2の各負極材料(5×5cm2)を1cm2角(計25個)にカットした。次に、カットされた各試料について、溶媒としてヘプタンを用いて試料の表面(実施例1の銅箔における「平滑側」に相当)と裏面(実施例1の銅箔における「転写側」に相当)の各電極層を剥がし、それぞれの乾燥重量から単位面積あたりの塗工量を決定した。得られた塗工量のデータに基づいて、銅箔の表面と裏面との間の塗工量のバラツキを調べた。その結果を図3に示す。
図3は、実施例1並びに比較例1及び2の各負極材料に関する塗工量の均一性についての測定結果を示すグラフである。図3は、横軸に各負極材料の表面塗工量に対する裏面塗工量の割合(%)を示し、縦軸に各割合における度数(25個中の個数)を示す。図3の結果から明らかなように、銅箔に片面ずつスラリーを塗工する従来の方法で製造した比較例1の負極材料では、裏面すなわち2回目の塗工操作による塗工量が1回目の塗工操作による塗工量に比べて低くなる傾向が見られた。これに対し、本発明の方法によって製造された負極材料では、25個のカットされた試料のうち約半分の試料において負極材料の表面と裏面とでそれらの塗工量が同じであり、それゆえ比較例1と比べて非常に高い塗工量の均一性を達成することができた。
一方で、銅箔の平滑面(すなわちRz=0.8μm)に電極層を転写した比較例2の負極材料では、図3の結果から明らかなように、負極材料の裏面(転写側)の塗工量が著しく低かった。比較例2の負極材料では、図4(a)の写真に示すように、転写工程の後、樹脂シートを剥離させた際に当該樹脂シート(図中の透明シート)上に電極層(図中の灰色部分)の多くが残っており、転写ロールを用いた加圧転写によっても銅箔上に電極層を十分に転写することができなかった。これとは対照的に、銅箔の粗い面(すなわちRz=2.0μm)に電極層を転写した実施例1の負極材料では、図4(b)の写真に示すように、樹脂シート上の電極層を高い密着性で以って確実に銅箔に転写できていることがわかる。
[実施例2]
[集電体の表面粗さの影響]
本実施例では、集電体の表面粗さ(Rz)が電極層の転写に与える影響について調べた。具体的には、種々の表面粗さ(Rz)を有する銅箔を用いて、実施例1と同様にして樹脂シート上の電極層を当該銅箔に転写した場合の転写率について調べた。その結果を図5に示す。図5は、集電体の表面粗さ(Rz)と転写率(%)との関係を示すグラフである。なお、転写率(%)は、[集電体に転写された電極層の重量]/[樹脂シートに塗工した電極層の重量]×100として算出した。
図5を参照すると、1.8μmの表面粗さ(Rz)を有する銅箔に電極層を加圧転写した場合には、約90%の転写率で以って銅箔に電極層を転写できていることがわかる。さらに高い表面粗さ(Rz)、すなわち2.0μm及び2.6μmの表面粗さ(Rz)を有する銅箔に電極層を加圧転写した場合には、100%に極めて近い転写率を達成することができた。
11 集電体
12 第1電極層
13 シート材料
14 第2電極層
15 転写ロール

Claims (6)

  1. 集電体の第1面に電極活物質及びバインダーを含有するスラリーを塗工して前記集電体の第1面上に第1電極層を形成する第1塗工工程、
    前記第1塗工工程と同時に、前記集電体とは別のシート材料の一方の面に前記スラリーと同じスラリーを塗工して前記シート材料上に第2電極層を形成する第2塗工工程、
    前記第1面とは反対側の前記集電体の第2面と前記シート材料上の前記第2電極層とが接触するように前記集電体と前記シート材料を積層させた積層体をプレスすることにより、前記集電体の第2面上に前記第2電極層を転写する転写工程、並びに
    前記積層体から前記シート材料を剥離する剥離工程
    を含み、前記集電体の少なくとも第2面が1.8μm以上の表面粗さ(Rz)を有することを特徴とする、電池用電極の製造方法。
  2. 前記集電体の少なくとも第2面が2.0μm以上の表面粗さ(Rz)を有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
  3. 前記集電体の第2面が、前記集電体の第1面よりも高い表面粗さ(Rz)を有することを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
  4. 前記スラリーが固体電解質をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記集電体が貫通孔を有していないことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記シート材料が樹脂シートであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
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