以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の緩衝装置Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を伸側室R1および圧側室R2に区画する隔壁部材たるピストン2と、上記した伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路3a,3bと、圧力室R3と、圧力室R3内に移動自在に挿入されて当該圧力室R3を伸側流路5を介して伸側室R1に連通される伸側圧力室7と圧側流路6を介して圧側室R2に連通される圧側圧力室8とに区画するフリーピストン9と、当該フリーピストン9の圧力室R3に対する変位を抑制する附勢力を発生するばね要素10とを備えて構成され、車両における車体と車軸との間に介装されて減衰力を発生し車体の振動を抑制するものである。
また、緩衝装置Dは、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド4を備えており、ピストンロッド4の一端はピストン2に連結されるとともに、他端である上端は、シリンダ1の上端を封止する環状のヘッド部材11によって摺動自在に軸支されている。なお、シリンダ1の下端は、ベースバルブ12を備えたバルブケース13が嵌合されている。
さらに、シリンダ1の外周には、シリンダ1を覆ってシリンダ1との間の環状隙間で圧力室R3を形成するハウジングパイプ14が設けられる。このハウジングパイプ14の外周には、当該ハウジングパイプ14の外周を覆ってハウジングパイプ14との間の環状隙間でリザーバRを形成する外筒15が設けられている。そして、ハウジングパイプ14の上端は上記したヘッド部材11が嵌合されていてハウジングパイプ14の上端が閉塞され、ハウジングパイプ14の下端はバルブケース13が嵌合されていてハウジングパイプ14の下端が閉塞されている。また、外筒15の上端は上記したヘッド部材11が嵌合されていて外筒15の上端が閉塞され、外筒15の下端はキャップ16によって閉塞されている。なお、外筒15とハウジングパイプ14との間に形成されたリザーバRはバルブケース13に設けたポート13a,13bによってシリンダ1内の圧側室R2へ連通されている。そして、伸側室R1および圧側室R2さらには圧力室R3内には作動油等の液体が充満される。
この緩衝装置Dの場合、片ロッド型の緩衝装置であるので、伸長作動時にはピストンロッド4がシリンダ1から退出する体積分の液体がシリンダ1内で不足し、収縮作動時にはピストンロッド4がシリンダ1内に侵入する体積分の液体がシリンダ1内で過剰となるが、液体がシリンダ1内で過剰となる場合にはリザーバRで吸収し、液体がシリンダ1内で不足する場合にはリザーバRから液体がシリンダ1内に供給されて体積補償がなされることになる。なお、この実施の形態では、リザーバRを設けて体積補償を行っているが、シリンダ1内に摺動自在に摺動隔壁を挿入してシリンダ1内に気体室を設け、当該気体室の容積変化によって体積補償するようにしてもよい。なお、上記した作動室たる伸側室R1、圧側室R2および圧力室R3内に充填される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。
以下、各部について詳細に説明すると、シリンダ1には、図1中上端近傍に内外を連通する透孔でなる伸側流路5が設けられており、図1中下端近傍に内外を連通する透孔でなる圧側流路6が設けられている。そして、シリンダ1、ハウジングパイプ14および外筒15の図1中上端には、環状のヘッド部材11が嵌合されており、ヘッド部材11の上方には環状のシール部材17が積層され、外筒15の図1中上端を加締めることによって、ヘッド部材11およびシール部材17がシリンダ1、ハウジングパイプ14および外筒15に固定されている。また、シリンダ1およびハウジングパイプ14の図1中下端には、バルブケース13が嵌合され、外筒15の図1中下端にはキャップ16が装着されており、シリンダ1およびハウジングパイプ14は、ヘッド部材11とバルブケース13によって挟持されて外筒15に固定されている。なお、シール部材17は、ヘッド部材11に挿通されるピストンロッド4の外周と外筒15との間をシールしている。
ピストンロッド4は、図1に示すように、その下端側に小径部4aが形成されるとともに、小径部4aの先端側には螺子部4bが形成されている。ピストン2は、環状に形成されるとともに、その内周側にピストンロッド4の小径部4aが挿入されている。また、このピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路3a,3bが設けられ、減衰通路3aの図1中上端は減衰力発生要素である圧側リーフバルブV1にて閉塞され、他方の減衰通路3bの図1中下端も減衰力発生要素である伸側リーフバルブV2によって閉塞されている。
この圧側リーフバルブV1および伸側リーフバルブV2は、共に環状に形成され、内周側にはピストンロッド4の小径部4aが挿入され、伸側リーフバルブV2の下方から螺子部4bに螺着されるピストンナット18によって、ピストン2、圧側リーフバルブV1および伸側リーフバルブV2がピストンロッド4の小径部4aに固定される。
そして、圧側リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮時に圧側室R2と伸側室R1の差圧によって撓んで開弁し減衰通路3aを開放して圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに抵抗を与えるとともに、緩衝装置Dの伸長時には減衰通路3aを閉塞するようになっており、他方の伸側リーフバルブV2は、圧側リーフバルブV1とは反対に緩衝装置Dの伸長時に減衰通路3bを開放し、収縮時には減衰通路3bを閉塞する。すなわち、圧側リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮時における圧側減衰力を発生する減衰力発生要素であり、他方の伸側リーフバルブV2は、緩衝装置Dの伸長時における伸側減衰力を発生する減衰力発生要素である。また、圧側リーフバルブV1および伸側リーフバルブV2で減衰通路3a,3bを閉じた状態にあっても、図示はしない周知のオリフィスによって伸側室R1と圧側室R2とが連通されるようになっており、オリフィスは、たとえば、圧側リーフバルブV1および伸側リーフバルブV2の外周に切欠を設けたり、圧側リーフバルブV1および伸側リーフバルブV2が着座する弁座に凹部を設けるなどして形成される。
このように、通路を一方通行とする場合には、緩衝装置Dのように、減衰通路3a,3bを設けてそれぞれを緩衝装置Dの伸長時あるいは収縮時のみ液体が通過するように構成してもよく、また、通路が双方向流れを許容する場合には一つのみを設けるようにしてもよい。さらに、減衰力発生要素は、オリフィスとリーフバルブを並列した構成以外にも、たとえば、チョークとリーフバルブを並列させる構成やその他の構成を採用することもできるのは当然である。
バルブケース13は、圧側室R2とリザーバRとを連通するポート13a,13bを備えており、このポート13aの下端には、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与えるベースバルブ12が設けられ、ポート13bの上端には、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れを許容するチェックバルブ23が設けられている。そして、ベースバルブ12は、緩衝装置Dが収縮して圧側室R2を圧縮する際に、シリンダ1で過剰となる液体をリザーバRへ排出する際に、液体の流れに抵抗を与えて圧側リーフバルブV1と協働して圧側の減衰力を発揮する。また、緩衝装置Dが伸長する際には、チェックバルブ23がポート13bを開放してシリンダ1内で不足する液体がリザーバRから供給されることになる。
つづいて、圧力室R3内には、シリンダ1の外周およびハウジングパイプ14の内周の双方に摺接する環状のフリーピストン9が挿入されており、圧力室R3は、フリーピストン9によって、伸側流路5を介して伸側室R1に連通される図1中上方の伸側圧力室7と、圧側流路6を介して圧側室R2に連通される図1中下方の圧側圧力室8とに区画されている。
フリーピストン9の内周には環状溝9aが設けられており、この環状溝9a内にはシリンダ1の外周に摺接するシールリング19が装着されている。また、フリーピストン9の外周にも環状溝9bが設けられており、この環状溝9b内にはハウジングパイプ14の内周に摺接するシールリング20が装着されている。なお、環状溝9a,9bは、フリーピストン9に軸方向にずらして設けられているので、環状溝9a,9bをフリーピストン9の径方向へ並べて配置されるよりも、フリーピストン9の径方向の肉厚を薄くすることができ、シリンダ1とハウジングパイプ14の狭いスペースへの挿入も無理なく行うことができる。
この場合、圧側流路6は、孔径を通過する液体に抵抗を与えることができるような径に設定しており絞り通路として機能するようなっているが、伸側流路5についても絞り通路として機能させるようにしてもよいし、実現したい減衰特性によって伸側流路5と圧側流路6の一方または両方を絞り通路として機能させるようにすればよい。
また、このフリーピストン9に、フリーピストン9の圧力室R3に対する変位を抑制する附勢力を作用させるためのばね要素として、伸側圧力室7内であってフリーピストン9とヘッド部材11との間に伸側コイルばね21を介装するとともに、圧側圧力室8内であってフリーピストン9とバルブケース13との間に圧側コイルばね22を介装してあり、フリーピストン9は、これら伸側コイルばね21および圧側コイルばね22でなるばね要素10によって上下側から挟持されて、圧力室R3内の所定の中立位置に位置決められた上で弾性支持されている。なお、中立位置は、圧力室R3の軸方向の中央を指すものではなく、フリーピストン9がばね要素によって位置決められる位置のことである。
以上のように構成された緩衝装置Dの動作について説明する。まず、緩衝装置Dへの入力周波数が低い場合について説明すると、同じ入力速度であるという条件下で考えると入力周波数が低い場合、フリーピストン9の振幅が大きくなると、フリーピストン9が変位するので伸側コイルばね21と圧側コイルばね22の合力によってフリーピストン9を中立位置へ戻そうとする附勢力が働き、この伸側コイルばね21と圧側コイルばね22の附勢力に見合って伸側圧力室7と圧側圧力室8のうち容積が拡大する室と容積が減少する室の圧力に差が生じ、上記拡大側の室の方が減少側の室より圧力が高くなる。
すると、伸側圧力室7と伸側室R1との差圧、および、圧側圧力室8と圧側室R2との差圧が小さくなって、伸側流路5および圧側流路6を通過する流量は減少する。この伸側流路5および圧側流路6を通過する流量の減少にともなって、減衰通路3a,3bの流量が増えることになり、緩衝装置Dの発生減衰力は大きくなる。
逆に、高周波入力時には、入力振幅が小さいため、伸側室R1から圧側室R2へ、或いは、圧側室R2から伸側室R1へ移動する1周期の流量は小さく、フリーピストン9の動く変位も小さくなる。すると、フリーピストン9が受ける伸側コイルばね21と圧側コイルばね22の附勢力も小さくなる。その分、伸側圧力室7の圧力と圧側圧力室8の圧力との差は小さくなり、伸側圧力室7と伸側室R1との差圧および圧側圧力室8と圧側室R2との差圧は大きく維持されるため、伸側流路5および圧側流路6を通過する流量が低周波時よりも大きくなり、その分、減衰通路3a,3bの流量が減少し、緩衝装置Dが発生する減衰力も減少することになる。
このように、緩衝装置Dは、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発生し、高周波数域の振動に対しては減衰力を小さくすることができ、入力振動周波数に依存して車両に適した減衰力を発生することができる。
そして、本発明の緩衝装置Dにあっては、圧力室R3がシリンダ1の外周を覆う筒状とされるので、圧力室R3をピストンロッド4の先端に設ける必要が無いから緩衝装置Dのストローク長を犠牲にすることが無く、また、緩衝装置Dの全長も長くなることが無い。したがって、本発明の緩衝装置Dによれば、ストローク長との確保と車両への搭載性を両立することが可能となる。
また、圧力室R3を筒状とすることは、シリンダ1とシリンダ1の外周を覆うハウジングパイプ14との間で圧力室R3を形成することで、実現することができる。さらに、ハウジングパイプ14の外周を覆う外筒15を設けて、外筒15とハウジングパイプ14との間の環状隙間をリザーバRを形成するようにすることで、リザーバRも筒状とされてシリンダ1の外周に設けられるので、リザーバRが緩衝装置Dのストローク長に影響を与えず、かつ、緩衝装置Dの全長も長くなることを回避することができる。なお、シリンダ1の外周に外筒15を設けてシリンダ1と外筒15との間にリザーバRを設け、外筒15の外周にハウジングパイプ14を設けて外筒15とハウジングパイプ14との間に圧力室R3を設けることも可能である。但し、上記したように、シリンダ1とハウジングパイプ14との間に圧力室R3を設けることで伸側圧力室7と伸側室R1との連通、圧側圧力室8と圧側室R2との連通、さらには、圧側室R2とリザーバRとの連通が容易となる点で有利である。というのは、シリンダ1の外周に外筒15を設けてシリンダ1と外筒15との間にリザーバRを設け、外筒15の外周にハウジングパイプ14を設けて外筒15とハウジングパイプ14との間に圧力室R3を設ける場合、伸側圧力室7と伸側室R1との連通および圧側圧力室8と圧側室R2との連通には、ヘッド部材11およびバルブケース13への加工が必要であり、また、圧側室R2とリザーバRとを連通するポート、ポートに設けるべきベースバルブ12およびチェックバルブ23の配置や構造が複雑となる。
さらに、伸側コイルばね21と圧側コイルばね22とが所定量圧縮されるとばね定数が大きくなるように設定される場合には、フリーピストン9が図1中上方側のストロークエンド近傍或いは下方側のストロークエンド近傍まで変位する場合、伸側コイルばね21或いは圧側コイルばね22のばね定数が大きくなって、フリーピストン9のストロークエンド側への移動を抑制する力を大きくすることがで、フリーピストン9のそれ以上のストロークエンド側への移動速度を減速させつつ変位を抑制することができる。ここで、フリーピストン9がストロークエンドまで達するまでは、高周波数の振動の入力に対してフリーピストン9が圧力室R3内で移動することができ比較的低い減衰力を発生することができるが、フリーピストン9の変位が完全に停止させられると、減衰力低減効果がなくなって最大の減衰係数で減衰力を発生することになるが、伸側コイルばね21と圧側コイルばね22とが所定量圧縮されるとばね定数が大きくなるように設定される場合、上述のように、フリーピストン9がストロークエンドにまで達するような変位を呈するとフリーピストン9の移動速度を減速させつつ変位を抑制するので、緩衝装置Dは徐々に発生減衰力を大きくするので、低い減衰力から急激に高い減衰力に変化することが無くなって、低減衰力から高減衰力への減衰力変化がなだらかとなる。したがって、この場合、緩衝装置Dにあっては、振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力がなだらかに変化することになって、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずに済む。特に、振動周波数が高周波である場合において、低い減衰力を発生しているので、発生減衰力の急激な変化を効果的に緩和することができる。なお、伸側コイルばね21と圧側コイルばね22のばね定数を所定量圧縮される大きくなるようするには、たとえば、伸側コイルばね21と圧側コイルばね22の一部にピッチが狭い部分を設けておき、所定量圧縮されるとピッチが狭い部分における線条を密着させることで、ピッチが広い部分のみがばねとして有効となるにしておくことで実現することができるし、また、ばね定数が大きい部分と小さい部分とを設けておき、所定量圧縮されるとばね定数が小さい部分の線条が密着するようにしておくことで実現してもよい。伸側コイルばね21と圧側コイルばね22にピッチが狭い部分と広い
部分を設けることには、ピッチが狭いばねとピッチが広いばねを積層して一つのばねとして機能させることも含まれ、また、伸側コイルばね21と圧側コイルばね22にばね定数が大きい部分と小さい部分を設けることには、ばね定数が大きいばねとばね定数が小さいばねを積層して一つのばねとして機能させることも含まれる。また、ばね定数が大きくなる圧縮量である上記所定量は、任意に設定することができるが、ばね定数が大きくなると高周波振動入力時において減衰力低減効果が減じられることから、フリーピストン9がストロークエンド近傍に達するまでは、ばね定数が変化しないようにした方が減衰力低減効果が減じられずに済むので好ましい。
次に、図2に示した他の実施の形態における緩衝装置D1について説明する。この他の実施の形態における緩衝装置D1は、上記した一実施の形態の緩衝装置Dの構成に、伸側室R1と圧側室R2とを減衰通路3a,3bを迂回して連通するバイパス路30と、バイパス路30の途中に、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れを許容する伸側リリーフ弁31と、当該伸側リリーフ弁31に並列されて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れを許容する圧側リリーフ弁32を加えた構成なっている。なお、この緩衝装置D1の説明に当たり、一実施の形態の緩衝装置Dと同じ構成については説明が重複するので詳しい説明を省略する。
バイパス路30は、ピストンロッド4の圧側室R2に面する図2中下端から開口してピストン2よりも図2中上方の伸側室R1へ通じるロッド内通路4cで形成される。また、ピストンロッド4は、中間部にヘッド部材11に衝合することでピストン2のそれ以上の上方側への移動を規制する弾性体でなる伸切ストッパ40を備えており、伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32はピストン2と伸切ストッパ40との間に設けられている。緩衝装置D1は、ピストンロッド4をヘッド部材11で軸支するとともに、ピストンロッド4の先端に設けたピストン2がシリンダ1に摺接することで、横方向からの力(横力)を受けた際に、ヘッド部材11とピストン2とでこの横力を受ける構造となっているため、ヘッド部材11とピストン2との嵌合長さをある程度確保する必要性から、伸切ストッパ40でピストン2とヘッド部材11の最低限必要な嵌合長さを確保するように伸び切り位置を規制しており、伸切ストッパ40とピストン2までの間の長さは緩衝装置D1のストローク長に寄与しない。そのため、ピストン2と伸切ストッパ40との間に伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32を設けても、緩衝装置D1のストローク長に全く影響を与えないので、ストローク長を犠牲にせず、緩衝装置D1の全長を長くしてしまうことが無い。
伸側リリーフ弁31は、ピストンロッド4のピストン2よりも上方側である伸側室R1側に装着されて伸側室R1をロッド内通路4cに連通する伸側ポート33aを有する伸側バルブディスク33と、当該伸側バルブディスク33に積層されて伸側ポート33aを開閉する伸側弁体34とを備えて構成されている。
また、圧側リリーフ弁32は、ピストンロッド4のピストン2よりも上方側である伸側室側であって伸側バルブディスク33よりも下方に装着されて伸側室R1をロッド内通路4cに連通する圧側ポート35aを有する圧側バルブディスク35と、圧側バルブディスク35に積層されて圧側ポート35aを開閉する圧側弁体36とを備えて構成されている。
詳しくは、ピストン2の図2中上方に積層された圧側リーフバルブV1の上方に、圧側弁体36、圧側バルブディスク35、伸側弁体34および伸側バルブディスク33の順に積層してピストンロッド4の外周に組み付けられており、伸側バルブディスク33と圧側バルブディスク35の外周には、隔壁筒37が嵌合されており、伸側バルブディスク33と圧側バルブディスク35との間の空間Aが伸側室R1から区画されている。そして、ピストンロッド4に設けたロッド内通路4cの出口端は、圧側バルブディスク35の内周に設けられて圧側ポート35aに通じる凹部35bに対向させてあり、この凹部35bおよび圧側ポート35aを介して上記した空間Aに連通されている。したがって、空間Aは、ロッド内通路4cを介して圧側室R2に連通されるとともに、伸側ポート33aおよび圧側ポート35aを介して伸側室R1にも通じている。すなわち、この場合、バイパス路30は、ロッド内通路4c、空間A、伸側ポート33a、凹部35bおよび圧側ポート35aによって構成されている。
そして、伸側弁体34は、伸側バルブディスク33の空間A側に積層されて伸側ポート33aを開閉する環状のリーフバルブとされており、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力を上回り開弁圧に達すると開弁し、伸側リリーフ弁31がバイパス路30を開放するので、伸側室R1内の液体は減衰通路3bだけでなく、バイパス路30をも通過して圧側室R2へ移動するようになる。
圧側弁体36は、圧側バルブディスク35の伸側室R1側に積層されて圧側ポート35aを開閉する環状のリーフバルブとされており、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力を上回り開弁圧に達すると開弁し、圧側リリーフ弁32がバイパス路30を開放するので、圧側室R2内の液体は減衰通路3aだけでなく、バイパス路30をも通過して伸側室R1へ移動するようになる。
なお、伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32がピストン2と伸切ストッパ40との間に設けられていれば、緩衝装置Dのストローク長を犠牲にせず、緩衝装置Dの全長を長くしてしまうことが無いので、伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32の構造は、上記した具体的な構造に限定されるものではない。
他の実施の形態における緩衝装置D1の作動について説明する。まず、伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32がバイパス路30を開放しない場合、緩衝装置D1の作動は、上記した緩衝装置Dと同じ作動となり、緩衝装置D1は、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発生し、高周波数域の振動に対しては減衰力を小さくすることができ、入力振動周波数に依存して車両に適した減衰力を発生することができる。
これに対して、緩衝装置D1に急激な大振幅の振動が入力される場面においては、入力振動周波数の如何によらずシリンダ1に対するピストン2の移動速度が高速域に達すると、伸側室R1から圧側室R2へ或いは圧側室R2から伸側室R1へ移動する流量が大きくなり、絞り通路として機能する圧側流路6の通過液体の流れに与える抵抗が伸側リーフバルブV1および圧側リーフバルブV2が液体の流れに与える抵抗よりも非常に大きくなり、液体は減衰通路3a,3bを優先的に流れて伸側室R1から圧側室R2へ或いは圧側室R2から伸側室R1へ移動しようとする。しかしながら、本実施の形態の緩衝装置D1の場合、ピストン速度が高速で図2中上方に移動して伸長作動を呈すると、高圧となった伸側室R1内の圧力が伸側リリーフ弁31に作用し、伸側リリーフ弁31が開弁動作してバイパス路30を通じて伸側室R1と圧側室R2とが連通するようになっており、また、ピストン速度が高速で図2中下方に移動して収縮作動を呈すると、高圧となった圧側室R2内の圧力が圧側リリーフ弁32に作用し、圧側リリーフ弁32が開弁動作してバイパス路30を通じて圧側室R2と伸側室R1とが連通するようになっている。
したがって、緩衝装置D1が高速で伸縮作動を呈する場合には、液体は、減衰通路3a,3bのみならず、バイパス路30を介して、伸側室R1から圧側室R2へ或いは圧側室R2から伸側室R1へ移動するようになり、緩衝装置D1の発生する減衰力を低減して、伸側リーフバルブV1および圧側リーフバルブV2の仕様で設定された値にまで高まることがない。
このように、本実施の形態の緩衝装置D1にあっては、ピストン速度が非常に高速となって圧力室R3を介しての液体の見掛け上の移動が難しくなっても、図3および図4の破線で示す従来の緩衝装置の周波数減衰力特性および速度減衰力特性(緩衝装置のピストン速度に対する減衰力の特性)に対して、図3および図4の実線に示すように、ピストン速度に対する減衰力の勾配を小さくさせて、減衰力を確実に低下させることができるので、従来の緩衝装置のように減衰力が高止まりしてしまって、車軸から車体への振動の伝達を絶縁する効果が消失してしまうといった不具合を解消でき、車両における乗り心地を向上することができる。
また、緩衝装置D1の伸長時には、伸側リリーフ弁31のみが開放動作し、緩衝装置D1の収縮時には、圧側リリーフ弁32のみが開放動作するので、緩衝装置D1の伸長時における速度減衰力特性を伸側弁体34と伸側ポート33aの設定によって調節でき、緩衝装置D1の収縮時における速度減衰力特性を圧側弁体36と圧側ポート35aの設定で調節することができる。つまり、緩衝装置D1の伸長時と収縮時のそれぞれの速度減衰力特性を別個独立に設定することができ、チューニングの自由度が格段に向上する。
つまり、図4に示すように、緩衝装置D1の伸長側の速度減衰力特性の伸長側の折れ点aの位置、折れ点a以後の傾きと、緩衝装置D1の収縮側の速度減衰力特性の収縮側の折れ点bの位置、折れ点b以後の傾きとを別個独立に設定することができ、折れ点aの位置については伸側弁体34の開弁圧で、折れ点a以後の傾きは伸側ポート33aの開口面積や通路抵抗によって、折れ点bの位置については圧側弁体36の開弁圧で、折れ点b以後の傾きは圧側ポート35aの開口面積や通路抵抗によって、それぞれ設計者の意図によって自由に設定することができる。
このように、緩衝装置D1の収縮行程における速度減衰力特性の勾配を小さくできるので、車輪が路面突起に乗り上げた際のインパクトショックの低減効果が高くなり、伸長行程における速度減衰力特性の勾配を小さくできるので沈み込んだ車体の揺返し時に生じる衝撃を緩和することが可能であって、伸縮の両側で速度減衰力特性を自由に設定することができるから、この緩衝装置D1にあっては、旋回時にはしっかりと車体を支えつつもインパクトショックを低減でき、しなやかでありつつもしっかりとした足回りを車両に提供することができる。
なお、図4に示した伸側および圧側の速度減衰力特性は、伸側リーフバルブV1および圧側リーフバルブV2にオリフィスを並列した構成とした場合のものである。図4で示すように、低周波数域の振動入力でピストン速度が極低速域にある際における減衰力特性は、液体がオリフィスを優先的に通過することによって立上る特性となり、ピストン速度が低速域において途中で減衰力特性に変曲点が表れるのは、伸側リーフバルブV1および圧側リーフバルブV2が開弁してリーフバルブによる特性が支配的になるからである。
なお、伸側リーフバルブV1および圧側リーフバルブV2における抵抗を小さくすることで、ピストン速度が高速となった際の減衰力を小さくすることも考えられるが、そうすると、ピストン速度が低速である場合であって低周波数域の振動に対して発生する減衰力も小さくなってしまい、減衰力不足を生じて車両旋回時に搭乗者に不安を感じさせる不具合があるが、本実施の形態の緩衝装置D1にあっては、伸側リーフバルブV1および圧側リーフバルブV2における抵抗を小さくすることなくピストン速度が高速時における減衰力を低くすることができるので、このような不具合を招くことも無い。
なお、本実施の形態においては、伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32の動作を説明するために、便宜上、ピストン速度に低速および高速でなる区分を設けており、これらの区分の境の境界速度は伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32がそれぞれ開弁する速度であり、伸長側と収縮側で低速と高速の境界速度を同じとせずともよい。したがって、伸側リリーフ弁31および圧側リリーフ弁32の開弁圧は任意に設定することが可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。