JP5860372B2 - アルミニウム合金製自動車部材の製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金製自動車部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は高強度なアルミニウム合金製自動車部材の製造方法に関するものである。
近年、地球環境などへの配慮から、自動車車体の軽量化の社会的要求はますます高まってきている。かかる要求に答えるべく、自動車車体のうち、パネル(フード、ドア、ルーフなどのアウタパネル、インナパネル)や、バンパリーンフォ(バンパーR/F)やドアビームなどの補強材などを、部分的に鋼板等の鉄鋼材料に代えて、アルミニウム合金材料を適用することが行われている。
ただ、自動車車体のより軽量化のためには、自動車部材のうちでも特に軽量化に寄与する、フレーム、ピラーなどの自動車構造部材にも、アルミニウム合金材料の適用を拡大することが必要となる。ただ、これら自動車構造部材は、要求される0.2%耐力が350MPa以上であるなど、前記自動車パネルに比べた高強度化が必要である。この点で、前記自動車パネルに使用されている、成形性や強度、耐食性、そして低合金組成でリサイクル性に優れた、JIS乃至AA 6000系アルミニウム合金板では、組成や調質(溶体化処理および焼入れ処理、更には人工時効硬化処理)を制御しても、前記高強度化には大きな限界がある。
したがって、このような高強度な自動車構造部材には、同じような高強度が要求される前記補強材として使用されているJIS乃至AA 7000系アルミニウム合金板を用いる必要がある。しかし、Al−Zn−Mg系アルミニウム合金である、7000系アルミニウム合金は、Zn及びMgからなる析出物MgZnを高密度に分布させることで高強度を達成する合金である。それゆえ、応力腐食割れ(以下、SCC)を起こす危険性があり、これを防止するため、やむを得ず過時効処理を行って、耐力300MPa程度で使用されているのが実情であり、高強度合金としての特徴が薄れている。
このため、強度と耐SCC性の両方に優れた7000系アルミニウム合金の組成制御や、析出物などの組織制御が、従来から種々提案されている。
組成制御の代表例として、例えば、特許文献1では、7000系アルミニウム合金押出材の、MgZnを過不足なく形成するZn及びMg量(MgZnの化学量論比)より過剰に添加されたMgが、高強度化に寄与することを利用し、MgをMgZnの化学量論比より過剰に添加することにより、MgZn量を抑えて、耐SCC性を低下させることなく、高強度化している。
析出物などの組織制御の代表例として、例えば、特許文献2では、人工時効硬化処理後の7000系アルミニウム合金押出材の、結晶粒内における粒子径が1〜15nmの析出物を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果で1000〜10000個/μmの密度で存在させて、粒内と粒界との電位差を小さくして、耐SCC性を向上させている。
この他にも、全ては例示できないが、7000系アルミニウム合金押出材の強度と耐SCC性の両方に優れさせる組成制御例や析出物などの組織制御例は、押出材での実用化の多さに比例して多数存在する。これに対して、7000系アルミニウム合金板における、従来の組成制御や析出物などの組織制御例は、板での実用化の少なさに応じて、きわめて少ない。
例えば、特許文献3には、7000系アルミニウム合金板同士が溶接接合されたクラッド板からなる構造材において、強度向上のために、人工時効硬化処理後の時効析出物の直径を50Å(オングストローム)以下の球状として一定量存在させることが提案されている。しかし、耐SCC性の性能については全く開示が無く、実施例に耐食性のデータも無い。
また、特許文献4には、人工時効硬化処理後の7000系アルミニウム合金板の結晶粒内における晶析出物について、400倍の光学顕微鏡での測定によって、大きさ(面積が等価な円相当径に換算)を3.0μm以下とし、平均面積分率を4.5%以下として、強度や伸びを向上させている。しかし、耐SCC性の性能については全く開示が無く、実施例に耐食性のデータも無い。
特開2011−144396号公報 特開2010−275611号公報 特開平9−125184号公報 特開2009−144190号公報
このように、強度と耐SCC性の両方に優れた7000系アルミニウム合金の組成制御や析出物などの組織制御などの提案は、従来から押出材については種々なされている。しかし、熱延板あるいは冷延板(熱延板が更に冷延された)のような7000系アルミニウム合金圧延板については、強度向上目的以外には、あまり提案がないのが実状である。
そして、押出材は、前記圧延板とは、その熱間加工工程などの製造過程が全く異なり、出来上がる結晶粒や析出物などの組織も、例えば結晶粒が押出方向に伸長した繊維状であるなど、結晶粒が基本的に等軸粒の圧延板とは大きく異なる。このため、前記押出材での組成制御や析出物などの組織制御などの提案が、7000系アルミニウム合金圧延板にも、そして、この7000系アルミニウム合金圧延板からなる自動車部材にも、そのまま適用でき、強度と耐SCC性の両方の向上に果たして有効であるかどうかは不明である。すなわち、実際に確認しない限りは、あくまで予想の域を出ない。
したがって、7000系アルミニウム合金圧延板からなる自動車部材の、強度と耐SCC性の両方に優れた組織制御技術については、未だ有効な手段がなく、不明な点が多く解明の余地があるというのが現状である。
以上述べた課題に鑑み、本発明の目的は、7000系アルミニウム合金圧延板からなる、強度と耐応力腐食割れ性とを兼備した自動車部材を提供することである。
この目的を達成するために、本発明アルミニウム合金製自動車部材の製造方法の要旨は、質量%で、Zn:3.0〜8.0%、Mg:0.5〜4.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成で、板厚を1〜3mmとし、かつ溶体化および焼入れ処理を施したAl−Zn−Mg系アルミニウム合金冷延板を、自動車部材に成形後に人工時効硬化処理を施し、X線小角散乱法で測定された結晶粒内の微細粒子の粒度分布の平均粒子直径1nm以上、7nm以下とするとともに、前記粒度分布の規格化分散40%以下とした組織を有するとともに、0.2%耐力が350MPa以上である自動車部材とすることである。
本発明で言うアルミニウム合金圧延板とは、熱間圧延された熱延板や冷間圧延された冷延板であって、更に溶体化処理および焼入れ処理などの調質が施された素材アルミニウム合金板のことを言う。そして、本発明は、このような素材アルミニウム合金圧延板が自動車部材に加工され、更に自動車部材として組み立てられ、人工時効硬化処理が施された後の自動車部材である。
したがって、本発明では、素材のアルミニウム合金圧延板での状態ではなく、最終的な使用状態である自動車部材としての組成、組織や強度を規定している。すなわち、素材アルミニウム合金圧延板が自動車部材として組み立てられ、更に自動車車体として人工時効硬化処理された後の組成、組織、強度を規定している。なお、本発明で言う人工時効硬化処理とは、人工的な加熱による時効硬化処理のことを言い、室温などでの自然時効硬化とは明確に区別される(以下、単に人工時効処理あるいは時効処理とも言う)。
本発明では、このようなアルミニウム合金製自動車部材の、前記X線小角散乱法で測定された結晶粒内の微細粒子の粒度分布を制御する。また、この制御によって、粒界に存在する析出物や結晶粒内に存在する粗大な析出物の析出も抑制しうる。
これによって、本発明は、アルミニウム合金製自動車部材の0.2%耐力が350MPa以上であるような高強度化が達成でき、このような高強度であるにも関わらず、耐SCC性の低下を抑制することができる。
以下に、本発明の実施の形態につき、要件ごとに具体的に説明する。
先ず、本発明自動車部材としての、あるいは素材アルミニウム合金圧延板の化学成分組成について、各元素の限定理由を含めて、以下に説明する。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
本発明アルミニウム合金圧延板の化学成分組成は、Al−Zn−Mg−Cu系の7000系アルミニウム合金として、本発明で意図する自動車部材の強度や耐SCC性などの特性を保証するために決定される。この観点から、本発明アルミニウム合金圧延板の化学成分組成は、質量%で、Zn:3.0〜8.0%、Mg:0.5〜4.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。この組成に、更に、Cu:0.05〜0.6%、Ag:0.01〜0.15%の1種又は2種を選択的に含んでもよく、これに加えて、あるいはこれとは別に、Mn:0.05〜0.3%、Cr:0.03〜0.2%、Zr:0.03〜0.3%の1種又は2種以上を選択的に含んでも良い。
Zn:3.0〜8.0%:
必須の合金元素であるZnは、Mgとともに、人工時効硬化処理時に、本発明で規定するMgとZnとの金属間化合物である微細析出物を形成して強度と伸びを向上させる。Zn含有量が3.0%未満では強度が不足し、8.0%を超えると粒界析出物MgZnが増えてSCC感受性が鋭くなる。従って、Zn含有量は3.0〜8.0%の範囲とする。このZn含有量が高くなり、SCC感受性が鋭くなるのを抑えるために、後述するCuあるいはAgを添加することが望ましい。好ましくは4.0〜7.0%とする。
Mg:0.5〜4.0%
必須の合金元素であるMgは、Znとともに、人工時効硬化処理時に、本発明で規定するMgとZnとの金属間化合物である微細析出物(MgZnクラスタ)を形成して強度と伸びを向上させる。Mg含有量が0.5%未満では強度が不足し、4.0%を超えると、板の圧延性が低下し、SCC感受性も鋭くなる。従って、Mg含有量は0.5〜4.0%、好ましくは3.0%以下の範囲とする。
Cu:0.05〜0.6%、Ag:0.01〜0.15%の1種又は2種:
Cu及びAgはAl−Zn−Mg系合金の耐SCC性を向上させる作用がある。これらをいずれか一方又は両方含有する場合、Cu含有量が0.05%未満、及びAg含有量が0.01%未満では、耐SCC性向上効果が小さい。一方、Cu含有量が0.6%を超えると、圧延性及び溶接性などの諸特性を却って低下させる。またAg含有量は0.15%を超えて含有させてもその効果が飽和し、高価となる。従って、Cu含有量は0.05〜0.6%、好ましくは0.4%以下、Ag含有量は0.01〜0.15%とする。
Mn:0.05〜0.3%、Cr:0.03〜0.2%、Zr:0.03〜0.3%の1種又は2種以上:
Mn、Cr及びZrは、鋳塊の結晶粒を微細化して強度向上に寄与する。これらをいずれか1種、又は2種あるいは3種を含有する場合、Mn、Cr、Zrの含有量がいずれも下限未満では、含有量が不足して、再結晶が促進され、耐SCC性が低下する。一方、Mn、Cr、Zrの含有量がそれぞれの上限を超えた場合には、粗大晶出物を形成するため伸びが低下する。従って、Mn:0.05〜0.3%、Cr:0.03〜0.2%、Zr:0.03〜0.3%の各範囲とする。
Ti、B:
Ti、Bは、圧延板としては不純物であるが、アルミニウム合金鋳塊の結晶粒を微細化する効果があるので、7000系合金としてJIS規格で規定する範囲での各々の含有を許容する。Tiの上限は0.2%、好ましくは0.1%、Bの上限は0.05%以下、好ましくは0.03%とする。
その他の元素:
また、これら記載した以外の、Fe、Siなどのその他の元素は不可避的な不純物である。溶解原料として、純アルミニウム地金以外に、アルミニウム合金スクラップの使用による、これら不純物元素の混入なども想定(許容)して、7000系合金のJIS規格で規定する範囲での各々の含有を許容する。例えば、Fe:0.5%以下、Si:0.5%以下であれば、本発明に係るアルミニウム合金圧延板の特性に影響せず、含有が許容される。
(組織)
本発明では、自動車部材の7000系アルミニウム合金組織を、人工時効硬化処理が施された後の結晶粒(結晶粒内の)組織として、X線小角散乱法で結晶粒内で測定された微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が1nm以上、7nm以下であるとともに、前記粒度分布の規格化分散が40%以下である組織と規定する。
この微細粒子とは、前記人工時効硬化処理時などに結晶粒内に生成する、前記MgとZnとの金属間化合物(組成はMgZnなど)であり、これに前記組成に応じて更にCu、Zrなどの含有元素が含まれる微細分散相である。なお、本発明で言う析出物のサイズとは、不定形である析出物の円相当直径を言う。
このように、X線小角散乱法で測定された微細粒子の粒度分布の平均粒子直径や、前記粒度分布の広がりを示す規格化分散を制御することによって、アルミニウム合金製自動車部材の0.2%耐力が350MPa以上であるような高強度化や伸びの向上が達成できる。また、同時に、粒界に存在する析出物や結晶粒内に存在する粗大な析出物の析出も抑制でき、このことも高強度化や伸びの向上に寄与している。そして、このような高強度であるにも関わらず、耐SCC性の低下を抑制できることにもつながっている。
この微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が1nm未満の場合や、あるいは逆に7nmを超えた場合、あるいは前記粒度分布の規格化分散が40%を超えた場合には高強度化が達成できない。この理由は、高強度化に寄与する前記微細粒子が不足するからで、また、人工時効処理の際に、前記粒界に存在する析出物や結晶粒内に存在する粗大な析出物の生成が多くなっている可能性も高い。この結果、耐SCC性も低下する。ただ、前記粒度分布の規格化分散には、組成や熱処理の制御によっても製造限界があり、下限としては5%程度までしか小さくすることができない。
本発明では、この素材アルミニウム合金圧延板ではなく、この圧延板が加工され、更に人工時効硬化処理された後の自動車部材としての組織として規定する。本発明で規定するナノサイズの微細な析出物は、熱処理条件によって大きく変化し、前記素材のアルミニウム合金圧延板の溶体化および焼入れ処理後、また、その後の自動車車体の塗装焼付け処理や人工時効処理条件によって大きく変化するからである。
本発明の粒子直径が1nm以上、7nm以下であるような微細粒子、あるいはその粒度分布の平均粒子直径や、粒度分布の規格化分散は、前記従来技術で用いている400倍程度の光学顕微鏡などでは、微細すぎて観察や測定ができず、規定しているX線小角散乱法によって評価しうる。
X線を用いた小角散乱法:
X線を用いた小角散乱法自体は、ナノメートルオーダの構造情報を調べる代表的な手法として古くから知られている。物質にX線を照射すると、入射X線が物質内部の電子密度分布の情報を反映して、入射X線の周囲に散乱X線が発生する。例えば、物質中に粒子や電子密度の不均一な領域が存在すると、結晶や非晶質等にかかわらず、X線は干渉して密度揺らぎ起因の散乱が発生する。これがアルミニウム合金などの金属であれば、アルミニウム合金組織中にナノメートルオーダの微小な粒子が存在すると、粒子に由来する散乱が観測される。この散乱X線が発生する領域は、Cuターゲットを用いた波長1.54ÅのX線の場合、測定角度2θは0.1〜10度程度以下である。前記X線小角散乱法では、この散乱X線を解析することで、ナノメートルオーダの微細な粒子の形状、大きさ、分布の情報等を得ることができる。
例えば、特開2011−38136号などで、5000系のAl−Mg系アルミニウム合金板のプレス成形時のストレッチャーストレインマークの発生に関連する、微細粒子の粒度分布の平均粒子直径や、この粒度分布のピークサイズの数密度を測定するためにも用いられている。
アルミニウム合金組織の微細粒子の粒度分布の平均粒子直径や、この粒度分布のピークサイズの数密度を測定するためには、先ず、アルミニウム合金板の、X線小角散乱法で測定された、X線の散乱強度プロファイルを求める。X線の散乱強度プロファイルは、例えば、縦軸がX線の散乱強度(散乱X線の散乱強度)、横軸が測定角度2θと波長λに依存する波数ベクトルq(nm−1)として求められる。
本発明の1nm以上、7nm以下であるような微細粒子の粒度分布の平均粒子直径や、この粒度分布の広がりを示す規格化分散は、前記X線の散乱強度プロファイルから求めることができる。すなわち、測定したX線の散乱強度と、粒子直径とサイズ分布の関数で示される理論式から計算したX線散乱強度が近くなるように、非線形最小2乗法によってフィッティングを行うことで、粒子直径と規格化分散値を求めることが出来る。
ちなみに、このようなX線の散乱強度プロファイルを解析して、微小析出物の粒度分布を求める解析方法(解析ソフト)は、例えばSchmidtらによる公知の解析方法を用いる(I.S.Fedorovaand P.Schmidt:J.Appl.Cryst.11、405、1978参照)。
X線小角散乱法の測定装置:
このようなX線小角散乱法の測定装置としては、例えば特開平9−119906号公報などに代表的な小角散乱装置が開示されており、試料に対してX線を微小角度(小角)で照射し、前記試料から散乱されるX線を2次元のマルチワイヤー型などの検出器を用いて測定する。
この散乱X線が発生する領域は、波長1.54ÅのX線の場合、測定角度は0.1〜10度以下程度の小角度である。この散乱X線を前記した通りに解析することで、前記粒度分布など、粒子の形状、大きさ、分布の情報を得ることができる。
(製造方法)
本発明における7000系アルミニウム合金圧延板の製造方法について、以下に具体的に説明する。
本発明では、7000系アルミニウム合金圧延板の通常の製造工程による製造方法で製造可能である。即ち、鋳造(DC鋳造法や連続鋳造法)、均質化熱処理、熱間圧延の通常の各製造工程を経て製造され、板厚が1.5〜5.0mmであるアルミニウム合金熱延板とされる。この段階で製品板としても良く、また冷間圧延前もしくは冷間圧延の中途において1回または2回以上の中間焼鈍を選択的に行ないつつ、更に冷延して、板厚が3mm以下の冷延板の製品板としても良い。
(溶解、鋳造冷却速度)
先ず、溶解、鋳造工程では、上記7000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
(均質化熱処理)
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に、熱間圧延に先立って、均質化熱処理を施す。この均質化熱処理(均熱処理)は、組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことを目的とする。均質化熱処理条件は、好ましくは400〜550℃程度の温度で、2時間以上の均質化時間の範囲から適宜選択される。
(熱間圧延)
熱間圧延は、熱延開始温度が固相線温度を超える条件では、バーニングが起こるため熱延自体が困難となる。また、熱延開始温度が350℃未満では熱延時の荷重が高くなりすぎ、熱延自体が困難となる。したがって、熱延開始温度は350℃〜固相線温度の範囲から選択して熱間圧延し、2〜7mm程度の板厚の熱延板とする。この熱延板の冷間圧延前の焼鈍 (荒鈍) は必ずしも必要ではないが実施しても良い。
(冷間圧延)
冷間圧延では、上記熱延板を圧延して、1〜3mm程度の所望の最終板厚の冷延板 (コイルも含む) に製作する。冷間圧延パス間で中間焼鈍を行っても良い。
(溶体化および焼入れ処理)
冷間圧延後、溶体化および焼入れ処理を行う。溶体化処理焼入れ処理については、一般的な加熱、冷却方法でよく、特に限定はされない。ただ、各元素の十分な固溶量を得ることや結晶粒の微細化のためには、450〜550℃の溶体化処理温度とすることが望ましい。
また、強度や成形性を低下させる粗大な粒界析出物形成を抑制する観点から、溶体化処理後の焼入れ処理の平均冷却速度は5℃/s以上とすることが望ましい。この冷却速度が小さいと、冷却中に粗大な粒界析出物が生成し、また溶体化処理後の固溶量が低下し、塗装焼付け処理や予備時効処理での硬化量が低下してしまう。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段や条件を各々選択して用いる。
人工時効硬化処理:
以上のように製造された素材板の、例えば自動車材への成形後の人工時効硬化処理の条件は、自動車材として要求される強度や伸びとなるように選択される。例えば、1段の時効処理であれば、100〜150℃での時効処理を12〜36時間(過時効領域を含む)行う。また、2段の工程においては、1段目の熱処理温度が70〜100℃の範囲で2時間以上、2段目の熱処理温度が100〜170℃の範囲で5時間以上の範囲(過時効領域を含む)から選択する。
下記表1に示す各成分組成の7000系アルミニウム合金冷延板を製造して、この調質された冷延板が自動車部材のうちでも特に高強度な自動車構造材に適用されることを模擬し、時効硬化処理後のこの板の組織と機械的特性を測定した評価した。これらの結果を下記表2に示す。
具体的には、各例とも共通して、下記表1に示す各成分組成の7000系アルミニウム合金溶湯をDC鋳造し、45mm厚み×220mm幅×145mm長さの鋳塊を得た。この鋳塊を470℃×4時間の均質化熱処理後に、熱間圧延を行い、板厚5.0mmの熱延板を製造した。この熱延板を、荒鈍(焼鈍)することなしに、またパス間での中間焼鈍なしに、冷間圧延して、共通して、板厚2.0mmの冷延板とした。そして、この冷延板を、各例とも共通して、500℃×30秒の溶体化処理後に水冷した。最後に、表2に示す条件で、自動車構造材を模擬した人工時効硬化処理を行った。
こうして得られたアルミニウム合金冷延板と前記人工時効硬化処理後のアルミニウム合金板から試験片を採取して、各アルミニウム合金板結晶粒内の前記微細析出物の数密度、機械的特性を以下のようにして調査した。これらの結果を各々表2に示す。
(機械的特性)
各例とも、得られた各々のアルミニウム合金板の中央部を切断して採取した板状試験片の圧延直角方向の室温引張試験を行い、引張強度(MPa)、0.2%耐力(MPa)、全伸び(%)を測定した。室温引張り試験はJIS2241(1980)に基づき、室温20℃で試験を行った。引張速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
(X線小角散乱測定)
X線小角散乱測定は、各例とも共通して、(株)リガク製 水平型X線回折装置SmartLabを用い、波長1.54ÅのX線を用いて測定し、各例とも前記X線の散乱強度プロファイルを測定した。試験装置は、試験片表面に対して垂直にX線を入射し、入射X線に対して0.1〜10度の微小角度(小角)で、前記試験片から後方に散乱されるX線を検出器を用いて測定するものである。測定試料は、約80μmに薄片化し、測定を行った。
このX線の散乱強度プロファイルを、前記したSchmidtらによる公知の解析方法が組み込まれている、解析ソフト(株)リガク製粒径・空孔解析ソフトウェア NANO−Solver[Ver.3.5]を用いて、測定したX線散乱強度と解析ソフトで計算したX線散乱強度の値が近くなるように非線形最小2乗法によってフィッティングを行うことで、平均粒子径および規格化分散を求めた。
前記平均粒子径は、粒子としては完全な球状であると仮定して、理論式を用いて散乱強度を計算し、実験値とフィッティングして求めた。また、前記規格化分散は、粒子径に左右されず、粒子分布の広がりを比較できるようにするために用いた。
この規格化分散の式を以下に示す。

ここでσが規格化分散、nは粒子数、xは粒子径、<x>は粒子径の相加平均である。
耐SCC性:
前記人工時効硬化処理後のアルミニウム合金板の耐SCC性を評価するために、クロム酸促進法による耐応力腐食割れ試験を行った。前記調質された冷延板から板状試験片を切り出し、400℃での熱処理後に圧延直角方向に4%のひずみの負荷をかけ、表2に示す時効硬化処理を行った後、90℃の試験溶液に最大10時間まで浸漬し、SCCを目視で観察した。なお、応力負荷はジグのボルト・ナットを締めることにより試験片の外表面に引張応力を発生させ、負荷ひずみはこの外表面に接着した歪みゲージによって測定した。また、試験溶液は蒸留水に酸化クロム36g、2クロム酸カリウム30g及び塩化ナトリウム3g(1リットル当たり)を加えて作製した。SCCが発生しなかったものを○、10時間までにSCCが発生したものを×と評価した。
表1、2から明らかなように、各発明例は、本発明アルミニウム合金組成範囲内であり、自動車車体の塗装焼付け処理が施された後の組織として、X線小角散乱法で測定された結晶粒内の微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が1nm以上、7nm以下であるとともに、前記粒度分布の広がりを示す規格化分散が40%以下である組織を有している。この結果、前記人工時効処理後の0.2%耐力が350MPa以上、好ましくは400MPa以上であり、耐SCC性にも優れている。また、全伸びは好ましい13.0%以上である。
これに対して、各比較例は、合金組成が表1の通り、本発明範囲から外れる。比較例6はZnが下限に外れる。比較例7はMgが下限に外れる。これら比較例は、好ましい製造方法で製造されているが、X線小角散乱法で測定された結晶粒内の微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が大きく、強度が低い。比較例8はCuが上限を超えているため熱延中に大幅な割れが発生して製造を中断した。比較例9はZrが上限に外れる。このため、粗大晶出物が形成して伸びが著しく低い。
また、比較例10は、合金組成が表1の通り、本発明範囲内であるものの、人工時効硬化処理の加熱時間が短かすぎ、この自動車車体の塗装焼付け処理だけでは、高強度化されていない場合を示している。
以上の結果から、本発明アルミニウム合金板が高強度と高延性そして耐SCC性を兼備するための本発明各要件の臨界的な意義が裏付けられる。
以上説明したように、本発明は、7000系アルミニウム合金圧延板からなる、強度と耐応力腐食割れ性とを兼備した自動車部材を提供できる。したがって、アルミニウム合金を用いて車体をより軽量化したい自動車部材、なかでも特にフレーム、ピラーなどの高強度な自動車構造部材に好適である。

Claims (3)

  1. アルミニウム合金製自動車部材の製造方法であって、質量%で、Zn:3.0〜8.0%、Mg:0.5〜4.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成で、板厚を1〜3mmとし、かつ溶体化および焼入れ処理を施したAl−Zn−Mg系アルミニウム合金冷延板を、自動車部材に成形後に人工時効硬化処理を施し、X線小角散乱法で測定された結晶粒内の微細粒子の粒度分布の平均粒子直径1nm以上、7nm以下とするとともに、前記粒度分布の規格化分散40%以下とした組織を有するとともに、0.2%耐力が350MPa以上である自動車部材とすることを特徴とする自動車部材の製造方法
  2. 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、質量%で、Cu:0.05〜0.6%、Ag:0.01〜0.15%の1種又は2種を含む請求項1に記載の自動車部材の製造方法
  3. 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、質量%で、Mn:0.05〜0.3%、Cr:0.03〜0.2%、Zr:0.03〜0.3%の1種又は2種以上を含む請求項1または2に記載の自動車部材の製造方法
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