JP5869802B2 - 鉄筋コンクリート構造物の壁式構造およびその構築方法 - Google Patents

鉄筋コンクリート構造物の壁式構造およびその構築方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉄筋コンクリート構造物における壁式構造と、その壁式構造で構築される鉄筋コンクリート構造物の構築方法に関するものである。
鉄筋コンクリート構造物(RC造の構造物)における壁式構造は、周知のとおり、ラーメン構造のように柱と梁を基本構造とするものとは異なり、耐力壁およびスラブ(床スラブまたは屋根スラブなど)を基礎的な構成部材として構築されるものであって、耐力壁や壁梁等が交差する交差部は、内部の鉄筋をL字状に折曲して配筋し、さらに補強筋を配筋したうえでコンクリートを打設することにより、平面視L字形またはT字形の鉄筋コンクリートを構築するものである。また、耐力壁等の垂直面部を構成する部材の内部には、軸線を水平方向とする主筋が配設されるものであるが、この主筋は定着のために折曲され、折曲部よりも先端部分が定着部として交差部内に納められるものであった。従って、交差部に鉄筋が集中することとなり、打設コンクリートの充填状態が場合によっては不十分となり得るものであった。
なお、コンクリート製の壁床式構造(壁版と床版で躯体にかかる力を支える構造)においては、交差部を強化するための構成が提案されているが(特許文献1参照)、これは、鉄筋周辺におけるコンクリートの付着破壊による滑りを防止するための技術であった。そして、その内容は、壁版と床版との交差部に拘束筋を挿入するものであって、交差部そのものの構造上の強化を図るものではなかった。
特開2009−7759号公報 特開平11−200558号公報 特開2001−159214号公報
上記のように、周知の壁式構造を構築する場合において、折曲された鉄筋を使用して交差部を構築するためには、当該交差部に使用する鉄筋を建築現場で折曲するか、または工場出荷時に予め折曲してなる鉄筋を搬入することが必要であった。これは、耐力壁等に使用される主筋を折曲して定着部を構成する場合も同様であった。そのため、大径の鉄筋を建築現場で折曲することは容易でなく、また、予め折曲した鉄筋を搬入するとしても、折曲する角度や折曲両側の長さによっては、運搬そのものが容易ではなかった。
また、主筋を折曲せずに定着させる場合には、通常の定着長は、定着鉄筋の径寸法の40倍(これを40dと表示する)以上でなければ、定着強度が維持されないとされていたことから、12mmの外径で形成される鉄筋を使用する場合には480mm以上の定着長が必要となり、さらに20mmの外径の鉄筋を使用するためには、800mmの定着長が必要とされることとなっていた。従って、壁式構造においては、耐力壁等の躯体構成部を交差部で定着させることが事実上困難なものとされていた。
ところで、鉄筋コンクリートの壁式構造における交差部の強度計算(構造計算)は非常に難しく、また、主筋の一部を定着部として利用する場合には、計算上の強度と現実の構築物の強度が一致しているかどうかを検証することも容易ではなかった。その結果、法定の建築基準やその他の指針においても、従来は、十分な定着長によって定着強度を確保することとされていたが、最近では、強度実験等によって実際の強度が所定強度を満たすことが明確になれば、強度計算(構造計算)を省略できるところとなりつつある。つまり、強度実験等において交差部の強度が確保されれば、また、交差部における定着鉄筋の定着強度が十分であれば、任意の構造により、任意の定着位置または定着方法により躯体を構築することが許容されるのである。
また、最近では新しい定着鉄筋が開発され、定着用鉄筋の先端に定着板を備えた構成が建築現場で使用されるようになっている(特許文献2,3参照)。このような定着鉄筋を使用することによって、定着長を短くしつつ所定の定着強度を得ることができるものである。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、十分な強度を維持しつつ交差部の配筋を簡略化し得る鉄筋コンクリート構造物の壁式構造、および、壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法を提供することである。
そこで、鉄筋コンクリート構造物の壁式構造にかかる本発明は、鉄筋コンクリート製の耐力壁、床スラブおよび屋根スラブによって躯体の基本部分を構成してなる壁式構造の鉄筋コンクリート構造物において、躯体の構成する複数の躯体構成部の端部が相互に交差する交差部を、交差部構成部材によって構築するとともに、この交差部構成部材に連続して該交差部構成部材の一部とともに躯体構成部を形成する連続部構成部材を構築してなり、上記連続部構成部材は、定着板を先端に備えた定着鉄筋が配筋されるとともに、この定着鉄筋の先端が上記交差部構成部材の内部に配筋されてなることを特徴とするものである。
上記構成によれば、交差部構成部材と連続部構成部材とが、定着板を有する定着鉄筋によって十分な定着強度を備えつつ連続して構築されることとなり、上記両構成部材により、交差部を含む躯体構成部を構成させることができる。
上記発明において、前記交差部は、耐力壁と耐力壁とがL字状、T字状または十字状に交差する交差部の場合がある。この場合、壁式構造における耐力壁がL字に交差する部分、T字に交差する部分、または十字に交差する部分を、交差部構成部材によって構成することができ、耐力壁は、交差部構成部材の一部と、連続部構成部材とによって構成することができる。
また、上記発明において、前記交差部は、耐力壁と壁梁とが交差する交差部の場合がある。この場合、交差部構成部材によって、耐力壁と壁梁とを連続させる構造を構築することができ、また、交差部構成部材の一部は、耐力壁の一部を構成させることができ、この耐力壁の一部を構成する部分に壁梁を連続させることも可能となる。
壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法にかかる本発明は、躯体の一部を構成する複数の躯体構成部の端部が相互に交差する交差部を構成する交差部構成部材と、この交差部構成部材に連続する連続部構成部材とに区分し、上記交差部構成部材を構成すべき範囲には、上記交差部の交差角度に応じて折曲した鉄筋と、この鉄筋に直交する交差部補強筋とを含む鉄筋群が配筋され、上記連続部構成部材を構成すべき範囲には、該連続部構成部材のための所定の鉄筋が配筋されるとともに、先端に定着板を備えた定着鉄筋が、上記交差部構成部材を構成すべき範囲内に該定着板を侵入させつつ配筋され、上記両範囲にコンクリートを打設して躯体構成部を形成してなることを特徴とするものである。
上記構成によれば、交差部構成部材は、交差部を構成するために必要な鉄筋のみを配筋し、連続部構成部材は、交差部に連続する部分を構成するために必要な鉄筋のみを配筋することにより、それぞれの構成部材を構築することができるとともに、両者を定着鉄筋により定着させることによって一体的な構成部材を構築することが可能となる。特に、定着鉄筋には定着板を有するものを使用することにより、交差部構成部材における定着に必要な範囲を小さく構成することができる。
また、壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法にかかる本発明は、複数の耐力壁または壁梁の端部が交差する交差部を構成する交差部構成部材と、この交差部構成部材に連続する連続部構成部材とに区分し、上記交差部構成部材を構成すべき範囲には、躯体の桁行方向に長尺な複数の帯筋と、躯体の梁間方向に長尺な複数の帯筋とが交差位置で矩形を形成するように重複して配筋されるとともに、鉛直方向に長尺な直線状の縦筋が上記両帯筋の内側に適宜間隔で配設され、上記連続部構成部材を構成すべき範囲には、該連続部構成部材のための所定の鉄筋が配筋されるとともに、先端に定着板を備えた定着鉄筋が、上記交差部構成部材を構成すべき範囲内に該定着板を侵入させつつ配筋され、上記両範囲にコンクリートを打設して躯体構成部を形成してなることを特徴とするものである。
上記構成によれば、交差部構成部材を構築するための鉄筋が、当該交差部構成部材の内部に集中することを回避できる。すなわち、L字状に折曲した鉄筋を配設することがなく、また、壁主筋や梁主筋の定着部が交差部に納められることがないことから、当該交差部に、交差部以外のための鉄筋が集中することを回避できるのである。
上記発明においては、前記交差部構成部材を、前記定着鉄筋による定着長を確保できる桁行方向および梁行方向の長さを有する構成とすることができる。上記構成の場合には、桁行方向または梁行方向に耐力壁または壁梁を連続して構築する場合に、その耐力壁または壁梁に使用される定着鉄筋によって、異なる種類の部材が定着されることとなる。
鉄筋コンクリート構造物の壁式構造にかかる本発明によれば、躯体構成部が交差する交差部は、交差部構成部材によって構築されることとなるが、この交差部構成部材には連続部構成部材が連続することによって躯体構成部が形成されることから、交差部構成部材と連続部構成部材の両者が相俟って交差部に十分な強度を維持させることができる。さらに、交差部構成部材と連続部構成部材は、連続部構成部材に配筋された定着鉄筋によって定着されるものであり、当該定着鉄筋には定着板を備えたものが使用されることから、その定着長は鉄筋径の12倍(12d)〜16倍(16d)によっても十分な定着力を発揮させることができる。その結果、非常に短い定着長により定着させることが可能となる。
壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法にかかる本発明によれば、躯体を構成する躯体構成部の構築において、交差部構成部材と連続部構成部材とが個別に構築されるものではなく、コンクリートの打設前の配筋作業時に交差部構成部材のための配筋と、連続部構成部材のための配筋とを行ったうえで、定着鉄筋を配設することにより、躯体構成部は一体的に構築することができる。しかも、上記によって構築された躯体構成部(特に、交差部)は、十分な強度を備える構成とすることができるのである。
上記のように交差部の強度が十分に確保されることから、躯体の強度実験を行うことにより、法定の建築基準を超える強度を得ることによって、構造計算を容易にすることができる。なお、法定の建築基準を超える強度を得るためには、躯体の強度実験結果に基づき、配筋密度や定着部の構成など最適化を図ればよく、強度実験の結果が良好であれば、同様の構成によって、各階の交差部を構築させることが可能となる。
壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の概略を示す説明図である。 鉄筋コンクリート構造物の壁式構造にかかる実施形態を示す説明図である。 交差部周辺の配筋状態を示す説明図である。 壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法にかかる実施形態を示す説明図である。 交差部構成部材のための鉄筋群の変形例を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の概略を示す図である。この図に示すように、壁式構造の構築物は、垂直な面部を構成する耐力壁1や壁梁2と、水平な面部を構成するスラブ3とを、基本的な構成部(躯体構成部)とするものである。ここで、本発明は、これら躯体構成部が集中し、L字状、T字状または十字状に交差する部分(これを交差部という)4について、十分な強度を維持しつつ構築を容易にするためのものである。以下、交差部4の代表的な形態として二つの耐力壁が平面視でL字状に交差する場合を例示して説明する。
図2は、鉄筋コンクリート構造物の壁式構造にかかる本発明の実施形態を示す図である。この図に示すように、本実施形態は、上記交差部4を一体的に構成してなる交差部構成部材5と、これに連続する連続部構成部材6,7とで構成されるものである。交差部構成部材5は、躯体構成部がL字状に交差する場合を例示すれば、その交差の状態と同様に、平面視においてL字形に形成されるものである。すなわち、この交差部構成部材5は、二つの平面部52,53によってL字状を形成するように構成されており、この片方の平面部52の端部(片側端部)に第1の連続部構成部材6が連続されることにより、当該片方の平面部52とともに第1の躯体構成部(耐力壁1a)が構成され、また、他方の平面部53の端部(他方端部)に第2の連続部構成部材7が連続されることにより、当該他方の平面部53とともに第2の躯体構成部(耐力壁1b)が構成されるものである。
このように、交差部構成部材5は、平面視においてL字形に形成されることから、その中央が所定の角度(L字形の場合は垂直)で交差してなる構成としているのである。つまり、この交差部構成部材5の中央によって、両躯体構成部の境界部51が形成されるようになっており、この境界部51を境に桁行方向Xと梁行方向Yに向かって、それぞれ短尺の平面部52,53が設けられているのである。
なお、交差部構成部材5と、連続部構成部材6,7とは、全く個別の独立した部材として構築される場合に限定されず、コンクリートが同時に打設されることによって一体的に構築され得るものである。交差部構成部材5と連続部構成部材6,7とを区別しているのは、これらを構築するための鉄筋が一体として配筋されるのではなく、交差部構成部材5を構築するための鉄筋群Aと、連続部構成部材6,7を構築するための鉄筋群B,Cとが、それぞれ異なる構成により設けられるからである。
そこで、交差部構成部材5のための鉄筋群Aは、桁行方向Xに長尺な複数の帯筋54と、梁行方向Yに長尺な複数の帯筋55と、この帯筋54,55の内側に立設される縦筋56,57とで構成されている。桁行方向Xに長尺な帯筋54と、梁行方向Yに長尺な帯筋55は、躯体の境界部51の内部において重複するように配設され、この重複部分が平面視において正方形を形成するように配置されている。その正方形の最も外向きに突出する頂点の内側には、曲げ補強筋58が立設され、境界部51(または交差部4の全体)に作用する曲げ応力に対抗できるように補強されている。
他方、連続部構成部材6,7のための鉄筋群B,Cは、桁行方向Xまたは梁行方向Yに沿って延出する複数の横筋61,71と、その横筋61,71を包囲するように設けられるスターラップ62,72とが配設されている。また、この鉄筋群B,Cには、適宜位置に定着鉄筋63,73が配設されている。この定着鉄筋63,73は、上記横筋61,71と同様に軸線を水平にしつつ、先端が交差部構成部材5のための鉄筋群Aの内部に挿入されている。さらに、この定着鉄筋63,73の先端には定着板64,74が備えられており、その定着板64,74が交差部構成部材5のための鉄筋群Aの内部に位置するように配置されているのである。
上記のように、交差部構成部材5のための鉄筋群Aと、連続部構成部材6,7のための鉄筋群B,Cとは、個別に形成されるものであることから、連続部構成部材6,7を交差部構成部材5に定着させるために、上記定着鉄筋63,73が配筋されるのである。ところで、先端に定着板64,74を備える構成の定着鉄筋63,73を使用する場合には、短い定着長によって十分な定着力を発揮させることができるのである。例えば、定着板64,74の外径が鉄筋径の2.5倍程度である場合には、そのときの定着長が、定着鉄筋63,74の径寸法の12倍(これを12dと表記する)〜16倍(これを16dと表記する)により、十分な定着力を得ることができ得るものである。なお、上記定着長は12d〜16dとしたが、この定着長は、交差部以外の構成や強度によって長短変化することがあり得る。つまり、交差部の構成は、躯体全体または交差部の強度実験を行うことによって所定強度を備えていることが重要であるから、実験結果により、鉄筋の定着力不足によって強度が不足する場合は、定着板64,74の径を大きくするか、または定着長を長くすることにより調整でき、他方、鉄筋の定着力が過度に強力である場合には、さらに定着長を短くすることによって調整することも可能である。これらの寸法等は強度実験等の結果に応じて適宜調整することとなる。なお、定着鉄筋63,73による定着長とは、交差部構成部材5のための鉄筋群Aの桁行方向Xまたは梁行方向Yの先端位置から定着板64,74までの長さを示すものである。
本実施形態の壁式構造は、上記のような構成であるから、交差部には耐力壁等の主筋が挿入されることがなく、かつ、主筋を折曲した定着部も存在しない構成となる。従って、交差部の両側に形成される躯体構成部の各主筋およびその定着部が挿入されないことにより、交差部周辺における鉄筋の集中を回避できるのである。この鉄筋の集中を回避することによって、各構成部材を構築するために配設される鉄筋の間隔を十分に設けることができ、打設コンクリートを鉄筋周辺に十分充填させることができる。このように、鉄筋周辺に十分にコンクリートが充填されることによって、強度を有する鉄筋コンクリートによる構成部材が構築されることとなる。
また、上記のように交差部を含む躯体の一部を交差部構成部材5によって構成することにより、交差部の強度は、交差部構成部材5の強度に左右されることとなる。そこで、当該交差部構成部材5に十分な強度を与えられれば、同様の構造物に対し、交差部構成部材5をそのまま適用することも可能となる。また、交差部構成部材5と連続部構成部材6,7との定着強度についても、十分な強度を有するものであれば、同様の定着構造を同様の構造物に適用することが可能となる。従って、少なくとも、同一構造により複数階の構築物を構築する場合には、各階の交差部を同一の構成とすることができる。その結果、建物全体の強度設計(構造計算)の際には、所定の強度を備える交差部の構造を採用することで詳細な構造計算を不要にすることができる。さらに、異なる鉄筋径および各種寸法を異ならせた数種類の交差部構成部材について、予め強度実験を行い、それぞれの最大強度を計測することにより、構造物に要求される強度を発揮する構成の交差部構成部材を選択して設計することも可能となる。
次に、壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法にかかる本発明の実施形態について説明する。本実施形態の構築方法は、通常の鉄筋コンクリート造(RC造)の構造物における躯体構成部を構築する場合と同様に、各躯体構成部について、主筋等の鉄筋を配設し、その鉄筋を含む所定範囲を型枠で囲み、その範囲内にコンクリートを打設し、当該コンクリートが固化した後に型枠を撤去することによって、鉄筋コンクリート造の躯体構成部を構築するのである。そこで、以下においては、本発明にかかる構築方法に特有の事項を中心に説明することとする。
図3は、本実施形態の交差部周辺における配筋の状態を示す図である。図3(a)は、交差部構成部材を構築するための鉄筋群Aと、連続部構成部材を構築するための鉄筋群B,Cとが一体化した状態を示し、図3(b)は、上記両者を分離した状態を示している。壁式構造にかかる実施形態において説明したように、本発明における躯体構成部は、交差部構成部材と連続部構成部材とで構成されるものであり、そのための鉄筋群は、図3に示すように、交差部構成部材のための鉄筋群Aと、連続部構成部材のための鉄筋群B,Cとを区別して配筋されるものである。
これら二種類の鉄筋群は、個別に配筋された状態で連結してなる場合のほか、観念的に区別しつつ、連結後の状態を形成するように同時並行的に配筋してもよい。いずれの配筋方法によっても、交差部構成部材のための鉄筋群Aと、連続部構成部材のための鉄筋群B,Cの二種類の鉄筋群が所定位置に構成されるものである。なお、図3(b)に明確に示されているように、連続部構成部材のための鉄筋群B,Cには、複数の定着鉄筋63,73が適宜間隔で配筋されており、この定着鉄筋63,73の一部が当該鉄筋群B,Cから、必要な定着長相当の長さ分だけ突出するように配設されるものである。さらに、この定着鉄筋63,73の突出側の先端には定着板64,74が設けられているのである。また、上記鉄筋群B,Cから突出する定着鉄筋63,73の一部は、図3(a)に明確に示されているように、交差部構成部材のための鉄筋群Aの内部に挿入された状態となっている。この定着鉄筋63,73の配筋によって、交差部構成部材に連続部構成部材が定着されるようになっているのである。
ところで、交差部構成部材のための鉄筋群Aは、主筋をL字状に折曲し、これを水平に配設することによって、当該鉄筋群Aを平面視L字形を形成させることができるほか、図示のように、異なる方向(例えば、桁行方向と梁行方向)にそれぞれ長尺な帯筋55を配設し、全体として平面視L字形を形成させるように配筋してもよい。他方、連続部構成部材のための鉄筋群B,Cは、耐力壁等に必要な縦筋およびスターラップによって構成されるものである。
また、本実施形態では、二つの耐力壁が交差する場合の交差部を構築する状態を例示して説明するが、耐力壁が構築される前段階としては、基礎梁が構築され、また、その上に床スラブが構築されるものである。そして、上記耐力壁が構築された後には、上階の床スラブが構築され、さらに、上階の耐力壁が構築され、屋根スラブが構築されることによって、壁式構造の構築物の全体が構築されるものである。
ところで、図示される交差部は、二つの耐力壁が交差する部分を示しているが、その他にも躯体構成部による交差部が存在する。例えば、耐力壁と床スラブとの間にも交差部が形成される。このような交差部についても上記交差部構成部材を構築することができる。この場合、下階の耐力壁は先に構築されていることから、交差部構成部材は、既に構築された耐力壁の上端に連続するように構築される。このとき、耐力壁には、上端から上向きに突出する定着鉄筋が事前に配筋され、この定着鉄筋の先端を内部に含みつつ交差部構成部材のための鉄筋群が配筋されることとなる。また、この交差部構成部材に水平方向に連続するように、連続部構成部材のための鉄筋群が配筋されることにより、床スラブを構築することができるものである。このように、交差部構成部材と、床スラブのための連続部構成部材とが、同時に構築(コンクリートが打設)されることにより、耐力壁と床スラブとの交差部を構成することができるものである。なお、上階の床スラブが構築された後には、上階の耐力壁を構築し、最終的には屋根スラブを構築することによって、建造物全体を構築するのである。
次に、具体的な構築方法について説明する。図4に示すように、交差部構成部材のための鉄筋群Aを構築し(図4(a))、連続部構成部材のための鉄筋群B,Cを構築し(図4(b))、これらの鉄筋群A,B,Cを含む躯体構成部を設ける範囲に型枠8,9を設けたうえコンクリートを打設する(図4(c))ものである。
交差部構成部材のための鉄筋群Aの構築は、交差部が形成される両側の平面部52,53(図2)に必要な鉄筋を配筋するとともに、交差部(躯体構成部の境界部51)4(図2)が一体的に構成されるように、図示のように、両側の平面部のための帯筋54,55を交差部で重複させて配筋する。帯筋54,55を使用する場合には、当該重複部分によって平面視における矩形を形成するとともに、その矩形の頂点が躯体構成部の境界部51(図2)から適宜内側に位置する点に一致するように配筋するものである。なお、帯筋54,55を使用せず、L字形に折曲した鉄筋を交差部に配筋することもできるが、この場合には、L字形鉄筋の折曲部に交差部補強筋を設けることにより、交差部の曲げ補強を行う。
連続部構成部材のための鉄筋群B,Cの構築は、交差部構成部材の平面部52,53(図2)とともに耐力壁1,1(図2)を形成するために必要な鉄筋を配設するものである。この鉄筋群B,Cは、長手方向を水平にしてなる複数の横筋61,71と、この横筋61,71を包囲するスターラップ62,72とが配筋される。さらに、この横筋61,71と同様に長手方向を水平にしてなる定着鉄筋63,73がスターラップ62,72の内側に配筋されるものである。この定着鉄筋63,73は、先端に定着板64,74が設けられており、この定着板64,74を前記交差部構成部材のための鉄筋群Aの内部に位置するように配筋するのである。このとき、交差部構成部材のための鉄筋群Aの端部から、定着板64,74までの距離(交差部構成部材のための鉄筋群Aに挿入される長さ)が定着長であり、その長さが12d〜16dとなるように、連続部構成部材のための鉄筋群B,Cに配筋する際に調整されるものである。
上記のように、交差部構成部材および連続部構成部材のための各鉄筋群A,B,Cの配筋が終了し、さらに、他の躯体構成部(および他の交差部)について配筋が終了したのち、型枠8,9を装着し、コンクリートを打設するのである。型枠装着には、当然のことながら、各鉄筋群A,B,Cに配筋された鉄筋とのかぶり厚が保持されつつ、鉄筋群A,B,Cの両側の壁面位置に型枠8,9を対向して配置し、所定の壁厚を形成できるように配置される。
このようにして、交差部を含む耐力壁1,1(図2)が構築された後は、スラブ3(図1)が構築され、さらに上階における耐力壁が、上記と同様に構築されることによって構築物全体が構築されるものである。
以上のように、本発明にかかる壁式構造の実施形態、およびコンクリート構築物の構築方法の実施形態では、躯体構成部が交差する交差部を、交差部構成部材5(図2)によって構成させるものであるから、当該交差部の強度は、交差部構成部材5の強度によって決定されることとなる。そして、交差部構成部材5について強度試験を行うことにより、所定の強度を超える十分な曲げ強度を備えていることが判明すれば、当該構成の交差部構成部材5をモジュールとして使用することが可能となる。
また、交差部構成部材5と連続部構成部材6,7(図2)との定着強度についても、定着板64,74(図2)を有する定着鉄筋63,73(図2)を使用することにより、定着長を短くすることができ、このときの定着強度についても強度試験により、所定強度を超える十分な定着強度を備えることが判明すれば、当該定着鉄筋63,73により連続部構成部材6,7を定着させることによって躯体構成部を構成させることができる。
上記のような曲げ強度または定着強度の過不足については、曲げ補強筋もしくは縦筋の増減、または、定着鉄筋の増減もしくは定着長の長短により調整可能であり、各躯体構成部(耐力壁、壁梁または交差部)に対して要求される強度に応じて、必要となる構造および鉄筋数等を定めることによって、これらの鉄筋群A,B,Cを使用する構造物をモジュールとして使用することが可能となる。
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明がこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることは可能である。例えば、躯体構成部が交差する部分に形成される交差部は、L字状に限らず、T字状または十字状に交差する場合もあり、各交差部構成部材5の構造を適宜変更すれば、各種の交差部にも使用可能である。つまり、T字状の交差部では、図5(a)に示すように、一方の帯筋54の長手方向中央付近において、他方の帯筋55を重複させて矩形を形成させるように配筋し、その他の鉄筋を配設してT字状交差部構成部材のための鉄筋群A1を構成するのである。このように鉄筋群A1を構成すれば、当該鉄筋群A1から三方向に連続部構成部材を連続させることができ、それぞれに連続部構成部材のための鉄筋群を配置することにより、T字状の交差部を有する躯体を構築することができる。また、十字状の交差部では、図5(b)に示すように、双方の帯筋54,55がそれぞれ中央付近で交差しつつ重複させ、当該中央付近に矩形を形成させるように配筋し、十字状交差部構成部材のための鉄筋群A2を構成するのである。この場合には、四方向に連続部構成部材を連続させることができるのである。
さらに、耐力壁1,1に代えて壁梁2(図1)を構築する際には、前記交差部構成部材に連続する連続部構成部材を梁の寸法とすることにより、対応させることができる。この場合、連続部構成部材6,7のスターラップ62,72の鉛直方向長さを短くすることにより、所定寸法の壁梁を構成することが可能となる。
1 耐力壁
2 壁梁
3 スラブ
4 交差部
5 交差部構成部材
6,7 連続部構成部材
8,9 型枠
51 躯体構成部の境界部
52,53 交差部構成部材の平面部
54,55 帯筋
56,57 縦筋
61,71 横筋
62,72 スターラップ
63,73 定着鉄筋
64,74 定着板
A,B,C 鉄筋群

Claims (6)

  1. 鉄筋コンクリート製の耐力壁、床スラブおよび屋根スラブによって躯体の基本部分を構成してなる壁式構造の鉄筋コンクリート構造物において、躯体を構成する複数の躯体構成部の端部が相互に交差する交差部を、複数の平面部を有する交差部構成部材によって構築し、この交差部構成部材の平面部に連続して該平面部とともに躯体構成部を形成する連続部構成部材を構築してなり、上記連続部構成部材は、定着板を先端に備えた定着鉄筋が配筋されるとともに、この定着鉄筋のうち、定着力が得られる定着長を含む先端部分が上記交差部構成部材を構成する平面部の内部に配筋されてなることを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の壁式構造。
  2. 前記交差部は、耐力壁と耐力壁とがL字状、T字状または十字状に交差するものであって、前記交差部構成部材の中央によって躯体構成部の境界部が形成されるとともに、該境界部を境に桁行方向および梁行方向に向かう短尺な複数の平面部が設けられている請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物の壁式構造。
  3. 前記交差部は、耐力壁と壁梁とが交差するものであって、前記交差部構成部材の中央によって躯体構成部の境界部が形成されるとともに、該境界部を境に桁行方向および梁行方向に向かう短尺な複数の平面部が設けられている請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物の壁式構造。
  4. 壁式構造の鉄筋コンクリート構造物を構築するための方法であって、躯体の一部を構成する複数の躯体構成部の端部が相互に交差する交差部を構成する交差部構成部材と、この交差部構成部材に連続する連続部構成部材とに区分し、上記交差部構成部材を構成すべき範囲には、上記交差部の交差角度に応じて折曲され、該交差部およびその両側の複数の平面部のための鉄筋と、この鉄筋に直交する交差部補強筋とを含む鉄筋群が配筋され、上記連続部構成部材を構成すべき範囲には、該連続部構成部材のための所定の鉄筋が配筋されるとともに、先端に定着板を備えた定着鉄筋が、上記交差部構成部材の平面部が構成される範囲内に該定着板および所定の定着長を含む部分を侵入させつつ配筋され、上記両範囲にコンクリートを打設して躯体構成部を形成してなることを特徴とする壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法。
  5. 壁式構造の鉄筋コンクリート構造物を構築するための方法であって、複数の耐力壁または壁梁の端部が交差する交差部を構成する交差部構成部材と、この交差部構成部材に連続する連続部構成部材とに区分し、上記交差部構成部材を構成すべき範囲には、躯体の桁行方向に構成される平面部のための該桁行方向に長尺な複数の帯筋と、躯体の梁行方向に構成される平面部のための該梁行方向に長尺な複数の帯筋とが、交差位置で矩形を形成するように重複して配筋されるとともに、鉛直方向に長尺な直線状の縦筋が上記両帯筋の内側に適宜間隔で配設され、上記連続部構成部材を構成すべき範囲には、該連続部構成部材のための所定の鉄筋が配筋されるとともに、先端に定着板を備えた定着鉄筋が、上記交差部構成部材の平面部が構成される範囲内に該定着板および所定の定着長を含む部分を侵入させつつ配筋され、上記両範囲にコンクリートを打設して躯体構成部を形成してなることを特徴とする壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法。
  6. 前記交差部構成部材の平面部は、前記定着鉄筋による前記定着長を確保できる桁行方向および梁行方向の長さを有する平面部である請求項4または5に記載の壁式構造の鉄筋コンクリート構造物の構築方法。
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