JP5882995B2 - 治療方法 - Google Patents

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Description

本発明は尿タンパク症又は尿タンパク症関連疾患の治療方法に関する。
本明細書に引用される、特許公報や特許出願明細書等を含む参照文献全てを、本明細書の一部を構成するものとして参照により援用する。本明細書においては先行技術に関する多数の刊行物が参照されているが、そのことをもって、これら文献のいずれかが当技術分野において共通の一般常識の一部を構成することを自認するものではない。
タンパク尿症は、尿中にタンパク質が漏出する症状であり、全世界で約1億人が罹患しており、糸球体を起点とする腎不全(炎症を含む)を特徴とする。タンパク尿症そのものは、腎性疾患及び腎外性疾患の危険因子である。
タンパク尿症は、正常であれば濾過されることはないアルブミン等の血漿中高分子の透過性が糸球体において上昇していることを通常反映する。タンパク尿症はとりわけ腎組織疾患(腎炎、ネフローゼ、萎縮腎)や、心不全に起因する腎臓うっ血に伴って発症する。アルブミンが尿中に漏出する(この場合は、アルブミン尿症)だけでなく、グロブリンや他の血中タンパク質も尿中に漏出する。
腎臓の有足細胞及びその足突起(Foot Process:FP)は糸球体における限外濾過系の重要な要素であり、糸球体においてこれら要素は、内皮細胞及び糸球体基底膜(GBM)と共に濾過障壁を構成する。有足細胞は腎糸球体に存在し、ここにおいてGBMに結合している。有足細胞FPは、修飾された接着構造(Modified Adherens junction)であるスリット膜(SD)により相互に接着される。タンパク尿を伴う腎臓疾患は通常、有足細胞ミクロフィラメント系の再配列によって起こる有足細胞膜リモデリング(足突起消失及び/又はスリット膜消失)を様々な程度で伴う。
ミクロアルブミン尿症は、アルブミンが糸球体有足細胞の濾過障壁を透過して尿中に漏出することにより起こる疾患であり、例えばメタボリック症候群、心血管疾患(CVD)、糖尿病を含む数々の疾患に対するリスクの高さを示唆する、全身血管系の一般的な機能障害の臨床的な指標であると考えられる。
以上より、タンパク尿症又はタンパク尿症に関連する疾患に対する改善された及び/又は更なる治療手段に対するニーズが存在する。
本発明の第一の態様は、タンパク尿症又はタンパク尿症に関連する疾患の治療方法であって、被験体に治療的有効量のラクトフェリンを投与することを含む方法の提供に関する。
本発明の第二の態様は、タンパク尿症治療のためのラクトフェリンの提供に関する。
本発明の第三の態様は、タンパク尿症治療のための医薬の製造におけるラクトフェリンの使用の提供に関する。
第一の態様に係る方法及び第二、第三の態様に係る使用は、ラクトフェリンが、メタボリック症候群と診断された被験体、特に基準尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)が約2mg/mmolより高い被験体のサブグループにおけるタンパク尿症を低減することができるという、予期せぬ観察結果に直接基づく。
本発明の各態様においては、いかなる生物学的に活性なラクトフェリンをも用いることができる。しかしながら、第四の態様は、タンパク尿症治療のための、経口摂取又は経口投与可能なラクトフェリンの提供に関する。
第四の態様に係る、経口摂取又は経口投与可能なラクトフェリンは、第一の態様における投与に適している。
現在標準的なタンパク尿症の治療には、アンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター又はアンジオテンシンレセプターブロッカー(ARBs)が用いられる。本発明は、タンパク尿症治療の代替的治療法の提供に関する。また、本発明により、ACEインヒビター又はARBの投与の必要性をなくすことができる。更に、本発明はACEインヒビター又はARBと共に利用してもよい。
試験デザインを示す模式図。 尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)のベースライン値が>2mg/mmolである参加者のサブグループにおける、ACRのプロット。 図2からラクトフェリン群のみを抽出した尿ACRデータのプロット。 図2の尿ACRデータの、来院3(V3)と来院1(V1)の間の変化率のプロット。
本発明はラクトフェリンを用いるタンパク尿症の治療に関する。本明細書において「治療する」及び「治療」とは、症状の重度及び/又は頻度の低減、症状及び/又はその原因の除去、症状発生の予防(疾病予防)及び/又はその原因の予防、及び障害の緩和の改善を意味するものとする。従って、例えば本発明の第一の態様のタンパク尿症を「治療する」ことは、タンパク尿症に罹りやすい個体における病態又は疾患の予防と、臨床的に症状がある個体における病態又は疾患の治療との両者を含む。本明細書において「治療する」とは、脊椎動物や哺乳類(特にヒト)における病態又は疾患の治療又は予防のいずれをも含み、且つ、病態又は疾患の阻止、即ちその進展を止めること、或いは病態又は疾患の影響の緩和又は改善、即ち病態又は疾患の影響を後退させることを含むものとする。
本明細書において「徴候」とは、特定の病態又は疾患(即ち遠因)から起こる、及び当該病態又は疾患を伴う現象を意味し、当該病態又は疾患の指標となる。「徴候」は被験体において直接観察可能なものでもよく、或いは例えば実験室における試験やアッセイにより間接的に観察可能なものでもよい。更に、本明細書において「徴候の治療」とはその遠因の治療を含み、「遠因の治療」とは徴候の治療を含むものとする。
本明細書において「予防(prophylaxis)」又は「予防的(prophylactic又はpreventative)」治療とは、症状に罹りやすい可能性はあるが未だその症状を有するとは診断されていない被験体において、症状の発生を予防すること、或いは症状のその後の進展を改善することを含むものとする。
本明細書において「タンパク尿症」とは、尿中に正常値を超えるタンパク質が存在する状態を意味する。「タンパク尿症」には「アルブミン尿症」と「ミクロアルブミン尿症」が含まれる。ヒトの尿中タンパク質の正常値は約0〜30mg/Lである。ランダムに採取した尿サンプルでは、タンパクレベルが約80mg/Lに達することもある。24時間採尿の場合、ヒトの尿中タンパク質の正常値は約0〜150mgの範囲内である。タンパク尿症とは、尿ACRが約30mg/mmolを超えることを指す。
タンパク尿症は、タンパク尿のレベルがベースライン値から少なくとも約10%低下した場合に(例えばベースラインにおいて値100であるものが少なくとも約10%低下するならば値約90である)、「治療され」、「改善され」又は「低減され」るものとする。第一〜第三の態様における幾つかの実施形態においては、タンパク尿の低減は、被験体においてベースライン値に対して少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上低下する。第一〜第三の態様におけるいずれか一の実施形態においては、被験体においてタンパク尿がベースライン値から約56%又は約78%低下する。タンパク尿の低減は、治療開始後約1週間、約2、3又は4週間、約1か月、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12か月、約1年、或いは約2又は3年以上経過した時点で評価してもよい。
タンパク尿症(アルブミン尿症とミクロアルブミン尿症を含む)は、疾患に発展したり、疾患の指標となることが多いが、疾患に発展するものばかりとは限らない。タンパク尿症とは、全ての形態のタンパク尿症を包含することを意図しており、特に限定されないが、例えば生理学的タンパク尿症、機能性タンパク尿症及び運動性タンパク尿症(機能性タンパク尿症の一形態で、筋肉の使い過ぎによって発症する)が挙げられる。更に、タンパク尿症としては、良性タンパク尿症(「本態性」タンパク尿症としても知られる)が挙げられる。これは、腎臓における病的変化によらないタイプのタンパク尿症である。更にタンパク尿症としては、病的タンパク尿症が挙げられ、例えば正常の生理学的尿中タンパクレベルより高いタンパクレベルである。
タンパク尿症は、細胞レベルにおいては有足細胞の構造的再構成(rearrangement)を伴う。腎臓における限外濾過は腎糸球体内での血管と細胞とのコンビネーションにより行われる。高度に分化した有足細胞は濾過プロセスを司り、腎臓疾患の主な標的細胞である。有足細胞は、そのアクチンベースの細胞骨格を高度にダイナミックな様式で再構成することができる。このような再構成が、腎臓内での限外濾過障壁の保全性を決定している。有足細胞の足突起におけるストレスファイバーから皮質アクチンへのアクチン細胞骨格の再構成により、有足細胞の足突起の消失とタンパク尿症の進行がもたらされる。有足細胞のダメージは種々の条件や要因で起こる。これらの変化により腎臓へのダメージの進行がもたらされ、時間経過と共に腎機能の低下を招く。
本明細書において「アルブミン尿症(「マクロアルブミン尿症」としても知られる)」とは、尿中に正常値を超えるアルブミンが存在する状態を意味するものとする。尿タンパクの主成分はアルブミンであることから、ヒトの尿ACRの正常値は約0〜30mg/mmolである。
本明細書において「ミクロアルブミン尿症」とは、尿中にアルブミンが存在し、ヒトにおいて約20〜200μg/分の速度でアルブミンが分泌されそのレベルが約30〜300mg/Lである状態を意味するものとする。尿中ACRで定義するならば、「ミクロアルブミン尿症」とは、尿中ACRが約30mg/gを超える状態、或いは、尿中ACRが女性で約3.5mg/mmolを超えるか、男性で約2.5mg/mmolを超える状態を意味する。ミクロアルブミン尿症はしばしば腎臓疾患の早期のサインであるが、他の理由で生じることもある。
「クレアチニン」は筋内でのクレアチンの分解産物であり、通常一定速度で体内で(筋質量に依存して)産生される。クレアチニンは主に腎臓(糸球体濾過及び近位尿細管による分泌)によって血液から濾過・除去される。尿細管によるクレアチニンの再吸収は殆どない。クレアチニンはmg/dL単位又はμmol/L単位(1mg/dLは88.4μmol/L)で表されることもある。ヒトにおける通常の基準範囲は、血清クレアチニンレベルで女性では0.5〜1.0mg/dL(約45〜90μmol/L)又は50〜110μmol/L、男性では0.7〜1.2mg/dL(60〜110μmol/L)又は60〜120μmol/Lである。男性は通常女性に比べ骨格筋質量が多いため、クレアチニンレベルが高い。
腎臓における濾過作用が不十分な場合、血漿クレアチニンレベルが上昇する。従って、血漿クレアチニンレベルや尿クレアチニンレベルはクレアチニンクリアランス(CrCI)レベルの算出に利用することができる。クレアチニンクリアランスレベルは糸球体濾過量(GFR)を反映する。GFRが臨床上重要である理由は、腎機能を反映する測定値であるからである。しかしながら、重度の腎不全の場合には、排泄されるクレアチニンの全量の大部分をクレアチニンの能動分泌が占めることになるため、クレアチニンクリアランス率は過剰に推定されてしまう。ケト酸類、シメチジン及びトリメトプリムはクレアチニンの尿細管分泌を低減するため、重度の腎不全の場合には特にGFR推定値の正確度を向上させる。
腎機能の更に正確な推定は、血漿中クレアチニン濃度と血漿中尿素濃度を測定することによって可能となる。血中尿素窒素(BUN)対クレアチニン比は、腎臓に由来する異常以外の異常の指標となりうる。例えば、クレアチニン値とアンバランスに上昇した尿素濃度は、体液量減少等の腎前性の問題を示すことができる。血漿尿素濃度はBUN(BUN/クレアチニン比として)又は尿素(尿素/クレアチニン比として)で表すことができる。ヒトの血漿BUNの正常値は7〜30mg/dLで、血漿中尿素の正常値は2.5〜10.7mmol/Lである。
本明細書において「BUN/クレアチニン比」とはBUN(mg/dL)と血漿クレアチニン(mg/dL)の比(mg/g)である。また、「尿素/クレアチニン比」とは血漿中尿素(mmol/L)と血漿クレアチニン(μmol/L)のモル比である。
この比は、尿素もクレアチニンも糸球体で自由に濾過されるという事実に基づいている。しかしながら、尿細管による尿素の再吸収は調節(増加又は減少)できるのに対して、クレアチニンの再吸収は一定であり最小限に維持される。従って、約20mg/mgを超える血漿BUN/クレアチニン比、或いは約100mmol/mmolを超える尿素/クレアチニン比は腎前性疾患の指標となりうる(BUNの再吸収の増加により、血漿中のクレアチニンに対するBUN量が非比例的に上昇するため)。一方、約10〜20mg/mgの血漿BUN/クレアチニン比、或いは約40〜100mmol/mmolの尿素/クレアチニン比は正常又は腎後性疾患の指標となりうる(BUNの再吸収が正常範囲内にある)。約10mg/mgを下回る血漿BUN/クレアチニン比、或いは約40mmol/mmolを下回る尿素/クレアチニン比は腎内疾患の指標となりうる(腎障害によりBUNの再吸収の減少により、血漿中のクレアチニンに対するBUN量が非比例的に減少するため)。しかしながら、低レベル〜正常レベルのクレアチニン値と基準範囲に含まれるBUN又は尿素値に起因するBUN/クレアチニン比又は尿素/クレアチニン比の上昇は、臨床的有意性があるとは言えない。
第一〜第三の態様のいずれか一の実施形態においては、治療対象のタンパク尿症は腎前性疾患、腎内性疾患(即ち腎臓疾患)又は腎後性疾患を伴う。
タンパク尿症、アルブミン尿症又はミクロアルブミン尿症の検出及び診断方法は当業者に公知であり、該方法の例としてはラジオイムノアッセイやラテックスを用いるイムノアッセイ、フルオロイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、凝集抑制試験、免疫濁度法(immunoturbidimetry)、免疫比濁法(immunonephelometry)、放射状免疫拡散法(radial immunodiffusion assay)等が挙げられる。タンパク尿症、アルブミン尿症又はミクロアルブミン尿症は、単一の尿サンプル又は時間を置いて採取した尿サンプルを用いた専用の尿検査により測定することができる。
当業者であれば、酵素や抗体によるクレアチニン濃度及び尿素濃度の測定法を想起するであろう。
第一、第二又は第三の態様の実施形態においては、タンパク尿症はグルコース代謝障害、インスリン作用低下、メタボリック症候群、真正糖尿病(いわゆる糖尿病)、高血圧症及び/又は肥満症を伴う。
本明細書において「メタボリック症候群」とは、合併して発症し、被験体における2型糖尿病、脳卒中又は心疾患の発生リスクを増加させる障害を意味する。メタボリック症候群の原因は複雑でよく解明されていないが、遺伝的要因も考えられている。体重増加や肥満に加え、運動不足により、メタボリック症候群発症のリスクが高まる。また、メタボリック症候群は「シンドロームX]又は「インスリン抵抗性症候群」とも呼ばれる。
被験体が以下の状態を示す場合、メタボリック症候群とされる。
−中心性(腹部)肥満−胃部(腹部)内部及び周囲の脂肪過剰−加えて、以下の因子のいずれか2因子:
高血圧;
高い血中トリアシルグリセロール値;
低い高密度リポプロテイン(HDL)値;
空腹時血糖障害(血糖値が正常値より高いが、2型糖尿病と診断されるほどは高くない);及び
インスリン抵抗性(体内(特に筋肉と肝臓)においてインスリンが本来的な機能を発揮しない)。
本明細書において「インスリン抵抗性」とは、正常な血糖値を維持するために膵臓が高いレベルでインスリンを放出する必要がある状態を意味するものとする。インスリン抵抗性は2型糖尿病発症のリスクを増加させ、ほとんどの2型糖尿病のケースで見られる。インスリン抵抗性への対処のために膵臓がインスリンを大量に産生することができない場合、血糖値が上昇し、耐糖能異常や糖尿病が発症する。2型糖尿病の被験体はメタボリック症候群の他の特徴も有していることが多く、循環系疾患のリスクが非常に高い。
本明細書において「中心性肥満」とは、体脂肪が主として腹部周り及び上半身に蓄積する場合を意味するものとする。腹囲は、メタボリック症候群を発症するリスクと比例する。被験体の中心性肥満のリスクは性別及び民族的背景により変動する。一般に、94cm以上(男性)又は80cm以上(女性)の腹囲はメタボリック症候群のリスクを示す。
本明細書において「高血圧」とは、他の危険因子がない場合の被験者における約140/90mmHgよりも高い血圧を意味するものとする。被験者における血圧の正常範囲は、一般的に約130/80mmHg未満(他の疾患がある場合は、より低い値)である。高血圧は心血管疾患、脳卒中及び腎疾患の発症のリスクを増加させる。
トリアシルグリセロール及びコレステロールは食餌に由来する脂質であり、肝臓により合成されて、血液中でリポタンパク質によって輸送される。血中トリアシルグリセロールの増加及びHDLコレステロールの減少は、心血管疾患の要因であるメタボリック症候群及び粥状動脈硬化のリスクを増加させる。体重増加又は肥満もまた、それ自体が高トリアシルグリセロール値、高血圧及び粥状動脈硬化等の症状の危険因子である。
「耐糖能障害」は、「前糖尿病状態」と称されることもあり、本明細書においては正常よりも血糖値が高いが、糖尿病と呼ばれるほど高くはないことを意味するものとする。耐糖能障害又は空腹時血糖異常を治療していない被験体の3分の1は、糖尿病を発症するといわれる。
これらの病態の多くは、複雑に関連し合っているため、これらの一連の解明は困難である。肥満がメタボリック症候群の出発点となり得ると考える研究者もいる。
糖尿病は、複数の原因因子に由来する一連の代謝異常と定義され、グルコース代謝障害を特徴とし、通常タンパク質及び脂肪の代謝障害を伴う。この結果、空腹時及び食後の血清中グルコース濃度が上昇し、治療を行わずに放置すると合併症を引き起こす。糖尿病には以下の4種の異なる形態が知られている:(1)1型糖尿病、(2)2型糖尿病、(3)妊娠中に初めて発症若しくは自覚される、いわゆる妊娠糖尿病、及び(4)主として遺伝子異常に基づく他の形態。
「糖尿病」とは、血糖値の上昇や肥満に伴う病態、耐糖能異常、インスリン抵抗性の上昇、高脂血症、脂質異常症、コレステロールの上昇(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症)、高インスリン血症、高血圧、ミクロアルブミン尿症等の代謝異常を含むがこれらに限定されない。耐糖能異常及び空腹時血糖異常は糖尿病前症と称される二症状である。この段階ではいわゆるインスリン抵抗性が関与している。これは「メタボリック症候群」又は「シンドロームX」と呼ばれる代謝疾患群の中の一種であり、特に、高い脂肪対筋肉比が関与している。2型糖尿病には高トリグリセリド血症や脂質異常症等のシンドロームXに由来する他の症状が伴うことが多い。
1型及び2型糖尿病は糖尿病の主たる2形態であり、このうち2型糖尿病が最も一般的な形態である。1型及び2型糖尿病は、高血糖、高コレステロール血症及び高脂血症を伴う。1型及び2型糖尿病では、インスリン非感受性やインスリンの絶対的欠乏によって、肝臓、筋肉及び脂肪組織で利用されるグルコースが減少し、血糖値が上昇する。高血糖がコントロールされないと、眼、心臓、血管、腎臓、神経等の種々の臓器の機能不全や損傷が伴い、それによってネフロパシー、神経障害、網膜症、下肢及び足の潰瘍化、脂肪肝疾患、高血圧、心血管疾患及び脳血管疾患(脳卒中)等の微小血管及び大血管疾患、即ちいわゆる糖尿病合併症のリスクが高まることにより、若年死亡率が増加する。
1型糖尿病は、通常小児期又は思春期に発症する糖尿病の形態であり、自己免疫反応によるインスリン産生β細胞の破壊によるインスリン分泌の絶対的欠乏を特徴とする。
2型糖尿病は、主として成人期に発症する糖尿病の形態であり、この疾患の初期におけるインスリン産生は十分であるが、インスリン感受性、特に末梢組織におけるインスリンを介したグルコースの利用及び代謝に異常がみられる。2型糖尿病に伴う種々の組織の変化は、臨床症状が認められる前にもみられる。
本発明においては、外傷(例えば熱傷又は窒素バランスの崩れ)及び脂肪組織障害(例えば肥満)によって誘起されるインスリン抵抗性の治療も含まれる。
更に、第一〜第三の態様のいずれか一の態様によって治療されるタンパク尿症としては、急性腎炎症候群、アルポート症候群、アミノ酸尿症、アミロイドーシス、良性起立性(体位性)タンパク尿症、膀胱腫瘍、心血管疾患、膠原病性脈管疾患(例えば、全身性エリテマトーデス)、うっ血性心不全、脱水症、糖尿病、糖尿病性腎症、エボラ出血熱、子癇、ファブリー病、ファンコニー症候群、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糸球体疾患(例えば、膜性糸球体腎炎)、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、重金属摂取、ヘモグロビン尿症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、HIV関連腎症、高血圧、高血圧性腎硬化症、IgA腎症(即ち、ベルジェ病)、IgM腎症、感染症(例えば、全身感染症、HIV、梅毒、肝炎、連鎖球菌感染後感染症)、間質性腎炎、腎臓(腎)疾患、腎臓(腎)窮迫(distress)、エリテマトーデス、悪性高血圧、腎髄質嚢胞症、膜性増殖性糸球体腎炎I型及びII型、膜性腎症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、微小変化群、多発性骨髄腫、ミオグロビン尿症、爪膝蓋骨症候群、壊死性血管炎、腎炎症候群、ネフローゼ症候群(即ち、腎実質性腎不全)、腎毒性薬剤、臓器拒絶反応、膵臓窮迫、多発性嚢胞腎疾患、感染後糸球体腎炎(例えば、連鎖球菌感染後糸球体腎炎)、子癇前症、急速進行性(半月体形成性)糸球体腎炎、逆流性腎症、腎静脈血栓症、サルコイドーシス、鎌状赤血球症、激しい運動、ストレス、腎臓の中毒性病変、尿窮迫、尿路感染症並びに血管内皮機能障害を伴う(これらの症状に由来する又はこれらの症状を生じさせる)タンパク尿症が挙げられるが、これらに限定されない。
重篤なタンパク尿症により全身性の低タンパク血症を発症することがあり、この場合膠質浸透圧低下(腹水症、浮腫、水胸症)をもたらす。
米国において、毎年100,000人超の人々が腎不全と診断される。腎不全(又は末期腎疾患、ESRD)は、慢性腎疾患(CKD)の最終段階である。糖尿病、高血圧及び腎炎即ち腎臓の炎症は、米国及び豪州における腎疾患の最も一般的な原因である(それぞれ、豪州における新規患者の34%、14%及び22%)。CKD及びタンパク尿症は、CVD、入院及び総死亡率の最も重要な臨床的危険因子であると認識されている。
糖尿病の合併症として発生した腎疾患又は障害は糖尿病性腎症と称され、これは、糸球体過剰濾過、細胞外マトリクス蓄積、糸球体肥大、糸球体間質拡大及び尿細管間線維症を特徴とし、最終的に糖尿病性糸球体硬化症及び進行性腎不全をもたらす。糖尿病の早期診断及び早期介入は、多くの1型及びかなりの割合の2型糖尿病被験体において観察される腎不全への進行を遅らせるのに重要である。糖尿病に由来する腎不全は、米国における腎不全の新規症例のほぼ44%及び豪州におけるCKDの新規症例の34%を占める。米国におけるほぼ2千4百万人が糖尿病であり、豪州における人口の7.6%即ち、およそ150万人が糖尿病である。糖尿病がコントロールされている場合であっても、この疾患はCKD及び腎不全をもたらし得る。米国において、20〜30%前後の糖尿病患者は、糖尿病性腎症を発症し、ほぼ180,000人は、最終的に腎不全となる。
腎機能障害は、血管肥厚及び血管石灰化を促進すること、また、炎症経路を活性化することによりCVD全体に寄与し得る。インスリン抵抗性が、酸化ストレス、腎機能における初期減退及びアルブミン尿症と密接に関連することも認識されている。近年、タンパク尿症及びミクロアルブミン尿症はCVDの危険因子として同定された。
高血圧もまた一般的な腎疾患の原因である。糖尿病患者は高血圧となる傾向がある。慢性腎疾患の進行を積極的に遅らせることを目的として、多くの新薬開発がなされている。
CKDは、糸球体濾過率(GFR)の減少(推定GFR値約60mL/分未満)及びタンパク尿という2つの重要な臨床試験結果を伴う。例えば、正常値を超える尿中アルブミン排泄量は2型糖尿病患者において頻繁に観察される。糖尿病性腎疾患は、発症までの年数が長い。腎疾患を発症する患者では、数年以内に、血中タンパク質であるアルブミンの尿中へ徐々に漏出されるようになる。アルブミン尿症がやや進行した場合、いわゆるミクロアルブミン尿症の場合には、糖尿病性腎症に至る進行性腎機能低下と、心血管罹患及び心血管死亡の両方の前兆となる。疾患が進行するにつれ、アルブミン等のタンパク質の尿中への漏出が増加する。この段階は、マクロアルブミン尿症又はタンパク尿症と称される。尿中のタンパク質量が増加するにつれ、通常、腎臓の濾過機能が低下し始める。腎障害が進行するにつれ、多くの場合血圧も同様に上昇する。
第一〜第三の態様のいずれか一態様に従って用いられるラクトフェリン又は第四の態様のラクトフェリンとしては、ラクトフェリンや変異型ラクトフェリン、切断型ラクトフェリン、上述のいずれかと他のペプチド、ポリペプチド、タンパク質からなるラクトフェリンローブ(lobe)又はラクトフェリン融合体(fusion)、ラクトフェリンの加水分解産物が挙げられるが、これらに限定されない。
ラクトフェリンは、涙、胆汁、気管支粘液、胃腸液、頸腟部粘液、精液及び乳汁を含む多くの外分泌液中に存在する80kDの鉄結合性糖タンパク質である。これは、循環性の多核好中球の特異顆粒(二次顆粒)の主成分である。ラクトフェリンを最も豊富に含む供給源は哺乳類の乳汁及び初乳である。
ラクトフェリンは、2〜7μg/mLの濃度で循環する。ラクトフェリンの役割としては、鉄代謝の調節、免疫機能及び胚発生等、多くの生物学的機能が知られている。ラクトフェリンは、グラム陽性及びグラム陰性細菌並びに酵母等の真菌を含む多種多様な病原体に対する抗菌活性を有する。ラクトフェリンの抗菌効果は、病原体の増殖に必須である鉄を結合する能力に基づく。ラクトフェリンは数種のウイルスの複製も阻害し、細菌膜上のリポ多糖のリピドA成分と結合することにより、抗生物質及びリゾチームに対する一部の細菌の感受性を高める。
本明細書において、「ラクトフェリン」とは、精製ラクトフェリン、天然由来のラクトフェリン、組換えラクトフェリン、合成ラクトフェリン、ラクトフェリンの断片、変異ラクトフェリン、ラクトフェリンの加水分解産物又はそれらの任意の混合物若しくは組み合わせを意味するものとする。
上記ラクトフェリンは、1分子当たり2個以下(すなわち0、1又は2個)の金属イオンを含有する精製ラクトフェリンポリペプチドであってもよい。
ラクトフェリンは、単離又は精製されていてもよい。「単離された」又は「精製された」ラクトフェリンとは、天然ではそれに会合している少なくとも1種の媒介物又は化合物を実質的に含まないものを指す。例えば、単離されたタンパク質は、その由来する細胞又はその細胞の給源である組織の少なくとも一部の細胞性物質又は混入タンパク質を実質的に含まない。「細胞性物質を実質的に含まない」とは、ラクトフェリンが、少なくとも50〜59%(w/w)の純度、少なくとも60〜69%(w/w)の純度、少なくとも70〜79%(w/w)の純度、少なくとも80〜89%(w/w)の純度、少なくとも90〜95%の純度又は少なくとも96%、97%、98%、99%若しくは100%(w/w)の純度である調製物を意味するものとする。
ポリペプチドの純度は、適切な標準的方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はHPLC分析のいずれかによって測定することができる。実際には、ラクトフェリン調製物のイオン/ラクトフェリン比の測定値は0〜2.5の範囲となり得る。
ラクトフェリンは、例えば乳汁から単離された天然由来のポリペプチド、組換えポリペプチド又は合成ポリペプチドであってもよい。組換えラクトフェリンは、無細胞発現系における発現、或いはトランスジェニック動物、植物、真菌若しくは細菌又は他の有用な種における発現によって産生され得る。組換えヒトラクトフェリンはプロスペック・プロテイン・スペシャリスト社(ProSpec Protein Specialists社)から入手できる。また、ラクトフェリンは公知の有機合成法を利用して調製してもよい。ラクトフェリンは、陽イオン交換クロマトグラフィー、続いて限外濾過及び透析濾過により乳汁から単離してもよい。
有用なラクトフェリン断片としては、ラクトフェリンの加水分解産物の個々の成分やN及びCローブのいずれか一方又は両方を含む断片、N又はCローブの断片、ラクトフェリシン、(人工的な又は天然のプロセスにより)作製され後述の公知技法により同定された断片が挙げられる。
ラクトフェリンは哺乳類由来のものであってもよい。
ウシ及びヒト由来のラクトトランスフェリン(ラクトフェリン前駆体)、ラクトフェリン及びそのペプチドの確認された配列は、スイスプロット(http://au.expasy.org/cgi−bin/sprot−search−ful)により検索できる。
ラクトフェリンとしては、例えば、ウシラクトトランスフェリン前駆体(アクセッション番号P24627)又はその断片であるウシラクトフェリシンB、及びヒトラクトトランスフェリン前駆体(アクセッション番号P02788)又はその断片であるカリオシン−1、ラクトフェロキシンA、ラクトフェロキシンB若しくはラクトフェロキシンを挙げることができる。第一〜第四の態様のいずれか一態様において有用な、既に報告済みのラクトフェリンのアミノ酸及びmRNA配列の他の例としては、ヒトラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号AAW71443及びNP_002334)及びmRNA(アクセッション番号NM_002343)配列;ウシラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号NP_851341及びCAA38572)及びmRNA(アクセッション番号X54801及びNM_180998)配列;ヤギラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号JC2323、CAA55517及びAAA97958)及びmRNA(アクセッション番号U53857)配列;ウマラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号CAA09407)及びmRNA(アクセッション番号AJ010930)配列;ヒツジラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号NP_001020033)及びmRNA(アクセッション番号NM_001024862)配列;ブタラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号NP_999527、AAL40161及びAAP70487)及びmRNA(アクセッション番号NM_214362)配列;マウスラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号NP_032548及びA28438)及びmRNA(アクセッション番号NM_008522)配列;スイギュウラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号CAA06441)及びmRNA(アクセッション番号AJ005203)配列;並びにラクダラクトフェリンのアミノ酸(アクセッション番号CAB53387)及びmRNA(アクセッション番号AJ131674)配列が挙げられるが、これらに限定されない。これらの配列は、野生型及び変異型のいずれも用いることができる。
従って、第一〜第四の態様のいずれか一の実施形態において用いられるラクトフェリンは、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、スイギュウ、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトのラクトフェリンである。別の一実施形態において用いられるラクトフェリンは、バッファロー又はシカのクトフェリンである。ラクトフェリンを産生できる動物は、乳汁にラクトフェリンを過剰発現するよう設計されたトランスジェニック動物であってもよい。
野生型ラクトフェリンポリペプチドの生物学的活性が維持された野生型ラクトフェリンポリペプチドの変異体(例えば、少なくとも2(例えば、4、6、8、10、20、50、100、200、300、400、500、600、700)個のアミノ酸を含有する野生型ラクトフェリンポリペプチドの断片)又はラクトフェリンポリペプチド配列を含有する組換えタンパク質を用いてもよい。また、ラクトフェリンは、当技術分野において公知の遺伝子工学的又は化学的合成法を用いて調製することができる。
本明細書において「変異体」とは、1以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換により、所定の種のラクトフェリンの主要な野生型アミノ酸配列とは異なる配列を有する天然由来の(例えば、アレル変異体)ラクトフェリン、又は非天然由来の(例えば、人工的に作製された変異体)ラクトフェリンを意味するものとする。このような変異体を作製するための方法は当技術分野において公知である。有用な組換えラクトフェリン及びラクトフェリン断片、並びにそれらを調製する方法は、米国特許第5,571,691号明細書、米国特許第5,571,697号明細書、米国特許第5,571,896号明細書、米国特許第5,766,939号明細書、米国特許第5,849,881号明細書、米国特許第5,849,885号明細書、米国特許第5,861,491号明細書、米国特許第5,919,913号明細書、米国特許第5,955,316号明細書、米国特許第6,066,469号明細書、米国特許第6,080,599号明細書、米国特許第6,100,054号明細書、米国特許第6,111,081号明細書、米国特許第6,228,614号明細書、米国特許第6,277,817号明細書、米国特許第6,333,311号明細書、米国特許第6,455,687号明細書、米国特許第6,569,831号明細書、米国特許第6,635,447号明細書、米国特許出願公開第2005−0064546号明細書及び米国特許出願公開第2005−0114911号明細書に開示されている。有用な変異体には、ウシラクトフェリン変異体であるbLf−a及びbLf−bも含まれる。
当業者であれば、ラクトフェリンの活性に悪影響を与えることなく、タンパク質構造における特定のアミノ酸を他のアミノ酸で置換してよいことを想起する。従って、本発明においては、ラクトフェリンのアミノ酸配列に、その生物学的有用性又は活性を顕著に低下させない程度の変異導入が可能である。このような変異としては、欠失や挿入、切断、置換、融合、モチーフ配列シャッフリング等を挙げることができる。
当業者であれば、生物学的特性を変化させずに任意の数の保存的変異をアミノ酸配列に導入してラクトフェリン「変異体」を調製できることを想起する。このような保存的なアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、疎水性や親水性、電荷、サイズ等に基づく。これらの特徴を考慮に入れた保存的置換の例は当業者に公知であり、アルギニン及びリジン;グルタミン酸及びアスパラギン酸;セリン及びスレオニン;グルタミン及びアスパラギン;並びにバリン、ロイシン及びイソロイシンの組み合わせが挙げられる。
「変異体」にはラクトフェリンの類縁体も含まれる。通常、類縁体とは、異なる種に由来するポリペプチドではあるが、対応するポリペプチドと実質的に同一の生物学的機能又は活性を共有するポリペプチドのことを指す。変異体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を共有するものであればよい。
当業者であれば、例えば「BLAST」プログラム又は他の適切なパッケージ等、多くソフトウェアパッケージを用いることにより、ラクトフェリンヌクレオチド及びアミノ酸配列の類縁体の設計又は同定が可能になることを想起する。
変異体ラクトフェリンは野生型タンパク質への変異導入法により作製することができる。野生型タンパク質への変異導入法としては、ラクトフェリンをコードする野生型ヌクレオチド配列の部位特異的変異導入及び得られたポリヌクレオチドの発現;ランダムプライマー又は選択されたプライマーのプールを用いて、発現可能なポリヌクレオチド断片をPCR等により作製する方法;野生型又は変異体ラクトフェリンポリペプチドの完全又は部分的なタンパク質分解又は加水分解法;並びにポリペプチドの化学的合成法等が挙げられるが、これらに限定されない。ラクトフェリンの変異体又は断片は、ラクトフェリンDNA若しくはRNA又はその変異体若しくは断片から組換え分子として発現することにより調製することができる。ラクトフェリンの変異体又は断片をコードする核酸配列は細胞内での発現用の適切なベクターに挿入することができる。ベクターの例としては、アスペルギルス属(Aspergillus)等の真核細胞又は大腸菌(E.coli)等の細菌細胞由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。ラクトフェリン変異体又は断片は公知のPCR技法を用いて調製することができる。PCR技法の例としては、エラープローンPCR及びDNAシャッフリングが挙げられるがこれらに限定されない。エラープローンPCRとは、PCR産物全長に亘って高い比率で点突然変異が得られるような、DNAポリメラーゼの複製正確性が低い条件下でPCRを行うためのプロセスを指す。DNAシャッフリングとは、配列相同性に基づくDNA分子のランダム断片化と、続くPCR反応におけるプライマー伸長によるクロスオーバーの固定化に起因する、高度に関連した異なるDNA配列のインビトロにおけるDNA分子間の強制相同組換えを指す。ラクトフェリンの変異体又は断片は公知の有機合成法によって作製してもよい。
第一〜第四の態様において用いられるラクトフェリンは、鉄イオン(天然由来のラクトフェリンポリペプチドと同様)又は非鉄金属イオン(例えば、銅イオン、クロムイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン又はマグネシウムイオン)を含有することができる。例えば、牛乳から単離されたラクトフェリンから鉄を除去し、次いで別種の金属イオンをキレートさせる(loading)ことができる。例えば、銅のキレート化は、上述の鉄のキレート化と同じ方法に従って実施できる。ラクトフェリンに他の金属イオンをキレート化させる方法は、当技術分野において公知である。
ラクトフェリンの調製物(例えば、牛乳から単離されたラクトフェリン)は単一種のポリペプチド(例えば、各分子がいずれも2個の鉄イオンと結合)を含有するものであってもよい。また、ラクトフェリンの調製物は異なる種のポリペプチドを含有するものであってもよく、この場合、例えば、一部の分子はイオンと結合せず、他の分子はそれぞれ1又は2個のイオンと結合するか、一部の分子はそれぞれ鉄イオンと結合し、他の分子はそれぞれ銅イオンと結合するか、一部の分子はそれぞれ0、1又は2個の金属イオンを含有する生物活性型ラクトフェリンポリペプチド(完全長又は完全長よりも短い)であり、他の分子はそれぞれポリペプチドの断片(同一又は異なる)であるか、或いは、全分子はそれぞれ0、1又は2個の金属イオンを含有する完全長ラクトフェリンポリペプチドの断片(同一又は異なる)であってもよい。
ラクトフェリンの金属イオン結合断片は、金属結合ポリペプチドを単離するための公知の方法によって得ることができる。この方法の例としては金属アフィニティークロマトグラフィーが挙げられるがこれに限定されない。ラクトフェリンの断片は、Fe3+等、遊離又は固定化金属イオンと接触させた後、適切な方法で精製することができる。例えば、当該断片を、イミノ二酢酸又はトリス(カルボキシメチル)−エチレンジアミンリガンドを含むクロマトグラフィーマトリクスとキレート結合した金属イオンと、中性pHにて接触させることができる。結合断片は、用いた緩衝液のpH及びイオン強度を低下させることにより、担持マトリクスから溶出させ回収することができる。金属結合断片は、当技術分野において公知の方法に従って調製することができる。
完全長ラクトフェリンポリペプチドと完全長ラクトフェリンポリペプチドの様々な断片との混合物は、加水分解産物、例えば、完全長ラクトフェリンポリペプチドのプロテイナーゼ消化等の部分的消化物から調製することができる。完全長ラクトフェリンポリペプチドの様々な断片の混合物は、例えば、完全長ラクトフェリンポリペプチドの完全消化(即ち、消化後に完全長ポリペプチドが全く残らない)により、或いは完全長ラクトフェリンポリペプチドの様々な種類の断片を混合することにより調製することができる。消化の程度は、当技術分野において公知の方法に従って、例えば、プロテイナーゼ量又はインキュベーション時間を変化することにより調節することができる。また、完全長ラクトフェリンポリペプチドと完全長ラクトフェリンポリペプチドの様々な断片との混合物は、完全長ラクトフェリンポリペプチドを、完全長ラクトフェリンポリペプチドの様々な断片(例えば、合成断片)と混合することにより得てもよい。
第一〜第四の態様のいずれか一の一実施形態におけるラクトフェリンは、完全又は部分的な酵素的加水分解産物(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ又はアミノペプチダーゼ加水分解産物が挙げられるが、これらに限定されない)、完全又は部分的な微生物的加水分解産物(例えば、バチルス、ビフィズス、エンテロコッカス、ラクトバチルス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、プロピオニバクテリウム(Propionbacter)、シュードモナス若しくはストレプトコッカス由来の細菌又はそれらの混合物による加水分解物)、完全又は部分的な酸加水分解産物(例えば、トリフルオロ酢酸及び塩酸加水分解産物)、臭化シアン加水分解産物又はそれらの混合物を含む。
ラクトフェリン加水分解産物は、天然、組換え若しくは合成ラクトフェリンポリペプチド又はそれらの混合物の加水分解産物であってもよい。またラクトフェリン加水分解産物は、ヒトラクトフェリン加水分解産物若しくはウシラクトフェリン加水分解産物又はそれらの混合物であってもよい。
ラクトフェリンは、グリコシル化されていなくても、グリコシル化されていてもよい。ラクトフェリンは、天然由来又は非天然由来のグリコシル基で完全に又は部分的にグリコシル化されてもよい。更に、ラクトフェリンは、ペグ化又は他の化学修飾等の、循環半減期を長時間化させるポリマーとコンジュゲートさせて修飾してもよい。貯蔵安定性を改善するために、ラクトフェリンに修飾を導入することも望ましい。このような修飾ラクトフェリンの使用も第一〜第四の態様に含まれる。
上記ラクトフェリンは、約50〜100重量%又は少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは99重量%のラクトフェリンを含むものであってもよい。
次に、牛乳からラクトフェリンを単離する手順の一例を示す。
300mLカラムのS Sepharose Fast FlowをミリQ水で平衡化し、新鮮なスキムミルク(7L、pH6.5)を流速5mL/分、4℃で通過させる。非結合のタンパク質を2.5倍容の水で流出させ、結合したタンパク質を約2.5倍容の0.1M、0.35M及び1.0M 塩化ナトリウムでそれぞれ段階的に溶出させる。1M 塩化ナトリウムで淡紅色の単一バンドとして溶出するラクトフェリンを単一の画分として収集し、ミリQ水に対し透析し、続いて凍結乾燥する。凍結乾燥した粉末を25mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)に溶解し、S Sepharose Fast Flowによるクロマトグラフィーを、上述の緩衝液における1Mまでの塩化ナトリウム勾配で流速3mL/分で再度行う。ゲル電気泳動及び逆相HPLCで確認された十分な純度のラクトフェリンを含有する画分を組み合わせ、透析し、凍結乾燥する。0.15M 塩化カリウムを含有する80mM リン酸二カリウム(pH8.6)におけるセファクリル300によるゲル濾過により、ラクトフェリンの最終精製を行う。選抜された画分を組み合わせ、ミリQ水に対し透析し、凍結乾燥する。この調製物の純度は、HPLC分析及び鉄飽和ラクトフェリンに対する約19以下の値のスペクトル比(280nm/465nm)により、95%超を示す。
鉄飽和は、2:1モル濃度過剰の5mM 鉄ニトリロ三酢酸を、10mM 炭酸水素ナトリウムを含有する50mMのTris溶液(pH7.8)に溶解させた1%精製ラクトフェリン溶液に添加することによって実施する。4℃で計20時間、100倍容のミリQ水(2回交換)に対する透析により、過剰の鉄ニトリロ三酢酸を除去する。次に、鉄担持(ホロ型)ラクトフェリンを凍結乾燥する。
一方、水に溶解させた高純度ラクトフェリン試料の1%溶液を、500mg/LのEDTA二ナトリウムを含有する30倍容の0.1Mクエン酸溶液(pH2.3)に対し4℃で30時間透析することにより、鉄欠乏(アポ型)ラクトフェリンを調製する。次に、30倍容のミリQ水(1回交換)に対する透析により、クエン酸及びEDTAを除去し、得られた無色溶液を凍結乾燥する。
第一〜第三の態様のいずれか一態様の一実施形態に係るラクトフェリンは、経口摂取又は経口投与可能である。
経口摂取又は経口投与可能なラクトフェリンは、カプセル封入、マイクロカプセル封入又はナノカプセル封入してもよい。
いずれか一の態様において用いられるラクトフェリンは、栄養補助食品又は医薬品として提供し得る。
本明細書において「栄養補助食品」とは、食品(例えば乳製品)から単離・精製することができる可食製品を意味し、経口投与した際に生理的利点を示し、また急性・慢性の疾患又は障害の予防又は軽減効果を示す製品である。従って、栄養補助食品は、それ単独又は食用品若しくは飲料と混合した形態のダイエタリー調製物又はサプリメントであってもよい。「栄養補助食品」は、「機能性食品」とも称される。栄養補助食品は、当技術分野における公知の種々の方法及びプロセスによって産生することができる。これらの例としては化学的又は微生物的方法による合成、生物材料からの抽出、機能性原料又は機能性成分の通常の食品への添加混合、発酵及び生物工学的プロセスの使用が挙げられるがこれらに限定されない。栄養補助食品は、その効果を身体に直接的に及ぼすものであってもよく、或いは例えば腸内細菌フローラを介して機能させるものであってもよい。
一般に、このような栄養補助食品は、必ずしも完全である必要はないが、ある程度精製されたラクトフェリンを含有するか、最低限でも栄養補助食品の全成分が確認されているものである。この例としては「ファースト・リーフ」が挙げられる。
栄養補助食品は、第三の態様に従って製造された医薬又は第四の態様のラクトフェリンの一例である。
適切な食品、飲料又は可食製品の例としては、可溶性粉末、粉ミルク、菓子、果実の加工製品、朝食用シリアル、インスタントバー(ready−to−eat bar)、スナックバー、ミューズリーバー、スプレッド、ディップ、ヨーグルト及びチーズ等の乳製品、乳飲料及び非乳飲料(例えば、ミルク、ジュース、茶又はソフトドリンク)等の液状製品又はそのまま飲める(ready−to−drink)製品、フードサプリメント、ダイエタリーサプリメント(例えば、ハードカプセル又はソフトカプセル、ミニバッグ(mini−bag)又は錠剤、ティーバッグ)、栄養調製物、スポーツ用栄養サプリメント(乳製品及び非乳製品であるスポーツ用栄養サプリメントを含む)、乳児用調製物(特に、乳児用の母乳化調整粉乳)、プロテイン粉末等の食品添加物、及びデイリーサプリメント(錠剤)等のダイエタリーサプリメント製品が挙げられる。
栄養補助食品は、好ましくは許容される官能特性(許容される香り、味、風味等)を有する。
栄養補助食品(組成物)は、常法に従い、該タンパク質と他の添加物(例えば、種々のフレーバー、ファイバー、甘味料等)をブレンドして製造することができ、更に他の添加物が存在していてもよい。必要に応じて、乳化剤を混合してもよい。栄養補助食品は、アミノ酸、タンパク質又は炭水化物等、他の栄養素を含んでもよい。調製の時点で更にビタミン及びミネラルを追加してもよいが、熱分解を回避するため、通常は調製後に添加する。この更なるビタミン及び/又はミネラルは、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B11、B12、ビオチン、C、D、E、H及びK並びにカルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛及び鉄から少なくとも1種選択することができる。
粉末状の栄養補助食品を製造する場合、ラクトフェリンを粉末状の添加成分と混合してもよい。この粉末製品は約5重量%未満の含水量とすべきである。続いて、水、好ましくは逆浸透水(RO水)を混合して液状混合物としてもよい。
栄養補助食品をそのまま消費できる(ready to consume)液体として提供する場合、細菌量を低減するためにこれを加熱してもよい。液状の栄養補助食品を製造する場合、液状混合物を好ましくは無菌状態で適切な容器に充填する。容器への無菌充填は、当業者により利用可能な方法により行ってもよい。この種の無菌充填に好適な装置は市販のものが利用可能である。
栄養補助食品は、好ましくは1以上の薬学的に許容される担体、希釈液又は賦形剤を含む。当該栄養補助食品は、中性付近に緩衝作用を有する生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース、ラクトース、ラクツロース又はデキストラン等の炭水化物;マンニトール又はラクチトール;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸;抗酸化剤;EDTA等のキレート化剤;アジュバント及び保存料を含有してもよい。
牛乳は、食品として長きにわたり供されてきた天然産物であるため、栄養補助食品として用いられるラクトフェリンは完全に純粋である必要がない。しかし、投与される組成物の量を低減させるためには、乳汁におけるラクトフェリン濃度よりも有意に濃縮されていることが好ましい。好ましくは、乳汁におけるラクトフェリン濃度の少なくとも10倍、より好ましくは乳汁におけるその濃度の20、30、40又は50倍の濃度で投与される。
医薬組成物はヒトへの投与に適切な製剤である。動物用組成物は動物への投与に適切な製剤である。一般に、このような製剤は、精製されたラクトフェリンを含有する。或いは、最低限栄養補助食品の全成分が確認されているものである。この例としては「ファースト・リーフ」が挙げられる。
上述の組成物は、第三の態様に従って製造される医薬又は第四の態様のラクトフェリンの例である。
第三の態様に従って製造される医薬、或いは第四の態様のラクトフェリンは、1種以上の担体及び任意に他の治療剤を含んでいてもよい。各担体、希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤は、薬学的に「許容される」ものであってもよい。
「薬学的に許容される担体」とは、生物学的にもそれ以外意味においても望ましくないものではない材料を意味する。即ち、この材料は、それを含有する医薬組成物中の他の成分の何れとも望ましくない生物学的効果をもたらすことなく、また、有害な形式で相互作用することもなく、選択された有効成分と共に個体に投与することができるものである。同様に、本発明において提供される新規化合物の「薬学的に許容される」塩又はエステルとは、生物学的にもそれ以外の意味においても望ましくないものではない塩又はエステルを意味する。
本明細書において用いられる「薬学的担体」とは、剤を被験体に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤又はビヒクルである。担体は、液体でも固体でもよく、目的の投与計画に合わせて選択される。各担体は、生物学的又はそれ以外の意味において望ましくないものではないという意味で、薬学的に「許容される」ものでなければならない。即ち、この担体は、有害な反応を全く又は実質的に引き起こすことなく有効成分と共に被験体に投与することができるものである。
前記組成物は、従来の薬学的に許容される無毒性の担体、アジュバント及び賦形剤を含む組成物として、経口的、局所的又は非経口的に投与することができる。前記組成物は経口的に投与されることが好ましい。
本組成物は、錠剤、水性懸濁液、油性懸濁液、ロゼンジ剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤又はエリキシル剤として経口投与することができる。経口用の本組成物は、洗練された風味のよい医薬製剤を製造するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤の群から選択される1種以上の成分を含んでもよい。好適な甘味剤としては、スクロースやラクトース、グルコース、アスパルテーム、サッカリンが挙げられる。好適な崩壊剤としては、コーンスターチやメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、寒天が挙げられる。好適な香味剤としては、ハッカ油やウインターグリーン油、チェリー、オレンジ、ラズベリーの各フレーバーのオイルが挙げられる。好適な防腐剤としては、安息香酸ナトリウムやビタミンE、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。好適な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、タルクが挙げられる。好適な徐放剤としては、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルが挙げられる。錠剤の場合、錠剤の製造に適した薬学的に許容される無毒性の賦形剤との混合物中に、当該成分を含有させてもよい。
これらの賦形剤は、例えば、(1)炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の不活性希釈剤、(2)コーンスターチ、アルギン酸等の造粒・崩壊剤、(3)デンプン、ゼラチン、アラビアゴム等の結合剤及び(4)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク等の滑沢剤であってもよい。これらの錠剤は、コーティングされていなくてもよく、或いは公知の技法でコーティングを施すことにより、崩壊及び胃腸管への吸収を遅延させ、長期間に亘り徐放作用が得られるようにしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリル等の徐放剤を用いることができる。
通常用いられる方法、例えば、ラクトフェリンと固体担体及び滑沢剤との混合物をプレスする方法により、錠剤を調製することができる。固体担体の例としてはデンプン及び糖ベントナイトが挙げられる。本発明のラクトフェリンは、結合剤(ラクトース、マンニトール等)、通常用いられる充填剤及びタブレット化剤を含むハードシェルの錠剤又はカプセル剤の形態として投与してもよい。
本明細書における「非経口的」投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、結膜下、腔内(intracavity)、経皮及び皮下への注射、肺内投与又は鼻腔投与用エアゾール又は輸液(例えば、浸透圧ポンプによる)による投与が含まれる。
非経口投与用製剤としては、無菌の水性又は非水性の液体、懸濁液及びエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油等)及び注射可能な有機エステル(オレイン酸エチル等)が挙げられる。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョン及び懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝溶液などが含まれる。非経口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液や、水分(fluid)、栄養源及び電解質源を含有するデキストロース加リンゲル液、デキストロ−ス及び塩化ナトリウム加リンゲル液、乳酸リンゲル液(デキストロース加リンゲル液をベースとするもの等)の静注用賦形剤が挙げられる。必要に応じて防腐剤及び他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、成長因子、不活性ガス等を含有させてもよい。
本組成物は、治療的効果を補助、追加又は向上させるための他の活性成分も含んでもよい。本組成物はまた、取扱い説明書と共に、容器、パック、ディスペンサーに収容されてもよい。
前記組成物は、獣医学用組成物の形態で提供されてもよい。これは、例えば、当該技術分野における常法により調製することができる。このような獣医学用組成物の例としては:
(a)経口投与用、外用(例えば、水薬(例えば、水性又は非水性の液剤又は懸濁液)、錠剤若しくはボーラス、飼料への混合用の散剤、顆粒剤又は丸薬、舌への塗布用のペースト剤(特に、反芻動物に投与する場合はルーメン側で適切に保護されるもの)、
(b)非経口投与用(例えば、皮下、筋肉内若しくは静脈内注射(例えば、無菌の液体製剤又は懸濁液)用又は(適切な場合は)乳首を介して懸濁剤又は液体製剤を乳房に導入する乳房内注入用)、
(c)局所投与用(例えば、皮膚に適用されるクリーム剤、軟膏剤又は噴霧剤)及び
(d)膣内投与用(例えば、ペッサリー、クリーム剤又はフォーム剤)が挙げられる。
投与が容易になり、且つ用量が均一になるように、組成物を単位投与形態として調製すると特に有利である。本明細書において単位投与形態とは、治療の対象となる被験体に単位投与するのに適する、物理的に分離された単位のことを指し、各単位は必要な薬学的担体と共に所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位投与形態の規格は、活性化合物固有の特性及び達成すべき特定の治療効果、更には個体を治療するためにこの種の活性化合物を配合する当該技術分野に存在する制限に関する要件に直接的に依存し、規定される。
前記組成物は治療的有効量で投与される。本明細書において「有効量」のラクトフェリンとは、タンパク尿症を低減するために十分な用量を意味するものとする。
一般に、治療有効量は、被験体の年齢、症状及び性別に加え、被験体の病状の重度によって変動し得る。用量は医師が決定することができ、適切な治療効果が認められるように必要に応じて調節することができる。ラクトフェリンの適切な投与量は、5mg〜100mg、15mg〜85mg、30mg〜70mg、40mg〜60mg、5mg〜500mg、10mg〜400mg、20mg〜300mg、25mg〜250mg、40mg〜200mg及び50mg〜100mgの範囲内とし得る。例えば用量は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、125、150、175、200、225、230又は250mgとすることができる。本組成物は、単回投与又は1日1回、1日2回、1週間に1回、1ヶ月に1回等の間隔で投与し得る。
投与計画は、ラクトフェリンの半減期又はタンパク尿症の重度に応じて調節することができる。
通常、本組成物は、投与後のラクトフェリンの循環濃度が最大となる時間を最大化させるために、ボーラス投与される。ボーラス投与後に持続注入を行ってもよい。
タンパク尿症は、腎臓障害及び/又は疾患の進行の結果(を示す疾患マーカー)として現れるだけでなく、腎臓疾患及び/又腎臓疾患の進行の直接的な原因又は危険因子であるという証拠が蓄積しつつある。また、タンパク尿症による腎臓障害は、尿細管ケモカインの発現と、間質における炎症細胞浸潤及び持続的な繊維素形成に至る補体活性化とを含む複数の経路を経て起こることを示す証拠が存在する。マクロファージは間質における炎症性の浸潤において顕著にみられる。この種の細胞は、腎生研におけるマクロファージ数が慢性腎臓疾患の患者において腎生存の予言因子となる限りにおいて、腎臓障害の進行を媒介する。炎症細胞に対する化学誘引物質及び接着分子は、近位尿細管細胞の濾過タンパクの過剰負荷により上方制御される。従って、タンパク尿を低減する療法は、腎臓疾患の進行を遅らせるために臨床的に通常行われている。
タンパク尿症を低減するための薬剤は、高血圧を治療するための薬剤として現在用いられている。ACE阻害剤及びARBの二種の薬剤が、タンパク尿の重度の低減と腎臓疾患の進行を遅延させるのに有効であることがわかっている。タンパク尿低減におけるACE/ARBの正確な薬理学的機序はわかっていないが、ACE/ARBが炎症過程に関連していることを示すデータは無い。
従って、第一又は第二の態様の一実施形態は、ACE阻害剤又はARBによる治療を受けている被験体に、ACE阻害剤若しくはARBを投与するか、又はラクトフェリンを投与することを更に含む。第三の態様の一実施形態においては、当該医薬はACE阻害剤又はARBと併用するよう組成される。
ラクトフェリンを別個の組成物として摂取又は投与する場合には、ACE阻害剤又はARBによる治療前及び/又は治療中及び/又は治療後に、ラクトフェリンをタンパク尿症の治療に使用してもよい。
タンパク尿症又は関連する病態や疾患の治療に効果的な他の剤を任意に使用してもよい。これらは、ラクトフェリンと混合してもよく、またラクトフェリンと併用してもよく、或いは連続して投与してもよい。
本明細書において特に断りのない限り、「含む」とは、客体となる構成要素や構成要素群を含むが、その他の構成要素や構成要素群を排除するものではないことを意味するものとする。
本明細書においては、文脈上明確に定義しない限り、単数による表現は複数の概念も含むものとする。
本発明について明確さと理解しやすさを目的として詳細な説明をしているが、本明細書に開示される発明概念の範囲を逸脱しない限り、記載された実施形態及び方法の変形や改変が可能なことは当業者にとり明白である。
臨床試験の概要
ラクトフェリン「ファースト・リーフ」の試験として、3種の治療群(即ち、ファースト・リーフ群、ラクトフェリン群及びプラセボ群)による無作為化臨床試験を行った。プラセボ群は比較対照としての役割を果たし、試験は無作為化二重盲検で行った。治療群の割り当ては試験チームとは無関係に決定し、12週間の介入期間が終了するまで参加者及び研究者の双方ともいずれの群がいかなる治療を受けるがわからないようにした。各参加者には固有の試験番号を割り当てた。統計ソフトウェアプログラム「ミニタブ」TMにて参加者の固有の試験番号を用い、統計学者によって参加者を無作為に3種の治療群に分けた。治験薬剤師はこれら3群に基づいて薬物を調剤した。
「ファースト・リーフ」(First Leaf)は、フォーリーフ・ジャパン社によって開発された健康サプリメントである。各錠剤には25mgのラクトフェリンと共に他の成分が含まれている。このラクトフェリンの供給業者は、マレー・ゴールバーン社の子会社であるMGニュートリショナルズ社である。本プロジェクトは、臨床試験のための国際臨床調和ガイドラインのプロトコル及び基準に従って行った。
倫理的問題及び試験薬物治療耐性
重篤な有害事象や予想外の有害事故、参加者への影響といった不測の事態は本プロジェクトにおいては生じなかった。
しかし、女性参加者1名が試験薬物治療開始直後に発症した広範囲の発疹のため、試験薬物治療を中止した。この発疹は薬物治療中止後、徐々に消失した。他の参加者4名が消化管症状のため一時的に試験薬物治療を中断した(4〜18日間)。4例全てにおいて、症状は回復し、薬物治療再開後の再発はなかった。
試験の実施に関する苦情はなかった。
目的
本試験は、生活習慣や環境に通常関連する慢性疾患の危険性を示す健康パラメータへの「ファースト・リーフ」及びラクトフェリンの作用を調べるために行った、無作為化二重盲検臨床試験である。12週間の介入期間に亘って、メタボリック症候群の男性及び女性には3種類の治療(同様のカプセル)の内の1種、即ち、(1)「ファースト・リーフ」、(2)ラクトフェリンのみ、又は(3)プラセボを施した。介入期間における臨床マーカー及び生化学マーカーの変化を3群間で比較する。
緒言
「ファースト・リーフ」
「ファースト・リーフ」は、活力を高め、免疫力を向上させるための健康サプリメントとして、日本では通常成人が服用するサプリメントである。「ファースト・リーフ」には、マリーゴールド、カシス、及びハーブティーの1種であるアイブライトのエキスが含まれている。成分としては、リコピンやラクトフェリン、補酵素Q10、ルテインが挙げられる。リコピンとルテインは、その抗酸化物質としての役割によって健康をもたらすと考えられているカロテノイドである。ユビキノンとしても知られる補酵素Q10は、特に心疾患の予防に関連するビタミン様物質である。
ラクトフェリン
ラクトフェリンは、強力な抗菌活性及び免疫調節活性を有する鉄結合性糖タンパク質である。最近では、ラクトフェリンが骨芽細胞の増殖や分化を刺激し、破骨細胞形成を阻害することによって骨成長を促進することも分かっている。従って、現在では、ラクトフェリンは、骨の成長や治癒において生理学的役割を果たし、骨粗鬆症においてはタンパク質同化因子として潜在的治療効果をもたらしうると考えられている。ラクトフェリンは乳清から抽出されるが、好中球の二次顆粒中に低濃度で天然に産生される糖タンパク質でもある。動物実験によって、炎症時にラクトフェリンの全身レベルが劇的に上昇することが分かっており、炎症応答のメディエーターの一部に由来する骨格に対する異化作用をラクトフェリンが相殺しうると考えられている。ラクトフェリンの作用機構には、細胞免疫応答を差時的に調節する成分も含まれることが示唆されている。この機構の活性化によって、異なるTヘルパー細胞の比率、即ち、アレルギー症状の指標となるヘルパーT2細胞に対するヘルパーT1細胞の比(Th1/Th2)が変化する可能性が考えられる。
試験の目的
主要な効果目標:
12週間の介入時にメタボリック症候群、骨粗鬆症及び免疫学的機能に関連する臨床マーカー及び生化学マーカーの変化を「ファースト・リーフ」治療群(有効)と「ラクトフェリン」治療群(有効)とプラセボ(対照)群とで比較することを、本試験の主目標とした。
被験者及び方法
本試験は、ヒトが関与する試験における道義的行為に関するナショナルステートメント(オーストラリア連邦、2001年)、ICHによる医薬品の臨床試験の実施に関するガイドライン、及びヘルシンキ宣言(1996年)に従って行った。本試験はバーウォン衛生研究及び倫理諮問委員会(06/09)によって承認され、参加者全員が本試験のインフォームドコンセントに署名した。
組み入れ基準
参加者全員がメタボリック症候群に関するオーストラリアの基準に達しており、体重超過であった。参加者の大部分の肥満度指数が肥満カテゴリーにあった(>30)。具体的には、被験者は全員、臨床試験の対象となる以下の基準を満たしていた。
・25歳以上の男性及び女性の外来患者。
・肥満度指数(BMI)が25〜35kg/m2(BMI=体重[kg]/身長[m]2)。
・スクリーニング時に参加者全員がメタボリック症候群であった。
即ち、全員が腹囲によって定められる中心性肥満(ユーロピド男性の場合は94cm以上、ユーロピド女性の場合は80cm以上)であった(他の群に関しては民族に特有の値がある)。
更に、以下の4要因の内のいずれか2つの要因を満たしていた。
1.血清トリグリセリド濃度の上昇(1.7mmol/L以上)。
2.血清HDLコレステロール濃度の低下(男性で1.03mmol/L未満、女性で1.29mmol/L未満)。
3.血圧(BP)の上昇(収縮期BPが130mmHg以上、又は拡張期BPが85mmHg以上、或いは以前に診断された高血圧の治療実施)。
4.空腹時高血糖(以前に2型糖尿病と診断されておらず、空腹時血糖値が5.6mmol/L以上、7.0mmol/L以下)。
除外基準
・牛乳タンパク質に対する公知のアレルギー;
・BMIが25kg/m2未満又は35kg/m2超;
・次の薬物、即ち、経口血糖降下剤、インスリン、ビスホスホネート、選択的エストロゲン受容体調節薬、ストロンチウム、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトリオール又はエストロゲン(膣エストロゲンクリームを除く)のいずれかを現在服用しているか、又は過去6ヶ月間の内1ヶ月超に亘って服用;
・過去3年間の内6ヶ月超に亘って受けた、プレドニゾロン(1日量:5mg超)に相当するグルココルチコイド治療;
・次の病態、即ち、糖尿病、関節リウマチ、パジェット病、多発性骨髄腫、癌(非侵襲性非黒色腫皮膚癌及び上皮内子宮頸癌を除く)、重大な腎疾患又は血漿クレアチニン値が150μmol/L超、高カルシウム血症(補正血漿カルシウム値が2.65mmol/L超)、サルコイドーシス、甲状腺機能亢進症(過去2年以内)であると以前に診断;又は、
・活性消化性潰瘍疾患又は炎症性腸疾患。
用量
参加者全員に対し、試験薬物の用量は体重(来院1回目の体重)10kg当たり1カプセルとした。参加者の平均体重は89kgであったため、平均用量は9カプセル/日であった。参加者には用量の半分を午前中、残り半分を夕方に服用するよう指示した。
有効成分を含まない乳糖粉末をプラセボとした。各「ファースト・リーフ」錠剤には25.5mgのラクトフェリンと他の有効成分が含まれていた。標準的な「ファースト・リーフ」1錠は1カプセルに相当した。各ラクトフェリンカプセルには125mgのラクトフェリンが含まれていた(即ち、各「ファースト・リーフ」カプセルに比べて1カプセル当たりのラクトフェリン量は約5倍であった)。
評価
参加者は、3回の試験来院(即ち、来院1回目(V1)=ベースライン、来院2回目(V2)=試験薬物治療開始から6週間後、来院3回目(V3)=試験薬物治療開始から12週間後)のためジーロング病院の臨床試験ユニットに通った。人体計測を含む病理学的及び臨床的評価を各試験来院の際に行った。病理学的サンプルを遠心分離し、必要に応じて分割した後、直ちに−80℃で保存した。
過去6週間及び過去12ヶ月間で経験したアレルギー症状について参加者に質問した。
試験薬物の調製(調剤)は、来院1回目及び2回目にジーロング病院で治験薬剤師が行った。参加者には6週間分を供給し、次の試験来院のスケジュールを変更する必要があった場合には1週間分を追加して供給した。未服用の試験薬物は全て、次の試験来院時に返却し、その数を数えた。コンプライアンスは、カプセルの推奨用量に対する服用カプセルの割合で算出した。
統計分析
3群間におけるベースラインから3ヶ月後までの臨床マーカー及び生化学マーカーの変化を主要エンドポイントとした。「ファースト・リーフ」群又はラクトフェリン群の従属変数の平均がプラセボ群と異なる場合に分析を行った。平均値がベースライン(来院1回目)ではプラセボ群と変わらないが、来院2回目及び/又は来院3回目でプラセボ群と異なる場合には有意性を示す可能性が考えられた。治療効果は、P<0.05で有意とされる分散分析によって評価した。ベースライン(来院1回目)後の平均値の差に関しては、「ベースライン以後の従属変数の変化」(即ち、来院3回目−来院1回目)を観察することによって更に解析した。
分散分析によって、3群以上に対して母集団平均の比較を行った。治療群間の平均の差、及びベースライン来院と6週間及び12週間の介入における試験来院との間の平均の差について二元分散分析を同時に行った。データの分析は、不均衡データに対する一般線形モデルを用いた二元分散分析によって行った。この方法によって、次の組み合わせにおける平均値の差について同時に検証した。
(A)治療群:群1 vs 群2、群1 vs 群3、及び群2 vs 群3
(B)来院回:V1 vs V2、V1 vs V3、及びV2 vs V3
非正規分布のパラメータは、治療群と来院回との相互関係に関する検定に加えて行った等分散の検定によって変換した(自然対数等)。
検証した帰無仮説:
0:μ1=μ2=μ3:各パラメータ(従属変数)の平均値は群1、2及び3において等しい。
1:「従属変数」平均は群1、2及び3間で等しくない。必要に応じて、ポストホック分析を行った。
p値が0.05未満の場合には、多重検定に関するTukeyの調整によるAd hoc分析を行った。この第二の手続きによって、3種の治療群間の差が介入後(即ち、来院2回目及び/又は3回目)に生じたか否かを確認した。
アンケートはカテゴリー別に構成した。ベースライン時に尋ねた質問は、来院1回目の回答と比べて改善状態を示す各治療群の参加者の比率として分析した。全ての回答は、比率のχ二乗検定によって分析した(即ち、改善した参加者の比率は3種の治療群間で差があったか否か)。
統計分析は統計ソフトウェアプログラム(ミニタブTM、バージョン13)を用いて行った。
本試験のタイムラインを表1に示す。
結果
説明の便宜のため、来院2回目(V2)の結果(6週目)は、来院3回目(12週目)の結果と傾向が違わない場合には表に記載していない。3種の治療群間の差に関する6週目の検定結果を分散分析に含めた。
参加者
参加者の数と特徴をそれぞれ表2及び表3に示す。
肝機能及びタンパク質代謝
血清総タンパク質濃度、血清ビリルビン濃度及び血清肝酵素濃度(表4)、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)は、3種の治療群間で差がなく(p=0.9〜0.3)、試験期間に亘って変化しなかった(p=0.5〜0.8)。アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)濃度はベースラインにおいては差がなかったが、プラセボ群と「ファースト・リーフ」群の両方で試験時に上昇した(p=0.05)。両方の群における平均上昇度は12週間で2U/Lであった。血清アルブミンは、ベースラインにおいてはラクトフェリン群で高かった(プラセボ:41、ラクトフェリン:42、ファースト・リーフ:41(p=0.01))が、3群全てにおいて12週目までには低下した(プラセボ:39、ラクトフェリン:40、ファースト・リーフ:40(p=0.01))。血清アルカリホスファターゼ濃度はベースラインにおいては差がみられた(p=0.02)が、12週間に亘って濃度は変化しなかった(p=0.44)。
脂質
高血清コレステロールは循環器疾患の主要な危険因子である。オーストラリア心臓財団では、総コレステロールが5.5mmol/L未満であることを推奨している(http://www.nevdgp.org.au/info/heartf/docs/hhd3.htm)。総血清コレステロールは、概して低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールと高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールとの組み合わせである。血管の「詰まり」に関係するのはLDLコレステロールであり、この濃度は3.5mmol/L未満であることが推奨されている。試験参加者の平均LDLコレステロール濃度は、「正常」範囲の上限にあり、介入を通じて差がみられなかった(表5)。HDLコレステロールは動脈の「詰まりを取る」のに役立ち得る。高HDLコレステロールと低LDLコレステロールとの組み合わせが望ましい。HDLコレステロールの推奨濃度は1mmol/L超である。参加者のHDLコレステロールのベースライン濃度はプラセボ群でより低かった。これは、男性の方が女性に比べてHDLコレステロールが低い傾向にあるため、男性の数が少ないことと関係している。本試験を通じて、3種の治療群のいずれにおいてもHDLコレステロールは変化しなかった。これは、プラセボ群の方が他の2群よりもコレステロール/HDL比が低かったが、本試験を通じて比の変化に差がなかったことも意味する。トリアシルグリセロール(TAG)は血液中に存在する脂肪の一種である。TAGは脂肪及びアルコールの消化によって生じ、TAG濃度は2mmol/L未満であることが推奨されている。12週間の試験を通じて、TAG濃度は3群全てにおいて低下した。これは、プラセボ服用の被験者でも見られたため、臨床上重要な意味を持たない。
電解質及び腎機能
次の電解質及び腎機能指標の血清中濃度の変化(表6)は、12週間の試験に亘って3種の治療群間で差がみられなかった(ナトリウム(p=0.56)、カリウム(p=0.41)、塩化物(p=0.51)、重炭酸塩(p=0.41)、尿素(p=0.85)、血清クレアチニン(p=0.5)、尿アルブミン(p=0.99)及び尿クレアチニン(p=0.3))。尿ACRはノンパラメトリック分布であった。アルブミン/クレアチニン比のメジアンは、ベースラインと12週間後との間でラクトフェリン群及び「ファースト・リーフ」群の両方において低下した(プラセボ群では20%であったのに対し、ラクトフェリン群では40%(p=0.39)、ファースト・リーフ群では50%(p=0.16)であった)。
ベースラインで尿アルブミン/クレアチニン比が高い(2mg/mmol超、表7)参加者の更なる分析によって、ラクトフェリン群及び「ファースト・リーフ」群でベースライン値が高い参加者においては該比が最も大きく低下したが、プラセボ群では該比は低下しない(p=0.19)ことが示唆される。
鉄分に関する試験
女性の方が多いプラセボ群では、次のパラメータ(ヘマグロブリン、鉄分、トランスフェリン及びトランスフェリン飽和率のベースライン濃度は低かった(p=0.007〜0.01、表8)。3種の治療群全てにおいて、鉄分濃度は12週間の試験に亘って低下した(p=0.06)。ラクトフェリン群又は「ファースト・リーフ」群とプラセボ群との間に低下の差はみられなかった(p=0.66)。
考察
参加者
本試験の募集広告に応募した男性が少なかった(女性208名に対し男性61名)。18名が試験基準を満たしており、インフォームドコンセントに署名した。離脱率は女性(5%)に比べて男性の方が高かった(22%)。この結果、3回の試験来院終了時には、プラセボ群の男性の比率は他の2群に比べて低かった(プラセボ群12.5%、ラクトフェリン群25%、ファースト・リーフ群22%)。より若い参加者が離脱する傾向にあった(離脱者の年齢のメジアンとその範囲は39.5(27〜62)、試験終了参加者の年齢のメジアンとその範囲は56.5(30.7〜79.5))。
肝機能とタンパク質代謝
脂肪肝は、血清肝酵素濃度の上昇の有無に関わらず、肥満において一般的であり、インスリン抵抗性やメタボリック症候群と関連があるとされている。
電解質及び腎機能
3群間で血清電解質濃度には差がなかった。介入によって電解質に変化が見られることは予想されなかったが、この結果から、ラクトフェリン及び「ファースト・リーフ」サプリメントの経口投与の安全性が支持された。
尿アルブミン/クレアチニン比は、糖尿病性腎疾患で用いられる有用な腎機能基準である。この比の漸進的変化が比較的小さい場合には、心血管イベントの強い前兆であることが分かっている。アルブミン/クレアチニン比が男性で2.5mg/mmol、女性で3.5mg/mmolを超えた場合、ミクロアルブミン尿症とされる。この比が30mg/mmolを超えた場合にはタンパク尿症とされ、重篤な腎機能障害の徴候である。
尿アルブミン/クレアチニン比のメジアンは12週間に亘ってプラセボ群では僅かに低下した(18%又は0.2mg/mmol)が、ラクトフェリン群及び「ファースト・リーフ」群ではそれぞれメジアン値が40%及び50%低下した。ベースライン値が高い参加者における低下が最も大きかった(2mg/mmol超)。このような参加者(n=15)に限って分析を行った場合、ラクトフェリン群及び「ファースト・リーフ」群でそれぞれ75%及び57%低下したのに対し、プラセボ群では低下が見られなかった。ベースラインの尿アルブミン/クレアチニン比が高い参加者が多い試験においてこの結果を確認すれば、臨床的な意義を持つことになり、治療的有用性につながるであろう。
鉄分に関する試験
ラクトフェリンは、強力な抗菌活性及び免疫調節活性を有する鉄結合性糖タンパク質である。ラクトフェリンはトランスフェリンファミリーに属し、鉄キレート剤として作用する。ラクトフェリンは成人の血清中に極微量存在する。現在、特定の細胞種(骨芽細胞を含む)で機能性ラクトフェリン受容体が確認されているが、ラクトフェリンが薬剤又は「栄養アジュバント」として成人の鉄代謝状態に対して治療効果があるかどうかは確認されていない。本発明者らの結果においては、鉄状態パラメータの大きな変化は示されなかった。これらの結果は男性と女性との間で異なっていたが、本試験は性別によるデータの分析までには至らなかった。ラクトフェリン群及び「ファースト・リーフ」群に対するプラセボ群の結果については、男性の比率が低かったため、慎重に解釈する必要がある。
結論
今回の12週間介入のプラセボ対照試験の結果から、前記サプリメントが上述の投与量で安全であるという証拠が得られたと共に、臨床及び治療対象範囲が明らかにされたが、具体的には、「ファースト・リーフ」群及びラクトフェリン群の両方において尿アルブミン/クレアチニン比が低下し、特に、ベースラインのアルブミン/クレアチニン比が高い場合に該群内でラクトフェリンについての反応が良かった。介入期間をより長くし、特定のベースライン特徴を有する参加者を募集の標的にして更に試験することが推奨され、これによって臨床的に重要な知見が得られる可能性が高い。本試験の結果から、募集対象範囲はミクロアルブミン尿症の参加者にすべきであることが示唆される。

Claims (8)

  1. 治療的有効量のラクトフェリンを有効成分として含むタンパク尿症の治療剤(ただし、糖尿病性腎症に使用する場合を除く)
  2. 前記タンパク尿症がアルブミン尿症又はミクロアルブミン尿症である、請求項1に記載の治療剤
  3. 前記タンパク尿症が尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)を利用して診断される、請求項1又は2に記載の治療剤
  4. タンパク尿症と診断されたとき被験体のACRが約2mg/mmol以上である、請求項3に記載の治療剤
  5. 前記タンパク尿症が血中尿素窒素(BUN)/クレアチニン比又は尿素/クレアチニン比で診断される、請求項1又は2に記載の治療剤
  6. 前記被験体にACE阻害剤又はARBを投与することを更に含む、請求項1又は2に記載の治療剤
  7. 前記ラクトフェリンが経口投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の治療剤
  8. 経口投与される前記ラクトフェリンがカプセル化、マイクロカプセル化又はナノカプセル化されている、請求項7に記載の治療剤
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