JP5904151B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
(Al,Si)Nは鋼中に微細分散することで有効なインヒビターとして機能するが、Alの含有量によってインヒビター強度が決まるために、製鋼でのAl的中精度が不十分な場合は、十分な粒成長抑制力が得られない場合があった。このような途中工程で窒化処理を行ない、(Al,Si)NあるいはAlNをインヒビターとして利用する方法が数多く提案されているが、最近では、スラブ加熱温度が1300℃を超える製造方法等も開示されている。
ここに、インヒビターレス法は、より高純度化した鋼を利用し、テクスチャー(集合組織の制御)によって二次再結晶を発現させる技術である。しかしながら、インヒビターレス法では、高温のスラブ加熱が不要であって、低コストでの方向性電磁鋼板の製造が可能であるものの、インヒビターを有しないが故に、製造工程中での温度ばらつきなどの影響を受けて、製品での磁気特性にバラつきが生じやすいといった不利があった。
これに対し、発明者らは、スラブ加熱温度を抑えつつ、磁気特性のバラつきを低減した方向性電磁鋼板を製造するために、インヒビター成分を含有させない方向性電磁鋼板の製造方法を用いて一次再結晶集合組織の作り込みを行ない、これに途中工程で窒化を利用して窒化珪素(Si3N4)を析出させ、この窒化珪素をインヒビターとして利用することを検討した。
すなわち、方向性電磁鋼板で一般に数%程度含有される珪素を窒化珪素として析出させ、インヒビターとして利用することが可能であれば、窒化処理時の窒化量を制御することによって、窒化物形成元素(Al、Ti、Cr、V等)の多寡によらず同等の粒成長抑制力が得られるのではないかと考えた。
1.質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0〜4.5%およびMn:0.5%以下を含有すると共に、S、SeおよびOをそれぞれ50質量ppm未満、sol.Alを100質量ppm未満、Nを80質量ppm以下に抑制し、さらに、[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)≦30質量ppm(但し、[ppmX]はX元素の鋼中含有率(質量ppm))の範囲に制御し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱後、熱間圧延を施して熱延板としたのち、焼鈍および圧延によって最終板厚の冷間圧延板とし、二次再結晶焼鈍前までに窒素増量(ΔN)が50質量ppm以上1000質量ppm以下となる窒化処理を、800℃以下の温度で、または800℃超の温度で30秒以下施した後、焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、
上記二次再結晶焼鈍の昇温過程で、一旦、400〜600℃の温度域(T1)に昇温した後、300℃以上600℃未満の温度域(T2)に20時間以上滞留させ、さらに、15℃/h以上の速度で少なくとも800℃まで昇温する方向性電磁鋼板の製造方法。
Ni:0.005〜1.50%、
Sn:0.01〜0.50%、
Sb:0.005〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Cr:0.01〜1.50%
P:0.0050〜0.50%
Mo:0.01〜0.50%および
Nb:0.0005〜0.0100%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
まず、本発明において、鋼スラブの成分組成の限定理由について説明する。なお、以下に記載する「%」および「ppm」表示は特に断らない限り、それぞれ質量%および質量ppmを意味するものとする。
C:0.08%以下
Cは、一次再結晶集合組織を改善する上で有用な元素であるが、含有量が0.08%を超えると、かえって一次再結晶集合組織の劣化を招くので、本発明では0.08%以下に限定した。磁気特性の観点から望ましい添加量は、0.01〜0.06%の範囲である。なお、要求される磁気特性のレベルがさほど高くない場合には、一次再結晶焼鈍における脱炭を省略あるいは簡略化するために、Cを0.01%以下としてもよい。
Siは、電気抵抗を高めることによって鉄損を改善する有用元素であるが、含有量が4.5%を超えると、冷間圧延性が著しく劣化するので、Siは4.5%以下に限定した。また本発明では、Siを窒化物形成元素として機能させる必要があるため、2.0%以上含有させることが重要である。なお、鉄損の観点からの望ましい添加量は、2.0〜4.5%の範囲である。
Mnは、製造時における熱間加工性を向上させる効果があるので、0.005%以上含有させることが好ましいが、含有量が0.5%を超えた場合には、一次再結晶集合組織が悪化して磁気特性の劣化を招くので、Mnは0.5%以下に限定した。
S,SeおよびO量がそれぞれ50ppm以上になると、所望の二次再結晶を得ることが困難となる。この理由は、粗大な酸化物や、スラブ加熱によって粗大化したMnS,MnSeが一次再結晶組織を不均一にするためである。従って、S,SeおよびOはいずれも、50ppm未満に抑制するものとした。
Alは、表面に緻密な酸化膜を形成し、窒化の際にその窒化量の制御を困難にしたり、脱炭を阻害したりすることがあるため、Alはsol.Al量で100ppm未満に抑制した。但し、酸素親和力の高いAlは、製鋼で微量添加することによって鋼中の溶存酸素量を低減し、鋼板の特性劣化につながる酸化物系介在物の低減などを見込めるため、100ppm未満の範囲で添加することにより磁性劣化を抑制することが出来る。
本発明は、インヒビターレスの製造方法を適用し集合組織の作り込みまでを行なうため、Nは80ppm以下に抑制する必要がある。80ppmを超えると粒界偏析の影響や微量窒化物の形成により、集合組織が劣化するといった弊害が生じるからである。また、スラブ加熱時の「フクレ」などの欠陥の原因となることもあるため、80ppm以下に抑制する必要がある。なお、望ましくは60ppm以下である。
窒化処理後、窒化珪素を析出させることが本発明の特徴であるところ、窒化処理後、過剰なAlが残存した状況では、より熱力学的に安定な析出状態である、AlNにSiが固溶した(Al,Si)Nが析出してしまう。このため、純粋にAlと結合する以上に、窒化により供給したNが析出してしまい、純粋な窒化珪素を安定的に析出させることが困難になる。
そこで、本発明では、[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)を30ppm以下に制御する。かかる制御によって、AlNとして析出するために必要なN量以上のNを事前に含有させておくことが出来るため、窒化処理以前に、AlをAlNとして析出させておくことが可能となり、窒化処理によって追加した△Nが窒化珪素の形成に効果的に利用することが出来るようになる。
さらに、窒化珪素を制御する上で、[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)を0ppm以下に制御することが好ましい。[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)が0ppm以下の範囲では、概ね50ppm以上の窒化により窒化珪素を形成させることが出来るからである。なお、[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)の下限値は、特に限定しないが、工業的には-30ppm程度である。
また、[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)が0ppm超、30ppm以下の範囲では、純粋な窒化珪素を形成するために、0ppm以下の範囲より多くの窒素増加分(△N)が必要となるものの、析出に寄与する残留Al量が微量であるため、純粋な窒化珪素を析出させることが出来る。なお、この時の窒素増加分(△N)は、65ppm以上が好ましい。
他方、[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)が30ppmを超える条件では、追加で微細析出するAlNあるいは(Al,Si)Nの影響が大きくなって、析出する窒化珪素量が安定的に得られなかったり、より熱力学的に安定なAlNや(Al,Si)Nの析出によって二次再結晶温度が過剰に高くなったりするため、二次再結晶不良を招来しやすくなる。
従って、本発明では、少なくとも[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)を30ppm以下に抑制する必要がある。
Ni:0.005〜1.50%
Niは、熱延板組織の均一性を高めることにより、磁気特性を改善する働きがあって、そのためには0.005%以上含有させることが好ましいが、含有量が1.50%を超えると所望の二次再結晶を得ることが困難となり、磁気特性が劣化するので、Niは0.005〜1.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Snは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる有用元素であり、そのためには0.01%以上含有させることが好ましいが、0.50%を超えて含有されると冷間圧延性が劣化するので、Snは0.01〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Sbは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる有用元素であり、その目的のためには0.005%以上含有させることが好ましいが、0.50%を超えて含有されると冷間圧延性が劣化するので、Sbは0.005〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Cuは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる働きがあり、そのためには0.01%以上含有させることが好ましいが、0.50%を超えて含有されると熱間圧延性の劣化を招くので、Cuは0.01〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Crは、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがあり、そのためには0.01%以上含有させることが好ましいが、一方でその含有量が1.50%を超えると所望の二次再結晶を得ることが困難となり、磁気特性が劣化するので、Crは0.01〜1.50%の範囲で含有させることが望ましい。
Pは、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがあり、そのためには0.0050%以上含有させることが好ましいが、含有量が0.50%を超えると冷間圧延性が劣化するので、Pは0.0050〜0.50%の範囲で含有させることが望ましい。
NbおよびMoは、スラブ加熱時の温度変化による割れの抑制等を介して、熱延後のヘゲを抑制する効果を有している。これらの元素は、少なくともどちらか一方を、上記下限値以上含有させなければヘゲ抑制の効果は小さく、一方、どちらかが上記上限を超えると、炭化物や窒化物を形成するなどして最終製品まで残留した際、鉄損劣化を引き起こすため、上述した範囲とすることが望ましい。
上記の好適成分組成範囲に調整した鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱したのち、熱間圧延に供する。なお、スラブを再加熱する場合には、再加熱温度は、1000℃以上1300℃以下程度とすることが望ましい。というのは、1300℃を超えるスラブ加熱は、スラブの段階で鋼中にインヒビターをほとんど含まない本発明にとって無意味であり、コストアップの要因となるだけである。一方、1000℃未満のスラブ加熱では、熱間圧延時の圧延荷重が高くなって、圧延することが困難になるからである。
また、窒化による窒素増量(△N)が概ね50ppmを超える条件で、本発明に適した窒化珪素を確認することが出来るものの、0ppm<[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)≦30ppmの範囲では、窒化処理により増加したNが、窒化珪素に比べ熱力学的に安定なAlN、あるいはSiを固溶した(Al,Si)Nとして析出するため、窒化珪素を析出させるためには、より多くの窒素が必要となるため、50ppm程度の窒素増量では、窒化珪素の析出が不安定になるおそれがある。そこで、65ppm以上の窒素量を窒化によって鋼板に与えることにより、窒化珪素の析出が効果的に達成される。一方、1000ppmを超えると窒化珪素の析出量が過多となり二次再結晶が生じないといった問題が生じる。
従って、窒化による窒素増量は50ppm以上1000ppm以下とするのが肝要であって、65ppm以上1000ppm以下とするのが好ましく、80ppm以上1000ppm以下とするのが更に好ましい。なお、当該窒素濃度は、たとえ鋼板の一部に濃化していたとしても、鋼板の厚み方向の平均に均した値である。
そして、上記滞留後は15℃/h以上の速度で少なくとも800℃まで到達させることによって、板厚方向に均一に窒化珪素を析出させることが出来る。
Si:3.0%、C:0.04%、Mn:0.05%、S:0.001%、Cu:0.04%およびSb:0.01%を含有し、AlとNを表1に示す割合で含有する珪素鋼板スラブを、1100℃、30分加熱後、熱間圧延して2.2mmの板厚の熱延板とし、1050℃、1分間の焼鈍を施した後、冷間圧延により0.26mmの最終板厚とし、得られた冷間圧延コイルの中央部から、100mm×400mmサイズの試料を採取し、ラボにて一次再結晶焼鈍と脱炭を兼ねた焼鈍を行った。また、一部試料については一次再結晶焼鈍と脱炭と連続窒化(ガス:NH3とN2の混合ガスを利用した窒化処理)を兼ねた焼鈍を行った。その後、窒化を施していない試料に対しては、バッチ処理の窒化(塩浴:シアン酸塩を主成分とする塩を利用した窒化処理、ガス:NH3とN2の混合ガスを利用した窒化処理)を行い、鋼中窒素量を増加させた。窒素は全厚を対象としたものを化学分析によって定量した。同一条件の鋼板を一条件につき21枚作製した。
引続き、TiO2を5質量部混合したMgOを主体とする焼鈍分離剤を水スラリ状にしてから塗布、乾燥し鋼板上に焼き付けた。この鋼板のうち20枚に対して、表1に示したT1温度まで昇温し、その後、T2温度の範囲で滞留させ、それから800℃まで表1に示した昇温速度で昇温した。その後1050℃まで、昇温速度を一律20℃/hとし、1050℃を超えた後は1200℃までを10℃/hで昇温する最終仕上げ焼鈍を行った。
続いてリン酸塩系のガラスコーティングを塗布して焼付け、磁化力800A/mでの磁束密度(B8,T)を測定し、評価した。
磁気特性は、各条件20枚の平均値で評価した。また残る1枚については、最終仕上げ焼鈍と同じヒートパターンで800℃まで昇温した後、試料を取り出し、そのまま水焼入れした後、鋼板組織中の窒化珪素を電子顕微鏡により観察し、板表層と板厚中心のそれぞれ圧延方向:0.15mm×板厚方向:0.06mmの領域における析出物数を測定するとともに、鋼板全体での平均粒径を解析した。
測定および解析結果を表1に併記する。
表2に示す成分を含有する珪素鋼板スラブを、1100℃、30分加熱後、熱間圧延して2.Ommの板厚の熱延板とし、1050℃、1分間の焼鈍を施した後、冷間圧延により 0.27mmの最終板厚としてから、PH20/PH2=0.3の雰囲気下で、焼鈍温度を820℃として2分間保持し脱炭焼鈍を行なった。その後、一部コイルに対してバッチ処理でガス窒化処理(NH3、N2雰囲気下)を行ない、鋼中N量を増量させた。その後、MgOを主成分とし、TiO2を10質量部添加した焼鈍分離剤を水と混ぜてスラリ状としたものを塗布した後、コイルに巻き取って、T1:400℃、T2:400〜500℃で30時間滞留し、20℃/hの昇温速度で800℃へ昇温した。次いで、最終仕上げ焼鈍を行ない、さらに、リン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布焼付けと鋼帯の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施して製品とした。
このようにして得られた製品コイルからエプスタイン試験片を採取し、磁束密度(B8)を測定した結果を表2に示す。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0〜4.5%およびMn:0.5%以下を含有すると共に、S、SeおよびOをそれぞれ50質量ppm未満、sol.Alを100質量ppm未満、Nを80質量ppm以下に抑制し、さらに、[ppm sol.Al]-[ppmN]×(26.98/14.00)≦30質量ppm(但し、[ppmX]はX元素の鋼中含有率(質量ppm))の範囲に制御し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱後、熱間圧延を施して熱延板としたのち、焼鈍および圧延によって最終板厚の冷間圧延板とし、二次再結晶焼鈍前までに窒素増量(ΔN)が50質量ppm以上1000質量ppm以下となる窒化処理を、800℃以下の温度で、または800℃超の温度で30秒以下施した後、焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、
上記二次再結晶焼鈍の昇温過程で、一旦、400〜600℃の温度域(T1)に昇温した後、300℃以上600℃未満の温度域(T2)に20時間以上滞留させ、さらに、15℃/h以上の速度で少なくとも800℃まで昇温する方向性電磁鋼板の製造方法。 - さらに、前記鋼スラブが、質量%で、
Ni:0.005〜1.50%、
Sn:0.01〜0.50%、
Sb:0.005〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Cr:0.01〜1.50%
P:0.0050〜0.50%
Mo:0.01〜0.50%および
Nb:0.0005〜0.0100%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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