JP5941636B2 - 酸化物超電導導体用基材の製造方法および酸化物超電導導体の製造方法 - Google Patents
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RE−123系酸化物超電導体を導電体として使用するためには、テープ状基材などの長尺基材上に、結晶配向性の良好な酸化物超電導体の薄膜を形成する必要がある。これは、この種の希土類酸化物系超電導体の結晶が、その結晶軸のa軸方向とb軸方向には電気を流しやすいが、c軸方向には電気を流し難いという電気的異方性を有しており、長尺基材上に酸化物超電導層を形成する場合、電気を流す方向にa軸あるいはb軸を配向させ、c軸をその他の方向に配向させる必要があるためである。
そこで、金属テープ製の基材を用い、その表面にイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)により結晶配向性の良好な中間薄膜を形成し、該中間薄膜の表面に成膜法により酸化物超電導層を形成した構造の酸化物超電導導体が知られている。
CeO2のキャップ層の成膜には、照射光としてエキシマレーザが主に使用されている。エキシマレーザを用いたPLD法によりCeO2のキャップ層を成膜すると、良好な結晶配向性のキャップ層を形成することが可能であり、その上に形成される酸化物超電導層の膜質も良好となり、高い超電導特性が得られやすいことが知られている。
本発明の酸化物超電導導体用基材の製造方法は、設備やランニングコストが高価なエキシマレーザを用いずに、YAGレーザ光の第3高調波を使用し、ターゲットに照射するYAGレーザ光のエネルギー密度を6J/cm2以上、YAGレーザ光のスポット面積が1.0mm 2 以下に設定することにより、低コストで結晶配向性が良好なCeO2層を備える酸化物超電導導体用基材を製造することができる。この場合、YAGレーザ光の第3高調波はエキシマレーザとほぼ同等のパルスエネルギーを有するため、ターゲットの構成粒子が十分に微粒子化されるため、結晶配向性の良好なCeO 2 のキャップ層を成膜することができる。
本発明の酸化物超電導導体用基材の製造方法は、設備やランニングコストが高価なエキシマレーザを用いずに、YAGレーザ光の第4高調波を使用し、ターゲットに照射するYAGレーザ光のエネルギー密度を6J/cm 2 以上に設定することにより、低コストで結晶配向性が良好なCeO 2 層を備える酸化物超電導導体用基材を製造することができる。
この場合、ターゲット表面上におけるスポット面積が1.0mm2以下となるようにYAGレーザ光を照射することにより、ターゲットに照射されるレーザ光のエネルギー密度の均一性を高め、安定した組成のプルームを発生させることができる。これにより、成膜されるCeO2のキャップ層の結晶配向性をより向上させることができる。
図1は本発明の酸化物超電導導体用基材の製造方法で使用されるレーザ蒸着装置の一例を示す構成説明図であり、図2は図1に示すレーザ蒸着装置の要部を示す概略斜視図である。
また、図3は本発明に係る酸化物超電導導体用基材の製造方法により得られる酸化物超電導導体用基材の一例を示す概略斜視図であり、図4は図3に示す酸化物超電導導体用基材の積層構造の詳細を示す構成図である。
酸化物超電導導体用基材10は、より詳細には図4に示す如く、テープ状の基材1の上面に拡散防止層11とベッド層12と配向層13とからなる中間層2が積層され、その上にキャップ層3を積層して構成されているが、図3では図示の簡略化のために中間層2を1層のように描いている。なお、拡散防止層11とベッド層12は必須ではなく、場合によっては略しても良い。
図3および図4に示す酸化物超電導導体用基材10は、図5に示す如く、そのキャップ層3上に酸化物超電導層4と安定化層5が順次積層形成されて酸化物超電導導体30を構成する。
基材1の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲とすることができる。
この配向層13をIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition、イオンビームアシスト蒸着)法により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層3の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層3の上に成膜する酸化物超電導層4の結晶配向性を良好なものとすることができる。
例えば、Gd2Zr2O7、MgO又はZrO2−Y2O3(YSZ)からなる配向層13は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
CeO2のキャップ層3は、上述のように面内結晶軸が配向した配向層13表面に成膜されることによってエピタキシャル成長し、その後、横方向に粒成長して、結晶粒が面内方向に自己配向する。これにより、配向層13よりも更に高い面内配向度を得ることができる。
CeO2のキャップ層3は、YAGレーザ光によるPLD法(パルスレーザ蒸着法)で成膜することができる。以下、CeO2のキャップ層3の形成方法について説明する。
積層体基材25、積層体基材25の移動方向を転向させる転向部材群23、24、送出リール21、巻取リール22、ターゲット27および基材ホルダ26は、処理容器31内に収容され、処理容器31内の圧力が所定の圧力に減圧されている間は、積層体基材25の長手方向の全体が処理容器31内の減圧下に置かれるようになっている。
加熱手段34としては、熱を放散して基材ホルダ26および堆積領域35内の積層体基材25を加熱することができるものであれば特に限定されず、通電式の加熱ヒーター等が挙げられる。
YAGレーザ光の基本波(1064nm)は非線形結晶を用いて、第2高調波(波長532nm)、第3高調波(波長355nm)、第4高調波(波長266nm)、第5高調波(波長213nm)へと波長を変えることができる。本実施形態においては、ターゲット27に照射するレーザ光Lとして、YAGレーザ光の第3高調波、第4高調波および第5高調波のいずれかを用いる構成とした。中でも、結晶配向性の良好なCeO2のキャップ層3を成膜することができるため、YAGレーザ光の第3高調波を使用することが好ましい。
また、レーザ光Lは、その照射位置を移動させる手段(図示略)により、レーザ光Lの照射位置をターゲット27の表面上で移動可能とされていることが好ましい。このようにレーザ光Lの照射位置をターゲット27の表面上で移動可能とすることにより、ターゲット27が局所的に削られて、ターゲット27の寿命が短くなることを防止することがきできる。また、ターゲット27の表面上でレーザ光Lの照射位置を移動可能とすることにより、ターゲット27からのプルーム29を複数発生させて、ターゲット27の構成粒子の堆積領域35を広くすることができる。
これにより、一対の転向部材群23、24に巻回された長尺の積層体基材25が、これらの転向部材群23、24を周回し、ターゲット27に対向する位置に複数列並んで移動するようになる。その後、真空排気装置32を駆動し、少なくとも転向部材群23、24間を走行する積層体基材25を覆うように設置された処理容器31内を減圧する。
次に、ターゲット27にレーザ光(YAGレーザ光)Lを照射して成膜を開始するよりも前の適当な時に、加熱手段34に通電して、基材ホルダ26を加熱し、一定温度に保温するとともに、この基材ホルダ26に保持されてターゲット27の構成粒子の堆積領域(成膜領域)35を走行する積層体基材25を加熱し、一定温度に保温する。成膜時の積層体基材25の温度は、例えば500〜1000℃の範囲に設定することができる。
YAGレーザ光の第3高調波、第4高調波および第5高調波のいずれかを用いる。中でも、結晶配向性の良好なCeO2のキャップ層3を成膜することができるため、レーザー光LとしてYAGレーザ光の第3高調波を使用することが好ましい。
特に、YAGレーザ光の第3高調波はエキシマレーザとほぼ同等のパルスエネルギーを有するため、ターゲット27の構成粒子が十分に微粒子化されるため、結晶配向性の良好なCeO2のキャップ層3を成膜することができる。
なお、ターゲット27表面上におけるYAGレーザ光Lのスポット面積の下限は特に限定されず、使用するYAGレーザ光発光手段28の能力に応じて決定される。
CeO2のキャップ層3の成膜後、得られた酸化物超電導導体用基材10は巻取リール21に巻き取られる。
以上の工程により、積層体基材25(テープ基材1上の中間層2の上面)に、CeO2のキャップ層3を成膜し、酸化物超電導導体用基材10を製造することができる。
酸化物超電導層4は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等で積層でき、なかでもレーザ蒸着法が好ましい。
酸化物超電導層4の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層4の結晶のc軸とa軸とb軸は、CeO2のキャップ層3の結晶に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化しており、結晶配向性が優れたものとなる。
安定化層5は、導電性が良好な金属からなるものが好ましく、具体的には、銀又は銀合金、銅などからなるものが例示できる。安定化層5は1層構造でも良いし、2層以上の積層構造であってもよい。
安定化層5は、公知の方法で積層できる。安定化層5が1層構造の場合は、銀層をメッキやスパッタ法で形成する方法が挙げられる。また、安定化層5が2層構造の場合は、銀層をメッキやスパッタ法で形成し、その上に銅テープなどを貼り合わせるなどの方法を採用できる。安定化層5の厚さは、3〜300μmの範囲とすることができる。
例えば、上記実施形態では、積層体基材をターゲットの構成粒子の堆積領域(成膜領域)を複数回通過させて、積層体基材の中間層上にCeO2のキャップ層を成膜する例を示したが、本発明はこれに限定されない。積層体基材を成膜領域を1回のみ通過させる構成としても良く、積層体基材を成膜領域内を1回又は複数回通過させた後、積層体基材の搬送方向を逆にして(送出リールおよび巻取リールの回転方向を逆にして)、積層体基材を成膜領域内に再度通過させて成膜しても良い。
図1および図2に示すレーザ蒸着装置20を用い、YAGレーザ光の第1〜第5高調波を使用したパルスレーザ蒸着法(PLD法)により、積層体基材のGd2Zr2O7層上に厚さ0.5μmのCeO2のキャップ層を成膜することによりNo.1〜No.5の酸化物超電導導体用基材を作製した。成膜条件は以下の通りである。
YAGレーザ光の波長変換前のパルスエネルギー:400mJ、ターゲット:CeO2、ターゲット上におけるレーザ光のスポット面積(ビーム面積):3.0mm2、ターゲット上におけるレーザ光のエネルギー密度:6J/cm2、成膜装置内の酸素分圧:3.0Pa、積層体基材を加熱する基材ホルダ温度:800℃、積層体基材の搬送速度:50m/h。なお、YAGレーザ光のターゲット上でのパルスエネルギーは、波長変換の影響により波長が短くなるにつれて小さくなる。
図1および図2に示すレーザ蒸着装置20を用い、YAGレーザ光の第3高調波(355nm)を使用したPLD法により、ターゲット上におけるレーザ光のスポット面積(ビーム面積)およびターゲット上におけるレーザ光のエネルギー密度を表2に示す数値に設定して、積層体基材のGd2Zr2O7層上に厚さ0.5μmのCeO2のキャップ層を成膜することによりNo.6〜No.13の酸化物超電導導体用基材を作製した。成膜条件は以下の通りである。
YAGレーザ光のターゲット上におけるパルスエネルギー:60mJ、ターゲット:CeO2、成膜装置内の酸素分圧:3.0Pa、積層体基材を加熱する基材ホルダ温度:800℃、積層体基材の搬送速度:50m/h。
図1および図2に示すレーザ蒸着装置20を用い、エキシマレーザを使用したPLD法により、ターゲット上におけるレーザ光のスポット面積(ビーム面積)およびターゲット上におけるレーザ光のエネルギー密度を表3に示す数値に設定して、積層体基材のGd2Zr2O7層上に厚さ0.5μmのCeO2のキャップ層を成膜することによりNo.14〜No.21の酸化物超電導導体用基材を作製した。成膜条件は以下の通りである。
エキシマレーザのターゲット上におけるパルスエネルギー:60mJ、ターゲット:CeO2、成膜装置内の酸素分圧:3.0Pa、積層体基材を加熱する基材ホルダ温度:800℃、積層体基材の搬送速度:50m/h。なお、エキシマレーザはYAGレーザよりもビームに指向性があるためにビームを十分に絞ることができないので、スポット面積を1.2mm2未満に設定することができなかった。そのため、No.18〜No.21の試料では、エキシマレーザのパルスエネルギーを上げることにより、エネルギー密度を調整した。
Claims (4)
- YAGレーザ光の第3高調波(波長355nm)を、ターゲット上でのエネルギー密度が6J/cm2以上、前記ターゲット上におけるレーザ光のスポット面積が1.0mm 2 以下となるように該ターゲット上に照射して、このターゲットの構成粒子を叩き出し若しくは蒸発させ、前記構成粒子を基材の上方に形成された中間層の表面上に堆積させて、該中間層上にCeO2のキャップ層を形成することを特徴とする酸化物超電導導体用基材の製造方法。
- YAGレーザ光の第4高調波(波長266nm)を、ターゲット上でのエネルギー密度が6J/cm2以上となるように該ターゲット上に照射して、このターゲットの構成粒子を叩き出し若しくは蒸発させ、前記構成粒子を基材の上方に形成された中間層の表面上に堆積させて、該中間層上にCeO2のキャップ層を形成することを特徴とする酸化物超電導導体用基材の製造方法。
- 前記ターゲット上におけるレーザ光のスポット面積が1.0mm2以下となるようにYAGレーザ光を該ターゲット上に照射することを特徴とする請求項2に記載の酸化物超電導導体用基材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化物超電導導体用基材の製造方法を用いて形成された前記キャップ層上に、酸化物超電導層を形成することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。
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