JP6004247B2 - 生化学反応用基体、生化学反応処理システム、及び当該基体からの排液方法 - Google Patents

生化学反応用基体、生化学反応処理システム、及び当該基体からの排液方法 Download PDF

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Description

本発明は、バイオチップ等の生化学反応用の基体、生化学反応処理システム、及び、当該基体を洗浄等する際に基体から排液する方法に関する。
DNAのハイブリダイズ評価、或いは特異抗体の免疫反応評価等に使用される基板として、反応液の使用量の削減等を目的とした構造を有するものが知られている。
例えば、特許文献1には、スライドガラス上における抗体等がアレイ化されている部分の外郭部分(周縁部)に、所定の厚みを有する疎水性シートを貼り付けたマイクロアレイ基板が記載されている。このマイクロアレイ基板では、疎水性シートを貼り付けた部分の内側にのみ反応液が保持される。
また、特許文献1に記載のものとは異なる構成として、適当な表面処理がなされたガラス製等の基板が市販されている。一般的には、DNA又は特異抗体等の生体プローブを当該基板に固定し、生体プローブを固定した領域を囲むように疎水ペン(例えば、Super Pup Pen(商品名)等)で筆記し、当該囲われた領域内を反応液の液溜めとして反応を行う。反応に供した基板は、洗浄された後に再び反応に供される。疎水ペンで筆記された疎水性領域には実質的な厚みがないので、特許文献1に記載の枠体で囲んだ基板等と比較して洗浄及び反応の反復操作に適するという利点がある。
但し、上記のように基板を洗浄して再び反応に利用する場合、反応液の濃度誤差等に起因する測定誤差を防止するためには、洗浄液を十分に除去する必要がある。
従来は、疎水ペンで囲われた領域内から洗浄液を完全に排液するために、遠心機にかけて洗浄液を水切りをする方法、或いは、高圧エアで洗浄液を吹き飛ばす方法が採用されていた。
特開2004−226255(公開日:2004年8月12日)
しかし、上記従来の方法は、遠心機又は高圧エアブロワー等の装置を要し、大がかりとなるという問題があった。また、高圧エアで洗浄液を吹き飛ばす方法の場合には、吹き飛ばされた飛沫に起因する汚染を招来するという問題があった。
本願発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、汚染を招来する畏れなくかつより簡便に洗浄液を除去することができる生化学反応用基体からの排液方法、生化学反応処理システム、及び当該排液方法が適用される基体を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するために、本願発明者らは鋭意検討を行なった。その結果、水の凝集力を利用することにより、生化学反応用基体から簡便に排液可能であることを見出し、本願発明に想到するに至った。
すなわち、本発明にかかる生化学反応用基体は、生化学反応用の基体であって、上記基体の少なくとも一つの表面には、上記表面から突出した枠体と、上記枠体の内側に当該枠体と所定の間隔をあけて設けられ、基体の上記表面からの高さが無視可能な枠体状の疎水性領域と、が設けられており、
上記枠体状の疎水性領域に取り囲まれた領域が、生化学反応用のプローブを固定する固定領域となる、ことを特徴としている。
本発明にかかる生化学反応用基体は、上記構成において、上記枠体状の疎水性領域に取り囲まれた領域に、生化学反応用のプローブが固定されているものであってもよい。
本発明にかかる生化学反応用基体は、上記構成において、上記枠体の内側の側壁と基体の上記表面とが当該側壁より内側に向かってなす角の大きさが90度を超え180度未満の範囲内である、又は、上記枠体の内側の側壁と基体の表面とが接合する接合領域が隣接する領域と比較して疎水性が高くなっていることがより好ましい。
本発明にかかる生化学反応用基体は、上記構成において、生化学反応に用いる試薬、又は生化学反応後に行う洗浄に用いる試薬を格納するための試薬溜をさらに備える構成であってもよい。
本発明にかかる生化学反応用基体は、上記構成において、上記枠体状の疎水性領域は、幅が狭くなった縮小部、又は領域が分断された分断部を備える構成であってもよい。
本発明にかかる生化学反応用基体は、上記構成において、上記生化学反応用のプローブは、核酸、タンパク質、抗原、又は抗体であってもよい。
本発明にかかる生化学反応用基体は、上記構成において、生化学反応用の基体は、生化学反応用の基板であってもよい。
本発明にかかる生化学反応処理システムは、上記生化学反応用基体と、上記生化学反応用基体に対して液体を供給する液体供給部と、上記生化学反応用基体上の液体を吸引する液体吸引部と、上記生化学反応用基体と上記液体供給部との相対的な位置関係、及び上記生化学反応用基体と上記液体吸引部との相対的な位置関係を変更する位置移動機構と、上記液体供給部、上記液体吸引部、及び上記位置移動機構の動作を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、生化学反応を行った後の上記生化学反応用基体における上記枠体に取り囲まれた領域内に位置する基体の表面全体が液体で覆われるように、上記液体供給部から上記液体を供給し、次いで、上記枠体と上記枠体状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、当該枠体に取り囲まれた領域を覆う液体の一部を上記液体吸引部で吸引するように、上記液体供給部、上記液体吸引部、及び上記位置移動機構の動作を制御することを特徴としている。
本発明にかかる生化学反応処理システムは、上記の構成において、上記生化学反応用基体を用いた生化学反応を行う生化学反応装置と、上記生化学反応を行った後の上記生化学反応用基体を分析する分析装置と、を備える構成であってもよい。
本発明にかかる排液方法は、上記何れかの生化学反応用基体からの排液方法であって、生化学反応用基体に対して、上記枠体に取り囲まれた領域内に位置する基体の表面全体が液体で覆われるように液体を供給する液体供給工程と、次いで、上記枠体と上記枠体状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、当該枠体に取り囲まれた領域を覆う液体を吸引する液体吸引工程と、を含むことを特徴としている。
本発明にかかる排液方法では、上記液体吸引工程は、上記枠体と上記枠体状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、当該枠体に取り囲まれた領域を覆う液体の一部を吸引した後に当該吸引を一旦停止する液体吸引第一工程と、次いで、上記枠体と上記枠体状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、上記液体の残りを吸引する液体吸引第二工程と、を含んでなってもよい。
本発明にかかる排液方法では、上記液体吸引第一工程は、疎水性領域上を覆う上記液体が0.1mm以上で0.5mm以下の範囲内の厚さの薄層として残るように、上記液体の一部を吸引することが好ましい。
本発明にかかる排液方法では、上記の方法において、上記生化学反応用基体は、上記枠体状の疎水性領域に取り囲まれた領域に、生化学反応用のプローブが固定されているものであり、上記液体供給工程では、生化学反応を行った後の生化学反応用基体に対して、上記枠体に取り囲まれた領域内に位置する基体の表面全体が上記液体としての洗浄液で覆われるように当該洗浄液が供給されるものであってもよい。
本発明にかかる排液方法では、上記の方法において、上記液体供給工程の前に、界面活性剤を含んでもよいバッファー溶液を供給し、次いで当該バッファー溶液を除去する予備洗浄工程を少なくとも一回含み、上記洗浄液として、予備洗浄工程で用いるバッファー溶液より低濃度で界面活性剤を含んでもよいバッファー溶液を用いるものであってもよい。
本発明によれば、汚染を招来する畏れなくかつ簡便に生化学反応用基体から排液する方法、及び当該方法が適用される基体を提供することが出来るという効果を奏する。
(a)は、本発明に係る生化学反応用基体の一例としての生化学反応用チップを示す斜視図であり、(b)は、当該生化学反応用チップをA−A’線で切断した断面構造を示す断面図である。 図1に示す生化学反応用チップの一変形例を示す断面図である。 (a)〜(c)は、図1に示す生化学反応用チップの他の変形例を示す上面図である。 (a)〜(c)は、図1に示す生化学反応用チップを洗浄液を用いて洗浄するに際し、当該洗浄液の排液方法を説明する図である。 本発明に係る生化学反応処理システムの概略構成を示す図である。 図5に示す生化学反応処理システムの処理フローの一例を示す図である。 本発明に係る生化学反応用チップを用いて、アレルゲンに対する抗体の有無を検出した結果を示す図である。 本発明に係る生化学反応用チップを用いて、アレルゲンに対する抗体の有無を検出した他の結果を示す図である。 本発明に係る生化学反応用チップを用いて、アレルゲンに対する抗体の有無を検出したさらに他の結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔1.生化学反応用基体〕
(基本構成)
本発明に係る生化学反応用基体の基本構成について図1に基づき説明する。なお、生化学反応用基体の形状は、後述する筒状壁部2及び疎水性リング4が形成された表面を有しうる形状である限り特に限定されないが、ここでは、基板形状の生化学反応用チップ(生化学反応用基体)10を例示して説明する。
図1中の(a)は、生化学反応用チップ10を示す斜視図であり、図1中の(b)は、生化学反応用チップ10をA−A’線(図1中の(a)参照)で切断した断面構造を示す断面図である。
生化学反応用チップ10は、薄肉な直方体形状の基板1が有する1つの表面1A上に、筒状壁部(枠体)2及び疎水性リング(疎水性領域)4が形成されてなる。
生化学反応用チップ10において、筒状壁部2は、表面1Aの重心を通る垂線を略中心(重心線)とした円筒状の壁部であり、その外壁2Bは略正方形状の表面1Aの四辺にほぼ内接するように形成されている。筒状壁部2は、その内壁2Aと表面1Aとで取り囲まれた円筒状の空間内に液体を保持可能なように、表面1Aから所定の高さで突出している。また、内壁2Aは表面1Aに対して垂直に形成されている。表面1Aからの筒状壁部2の高さの下限は特に限定されないが、1mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがさらに好ましい。表面1Aからの筒状壁部2の高さの上限も特に限定されないが、チップとしての用途を考慮すると10mm以下であることが好ましい。筒状壁部2は例えばシリコーン樹脂製である。
表面1A上における、上記筒状壁部2より内側の領域には、当該筒状壁部2から所定の間隔をあけて疎水性リング4が設けられている。疎水性リング4は、表面1Aの重心を略中心とした、所定幅の円環状の疎水性領域である。従って、基板1の表面1A上において、筒状壁部2より内側には、筒状壁部2と疎水性リング4との間に位置する中間領域3、及び、疎水性リング4に取り囲まれたプローブ固定領域5が存在する。
上記疎水性リング4は、基板1の表面1A上において隣接する領域より疎水性の程度が高くなるように設計されていればよい。すなわち、疎水性リング4は、中間領域3及びプローブ固定領域5より疎水性の程度が高くなっている。当該疎水性リング4は、例えば、基板1の表面1Aを、疎水性リングの形状に沿って疎水化処理することにより得られる。疎水化処理の方法は、例えば、基板1の材質、求められる疎水化の程度、並びに所望する生化学反応の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、疎水ペン(例えば、Super Pup Pen(商品名)等)で疎水性塗料を付与する、1-1-1-トリクロロエタンで処理する、テフロン加工を施す等の方法が例示される。かかる方法で形成された疎水性リング4は、基板1の表面1Aからの高さが無視可能な(すなわち、疎水化処理により形成され、高さのない)枠体状の疎水性領域である。疎水性リング4は、その内側に位置するプローブ固定領域5より疎水性が高いことによって、プローブ固定領域5上に供された反応液等をプローブ固定領域5内に保持する役割を果たす。疎水性リング4の幅は特に限定されないが、0.2mm以上で2mm以下の範囲内であることが好ましく、0.5mm以上で1mm以下の範囲内であることがより好ましい。
なお、生化学反応用チップ10において、筒状壁部2の内壁2Aと基板1の表面1Aとが接合する接合領域6が、隣接する領域と比較して疎水性が高くなるように設計してもよい。このような設計によれば、後述する排液方法を適用した場合に、接合領域に液体等が残存しにくいという効果を示す。ここで、接合領域6とは、内壁2Aと表面1Aとの接合部、及び、接合部近傍の内壁2Aと表面1Aとを指す。
生化学反応用チップ10を生化学反応に供する際には、プローブ固定領域5に生化学反応用のプローブが固定される。プローブの固定は、例えば、所定量のプローブを複数の独立したスポットとしてプローブ固定領域5に固定することにより行う。生化学反応用のプローブの種類は所定のターゲットと相互作用性があれば特に限定されないが、例えば、核酸、タンパク質、抗原、抗体、リガンド、又はレセプター等であり、好ましくは核酸、タンパク質、抗原、又は抗体であり、より好ましくは抗原である。これらプローブは一種のみがプローブ固定領域5に固定されてもよく、複数種が単一のプローブ固定領域5に固定されていてもよい。
生化学反応用チップ10を用いて生化学反応を行う際には、解析対象たる試料を含む反応液を、プローブが固定されているプローブ固定領域5内に供して生化学反応を行う。次いで、各生化学反応の種類に応じた適切な検出方法により、当該試料がプローブと相互作用性のあるターゲットを有するか否かなどを解析する。生化学反応用チップ10を、生化学反応に再利用する等の目的で洗浄する方法については後述する。
なお、上記説明では、筒状壁部2として円筒状のものを例示したが、所定の高さをもつ枠体であればその形状は特に限定されず、例えば、四角形の筒状等に設計してもよい。同様に、疎水性リング4として円環状のものを例示したが、実質的な高さの無い枠体状(リング状)であればその形状は特に限定されず、例えば、四角形状等に設計してもよい。但し、疎水性リング4の外周部から筒状壁部2の内壁2Aまでの距離がどの位置でも略等しくなるように、疎水性リング4と筒状壁部2とが重心軸を共有しかつ断面が相似形状となるように設計することがより好ましい。
また、中間領域3の幅(すなわち、疎水性リング4の外周部から筒状壁部2の内壁2Aまでの距離)は、特に限定されないが、例えば、3mm以上で10mm以下の範囲内である。プローブ固定領域5が円形の場合、その半径は特に限定されないが、例えば、4mm以上で8mm以下の範囲内である。
また、筒状壁部2は、基板1と一体的に形成されてもよい。筒状壁部2、及び基板1の材質も特に限定されず、例えば、生化学反応用チップに汎用される樹脂材料等で形成することが出来る。また、基板1に関しては、PCT国際公開公報WO2009/119082(参考文献)に記載のような、光固定ポリマーで表面コートされたメタル基板等を用いることもできる。さらに、基板1は、疎水性リング4を設ける前に、必要に応じて表面1A全体の親水化処理を行ってもよい。
(生化学反応用基体の変形例1)
本発明に係る生化学反応用基体の変形的な構成について図2に基づき説明する。なお、図1に示す生化学反応用チップ10と同一の部材については同一の部材番号を付し、その説明は省略する。
図2は、生化学反応用チップ20を示す断面図であり、図1に示す生化学反応用チップ10と比較して筒状壁部(枠体)22の構造のみが異なる。筒状壁部22はその内壁(内側の側壁)22Aの上部は基板1の表面1Aに対して垂直であるが、当該内壁22Aの下部が、内側(疎水性リング4側)方向に徐々に突出するように傾斜している。言い換えれば、内壁22Aの下部は、下方に向かう(表面1Aに近づく)に従い直径が段階的に縮小する形状である。
生化学反応用チップ20では、内壁22Aと表面1Aとの接合部において、内壁22Aと表面1Aとが当該内壁22Aより内側に向かってなす角Θの大きさが90度を超え180度未満の範囲内となっている。このため、後述する排液方法を適用した場合に、内壁22Aと表面1Aとの接合部に液体等が残存しにくいという効果を示す。なお、角Θの大きさは、好ましくは、100度以上で150度以下の範囲内である。
なお、図示はしないが、内壁22Aはその全体が内側方向に徐々に突出するように傾斜していてもよい。また、内壁22Aは曲面状に形成されていてもよい。内壁22Aが曲面状の場合は、上記角Θは、表面1Aとの接合部近傍に位置する内壁22Aを平面に近似して求めることが出来る。
(生化学反応用基体の変形例2)
本発明に係る生化学反応用基体の変形的な構成について図3中の(a)に基づき説明する。なお、図1に示す生化学反応用チップ10と同一の部材については同一の部材番号を付し、その説明は省略する。
図3中の(a)は、生化学反応用チップ30を示す断面図であり、図1に示す生化学反応用チップ10と比較して、疎水性リング4の一部にその幅が狭くなった縮小部4Aが設けられている点のみが異なる。縮小部4Aは、疎水性リング4の外周部分が内側に窪むことにより形成されている。生化学反応用チップ30は縮小部4Aを有するため、後述する排液方法を適用した場合に、水の凝集力を利用した排液の現象が縮小部4Aを起点にして生じ易くなり、液体等がより残存しにくいという効果を示す。
なお、縮小部4Aは、疎水性リング4の内周部分が外側に窪むことにより形成することもできるが、プローブ固定領域5の形状変化を伴わないという観点では、疎水性リング4の外周部分に設けることがより好ましい。
(生化学反応用基体の変形例3)
本発明に係る生化学反応用基体の変形的な構成について図3中の(b)に基づき説明する。なお、図1に示す生化学反応用チップ10と同一の部材については同一の部材番号を付し、その説明は省略する。
図3中の(b)は、生化学反応用チップ40を示す断面図であり、図1に示す生化学反応用チップ10と比較して、疎水性リング4中にリングが分断された分断部4Bが設けられている点のみが異なる。分断部4Bの大きさ(幅)は、生化学反応を行う際に、疎水性リング4の内側(プローブ固定領域5内)に反応液を保持する能力を阻害しない程度の微小さであり、例えば、幅が0.5mm以下の大きさに設計される。生化学反応用チップ40は分断部4Bを有するため、後述する排液方法を適用した場合に、水の凝集力を利用した排液の現象が分断部4Bを起点にして生じ易くなり、液体等がより残存しにくいという効果を示す。
(生化学反応用基体の変形例4)
本発明に係る生化学反応用基体の変形的な構成について図3中の(c)に基づき説明する。なお、図1に示す生化学反応用チップ10と同一の部材については同一の部材番号を付し、その説明は省略する。
図3中の(c)は、生化学反応用チップ50を示す断面図であり、図1に示す生化学反応用チップ10と比較して、試薬を格納するための複数の試薬溜2Dが設けられている点のみが異なる。生化学反応用チップ50では、複数の試薬溜2Dが、筒状壁部2の上面から下側(基板1の表面1A側)へ向って伸びる、互いに独立した窪みとして形成されている。特に限定されないが、試薬溜2D内には、生化学反応に用いる各種の試薬溶液、及び/又は生化学反応後に行う洗浄に用いる試薬溶液(洗浄液等)が格納される。
また、試薬溜2Dには、格納された試薬が不所望に漏れ出す虞を防止するため、試薬溜2Dの空間を密閉するシール部材(図示せず)をさらに備えてもよい。シール部材は、例えば、機械的な引力又は圧力により容易に穿孔可能なシール用膜を、試薬溜2Dの開口に被せてなる。或いは、当該シール用膜として、温度変化により容易に溶解除去が可能な材料を用いることもできる。
なお、図1〜図3に示す生化学反応用チップの基本構成及び変形例は、必要に応じて、互いに組合せた構成としてもよい。
〔2.生化学反応用基体からの排液方法〕
以下、本発明に係る生化学反応用基体に適用される排液方法の例について、図1から図4に基づき説明する。なお、便宜上、生化学反応用基体として、図1に示す生化学反応用チップ10を例に挙げて説明を行うが、本排液方法の適用対象は、特に当該チップ10に限定されない。
(排液方法(1)の概要)
本発明に係る排液方法(1)は、例えば、生化学反応用チップ10から排液する方法である。当該排液方法は、水の凝集を利用することにより、簡便に、かつ、実用上十分な水準で、生化学反応用チップ10から排液可能とする点を1つの特徴とする。加えて、排液時の残液量を大幅に低減し、かつ排液処理の時間を短縮可能とする。
上記の排液方法(1)は、
1)生化学反応用チップ(生化学反応用基体)10に対して、筒状壁部(枠体)2に取り囲まれた領域内に位置するチップの表面1A全体が液体で覆われるように液体を供給する液体供給工程と、
2)疎水性リング(疎水性領域)4に取り囲まれたチップの表面1A上方の位置を起点にして、疎水性リング4に取り囲まれたチップの表面1Aを覆う液体の一部を吸引する液体吸引第一工程と、
3)筒状壁部2と疎水性リング4との間の領域上方の位置を起点にして、当該筒状壁部2に取り囲まれた領域内に位置するチップの表面1Aを覆う液体を吸引する液体吸引第二工程と、をこの順番に含んでなる。
(排液方法(1)の上記液体供給工程について)
図4中の(a)は、生化学反応用チップ10に対して、液体供給ノズル(液体供給手段)51を用いて、上記液体供給工程を行った状態を示す図である。まず、生化学反応用チップ10が液体供給ノズル51の下方に位置するように両者を位置づける。そして、液体供給工程では、筒状壁部2に取り囲まれた領域内に位置するチップの表面1A全体、即ち、中間領域3、疎水性リング4、及びプローブ固定領域5の全体が液体41で覆われるように、液体供給ノズル51から液体41を供給する。
液体41の供給量は特に限定されないが、表面1Aの表面状態(疎水性及び親水性の分布)が液体41の表面に及ぼす影響が実質的に無視できる程度の量が供給されることが好ましく、生化学反応用チップ10の設計に応じて決定することが出来る。例えば、表面1Aから液面までの高さが1mm以上になるように、より好ましくは2mm以上になるように、上記液体41の供給量が決定される。なお、表面1Aから液面までの高さの上限値は特に限定されず、筒状壁部2の高さ、及び排液可能量等に応じて適宜決定すればよい。
供給される液体41の種類は特に限定されない。例えば、生化学反応用チップ10が、そのプローブ固定領域5内にプローブを固定する前のものであれば、洗浄用に供給される清浄な水等が例示される。一方、生化学反応用チップ10が、そのプローブ固定領域5内にプローブを固定した後のものであれば、当該プローブ及び生化学反応の種類に応じた洗浄液等が例示される。
ここで、上記液体供給工程が、生化学反応を行った後の生化学反応用チップ10に対する洗浄の一工程である場合、プローブ固定領域5が反応液で満たされた状態で、筒状壁部2で囲まれた領域全体を満たすように、液体供給ノズル51から洗浄液(液体41に相当)を供給する。上記洗浄液は、例えば、PBS、TBS等のバッファー溶液であり、必要に応じて界面活性剤を含んでいてもよいが当該界面活性剤の濃度は低い(例えば、濃度1体積%以下程度)ことが好ましい。また、必要に応じて、後述する予備洗浄工程を行ってもよい。予備洗浄工程を行う場合、液体供給工程で供給される洗浄液中の界面活性剤の濃度は、予備洗浄工程で供給される予備洗浄液中の界面活性剤の濃度より低濃度とすることが好ましい。
(排液方法(1)の上記液体吸引第一工程について)
図4中の(b1)は、生化学反応用チップ10に対して、液体吸引ノズル(液体吸引手段)31を用いて、上記液体吸引第一工程を行った状態を示す図である。まず、生化学反応用チップ10のプローブ固定領域5が、液体吸引ノズル31の下方に位置するように両者を位置づける。そして、チップの表面1Aにおける疎水性リング4に取り囲まれた領域(ここではプローブ固定領域5と同義)の上方に位置づけた液体吸引ノズル31(図中、点線で示す)を用いて、疎水性リング4に取り囲まれた上記領域を覆う液体41の一部を吸引する。
液体吸引第一工程では、チップの表面1Aにおける疎水性リング4に取り囲まれた領域上、及び疎水性領域上の双方に液体41が残るように、液体41を吸引する。これにより、筒状壁部2で囲まれた領域を満たす液体41が不連続にならず、その一体性が保たれる。その結果、後続する液体吸引第二工程の実行に伴い、中間領域3上にある液体41とともに、疎水性リング4で取り囲まれた領域上の液体41を吸引除去することが出来る。
液体吸引第一工程において、液体41の一部を吸引する際の吸引量は特に限定されないが、チップの表面1Aの表面状態(疎水性及び親水性の分布)が、液体41の表面状態に影響を及ぼしうる近傍の液厚となるまで吸引することが好ましい。特に限定されないが好ましい一例としては、疎水性リング4上を覆う液体41が0.1mm以上で0.5mm以下の範囲内の厚さの薄層として残るように、上記液体の一部を吸引する。
(排液方法(1)の上記液体吸引第二工程について)
図4の(b1)及び(c)は、生化学反応用チップ10に対して、液体吸引ノズル31を用いて、上記液体吸引第二工程を行った状態を示す図である。まず、図4中の(b1)に示すように、筒状壁部2と疎水性リング4との間に位置する中間領域3が、液体吸引ノズル31(図中、実線で示す)の下方に位置するように両者を位置づける。そして、中間領域3の上方に位置づけた液体吸引ノズル31を用いて、中間領域3を覆う液体41の一部を吸引する。
液体吸引第二工程を実行すると、所定のタイミングで、疎水性リング4上及び当該リング4で取り囲まれた領域上の液体41が、表面1A上を一気に滑るように中間領域3側へ移動する現象が見られる。これは、表面1A上の表面状態の相違(疎水性及び親水性の分布)と、水の凝集力とを利用した現象であると考えられる。その結果、中間領域3上にある液体41とともに、疎水性リング4で取り囲まれた領域上の液体41を、簡便かつ十分に吸引除去することが出来る(図4中の(c)参照)。
なお、液体吸引第二工程を行う際に、液体吸引ノズル31による吸引を補助するため、1)生化学反応用チップ10を、液体吸引ノズル31側が下方になるように機械的に傾ける、又は、2)液体41を液体吸引ノズル31側へブローしてもよい。
(必要に応じて行われる予備洗浄工程について)
本発明に係る排液方法が、生化学反応を行った後の生化学反応用チップ10に対する洗浄方法として実行される場合は、必要に応じて予備洗浄工程を行ってもよい。
予備洗浄工程は、上記液体供給工程の前に、界面活性剤を含んでもよいバッファー溶液(予備洗浄液)を供給し、次いで当該バッファー溶液を除去する工程からなる。予備洗浄工程におけるバッファー溶液の除去方法は特に限定されず、例えば、生化学反応用チップ10を機械的に傾けてバッファー溶液を排液する、液体吸引ノズルを用いてバッファー溶液を排液する、等の方法が挙げられる。液体吸引ノズルを用いる場合、液体吸引ノズルと生化学反応用チップ10との位置関係は、上記液体吸引第一及び第二工程と同様であってもよいが、特に限定されない。
予備洗浄工程は必要に応じて複数回行ってもよく、一例では、予備洗浄工程を2〜3回程度行う。
予備洗浄工程で用いる上記バッファー溶液が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の種類は特に限定されないが、生化学反応用チップの洗浄に汎用される界面活性剤、例えば、TritonX-100、Tween20等が挙げられる。また、バッファー溶液中の界面活性剤の濃度は、例えば、0.5体積%以上で1体積%以下の範囲内である。なお、予備洗浄工程を複数回行う場合は、回を追う毎に界面活性剤の濃度を低下させる、或いは所定の回以降は界面活性剤を含まないバッファーで予備洗浄を行う、ことがより好ましい。
(排液方法(2)の概要)
以下、本発明に係る生化学反応用基体に適用される排液方法の他の例について、図1から図4に基づき説明する。なお、便宜上、生化学反応用基体として、図1に示す生化学反応用チップ10を例に挙げて説明を行うが、本排液方法の適用対象は、特に当該チップ10に限定されない。
本発明に係る排液方法(2)は、例えば、生化学反応用チップ10から排液する方法である。当該排液方法は、水の凝集を利用することにより、簡便に、かつ、実用上十分な水準で、生化学反応用チップ10から排液可能とする点を1つの特徴とする。また、排液時の残液量を大幅に低減し、かつ排液処理の時間を短縮可能とする。さらに、排液の工程において、液体吸引手段(液体吸引ノズル31等)を水平方向に移動させなくてもよいため、工程の自動化により適した方法である。
上記の排液方法(2)は、
1)生化学反応用チップ(生化学反応用基体)10に対して、筒状壁部(枠体)2に取り囲まれた領域内に位置するチップの表面1A全体が液体で覆われるように液体を供給する液体供給工程と、
2)筒状壁部(枠体)2と疎水性リング(疎水性領域)4との間の領域上方の位置を起点にして、筒状壁部2に取り囲まれた領域内に位置するチップの表面1Aを覆う液体を吸引する液体吸引工程と、をこの順番に含んでなる。
なお、上記液体吸引工程は、
3)筒状壁部2と疎水性リング4との間の領域上方の位置を起点にして、筒状壁部2に取り囲まれた領域内に位置するチップの表面1Aを覆う液体の一部を吸引した後に当該吸引を一旦停止する液体吸引第一工程と、
4)筒状壁部2と疎水性リング4との間の領域上方の位置を起点にして、上記液体の残りを吸引する液体吸引第二工程と、をこの順番に含んでなることが好ましい。以下、図4を用いて行う排液フローの説明では、液体吸引第一・第二工程を含むものについて具体的に説明する。ただし、筒状壁部2と疎水性リング4との間の領域上方の位置を起点にして、筒状壁部2に取り囲まれた領域内に位置するチップの表面1Aを覆う液体を一工程で吸引・除去するように上記液体吸引工程を行ってもよい。
(排液方法(2)の上記液体供給工程について)
上記排液方法(1)の上記液体供給工程と同じ操作を適用することができる。
(排液方法(2)の上記液体吸引第一工程について)
図4中の(b2)は、生化学反応用チップ10に対して、液体吸引ノズル(液体吸引手段)31を用いて、上記液体吸引第一工程を行った状態を示す図である。まず、生化学反応用チップ10における筒状壁部2と疎水性リング4との間の領域(中間領域3)が、液体吸引ノズル31の下方に位置するように両者を位置づける。そして、液体吸引ノズル31を用いて、中間領域3を覆う液体41の一部を吸引した後に、吸引を一旦停止する。
液体吸引第一工程では、チップの表面1Aにおける疎水性リング4に取り囲まれた領域上、及び疎水性領域上の双方に液体41が残るように、液体41を吸引する。これにより、筒状壁部2で囲まれた領域を満たす液体41が不連続にならず、その一体性が保たれる。その結果、後続する液体吸引第二工程の実行に伴い、中間領域3上にある液体41とともに、疎水性リング4で取り囲まれた領域上の液体41を吸引除去することが出来る。
液体吸引第一工程において、液体41の一部を吸引する際の吸引量は特に限定されないが、チップの表面1Aの表面状態(疎水性及び親水性の分布)が、液体41の表面状態に影響を及ぼしうる近傍の液厚となるまで吸引することが好ましい。特に限定されないが好ましい一例としては、疎水性リング4上を覆う液体41が0.1mm以上で0.5mm以下の範囲内の厚さの薄層として残るように、上記液体の一部を吸引する。
(排液方法(2)の上記液体吸引第二工程について)
図4の(b2)及び(c)は、生化学反応用チップ10に対して、液体吸引ノズル31を用いて、上記液体吸引第二工程を行った状態を示す図である。まず、図4中の(b2)に示すように、筒状壁部2と疎水性リング4との間に位置する中間領域3が、液体吸引ノズル31の下方に位置するように両者を位置づける。より好ましい態様では、上記液体吸引第一工程の終了時点における、液体吸引ノズル31と生化学反応用チップ10との位置関係を保った状態で、液体吸引第二工程を開始する。そして、中間領域3の上方に位置づけた液体吸引ノズル31を用いて、中間領域3を覆う液体41の残りを一気に吸引する。この際、必要に応じて液体吸引ノズル31を下方に移動させながら液体の吸引を行なってもよい。液体吸引第二工程における液体の吸引速度は、例えば、10μl/秒以上で100μl/秒以下の範囲内である。
なお、液体吸引第一工程での吸引速度と液体吸引第二工程での吸引速度との関係は特に限定されないが、一般的には、液体吸引第一工程での液体吸引量がより多いために、液体吸引第一工程での吸引速度がより速くなるようにセットすることが好ましい場合がある。
液体吸引第二工程を実行すると、所定のタイミングで、疎水性リング4上及び当該リング4で取り囲まれた領域上の液体41が、表面1A上を一気に滑るように中間領域3側へ移動する現象が見られる。これは、表面1A上の表面状態の相違(疎水性及び親水性の分布)と、水の凝集力とを利用した現象であると考えられる。その結果、中間領域3上にある液体41とともに、疎水性リング4で取り囲まれた領域上の液体41を、簡便かつ十分に吸引除去することが出来る(図4中の(c)参照)。
なお、液体吸引第二工程を行う際に、液体吸引ノズル31による吸引を補助するため、1)生化学反応用チップ10を、液体吸引ノズル31側が下方になるように機械的に傾ける、又は、2)液体41を液体吸引ノズル31側へブローしてもよい。
(必要に応じて行われる予備洗浄工程について)
上記排液方法(1)の上記予備洗浄工程と同じ操作を適用することができる。
〔3.生化学反応処理システム〕
(生化学反応装置の主要構成について)
以下、本発明に係る排液方法が適用される、生化学反応処理システムの一例について、図5及び図6に基づき説明を行う。生化学反応処理システム130は、液体供給ノズル51(液体供給部:図4も参照)と液体吸引ノズル31(液体吸引部:図4も参照)とを備えた生化学反応装置60、生化学反応用チップ10を搭載する移動ステージ(基体移動装置)100、及び生化学反応処理システム130の動作制御を行う制御用コンピュータ(制御部:制御装置)90を少なくとも備える。生化学反応装置60はさらに、反応液を供給する1つ以上の供給ノズル(反応液供給部)61を備える。
生化学反応装置60において、液体供給ノズル51と液体吸引ノズル31との位置関係は図中のxy方向では固定されている。ただし、液体供給ノズル51、及び液体吸引ノズル31は、アクチュエータ等の移動機構により、それぞれ独立に上下方向(z方向)に移動可能に構成されている。移動ステージ100は、生化学反応用チップ10をその上面に搭載して、水平方向(xy方向)に移動させるものである。すなわち、生化学反応処理システム130では、液体供給ノズル51及び液体吸引ノズル31をz方向に移動させる上記移動機構と、移動ステージ100とが、生化学反応用チップ10と液体供給ノズル51との相対的な位置関係、及び生化学反応用チップ10と液体吸引ノズル31との相対的な位置関係を変更する位置移動機構を構成する。
すなわち、制御用コンピュータ90による動作制御を通じ、生化学反応装置60では、上記した液体供給ノズル51及び液体吸引ノズル31の上下動、並びに移動ステージ100を用いた生化学反応用チップ10の水平移動により、液体供給ノズル51と生化学反応用チップ10との位置関係、及び液体吸引ノズル31と生化学反応用チップ10との位置関係を所望のように制御する。
(生化学反応装置以外の構成について)
生化学反応処理システム130は、生化学反応装置60より上流段にチップ収容ラック(収容装置)110を備える。また、生化学反応装置60より下流段に分析装置70を備える。さらに、チップ収容ラック110と移動ステージ100との間で、生化学反応用チップ10を把持して移動させるロボットアーム120を備える。
分析装置70は、生化学反応後の生化学反応用チップ10を分析するための分析部71を備える。分析部71は、生化学反応の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、二次抗体由来の発光を観測する場合はCCDカメラ等の撮像装置等が挙げられる。
(生化学反応処理システムを用いた自動処理の一例)
以下、図5及び図6に基づき、生化学反応処理システム130を用いた自動処理の一例を説明する。生化学反応処理システム130は、例えば、生化学反応用チップ10に固定されたプローブとしての抗原(特にアレルゲン)と、生物試料中に含まれる抗体との相互作用を、二次抗体試薬及び発光試薬を用いて検出する生化学反応を取り扱う。二次抗体試薬は特に限定されないが、ペルオキシダーゼ標識抗グロブリン抗体等が利用でき、発光試薬としてはペルオキシダーゼの作用により発光する各種試薬が挙げられる。
(1) 抗原抗体反応工程(S1)
生化学反応装置60は、図6に示す抗原抗体反応工程(S1)を行う。すなわち、制御用コンピュータ90は、ロボットアーム120を駆動して、チップ収容ラック110内に収納された生化学反応用チップ10を把持して移動ステージ100上に載置する。なお、生化学反応用チップ10のプローブ固定領域5には、複数種類のアレルゲンがそれぞれ異なるスポットとして配置されている。
次いで、制御用コンピュータ90は、移動ステージ100をxy方向に駆動して、生化学反応用チップ10における疎水性リング4に取り囲まれた領域の真上に供給ノズル61を位置づける。次いで、制御用コンピュータ90は、供給ノズル61の1つを駆動して、当該供給ノズル61から生化学反応用チップ10に対して、解析対象となる生物試料を含む液体(例えば血清)を所定量供給する。そして、所定の環境条件下で、所定の時間、上記疎水性リング4に取り囲まれた領域において生化学反応を行う。生化学反応装置60は、生化学反応の条件を制御するためインキュベータ等を備えていてもよい。
(2) 洗浄工程(S2〜S4)
次いで、生化学反応装置60は、上記生物試料を含む液体を洗い流す洗浄工程を行う。洗浄工程は、図6に示す洗浄液供給工程(液体供給工程)S2、洗浄液吸引第一工程(液体吸引第一工程)S3、及び、洗浄液吸引第二工程(液体吸引第二工程)S4から構成される。すなわち、制御用コンピュータ90による動作制御を通じ、生化学反応装置60では、上記した液体供給ノズル51及び液体吸引ノズル31の上下動、並びに移動ステージ100を用いた生化学反応用チップ10の水平移動により、液体供給ノズル51と生化学反応用チップ10との位置関係、及び液体吸引ノズル31と生化学反応用チップ10との位置関係を所望のように制御する。
そして、液体供給ノズル51から洗浄液(液体)を供給し(S2)、次いで液体吸引ノズル31を用いて二段階にわたり洗浄液を吸引する(S3及びS4)ことで、本発明に係る排液方法を実行して、生化学反応用チップ10の洗浄を行う。なお、上記液体供給工程、液体吸引第一工程、及び液体吸引第二工程における動作の詳細は、〔2.生化学反応用基体からの排液方法〕の欄で説明した通りである。また、チップの表面1Aを覆う液体を一工程で吸引・除去するように液体吸引工程を行うこともでき、上記液体吸引第一工程・第二工程のように二段階に分けなくともよい。
(3) 二次抗体試薬反応工程(S5)
次いで、生化学反応装置60は、図6に示す二次抗体試薬反応工程(S5)を行う。すなわち、制御用コンピュータ90は、必要に応じて移動ステージ100をxy方向に駆動して、生化学反応用チップ10における疎水性リング4に取り囲まれた領域の真上に供給ノズル61を位置づける。次いで、制御用コンピュータ90は、供給ノズル61の1つを駆動して、当該供給ノズル61から生化学反応用チップ10に対して、工程S1での抗原抗体反応を検出する二次抗体試薬を所定量供給する。そして、所定の環境条件下で、所定の時間、上記疎水性リング4に取り囲まれた領域において生化学反応を行う。
(4) 洗浄工程(S6:S2〜S4と同一のプロセス)
次いで、生化学反応装置60は、上記二次抗体試薬を洗い流す二次抗体洗浄工程S6を行う。当該洗浄工程の詳細は上述の通りである。
(5) 発光試薬反応工程(S7)
次いで、生化学反応装置60は、図6に示す発光試薬反応工程(S7)を行う。すなわち、制御用コンピュータ90は、必要に応じて移動ステージ100をxy方向に駆動して、生化学反応用チップ10における疎水性リング4に取り囲まれた領域の真上に供給ノズル61を位置づける。次いで、制御用コンピュータ90は、供給ノズル61の1つを駆動して、当該供給ノズル61から生化学反応用チップ10に対して、二次抗体試薬を発光により可視化する発光試薬を所定量供給する。そして、所定の環境条件下で、所定の時間、上記疎水性リング4に取り囲まれた領域において生化学反応を行う。
(6) 洗浄工程(S8:S2〜S4と同一のプロセス)
次いで、生化学反応装置60は、上記発光試薬を洗い流す発光試薬洗浄工程S8を行う。当該洗浄工程の詳細は上述の通りである。
(7) 計測工程(S9)
次いで、分析装置70は、図6に示す計測工程(S9)を行う。すなわち、上記生化学反応後、制御用コンピュータ90は、移動ステージ100をxy方向に駆動して、生化学反応用チップ10における疎水性リング4に取り囲まれた領域(プローブ固定領域5)の真上に分析部71を位置づける。次いで、制御用コンピュータ90は、分析部71を駆動して、生化学反応用チップ10上で行われた生化学反応の結果を計測する。分析部71が撮像装置の場合は、例えば、生化学反応用チップ10上における二次抗体由来の発光を示すスポットの分布を撮像して、当該撮像データを制御用コンピュータ90へ出力し蓄積する。なお、制御用コンピュータ90の画面(表示部)上に当該撮像データを表示することも出来る。
(8)完全排液工程(S10:S2〜S4と同一プロセス)
次いで、生化学反応装置60は、上記説明の通り、洗浄液供給工程(液体供給工程)S2、洗浄液吸引第一工程(液体吸引第一工程)S3、及び洗浄液吸引第二工程(液体吸引第二工程)S4を順次行い、生化学反応用チップ10からの完全排液を行う。次いで、完全に排液された生化学反応用チップ10は廃棄されるか、再利用をする場合は、ロボットアーム120を用いてチップ収容ラック110に回収された後、再び、生化学反応装置60に供される。なお、チップの表面1Aを覆う液体を一工程で吸引・除去するように液体吸引工程を行うこともでき、上記液体吸引第一工程・第二工程のように二段階に分けなくともよい。
〔実施例1:生化学反応用チップの設計、及び抗アレルゲン抗体の検出〕
(1)生化学反応用チップの設計例
図1中の(a)に示す構造を有する生化学反応用チップ10を製造した。基板1は、Az-PEGポリマーを用いて親水性処理をしたガラス基板である。筒状壁部2は、シリコーン樹脂で製造し、その内周直径が約22mmで、高さ約6mmの円筒状に形成した。疎水性リング4は、幅が約1.2mmで、その外周直径が約15.4mmになるように、疎水ペンSuper Pup Pen(商品名)で筆記した。なお、筒状壁部2と疎水性リング4とは中心軸を共有する略同心状の構造である。
そして、生化学反応用チップ10におけるプローブ固定領域5に、図7に示す配置で、様々なアレルゲン(抗原:プローブ)を16スポット形成した。図7に示す通り、一行目の左側二つはダニ由来アレルゲンD1のスポット、右側二つはスギ由来アレルゲンT17のスポットである。二行目〜三行目も同様に、左側二つに図中で左記したアレルゲンのスポットを、右側二つに図中で右記したアレルゲンのスポットを形成した。1行目〜3行目のスポットが含むアレルゲンの濃度は何れも0.5mg/ml〜3mg/mlである。なお、4行目は、上記アレルゲンD1を、図中に示す異なる濃度で含むスポットである。
(2)抗アレルゲン抗体の検出
生化学反応用チップ10における疎水性リング4で囲まれた領域へ、希釈した血清を50μl分注し、1分振動・1分静置を1セットとして4セット繰返し行い、アレルゲンと血清中に含まれうる抗体との抗原抗体反応を行った。すなわち、合計反応時間は8分である。
次いで、各々600μlのTBST(Tris Buffered Saline with Tween20)で3回、各々600μlのTBS(Tris Buffered Saline)で3回の洗浄を行った。これら洗浄のうちTBSを用いた3回目の洗浄のみは、図4を用いて説明した本発明に係る排液方法(洗浄方法)に基づき行った。すなわち、生化学反応用チップ10に対してTBSを供給して、図4中の(a)に示すように、筒状壁部2に取り囲まれたチップの表面全体がTBSで覆われる状態とした。次いで、図4中の(b1)及び(c)で示すように二段階に分けてTBSを吸引して排液した。
次に、生化学反応用チップ10における疎水性リング4で囲まれた領域へ、二次抗体試薬としてのHuman IgE ELISA Quantitation Set(BET社製の商品名)を50μl分注し、1分振動・1分静置を1セットとして2セット繰返し行い、アレルゲンに反応した抗体と二次抗体試薬との抗原抗体反応を行った。すなわち、合計反応時間は4分である。
次いで、各々600μlのTBSTで2回、各々600μlのTBSで2回の洗浄を行った。これら洗浄のうちTBSを用いた2回目の洗浄のみは、図4の(a)〜(b1)〜(c)を用いて説明した本発明に係る排液方法(洗浄方法)に基づき行った。
次に、生化学反応用チップ10における疎水性リング4で囲まれた領域へ、発光試薬としてのECL Advance Western Blotting Detection Kit(GEヘルスケア社製の商品名)を50μl分注して5秒間静置反応させた後に、CCDカメラで撮像した。結果を図7に示す。
〔実施例2:抗アレルゲン抗体の検出〕
実施例1と同様に設計した生化学反応用チップ10に、図9中の(e)に示す通り、実施例1とは異なる配置でウィルス抗原やポジティブコントロールとして坑IgG抗体、ネガティブコントロールとしてBSA(牛血清アルブミン)をスポットを配置したものを4個用意した。なお、図9中の(e)の枠中で記載のない個所はブランク(スポットなし)に相当する。抗原等の固定量は0.5mg/mL〜1.4mg/mLの範囲にある。
そして、希釈した血清として二種類(MO26×3、5090×3)を用意し、発光試薬添加後の観測時間を60秒にした以外は、上記実施例1と同様の条件で検出反応を行った。結果を図8に示す。なお、図8中の(a)(b)(c)(d)は、同じ血清(MO26×3)を別の生化学反応用チップ10で試験した結果を示し、(c)(d)は同じ血清(5090×3)を別の生化学反応用チップ10で試験した結果を示す。同じ血清を対象とした検出反応の場合、別々の生化学反応用チップで得られた結果の間で充分な再現性があった。
〔実施例3:ウイルス抗体の検出〕
実施例1、2と同様に設計した生化学反応用チップ10に、図9中の(e)に示す配置で、麻疹、風疹、水痘、ムンプス、EB(エプスタイン・バーン・ウイルス)の無毒化したウイルス(抗原)を、またポジティブコントロールとして坑IgG抗体を、ネガティブコントロール(図中のネガコン)としてBSA(ウシ血清アルブミン)をスポットし配置したものを4個用意した。なお、図9中の(e)の枠中でブランクの枠はスポット無しに相当する。抗原等の固定量は、0.5mg/mL〜1.5mg/mLの範囲にある。
そして、異なる人から採取した希釈した血清を4種類を用意し、発光試薬添加後の観測時間を60秒にした以外は、上記実施例1と同様の条件で検出反応を行った。結果を図9に示す。なお、図9中の(a)(b)(c)(d)は、別の血清を別の生化学反応用チップ10で試験した結果を示す。同じ血清を用いた結果からウィルス毎に抗体価が異なることが分かる。この抗体価はスタンダードな検定法EIA(エンザイムイムノアッセイ)とR=0.9以上の相関性を持つことが確認された。
本発明は上述した各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態等にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態等についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、汚染を招来する畏れなくかつ簡便に生化学反応用基体から排液する方法、及び当該方法が適用される基体を提供する。
1A 表面
2 筒状壁部(枠体)
2A 内壁(内側の側壁)
2D 試薬溜
3 中間領域(枠体と疎水性領域との間の領域)
4 疎水性リング(疎水性領域)
4A 縮小部
4B 分断部
5 プローブ固定領域(固定領域)
6 接合領域
10 生化学反応用チップ(生化学反応用基体)
20 生化学反応用チップ(生化学反応用基体)
22 筒状壁部(枠体)
22A 内壁(内側の側壁)
30 生化学反応用チップ(生化学反応用基体)
31 液体吸引ノズル(液体吸引手段:液体吸引部)
40 生化学反応用チップ(生化学反応用基体)
41 液体(洗浄液)
50 生化学反応用チップ(生化学反応用基体)
51 液体供給ノズル(液体供給手段:液体供給部)
90 制御用コンピュータ(制御部)
100 移動ステージ(位置移動機構の一部)
130 生化学反応処理システム

Claims (13)

  1. 生化学反応用の基体であって、
    上記基体の少なくとも一つの表面には、
    上記表面から突出した円筒状の枠体と、
    上記枠体の内側に当該枠体と所定の間隔をあけて設けられ、基体の上記表面からの高さのない円環状の疎水性領域と、が設けられており、
    上記円筒状の枠体と、上記円環状の疎水性領域とは、当該枠体と疎水性領域との間の距離がどの位置でも略等しくなるように、中心軸を共有する構造として設計されており、
    上記円環状の疎水性領域に取り囲まれた領域が、生化学反応用のプローブを固定する固定領域となり、
    基体の上記表面において、上記疎水性領域は、上記枠体と当該疎水性領域との間の領域、及び、当該疎水性領域に取り囲まれた上記領域よりも疎水性の程度が高い、ことを特徴とする生化学反応用基体。
  2. 上記円環状の疎水性領域に取り囲まれた領域に、生化学反応用のプローブが固定されていることを特徴とする請求項1に記載の生化学反応用基体。
  3. 上記枠体の内側の側壁と基体の上記表面とが当該側壁より内側に向かってなす角の大きさが90度を超え180度未満の範囲内である、又は、上記枠体の内側の側壁と基体の表面とが接合する接合領域が隣接する領域と比較して疎水性が高くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生化学反応用基体。
  4. 生化学反応に用いる試薬、又は生化学反応後に行う洗浄に用いる試薬を格納するための試薬溜をさらに備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の生化学反応用基体。
  5. 上記生化学反応用のプローブは、核酸、タンパク質、抗原、又は抗体であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の生化学反応用基体。
  6. 生化学反応用の基体は、生化学反応用の基板であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の生化学反応用基体。
  7. 請求項2に記載の生化学反応用基体と、
    上記生化学反応用基体に対して液体を供給する液体供給部と、
    上記生化学反応用基体上の液体を吸引する液体吸引部と、
    上記生化学反応用基体と上記液体供給部との相対的な位置関係、及び上記生化学反応用基体と上記液体吸引部との相対的な位置関係を変更する位置移動機構と、
    上記液体供給部、上記液体吸引部、及び上記位置移動機構の動作を制御する制御部と、を備え、
    上記制御部は、
    生化学反応を行った後の上記生化学反応用基体における上記枠体に取り囲まれた領域内に位置する基体の表面全体が液体で覆われるように、上記液体供給部から上記液体を供給し、次いで、上記枠体と上記円環状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、当該枠体に取り囲まれた領域を覆う液体を吸引するように、上記液体供給部、上記液体吸引部、及び上記位置移動機構の動作を制御することを特徴とする生化学反応処理システム。
  8. 上記生化学反応用基体を用いた生化学反応を行う生化学反応装置と、上記生化学反応を行った後の上記生化学反応用基体を分析する分析装置と、を備えることを特徴とする請求項7に記載の生化学反応処理システム。
  9. 請求項1から6の何れか一項に記載の生化学反応用基体からの排液方法であって、
    生化学反応用基体に対して、上記枠体に取り囲まれた領域内に位置する基体の表面全体が液体で覆われるように液体を供給する液体供給工程と、次いで、
    上記枠体と上記円環状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、当該枠体に取り囲まれた領域を覆う液体を吸引する液体吸引工程と、を含むことを特徴とする排液方法。
  10. 上記液体吸引工程は、
    上記枠体と上記円環状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、当該枠体に取り囲まれた領域を覆う液体の一部を吸引した後に当該吸引を一旦停止する液体吸引第一工程と、次いで、
    上記枠体と上記円環状の疎水性領域との間の領域の上方を起点にして、上記液体の残りを吸引する液体吸引第二工程と、を含んでなることを特徴とする請求項9に記載の排液方法。
  11. 上記液体吸引第一工程は、疎水性領域上を覆う上記液体が0.1mm以上で0.5mm以下の範囲内の厚さの薄層として残るように、上記液体の一部を吸引することを特徴とする請求項10に記載の排液方法。
  12. 上記生化学反応用基体は、上記円環状の疎水性領域に取り囲まれた領域に、生化学反応用のプローブが固定されているものであり、
    上記液体供給工程では、生化学反応を行った後の生化学反応用基体に対して、上記枠体に取り囲まれた領域内に位置する基体の表面全体が上記液体としての洗浄液で覆われるように当該洗浄液が供給されることを特徴とする請求項9から11の何れか一項に記載の排液方法。
  13. 上記液体供給工程の前に、界面活性剤を含むバッファー溶液を供給し、次いで当該バッファー溶液を除去する予備洗浄工程を少なくとも一回含み、
    上記洗浄液として、予備洗浄工程で用いるバッファー溶液より低濃度で界面活性剤を含むバッファー溶液を用いることを特徴とする請求項12に記載の排液方法。
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