JP6020875B2 - グルタチオンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は酵母によるグルタチオンを製造する方法に関し、更に詳しくはグルタチオンを菌体外に生産する方法に関する。グルタチオンは、食品、医薬品又は化粧品として有用である。
グルタチオンは、システイン、グルタミン酸、及びグリシンの3つのアミノ酸から成るペプチドで、人体だけでなく、他の多くの動物や植物、微生物などの生体内に存在し、活性酸素の消去作用、解毒作用、アミノ酸の代謝など、生体にとって重要な化合物である。そのため医薬品、食品、化粧品産業で注目されている。また、近年、グルタチオンに植物の生長を促進する効果があることの知見も得られるなど、農業を含めたさまざまな分野での用途が期待されている。
グルタチオンは、現在工業的には、酵母を用いた発酵法により生産されている。グルタチオンは酵母の細胞内に蓄積されるため、実際には、酵母を培養し、その菌体中からグルタチオンを抽出する方法が広く用いられている。それ故に、これまで、グルタチオン生産に使用する酵母への突然変異処理(特許文献1〜3)やグルタチオンの合成に関与する酵素を遺伝子組換えにより導入すること(特許文献4〜8)、また、培地中にグルタチオンを構成する3種のアミノ酸であるL−グルタミン酸、L−システイン、グリシンを添加することにより、培養菌体中のグルタチオン含量を向上させてグルタチオン生産性を向上させる試みがなされてきた。しかし、菌体内のグルタチオン含量に限りがあり、また培地中の菌体濃度にも限りがあるため、発酵法では培地液量あたりのグルタチオン生産量は十分ではなかった。
一方、微生物菌体を界面活性剤、有機溶剤、細胞壁溶解酵素などで処理して細胞膜の透過性を高め、その処理菌体をグルタチオンの構成成分であるグルタミン酸、システイン、グリシンと接触させることにより、菌体外にグルタチオンが生産されることが報告されている(特許文献9〜12)。しかしながら、これらの方法において界面活性剤のみの処理ではグルタチオンの生産量は満足のいくものではなく(特許文献10)、また高価なアデノシン−5’−3リン酸(ATP)(特許文献9,12)や細胞壁溶解酵素(特許文献11)を界面活性剤とともに使用する方法は、生産コストがアップし、いずれの方法も工業的には実施しうるものではなかった。
このような背景のもと、菌体外にグルタチオンを生産する方法において、簡便で安価にその生産性を向上させる方法の開発が待望されていた。大腸菌にて、グルタチオンを細胞外に排出する活性を有するタンパク(トランスポーター)が報告されているが(特許文献13)、酵母においては、そのようなグルタチオンのトランスポーターは報告されていない。
特開昭59−151894号公報 特開平03−18872号公報 特開平10−191963号公報 特開昭61−52299号公報 特開昭62−275685号公報 特開昭63−129985号公報 特開昭64−51098号公報 特開平4−179484号公報 特開昭51−144789号公報 特開昭53−94089号公報 特開昭53−94090号公報 特開昭60−27396号公報 WO2008/126784
熊谷英彦:化学と生物,24,135,(1986)
本発明は、効率のよいグルタチオンの製造方法を提供することを目的としている。
上述の課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、酵母においてグルタチオンを菌体外に排出する活性を有するタンパク(トランスポーター)を見出し、これを強発現させることで、グルタチオンを菌体外に高濃度で生産できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の方法は、以下の通りである。
以下の(a)〜(c):
(a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
(b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオンの排出活性を有するタンパク、および
(c)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオンの排出活性を有するタンパク、
からなる群から選択されるタンパクの活性が親株より向上した微生物を培養し、
グルタチオンを培地中に生産、蓄積させる
ことを特徴とするグルタチオンの製造方法。
微生物が、前記タンパクをコードする塩基配列を含むDNAで親株を形質転換して得られる微生物であることが好ましい。
DNAが、以下の(A)〜(C):
(A)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、
(B)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、および
(C)配列表の配列番号2に示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNA、
からなる群から選択されることが好ましい。
微生物が、グルタチオン分解活性が親株より低下した微生物であることが好ましい。
グルタチオン分解活性がγ−グルタミルトランスペプチダーゼの活性であることが好ましい。
微生物が、グルタチオン細胞取り込み活性が親株より低下した微生物であることが好ましい。
グルタチオン細胞取り込み活性がオリゴペプチドトランスポーターの活性であることが好ましい。
オリゴペプチドトランスポーターが以下の(d)〜(f):
(d)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
(e)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン細胞取り込み活性を有するタンパク、および
(f)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン細胞取り込み活性を有するタンパク、
からなる群から選択されることが好ましい。
微生物が、γ−グルタミルシステイン合成酵素(GSHI)またはグルタチオン合成酵素(GSHII)の活性が親株より向上した微生物であることが好ましい。
また、本発明は、
以下の(A)〜(C):
(A)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、
(B)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、および
(C)配列表の配列番号2に示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNA、
からなる群から選択されるDNAにより形質転換して得られる形質転換体に関する。
本発明の方法によれば、界面活性剤などの処理をせず、また高価なATPや細胞壁分解酵素を使用することなく、グルタチオンを菌体外に効率よく生産することが可能となる。
以下、本発明の方法を詳細に説明する。
本発明のグルタチオンの製造方法は、グルタチオンの生産能を有する微生物菌体を用いてグルタチオンを微生物菌体外に生産する場合に、該微生物としてグルタチオンの排出活性が向上した微生物を使用する方法である。
グルタチオンの排出活性が向上した微生物としては、親株と比較してグルタチオンの排出活性を有するタンパクの活性が向上していればよく、特に限定されないが、例えば、グルタチオンの排出活性が向上するように改変された株が挙げられる。
本発明における微生物は、グルタチオンの生産能を有する微生物であり、グルタチオンの排出活性が向上した菌株であれば、特に制限はなく、例えば、酵母、細菌が挙げられ、酵母としてはサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlesbergensis)、サッカロマイセス・フラギリス(Saccharomyces fragilis)、サッカロマイセス・ルーキシー(Saccharomyces rouxii)などのサッカロマイセス属、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンデ
ィダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などのキャンディダ属、シゾサッカロマオセス・ポンべ(Schizosaccaromyces pombe)などのシゾサッカロミセス属、トルロプシス・バーサティリス(Toluropsis versatilis)、トルロプシス・ペトロフィラム(Toluropsis petrophilum)などのトルロプシス属、その他(Pichia)属、ブレタノマイセス(Brettanomyces)属、マイコトルラ(Mycotorula)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ハンゼニュラ(Hansenula)属、エンドマイセス(Endomyces)属などの酵母が挙げられ、細菌としては大腸菌(Escherichia coli)が挙げられる。これら微生物の野生株、突然変異処理や遺伝子操作によりグルタチオンの合成に関与する酵素活性が高められた改良株を使用することができる。中でも本発明者らの検討結果によればサッカロマイセス属のサッカロマイセス・セレビシエ、キャンディダ属のキャンディダ・ユーティリスが好ましい。
グルタチオンの排出活性を有するタンパクとしては、
(a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
(b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオンの排出活性を有するタンパク、
(c)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオンの排出活性を有するタンパク、
などが挙げられる。なお、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列は、酵母(Saccharomyces cerevisiae)の酵素ADP1に由来する。
配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパクは、「Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)」等に記載の公知の方法に準じて調製することができ、グルタチオンを細胞外に排出する活性を有する限り上記タンパクに包含される。
置換、欠失、挿入および/または付加により改変されたアミノ酸配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。また、置換の場合には、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸(同族アミノ酸)であることが好ましい。ここでは、以下に挙げる各群の同一群内のアミノ酸を同族アミノ酸とする。
(第1群:中性非極性アミノ酸)Gly,Ala,Val,Leu,Ile,Met,Cys,Pro,Phe
(第2群:中性極性アミノ酸)Ser,Thr,Gln,Asn,Trp,Tyr
(第3群:酸性アミノ酸)Glu,Asp
(第4群:塩基性アミノ酸)His,Lys,Arg。
上記の記載で複数個のアミノ酸とは、例えば、60個、好ましくは20個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、さらにより好ましくは5個、4個、3個、または2個以下のアミノ酸を意味する。
配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列との配列同一性は、60%以上が好ましいが、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらにより好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
アミノ酸配列の配列同一性は、配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列と評価したいアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を比較総アミノ酸数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
グルタチオンを細胞外に排出する活性を有する限り、配列番号1に記載のアミノ酸配列に、付加的なアミノ酸配列を結合することができる。また、他のタンパク質との融合タンパク質とすることもできる。また、グルタチオンを細胞外に排出する活性を有する限り、ペプチド断片であってもよい。
グルタチオンの排出活性が向上するように改変された株は、UV、エチルメタンスルフォン酸、ニトロソグアニジン、或いはその他放射線等通常変異操作に使われる変異誘発剤による変異処理により得ることが可能であり、また、遺伝子操作的手法で得ることが可能である。例えば、上記(a)〜(c)のいずれか記載のグルタチオンを細胞外に排出する活性を有するタンパクをコードする塩基配列からなるDNAをベクターDNAにクローニングした発現ベクターなどを用いて強発現させる方法、または酵素活性が向上するような変異を有する遺伝子を含むDNAを用いた遺伝子置換方法により取得することができる。強発現させる方法として、例えば、グルタチオンの排出活性を有するタンパクをコードする塩基配列を含むDNAで、親株を形質転換して得られる微生物が挙げられる。
グルタチオンを細胞外に排出する活性を有するタンパクをコードする塩基配列からなるDNAとしては、
(A)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、
(B)配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
(C)配列表の配列番号2に示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNA、
などが挙げられる。なお、配列表の配列番号2に示す塩基配列は、酵母(Saccharomyces cerevisiae)の酵素ADP1をコードする遺伝子に由来する。
ここで、配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、配列表の配列番号2に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。
ハイブリダイゼーションは、「Molecular Cloning, A laboratory manual, second edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)」等に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAをあげることができる。好ましくは65℃で1倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.5倍濃度のSSC溶液で洗浄、さらに好ましくは65℃で0.2倍濃度のSSC溶液で洗浄、最も好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。
以上のようにハイブリダイゼーション条件を記載したが、ハイブリダイゼーション条件はこれらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
上記の条件にてハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号2に示されるDNAとの配列同一性が70%以上、好ましくは74%以上、より好ましくは79%以上、さらに好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上のDNAをあげることができ、コードされるポリペプチドが、上記のグルタチオン排出活性を有する限り、上記DNAに包含される。
ここで、DNAの配列同一性(%)とは、対比される2つのDNAを最適に整列させ、核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で一致した位置の数を比較塩基総数で除し、そして、この結果に100を乗じた数値で表される。
DNAの配列同一性は、例えば、以下の配列分析用ツールを用いて算出し得る:GCG Wisconsin Package(Program Manual for The Wisconsin Package, Version8, 1994年9月, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Medison, Wisconsin, USA 53711; Rice, P. (1996) Program Manual for EGCG Package, Peter Rice, The Sanger Centre, Hinxton Hall, Cambridge, CB10 1RQ, England)、および、the.e.xPASy World Wide Web分子生物学用サーバー(Geneva University Hospital and University of Geneva, Geneva, Switzerland)。
ここで、配列表の配列番号2に示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNAとは、「Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)」等に記載の公知の方法に準じて調製することができる。
置換、挿入、欠失および/または付加により改変された塩基配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種類以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。
上記の記載の複数個の塩基とは例えば150個、好ましくは100個、より好ましくは50個、さらに好ましくは20個、さらにより好ましくは10個、5個、4個、3個、または2個以下の塩基、を意味する。
本発明の実施形態のDNAを宿主微生物内に導入して発現させるために用いるベクターDNAとしては、適切な宿主微生物内で該DNAがコードする遺伝子を発現できるものであればいずれでもよい。このようなベクターDNAとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられる。また、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用され得る。このようなベクターは、作動可能に連結されたプロモーターなどの等の制御因子を含み、制御因子とは、機能的プロモーターおよび、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。 また、作動可能に連結とは、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントと遺伝子が、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプおよび種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
各種生物において利用可能なベクター、プロモーター等に関しては、「微生物学基礎講座8遺伝子工学(共立出版、1987)」などに詳細に記述されている。
グルタチオンの排出活性が向上するように改変された株を遺伝子操作的手法で取得する方法の具体的な一例を以下に示す。宿主微生物のゲノム配列のうち、ADP1をコードしている遺伝子配列の上流領域と相同な配列に制限酵素Aの切断配列を付加した配列をもつDNA−F2を合成する。一方で、ADP1をコードしている遺伝子配列の下流領域と相同な配列に制限酵素Bの切断配列を付加した配列をもつDNA−R2を合成する。次に、宿主微生物のゲノムDNAをテンプレートとして、DNA−F2およびDNA−R2をプライマーとして、PCR増幅を行い、増幅されたDNAを制限酵素Aおよび制限酵素Bで切断し、同様に制限酵素Aおよび制限酵素Bで切断された、選択マーカーをもつベクターに連結して発現用プラスミドを作製し、宿主微生物に導入する。DNAの導入の方法には、形質転換、形質導入、トランスフェクション、コトランスフェクション、エレクトロポレーションなどの方法があり、具体的には、酢酸リチウムを用いる形質転換方法、プロトプラスト法などがある。ADP1遺伝子と選択マーカー遺伝子で形質転換された株は、当該マーカー化合物を含まない選択培地プレートにて、コロニーを形成させることで選抜することができる。
また、グルタチオンの排出活性が向上されるように改変された株は、N−メチル−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホネート(EMS)、UV照射などの通常の変異処理によって取得することもできる。
さらに本発明においては、好ましい実施態様として、グルタチオンの細胞取り込み活性あるいは分解活性が、消失または低下した株において、グルタチオンの排出活性を向上させることで、グルタチオンの菌体外での生産性を向上させることができる。グルタチオンの細胞取り込み活性あるいは分解活性が、消失または低下した株としては、親株と比較してグルタチオンの細胞取り込み活性あるいは分解活性が低下していればよく、特に限定されないが、例えば、グルタチオンの細胞取り込み活性あるいは分解活性が低下または消失されるように改変された株が挙げられる。
グルタチオンの細胞取り込み活性を示すタンパクとして、Saccharomyces cerevisiaeには、グルタチオンに対する親和性の高いグルタチオントランスポーター(GSH−P1;Km=45μM)と、親和性の低いグルタチオントランスポーター(GSH−P2;Km>2mM)の2つの存在が示唆されている(Biosci.Biotechnol. Biochem.(1998)62:1858−1864)。また、実際にオリゴペプチドトランスポーター1(遺伝子はOPT1、HGT1あるいはGSH11と呼ばれる)がクローニングされ、グルタチオンに対して高い親和性(Km=45μM)と取り込み活性を有することが示された(Biosci.Biotechnol.Biochem.(2000)275:13259−13265)。しかしながら、GSH−P1とOPT1遺伝子産物との関連性はこれまでのところ不明である(FEMS Yeast Res. (2002)2:295―305)。
本発明におけるオリゴペプチドトランスポーターは、以下の(d)〜(f):
(d)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
(e)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン細胞取り込み活性を有するタンパク、
(f)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン細胞取り込み活性を有するタンパク、
のいずれかであることが好ましい。
上記の記載で複数個のアミノ酸とは、例えば、60個、好ましくは20個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、さらにより好ましくは4個、3個、2個以下のアミノ酸を意味する。
配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列との配列同一性は、60%以上が好ましいが、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらにより好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
グルタチオンの分解活性を示すタンパクは、特に限定されないが、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(Biochem.J.(2001)359:631−637)であることが好ましい。
本発明におけるγ−グルタミルトランスペプチダーゼは、特に限定されないが、例えば、以下の(g)〜(i):
(g)配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
(h)配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン分解活性を有するタンパク、
(i)配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン分解活性を有するタンパク、
のいずれかであることが好ましい。
上記の記載で複数個のアミノ酸とは、例えば、60個、好ましくは20個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、さらにより好ましくは4個、3個、2個以下のアミノ酸を意味する。
配列表の配列番号8に示すアミノ酸配列との配列同一性は、60%以上が好ましいが、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらにより好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
グルタチオンの細胞取り込み活性あるいは分解活性が低下または消失するように改変された株は、UV、エチルメタンスルフォン酸、ニトロソグアニジン、或いはその他放射線等通常変異操作に使われる変異誘発剤による変異処理により得ることが可能であり、また、遺伝子操作的手法で得ることが可能である。例えば、オリゴペプチドトランスポーター1遺伝子(OPT1遺伝子)あるいはγ−グルタミルトランスペプチダーゼ遺伝子(CIS2遺伝子)の部分配列を欠失し、正常に機能する酵素を産生しないように改変した遺伝子、または酵素活性が低下するような変異を有する遺伝子を含むDNAを用いた遺伝子置換により取得することができる。
グルタチオンの細胞取り込み活性あるいは分解活性が低下または消失するように改変された株の遺伝子操作的手法による取得法の具体的な一例を以下に示す。宿主微生物のゲノム配列のうち、OPT1あるいはCIS2をコードしている遺伝子配列の上流領域と相同な配列および選択マーカー遺伝子の5’領域と相同な配列を結合させたDNA−F1を合成する。一方で、OPT1あるいはCIS2をコードしている遺伝子配列の下流領域と相同な配列および選択マーカー遺伝子の3’領域と相同な配列を結合させたDNA−R1を合成する。次に、選択マーカー遺伝子を含むプラスミドをテンプレートとし、DNA−F1およびDNA−R1をプライマーとして、PCR増幅を行い、増幅されたDNAを宿主微生物に導入する。DNAの導入の方法には、形質転換、形質導入、トランスフェクション、コトランスフェクション、エレクトロポレーションなどの方法があり、具体的には、酢酸リチウムを用いる形質転換方法、プロトプラスト法などがある。OPT1遺伝子あるいはCIS2遺伝子と選択マーカー遺伝子が組み換わった目的の遺伝子組み換え株は、当該マーカー化合物を含まない選択培地プレートにて、コロニーを形成させることで選抜することができる。
さらに本発明においては、別の好ましい実施態様として、グルタチオンの合成活性が増加した株において、グルタチオンの排出活性を向上させることで、グルタチオンの菌体外での生産性を向上させることができる。グルタチオン合成活性が増加した株としては、親株と比較してグルタチオンの合成活性が増加していればよく、特に限定されないが、例えば、グルタチオンの合成活性が増加されるように改変された株が挙げられる。
グルタチオン合成活性を有するタンパクは、特に限定されないが、γ−グルタミルシステイン合成酵素(GSHI)、又はグルタチオン合成酵素(GSHII)であることが好ましい。
本発明におけるγ−グルタミルシステイン合成酵素は、特に限定されないが、例えば、以下の(j)〜(l):
(j)配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
(k)配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン合成活性を有するタンパク、
(l)配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン合成活性を有するタンパク、
のいずれかであることが好ましい。
本発明におけるグルタチオン合成酵素は、特に限定されないが、例えば、以下の(m)〜(o):
(m)配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
(n)配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン合成活性を有するタンパク、
(o)配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列と60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン合成活性を有するタンパク、
のいずれかであることが好ましい。
上記の記載で複数個のアミノ酸とは、例えば、60個、好ましくは20個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、さらにより好ましくは4個、3個、2個以下のアミノ酸を意味する。
配列表の配列番号9或いは10に示すアミノ酸配列との配列同一性は、60%以上が好ましいが、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がさらにより好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
グルタチオンの合成活性が向上するように改変された株の遺伝子操作的手法による取得法の具体的な一例を以下に示す。宿主微生物のゲノム配列のうち、γ−グルタミルシステイン合成酵素(GSHI)および/またはグルタチオン合成酵素(GSHII)をコードしている遺伝子配列の上流領域と相同な配列に制限酵素Cの切断配列を付加した配列をもつDNA−FGを合成する。一方で、γ−グルタミルシステイン合成酵素および/またはグルタチオン合成酵素をコードしている遺伝子配列の下流領域と相同な配列に制限酵素Dの切断配列を付加した配列をもつDNA−RGを合成する。次に、宿主微生物のゲノムDNAをテンプレートとして、DNA−FGおよびDNA−RGをプライマーとして、PCR増幅を行い、増幅されたDNAを制限酵素Cおよび制限酵素Dで切断し、同様に制限酵素Cおよび制限酵素Dで切断された選択マーカーをもつベクターに連結したプラスミドを作製し、宿主微生物に導入する。DNAの導入の方法には、形質転換、形質導入、トランスフェクション、コトランスフェクション、エレクトロポレーションなどの方法があり、具体的には、酢酸リチウムを用いる形質転換方法、プロトプラスト法などがある。γ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子および/またはグルタチオン合成酵素遺伝子と選択マーカー遺伝子が形質転換された株は、当該マーカー化合物を含まない選択培地プレートにて、コロニーを形成させることで選抜することができる。
また、グルタチオンの合成活性が向上されるように改変された株は、N−メチル−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホネート(EMS)、UV照射などの通常の変異処理によって取得することもできる。
グルタチオンの排出活性が向上した微生物の培養は、通常の微生物の培養と同様に行えばよい。すなわち炭素源、窒素源、無機物その他の栄養等をほどよく含有しておれば、合成培地、半合成培地、天然(複合)培地のいずれも使用可能である。
炭素源としてはグルコース、グリセロール、フラクトース、シュクロース、マルトース、マンノース、マニトール、キシロース、ガラクトース、デンプン、デンプン加水分解物液、糖蜜などの種々の炭水化物原料が使用できる。またピルビン酸、酢酸、乳酸などの各種有機酸、アスパラギン酸、アラニンなどの各種アミノ酸類も使用可能である。
窒素源としてはアンモニアあるいは塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種の無機および有機アンモニウム塩類、あるいは尿素その他の窒素含有化合物ならびにペプトン、NZアミン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、フィッシュミールあるいはその消化物、脱脂大豆あるいはその消化物や加水分解物などの窒素性有機物質あるいはアスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニンなどの各種アミノ酸が使用可能である。
更に無機物としてはリン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが使用できる。
培養は振盪培養、通気攪拌深部培養などの好気的培養条件下で実施する。培養時pHは、好ましくは3.0〜8.0、より好ましくは4.0〜6.0、最も好ましくは5.0に制御される。pH制御の中和剤としてはアンモニア水、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウムなどが使用可能である。好気的培養時の培地への空気供給量は、培地1Lに対し、好ましくは0.2L/分以上、より好ましくは0.5L/分以上、さらに好ましくは1L/分以上である。また、総容量2Lのジャーファーメンターを使用して培養する場合、好気的培養条件としては上記通気量に加え、攪拌数は好ましくは200rpm以上、より好ましくは300rpm以上、さらに好ましくは400rpm以上である。また、培養時の温度は、好ましくは20〜45℃、より好ましくは25〜35℃、さらに好ましくは28〜32℃である。培地中への初期細胞濃度(仕込み濃度)は酵母の種類、培地組成などにより異なるが、初発濁度(OD600)は好ましくは0.01〜2.0、より好ましくは0.02〜1.0、さらに好ましくは0.1〜0.4である。グルコースなどの上記炭素源に関しては培養初期に一括に仕込んで培養する回分方式、培養期間を通じて少しずつ添加する半回分方式のいずれの方式も適用可能であるが、本発明者らの検討結果によれば、使用する微生物にもよるが、半回分方式の方が増殖速度が向上し、最終菌濃度もより高位となり、菌体内のグルタチオン合成関連酵素の活性も高まるのでより好ましい。半回分方式でグルコースなどの炭素源の流加速度を決定する指標としては培養液の濁度、酸素消費速度、二酸化炭素発生速度、pH調整用中和剤の消費量などが有効利用でき、使用する酵母に合わせて適切な指標を選び、その変化に対応させて炭素源の流加速度を変化させることにより、酵母培養の最適化が図れ、最終菌濃度およびグルタチオン合成関連酵素の活性向上、その結果グルタチオンの生産性向上が実現できる。
グルタチオンの排出活性が向上した微生物を培養することにより、グルタチオンを培地中に生産、蓄積させることができる。このように、培地中に生産されたグルタチオンを含む培養液からは、通常の方法でグルタチオンを含有する溶液を得ることができる。例えば、培養液から濾過や遠心分離により菌体を除去することによりグルタチオンを含有する溶液を得ることができる。また、培養液に対し、熱水抽出、アルカリ抽出法、酵素分解法、自己消化法、物理的な破砕操作などを行うことにより、菌体内に存在するグルタチオンを抽出することもできる。これらの方法を組み合わせることで、菌体内外に生産されたグルタチオンを含有する液体を得ることができる。さらに、得られたグルタチオンを含有する溶液から、通常の方法、例えば銅塩沈殿、またはイオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィ―などの手法で精製することにより、グルタチオンを高濃度に含有する分画を得ることができる。また、グルタチオンを含有する分画から、真空凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライなどの手法によりグルタチオン粉末を得ることができ、さらにアルコール沈殿操作等を必要に応じて数回繰り返すことにより、高純度の精製グルタチオン粉末を得ることができる。
[製造例1]ADP1の発現を強化した株の作製
Putative ATP−dependent permease of the ABC transporter family of proteins遺伝子 (ADP1)をSaccharomyces cerevisiae YPH499株のゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーとして、5’−GGCCGCTAGCATGGGAAGTCATCGACGTTATC−3’(配列番号4)および5’−GGCCGTCGACCTACTTTTGTTCCACAACTATCC−3’(配列番号5)を用いてPCR増幅を行い、増幅物をNheIおよびSalIで消化して、配列表の配列番号2に示す塩基配列を含む、ADP1遺伝子NheI−SalI断片を得た。この断片を文献(J.Biochem.(2009)145:701−708)に記載のpGK405のNheI−SalI消化部位に連結し、ADP1発現プラスミドpGK405−ADP1を得た。得られたプラスミドpGK405−ADP1を制限酵素KasIで消化した。Saccharomyces cerevisiae YPH499株を宿主酵母株とし、形質転換を行い、形質転換体YPH499/pGK405−ADP1株を得た。
[製造例2]ADP1増強+OPT1破壊+CIS2破壊株の作製
YPH499株のゲノム配列のうち、γGTPをコードしている遺伝子配列CIS2の上流領域50塩基と相同な配列およびHIS3遺伝子の開始コドンから25塩基と相同な配列を結合させたDNA−FHを合成する。一方で、CIS2遺伝子配列の下流領域50塩基と相同な配列およびHIS3遺伝子の終止コドンから25塩基と相同な配列を結合させたDNA−RHを合成する。次に、HIS3遺伝子を含むプラスミドをテンプレートとし、DNA−FHおよびDNA−RHをプライマーとして、PCR増幅を行い、増幅されたDNAを酢酸リチウムを用いた形質転換方法によりYPH499株に導入し、組換え酵母YPH499/ΔγGTP株を得た。さらに、YPH499株のゲノム配列のうち、グルタチオンの取り込みトランスポーターをコードしている遺伝子配列OPT1の上流領域50塩基と相同な配列およびURA3遺伝子の開始コドンから25塩基と相同な配列を結合させたDNA−FUを合成する。一方で、OPT1遺伝子配列の下流領域50塩基と相同な配列およびURA3遺伝子の終止コドンから25塩基と相同な配列を結合させたDNA−RUを合成する。次に、URA3遺伝子を含むプラスミドをテンプレートとし、DNA−FUおよびDNA−RUをプライマーとして、PCR増幅を行い、増幅されたDNAをYPH499/ΔγGTP株に導入した。この結果、組換え酵母YPH499/ΔγGTP、ΔOPT1株を得た。OPT1遺伝子とURA3遺伝子が組み換わった目的の遺伝子組み換え株は、ウラシルを含まない選択培地プレートにて、コロニーを形成させることで選抜することができる。
また、製造例1で取得したpGK405−ADP1を制限酵素KasIで消化し、YPH499/ΔγGTP、ΔOPT1株を宿主酵母株とし、形質転換を行い、形質転換体YPH499/ADP1、ΔγGTP、ΔOPT1株を得た。
[製造例3]ADP1増強+OPT1破壊+CIS2破壊+GSHI増強+GSHII増強株の作製
YPH499株のゲノム配列のうち、γ−グルタミルシステイン合成酵素およびグルタチオン合成酵素をコードしている遺伝子配列GSHIおよびGSHIIの上流領域25塩基と相同な配列DNA−FG1およびDNA−FG2を合成した。一方で、GSHIおよびGSHII遺伝子配列終止コドンから25塩基と相同な配列DNA−RG1およびDNA−RG2を合成した。次に、YPH499株のゲノムからクローニングしたGSHI遺伝子を含むプラスミドpGK402−GCS(Appl.Microbiol.Biotechnol.(2011)89:1417−1422)をKpnIおよびSacIで消化して、GSHI遺伝子KpnI−SacI断片を得た。この断片をタカラバイオ社製のpAUR101のKpnI−SacI消化部位に連結し、pAUR101−GSHIを得た。次に、YPH499株のゲノムからクローニングしたGSHII遺伝子を含むプラスミドpGK405−GS(Appl.Microbiol.Biotechnol.(2011)89:1417−1422)をテンプレートにして、5’−GGCCGCTAGCAGCTTTAACGCAGAAT−3’(配列番号6)および5’−GGCCGCATGCGGGTACCGGGCCCCCCCTCGAGAAAG−3’(配列番号7)を用いてPCR増幅を行い、増幅物をSphIで消化して、GSHII遺伝子SphI断片を得た。この断片をpAUR101―GSHIのSphI消化部位に連結し、GSHI、GSHII発現プラスミドpAUR101−GSHI、GSHIIを得た。得られたプラスミドpAUR101−GSHI、GSHIIを制限酵素BsiWIで消化し、YPH499/ADP1、ΔγGTP、ΔOPT1株を宿主酵母株とし、形質転換を行い、Aureobasidin Aに対する抵抗性を指標に形質転換体YPH499/ADP1、ΔγGTP、ΔOPT1、GSHI、GSHII株を得た。
[実施例1]ADP1の発現を強化した株によるグルタチオンの生産
製造例1で取得したADP1の発現を強化したYPH499/pGK405−ADP1株をSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories製)、20g/Lグルコース)5mlで30℃、16時間振盪することにより種母培養を行った。次にSD培地20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.15となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間および48時間培養を行い、培地中(菌体外)のグルタチオン濃度を測定した。その結果を表1に示す。
[比較例1]
ADP1の発現を強化したYPH499/pGK405−ADP1株に代えて、親株であるSaccharomyces cerevisiae YPH499株を使用した以外は、実施例1と同様の操作で培養を行い、培地中(菌体外)のグルタチオン濃度を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0006020875
表1からわかるように、ADP1の発現を強化することにより、培地中のグルタチオン蓄積量が向上することから、ADP1遺伝子産物がグルタチオンを菌体外に排出するグルタチオン輸送活性を有していることが判明した。
尚、培地中(菌体外)のグルタチオン濃度は、培地0.2ml〜1mlを遠心分離し、得られた上清を水にて適宜希釈し、DTNB法にて分析した。
[実施例2]ADP1の発現を強化し、グルタチオン分解活性およびグルタチオン細胞取り込み活性を低下させた株によるグルタチオンの生産
製造例2で取得した、γGTP遺伝子、OPT1遺伝子を破壊し、ADP1の発現を強化した、YPH499/ADP1、ΔγGTP、ΔOPT1株をSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories製)、20g/Lグルコース)5mlで30℃、16時間振盪することにより種母培養を行った。次にSD培地20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.15となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間および48時間培養を行い、培地中(菌体外)のグルタチオン濃度を実施例1記載の方法で測定した。その結果を表2に示す。
[比較例2]
YPH499/ADP1、ΔγGTP、ΔOPT1株に代えて、親株であるSaccharomyces cerevisiae YPH499株を使用した以外は、実施例2と同様の操作で培養を行い、培地中(菌体外)のグルタチオン濃度を測定した。その結果を表2に示す。
[比較例3]
YPH499/ADP1、ΔγGTP、ΔOPT1株に代えて、製造例2で取得したYPH499/ΔγGTP、ΔOPT1株を使用した以外は、実施例2と同様の操作で培養を行い、培地中(菌体外)のグルタチオン濃度を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0006020875
表2からわかるように、γGTP遺伝子およびOPT1遺伝子を破壊し、グルタチオンの分解および細胞取り込み活性を低下させることで、培地中のグルタチオン濃度は、親株より向上し、これに加えてADP1遺伝子発現を強化することで、培地中のグルタチオン濃度はさらに向上した。このことから、ADP1遺伝子産物がグルタチオンを菌体外に排出するグルタチオン輸送活性を有していることを確認できた。
[実施例3]ADP1の発現を強化し、グルタチオン分解活性およびグルタチオン細胞取り込み活性を低下させ、GSHIおよびGSHIIの発現を強化した株によるグルタチオンの生産
製造例3で取得した、γGTP遺伝子、OPT1遺伝子を破壊し、ADP1遺伝子、GSHI遺伝子、GSHII遺伝子の発現を強化した、YPH499/ADP1、ΔγGTP、ΔOPT1、GSHI、GSHII株をSD培地(6.7g/L Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco laboratories製)、20g/Lグルコース)5mlで30℃、16時間振盪することにより種母培養を行った。次にSD培地20mlを含むバッフル付き三角フラスコにOD600=0.15となるよう植菌し、30℃、攪拌150rpmの条件で24時間および48時間培養を行い、培地中(菌体外)のグルタチオン濃度を実施例1記載の方法で測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0006020875
表3からわかるように、GSHI遺伝子、GSHII遺伝子の発現を強化することで、実施例2と比較しても、培地中のグルタチオン濃度はさらに向上した。このことから、グルタチオン合成系が強化されることにより、グルタチオンの合成量が増加し、それに伴ってグルタチオンの菌体外への排出量が増加することが確認できた。

Claims (10)

  1. 以下の(a)〜(c):
    (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
    (b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオンの排出活性を有するタンパク、および
    (c)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオンの排出活性を有するタンパク、
    からなる群から選択されるタンパクの活性が親株より向上した酵母を培養し、
    グルタチオンを培地中に生産、蓄積させる
    ことを特徴とするグルタチオンの製造方法。
  2. 酵母が、前記タンパクをコードする塩基配列を含むDNAで親株を形質転換して得られる酵母である、
    請求項1に記載のグルタチオンの製造方法。
  3. DNAが、以下の(A)〜(C):
    (A)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、
    (B)配列表の配列番号2に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNA、および
    (C)配列表の配列番号2に示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNA、
    からなる群から選択される、
    請求項2に記載のグルタチオンの製造方法。
  4. 酵母が、グルタチオン分解活性が親株より低下した酵母である
    請求項1〜3のいずれかに記載のグルタチオンの製造方法。
  5. グルタチオン分解活性がγ−グルタミルトランスペプチダーゼの活性である
    請求項4に記載のグルタチオンの製造方法。
  6. 酵母が、グルタチオン細胞取り込み活性が親株より低下した酵母である
    請求項1〜5のいずれかに記載のグルタチオンの製造方法。
  7. グルタチオン細胞取り込み活性がオリゴペプチドトランスポーターの活性である
    請求項6に記載のグルタチオンの製造方法。
  8. オリゴペプチドトランスポーターが以下の(d)〜(f):
    (d)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列を有するタンパク、
    (e)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン細胞取り込み活性を有するタンパク、および
    (f)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルタチオン細胞取り込み活性を有するタンパク、
    からなる群から選択される、
    請求項7に記載のグルタチオンの製造方法。
  9. 酵母が、γ−グルタミルシステイン合成酵素(GSHI)またはグルタチオン合成酵素(GSHII)の活性が親株より向上した酵母である
    請求項1〜8のいずれかに記載のグルタチオンの製造方法。
  10. 以下の(A)〜(C):
    (A)配列表の配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、
    (B)配列表の配列番号2に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNA、および
    (C)配列表の配列番号2に示す塩基配列において1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されたDNA、
    からなる群から選択されるDNAにより形質転換して得られる酵母
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