JP6040100B2 - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、自動二輪車に装着される空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、タイヤのトレッドの改良に関する。
自動二輪車が旋回する時には、この自動二輪車に遠心力が働く。旋回には、この遠心力につり合うコーナリングフォースが必要である。このため、旋回時にライダーは、自動二輪車を内側へ傾斜させる。この傾斜によって生じるキャンバースラストにより、旋回が達成される。旋回を容易にさせる目的で、自動二輪車用のタイヤは曲率半径の小さなトレッドを備えている。
自動二輪車が直進走行する時には、自動二輪車はほぼ直立しているため、トレッドのセンター領域が接地する。この時には、自動二輪車は高速走行されることが多いため、タイヤには走行安定性が求められる。一方自動二輪車が旋回する時には、自動二輪車は傾斜しているため、トレッドのショルダー領域が接地する。このときは、タイヤに加わる横力が大きくなるため、タイヤには高いグリップ力が必要となる。これらのことを考慮して、トレッドの領域毎に異なるゴムを使用するタイヤが、特開2005−271760公報、特開2007−131112公報、特開2008−302817公報及び特開2010−111163公報に開示されている。
特開2005−271760公報で開示されたタイヤでは、トレッドのセンター領域に高硬度のゴムが用いられている。ショルダー領域は、高硬度のゴムの半径方向外側に低硬度のゴムが積層された二層構造とされている。ショルダー領域の表面は、低硬度ゴムより構成されている。
特開2007−131112号公報で開示されたタイヤでは、トレッドのセンター領域は高い損失正接(tanδとも称される)のゴムで構成され、ショルダー領域は低い損失正接のゴムで構成されている。
特開2008−302817公報及び特開2010−111163公報で開示されたタイヤでは、トレッドが、センターに位置する領域と、ここからショルダー側に位置するN個の領域とを備えている。センター領域のゴム硬度が最も高く、ショルダー側に位置する領域ほど、そのゴム硬度が低くされている。
特開2005−271760公報 特開2007−131112公報 特開2008−302817公報 特開2010−111163公報
自動二輪車は、大きく傾斜して旋回する場合(フルバンク時と称する)及び比較的緩やかな傾斜で旋回する場合(単に「旋回時」と称する)がある。フルバンク時には、ショルダー領域が主に接地する。ショルダー領域には、他の部分に比べ、最も高いグリップ力が求められる。一方、旋回時には、タイヤのセンター領域とショルダー領域との境界付近が主に接地する。この境界付近はミドル領域と称される。ミドル領域にも、旋回の横力に耐えるだけのグリップ力が求められる。また、ミドル領域は、自動二輪車が旋回するたびに地面と接触する。ミドル領域は、直進からフルバンクに移行する際にも地面と接触する。通常、ミドル領域は、ショルダー領域に比べ、頻繁に接地する。しかも、高速旋回時や旋回からの加速時には、このミドル領域に大きな荷重がかかる。このため、ミドル領域には、グリップ力に加え、高い耐摩耗性が要求される。
特開2005−271760公報で開示されたタイヤでは、ミドル領域の表面は、ショルダー領域用の低硬度ゴム又はセンター領域用の高硬度ゴムのいずれかで構成される。ミドル領域の表面が低硬度ゴムで構成された場合は、前述の荷重のため、この表面は短期間で摩耗する。この表面の摩耗は、旋回時のグリップ力の低下を招来する。一方、ミドル領域が高硬度ゴムで構成されたタイヤでは、旋回時に充分なグリップ力が得られない。
特開2007−131112公報に開示されたタイヤでも、同じ課題が残る。ミドル領域が高い損失正接のゴムで構成されると、短期間でその表面が摩耗する。一方この領域が低い損失正接のゴムで構成されると、旋回時に充分なグリップ力が得られない。
特開2008−302817公報及び特開2010−111163公報に開示されたタイヤでは、ミドル領域は、センター領域より低い硬度、かつ、ショルダー領域より高い硬度のゴムで構成される。しかし、単一のゴムでは、高いグリップ力と耐摩耗性を両立させることは困難である。
本発明の目的は、旋回走行、フルバンク走行及び直進走行の性能に優れるとともにトレッドの耐摩耗性に優れる自動二輪車用タイヤの提供にある。
本発明に係る自動二輪車用空気入りタイヤは、その表面がトレッド面をなすトレッドを備えている。このトレッドは、第一ゴム、第二ゴム及び第三ゴムを有している。このトレッドは、センターに位置する中央部、それぞれがこの中央部の軸方向外側に位置する一対の中間部、及びそれぞれが各中間部の軸方向外側に位置する一対の端部を備えている。この中央部は、上記第一ゴムを有している。この中間部は、上記第一ゴム、この第一ゴムの半径方向外側に積層された上記第三ゴム、及びこの第三ゴムの半径方向外側に積層された上記第二ゴムを有している。この端部は、上記第一ゴム及びこの第一ゴムの半径方向外側に積層された上記第三ゴムを有している。上記第一ゴムの損失正接LT1は上記第二ゴムの損失正接LT2より低く、かつ、この損失正接LT2は上記第三ゴムの損失正接LT3より低い。上記第一ゴムの硬さH1は第二ゴムの硬さH2より高く、かつ、この硬さH2は第三ゴムの硬さH3よりも高い。
好ましくは、上記損失正接LT1は0.23以上0.25以下であり、上記損失正接LT2は0.25以上0.35以下であり、上記損失正接LT3は、0.28以上0.49以下である。
好ましくは、上記硬さH1は37以上55以下であり、上記硬さH2は33以上43以下であり、上記硬さH3は30以上34以下である。
好ましくは、上記トレッド面に沿って計測される上記中央部の長さWcと、上記トレッド面の長さWとの比(Wc/W)は0.15以上0.30以下であり、上記トレッド面に沿って計測される上記一対の端部の長さの合計値Weと、このトレッド面の長さWとの比(We/W)は0.10以上0.20以下である。
本発明に係るタイヤは、ミドル領域に対する上記課題に対応するための「中間部」を備える。この中間部の表面は、第二ゴムより構成される。第二ゴムの損失正接は、第一ゴムの損失正接より高く、第三ゴムの損失正接より低い。また、第二ゴムの硬さは、第一ゴムの硬さより低く、第三ゴムの硬さより高い。第二ゴムは、中程度の硬さかつ中程度の損失正接を有する。このゴムは、中間部の耐摩耗性の向上に寄与する。この中間部を備えたタイヤは、旋回時のトレッド面の摩耗によるグリップ力の低下が抑えられる。また、この第二ゴムの半径方向内側には、硬さが低くかつ損失正接が高い第三ゴムが存在する。この第三ゴムは、グリップ力の向上に寄与する。この中間部を有するタイヤは、旋回時に高いグリップ力を有する。さらに、この第三ゴムの半径方向内側には、硬さが高くかつ損失正接が低い第一ゴムが存在する。この第一ゴムは、中間部の剛性の向上に寄与する。この中間部を備えたタイヤは、旋回時の走行安定性に優れる。タイヤのミドル領域をこの中間部で構成することで、旋回時の耐摩耗性、グリップ力及び走行安定性に優れたタイヤが得られる。
このタイヤは、センター領域を構成するための「中央部」を備える。この中央部は、硬さが高くかつ損失正接が低い第一ゴムから構成されている。これにより、中央部は、大きな剛性を有する。この中央部を備えたタイヤは、直進時の走行安定性に優れる。さらにこのタイヤは、ショルダー領域を構成するための「端部」を備える。この端部の表面は、硬さが低くかつ高損失正接が高い第三ゴムから構成されている。表面が第三ゴムで構成された端部のグリップ力は大きい。この端部を備えたタイヤは、フルバンク時において、充分なグリップ力を有する。
本発明によれば、旋回走行、フルバンク走行及び直進走行の性能に優れるとともにトレッドの耐摩耗性に優れる自動二輪車用タイヤが提供されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部が示された断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、インナーライナー12、ベルト14、バンド16及びチェーファー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、自動二輪車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を形成する。図示されていないが、トレッド面20には、溝が刻まれている。この溝により、トレッドパターンが形成されている。なお、このトレッド4に溝が刻まれなくてもよい。
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。
ビード8は、サイドウォール6から半径方向略内向きに延びている。ビード8は、コア22と、このコア22から半径方向外向きに延びるエイペックス24とを備えている。コア22はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス24は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス24は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、第一プライ10a及び第二プライ10bからなる。第一プライ10a及び第二プライ10bは、トレッド4及びサイドウォール6の内面に沿って延在している。第一プライ10aは、半径方向において、カーカス10の内側部分をなす。第一プライ10aは、コア22の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。第二プライ10bは、第一プライ10aの半径方向外側に位置する。第二プライ10bは、第一プライ10aと積層されている。
図示されないが、それぞれのカーカスプライは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、1枚のプライから形成されてもよい。
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス10と積層されている。ベルト14は、カーカス10を補強する。ベルト14は、内側層14a及び外側層14bからなる。図示されていないが、内側層14a及び外側層14bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層14aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層14bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。
バンド16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。バンド16は、ベルト14の半径方向外側に位置している。バンド16は、ベルト14に積層されている。バンド16は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド16は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。バンド16は、タイヤ2の半径方向の剛性に寄与しうる。バンド16は、走行時に作用する遠心力の影響を抑制しうる。このタイヤ2は、高速安定性に優れる。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト14及びバンド16は、補強層を構成している。ベルト14のみから、補強層が構成されてもよい。バンド16のみから、補強層が構成されてもよい。
インナーライナー12は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー12は、カーカス10の内面に接合されている。インナーライナー12は、架橋ゴムからなる。インナーライナー12には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー12の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー12は、タイヤ2の内圧を保持する。
図1に示されるように、このトレッド4は第一ゴム26、第二ゴム28及び第三ゴム30を有している。また、このトレッド4は、中央部、一対の中間部及び一対の端部を備えている。図1において、符号Cは中央部、符号Mは中間部、符号Eは端部を表す。
中央部Cは、トレッド4のセンターに位置している。中央部Cは、上記第一ゴム26を有している。中央部Cは、上記第一ゴム26より構成されている。この第一ゴム26は、バンド16の半径方向外側に積層されている。この第一ゴム26は、中央部Cのトレッド面20を形成している。
一対の中間部Mは、それぞれが中央部Cの軸方向外側に位置している。図1には、これら一対の中間部Mのうちの一方のみが示されている。もう一方の中間部Mも、これと同じ構造である。中間部Mは、上記第一ゴム26、上記第二ゴム28及び上記第三ゴム30を有している。中間部Mは、上記第一ゴム26、上記第二ゴム28及び上記第三ゴム30より構成されている。この第一ゴム26は、バンド16の半径方向外側に積層されている。この第三ゴム30は、この第一ゴム26の半径方向外側に積層されている。この第二ゴム28は、この第三ゴム30の半径方向外側に積層されている。この第二ゴム28は、中間部Mのトレッド面20を形成している。
一対の端部Eは、それぞれが各中間部Mの軸方向外側に位置している。図1には、これら一対の端部Eのうちの一方のみが示されている。もう一方の端部Eも、これと同じ構造である。端部Eは、上記第一ゴム26及び上記第三ゴム30を有している。端部Eは、上記第一ゴム26及び上記第三ゴム30より構成されている。この第一ゴム26は、バンド16の半径方向外側に積層されている。この第三ゴム30は、この第一ゴム26の半径方向外側に積層されている。この第三ゴム30は、端部Eのトレッド面20を形成している。
図1で示されるように、中央部Cの第一ゴム26、中間部Mの第一ゴム26及び端部Eの第一ゴム26はつながっている。換言すれば、第一ゴム26は、中央部Cから端部Eまで延在している。また、中間部Mの第三ゴム30と端部Eの第三ゴム30はつながっている。換言すれば、第三ゴム30は中間部Mから端部Eまで延在している。
上述のとおり、本実施形態では、上記第一ゴム26はバンド16の半径方向外側に積層されている。この第一ゴム26とバンド16との間に、架橋ゴムからなるベース層が存在してもよい。
上記第一ゴム26、第二ゴム28及び第三ゴム30は、それぞれ架橋されたゴム組成物(架橋ゴム)である。第一ゴム26の損失正接LT1は、第二ゴム28の損失正接LT2より低く、第二ゴム28の損失正接LT2は、第三ゴム30の損失正接LT3より低い。また、第一ゴム26の硬さH1は、第二ゴム28の硬さH2より高く、第二ゴム28の硬さH2は、第三ゴム30の硬さH3より高い。
本発明において、上記損失正接LT1、LT2及びLT3は、「JIS K 6394」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所製の「VESF−3」
初期歪み:10%
振幅:±2.5%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:100℃
本発明において、上記硬さH1、H2及びH3はJIS−A硬さである。この硬さは、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬さは、図1に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
以下、このタイヤ2の製造方法が示される。
図示されないが、このタイヤ2の製造では、フォーマーにインナーライナー12、カーカス10、ベルト14が順次巻かれる。このベルト14の上に、コードとトッピングゴムとからなるリボンが螺旋状に巻かれ、ジョイントレス構造を有するバンド16が形成される。
このバンド16の上に、第一ゴム26のためのゴム組成物からなる第一ストリップ、第二ゴム28のためのゴム組成物からなる第二ストリップ及び第三ゴム30のためのゴム組成物からなる第三ストリップがそれぞれ螺旋状に巻かれる。これらのストリップは、実質的に周方向に延在する。これらのストリップは、順次積層される。こうして、ローカバーが得られる。なお、第一ストリップから第三ストリップまでの巻き方、各ストリップの巻く順番及び巻く厚みは、前述のトレッド4の構成によって、適宜調整される。
このローカバーは加硫機のモールドに投入される。この加硫機では、モールドの内側にブラダーが設けられている。投入のとき、ブラダーは収縮している。ブラダーの内部にガスが充填され、ブラダーは膨張する。ローカバーは、ブラダーによりモールドのキャビティー面に押しつけられる。ローカバーは、モールドにて、加圧および加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱により、ローカバーのゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。第一ストリップが巻かれた層からは、第一ゴム26が得られる。第二ストリップが巻かれた層からは、第二ゴム28が得られる。第三ストリップが巻かれた層からは、第三ゴム30が得られる。このタイヤ2では、これら3種類のストリップが巻かれることで、中央部C、中間部M及び端部Eが形成される。このトレッド4の製造は容易である。
以下では、本発明の作用効果が説明される。
自動二輪車の旋回時には、タイヤ2のミドル領域が主に接地する。このタイヤ2では、このとき中間部Mが接地する。高速旋回時や旋回からの加速時には、この中間部Mに大きな荷重がかかる。本発明に係るタイヤ2では、中間部Mの表面は、第二ゴム28より構成される。前述したとおり、第二ゴム28の損失正接LT2は、第一ゴム26の損失正接LT1より高く、第三ゴム30の損失正接LT3より低い。また、第二ゴム28の硬さH2は、第一ゴム26の硬さH1より低く、第三ゴム30の硬さH3より高い。第二ゴム28は、中程度の硬さかつ中程度の損失正接を有する。このゴムは、耐摩耗性に優れる。換言すれば、この中間部Mは、耐摩耗性に優れる。この中間部Mを備えるタイヤ2では、高速旋回時や旋回からの加速時に、大きな荷重が中間部Mにかかっても、トレッド面20の摩耗による旋回時のグリップ力の低下が抑制される。
自動二輪車用の旋回時には、自動二輪車は傾斜している。このときは、タイヤ2に加わる横力が大きくなるため、この中間部Mには、高いグリップ力が要求される。このタイヤ2の中間部Mでは、上記第二ゴム28の半径方向内側に、第三ゴム30が存在する。第三ゴム30の損失正接LT3は、第一ゴム26及び第二ゴム28の損失正接に比べて高く、第三ゴム30の硬さH3は、第一ゴム26及び第二ゴム28の硬さに比べて低い。この第三ゴム30の高い損失正接及び低い硬さは、中間部Mのグリップ力の向上に寄与する。この中間部Mを備えるタイヤ2は、旋回時に高いグリップ力を有する。
この中間部Mでは、上記第三ゴム30の半径方向内側に、第一ゴム26が存在する。第一ゴム26の損失正接LT1は、第二ゴム28及び第三ゴム30の損失正接に比べて低く、第一ゴム26の硬さH1は、第二ゴム28及び第三ゴム30の硬さに比べて高い。この中間部Mは、低い損失正接かつ高い硬さを有する第一ゴム26を備えるため、この中間部Mは充分な剛性を有する。この中間部Mを有するタイヤ2は、旋回時の走行安定性に優れる。
自動二輪車の直進時には、タイヤ2のセンター領域が主に接地する。このタイヤ2では、このとき中央部Cが接地する。直進時には、自動二輪車は高速走行されることが多いため、タイヤ2には高い走行安定性が求められる。また、加速時及び減速時には、中央部Cには大きな荷重がかかる。このため、中央部Cには、高い耐摩耗性が要求される。本発明に係るタイヤ2では、中央部Cは、低い損失正接かつ高い硬さを有する第一ゴム26より構成される。この第一ゴム26を有する中央部Cは、大きな剛性を有する。これは、直進時の走行安定性に寄与する。また、この第一ゴム26は、高い耐摩耗性を有する。この中央部Cを有するタイヤ2は、直進時の耐摩耗性に優れる。
自動二輪車がフルバンク走行される時には、タイヤ2のショルダー領域が主に接地する。このとき、このタイヤ2では、端部Eが接地する。フルバンク時は、非常に大きな横力がタイヤ2に加わるため、この端部Eには、通常の旋回時よりさらに高いグリップ力が要求される。本発明に係るタイヤ2では、端部Eの表面は、高い損失正接かつ低い硬さを有する第三ゴム30より構成される。このゴムを有する端部Eのグリップ力は強い。この端部Eを備えるタイヤ2は、フルバンク走行に対しても充分なグリップ力を有する。また、この端部Eには、この第三ゴム30の半径方向内側に、低い損失正接かつ高い硬さを有する第一ゴム26が存在する。この第一ゴム26により、端部Eは充分な剛性を有する。この端部Eを備えたタイヤ2は、フルバンク時の走行安定性に優れる。
第二ゴム28の損失正接LT2は、0.35以下が好ましい。損失正接LT2が0.35以下の第二ゴム28を備えた中間部Mは、旋回時における耐摩耗性に優れる。この観点から、LT2は、0.32以下がより好ましい。損失正接LT2は0.25以上が好ましい。損失正接LT2が0.25以上の第二ゴム28を備えた中間部Mは、旋回時におけるグリップ力に優れる。この観点から、LT2は、0.28以上がより好ましい。
第二ゴム28の硬さH2は、33以上が好ましい。硬さH2が33以上の第二ゴム28を備えた中間部Mは、旋回時における耐摩耗性に優れる。この観点から、H2は、35以上がより好ましい。硬さH2は43以下が好ましい。硬さH2が43以下の第二ゴム28を備えた中間部Mは、旋回時におけるグリップ力に優れる。この観点から、H2は、41以下がより好ましい。
第一ゴム26の損失正接LT1は、0.25以下が好ましい。損失正接LT1が0.25以下の第一ゴム26を備えた中央部C、中間部M及び端部Eは、直進時、旋回時及びフルバンク時における優れた走行安定性に寄与する。損失正接LT1は0.23以上が好ましい。損失正接LT1が0.23以上の第一ゴム26を備えた中央部C、中間部M及び端部Eは、直進時、旋回時及びフルバンク走行時における優れた乗り心地に寄与する。
第一ゴム26の硬さH1は、37以上が好ましい。硬さH1が37以上の第一ゴム26を備えた中央部C、中間部M及び端部Eは、直進時、旋回時及びフルバンク時における優れた走行安定性に寄与する。この観点から、H1は、40以上がより好ましい。硬さH1は55以下が好ましい。硬さH1が55以下の第一ゴム26を備えた中央部C、中間部M及び端部Eは、直進時、旋回時及びフルバンク時における優れた乗り心地に寄与する。この観点から、H1は50以下がより好ましい。
第三ゴム30の損失正接LT3は、0.28以上が好ましい。損失正接LT3が0.28以上の第三ゴム30を備えた端部E及び中間部Mは、フルバンク時及び旋回時におけるグリップ力に優れる。この観点から、LT3は、0.32以上がより好ましい。損失正接LT3は0.49以下が好ましい。損失正接LT3が0.49以下の第三ゴム30を備えた端部Eは、フルバンク時における耐摩耗性に優れる。この観点から、LT3は、0.45以下がより好ましい。
第三ゴム30の硬さH3は、34以下が好ましい。硬さH3が34以下の第三ゴム30を備えた端部E及び中間部Mは、フルバンク時及び旋回時におけるグリップ力に優れる。この観点から、H3は、33以下がより好ましい。硬さH3は30以上が好ましい。硬さH3が30以上の第三ゴム30を備えた端部Eは、フルバンク時における耐摩耗性に優れる。この観点から、H3は、31以上がより好ましい。
損失正接LT2と損失正接LT1との比(LT2/LT1)は、1.10以上1.40以下が好ましい。この比(LT2/LT1)が1.10以上の第一ゴム26と第二ゴム28とを備えたタイヤ2では、低い損失正接LT1による直進時の走行安定性と、中程度の損失正接LT2による旋回時のグリップ特性が両立しうる。この比(LT2/LT1)が1.40以下の第一ゴム26と第二ゴム28とを備えたタイヤ2では、トレッド4の接地面が、中央部Cから中間部Mに移行する際に、ライダーは、ゴムの材質の違いに起因する違和感を感じにくい。
硬さH1と硬さH2との比(H1/H2)は、1.10以上1.30以下が好ましい。この比(H1/H2)が1.10以上の第一ゴム26と第二ゴム28とを備えたタイヤ2では、高い硬さH1による直進時の走行安定性と、中程度の硬さH2による旋回時のグリップ特性が両立しうる。この比(H1/H2)が1.30以下の第一ゴム26と第二ゴム28とを備えたタイヤ2では、トレッド4の接地面が、中央部Cから中間部Mに移行する際に、ライダーは、ゴムの材質の違いに起因する違和感を感じにくい。
損失正接LT3と損失正接LT2との比(LT3/LT2)は、1.10以上1.30以下が好ましい。この比(LT3/LT2)が1.10以上の第二ゴム28と第三ゴム30とを備えたタイヤ2では、中程度の損失正接LT2による旋回時の耐摩耗性と、高い損失正接LT3によるフルバンク時のグリップ特性が両立しうる。この比(LT3/LT2)が1.30以下の第二ゴム28と第三ゴム30とを備えたタイヤ2では、トレッド4の接地面が、中間部Mから端部Eに移行する際に、ライダーは、ゴムの材質の違いに起因する違和感を感じにくい。
硬さH2と硬さH3との比(H2/H3)は、1.10以上1.25以下が好ましい。この比(H2/H3)が1.10以上の第二ゴム28と第三ゴム30とを備えたタイヤ2では、中程度の硬さH2による旋回時時の耐摩耗性と、低い硬さH3によるフルバンク時のグリップ特性が両立しうる。この比(H2/H3)が1.25以下の第二ゴム28と第三ゴム30とを備えたタイヤ2では、トレッド4の接地面が、中間部Mから端部Eに移行する際に、ライダーは、ゴムの材質の違いに起因する違和感を感じにくい。
図1において、両矢印Wc(一方の矢印は図示されていない)は、中央部Cのトレッド面20に沿って計測される長さを示す。詳細には、長さWcは、一方の第二ゴム28の軸方向内側端32と、図示されていないもう一方の第二ゴム28の軸方向内側端との間の、トレッド面20に沿って計測される長さである。図示されないが、トレッド面20の長さWは、一方のトレッド端36と、もう一方のトレッド端との間の、トレッド面20に沿って計測される長さである。長さWcと長さWとの比(Wc/W)は、0.15以上0.30以下が好ましい。この比が0.15以上のタイヤ2は、良好な直進時の走行安定性を得るための充分な中央部Cの大きさを有する。このタイヤ2は、直進時の走行安定性に優れる。この観点から、この比は0.18以上がより好ましい。この比(Wc/W)が、0.30以下のタイヤ2は、良好な旋回時のグリップ力を得るための充分な中間部Mの大きさを有する。このタイヤ2は、旋回時のグリップ力に優れる。この観点から、この比は、0.25以下がより好ましい。
図1において、両矢印We1は、一つの端部Eのトレッド面20に沿って計測される長さを示す。詳細には、長さWe1は、第二ゴム28の軸方向外側端34とトレッド端36との間の、トレッド面20に沿って計測される長さである。図示されないが、もう一方の端部Eのトレッド面20に沿って計測される長さも両矢印We1で表される。これら一対の端部Eのトレッド面20に沿って計測される長さの合計値Weは、We1の二倍となる。長さWeとトレッド面20の長さWとの比(We/W)は、0.10以上0.20以下が好ましい。この比が0.10以上のタイヤ2は、フルバンク時に必要なグリップ力を得るための充分な端部Eの大きさを有する。このタイヤ2は、フルバンク時のグリップ力に優れる。この観点から、この比は0.13以上がより好ましい。この比(We/W)が、0.20以下のタイヤ2は、良好な旋回時の耐摩耗性を実現するための充分な中間部Mの大きさを有する。このタイヤ2は、旋回時の耐摩耗性に優れる。この観点から、この比は、0.17以下がより好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された構造を備えた実施例1のタイヤを得た。タイヤのサイズは、190/55ZR17とされた。表1にこのタイヤ2の諸元が示されている。損失正接LT1は0.23、損失正接LT2は0.29、及び損失正接LT3は0.34とされた。硬さH1は47、硬さH2は40、及び硬さH3は32とされた。比(Wc/W)は0.2、比(We/W)は0.15とされた。
[比較例1]
トレッドが単一のゴムからなる比較例1のタイヤを得た。このタイヤのサイズは、実施例1のタイヤと同じとされた。このゴムの損失正接は0.26、硬さは36とされた。
[比較例2]
端部を大きくして中間部をなくした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。このタイヤのトレッドは、中央部と大きな端部とからなる。
[比較例3]
中央部を大きくして中間部をなくした他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。このタイヤのトレッドは、大きな中央部と端部とからなる。
[比較例4]
損失正接LT1を0.31とした他は実施例1と同様にして、比較例4のタイヤを得た。
[比較例5]
硬さH1を36とした他は実施例1と同様にして、比較例5のタイヤを得た。
[比較例6]
損失正接LT2を0.36とした他は実施例1と同様にして、比較例6のタイヤを得た。
[比較例7]
硬さH2を29とした他は実施例1と同様にして、比較例7のタイヤを得た。
[比較例8]
損失正接LT3を0.26とした他は実施例1と同様にして、比較例8のタイヤを得た。
[比較例9]
硬さH3を43とした他は実施例1と同様にして、比較例9のタイヤを得た。
[実施例2−9]
損失正接LT1、LT2、及びLT3を表3及び4の値にした他は実施例1と同様にして、実施例2−9のタイヤを得た。
[実施例10−17]
硬さH1、H2、及びH3を表5及び6の値にした他は実施例1と同様にして、実施例10−17のタイヤを得た。
[実施例18−21]
比(Wc/W)を表7の値にした他は実施例1と同様にして、実施例18−21のタイヤを得た。
[実施例22−25]
比(We/W)を表8の値にした他は実施例1と同様にして、実施例22−25のタイヤを得た。
[耐摩耗性評価、グリップ力及び走行安定性評価]
試作タイヤを排気量が1000ccの自動二輪車(4サイクル)の後輪に装着し、その内圧が250kPaとなるように空気を充填した。後輪のリムのサイズはMT6.00×17とされた。前輪には、市販のタイヤ(サイズ=120/70ZR17)を装着し、その内圧が270kPaとなるように空気を充填した。前輪のリムのサイズはMT3.50×17とされた。この自動二輪車を、その路面がアスファルトであるテストコースで走行させて、ライダーによる官能評価を行った。また、走行後のトレッドの摩耗の程度を評価した。旋回時の評価項目は、グリップ力、耐摩耗性及び走行安定性である。フルバンク時の評価項目は、グリップ力及び走行安定性である。直進時の評価項目は、走行安定性及び耐摩耗性である。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−8に示されている。上記全ての評価項目について、値が大きいほど評価が高い。
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表1−8に示されるように、本発明に係るタイヤは、旋回時のグリップ力、耐摩耗性及び走行安定性の全ての項目で、高い評価となっている。また、本タイヤは、フルバンク時のグリップ力及び走行安定性、並びに直線走行時の走行安定性及び耐摩耗性にも優れる。本発明によれば、旋回走行、フルバンク走行及び直進走行の性能に優れるとともにトレッドの耐摩耗性に優れる自動二輪車用タイヤが提供されうる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るタイヤは、種々の自動二輪車に装着されうる。
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・カーカス
10a・・・第一プライ
10b・・・第二プライ
12・・・インナーライナー
14・・・ベルト
14a・・・内側層
14b・・・外側層
16・・・バンド
18・・・チェーファー
20・・・トレッド面
22・・・コア
24・・・エイペックス
26・・・第一ゴム
28・・・第二ゴム
30・・・第三ゴム
32・・・内側端
34・・・外側端
36・・・トレッド端

Claims (4)

  1. その表面がトレッド面をなすトレッドを備えており、
    このトレッドが、第一ゴム、第二ゴム及び第三ゴムを有しており、
    このトレッドが、センターに位置する中央部、それぞれがこの中央部の軸方向外側に位置する一対の中間部、及びそれぞれが各中間部の軸方向外側に位置する一対の端部を備えており、
    この中央部が、上記第一ゴムを有しており、
    この中間部が、上記第一ゴム、この第一ゴムの半径方向外側に積層された上記第三ゴム、及びこの第三ゴムの半径方向外側に積層された上記第二ゴムを有しており、
    この端部が、上記第一ゴム及びこの第一ゴムの半径方向外側に積層された上記第三ゴムを有しており、
    上記第一ゴムの損失正接LT1が上記第二ゴムの損失正接LT2より低く、かつ、この損失正接LT2が上記第三ゴムの損失正接LT3より低く、
    上記第一ゴムの硬さH1が上記第二ゴムの硬さH2より高く、かつ、この硬さH2が上記第三ゴムの硬さH3よりも高い自動二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 上記損失正接LT1が0.23以上0.25以下であり、上記損失正接LT2が0.25以上0.35以下であり、上記損失正接LT3が、0.28以上0.49以下である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 上記硬さH1が37以上55以下であり、上記硬さH2が33以上43以下であり、上記硬さH3が30以上34以下である請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 上記トレッド面に沿って計測される上記中央部の長さWcと、このトレッド面の長さWとの比(Wc/W)が0.15以上0.30以下であり、上記トレッド面に沿って計測される上記一対の端部の長さの合計値Weと、このトレッド面の長さWとの比(We/W)が0.10以上0.20以下である請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
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