JP6070066B2 - スプリングバック量評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属平板をプレス成形して製造されるプレス成形品の離型後のスプリングバック量を評価するスプリングバック量評価方法に関する。
ここで金属平板とは、熱延鋼板、冷延鋼板、あるいは鋼板に表面処理(電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、有機皮膜処理等)を施した表面処理鋼板をはじめ、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、各種金属類から構成される単板でもよい。また本発明は、特に590MPa級以上の高強度鋼板や、その他、アルミニウム等、ヤング率が鋼系素材に比較して小さい素材に対しても有効な技術である。
自動車用部材の多くは薄鋼板のプレス成形により製造されている。近年は軽量化のため、更に薄い鋼板を用いて、その分より高強度化するといった対応がとられている。しかし高強度になると所望の形状に対して、プレス成形後のスプリングバックによる形状変化が大きく、この問題への対策が必要となる。
スプリングバック対策のためのツールとして現在最も多く用いられているのは、有限要素法(以下、FEM:Finite Element Method)による数値シミュレーションである。数値シミュレーションを用いたスプリングバック対策の一例を挙げれば以下のようなものである。まずFEMによってスプリングバック解析を行い、その結果に基づいてスプリングバックの要因分析を行う。次に、前記スプリングバック要因分析の結果に基づいて対策実施を行い、対策実施の効果を再度FEMで確認する。そして、所望の形状が得られるまでこの手続きを繰り返し、その後、実際のプレス用金型を製作する。
FEMによるスプリングバック要因分析方法としては、例えば特許文献1に開示される方法がある。特許文献1のスプリングバック要因分析方法は、プレス成形解析後(離型前)のプレス成形品に作用している残留応力がスプリングバックに及ぼす影響を明確にするというものである。より具体的には、プレス成形解析後の残留応力分布を部分的に変更してスプリングバック解析を行って得られたスプリングバンク解析結果と、残留応力分布を変更せずにスプリングバック解析を行って得られたスプリングバック解析結果とを比較することで、変更した残留応力分布の影響を確認するというものである。こうすることによって、特定部位の残留応力の影響を明確化でき、それがスプリングバックに影響を及ぼすことが特定出来れば、スプリングバック対策を立てることが可能になる。
スプリングバック対策としては、例えば、プレス成形品に新たな形状を追加することにより引張応力をその形状追加部位に与える方法、あるいはプレス加工を2工程行うことによって製造されるプレス成形品において、1工程目においてエンボスや余肉ビード形状を付与した後、その形状を2工程目で潰して伸ばすことで、圧縮応力を与える方法等がある。
このようなスプリングバック対策を施すためには、プレス成形品のどこにどのように修正を施すのかが重要である。しかし特許文献1に開示されるスプリングバック要因分析方法ではスプリングバック要因は明確にわかるが、プレス成形品に対する修正を施す箇所や修正方法が明確になるとは限らない場合がある。
特開2007−229724号公報 特開2007−130670号公報
プレス成形品に対する修正を施す箇所や修正方法を明確にするためには、スプリングバック量を正しく評価することが重要である。
一般的にはスプリングバック量は、プレス成形品の部位を特定して評価方向等の指標を決めてから判断される。このような指標は熟練した作業者によって決められているが、作業者ごとに指標が異なるのが現状である。そのため、スプリングバック量の指標が客観的なものになっていないという問題がある。
また、スプリングバックによる変形は、反り変形と捩じり変形、および断面の口開き(口閉じ)変形とに大きく分類できる。この内、口断面の開き変形に関しては、金型に予め見込みを入れておくことで比較的対応しやすくまた、変形自体がわかりやすい。しかし反り変形と捩じり変形に関して、実際のスプリングバックでは、反り変形と捩じり変形が複合して生じており、そのため、スプリングバックの指標を決定するのがより困難になっている。更に、特に部材が大きい場合において顕著となることだが、金型に予め見込みを入れて対応することも困難な場合が多い。
従って、反り変形と捩じり変形をそれぞれ定量的に明確に把握することが重要であるが、特に、捩じり変形を定量的に規定することは困難であり、指標を明確にすることの困難さに繋がっている。
捩じり変形に着目した従来技術としては、例えば特許文献2において、評価断面における重心を算出し、その重心周りでの断面の回転に対応する断面の捩じれトルクを算出する方法が開示されている。捩じれトルクは捩じり変形の原因となるもので、これを消去することで捩じり変形を解消しようとするものであるが、実際に捩じれトルクを完全に消すようなプレス成形は困難である上、この方法では、実際にスプリングバック後に部材にどの程度捩じり変形が発生しているかが分かり難いという問題点がある。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、作業者の判断によらず客観的な指標に基づいて行うスプリングバック量評価方法を得ることを目的とする。
(1)本発明に係るスプリングバック量評価方法は、コンピュータによりプレス成形品離型後に軸回りに回転する捩じり変形によるスプリングバック量を評価するスプリングバック量評価方法であって、
前記プレス成形品の形状に交差する交差平面を所定間隔ごとに複数設定する交差平面設定工程と、該設定された交差平面毎に前記プレス成形品の断面形状を取得する断面形状取得工程と、該各断面形状の各交差平面における向きを各断面形状の方向として取得する断面形状方向取得工程とを有し、
前記プレス成形品の基準となる形状と離型後の形状について前記交差平面設定工程と、前記断面形状取得工程と、前記断面形状方向取得工程とをそれぞれ行い、前記基準となる形状と前記離型後の形状について取得した前記断面形状の方向を比較して前記断面形状の前記軸回りの回転角度を取得し、該取得した回転角度を全ての断面形状について比較することによって前記プレス成形品の捩じり変形によるスプリングバック量を評価するものであり、
前記断面形状方向取得工程における前記各断面形状の方向が、前記断面形状における断面二次モーメントが最大値を示す方向または最小値を示す方向、又は、前記断面形状における断面係数が最大値を示す方向または最小値を示す方向であり、前記設定した複数の交差平面の70%以上において、断面二次モーメントまたは断面係数の前記最小値に対する前記最大値の比が1.1以上として、前記最大値を示す方向と前記最小値を示す方向とが入れ替わらないようにすることを特徴とするものである。
(2)本発明に係るスプリングバック量評価方法は、コンピュータによりプレス成形品の離型後の反り変形によるスプリングバック量を評価するスプリングバック量評価方法であって、
前記プレス成形品について基準軸を設定し、該基準軸に交差する交差平面を所定間隔ごとに複数設定する交差平面設定工程と、該設定された交差平面毎に前記プレス成形品の断面形状を取得する断面形状取得工程と、該各断面形状の各交差平面における位置を特定する位置特定点座標を取得する位置特定点座標取得工程とを有し、
前記プレス成形品の基準となる形状と離型後の形状について前記交差平面設定工程と、前記断面形状取得工程と、前記位置特定点座標取得工程とをそれぞれ行い、前記基準となる形状と前記離型後の形状について取得した前記断面形状の位置特定点座標を比較して前記断面形状の移動量を取得し、該取得した移動量を前記プレス成形品全体に前記基準軸の方向に沿って微分することによって前記プレス成形品の反り変形によるスプリングバック量を評価することを特徴とするものである。
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、記位置特定点が、前記断面形状の重心の座標であることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記プレス成形品の基準となる形状が、前記プレス成形品の離型前の形状、金型形状、またはプレス成形後の目標とする形状のいずれか一つであることを特徴とするものである。
(5)また、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のものにおいて、前記プレス成形品の離型後の形状が、前記プレス成形品をスプリングバック解析した結果得られた形状、または、実際にプレス成形を行って得られた形状であることを特徴とするものである。
本発明においては、所定の方向および所定の間隔でプレス成形品の断面形状を取得して、全断面形状ごとに断面形状の向きを断面形状の方向として取得して、該取得した断面形状の方向を比較することで、プレス成形品全体においてスプリングバック量がどれだけ発生したかを把握でき、スプリングバック量の評価を客観的に行うことができる。それ故、このようにして得られたスプリングバック量の評価に基づくことで、的確なスプリングバック対策を施すことができる。
本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の流れについて説明するフローチャートである。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価装置について説明する説明図である。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の評価対象となるプレス成形品について説明する説明図である。 図3のプレス成形品のプレス成形方法について説明する説明図である(その1)。 図3のプレス成形品のプレス成形方法について説明する説明図である(その2)。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の交差平面設定工程について説明する説明図である。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の断面形状取得工程について説明する説明図である。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の断面形状方向取得工程について説明する説明図である。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の位置特定点座標取得工程について説明する説明図である。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の断面形状方向取得工程の結果について説明するグラフであって、図3のプレス成形品のスプリングバック量(捩じり変形量)をグラフ化したものである。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の位置特定点座標取得工程の結果について説明するグラフであって、図3のプレス成形品のスプリングバック量(反り変形量)をグラフ化したものである。 本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法の断面形状取得工程を図3のプレス成形品とは別の部品に適用した場合について説明する説明図である。 実施例におけるスプリングバック量評価方法の断面形状方向取得工程の結果について説明するグラフであって、スプリングバック対策後の図3のプレス成形品のスプリングバック量(捩じり変形量)をグラフ化したものである。 実施例におけるスプリングバック量評価方法の位置特定点座標取得工程の結果について説明するグラフであって、スプリングバック対策後の図3のプレス成形品のスプリングバック量(反り変形量)をグラフ化したものである。
本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価方法は、スプリングバック量として捩じり変形量を評価する場合、図1に示すように、プレス成形品の基準となる形状と離型後の形状について、プレス成形品の所定方向に所定間隔にプレス成形品のスプリングバック量を測定する位置としての複数の平面を設定する交差平面設定工程S1と、該設定された交差平面毎にプレス成形品の断面形状を取得する断面形状取得工程S3とをそれぞれ行う。
次工程は、スプリングバック量として捩じり変形量を評価するのか、反り変形量を評価するのかで実施する工程が異なる。
スプリングバック量として捩じり変形量を評価する場合は、各断面形状の向きを各断面形状の方向として取得する断面形状方向取得工程S5を行う。ここで捩じり変形とは、プレス成形品がある軸回りに回転する変形をいう。
また、スプリングバック量として反り変形量を評価する場合は、断面形状方向取得工程S5の替わりに、各断面形状の位置を特定する位置特定点の座標を取得する位置特定点座標取得工程S7を行う。
次いで、取得した各断面形状の方向または位置特定点の座標に基づいて、プレス成形品全体のねじり変形量または反り変形量を評価する(スプリングバック量評価工程S9)。
上記の交差平面設定工程S1と、断面形状取得工程S3と、断面形状方向取得工程S5と、位置特定点座標取得工程S7とは、プログラム処理を実行するPC(パーソナルコンピュータ)等の装置によって行うものであるので、まず、装置(以下、「スプリングバック量評価装置1」という)の構成について図2に示すブロック図に基づいて概説する。なお、スプリングバック量評価工程S9は、PCによるグラフ表示などを行った後、作業者が行うようにしてもよいし、あるいはスプリングバック量評価工程S9を行う手段をPC内に別途設けて該手段を用いて行ってもよい。本実施の形態では、作業者がPCを用いて行う例を示す。
〔スプリングバック量評価装置〕
本発明の一実施の形態に係るスプリングバック量評価装置1は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、図2に示すように、表示装置3と入力装置5と主記憶装置7と補助記憶装置9および演算処理部11とを有している。
また、演算処理部11には、表示装置3と入力装置5と主記憶装置7および補助記憶装置9が接続され、演算処理部11の指令によって各機能を行う。表示装置3は計算結果の表示等に用いられ、液晶モニター等で構成される。入力装置5はオペレータからの入力等に用いられ、キーボードやマウス等で構成される。主記憶装置7は演算処理部11で使用するデータの一時保存や演算等に用いられ、RAM等で構成される。補助記憶装置9は、データの記憶等に用いられ、ハードディスク等で構成される。
演算処理部11はPC等のCPU等によって構成され、演算処理部内には、交差平面設定手段13と、断面形状取得手段15と、断面形状方向取得手段17と、位置特定点座標取得手段19とを有する。これらの手段はCPU等が所定のプログラムを実行することによって実現される。以下にこれら手段について説明する。
以下の説明では、スプリングバック量評価対象として、図3に示すセンターピラーのアウター部品21を例に挙げて説明する。アウター部品21は、図4に示すように、上金型23と、下金型25と、しわ押さえ27とを用いてブランク材29をプレス成形(ドロー成形)し(図5(a)参照)、さらに別の金型を用いて2回目のプレス成形(リストライク)を行い、次いで不要な部分が切除(トリム加工)されて最終的な形状になる(図5(b)参照)。なお、以下の説明において、図3に示すように、アウター部品21の長手方向をx方向、幅方向をy方向、高さ方向をz方向とする。
<交差平面設定手段>
交差平面設定手段13は、スプリングバック量評価対象となるプレス成形品(アウター部品21)の基準となる形状および離型後の形状に対して交差する交差平面を所定間隔ごとに複数設定する。
基準となる形状としてはアウター部品21の離型前の形状や、アウター部品21のプレス成形後の目標とする形状、あるいは金型形状を用いる。
離型後の形状は、コンピュータを用いたスプリングバック解析によって求めてもよいし、実際にプレス成形を行って離型後の形状を3次元形状測定等により求めてもよい。
交差平面を設定する前段階として、交差平面設定手段13は、基準となる形状と離型後の形状において一致させたい位置を設定する。こうすることで、基準となる形状および離型後の形状において、同位置に交差平面を設定することができる。なお、形状を一致させた位置においてはスプリングバック量が0となる。本実施の形態においては、アウター部品21のx方向位置-200mm(図10参照)を一致させる位置(長手方向基準位置)とした。
次に、プレス成形品に交差平面を設定する方法について説明する。
本実施の形態では、交差平面の設定の一例として、アウター部品21のx方向に平行に基準軸Lを設定し、図6に示すように、基準軸Lに直交する交差平面An(yz平面)を等間隔に137平面を設定した。なお、設定した各交差平面Anは、図6においてアウター部品21のy方向に平行な複数の直線で示している。また、以下の説明において図6における各交差平面Anを、図6中左から順番に交差平面A1〜A137とする。
<断面形状取得手段>
断面形状取得手段15は、設定された交差平面毎にプレス成形品の断面形状を取得する。
アウター部品21の断面形状の例を図7に示す。図7はアウター部品21に設定された交差平面An(図6参照)のうち、例として交差平面A5、交差平面A70、および交差平面A127と、アウター部品21が交差してできる断面形状を示したものである。
図7において、破線が離型前のアウター部品21の形状について取得した断面形状であり、実線が離型後のアウター部品21の形状について取得した断面形状である。図7(a)は交差平面A5上の断面形状(離型前の断面形状を断面形状B5、離型後の断面形状B5’とする)であり、図7(b)は交差平面A70上の断面形状(離型前の断面形状を断面形状B70、離型後の断面形状B70’とする)であり、図7(c)は交差平面A127上の断面形状(離型前の断面形状を断面形状B127、離型後の断面形状B127’とする)を示したものである。
<断面形状方向取得手段>
断面形状方向取得手段17は、捩じり変形量を評価するために、断面形状取得手段15で設定された断面形状毎に、該各断面形状の各交差平面における向きを各断面形状の方向として取得する。
上述したとおり、捩じり変形とは、プレス成形品がある軸回りに回転する変形をいう。このときプレス成形品の各断面形状は前記軸を中心に回転することになる。そのため各断面形状の回転角度を取得すれば捩じり変形がどの程度発生しているかを評価することができる。
各断面形状の回転角度を取得するためには、捩じり変形前後において各断面形状の向きをそれぞれ取得し、該取得した各断面形状の向き同士を比較すればよい。
各断面形状は離型後において変形しても多くの場合、その変形量は極端に大きいわけではないため、各断面形状の離型前後における形状の変化が、断面形状全体の向きに与える影響は無視することができる。したがって、離型後前後における各断面形状の向きを比較することで、各断面形状の回転量を取得することができる。
このような各断面形状の回転角度の比較を全断面形状について行うことによって、プレス成形品にどれだけ捩じれ変形が発生したかが分かる。
各断面形状の向きとは、各断面形状に基づいて取得される各断面形状の各交差平面における方向として捉えることができる。したがって、各断面形状の向きを比較するには、各断面形状の方向を取得し、その方向が離型前後で変化した回転角度を取得すればよい。
なお、各断面形状の方向は、例えば座標軸とのなす角度で表すことができる。
各断面形状の方向としては、例えば断面二次モーメントが最大値または最小値を示す方向、断面係数が最大値または最小値を示す方向、あるいは各断面形状を囲む最小の長方形の長辺方向または短辺方向等がある。
各断面形状の方向としての、断面二次モーメントが最大値または最小値を示す方向について説明する。交差平面上のある軸に関する断面形状の断面二次モーメントは、該軸をどの方向に設定するかで値が異なるが、これらの軸のうち断面二次モーメントが最大値又は最小値を示す軸を主軸という。したがって、主軸の方向が、断面二次モーメントが最大値または最小値を示す方向である。
この主軸の方向を求める式は良く知られている。断面に設定する任意の直交座標軸y軸およびz軸に対して、断面二次モーメントIy、Iz、Iyzが次式(1)〜式(3)のように計算される。y、zは断面の重心からの距離、Aを断面の領域である。
断面二次モーメントの断面における主軸方向α1、α2はy軸からの角度として、次式(4)および式(5)で求められる。
なお、主軸に関する断面二次モーメントすなわち主断面二次モーメントは、次式(6)および式(7)で与えられる。
断面係数が最大値または最小値を示す方向については、次の方法で求める。
断面係数が最大値を示す方向は、断面内の軸を少しずつ回転させて方向を変えて、その都度該軸に関する断面係数を計算し、計算結果の中で最大値を示す軸の方向を、断面係数が最大値を示す方向として求める。
より具体的には例えば、断面内の軸を1度ずつ回転させて断面係数が最大となる軸を求め、該軸の周辺で更に細かい角度、例えば0.1度ずつ断面内の軸を回転させて、最大となる軸をより精密に求める。
断面係数が最小値を示す方向は、最大値を示す方向に直交する方向である。
なお、断面二次モーメントが最大値または最小値を示す方向に関しても、上記式(1)〜式(7)を用いて説明した方法とは別に、上記断面係数が最大値または最小値を示す方向を求める方法と同様の方法で求めることができる。
次に、各断面形状の方向としての、各断面形状を囲む最小の長方形の長辺方向について、交差平面A127における断面形状(図7(c)参照)を囲む最小の長方形の長辺方向を取得する場合を例に挙げて図8に基づいて説明する。
図8において、離型前の断面形状(破線で示される断面形状)を囲む最小の長方形を点線で示す。また、離型後の断面形状(実線で示される断面形状)を囲む最小の長方形を実線で示す。
各断面形状の方向を各長方形の長辺方向のz方向軸となす角度で表すと、離型前の断面形状の方向はα°であり、離型後の断面形状の方向はα’°である。
以上のように断面形状方向取得手段17によれば、各断面形状の方向の取得は該各断面形状の全体形状に基づいて行われるため、断面形状が微小に変形していたとしてもその変形量を無視することができる。それ故、ほとんどの断面形状において本手法は適用できる。
なお、上記は、断面形状は離型後において変形してもその変形量は断面二次モーメントの主方向を大きく変化させない程度に微小であるため、断面形状の変形が断面形状の方向に与える影響を無視できることが前提であったが、断面形状が真円に近い楕円形状である場合など、断面の形状によっては変形によって断面二次モーメントまたは断面係数の最大値または最小値を示す方向が入れ替わる場合がある。
この点についてより具体的に説明する。スプリングバック前の形状(あるいは、目標となる形状)のある断面形状について求めた断面二次モーメントまたは断面係数の最小値と最大値の関係が、最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)で1.1より小さい場合、スプリングバック前後で、最大値を示す方向と最小値を示す方向とが入れ替わる可能性がある。すなわち、変形によって90°回転したと判断される場合がある。
従って、スプリングバック前の形状における最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)が1.1以上であること、より好ましくは1.2以上であることが望ましい。なお、このような最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)は、スプリングバック量を評価するためには、すべての交差平面で達成している必要はなく70%以上で達成されていればよい。
<位置特定点座標取得手段>
位置特定点座標取得手段19は、断面形状取得手段15で設定された断面形状毎に、該各断面形状の位置を特定する位置特定点(例えば重心)の座標を求める。
上記の断面形状方向取得手段17は、捩じり変形量を評価するためのものであった。スプリングバック量として反り変形量を評価したい場合は、位置特定点座標取得手段19を用いる。反り変形とは、プレス成形品の同一平面内における変形として捉えることができる。
上述したとおり、各断面形状は離型後において断面二次モーメントの主方向を大きく変化させない程度に微小であり、断面形状の変形が重心位置に与える影響も多くの場合で無視することができる。
従って、基準となる形状における断面形状と、離型後における断面形状についてそれぞれ重心の座標を求めて比較すれば、該断面形状の移動量を取得できる。このような重心の比較をプレス成形品全体で行うことによって、プレス成形品にどれだけ反り変形が発生したかを評価できる。
交差平面A127における離型前の断面形状(図7(c)参照)における重心Pと、離型後の断面形状における重心P’を図示したものを図9に示す。図9に示すように、離型前の断面形状において重心が図9下方向に移動している。重心Pの座標と重心P’の座標を比較することで、断面形状がどれだけ移動したかが分かる。
以上のように構成された本実施のスプリングバック量評価装置1を用いて、例としてアウター部品21についてスプリングバック量評価する方法について、スプリングバック量評価装置1の動作と共に説明する。
<交差平面設定工程>
まず、交差平面設定手段13を用いて、アウター部品21の基準となる形状および離型後の形状について交差平面を設定する(S1)。本例では、基準となる形状として、アウター部品21の離型前の形状を用いた。
<断面形状取得工程>
次いで、断面形状取得手段15を用いて、上記設定された交差平面毎にアウター部品21の断面形状を取得した(S3)。
<断面形状方向取得工程>
次に、断面形状方向取得手段17を用いて断面形状取得で取得した各断面形状について断面形状の向きを断面形状の方向として取得する(S5)。本例では、捩じり変形量を評価するために、断面形状の方向として断面二次モーメントの最大値を示す方向を取得した。
<スプリングバック量評価工程>
次に、上記取得した基準となる形状と離型後の形状に対する全ての断面形状の方向を比較することによってスプリングバック量を評価する(S9)。
本例では、図10に示すように、交差平面毎の断面二次モーメントの最大値を示す方向とz方向とのなす角度についてグラフを作成して、スプリングバック量が視覚的に把握できるようにした。本例では、グラフの作成は作業者がPCを用いて行ったが、PC内に作業手段を設けて自動で行ってもよい。
図10(a)および(b)において、破線は離型前の形状についてのグラフであり、実線は離型後の形状についてのグラフである。
図10(a)は、横軸がx方向位置(mm)を示し、縦軸が断面二次モーメントの最大値を示す方向とz方向とのなすの角度を示している。長手方向基準位置では角度が一致している。
図10(a)を見ると、両方のグラフが全体的に乖離している。このことから、アウター部品21の長手方向全体に亘って捩じり変形が発生していることが分かる。
図10(b)は、横軸がx方向位置(mm)を示し、縦軸が離型前の形状についての角度と離型後の形状の角度の差、すなわち捩じり変形量を求め、さらに該捩じり変形量を微分して得られた値(deg./mm)である。このようなグラフにすることで、離型後にアウター部品21がどの位置で大きく捩じり変形したのかが分かる。
図10(b)を見ると、丸で囲んで矢印で示す部分(x方向位置が-500mm付近、200mm付近、および550mm付近)において急激にグラフが増減している。これは、この位置で大きく捩じり変形が生じていることを意味している。
また、位置特定点座標取得手段19を用いて断面形状取得で取得した各断面形状について、断面形状の位置特定点として重心を取得した(位置特定点座標取得工程S7)。その結果をグラフ化したものを図11に示す。
図11(a)および(b)において、破線は離型前の形状についてのグラフであり、実線は離型後の形状についてのグラフである。
図11(a)は、横軸がx方向位置(mm)を示し、縦軸がx方向各位置断面形状の重心のz座標(mm)を示している。
図11(a)に示すように、両方のグラフは長手方向基準位置から離れるにつれて、実線のグラフが破線のグラフよりも上がっている。これは離型後にアウター部品21がz軸に対して反り変形したことを表している。
図11(b)は、横軸がx方向位置(mm)を示し、縦軸が離型前の形状についてのz座標と離型後の形状についてのz座標の差、すなわち反り変形量を求め、さらに該反り変形量を微分して得られた値を示している。このようなグラフにすることで、離型後にアウター部品21がどの位置で大きく反り変形したのかが分かる。
図11(b)を見ると、丸で囲んで矢印で示す部分(x方向位置が-400mm付近、200mm付近、および500mm〜700mm間)において急激にグラフが増減している。これは、この位置で大きな反り変形が発生していることを意味している。
以上のように、本実施の形態においては、作業者の判断によらず客観的な指標に基づいてスプリングバック量評価を行うことができ、それ故、的確なスプリングバック対策を実施することができる。
なお、上記の説明では、捩じり変形量を測定するために、断面二次モーメントの最大値または最小値を示す方向、断面係数の最大値または最小値を示す方向、または断面形状を囲む最小の長方形の長辺方向を求めたが、断面形状に基づいて取得される方向であればどのようなものであってもよい。
また、位置特定点座標取得工程S7において位置特定点として断面形状の重心を求めるとしたが、重心以外にも断面形状に基づいて同一基準で取得される位置を特定する特定点であればどのようなものでもよい。
なお、上記の交差平面の設定の方法は、全体が直線的な部品(アウター部品21)を例に挙げて説明したが、一部に曲がっている部分を有する曲がり部品の場合は、次の手順で交差平面を設定する。この場合の具体例を図12に基づいて説明する。
図12は、直線的な部分と曲がっている部分を有する曲がり部品31についての交差平面の設定方法について説明する図である。
手順としては、まず、図12に示すように、曲がり部品31に、直線的な部分と曲がっている部分を区分けするように、3つの基準となる交差平面C1、C60、C84を設定する。
次に、上記設定した交差平面C1、交差平面C60、交差平面C84の間にさらに複数の交差平面を設定する。交差平面C1と交差平面C60とは平行であるため、その間には平行かつ等間隔になるように複数の交差平面を設定する。交差平面C60と交差平面C84は平行でないため、交差平面C60と交差平面C84とのなす角度βを等分するようにして交差平面を設定する。図12は、例として交差平面C60と交差平面C84の間を24等分した場合を示している。
このようにして曲がり部品31全体に交差平面が設定される。
上記実施の形態で得られたスプリングバック量評価結果に基づいて、スプリングバック対策を施して、スプリングバック量の変化を確認する実験を行ったので、実験の結果について以下に説明する。
実験は、上記実施の形態で得られたスプリングバック量評価結果に基づいて、捩り変形及び反り変形の大きい部位に対応する部位について、金型を次のように変更した。1回目のプレス成形で使用する金型形状を変更して、アウター部品21に部分的にエンボス形状を付与するようにした。さらに2回目のプレス成形で使用する金型形状を変更して、1回目のプレス成形で付与したエンボス形状を潰して圧縮応力を付与するするとともに、アウター部品21に部分的に座面を追加して引張応力を付与するようにした。
上記のスプリングバック対策を施したプレス成形方法によって得られたアウター部品21について、再度、本発明にかかるスプリングバック量評価方法による評価を行った。その結果を図13および図14に示す。
図13は、図10と同様に、アウター部品21の捩じり変形を表したグラフである。また、図14は図11と同様に、アウター部品21の反り変形を表したグラフである。図13と図14の横軸および縦軸は、図10と図11と同様であるのでその説明を省略する。
図13(a)は、図10(a)と比較すると、離型前のグラフと離型後のグラフの乖離が小さくなっている。これは、捩じり変形が改善されたことを示している。
図14(a)を見ると、離型前のグラフと離型後のグラフが非常によく一致しており、反り変形がほとんど発生しなかったことが分かる。このように施したスプリングバック対策によって反り変形が著しく改善された。
以上のように、本発明にかかるスプリングバック量評価方法によれば、作業者の判断によらず客観的な指標に基づいてスプリングバック量評価を行うことができ、的確なスプリングバック対策を実施可能であることが実証された。
n、Cn 交差平面
n、n’ 断面形状
L 基準軸
P、P’ 重心
1 スプリングバック量評価装置
3 表示装置
5 入力装置
7 主記憶装置
9 補助記憶装置
11 演算処理部
13 交差平面設定手段
15 断面形状取得手段
17 断面形状方向取得手段
19 位置特定点座標取得手段
21 アウター部品
23 上金型
25 下金型
27 しわ押さえ
29 ブランク材
31 曲がり部品

Claims (5)

  1. コンピュータによりプレス成形品離型後に軸回りに回転する捩じり変形による離型後のスプリングバック量を評価するスプリングバック量評価方法であって、
    前記プレス成形品の形状に交差する交差平面を所定間隔ごとに複数設定する交差平面設定工程と、該設定された交差平面毎に前記プレス成形品の断面形状を取得する断面形状取得工程と、該各断面形状の各交差平面における向きを各断面形状の方向として取得する断面形状方向取得工程とを有し、
    前記プレス成形品の基準となる形状と離型後の形状について前記交差平面設定工程と、前記断面形状取得工程と、前記断面形状方向取得工程とをそれぞれ行い、前記基準となる形状と前記離型後の形状について取得した前記断面形状の方向を比較して前記断面形状の前記軸回りの回転角度を取得し、該取得した回転角度を全ての断面形状について比較することによって前記プレス成形品の捩じり変形によるスプリングバック量を評価するものであり、
    前記断面形状方向取得工程における前記各断面形状の方向が、前記断面形状における断面二次モーメントが最大値を示す方向または最小値を示す方向、又は、前記断面形状における断面係数が最大値を示す方向または最小値を示す方向であり、前記設定した複数の交差平面の70%以上において、断面二次モーメントまたは断面係数の前記最小値に対する前記最大値の比が1.1以上として、前記最大値を示す方向と前記最小値を示す方向とが入れ替わらないようにすることを特徴とするスプリングバック量評価方法。
  2. コンピュータによりプレス成形品の離型後の反り変形によるスプリングバック量を評価するスプリングバック量評価方法であって、
    前記プレス成形品について基準軸を設定し、該基準軸に交差する交差平面を所定間隔ごとに複数設定する交差平面設定工程と、該設定された交差平面毎に前記プレス成形品の断面形状を取得する断面形状取得工程と、該各断面形状の各交差平面における位置を特定する位置特定点座標を取得する位置特定点座標取得工程とを有し、
    前記プレス成形品の基準となる形状と離型後の形状について前記交差平面設定工程と、前記断面形状取得工程と、前記位置特定点座標取得工程とをそれぞれ行い、前記基準となる形状と前記離型後の形状について取得した前記断面形状の位置特定点座標を比較して前記断面形状の移動量を取得し、該取得した移動量を前記プレス成形品全体に前記基準軸の方向に沿って微分することによって前記プレス成形品の反り変形によるスプリングバック量を評価することを特徴とするスプリングバック量評価方法。
  3. 前記位置特定点が、前記断面形状の重心の座標であることを特徴とする請求項記載のスプリングバック量評価方法。
  4. 前記プレス成形品の基準となる形状が、前記プレス成形品の離型前の形状、金型形状、またはプレス成形後の目標とする形状のいずれか一つであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスプリングバック量評価方法。
  5. 前記プレス成形品の離型後の形状が、前記プレス成形品をスプリングバック解析した結果得られた形状、または、実際にプレス成形を行って得られた形状であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のスプリングバック量評価方法。
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