JP6084897B2 - 浮体式懸濁物質回収装置及び方法 - Google Patents

浮体式懸濁物質回収装置及び方法 Download PDF

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Description

本発明は、海水浸透取水設備で使用される浮体式の懸濁物質回収装置と、この装置を用いた懸濁物質の回収方法に関するものである。
近年、海水淡水化プラントなどの海水浸透取水設備において、蒸発型造水法に代わり、逆浸透膜(RO膜)による逆浸透法が主流になってきている。この逆浸透法の場合、海水中に含まれる不純物によって逆浸透膜上でファウリング(目詰まり)が生じると、ろ過性能が低下するので、淡水化の前処理工程で、不純物の少ない清浄な海水を得ることが必要となる。
海水を取水する方法として、現在は、図6に示すように、例えば海底に設けた取水口1から導水管2を介して海水を取水する直接取水法が多く採用されている。図6中、3は海水を取水するためのポンプを、4はスクリーンを示している。
しかし、直接取水法は、海水と同時にごみ、懸濁物、生物等を全て取水するので、クラゲや赤潮の異常発生時、油の流出事故時、高波による濁度の増大時には、取水を停止しなければならない場合がある。また、直接取水法は、取水口や導水管へのフジツボ、イガイ等の海洋生物の付着が激しいため、定期的な清掃が必要である。また、海洋生物の付着防止のために海水中に例えば塩素等の薬品を投入した場合は、環境汚染や塩素を遠因とした逆浸透膜でのバイオファウリング発生の問題がある。さらに、取水した海水を逆浸透膜で処理する場合には、凝集剤を添加した海水をろ過するろ過施設が必要となるので、ろ過施設に溜まった汚泥を処理する施設が必要になる。
そこで、近年、取水する海水の前処理として、凝集剤等の薬品を使用しないで、図7に示すように、海底のろ過層5内を浸透してくる海水を取水する間接取水法が注目されている。
この間接取水法は、汀線より数百m、水深十数mの沖合にて海底を掘削し、その掘削部に図8に示すように、支持砂利層5a及び5b、砂層5cからなるろ過層5を形成しながら、再び同じ海底面5dまで埋め戻すことで、支持砂利層5a中に埋設した取水配管6(集水管ともいう)から、ろ過浸透して浄化された海水を取水する方法である(例えば特許文献1)。この間接取水法は、上述した直接取水法の問題は一切発生しないが、イニシャルコストが高いことと、ろ過層の表層や内部に例えばシルトなどの有機又は無機の懸濁物質が捕捉されることで目詰まりが生じて取水量が低下する問題により、普及拡大が遅れている。
具体的には、間接取水法の一例として、海底のろ過層内に発現される海水浸透速度を1〜8m/日とし、前記ろ過層の水深は、当該ろ過層の表層部分の砂が50cm以上移動する完全移動限界水深よりも深く、かつ1cm以上移動する表層移動限界水深よりも浅くする海水取水システムが提案されている(例えば特許文献2)。しかし、この特許文献2で提案された海水取水システムは、海水の浸透取水速度が1〜8m/日という非常に緩速なろ過速度であるため、短期間で大量の海水を取水するには広大な面積を必要とし、工事規模が大きくなり、イニシャルコストが高くなる。
加えて、特許文献2で提案された海水取水システムは、ろ過層の表面に堆積した目詰まりの原因となる懸濁物質を自然の波や流れを利用して取り除くものであるため、ろ過層の設置場所は、潮流や波浪による海水の流動が活発な海域に限られていた。
そこで、本出願人らは、前者の課題を解決するために、海水浸透速度を400m/日以下のできるだけ大きい速度にすることで、短期間における取水量が大量になり、従来に比べて取水面積を大幅に削減し、工事規模を格段に減少させることが可能な海水の浸透ろ過方法を提案した(特許文献3)。
また、後者の課題については、波浪や潮流による海水流動が少ない海域にろ過層を設置する場合、ろ過層に捕捉された目詰まりの原因となる懸濁物質は人為的に取り除いて洗浄する必要がある。この人為的な洗浄装置に関し、従来、河川においては、図9に示すように、河川7aの河床下に砂利層7c及び砂層7bを埋め戻して構成される集水埋渠の目詰まりを防止するために、砂利層7cに空気を噴出可能な孔9aを有した洗浄管9を埋設する場合がある。なお、8は、ろ過浸透により浄化された水を集水する集水管を示している。
しかし、仮に、波浪や潮流による海水流動が少ない海域のろ過層に、図9に示すような洗浄管を適用した場合、洗浄時にろ過層の上方の海水中に噴き上げられた懸濁物質を含む濃度の高い濁水がろ過層の周辺に漂い、環境上問題となる場合がある。
また、本出願人らが特許文献3で提案したように、海水浸透速度を例えば100m/日程度にまで高速化すると、ろ過層の内部に目詰まりが進行しやすくなり、かつ、目詰まりが発生する頻度も高くなる。しかし、洗浄管から空気を噴出してろ過層を洗浄している間は海水を取水できないため、単に洗浄頻度を高くするなどの方法で目詰まりを防止するのみでは、結果的に取水量の低下を招いてしまう。加えて、洗浄時にろ過層の上方の海水中に噴き上げられた懸濁物質を速やかに取り除いて、取水エリア外に効率的に回収できなければ、ろ過層の表面に目詰まりの原因となる懸濁物質が再び堆積し、高速の浸透速度を維持できなくなってしまう。
なお、ろ過層の表面にシルトなどの懸濁物質が堆積すると、海水が均一にろ過されなくなり、一部の決まった経路から海水が吸収されて抜け道ができるチャネリング現象が生じるおそれもある。このチャネリング現象が発生すると、ろ過層のろ過性能は著しく低下する。仮に、シルトなどの懸濁物質を含む海水が後処理工程に送られてUFユニット等の後段の設備においても目詰まりが発生すると、メンテナンスのために一時的に運転を停止せざるを得ないなど、重大な問題となる虞がある。
特開2004−33993号公報 特許第3899788号公報 特開2012−246711号公報
本発明が解決しようとする課題は、従来は、ろ過層の洗浄時に海中に噴き上げられた懸濁物質を効率良く速やかに回収する手段がなかったため、ろ過層の設置場所が潮流や波浪による海水の流動が活発な海域に限定され、また、海水の浸透速度を高速に維持することが困難となる場合があった点である。
本発明は、波浪や潮流による海水の流動が少ない海域にもろ過層を設置可能とし、周辺の環境を汚染する虞を低減することを目的としている。加えて、本発明は、ろ過層の浸透面に対する洗浄を適時行い、洗浄時に生じる懸濁物質は速やかに取り除いて取水エリア外に効率的に回収することで、海水の浸透速度を高速に維持することを目的とするものである。
本発明の浮体式懸濁物質回収装置は、
取水配管と洗浄管が埋設されたろ過層の上方水域に移動可能な浮体と、
前記洗浄管から前記ろ過層内に空気又は空気混入水を噴出し、前記ろ過層の目詰まりの原因となる懸濁物質を洗浄したときに、前記ろ過層の上方水域に噴き上げられた前記懸濁物質を前記洗浄時に生じる気泡と共に回収する回収手段と、を備え、
前記浮体に前記回収手段を搭載したことを最も主要な特徴としている。
本発明によれば、洗浄時にろ過層の上方水域に噴き上げられた懸濁物質は、ろ過層の上方水域に移動可能な浮体に搭載された回収手段によって回収されるので、懸濁物質を含む濁水が取水エリアの周辺に漂流することや、懸濁物質が再びろ過層の表面に堆積することは確実に防止できる。
本発明によれば、複数のろ過層からなる広い取水エリアであっても、浮体を各ろ過層の上方水域に順次移動させることにより、取水エリアの全域に亘って効率良く懸濁物質を回収できる。そのため、本発明を用いた場合は、潮流や波浪による海水流動が少ない海域であってもろ過層を設置できるようになる。また、本発明によれば、取水エリアの全域に亘って懸濁物質の洗浄及び回収効果が高まるので、海水の浸透速度を高速にした場合でも、ろ過層の目詰まりを確実に防止できる。そのため、本発明を用いた場合は、海水の浸透速度が高速に維持され、取水エリアの面積は従来よりも大幅に削減できる。
本発明の浮体式懸濁物質回収装置(第1実施例)の縦断面図である。 ろ過層に埋設される配管の形状を示す図で、(a)は取水配管の平面図、(b)は洗浄管の平面図である。 クエット流れ(Couette flow)の原理を説明する図である。 海水中における粒子の沈降速度を粒径別に比較したグラフである。 本発明の浮体式懸濁物質回収装置(第2実施例)の縦断面図である。 従来の直接取水法の概略説明図である。 従来の間接取水法の概略説明図である。 取水配管が埋設されたろ過層の概略構成図である。 河川において利用されている取水配管及び洗浄管の説明図である。
本発明の浮体式懸濁物質回収装置は、取水配管と洗浄管が埋設されたろ過層の上方水域に移動可能な浮体と、前記洗浄管から前記ろ過層内に空気又は空気混入水を噴出し、前記ろ過層の目詰まりの原因となる懸濁物質を洗浄したときに、前記ろ過層の上方水域に噴き上げられた前記懸濁物質を前記洗浄時に生じる気泡と共に回収する回収手段と、を備えている。
ここで、回収手段は、前記懸濁物質とろ過材の沈降速度差を利用して前記懸濁物質を選択的に回収するように構成することが好ましい。この構成を採用した場合、ろ過性能を維持するために必要なろ過材はできるだけ吸引しないようにしてろ過層の表面に戻すことができると共に、目詰まりの原因となる懸濁物質のみを選択的に回収できるので、ろ過層のろ過性能が低下しない。
以下、本発明の実施形態を、図1〜図5を用いて詳細に説明する。図1において、11は、第1実施例の浮体式懸濁物質回収装置を示している。
先ず、浮体式懸濁物質回収装置11が設置される海水浸透取水設備のろ過層51について説明する。ろ過層51は、海底を掘削し、その掘削部に支持砂利層と砂を形成しながら再び同じ海底面まで埋め戻すことにより形成される。本実施例のろ過層は支持砂利層と砂層を形成しているが、他の例として支持砂利層と砂層とアンスラサイト層を形成しても良い(この場合、表面から、アンスラサイト、砂、砂利の順になっている)。ろ過層の構成としていくつか挙げたが、これらに限定しない。本実施例のろ過層51の海水浸透速度は高速化されており、例えば25m/日以上400m/日以下の範囲に設定されている。
ろ過層51には、取水配管52(集水管ともいう)が埋設されている。取水配管52は、ろ過層51をろ過浸透して浄化された海水を取水する配管であり、その構成の一例は、図2(a)に示す通りである。
本実施例の取水配管52は、主管52aと取水孔が多数設けられた枝管52bで構成されており、主管52aを集水ポンプと接続することにより、ろ過層51をろ過浸透して浄化された海水を取水することができる。取水配管52に取水された海水は、送水管を通じて例えば取水ピットに一時的に貯溜され、その後、取水ポンプにより適時、外部に送水される。
ろ過層51には、取水配管52よりも上方に、洗浄管53が埋設されている。洗浄管53は、ろ過層51の内部に取り込まれた懸濁物質を撹拌し、ろ過層51の表面に堆積した懸濁物質と共にろ過層51の上方水域54(ろ過層51の上方の海中ともいう)に噴き上げて洗浄する配管であり、その構成の一例は、図2(b)に示す通りである。
本実施例の洗浄管53は、主管53aと孔53baが設けられた枝管53bで構成されている。この洗浄管53は、設置時に孔53baが上向きとなるように、ろ過層51内に設置し、主管53aをエアコンプレッサーと接続することにより定期的に孔53baから空気を噴出させ、ろ過層51の内部又は表層に存在する目詰まりの原因となる懸濁物質を撹拌して洗浄するものである。
浮体式懸濁物質回収装置11が設置される海水浸透取水設備の取水エリアは、以上のような構成の取水配管52と洗浄管53が埋設されたユニット式のろ過層51が多数並設されたものである。なお、上記の説明では、洗浄管53から空気を噴出させる実施例について述べたが、本発明では、洗浄管53の孔53baから噴出させる物質は、空気に限らず、例えば空気混入水であっても良い。
次に、本発明の主要部分である浮体式懸濁物質回収装置11の構成を説明する。浮体式懸濁物質回収装置11は、取水配管52と洗浄管53が埋設されたろ過層51の上方水域54に移動可能な浮体21と、前記洗浄管53から前記ろ過層51内に空気又は空気混入水を噴出し、前記ろ過層51の目詰まりの原因となる懸濁物質を洗浄したときに、前記ろ過層51の上方水域54に噴き上げられた前記懸濁物質を、前記洗浄時に生じる気泡55と共に回収する回収手段31とで構成される。
回収手段31は、ろ過層51の上方水域54に開放している開口32を有した圧力調節室33と、この圧力調節室33内の空気を引き込む減圧装置34とを備えている。回収手段31は、減圧装置34の作用によって圧力調節室33の内部を真空もしくは減圧状態とすることにより懸濁物質を吸引して回収するものである。
減圧装置34は、真空ポンプを用いても良いが、本実施例では、例えば高速の空気又は水の流れによって高真空の状態を発生させるエジェクターを使用している。34aは海水を吸い上げてノズル34bに対し高圧の海水を送り込むポンプを、35は減圧装置34(エジェクター)と圧力調節室33の内部の間を接続する吸引管を、36は圧力調節室33の上部に設けた第1空気抜き弁を、37は吸引管35の途中に設けた第2空気抜き弁を示している。
浮体21の底面は、平坦面ではなく、図1に示すように、中央部が最も高くなるように傾斜が付けられた凹状の懸濁物質取込部22が形成されている。この懸濁物質取込部22は、ろ過層51の上方水域54に噴き上げられた懸濁物質を、洗浄時に生じる気泡55と共に受け止めるものである。
懸濁物質取込部22の内面23は、四角錘の頂点を切除した形状(以下、四角錐に限らず、角錐の頂点を切除した形状を「截頭角錐状」という。)となっている。つまり、本実施例の浮体21は、ろ過層51上部に截頭角錐状の内面23を有した懸濁物質取込部22を備えている。本実施例では、懸濁物質取込部22の中央部に前述の回収手段31の圧力調節室33が設けられている。
次に、浮体式懸濁物質回収装置11を用いた懸濁物質の回収方法について説明する。本発明の浮体式懸濁物質回収装置11の浮体21は、特定のろ過層51の上方水域54まで移動可能なエンジン等の動力や自航手段を備えている。
浮体式懸濁物質回収装置11が特定のろ過層51の上方水域54に配置されると、その配置が完了するタイミングに合わせて洗浄管53と接続されたエアコンプレッサーに対し空気の送出が指令される。この指令は、浮体式懸濁物質回収装置11以外の外部の制御装置から指令を出すように構成しても良いが、浮体式懸濁物質回収装置11から指令を出すように構成しても良い。
ろ過層51は、洗浄管53から高圧の空気を噴出させることにより、内部から洗浄される。この逆洗浄により、ろ過層51の内部に取り込まれた懸濁物質や、ろ過層51の表層に堆積した懸濁物質は、洗浄管53から噴出される空気の気泡55と共に、ろ過層51の上方水域54中に噴き上げられる。
懸濁物質は、気泡55と共に、浮体21の底面部に設けた截頭角錐状の内面23を有した懸濁物質取込部22まで浮上する。懸濁物質取込部22まで浮上した懸濁物質及び気泡55は、懸濁物質取込部22の中央部に向けて傾斜した形状により、更には気泡55に作用する浮力により、圧力調整室33にまで到達する。この最初の段階では、第1空気抜き弁36は開放状態にしているので、圧力調整室33内の水位hは0となっている。
気泡55と共に上昇する懸濁物質をある程度回収した後、第1空気抜き弁36を閉じ、第2空気抜き弁37を開いて、減圧装置34(エジェクター)を作動させる。ポンプ34aは、海水(以下、駆動水という。)を吸い上げ、ノズル34bに対し高圧の駆動水を送水する。
圧力調整室33内の空気は、ノズル34bから噴出される高圧の駆動水に引き込まれて減圧装置34内に吸引され、これにより圧力調整室33内は真空または真空に近い減圧状態となる。このように、減圧装置34を作動させた段階では、圧力調整室33内の水位hは、図1に示すように上昇する。また、減圧装置34を作動させている間は、気泡55と共に回収した懸濁物質に対して吸引力が作用するので、懸濁物質はろ過層51に沈降せず、圧力調整室33内に吸引された状態が維持される。
上記の状態を維持したまま、浮体式懸濁物質回収装置11は、浮体21に設けたエンジンを作動させ、ろ過層51以外の他のエリアに移動する。この他のエリアへの移動の間は、ろ過層51の表面と浮体21の底面の間に、クエット流(Couette Flow)と呼ばれる定常流が生じるので、浮体21の移動に伴い、圧力調整室33に集められた懸濁物質も浮体21と共に移動する。よって、圧力調整室33に集められた懸濁物質が移動途中の海域に拡散することはない。
クエット流について若干補足すると、次のとおりである。一般に、図3に示すように、間隔Hを空けて平行に配置した二つの平面A,B間に密度一様の流体が満たされているときに、平面Aを固定し、平面Bを平面Aに対し平行に速度Uで移動させると、平面A,B間に流体の粘性によって定常流(例えばC1,C2)が生じることが知られている。このX方向の定常流C1,C2がクエット流である。
クエット流は、平面A,B間の相対速度があまり大きくなく、平面A,B間で流れが層流の形に保たれるならば、その流速は、図3に示すように直線的に変化することが知られている。これを本発明の構成に当てはめると、平面Aはろ過層51などの海底面、平面Bは浮体式懸濁物質回収装置11の浮体21の底面となるので、浮体21を移動させている間は、浮体21の底面に、浮体21の移動方向と同じ向きにクエット流が作用することが理解できる。
従って、第1実施例の構成では、浮体21の移動に伴い、圧力調整室33に集められた懸濁物質も浮体21と共に移動するので、圧力調整室33に集められた懸濁物質が移動途中の海域に拡散することはない。
浮体式懸濁物質回収装置11は、ろ過層51の上方水域54以外の、懸濁物質を放出しても良い他の水域まで移動した後、ポンプ34aを停止させて、圧力調整室33内の真空状態もしくは減圧状態を解除する。これにより、圧力調整室33内の水位hは再び0となる。なお、圧力調整室33内に保持していた懸濁物質は、圧力調整室33内の水位hが0に戻るときに形成される波の流れに乗せて、浮体式懸濁物質回収装置11の周辺に放出することができる。
以上説明したように、浮体式懸濁物質回収装置11を用いた本発明にかかる懸濁物質の回収方法は、ろ過層51の洗浄時、ろ過層51の上方水域54に噴き上げられた懸濁物質を回収する方法であって、浮体21をろ過層51の上方水域54に位置付け、前記洗浄のタイミングに合わせて減圧装置34を作動し、圧力調節室33を真空状態もしくは減圧状態にすることにより前記懸濁物質を吸引した後、前記懸濁物質を吸引した状態を維持しながら浮体21をろ過層51以外の他の水域まで移動させ、この他の水域で圧力調節室33の真空状態もしくは減圧状態を解除することにより前記懸濁物質を放出するものである。
ところで、ろ過層51の上方に噴き上げられた濁水中には、目詰まりの原因となるシルト等の懸濁物質のみならず、ろ過層51のろ過性能を維持するために必要なろ過材(例えば、砂、アンスラサイト、ガーネット、ケイ砂等)も含まれる。
そこで、本実施例では、回収手段31は、懸濁物質とろ過材の沈降速度差を利用して懸濁物質を選択的に回収する構成を採用した。
具体的には、図4のグラフに示すように、ろ過材のうちの砂は、粒径が例えば0.4〜0.6mmの範囲であって沈降速度が速いため、例えば15秒後には60cm以上沈降しているが、ろ過層51の目詰まりの原因となる懸濁物質は、粒径が例えば0.04mm以下であって沈降速度が遅いため、例えば15秒後においても浮遊状態にある。
従って、浮体21を位置付ける際のろ過層51の表面からの距離と、ポンプ34aを作動させるタイミングを調整することにより、懸濁物質のみを選択的に吸引し、ろ過材はできるだけ吸引せずにろ過層51の表面に戻すことが可能となる。よって、この構成を採用した場合、ろ過層51のろ過性能が低下しない。
さらに言えば、上記沈降速度差を利用すれば、浮体21の移動速度、回収手段31の吸引力、浮体21を位置付ける際のろ過層51の表面からの距離を適切に設定することにより、ろ過層51の浸透面に残されるろ過材の粒径を概ね制御することも可能になる。これにより、その海域の濁質状況等に応じて、ろ過層51の浸透面(表層部)のろ過材の粒径を最適なものとすることができる。
浮体式懸濁物質回収装置11は、1つ目のろ過層51に対する処理が完了すると、次のろ過層51まで移動し、1つ目のろ過層51と同様、ろ過層51の空気又は空気混入水による洗浄と、ろ過層51の上方水域54に噴き上げられた懸濁物質の吸引及び回収を行う。
以上の第1実施例の構成によれば、洗浄時にろ過層51の上方に噴き上げられた懸濁物質は、浮体21に搭載された回収手段31によって吸引・回収されるので、懸濁物質を含む濁水がろ過層51の周辺に漂流することや、懸濁物質が再びろ過層51の表面に堆積することを防止できる。
次に、図5を参照して、第2実施例の浮体式懸濁物質回収装置12の構成を、既に説明した第1実施例の浮体式懸濁物質回収装置11とは異なる点を中心に説明する。
第2実施例の浮体式懸濁物質回収装置12は、既に説明した浮体21及び回収手段31の構成に加え、ろ過層51の上方水域54を、ろ過層51以外の他の水域56から区画して懸濁物質の拡散を防止するために、浮体21の周囲にシート41を設けた点に追加的な特徴を有するものである。
シート41は、例えば、浮体21の前後左右の4方向に取り付けられる。シート41の材質は、特に限定されないが、本実施例では、例えばプラスチック製(ポリプロピレン等)のシートを使用している。シート41の下端には、潮流に流されず概ね鉛直方向にシート41を海中に降ろすために、錘42が取り付けられている。
43は、シート41を昇降可能とするためのウインチを示している。本実施例では、ウインチ43を設けたので、シート41は、懸濁物質の回収を行うときのみ浮体21の周囲の海中に降ろし、浮体21を移動させるときなど必要でないときは、噴き上げて海上に回収することができる。
上記第2実施例の構成によれば、ろ過層51の上方水域54と、ろ過層51以外の他の水域56とは、シート41によって物理的に遮断される。よって、ろ過層51の洗浄時に、懸濁物質を含む濁水がろ過層51の周辺の海域に漂流することは、より確実に防止される。
以上の本発明の構成によれば、洗浄時にろ過層51の上方に噴き上げられた懸濁物質を含む濁水を速やかに吸引し、効率良く回収できるので、潮流や波浪による海水流動が少ない海域であってもろ過層51を設置できるようになる。また、本発明によれば、取水エリア全域に亘って懸濁物質の洗浄及び回収効果が高まるので、海水の浸透速度を高速にした場合でも、ろ過層51の目詰まりを確実に防止できて、チャネリング現象が生じる虞もなくなる。
また、本発明は、海水の浸透速度を高速に維持できるので、取水エリアの面積を従来よりも大幅に削減できるという副次的な効果もある。例えば10万t/日の取水量が求められる取水設備の場合、浸透速度が例えば5m/日の従来の浸透取水法であれば、必要な取水エリアの面積は20,000m2 となるが、浸透速度を例えば100m/日の高速に維持できれば、必要な取水エリアの面積は従来の1/20の1,000m2 にまで格段に削減できる。よって、設置時の工事も小規模化が可能になり、工事時の周囲環境への影響も格段に緩和できる。
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
例えば、上記の実施例では、浮体21の中央部に回収手段31の圧力調整室33を1つ設ける例を開示したが、圧力調整室33を設ける位置や圧力調整室33の数は、これに限らない。
また、上記の実施例では、截頭角錐状の内面23を有した懸濁物質取込部22を開示したが、懸濁物質取込部22の形状はこれに限らない。例えば、截頭円錐状の内面を有した懸濁物質取込部であっても良い。
11,12 浮体式懸濁物質回収装置
21 浮体
22 懸濁物質取込部
23 内面
31 回収手段
32 開口
33 圧力調節室
34 減圧装置
41 シート
51 ろ過層
52 取水配管
53 洗浄管
54 ろ過層の上方水域
55 気泡
56 他の水域

Claims (6)

  1. 取水配管と洗浄管が埋設されたろ過層の上方水域に移動可能な浮体と、
    前記洗浄管から前記ろ過層内に空気又は空気混入水を噴出し、前記ろ過層の目詰まりの原因となる懸濁物質を洗浄したときに、前記ろ過層の上方水域に噴き上げられた前記懸濁物質を前記洗浄時に生じる気泡と共に回収する回収手段と、を備え、
    前記浮体に前記回収手段を搭載したことを特徴とする浮体式懸濁物質回収装置。
  2. 前記浮体は、前記ろ過層上部に截頭角錐状又は截頭円錐状の内面を有した懸濁物質取込部を備え、この懸濁物質取込部の中央に前記回収手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の浮体式懸濁物質回収装置。
  3. 前記回収手段は、前記懸濁物質とろ過材の沈降速度差を利用して前記懸濁物質を選択的に回収することを特徴とする請求項1又は2に記載の浮体式懸濁物質回収装置。
  4. 前記ろ過層の上方水域を、前記ろ過層以外の他の水域から区画して懸濁物質の拡散を防止するために、前記浮体の周囲にシートを設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の浮体式懸濁物質回収装置。
  5. 前記回収手段は、前記ろ過層の上方水域に開放している開口を有した圧力調節室と、この圧力調節室内の空気を引き込む減圧装置とを備え、前記圧力調節室を真空状態もしくは減圧状態にすることにより前記懸濁物質を吸引することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の浮体式懸濁物質回収装置。
  6. 請求項5に記載の浮体式懸濁物質回収装置を用いて、ろ過層の洗浄時、前記ろ過層の上方水域に噴き上げられた懸濁物質を回収する方法であって、
    前記浮体を前記ろ過層の上方水域に位置付け、前記洗浄のタイミングに合わせて前記減圧装置を作動し、前記圧力調節室を真空状態もしくは減圧状態にすることにより前記懸濁物質を吸引した後、前記懸濁物質を吸引した状態を維持しながら前記浮体を前記ろ過層以外の他の水域まで移動させ、この他の水域で前記圧力調節室の真空状態もしくは減圧状態を解除することにより、前記懸濁物質を放出することを特徴とする懸濁物質の回収方法。
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