[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
本発明のセグメントコイルは、(1)断面矩形状の平角線から形成されると共に、環状コアに設けられたスロット部に装着されるセグメントコイルであって、素線と、該素線の表面を被覆するベース絶縁層とで構成されるコイル線の所定領域に、前記コイル線の周囲を囲むように付加絶縁層を備えると共に、前記付加絶縁層の被覆量が、隣接するセグメントコイル間の電圧差と、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差の少なくとも一方に応じて、コイル線の任意の方向で異なるセグメントコイルである。
コイル線の周囲を囲むように付加絶縁層を備えると共に、付加絶縁層の被覆量が、隣接するセグメントコイル間の電圧差と、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差の少なくとも一方に応じて、コイル線の任意の方向で異なる構成とすることで、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できる。また、隣接するセグメントコイル間の電圧差や、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差に応じて、付加絶縁層の被覆量を好適な厚みに設定することが可能であると共に、付加絶縁層に位置ズレや脱落が発生することを効果的に防止できる。
(2)前記付加絶縁層は、射出成形層として構成されていると共に、前記コイル線の外周面のうち、少なくとも一組の対向する面に備える付加絶縁層が、前記コイル線に設ける溝部に備える付加絶縁層で連結されていることが好ましい。
このような構成とすることで、形成容易な付加絶縁層とすることができる。また、外径増大を招くことなく、隣接するセグメントコイル間の電圧差と、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差の少なくとも一方に応じて、コイル線の周囲に設ける付加絶縁層の被覆量をコイル線の任意の方向で異なる厚みとすることができる。
(3)前記溝部は、所定の間隔を空けて並列配置される複数本の線条溝として構成されていることが好ましい。
このような構成とすることで、付加絶縁層を設ける領域を削減することができ、省コスト化を実現することができる。
(4)前記溝部の表面に、凹凸を設けてあることが好ましい。
このような構成とすることで、コイル線の表面に対する付加絶縁層の付着性を効果的に向上させることができる。
(5)前記溝部の表面に設ける凹凸が、溝部を研磨する方法又は溝部をエンボス加工する方法により形成されたものであることが好ましい。
このような構成とすることで、凹凸の形成を容易なものとすることができる。
(6)前記ベース絶縁層と、前記付加絶縁層との間に、接着層を備えることが好ましい。
このような構成とすることで、コイル線の表面に対する付加絶縁層の付着性を一段と効果的に向上させることができる。
また、本発明のコイル線材は、(7)上記(1)から上記(6)の何れか1つに記載のセグメントコイルを形成するためのコイル線材であって、所定のセグメントコイルに対応する所要の長さの素線と、該素線の表面を被覆するベース絶縁層と、該ベース絶縁層の所定領域の周囲を被覆する付加絶縁層とを備えると共に、前記付加絶縁層の被覆量が、外周の任意の方向で異なるコイル線材である。
ベース絶縁層の所定領域の周囲を被覆する付加絶縁層の被覆量が、外周の任意の方向で異なるコイル線材とすることで、セグメントコイルを形成した際に、隣接するセグメントコイル間の電圧差や、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差に応じて、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できる。また、隣接するセグメントコイル間の電圧差や、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差に応じて、付加絶縁層の被覆量を好適な厚みに設定することが可能となる。
また、本発明のセグメントコイルの製造方法は、(8)上記(1)に記載のセグメントコイルの製造方法であって、断面矩形状の平角線から形成される素線を準備する素線準備工程と、前記素線の表面にベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成工程と、ベース絶縁層が形成されたコイル線の所定領域に、コイル線の周囲を囲むように付加絶縁層を形成する付加絶縁層形成工程と、付加絶縁層が形成されたコイル線を所定の形状に曲げ加工する加工工程とを少なくとも備え、前記付加絶縁層形成工程において、隣接するセグメントコイル間の電圧差と、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差の少なくとも一方に応じて、コイル線の任意の方向で付加絶縁層の被覆量が異なるように付加絶縁層を形成するセグメントコイルの製造方法である。
コイル線の周囲を囲むように付加絶縁層を形成すると共に、隣接するセグメントコイル間の電圧差と、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差の少なくとも一方に応じて、コイル線の任意の方向で付加絶縁層の被覆量を異なる厚みに形成することで、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できる。また、隣接するセグメントコイル間の電圧差や、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差に応じて、付加絶縁層の被覆量を好適な厚みにすることが可能であると共に、付加絶縁層に位置ズレや脱落が発生することを効果的に防止できる。
(9)前記コイル線の任意の方向で付加絶縁層の被覆量が異なるように付加絶縁層を形成する手段として、ベース絶縁層形成工程と付加絶縁層形成工程との間に、前記コイル線の外周面のうち、少なくとも一面の所定領域に塑性加工を施すことで、その面と隣接する二面に連通する溝部を形成する溝部形成工程を備え、且つ前記付加絶縁層形成工程は、コイル線の前記溝部を備える領域を囲むように、射出成形金型を用いてコイル線の表面に樹脂を被覆させる手法によって行われることが好ましい。
このような構成とすることで、形成容易な付加絶縁層とすることができる。また、外径増大を招くことなく、隣接するセグメントコイル間の電圧差と、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差の少なくとも一方に応じて、コイル線の任意の方向で付加絶縁層の被覆量を異なる厚みに形成することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
まず、図1〜図11を参照して、本発明の第1の実施形態に係るセグメントコイル1を説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1は、平角線で構成されるいわゆる被覆電線で、ステータ2を構成する環状コア3に整列配置されて電動機を構成するものである。このセグメントコイル1は、図7に示すように、導体からなる素線Rと、素線Rを被覆する絶縁被膜たる絶縁層Zとから構成される。なお、環状コア3のスロット部4には後述するようにスロット紙7が装着されているが、説明の便宜上、図1ではスロット紙7を省略して示すこととする。
一体コアである環状コア3は磁性材料から形成された厚肉環状構造を備えており、内周部に軸方向に貫通すると共に、内周面に開口するスロット部4が所定間隔で形成されている。また、図10(B)、図11に示すように、スロット部4には絶縁のためのスロット紙7(いわゆるスロット絶縁紙)が装着されている。後述するストレート部1bを、スロット紙7を装着したスロット部4に収容することにより、セグメントコイル1が環状コア3に組み付けられる。
なお、スロット紙7としては、ノーメックス絶縁紙等、スロット紙として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。また、図11(B)に示す環状コア3に装着したスロット紙7間の幅Gは、後述するベース絶縁層Z1を備えるコイル線6の幅H以上であることが必要である。具体的には、幅Gは幅Hの100%〜120%程度、より好ましくは100%〜105%程度であることが望ましい。120%を超えるとスロット紙7とセグメントコイル1との間の隙が大きくなり、セグメントコイル1がぐらつくからであり、100%未満であるとセグメントコイル1を環状コア3に組み付けることができないからである。
環状コア3を構成する材料は特に限定されることはない。例えば、磁性粉体を圧粉成形して形成されたコアや、磁性鋼板を積層して形成されるコアを採用することができる。
例えば、三相交流電動機においては、U相、V相及びW相にグループ分けされたそれぞれ複数のセグメントコイル1が、スロット紙7を装着したスロット部4に所定間隔で組み付けられる。
図2に示すように、ステータ2の各スロット部4の半径方向中間部に装着される代表的な形態のセグメントコイル1(1A〜1E)は、スロット紙7を装着したスロット部4に収容される一対のストレート部1bと、スロット部4の軸方向両端部から延出させられると共に、山形形状を備える一対のコイルエンド部1a、1cとを備える略六角形状に形成されている。コイルエンド部1cにおいて同一のスロット部4に装着された隣接するセグメントコイルが接続されると共に、他のスロット部4に装着されたセグメントコイルとの接続が行われる。他のスロット部4に装着されたセグメントコイルとの接続を行うため、ステータ2の半径方向最内側及び最外側に装着されるセグメントコイル20、21においては、接続パターンに応じて複数の形態を備えるコイルエンド部が設けられている。以下の説明は、理解を容易にするため、図2に示す形態のセグメントコイル1について行う。
一方のコイルエンド部1aは、所定のスロット部4に収容された一対の直線部1bを掛け渡し状に接続する山形状に形成されている。一方、他方のコイルエンド部1cには、スロット部4に隣接して収容されたセグメントコイルとの接続を行うための接続部5a、5bが設けられており、接続されたセグメントコイルのコイルエンド部と共働して山形形状が構成される。なお、図1に示すステータ2の半径方向最内側と最外側に装着されるセグメントコイル20、21のコイルエンド部1cは、上述したように、他のスロット部4に装着されたセグメントコイルと接続できる形態に形成される。
また、図2、図3(A)に簡略化して示すように、コイルエンド部1a、1cの山形形状の裾部には、環状コア3の径方向外方へコイル線を傾斜させることで傾斜部Kを設ける構成としてある。なお、本実施形態においては、図1に一部を簡略化して示すように、環状コア3の径方向の外側に配置されるセグメントコイルほど、傾斜部Kの傾斜角度を大きくする構成としてある。
なお、図1に示すステータ2の半径方向最内側と最外側に装着されるセグメントコイル20、21のコイルエンド部1cは、既述したように、他のスロット部に装着されたセグメントコイルと接続できる形態に形成される。
また、本実施形態においては、図2、図3、図7に示すように、セグメントコイル1を形成する絶縁層Zの構成を、ストレート部1bと、コイルエンド部1a、1cとで異なる構成としてある。
より具体的には、ストレート部1bにおいては図7(A)に示すように、素線Rの表面にベース絶縁層Z1だけを被覆させることで絶縁層Zを形成する構成としてある。これに対してコイルエンド部1a、1cの所定領域においては図2、図3、図7(B)に示すように、素線Rの表面にベース絶縁層Z1を被覆して構成されるコイル線6の周囲を囲むように付加絶縁層Z2を被覆させることで、絶縁層Zを形成する構成としてある。なお、ここで「所定領域」とは、「コイルエンド部1a、1cにおいて、異相の隣接セグメントコイルが近接する領域、より具体的には素線Rの状態で異相の隣接する素線R間の距離が数μm〜数百μm程度となる領域」のことを意味するものとする。また、「コイル線6の周囲」とは、コイル線6の延在方向に直交する断面の周囲を意味するものである。
更に、本発明の第1の実施形態においては、隣接するセグメントコイル間の電圧差に応じて、付加絶縁層Z2の被覆量を、コイル線6の任意の方向で異ならせる構成としてある。なお、ここで「コイル線6の任意の方向」とは、断面矩形状の平角線で構成されるコイル線6の外周面を構成する四面における環状コア3との関係を意味するものである。より具体的には、図3(A)、図4、図6に示すように、コイル線6の外周面を構成する四面のうち、環状コア3の径方向の面においては、コイル線6の表面全体に付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。なお、図4(A)は図3(A)のコイルエンド部1aにおいて、付加絶縁層Z2を備える領域を環状コア3の軸方向から見た図であり、図4(B)は図3(A)のコイルエンド部1aにおいて、付加絶縁層Z2を備える領域を環状コア3の径方向から見た図である。
これに対して、コイル線6の外周面を構成する四面のうち、環状コア3の軸方向(周方向)の面においては、コイル線6の表面の一部に付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。より具体的には、本発明の第1の実施形態においては図4に示すように、コイル線6の表面に所定の間隔を空けて並列配置させて設ける断面半円形の四本の線条溝C(溝部)を埋めるように付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。凹所たるこの線条溝Cは、冶具を用いて図4(B)の白抜き矢印で示す方向にコイル線6の表面をプレス加工(塑性加工)することで形成することができる。なお、コイル線6の表面をプレス加工する際の変移量は、コイル線6の初期の幅に対して5%〜20%程度であることが望ましい。5%未満であると所望の線条溝Cを形成することができないからであり、20%を超えるとコイル線6のベース絶縁層Z1の皮膜が破壊されるからである。また、線条溝Cの数、大きさ、断面形状、間隔等は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。但し、線条溝Cの深さは、0.2mm程度であることが望ましい。
また、図3、図4に示すように、コイル線6の外周面のうち、環状コア3の径方向に対向する二面に備える付加絶縁層Z2が、線条溝Cに備える付加絶縁層Z2で連結されている。つまり、コイル線6の任意の方向で付加絶縁層Z2の被覆量を異ならせて、コイル線6の周囲を囲むように付加絶縁層Z2が設けられている。
本実施形態では、三相交流電動機の各相を構成するコイルのうち、図1に示すステータ2の半径方向最内周側と半径方向最外周側に配置されるセグメントコイル20、21を除く、各セグメントコイル1A〜1Eのコイルエンド部1a、1cにおける山形形状の一方の斜辺部10a、11aに、四つのコイルが当接あるいは近接した状態で配列される。
図5は、一のセグメントコイル1Aと、このセグメントコイル1Aの一方の斜辺部10aに対接させられるセグメントコイル1B、1C、1D、1Eを注出して模式的に表した正面図である。
図5に示すように、一のセグメントコイル1Aにおける左側の斜辺部10aには、隣接する四つのセグメントコイル1B、1C、1D、1Eの各右側の斜辺部10bが所定の間隔で交差するように対接させられる。また、図示していないが、一のセグメントコイル1Aにおける左側の斜辺部11aには、隣接する四つのセグメントコイル1B、1C、1D、1Eの各右側の斜辺部11bが所定の間隔で交差するように対接させられる。
よって、既述したように本発明の第1の実施形態においては、一のセグメントコイル1Aにおける左側の斜辺部10a、11aにおいて、他のセグメントコイル1B、1C、1D、1Eが対接させられる面である環状コア3の径方向の面においては、コイル線6の所定領域の表面全体に付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。
また、図3(B)に示すように、本発明の第1の実施形態においては、コイルエンド部1cに設ける付加絶縁層Z2の接続部5a、5b側の端部にテーパー部Tを設ける構成としてある。なお、テーパー部Tの傾斜角度Lは、20度〜99度程度、より好ましくは60度〜99度程度であることが望ましい。99度を超えると、複数のセグメントコイルを仮組する際や、仮組した複数のセグメントコイルをスロット部4に挿入する際に、付加絶縁層Z2が他のセグメントコイルやスロット紙7と接触する際の接触面の抵抗を効果的に低減させることができず、付加絶縁層Z2が剥離することを効果的に防止することができないからである。また、20度未満であると、付加絶縁層Z2の被覆量が不足し、良好な絶縁性を確保できないからである。
なお、図7(A)に示す素線Rの幅Mは、2.5mm〜5.0mm程度、より好ましくは3.0mm〜4.0mm程度とすることが望ましい。また図7(A)に示す素線Rの厚みNは、1.0mm〜2.0mm程度、より好ましくは1.5mm〜2.0mm程度とすることが望ましい。なお、素線Rは、銅等、コイルを形成する素線として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また、ベース絶縁層Z1の材質としては、ポリアミドイミド、ポリイミド等を用いることができる。またベース絶縁層Z1の厚みはコイルターン間の設計電圧に対応した厚みがあればよく、例えば設計電圧が500Vの場合は、15μm〜30μm程度とすることが望ましく、より好適には15μm〜25μm程度とすることが望ましい。15μm未満では部分放電の発生による皮膜劣化や製造時のピンホール発生確率が増加し、30μmを超えるとスロット部4内の占積率の低下による発熱増加や外径増大による組み付け性の低下が生じるからである。またその形成方法は、ダイス引き、電着等を用いることができる。なお、ストレート部1b、コイルエンド部1a、1cのベース絶縁層Z1は、同一工程で一体的に形成することができる。
また、付加絶縁層Z2は、射出成形金型を用いて、ベース絶縁層Z1上に結晶性エンジニアリングプラスチックや、後架橋可能な熱可塑性樹脂等を被覆させることで形成することができる。なお、後架橋可能な熱可塑性樹脂を用いる場合は、ベース絶縁層Z1に付加絶縁層Z2を被覆させた後、電離放射の照射により、付加絶縁層Z2を形成する熱可塑性樹脂を架橋することが好ましい。
なお、結晶性エンジニアリングプラスチックとしては、液晶ポリマー、高分子量ポリフェニレンサルファイド(Poly Phenylene Sulfide:以下、PPSとする。)、ポリエーテルエーテルケトン(Poly Ether Ether Ketone:以下、PEEKとする。)を用いることができる。なお、ここで「高分子量PPS」とは、メルトフローレート(Melt Flow Rate:以下、MFRとする。)が温度315℃、荷重5.0kgの条件下で200g/10min以下のPPSのことを意味するものである。
また、熱可塑性樹脂としては、コイルの絶縁被膜を形成するものとして通常使用されるものを用いることができる。より好適には、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂や、架橋可能な熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。なお、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンーエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリアミド6、66、11、12、610、46等の脂肪族ポリアミド、ポリアミド4T、6T、9T、MXD6、ポリフタルアミドを含む半芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアセタール及びこれらの共重合体、ポリマーアロイ等が挙げられる。また、必要に応じてエラストマーやシリコーンで変性したり、フィラーを配合したりすることができる。架橋可能な熱可塑性樹脂としては、先の耐熱性に優れた熱可塑性樹脂に加えて、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、シクロペンテン、2−ノルボルネン、シクロテトラドデセン系単量体等の環状オレフィン単量体を重合して得られる環状ポリオレフィンを用いることが望ましい。
なお、付加絶縁層Z2の形成方法は、射出成形に限るものではなく、他の形成方法を用いる構成としてもよい。例えば、ポッティング(樹脂盛り)、造形等の形成方法を用いることができる。また、このような形成方法を用いる場合は、必ずしも付加絶縁層Z2は初めからコイル線6の全周に連結されている必要はなく、例えば全周を連結された状態から1箇所だけ長さ方向に切り込みのある成形品をコイル線6に嵌め込んで装着した後、接着等の固定処理により付加絶縁層Z2を連結させても良い。
また、モータ相間の電圧は、インバータサージ等の影響により、入力電圧の約2倍のピーク電圧が印加されることから、付加絶縁層Z2の厚みは、例えば設計電圧が1000Vの場合は、40μm〜200μm程度とすることが望ましく、より好ましくは80μm〜120μm程度とすることが望ましい。40μm未満では部分放電による皮膜劣化が発生し、200μmを超えるとコイルエンド部の線間距離増加による寸法増大を招くからである。
次に、図8〜図11を参照して、本発明の第1の実施形態に係るセグメントコイル1、ステータ2の製造方法を説明する。
まず、図8(A)を参照して、素線準備工程により、断面矩形状の平角線から形成される素線を準備する。そして、ベース絶縁層形成工程により、後に接続部5a、5bとなる部分を除き、素線の表面にベース絶縁層Z1を形成する。これによりコイル線6が形成される。
そして、溝部形成工程により、ベース絶縁層Z1が形成されたコイル線6の所定領域に塑性加工(プレス加工)を施すことで溝部を形成する。具体的には図8(A)に白抜き矢印で示すように、後に付加絶縁層Z2を形成するコイル線6の外周面のうち、環状コア3の軸方向に配置される二面に塑性加工(プレス加工)を施すことで、それらの面と隣接する二面である、環状コア3の径方向に配置される面に連通する断面半円形の線条溝C(溝部)を形成する。なお、塑性加工を行う際には、コイル線6の外径が増大することを望まない任意の面を治具で拘束して行う事が有用である。
そして、付加絶縁層形成工程により、コイル線6の所定領域の周囲を囲むように付加絶縁層Z2を形成する。より具体的には、コイル線6の線条溝Cを備える領域の外周に射出成形金型を用いて樹脂を被覆させることで付加絶縁層Z2を形成する。これによりセグメントコイルを形成するためのコイル線材Jが形成される。
この際、環状コア3の軸方向に配置される面のうち、線条溝Cを形成していない部分においては図8(B)に示すように、ベース絶縁層Z1が射出成形金型30と隙間なく密着する。一方、環状コア3の軸方向に配置される面のうち、線条溝Cを形成している部分においては図8(C)に示すように、ベース絶縁層Z1と射出成形金型30との間に、線条溝Cの分だけ隙間Uが生じる。よって、線条溝Cを形成していない部分においては、コイル線6の外周面を構成する四面のうち、環状コア3の径方向の二面に付加絶縁層Z2が形成される。一方、線条溝Cを形成している部分においては、コイル線6の外周面を構成する四面に付加絶縁層Z2が形成される。つまり、付加絶縁層形成工程を経ることで、図4に示すよう、コイル線6における環状コア3の径方向と軸方向(周方向)とで被覆量の異なる付加絶縁層Z2が形成される。なお、図8(B)は、射出成形金型を配置した状態における図4(A)のD−D線方向の断面を示す図であり、図8(C)は、射出成形金型を配置した状態における図4(A)のE−E線方向の断面を示す図である。
そして、加工工程により、付加絶縁層Z2が形成されたコイル線6を所定の形状に曲げ加工する。具体的には、図9(A)〜図9(C)を参照して、押圧冶具40を用いてコイル線6を屈曲させることで、コイルエンド部1aを構成する斜辺部10a、10bを形成する。これにより、山形形状のコイルエンド部1aと、一対のストレート部1bとで構成される略U字形状のコイル線6が形成される。そして、図示していないが、冶具を用いてコイル線6の所定位置(山形形状の裾部となる位置)で環状コア3の径方向外方へコイル線6を傾斜させて傾斜部Kを形成する。
そして、図10(A)を参照して、スロット部4に組み付けられる複数本のコイル線6を仮組する。なお、図10(A)は、スロット部4に組み付けられる複数本のコイル線6のうち一部を示すものである。
そして、図10(B)を参照して、スロット紙7を装着したスロット部4に、仮組した複数本のコイル線6を挿入する。
そして、図10(B)、図11(A)を参照して、冶具50に備える凹部51に、コイル線6の接続部5a、5bを嵌合させた状態で、所定方向に冶具50を回転させることで、複数本のコイル線6に山形形状のコイルエンド部1cを形成する。その後冶具50を取り外す。
そして、所定のスロット部4に配置されるU相、V相、W相を構成する所定数のセグメントコイルが接続部5a、5bで溶接等を用いて接続される。これにより、巻回コイルが形成されると共に、U相、V相、W相を構成する複数の巻回コイルが所定位置で直列接続や並列接続される。
以上の工程を経ることで、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1、ステータ2が形成される。
このような構成からなる本発明の第1の実施形態に係るセグメントコイル1、セグメントコイル1を形成するためのコイル線材J、セグメントコイル1の製造方法は以下の効果を奏する。
ストレート部1bにおいては、素線Rの表面にベース絶縁層Z1だけを形成することで、スロット部4内における占積率を効果的に向上させることができるセグメントコイル1とすることができる。よって高効率なステータ2とすることができる。
一方、斜辺部10a、11aの所定領域においては、ベース絶縁層Z1を形成すると共に、環状コア3の径方向の表面全体に付加絶縁層Z2を形成することで、隣接するセグメントコイルが近接する領域において対接するセグメントコイル1B、1C、1D、1Eとの間の隙間を効果的に拡大することができる。よって、部分放電が発生することを防止することができ、絶縁層Zに劣化が生じることを防止することができるセグメントコイル1とすることができる。従って、良好な絶縁性を維持することができるセグメントコイル1、ステータ2とすることができる。
また、ベース絶縁層Z1と付加絶縁層Z2とで絶縁層Zを形成する構成とすることで、絶縁層Zの厚みにバリエーションを持たせることができる。より具体的には、占積率を向上させたいストレート部1bでは絶縁層Zの厚みを薄くすることができると共に、コイルエンド部1a、1cにおいて部分放電に伴う絶縁劣化を防止したい領域においては絶縁層Zの厚みを厚くすることができる。このような構成とすることで、厚みを大きくする必要があるコイルエンド部1a、1cの所定領域の厚みに合わせて素線Rの表面に絶縁層Zを一体的に形成する場合に比べて、製造コストを効果的に抑えることができる。
また、付加絶縁層Z2の構成を、環状コア3の径方向に配置されるものと、環状コア3の軸方向(周方向)に配置されるものとで異なる構成(被覆量)とすることで、隣接するコイルとの間における部分放電を効果的に防止できるコイル線材J、セグメントコイル1とすることができる。また、隣接するセグメントコイル間の電圧差に応じて、付加絶縁層Z2の被覆量を好適な厚みにすることが可能なコイル線材J、セグメントコイル1とすることができる。
具体的には、環状コア3の径方向に配置される面では、コイル線6の所定領域の表面全体に付加絶縁層Z2を設け、環状コア3の軸方向(周方向)に配置される面では、コイル線6の表面に所定の間隔を空けて並列配置させて設けられる線条溝Cを埋めるように付加絶縁層Z2を設ける構成としてある。更に、環状コア3の径方向に配置される付加絶縁層Z2と、環状コア3の軸方向(周方向)に配置される付加絶縁層Z2とを相互に連結させる構成としてある。つまり、環状コア3の径方向に対向する二面にそれぞれ備える付加絶縁層Z2が、環状コア3の軸方向(周方向)に対向する二面にそれぞれに備える線条溝Cを埋める付加絶縁層Z2で連結されている。
このような構成とすることで、部分放電を防止する必要がある環状コア3の径方向においては、部分放電を効果的に防止することができる。また、線条溝Cを設けている部分においては、コイル線6の外径増大を招くことなく、コイル線6の周囲四面に付加絶縁層Z2を設けることができる。よって、コイル線6に対する付加絶縁層Z2の密着性を向上させることができる。従って、付加絶縁層Z2に位置ズレや脱落が発生することを効果的に防止することができ、付加絶縁層Z2の強度を効果的に向上させることができる。更に、コイル線6の外径増大を招くことがないことから、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cの所定領域の周囲四面に付加絶縁層Z2を備える構成であっても、スロット紙7を装着した環状コア3(一体コア)のスロット部4にセグメントコイルを組み付けることが可能で、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止できるセグメントコイル1とすることができる。
一方、線条溝Cを設けていない部分においては、コイル線6の外周面を構成する四面のうち、環状コア3の径方向の二面にそれぞれ付加絶縁層Z2を備えることができる。つまり、既述したように、線条溝Cを設けていない部分においては、ベース絶縁層Z1が射出成形金型30と隙間なく密着することで、コイル線6と射出成形金型30との位置決めが容易となると共に、射出成形時の射出圧に伴うコイル線6の変形を効果的に低減させることができる。よって、製造効率を良いセグメントコイル1及びセグメントコイルの製造方法とすることができる。
更に、付加絶縁層形成工程において、環状コア3の径方向に対向する面にそれぞれ形成する付加絶縁層Z2の流路として線条溝Cを利用することができる。よって、射出成形時における樹脂の流動性を効果的に向上させることができ、製造効率の良いセグメントコイル1及びセグメントコイルの製造方法とすることができる。
また、所定の間隔を空けて並列配置される複数本の線条溝Cで溝部を構成することで、付加絶縁層Z2を設ける領域を効果的に削減することができ、省コスト化を実現することができる。
また、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2の接続部5a、5b側の端部にテーパー部Tを設ける構成とすることで、斜辺部11aに設ける付加絶縁層Z2が他のセグメントコイルやスロット紙7と接触する場合の接触面の抵抗を低減させることができる。よって、複数のコイル線6を仮組する際や仮組した複数のコイル線6をスロット部4に挿入する際に、付加絶縁層Z2が他のコイル線6やスロット紙7と接触することで剥離することを効果的に防止することができる。更に、テーパー部Tの傾斜角度Lを20度〜99度程度とすることで、付加絶縁層Z2の効果的な剥離防止と良好な絶縁性の確保とを同時に実現することができる。
また、コイルエンド部1a、1cの山形形状の裾部に傾斜部Kを設けると共に、環状コア3の径方向の外側に配置されるセグメントコイルほど、傾斜部Kの傾斜角度を大きくする構成とすることで、コイルエンド部に付加絶縁層Z2を設ける構成であっても、スロット部4の内部においては、同一スロット部4内に配置される隣接するセグメントコイルにおけるストレート部間を一段と効果的に近接させることができる。よって、付加絶縁層Z2の厚みにかかわらず、同一スロット部4内における隣接するストレート部間を近接させることができ、スロット部4内における高占積率を効果的に実現することができる。
また、結晶性エンジニアリングプラスチックを用いて、付加絶縁層Z2を形成する構成とすれば、耐薬品性、耐ストレスクラック性、耐熱性に優れた付加絶縁層Z2とすることができる。更に結晶性エンジニアリングプラスチックとして、液晶ポリマー、高分子量PPS、PEEKを用いる構成とすれば、一段と耐熱性に優れ、熱劣化によるクラックの発生、およびこれに伴う絶縁性能の低下を防止できる付加絶縁層Z2とすることができる。また、液晶ポリマーにおいては、溶融時の流動性が低いことから、特に優れた膜厚均一性を得ることができる
また、架橋可能な熱可塑性樹脂を用いて、電離放射の照射により、付加絶縁層Z2を形成する熱可塑性樹脂を架橋する構成とする場合においては、一段と耐熱性に優れた付加絶縁層Z2とすることができる。
つまり、図15(A)に示すように、環状コアに整列配置されて電動機を構成する従来のセグメントコイル8は、既述した本発明の実施形態に係るセグメントコイル1と同様に、ストレート部と一対のコイルエンド部とを備えると共に、ストレート部とコイルエンド部との両方において素線Rの表面全体に均一な厚みの絶縁層Zを設けるものが一般的であった。つまり、絶縁層の厚みに厚薄がないセグメントコイルとするものが一般的であった。
より具体的には、部分放電に伴う絶縁層Zの劣化を防止するために、絶縁層Zの厚みを大きくする必要があるコイルエンド部の厚みに合わせて素線Rの表面に厚みが均一な絶縁層Zを一体的に形成する構成であった。よって、絶縁層Zの厚みを大きくする必要がないストレート部においても絶縁層Zの厚みが大きくなることで、スロット部内における占積率を向上させることができないと共に、製造コストを抑えることができないという不都合があった。
このような不都合に対して、近年、電圧差に対応して厚みの異なる絶縁層を設けるセグメントコイルが開発されている。このようなセグメントコイルは、既述した本発明の実施形態に係るセグメントコイル1と同様に、ストレート部と一対のコイルエンド部とを備えると共に、他のセグメントコイルと対接するコイルエンド部の所定領域に厚みの大きい付加絶縁層を設けるものが一般的である。また、コイル線の周囲に設ける付加絶縁層の厚みを、平角線の外周面を構成する四面において全て同じ厚みの付加絶縁層とするものが一般的である。
従って、このようなセグメントコイルにおいては、コイル線の周囲に設ける付加絶縁層の厚みが、隣接するセグメントコイル間の電圧差に応じて最適な厚みに構成されていないという不都合があった。
また、このようなセグメントコイルを一体コアのスロット部に組み付ける場合、既述した本発明の実施形態に係るセグメントコイル1(コイル線6)と同様に、付加絶縁層を備えるコイル線を略U字形状に成形した後、接続部を備えるコイルエンド部側(略U字形状の開口部側)からスロット部にコイル線を挿入させて組み付ける。
従って、図15(B)に示すように、スロット部61にスロット紙62を装着した環状コア60にコイル線70を組み付ける場合には、スロット紙62の厚み分だけコイル線70を挿入するための空間が狭くなる。より具体的には、コイル線70を挿入するため幅が、スロット部61の幅Pよりも小さいスロット紙62間の幅Qとなる。しかし、既述したように、近年開発されている図15(B)に示すようなセグメントコイル9においては、コイル線70の全周に付加絶縁層Z2を設けてある。よって、接続部61、62を備えるコイルエンド部70c側からスロット部61にコイル線70を挿入する際、付加絶縁層Z2部分の幅Sがスロット紙62間の幅Qよりも大きくなることで、スロット部61にコイル線70を挿入することができないという不都合があった。
よって、スロット紙を装着した一体コアに組み付けるセグメントコイルにおいては、接続部を備えるコイルエンド部に厚みの大きい付加絶縁層を設けることができず、隣接するコイル等との間における部分放電を効果的に防止することができないという不都合があった。
従って、本発明の実施形態に係るセグメントコイル1の構成とすることで、隣接するセグメントコイルとの間における部分放電を効果的に防止できる。また、隣接するセグメントコイル間の電圧差に応じて、付加絶縁層Z2の被覆量を好適な厚みに設定することが可能であると共に、コイル線6の周囲に付加絶縁層Z2を設けることで、付加絶縁層Z2に位置ズレや脱落が発生することを効果的に防止できる。また、接続部5a、5bを備えるコイルエンド部1cに付加絶縁層Z2を設ける構成であっても、スロット紙7を装着した環状コア3(一体コア)のスロット部4にセグメントコイル1を組み付けることができる。
次に図12、図13を参照して、本発明の第2の実施形態に係るセグメントコイルを説明する。
本発明の第2の実施形態に係るセグメントコイル100は、既述したセグメントコイル1に対して、斜辺部10aに設ける付加絶縁層Z2の構成のみを異なる構成としたものである。よって、既述したセグメントコイル1と同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号、同一アルファベットを付し、以下詳細な説明は省略するものとする。
図12を参照して、本発明の第2の実施形態に係るセグメントコイル100においては、斜辺部10aに設ける付加絶縁層Z2の構成を、コイル線6の外周面を構成する四面のうち、一面には複数の線条溝Cを埋める付加絶縁層Z2を備え、残る三面にはコイル線6の表面の略全面を被覆する付加絶縁層Z2を備える構成とするものである。具体的には、コイル線6の外周面を構成する四面のうち、環状コア3の軸方向の一面には線条溝Cを埋める付加絶縁層Z2を備え、残る三面にはコイル線6の表面の略全面を被覆する付加絶縁層Z2を備える構成とするものである。更に、コイル線6の表面の略全面を被覆する付加絶縁層Z2を備える三面のうち、環状コア3の径方向の一面で且つ隣接する線条溝Cの間にスリットVを設ける構成とするものである。
このような構成とすることで、斜辺部10aにおいて、隣接するセグメントコイル間の電圧差に応じて、付加絶縁層Z2の被覆量を好適な厚みに設定することが可能であると共に、付加絶縁層Z2に位置ズレや脱落が発生することを効果的に防止することができる。
また、付加絶縁層形成工程においては、図13(B)に示すように、スリットVを設ける位置に、下側に配置する射出成形金型30を挿入することができる。よって、隣接する線条溝Cの間のコイル線6の表面と、スリットVを形成する部分に露出されるコイル線6の表面との二面に射出成形金型30を密着させて位置合わせすることができる。よって、射出成形時の射出圧に伴うコイル線6の変形を効果的に低減させることができる。従って、製造効率を良いセグメントコイル100及びセグメントコイルの製造方法とすることができる。また、射出成形時における樹脂の流動長を低減させることができ、付加絶縁層Z2の形成精度を向上させることができる。なお、スリットの数、大きさ、形成位置等は本発明の第2の実施形態に係るものに限るものではなく、適宜変更可能である。但し、ゲートと反対側で且つ隣接する線条溝Cの間にスリットVを形成することが望ましい。なお、図13(A)は、射出成形金型を配置した状態における図12(A)のX―X線方向の断面を示す図であり、図13(B)は、射出成形金型を配置した状態における図12(A)のY―Y線方向の断面を示す図である。
次に図14を参照して、本発明の第3の実施形態に係るセグメントコイルを説明する。
本発明の第3の実施形態に係るセグメントコイル200は、既述したセグメントコイル1に対して、斜辺部10a、11aに設ける付加絶縁層Z2の構成のみを異なる構成としたものである。よって、既述したセグメントコイル1と同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号、同一アルファベットを付し、以下詳細な説明は省略するものとする。
図14を参照して、本発明の第3の実施形態に係るセグメントコイル200においては、斜辺部10a、11aに設ける付加絶縁層Z2の構成を、コイル線6の外周面を構成する四面のうち、環状コア3の径方向の二面にはコイル線6の表面全体を被覆する付加絶縁層Z2を設け、残る環状コア3の軸方向の二面には溝部たる平坦溝Wを埋める付加絶縁層Z2を設ける構成とするものである。なお、ここで「平坦溝」とは、図14に示すように、コイル線6の表面に、矩形状の平坦面を備える冶具(図示しない)を用いて塑性加工(プレス加工)を施すことで形成される溝部のことを意味するものである。
更に、本発明の第3の実施形態においては詳しくは図示していないが、溝部たる平坦溝Wの表面に、付加絶縁層Z2の付着性を向上させるための付着性向上処理を施してある。本発明の第3の実施形態においては、付着性向上処理として、平坦溝Wの表面に凹凸を設けてある。このような凹凸は、平坦溝Wの表面を研磨材等で研磨する方法又は平坦溝Wの表面をエンボス加工する方法によって形成されることが望ましい。
用いられる研磨剤としては、極小のアルミナ、シリカ、化学繊維等が挙げられる。また、研磨は、サンドブラスト、即ち極小のアルミナ、シリカ粒等を風圧で、コイル線6の表面にぶつける装置、ウェットブラスト、即ち極小のアルミナ、シリカ粒等を水に混ぜ込み、水圧でコイル線6にぶつける装置、ブラシ研磨、即ち化学繊維のロールブラシが回転している中にコイル線6を通して、表面に凹凸を作る装置等を用いて行うことができる。
また、エンボス加工としては、例えば、加熱された凹凸のついた金属ロールとコイル線6とを接触させて、コイル線6に凹凸をつける方法により行うことができる。なお、この付着性向上処理は、コイル線6に塑性加工を施す前後のどちらで行ってもよい。
このように平坦溝Wを設ける構成とすることで、塑性加工を施す部分の周辺部に肉が盛り上がる(波打つ)ことを効果的に防止することができる。よって、付加絶縁層Z2の形成精度を効果的に向上させることができる。また、付着性向上処理を施すことで、コイル線6の表面に対する付加絶縁層Z2の付着性を効果的に向上させることができる。よって、付加絶縁層Z2の剥離や脱落を一段と効果的に防止することができる。
なお、本実施形態においては、斜辺部10a、11aに付加絶縁層Z2を設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、付加絶縁層Z2を設ける位置は適宜変更可能である。例えば、スロット部にスロット紙が装着されていない環状コア(一体コア)を用いる場合においては、スロット部に収容されるストレート部の所定領域にも付加絶縁層Z2を設ける構成とすることができる。なお、ここで「ストレート部の所定領域」とは、「ストレート部において、セグメントコイルとこれに対接する環状コアが近接する領域、より具体的には素線Rの状態で環状コアとの間の距離が数μm〜数百μm程度となる領域」のことを意味するものとする。また、ストレート部の所定領域に付加絶縁層Z2を設ける場合においては、コイル線の外周面を構成する四面のうち、環状コアの径方向に溝部を埋める付加絶縁層Z2を設け、環状コアの周方向にコイル線の表面全体を被覆する付加絶縁層Z2を設ける構成とすることが必要である。
また、図1に示す環状コア3の半径方向最外側及び半径方向最内側に配置されるセグメントコイル20、21は、環状コア3の半径方向の一方の側にのみ隣接するセグメントコイルが配置されると共に、他のスロット部4に装着された同相のセグメントコイルと連結されるため、設計によって隣接するセグメントコイルに対接させられる部分が異なる。このため、ステータ2におけるセグメントコイルの構成等に応じて、他のセグメントコイルと対接する部分に付加絶縁層Z2を設ければよい。
また、平角線で形成されるコイル線6の外周面を構成する四面のうち、溝部を設ける面も本実施形態のものに限るものではなく、隣接するセグメントコイル間の電圧差や、セグメントコイルとこれに対接するコアとの間の電圧差によって適宜変更可能である。
また、本実施形態においては、コイルエンド部1cに備える付加絶縁層Z2の構成として、接続部5a、5b側の端部にテーパー部Tを設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、端部にテーパー部Tを設けない構成としてもよい。但し、コイルエンド部1cに設ける付加絶縁層Z2の剥離防止効果を考慮すれば、付加絶縁層Z2の端部にテーパー部Tを設けることが望ましい。
また、本発明の第1の実施形態におけるセグメントコイル1において、図3(B)に示すテーパー部Tに対応する線条溝Cを設けるような構成としてもよい。具体的には、コイル線6の表面のうち、環状コア3の径方向の接続部5a、5b側の端部に、テーパー部Tの面積に対応する大きさの線条溝Cを設けるような構成としてもよい。このような構成とすることで、テーパー部Tを設ける部分は、他の部分よりも付加絶縁層Z2の被覆量が減少するところ、線条溝Cを埋める付加絶縁層Z2で減少分を効果的に補うことができる。よって、テーパー部T付近の付加絶縁層Z2の付着性を効果的に向上させることができる。従って、付加絶縁層Z2の剥離や脱落を一段と効果的に防止することができる。
また、本発明の第3の実施形態においては、付着性向上処理として、平坦溝Wの表面に凹凸を設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば、付着性向上処理として、コイル線の表面に接着層を設ける構成としてもよい。このような構成とすることで、コイル線の表面に対する付加絶縁層の付着性を一段と効果的に向上させることができる。
接着層の材質としては、シリコーン変性エンジニアリングプラスチック樹脂を主体とするものを用いることができる。より好適には、シリコーン変性エンジニアリングプラスチック樹脂として、シリコーン変性ポリエーテルイミド(Poly Ether Imide)樹脂(以下、シリコーン変性PEIとする。)、シリコーン変性ポリイミド(Poly Imide)樹脂(以下、シリコーン変性PIとする。)及びシリコーン変性ポリカーボネート(Poly Carbonate)樹脂(以下、シリコーン変性PCとする。)から選ばれる樹脂であることが望ましい。これらシリコーン変性エンジニアリングプラスチック樹脂としては、含シリコーンモノマーを用いて合成したもののほか、市販品も用いることができる。例えば、シリコーン変性PEIの市販品としては、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン社製のシルテム1500、シルテム1600、シルテム1700等を挙げることができる。また、接着層の厚みは、2μm〜20μm程度、より好ましくは2μm〜6μm程度とすることが望ましい。また、その形成方法は、焼付け、押出等の形成方法を用いることができる。
また、本発明の第1の実施形態、第2の実施形態で示した線条溝Cに付着性向上処理を施す構成としてもよい。
本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。