JP6093636B2 - 積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 - Google Patents

積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、積層多孔フィルムに関し、包装用、衛生用、畜産用、農業用、建築用、医療用、分離膜、光拡散板、電池用セパレータとして利用でき、特に、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に利用できるものである。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは二次電池などに使用する電池用セパレータなど各種の分野で利用されている。
二次電池はOA、FA、家庭用電器または通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化および軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。非水電解液用溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点からセパレータが正極と負極の間に介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすためセパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
主に携帯電話に用いる扁平型のリチウムイオン二次電池においては薄膜化・軽量化の要求の中で、外装を従来の金属缶からアルミラミネートフィルムに変更するという技術革新が近年なされている。このアルミラミネートフィルム外装(フィルム外装)は金属缶外装と異なりフレキシブルな外装である上、電極とセパレータを巻回せずに積層するだけであるため外圧に弱く、電極とセパレータの界面の密着性の低さに起因する両者のズレを改良する必要があった。また、液漏れも危惧され、安全性の観点からも改良すべき点が多くあった。
上記のような課題に対し、支持体の両面に、電解液に膨潤しこれを保持する有機高分子からなる接着層を塗工したセパレータが提案されている。支持体には不織布や従来のリチウムイオン二次電池でセパレータとして用いられているポリオレフィン系樹脂多孔フィルムがシャットダウン特性(SD特性)による安全性の観点から実用化されている。また、接着層にはポリフッ化ビニリデン(PVdF) を主体とした有機高分子が耐久性とイオン伝導性の観点から主に用いられている。
例えば特開平10−189054号公報(特許文献1)では、PVdFをN−メチルピロリドン(NMP)に溶解したドープをポリオレフィン系樹脂多孔フィルム上に塗工し乾燥することで接着層を有するセパレータを得るという技術が提案されている。
また、特開2001−118558号公報(特許文献2)では、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム上へ部分的に(表面被覆率50%以下)接着層を塗工したセパレータが提案されている。
特開平9−293518号公報(特許文献3)では、湿式製膜法によりPVdFからなる接着層を作製し、これをポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと貼り合わせることで接着層を有する積層多孔フィルムを得るという技術が提案されており、係る積層多孔フィルムは多孔膜表面に実質的な貫通孔を有さないことを特徴としている。
特開平11−26025号公報(特許文献4)及び特開2003−086162号公報(特許文献5)では、基材にドープを塗工し、これを凝固浴にて凝固させるというプロセスにより樹脂多孔フィルムを得るという技術が提案されている。
特表2003−535683号公報(特許文献6)では、アニーリングしたポリオレフィン無孔物にドープを塗工し、これを一定湿度下で相分離・乾燥した後、一軸方向に延伸することにより樹脂多孔フィルムを得るという技術が提案されている。
特開平10−189054号公報 特開2001−118558号公報 特開平9−293518号公報 特開平11−26025号公報 特開2003−086162号公報 特表2003−535683号公報
しかし特許文献1に記載されているセパレータは接着層が緻密化し良好なイオン伝導度が得られず、電池特性が低下するといった問題がある。
特許文献2に記載されているセパレータは、係る問題を解決できるものの、部分塗工であるため電極・セパレータ界面にセパレータに保持されない電解液が多く存在するため、サイクル特性の低下等の問題が生じる。また、液漏れの信頼性という観点からフィルム外装電池には適さない。
一方、特許文献3に記載されているセパレータにおいて、接着層であるPVdF膜は表面に実質的な貫通孔を有さないという点が特徴となっているが、貫通孔がないために電極・多孔フィルム界面のイオン伝導性が低く、レート特性等の低下のおそれがある。
また、貼り合わせるというのは単に重ねるだけで本質的に一体化されているわけではなく、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと接着層の剥離が生じるなど、生産性の観点からも問題がある。
特許文献4、5に記載されている技術では凝固浴を用いるため、多量の有機溶媒を含む媒体を用い、その媒体の無害化・再利用に多大なエネルギーを要するという問題がある。
特許文献6に記載されている技術ではポリオレフィン無孔物に塗工した後に延伸を行なうため、ポリオレフィンの基材と接着層の界面でアンカー効果が働かず、密着性が不十分という問題がある。
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討を行った結果、特定の積層多孔フィルムが上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
[1]ポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に、電解液膨潤性有機高分子(a)を含有する多孔性の被覆層を有し、前記ポリオレフィン系樹脂多孔層が二軸方向、前記被覆層が一軸方向に延伸されていることを特徴とする積層多孔フィルム
[2]前記有機高分子(a)が、ポリフッ化ビニリデン及びその共重合体、ポリアクリロニトリル及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリオキシアルキレン及びその共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする[1]に記載の積層多孔フィルム。
[3]前記被覆層における前記有機高分子(a)の目付け量が、0.1g/m以上、10g/m未満であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の積層多孔フィルム。
[4]前記被覆層が、塗布乾燥法によりポリオレフィン系樹脂多孔層上に形成されることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の積層多孔フィルム。
[5]前記被覆層を形成する際に用いる、前記有機高分子(a)を溶解させた塗料の溶媒が、100℃以上の沸点を有する溶媒(X)と、100℃未満の沸点を有する溶媒(Y)の少なくとも2種を含むことを特徴とする[4]に記載の積層多孔フィルム。
[6]前記ポリオレフィン系樹脂多孔層がポリプロピレン系樹脂を含んでなることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の積層多孔フィルム。
[7]前記ポリオレフィン系樹脂多孔層がβ晶活性を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の積層多孔フィルム。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
[9][8]に記載の非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池。
本発明によれば、優れた透気性と界面密着性、生産性を有し、非水電解液二次電池用セパレータとして用いた際に優れた特性を発揮する積層多孔フィルムを得ることができる。
本発明の積層多孔フィルムを収容している電池の概略的断面図である。 広角X線回折測定における積層多孔フィルムの固定方法を説明する図である。
以下、本発明の積層多孔フィルムの実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
以下に、本発明の積層多孔フィルムを構成する各成分について説明する。
<ポリオレフィン系樹脂多孔層>
ポリオレフィン系樹脂多孔層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンを重合した単独重合体または共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体または共重合体を2種以上混合することもできる。この中でもポリプロピレン系樹脂、または、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%であることが好ましい。より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとフィルムの機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠した。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが2.0未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、積層多孔フィルムの機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって得られる。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。MFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
なお、前記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ社製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学社製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学社製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学社製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、プライムポリマー社製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー社製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル社製)など市販されている商品を使用できる。
(ポリエチレン系樹脂)
本発明に用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
これらのポリエチレン系樹脂の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの中から選ばれる少なくとも1種のポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cmであることが好ましく、0.930〜0.970g/cmであることがより好ましく、0.940〜0.970g/cmであることが更に好ましい。密度が0.910g/cm以上であれば適度なSD特性を有することができるため好ましい。一方、0.970g/cm以下であれば適度なSD特性を有することができるほか、延伸性が維持される点で好ましい。
密度の測定は密度勾配管法を用いてJIS K7112に準じて測定することができる。
また、前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常MFRは0.03〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れ好ましい。一方、30g/10分以下であれば、十分な機械的強度を得ることができるために好ましい。
MFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。ポリエチレン系樹脂の重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレン系樹脂も使用可能である。
(β晶活性)
本発明の積層多孔フィルムにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂多孔層はβ晶活性を有することが好ましい。β晶活性は、延伸前の膜状物においてβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中にβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、透気特性を有する積層多孔フィルムを得ることができる。
また、仮に、ポリプロピレン系樹脂からなる層以外に、ポリプロピレン系樹脂を含有する層などを積層させる場合には、両層ともにβ晶活性を有することが好ましい。
本発明の積層多孔フィルムにおいては、後述する示差走査型熱量計によりβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出された場合、及び/又は、後述するX線回折装置を用いた測定により、β晶に由来する回折ピークが検出された場合に、「β晶活性」を有すると判断される。
このβ晶活性は、本発明の積層多孔フィルムについて、その積層多孔フィルム全層の状態で測定することができる。
以下、β晶活性の有無の測定について、ポリオレフィン系樹脂多孔層のポリオレフィン系樹脂が前記ポリプロピレン系樹脂である場合について、具体的に例示する。
(1) 示差走査型熱量計による場合
この場合、示差走査型熱量計で積層多孔フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断する。
また、前記積層多孔フィルムのβ晶活性度は、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、前記ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
前記ポリオレフィン系樹脂多孔層のβ晶活性度は大きい方が好ましく、具体的には20%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが特に好ましい。積層多孔フィルムが20%以上のβ晶活性度を有すれば、延伸前の膜状物中においてもポリプロピレン系樹脂のβ晶が多く生成することができることを示し、延伸により微細かつ均一な孔が多く形成され、結果として機械的強度が高く、透気性能に優れた電池用セパレータとすることができる。
β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
(2) X線回折装置による場合
β晶活性の有無を、特定の熱処理を施した積層多孔フィルムの広角X線回折測定により得られる回折プロファイルから判断する場合、詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170℃〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性が有ると判断する。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
前述したβ晶活性を得る方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
(β晶核剤)
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
β晶核剤の市販品としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリオレフィン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、前記I層を構成するポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、0.0001〜5質量部であることが好ましい。また、0.001〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が更に好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリオレフィン系樹脂のβ晶を生成・成長させることができ、セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、5質量部以下の添加であれば、経済的にも有利になるほか、積層多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
(他の成分)
本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤をポリオレフィン系樹脂多孔層に適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性およびポリオレフィン系樹脂多孔層の諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、変性ポリオレフィン系樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂もしくはその変性体、エチレン系重合体、ワックス、または低分子量ポリプロピレンを添加しても構わない。
(ポリオレフィン系樹脂多孔層の層構成)
本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔層は、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「A層」と称する場合がある)の単層、当該A層の機能を妨げない範囲で、当該A層と他の層(以降「B層」と称する場合がある)との積層が好ましい。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際には、特開平04−181651号に記載されているような高温雰囲気化で孔閉塞し、電池の安全性を確保する低融点樹脂層を積層させることができる。
具体的にはA層/B層を積層した2層構造、A層/B層/A層、若しくは、B層/A層/B層として積層した3層構造などが例示できる。また、他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を持つ層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
なお、本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔層の物性は、層構成や積層比、各層の組成、製造方法によって自由に調整できる。
<多孔性の被覆層>
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に、電解液膨潤性有機高分子(a)を含有する多孔性の被覆層を有することが重要である。被覆層をポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に有することによって、積層多孔フィルムを電池用セパレータとして用いる場合に電極との優れた界面密着性を発現し、フィルム外装電池に用いられた場合であっても電極とセパレータのズレが生じるおそれが小さい。
なお、被覆層はポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に有していれば良く、両面に有していればさらに電極とセパレータの界面密着性が高まる。
(電解液膨潤性有機高分子(a))
本発明に用いる電解液膨潤性有機高分子(a)とは、セパレータを使用する二次電池における電解液と接触した際に、化学的に結合して膨潤する性質を有する有機高分子を指すものであり、係る機能を有する有機高分子であれば特に限定されるものではない。
中でも非水電解液二次電池、さらにその中でもリチウムイオン二次電池に使用する電解液との親和性を鑑みると、例えば、ポリフッ化ビニリデン及びその共重合体、ポリアクリロニトリル及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリオキシアルキレン及びその共重合体などが挙げられる。特にポリフッ化ビニリデン及びその共重合体、並びに、ポリアクリロニトリル及びその共重合体が化学的安定性に優れ、二次電池に組み込んだ際に劣化を起こしにくいため、好ましい。
なお、本発明の積層多孔フィルムの被覆層には電解液膨潤性有機高分子(a)以外に、延伸性の付与や厚み精度の向上といった目的で、可塑剤・延伸助剤などを、電極やポリオレフィン系樹脂多孔層との界面密着性を阻害しない範囲で必要に応じて加えてもよい。
また、被覆層の空孔率や空孔径を制御する目的で、無機フィラーや有機フィラーなどを、電極やポリオレフィン系樹脂多孔層との界面密着性を阻害しない範囲で必要に応じて加えてもよい。
前記被覆層における前記電解液膨潤性有機高分子(a)の目付け量は、0.1g/m以上、10g/m未満であることが好ましい。目付け量が0.1g/m以上であることにより、被覆層と電極材との優れた界面密着性が発現する。一方、目付け量が10g/m以下であることで、被覆層の機械強度の低下を抑えることができる。
<積層多孔フィルムの製造方法>
本発明の積層多孔フィルムは、前記ポリオレフィン系樹脂多孔層が二軸方向に延伸されており、かつ、前記被覆層が一軸方向に延伸されていることが重要である。これにより、ポリオレフィン系樹脂多孔層と被覆層の界面密着性が従来の技術に比べて遥かに優れたものとなる。かかる効果を発現するのは、前記ポリオレフィン系樹脂多孔層と前記被覆層の界面において、いわゆるアンカー効果が強く働くからであると推測される。
すなわち、前述した特表2003−535683号公報に記載の技術では、ポリオレフィン系樹脂無孔膜に無孔のPVdF層を積層した後で延伸を試みているが、係る技術ではポリオレフィン系樹脂層とPVdF層の層間でアンカー効果が働かず、界面密着性が不十分であるのに対し、ポリオレフィン系樹脂多孔層が少なくとも一軸方向に延伸されている状態で被覆層を積層するという本発明の技術では、ポリオレフィン系樹脂多孔層と被覆層の界面密着性が遥かに優れることを見出したのである。
なお、前記ポリオレフィン系樹脂多孔層が二軸方向、前記被覆層が一軸方向に延伸されてなる積層多孔フィルムの製造方法としては、以下の(I)又は(II)の方法がある。
(I)ポリオレフィン系樹脂多孔層に係るフィルムの無孔膜状物を作製し、これを一軸方向に延伸する(第一延伸)。その後、少なくとも片面に被覆層を形成し、積層した状態で第一延伸と垂直方向に延伸を行い(第二延伸)、積層多孔フィルムを得る。
(II)ポリオレフィン系樹脂多孔層に係るフィルムの無孔膜状物を作製し、これを二軸方向に延伸する。一方、被覆層に係るフィルムの無孔膜状物を作製し、これを一軸方向に延伸する。その後、ポリオレフィン系樹脂多孔層に係るフィルムの少なくとも片面に、被覆層に係るフィルムを積層して積層多孔フィルムを得る。
このうち本発明においては、特に前記ポリオレフィン系樹脂多孔層と前記被覆層の界面密着性を向上させる観点から、前記(I)の方法を採用することが好ましい。
以下、本発明の積層多孔フィルムの製造方法として、(I)に係る好ましい実施形態を例として説明する。
(ポリオレフィン系樹脂多孔層の形成)
前記(I)の方法においては、前記ポリオレフィン系樹脂を用いて、溶融押出により無孔膜状物を作製し、当該無孔膜状物を延伸することにより厚さ方向に連通性を有する微細孔を多数形成したポリオレフィン系樹脂多孔層を得ることができる。
ポリオレフィン系樹脂多孔層に係るフィルムの無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いてポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。またチューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔層を複数層とする場合、ポリオレフィン系樹脂多孔層を二軸方向、前記被覆層を一軸方向に延伸するという観点から、各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法を用いることが好ましく、なかでも2層の界面接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
また、前記(I)の方法における第一延伸でのポリオレフィン系樹脂多孔層に係るフィルムの無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸を行う。また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン系樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。この中でも、テンター延伸法又はロール延伸法により一軸方向に延伸を行うことが好ましい。
但し、ポリオレフィン系樹脂多孔層に係るフィルムについて、被覆層形成時の機械特性を維持する目的で、一軸方向に延伸した後又は延伸すると同時に、当該一軸方向と垂直な方向に僅かに延伸することを妨げない。
なお、膜状物及びフィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。また、長手方向への延伸を「縦延伸」、長手方向に対して垂直方向への延伸を「横延伸」と称する。
以下に、ポリオレフィン系樹脂多孔層の製造方法の詳細を説明する。
まずポリオレフィン系樹脂と、必要であれば熱可塑性樹脂、添加剤の混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、および所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
前記のペレットを押出機に投入し、Tダイ押出用口金から押出して膜状物を成形する。Tダイの種類としては特に限定されない。例えば本発明のポリオレフィン系樹脂多孔層が2種3層の積層構造をとる場合、Tダイは2種3層用マルチマニホールドタイプでも構わないし、2種3層用フィードブロックタイプでも構わない。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm以上であれば生産速度という観点から好ましく、また3.0mm以下であれば、ドラフト率が大きくなり過ぎないため生産安定性の観点から好ましい。
押出成形において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜300℃が更に好ましい。180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性が向上することから好ましい。一方、350℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる積層多孔層の機械的強度の低下を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、膜状物中のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで、膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができるために好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
前記温度範囲にキャストロールを設定することで、延伸前の膜状物のポリオレフィン系樹脂のβ晶比率は30〜100%に調整することが好ましい。40〜100%がより好ましく、50〜100%が更に好ましく、60〜100%が最も好ましい。延伸前の膜状物中のβ晶比率を30%以上とすることで、その後の延伸操作により多孔化が行われやすく、透気特性の良いポリオレフィン系樹脂多孔層を得ることができる。
延伸前の膜状物中のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリオレフィン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
ついで第一延伸として、得られた無孔膜状物を一軸方向に延伸する。この場合、特にロール延伸法により縦方向に一軸延伸することが、第二延伸を行うことや、多孔構造を制御する、また生産性を向上するという観点から好ましい。
第一延伸での延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時変える必要があるが、概ね0〜130℃が好ましく、より好ましくは10〜120℃、更に好ましくは20〜110℃の範囲で制御される。また、縦方向への一軸延伸の場合、延伸倍率は2〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で第一延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
第一延伸の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がさらに好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
なお、前述の通り、ポリオレフィン系樹脂多孔層に係るフィルムについて、被覆層形成時の機械特性を維持する目的で、一軸方向に延伸した後又は延伸すると同時に、当該一軸方向と垂直な方向に僅かに延伸することを妨げない。この場合、一軸方向と垂直な方向への延伸倍率は、被覆層を形成する際にポリオレフィン系樹脂多孔層の空孔に電解液膨潤性有機高分子(a)が入り込み、これを閉塞させることのない程度であれば特に制限されないが、具体的には1.1倍以下であることが好ましく、1.05倍以下であることがさらに好ましい。
(被覆層の形成)
次に、第一延伸を行ったポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に被覆層を形成する。第一延伸により開孔したポリオレフィン系樹脂多孔層に被覆層を形成することで、ポリオレフィン系樹脂多孔層と被覆層との界面のアンカー効果に起因すると考えられる、優れた界面密着性を発現することができる。
被覆層の形成方法としては、ラミネート法、塗布乾燥法等が挙げられるが、連続生産性の面で塗布乾燥法により形成することが好ましい。より具体的には、前記電解液膨潤性有機高分子(a)を溶媒に溶解させた塗料を作製し、これをポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に塗布した後、乾燥することにより被覆層を形成することが好ましい。
前記被覆層を形成する工程において、塗布乾燥法を選択する場合、塗布方式としては、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、等が挙げられる。また、また、前記塗料は、その用途に照らし、ポリオレフィン系樹脂多孔層の片面だけに塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。
前記塗布工程後に、後述する塗料の溶媒を除去する方法としては、ポリオレフィン系樹脂多孔層に悪影響を及ぼさない方法であれば、特に限定することなく採用することができるが、例えば、ポリオレフィン系樹脂多孔層を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、溶媒を化学的に分解除去する方法などが挙げられる。
(塗料の溶媒)
本発明において、塗布乾燥法により被覆層を形成する際に用いる、前記電解液膨潤性有機高分子(a)を溶解させた塗料の溶媒は、沸点が100℃以上の溶媒(X)と沸点が100℃未満の溶媒(Y)の少なくとも2種からなることが好ましい。
沸点が100℃以上の溶媒(X)を使用することで、被覆層に好適な空孔形成が成されるという効果がある。溶媒(X)の沸点の上限については特に制限は無いが、生産性の面で250℃以下が好ましい。
また、沸点が100℃未満の溶媒(Y)を使用することで、塗料の安定性と塗工性が向上し、本発明の積層多孔フィルムの生産性が向上するという効果がある。溶媒(Y)の沸点の下限については特に制限はないが、塗料の安定性の面で40℃以上が好ましい。
溶媒(X)と溶媒(Y)を併用することにより、上記の優れた効果が相乗するため好ましい。
また、溶媒(X)/溶媒(Y)の配合比については、重量比率において60/40以上或いは99/1以下であることが好ましく、70/30以上或いは95/5であることがさらに好ましく、80/20以上或いは95/5以下であることが特に好ましい。配合比が60/40以上であることにより、本発明の積層多孔フィルムの生産性が向上するという効果がある。99/1以下であることにより、空孔率の高い被覆層が得られるという効果がある。
(溶媒X)
前記要件を満たす溶媒(X)としては、水、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド(AcA)、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられるが、入手の容易さから、水、NMP、DMAc、DMF、DMSOが好ましい。
(溶媒Y)
前記要件を満たす溶媒(Y)としては、アセトニトリル、アセトン、C以下の低級アルコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテルなどが挙げられる。入手の容易さ、毒性の低さから、アセトン、低級アルコールが好ましい。
(第二延伸)
前記(I)の方法においては、ポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に被覆層を形成した積層フィルムについて、一軸方向に第二延伸を行い、ポリオレフィン系樹脂多孔層が二軸方向に延伸されており、かつ、被覆層が一軸方向に延伸されている本発明の積層多孔フィルムを得る。
この際、ポリオレフィン系樹脂多孔層の多孔構造を制御する観点から、第二延伸は第一延伸と垂直方向に延伸する。これによってポリオレフィン系樹脂多孔層が二軸方向に延伸されることとなる。
なお、第一延伸の際に、一軸方向に延伸した後又は延伸すると同時に、当該一軸方向と垂直な方向に僅かに延伸する場合には、僅かに延伸した方向と平行方向に延伸する。
第二延伸としては、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法などの手法によって、縦延伸、又は横延伸を行う方法が挙げられるが、第一延伸としてロール延伸法による縦延伸が好ましいことや、被覆層を形成した面を汚染しないという観点で、テンター延伸法による横延伸を行うことが好ましい。
第二延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜155℃、更に好ましくは120〜150℃である。また、好ましい延伸倍率は1.2〜10倍が好ましく、より好ましくは1.4〜8倍、更に好ましくは1.6〜7倍である。前記範囲内で第二延伸することで、第一延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、300〜12000%/分が好ましく、400〜10000%/分がさらに好ましく、500〜8000%/分であることが更に好ましい。
このようにして得られた積層多孔フィルムは、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上とすることで、寸法安定性の効果が期待できる。一方、熱処理温度は好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が170℃以下であれば、熱処理によってポリオレフィン系樹脂の融解が起こりにくく、多孔構造を維持できるため好ましい。また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施しても良い。なお、熱処理後、均一に冷却して巻き取ることにより、積層多孔フィルムが得られる。
(積層多孔フィルムの形状及び物性)
本発明の積層多孔フィルムの厚みは5〜100μmが好ましい。より好ましくは8〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。電池用セパレータとして使用する場合、5μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能が十分に確保することができる。
また、被覆層の厚みとしては、耐熱性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。一方で上限としては、連通性の観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
本発明の積層多孔フィルムの透気度は1000秒/100mL以下が好ましく、10〜800秒/100mLがより好ましく、50〜500秒/100mLが更に好ましい。透気度が1000秒/100mL以下であれば、積層多孔フィルムに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mLの空気が当該フィルムを通過するのに必要な数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
なお、本発明において透気度は、JIS P8117に準拠して測定される。
本発明の積層多孔フィルムは、電池用セパレータとして使用時において、SD特性を有することが好ましい。具体的には、135℃で5秒間加熱後の透気度は10000秒/100mL以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100mL以上、さらに好ましくは50000秒/100mL以上である。135℃で5秒間加熱後の透気度が10000秒/100mL以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
本発明の積層多孔フィルムの突刺強度は、100gf以上、2000gf以下であることが好ましく、150gf以上、1500gf以下であることが更に好ましい。突刺強度が100gf以上であることで、電池用セパレータとして使用時において、リチウムデンドライドの成長による短絡を抑えることができるため好ましい。上限については特に制限は無いが実質的に2000gf以下であることが好ましい。
なお、本発明において突刺強度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
<電池>
続いて、本発明の前記積層多孔フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
前記正極板21、電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池を作製している。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
本実施形態では、負極として、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に平均粒径10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板としたものを用いている。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。すなわち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に導電助剤としてリン状黒鉛を(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
以下に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、積層多孔フィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。
(1)溶媒比(X/Y)
塗料中の溶媒(X)と溶媒(Y)の比を溶媒比(X/Y)とした。
(2)総厚み
総厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
(3)被覆層の厚み
被覆層の厚みは、総厚みから、被覆層を形成せずに延伸のみで得たポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの総厚みを引き去ることで算出した。なお、比較例3は被覆層のみから形成されているものとした。
(4)製膜性
得られたフィルムの外観を以下の判定基準により判断した。
○:目視で確認可能な被覆層の剥離や割れ・裂け目がない。
×:目視で確認可能な被覆層の剥離又は割れ・裂け目がある。
(5)透気度(ガーレ値)
透気度は、JIS P8117に準拠して測定し、透気度が1000秒/100mL以下である場合を合格とした。
(6)突刺強度
ホルダーで固定した積層多孔フィルム(測定部:直径10mmの円形)に、直径1mm、先端曲率半径0.5mmの金属(SUS440C)製針を厚み方向に300mm/minの速さで突き刺して、穴が開口する最大荷重を測定した。強度が100gf以上である場合を合格とした。
(7)示差走査型熱量測定(DSC)
積層多孔フィルムの試料10mgについて、株式会社パーキンエルマー製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、窒素雰囲気下で25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃〜25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた。この再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ晶活性の有無を以下の基準にて評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β晶活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β晶活性なし)
(8)広角X線回折測定(XRD)
積層多孔フィルムを縦60mm、横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態で設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点で取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたものについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:株式会社マックサイエンス製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β晶活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、積層多孔フィルム片が縦60mm、横60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴に積層多孔フィルムが設置されるように調整しても構わない。
(ポリオレフィン系樹脂多孔層)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、ノバテックPP FY6HA、密度:0.90g/cm、MFR:2.4g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合で各原材料をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂のペレットを作製した。
前記の原料を用いて、口金より押出し、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて無孔膜状物を作製した。この無孔膜状物について、前述のDSCを用いる方法によりβ晶比率を確認したところ、β晶比率は80%であった。
前記無孔膜状物について、第一延伸として縦延伸機を用いて100℃で縦方向に4.6倍延伸し、続いてVETAPHONE社製ジェネレータ CP1を使用し、出力0.4kW、10m/minでコロナ表面処理を施すことでポリオレフィン系樹脂多孔層の縦延伸フィルムを得た。
[実施例1]
ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(アルケマ社:Kynar Flex 2801)をDMAc/アセトンの比が90/10の混合溶媒に溶解し、固形分24%の塗料を得た。
続いて上記塗料を♯6番手のバーコーターを用いて、ポリオレフィン系樹脂多孔層の縦延伸フィルムに塗布を実施した。その後1時間、常温常湿下静置し、ゲル化を進行させ、続いて第二延伸として、135℃に設定したテンターにより、2.2倍に横延伸を実施することで、目的の積層多孔フィルムを得た。
[比較例1]
ポリオレフィン系樹脂多孔層の縦延伸フィルムを、第二延伸として135℃に設定したテンターにより2.2倍に横延伸し、ポリオレフィン多孔フィルムを得た。得られたフィルム上に実施例1で用いた塗料を#6番手のバーコーターを用いて塗布し、その後24時間、常温常湿下静置し、ゲル化・乾燥を行なうことで積層多孔フィルムを得た。
[比較例2]
無孔膜状物に0.4kW、10m/minでコロナ表面処理を施し、続いて、前記塗料を♯6番手のバーコーターを用いて塗布した。その後1時間、常温常圧下静置し、ゲル化を進行させ、続いて第一延伸として、縦延伸機にて100℃で4.6倍に縦延伸した。この際、被覆層が剥離し、縦延伸機に巻き取られる問題が発生した。その後、第二延伸として、135℃に設定したテンターにより2.2倍に横延伸を実施することで多孔フィルムを得た。その結果を表1にまとめた。
[比較例3]
実施例1で作製した塗料を、♯50番手のバーコーターを用いて、PETフィルム上に塗布を実施した。その後1時間、常温常圧下静置し、ゲル化を進行させ、剥離することで多孔フィルムを得た。当該フィルムは相分離により多孔化はしているが、極めて強度が低く延伸はできなかった。その結果を表1にまとめた。
Figure 0006093636
表1より、実施例1で得た積層多孔フィルムは、優れた透気性を有していた。これは、被覆層を形成するPVDF系樹脂がポリオレフィン系樹脂多孔層の多孔を埋めることがなく、かつ、延伸工程により被覆層が十分開孔した為と考えられる。
また、被覆層に剥離や割れが生じず、優れた製膜性や生産性を有していた。これは、第一延伸を施した後に被覆層を形成したことにより、ポリオレフィン系樹脂多孔層と被覆層の界面におけるアンカー効果が発現して密着性が向上した為と考えられる。
一方、比較例1で得た積層多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂多孔層の微細孔にPVDF系樹脂が入り込み、目詰まりを起こしたため、透気性の低いフィルムとなった。
比較例2で得た多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂多孔層と被覆層の界面密着性が不十分なため、縦延伸時にPVDF系樹脂がほとんど剥離し、実質的にポリオレフィン系樹脂多孔層のみからなる多孔フィルムとなってしまった。
比較例3で得た多孔フィルムはPVDF系樹脂のみからなり、ポリオレフィン系樹脂と積層されていない為、強度が不十分であった。
本発明の積層多孔フィルムは、透気特性が要求される種々の用途に応用することができる。リチウムイオン二次電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に利用できる。
10 非水電解液二次電池用セパレータ
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
31 アルミ板
32 サンプル
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向

Claims (9)

  1. ポリオレフィン系樹脂多孔層の少なくとも片面に、電解液膨潤性有機高分子(a)からなる多孔性の被覆層を有し、前記ポリオレフィン系樹脂多孔層が二軸方向、前記被覆層が一軸方向に延伸されていることを特徴とする積層多孔フィルム。
  2. 前記有機高分子(a)が、ポリフッ化ビニリデン及びその共重合体、ポリアクリロニトリル及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリオキシアルキレン及びその共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔フィルム。
  3. 前記被覆層における前記有機高分子(a)の目付け量が、0.1g/m以上、10g/m未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層多孔フィルム。
  4. 前記被覆層が、塗布乾燥法によりポリオレフィン系樹脂多孔層上に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  5. 前記被覆層を形成する際に用いる、前記有機高分子(a)を溶解させた塗料の溶媒が、100℃以上の沸点を有する溶媒(X)と、100℃未満の沸点を有する溶媒(Y)の少なくとも2種を含むことを特徴とする請求項4に記載の積層多孔フィルム。
  6. 前記ポリオレフィン系樹脂多孔層がポリプロピレン系樹脂を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  7. 前記ポリオレフィン系樹脂多孔層がβ晶活性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
  9. 請求項8に記載の非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池。
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