JP6096884B2 - 完全生物体マラリアワクチンのためのプラットフォームとしての齧歯類プラスモジウム寄生虫 - Google Patents

完全生物体マラリアワクチンのためのプラットフォームとしての齧歯類プラスモジウム寄生虫 Download PDF

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Description

本発明は、脊椎動物宿主に対して、該宿主に生きた齧歯類プラスモジウム生物体を投与することによりマラリアに対する予防接種をし、その異種間防御能力を利用する方法を提供する。本発明はさらに、1種又は数種のヒトプラスモジウム寄生虫由来の免疫特異的な単段階(肝臓、血液又はガメトサイト)又は多段階(肝臓及び血液、又は肝臓及びガメトサイト、又は血液及びガメトサイト、又は肝臓及び血液及びガメトサイト)免疫エフェクターを発現するように遺伝子組換えされている齧歯類プラスモジウム生物体を含むワクチン組成物を提供する。本発明はまた、好適な薬学的に許容可能なキャリア溶液中に野生型又は遺伝子組換えの齧歯類プラスモジウム生物体を懸濁することによる、ワクチン組成物の製造を提供する。
マラリアに対する有効なワクチンという長年の目標は、近年の推計によれば年間百万人を超える人が死亡するという疾患を撲滅しようとする努力の重要な要素をなしている。マラリアワクチンには、有性生殖期及び蚊体内発育期の寄生虫抗原を標的化し得るもの、無性生殖期及び有性生殖期の寄生虫負荷量を低減する前赤血球期ワクチン、血液期寄生虫密度を低減する無性生殖赤血球期ワクチン、及びベクター中での寄生虫成長を妨害するワクチンがある。これまでのところ、スポロゾイト周囲(CS)タンパク質ベースの主要ワクチン候補RTS,Sを含む、初期前赤血球期に対するワクチンが、現在のワクチン候補の中で最も成功を示している[1]。しかしながら、このサブユニットワクチンの第3相試験の最近の結果は、重篤なマラリアに対してわずかな防御有効性しか示さなかった[2]。
サブユニットワクチン候補に代わる方法として、完全生物体アプローチ(whole-organism approach)の使用がある。かかる戦略は、弱毒化された、感染した蚊によりその脊椎動物宿主に注入されるプラスモジウム形態である、スポロゾイトによる免疫の生成に基づいている。自然のマラリア感染の間においては、肝細胞内での無症状性の寄生虫成熟及び大規模複製期が、プラスモジウム赤血球外形態(EEF)の生成を引き起こし、その後、疾患を引き起こす赤血球感染性メロゾイトの放出が起こる([3]でレビューされた)。数十年前に、P.ファルシパルム放射線弱毒化スポロゾイト(RAS)の注射により、ヒトの滅菌防御が達成され得ることが示された[4]。もっと最近になって、特定の遺伝子が欠失し肝臓肝細胞内での完全なプラスモジウム成長が損なわれた状態になるスポロゾイト(GAS)が、齧歯類動物においてマラリアに対する長期にわたる防御を与え得ることが示された[5]。これは、遺伝子的に弱毒化されたプラスモジウムスポロゾイト(GAS)に基づくマラリアに対する完全生物体ワクチンへの新たな希望を生じた。RAS及びGASの両方が、肝細胞に侵入することはできるが、肝臓内でそれらの成長過程を完結することはできない。重要なことに、末期肝臓期阻止寄生虫は、ブレークスルー感染(breakthrough infection)の危険性を増大させ得るものの、早期阻止変異体よりも優れた抗マラリア免疫を誘発するようである[6]。
RAS及びGASの防御有効性は、防御には抗体も寄与するが、保存された機序が関与するものであり、主として、誘導されたCD8T細胞の活性を介してもたらされるようである。プラスモジウムCSは、RAS及びGASの両方において免疫優性防御抗原であり[7]、先の研究により、CSのみによる免疫により防御が達成され得ることが示された。しかしながら、完全生物体アプローチにより誘発される免疫において、作用している免疫原がCSのみではないことも明らかとなっている[8、9]。
現在の前赤血球期完全生物体マラリアワクチン接種戦略の主要な潜在的欠点は、そうした戦略が、最も命に関わるヒト感染性寄生虫種であるP.ファルシパルムの弱毒化に依拠していることである。有効なRASを生成するのに必要とされる放射線線量は、最低限必要な条件を満たすように微妙に調整されなければならないことが示された。実際、高放射線レベルに曝露されたスポロゾイトは防御を誘導せず、低レベルに曝露された寄生虫はブレークスルー感染を誘導するであろう。後者と同様に、異なるGASによるブレークスルー感染が報告されている[10]。肝臓内で完全な成長を経たただ1つのスポロゾイトが血液感染及びマラリア症状を起こさせ得るので、P.ファルシパルムスポロゾイトの弱毒化に基づくワクチン接種は、無視され得ない安全性の懸念を提起する。
この文脈において、我々は、本明細書により、ヒトの免疫の非病原性ベクターとしての齧歯類プラスモジウム寄生虫の使用に基づく、マラリアに対する前赤血球期完全生物体ワクチンの開発のための代替的戦略を提案する。本明細書において、我々は、P.ベルゲイは、最適な抗原提示に必要とされるヒト肝細胞への感染は可能であるが、血液期感染を引き起こすことができず、その結果、提案したアプローチの安全性の向上を確実にするものであることを実証する。また、我々は、齧歯類プラスモジウム種とヒトプラスモジウム種との間の異種間防御の可能性を実証した。
我々はさらに、そのような異種間防御が、齧歯類プラスモジウム生物体を、それらのヒト感染性対応物の抗原を発現するように遺伝子組換えすることにより高められ得ることを提案する。我々は、内因性CSがP.ファルシパルムのCSに置き換えられたトランスジェニックP.ベルゲイ寄生虫(PbCSPf)[11]を使用して、この遺伝子組換えされた齧歯類プラスモジウム生物体が、P.ファルシパルムに結合して感染を阻害することができる特異的免疫応答を誘発できるということを実証した。これらの結果は、マラリアワクチン接種戦略における新たなパラダイムを、最適な免疫原性特性と組み合わせるものである。
発明の概要
本発明は、一次免疫用ベクターとしての齧歯類寄生虫の使用に基づく、マラリアに対する前赤血球期完全生物体ワクチンの開発のための代替的戦略を提案する。齧歯類プラスモジウム生物体は、齧歯類寄生虫の相同分子により生成される異種間防御能力を利用することにより、ヒト感染性プラスモジウム属種への感染に対して防御することが可能な免疫応答をヒト宿主において誘導するために使用され得る。さらに、これらの齧歯類プラスモジウム生物体の免疫能力は、選択された免疫原性抗原を遺伝子組換えにより導入することにより高められ得る。この戦略において、齧歯類プラスモジウム生物体は、進化的に保存された分子により提供されるそれらの自然の異種間防御能に加えて、ヒトプラスモジウム寄生虫に対する特異的防御免疫応答を誘発するために、ヒト感染性プラスモジウム属種の抗原を有し得る。
本発明は、ヒトマラリアに対する使用のための生きた齧歯類プラスモジウム生物体を記述する。
本発明の好ましい実施形態は、ヒトマラリアに対する免疫特異的な単段階又は多段階免疫エフェクターとしての使用のための、ヒトプラスモジウム寄生虫の1種以上の種の遺伝子又は部分遺伝子を発現するように遺伝子組換えされた生きた齧歯類プラスモジウム生物体を提供する。
本発明の別の実施形態において、先の生きた齧歯類プラスモジウム生物体は、自然宿主が齧歯類動物である原生動物プラスモジウム属(P.ベルゲイ、P.ヨエリ、P.ビンケイ及びP.シャバウディを含む)の任意のメンバーである。
本発明の好ましい実施形態は、単段階又は多段階免疫エフェクターが、肝臓期抗原(例えば、スポロゾイト周囲タンパク質(CS)、肝臓期抗原1(LSA−1)、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)、及び肝臓期抗原3(LSA−3))又は血液期抗原(例えば、赤血球結合抗原−175(EBA−175)、頂端膜抗原−1(AMA−I)、メロゾイト表面タンパク質1(MSP−1)、ダッフィ結合タンパク質(DBP)、及び網状赤血球結合タンパク質(RBP))、又はガメトサイト特異的抗原(例えば、p48/45)、又は他の免疫原性抗原である、生きた齧歯類プラスモジウム生物体の使用を提供する。
本発明の別の実施形態において、ヒトマラリアは、原生動物プラスモジウム属からのヒトプラスモジウム寄生虫(P.ファルシパルム、P.ビバックス、P.マラリアエ、P.オヴァレ及びP.ノウレシを含む)のうちの任意のものによって引き起こされる。
本発明の好ましい実施形態は、薬学的に許容可能なキャリアとの混合物の製造のための、生きた齧歯類プラスモジウム生物体の使用を提供する。
本発明の別の実施形態において、生きた齧歯類プラスモジウム生物体は、マラリアに対するワクチンの製造のために使用される。
以下の図は、明細書を説明するための好ましい実施形態を提供するものであり、発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
ヒト肝細胞内の齧歯類プラスモジウム寄生虫感染及び成長。A)in vitro。ヒト肝癌細胞系(Huh−7及びHepG2)及びヒト不死化肝細胞(HC−04)において感染後48時間成長したPb(WT)寄生虫の代表的な写真;B)ex vivo成長。ヒト一次肝細胞のマイクロパターン化共培養において感染後48時間(上方パネル)及び感染後72時間(下方パネル)成長したPb(WT)寄生虫の代表的な写真(縮尺線は10μmを示す)。C)面積測定により定量化された、Huh−7及びHepG2肝癌細胞系並びにHC−04不死化ヒト肝細胞におけるPb(WT)寄生虫の赤血球外形態の感染後48時間の成長(線は面積の平均を示し、バーは90及び10パーセンタイルを表す);D)細胞コンフルエンスについて正規化後の赤血球外形態の数の%として表される、10000個のスポロゾイトへの感染後48時間にHuh−7及びHepG2肝癌細胞並びにHC−04肝細胞において成長した赤血球外形態の数(バーは標準偏差を示す);E)FRGヒト化マウスの肝臓中のマウス肝細胞(黒色バー)及びヒト移植(engraphed)肝細胞(灰色バー)内で感染後48時間成長したPb(WT)寄生虫からの赤血球外形態の相対的割合;F)面積測定により定量化された、FRGヒト化マウスにおけるマウス肝細胞(黒色バー)又はヒト肝細胞(灰色バー)内のPb(WT)寄生虫の赤血球外形態の感染後48時間における成長(線は面積の平均を示し、バーは90及び10パーセンタイルを表す);G)肝臓ヒト化マウスのヒト肝細胞内で感染後48時間成長した寄生虫の写真及び投影図。P.ベルゲイ寄生虫(赤色)が、明らかにヒトのフマリルアセトアセテートヒドロラーゼ染色肝細胞(白色)内にあることに留意されたい。縮尺バーは10μmに相当する。 図2a及び2b。in vivoでのヒト赤血球の齧歯類プラスモジウム寄生虫感染。A1、A2及びA3)ヒト赤血球が移植されたキメラ及び非キメラマウスの末梢血中の寄生虫血の測定の代表的なフローサイトメトリープロット。核酸についてのSYTO−16(x軸)及びマウス赤血球系統についてのTER−119mAB(y軸)での同時染色は、ヒト赤血球とマウス赤血球との間、および感染赤血球と非感染赤血球との間の区別を可能にする。P.ベルゲイ寄生虫に感染したヒト赤血球はP.ファルシパルムに感染したヒト赤血球のポジティブコントロールと同じゲートに落ちることが予想されるので、この戦略を用いてそれらを特定することが可能である。(mE:マウス赤血球;hE:ヒト赤血球;imE:感染マウス赤血球;ihE:感染ヒト赤血球;bimE:感染マウス赤血球についてのバックグラウンド;bihE:感染ヒト赤血球についてのバックグラウンド、A1)P.ファルシパルムに感染したヒト赤血球が移植されたキメラマウス;A2)P.ベルゲイに感染した非キメラマウス;A3)P.ベルゲイに感染したヒト赤血球が移植されたキメラマウス;B1、B2及びB3)Pb(WT)又はP.ファルシパルムに感染したキメラ及び非キメラマウスにおける、ヒト又はマウス起源のいずれかからの感染赤血球の経時的平均百分率;B1)P.ファルシパルムに感染したヒト赤血球が移植されたキメラマウスにおける感染ヒト赤血球の平均百分率(実線)及び感染マウス赤血球についての予想される領域で得られたシグナルバックグラウンド(小点線)。B2)P.ベルゲイに感染した非キメラマウスにおける感染マウス赤血球の平均百分率(長点線)及び感染ヒト赤血球についての予想される領域で得られたシグナルバックグラウンド(小点線);B3)P.ベルゲイに感染したヒト赤血球が移植されたキメラマウスにおける感染ヒト赤血球の平均百分率(実線)及び感染マウス赤血球の平均百分率(長点線);C1及びC2)P.ベルゲイに感染したヒト赤血球が移植されたキメラマウスからのimE及びihEの磁気分離後に得られた赤血球個体群。C1)ヒト赤血球が移植されたキメラマウスの末梢血中に存在する磁気分離されたP.ベルゲイ感染ヒト赤血球の代表的なフローサイトメトリープロット。C2)ヒト赤血球が移植されたキメラマウスの末梢血中に存在する磁気分離されたP.ベルゲイ感染マウス赤血球の代表的なフローサイトメトリープロット;D1及びD2)P.ベルゲイに感染したヒト赤血球が移植されたキメラマウスからのimE及びihEの磁気分離後に得られた赤血球個体群の培養。D1)ヒト赤血球内での培養におけるP.ベルゲイ寄生虫の経時的な代表的な写真;D2)マウス赤血球内での培養におけるP.ベルゲイ寄生虫の経時的な代表的な写真;磁気分離の直後に得られたihE中のP.ベルゲイ寄生虫は、培養下において20時間後に最終的に退化する核濃縮(picnotic)形態しか示さないが、P.ベルゲイ−imEは、分離の時に既に成熟しており、培養下において完全な栄養体分裂(trophozoite segmentation)に向けて経時的に進むということに留意されたい。E)同じマウス内で複数のP.ベルゲイ感染マウス赤血球及び異常な核濃縮P.ベルゲイ感染ヒト赤血球を示す感染キメラマウスからの血液塗抹の光学及び免疫蛍光顕微鏡検査観察により得られた代表的な写真。 同上 齧歯類プラスモジウム寄生虫異種間防御(interspecies cross-protection)。A1及びA2)ヒトマラリア患者(n=21)からの血清中のCS特異的抗体力価;黒色はP.ファルシパルムCSについて陽性の血清試料を表す;A1)P.ファルシパルムCS特異的IgG力価;A2)P.ベルゲイCS特異的IgG力価。黒色はP.ファルシパルムCSについて陽性の血清試料を表す;B1及びB2)ヒトマラリア患者からの血清のP.ファルシパルムスポロゾイト及びP.ベルゲイスポロゾイトに対する認識及び結合;B1)P.ファルシパルムスポロゾイト(右)及びP.ベルゲイスポロゾイト(左)に対して認識及び結合するヒト血清試料の割合;スポロゾイトに結合する割合(黒)スポロゾイトに結合しない割合(灰色);B2)P.ファルシパルムスポロゾイト結合アッセイの代表的な画像(上)及びP.ベルゲイスポロゾイト結合アッセイの代表的な画像(下)。 ヒトプラスモジウム寄生虫抗原を発現する遺伝子組換え齧歯類プラスモジウム寄生虫。A)ex vivo。齧歯類一次肝細胞のスポロゾイト感染から48時間後の肝臓齧歯類プラスモジウム寄生虫形態の免疫蛍光顕微鏡検査;B)in vivo。C57BL/6齧歯類マラリアモデルのin vivoスポロゾイト感染から45時間後の免疫蛍光顕微鏡検査。Pb(PfCS)寄生虫中のP.ファルシパルムCSタンパク質(緑色)の存在に留意されたい。 遺伝子組換え齧歯類プラスモジウム寄生虫の免疫原性。A及びB)モック感染唾液腺注射マウス(SG)又は野生型P.ベルゲイ(WT)若しくは遺伝子組換えPbCSPf.(PfCS)に感染したマウスのいずれかを用いて、異なる寄生虫系からのスポロゾイトに感染したマウスからの血清試料を、攻撃されたマウスにおいてスポロゾイト周囲タンパク質(CS)に対して誘導されるIgG及びIgM応答をアッセイするためにELISAにより分析した;力価は、陽性染色をもたらす試験された血清の最も高い希釈として蛍光の任意単位(AU)で表される;A)P.ファルシパルム−CSに対して誘導されたIgG及びIgM応答;B)P.ベルゲイ−CSに対して誘導されたIgG及びIgM応答;C)モック感染唾液腺注射マウス(SG)又は野生型P.ベルゲイ(WT)若しくは遺伝子組換えPbCSPf.(PfCS)に感染したマウスのいずれかを用いた、攻撃されたマウスにおけるCS特異的T細胞応答のELISPOT分析;10^6個の膵細胞中のIFN−γ分泌細胞の数が示されている;D)モック感染唾液腺注射マウス(SG)又は野生型P.ベルゲイ(WT)若しくは遺伝子組換えPbCSPf.(PfCS)に感染したマウスのいずれかを用いた、攻撃されたマウスからの免疫血清の、野生型P.ベルゲイスポロゾイト、又は遺伝子組換えPbCSPf若しくはP.ファルシパルムスポロゾイトへの結合親和性;E)モック感染唾液腺注射マウス(SG)又は野生型P.ベルゲイ(WT)若しくは遺伝子組換えPbCSPf.(PfCS)に感染したマウスのいずれかを用いた、攻撃されたマウスからの血清の存在下でのP.ファルシパルムスポロゾイトの滑走運動性阻害アッセイ;F)モック感染唾液腺注射マウス(SG)又は野生型P.ベルゲイ(WT)若しくは遺伝子組換えPbCSPf(PfCS)に感染したマウスのいずれかを用いた、攻撃されたマウスからの血清の存在下でのP.ファルシパルムの肝臓感染性阻害アッセイ。
本発明は、完全な安全性を確保しつつ先例のない汎用性と高い有効性とを組み合わせた、マラリアワクチン接種への代替的アプローチに関する。我々は、(i)齧歯類マラリアスポロゾイト(spz)は、ヒト肝細胞中で成功裏に感染し成長することができるため、強力な免疫応答を生成することが可能な完全生物体前血内期ワクチンとして使用され得ること;(ii)齧歯類マラリア寄生虫は、ヒト赤血球内でそれらの生活環を完結することが全くできず、したがって、疾患誘発性ヒト血液期感染を引き起こせなくなっているため、極めて安全な抗原送達プラットフォームであること;(iii)齧歯類マラリア寄生虫は、ヒト免疫系により認識され得る保存された分子を有するため、ヒトプラスモジウム種に対する高いレベルの異種間防御を誘導し得ること;iv)遺伝子組換えされた齧歯類プラスモジウム寄生虫は高度に免疫原性であり、ヒトプラスモジウム寄生虫を認識してヒトプラスモジウム感染を阻害することが可能な特異的な免疫応答を操作されたヒトプラスモジウム抗原に対して誘発することができることを実証した。齧歯類プラスモジウム生物体又は齧歯類プラスモジウム寄生虫により、自然宿主が齧歯類動物である原生動物プラスモジウム属(4つの既知の種、すなわち、P.ベルゲイ、P.ヨエリ、P.ビンケイ及びP.シャバウディを含む)の任意のメンバーが意味される。ヒトプラスモジウム生物体又はヒトプラスモジウム寄生虫は、ヒトマラリアを引き起こすことが知られている原生動物プラスモジウム属(P.ファルシパルム、P.ビバックス、P.マラリアエ、P.オヴァレ及びP.ノウレシを含む)の任意のメンバーを意味する。
(i)齧歯類プラスモジウム寄生虫はin vivoでヒト肝細胞に感染する。
我々は、並行して、齧歯類プラスモジウム生物体である野生型P.ベルゲイによる、1つのマウス肝癌細胞系及び2つのヒト肝癌細胞系(Hepa1−6、HepG2及びHuh7)並びに1つのヒト不死化肝細胞系(HC04)のin vitro感染と、マウス一次肝細胞及びヒト一次肝細胞/線維芽細胞共培養物のex vivo感染とをモニタリングした。定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)及び蛍光顕微鏡検査による感染評価は、P.ベルゲイが、調査した全てのin vitro系において同様の程度まで通過(traverse)、侵入及び成長すること、並びにP.ベルゲイが、ex vivoで齧歯類及びヒト一次肝細胞内に侵入し成長することができることを示した(図1A、B、C、D)。
P.ベルゲイがin vivoの文脈においてヒト肝細胞に感染することができるか否かを確かめるために、我々は、肝臓ヒト化マウス(LHマウス)にスポロゾイトを注射し、共焦点蛍光顕微鏡検査により肝臓感染をモニタリングした。我々の結果は、P.ベルゲイがキメラLHマウスの肝臓内に移植されたヒト肝細胞に効果的に感染し得ることを示す。キメラ肝臓中のヒト及びマウス肝細胞の感染の間の比較は、寄生虫がどちらの種類の細胞内においても同様の成長が可能であることを明らかにする(図1E〜G)。
さらに、我々は、内因性CSがP.ファルシパルムのものに置き換えられた遺伝子組換えされた齧歯類P.ベルゲイ寄生虫(PbCSPf)[11]を使用した。我々は、この遺伝子組換え寄生虫の肝臓感染挙動を評価し、それがin vitroでヒト肝細胞に感染する能力、並びにヒト一次肝細胞及びLHマウスの肝臓に感染する能力を保持することを証明した。
全体的に見て、これらの結果は、齧歯類P.ベルゲイ寄生虫には、ヒト肝細胞に感染する能力が十分にあること、及びこの能力が、遺伝子組換えされたPbCSPf寄生虫においても保持されており、その結果、マラリアワクチンについての免疫生成条件を満たすことを示す。
(ii)齧歯類プラスモジウム寄生虫は病変に繋がるヒト血液期感染を引き起こすことができない。
安全であるために、齧歯類プラスモジウム生物体ベースのマラリアワクチンは、免疫用寄生虫がヒトにおいて疾患を引き起こすことが確実にできないようにしなければならない。これは、齧歯類プラスモジウムメロゾイトが、ヒト赤血球(RBC)内に効果的に侵入し増殖することができないことを必要とする。これを確かめるために、我々は、P.ファルシパルム感染に対する薬物有効性を評価するためのモデルとして開発された特定割合のヒト赤血球が移植された血液ヒト化マウス(BHマウス)[12]の使用に基づく戦略を使用した。この系は、感染細胞と非感染細胞とを、及びヒト赤血球と齧歯類赤血球とをそれぞれ見分けるための、核SYTO−16染料及びマウス特異的TER−119染料の使用と合わされ、それにより、フローサイトメトリーによってどちらの種類の細胞の感染もモニタリングし得る(図2A1、2A2、2A3)。
我々は、P.ベルゲイ感染マウス血液の輸血によって異なる程度のキメラ現象を有するBHマウスに感染させることにより開始し、非キメラマウスをコントロールとして用いて、これらのマウスにおける寄生虫血を定期的にモニタリングした。我々の結果は、SYTO−16/TER−116個体群は約5%の値まで増加し、予想された通りマウスRBC(RBC)個体群の感染を示したが、感染したヒトRBC(RBC)に対応するであろうSYTO−16/TER−116個体群は0.2%を決して超えず、非ヒト化マウスについて観察されたバックグラウンドレベルの範囲内に留まったことを示す(図2A1、2A2、2A3、2B1、2B2、2B3)。
この結果は、P.ベルゲイがRBCに感染することができないこと、又はP.ベルゲイが非常に低いレベルでそうし得ることを示唆した。これが、多数のメロゾイトの生成のための効果的なリザーバとして機能するRBCを著しい個体数を含有するキメラマウスの文脈において起こることは、特筆するに値する。これらの条件下におけるヒトRBC感染の可能性をさらに調査するために、我々は、核染料DAPIでの染色及びTER−116での染色後に、これらのマウスからの血液試料を分析した。我々は、RBCの小程度の侵入が実際に起こり得たということを示す、DAPI/TER−116細胞の非常に稀な場合を認めた。しかしながら、我々は、1つより多くの寄生虫核を有するRBCを何ら認めることができず、これにより、P.ベルゲイが、それが侵入し得るそのごく少数のRBC内で複製することができないことが示唆された(図2E)。
とりわけ重要なことには、フローサイトメトリーにより単離された感染RBCのin vitro培養は、これらの寄生虫が実際にRBC内でそれらの赤血球内生活環を完結することができないことを示した(図2C1、2C2、2D1、2D2)。このことにより、それらはヒトにおける使用に安全なものとなる。同様の結果は、感染がPbCSPf寄生虫により行われた場合にも得られた。
これらの実験において、感染は感染RBCの輸血によって得られる第2世代のメロゾイトにより開始されたので、我々は、肝臓内で生成される第1世代のメロゾイトの挙動を調査することにした。これを行うために、我々は、P.ベルゲイ感染蚊又はPbCSPf感染蚊の唾液腺から採取されたスポロゾイトをBHマウスに感染させ、そして、非キメラマウスをコントロールとして用いて、上に記述したような同じ種類の分析を実施した。我々の結果は、肝臓内で生成されたメロゾイトが、第2世代のメロゾイトと同様に挙動することを示しており、このことにより、齧歯類P.ベルゲイ寄生虫がヒトにおける使用に安全であり、P.ファルシパルムスポロゾイトの不十分な弱毒化に伴う危険を呈さないことが証明される。
(iii)齧歯類プラスモジウム寄生虫はヒトプラスモジウム寄生虫に対する高い異種間防御能力を有する。
我々は、カメルーン及びタンザニアからのアフリカ人マラリア感染個体からの血清試料を、Pベルゲイ及びP.ファルシパルムCSタンパク質に対する抗体の存在について、並びにこれらの種の両方からのspzを認識するそれらの能力について評価した。我々の結果は、これらの試料はいずれもP.ベルゲイCSに対する抗体を含有していなかった(図3A1、3A2)が、それらのうちの71%が、P.ファルシパルム及びP.ベルゲイspzの両方を認識することができた(図3B1、3B2)ことを示した。これらのデータは、マラリアに対する自然獲得免疫が、CSタンパク質以外のspz上の保存されたヒトプラスモジウム寄生虫及び齧歯類プラスモジウム寄生虫エピトープに対する抗体応答を含むことを示す。全体的に見て、これらの結果は、ワクチン接種プラットフォームとしての齧歯類プラスモジウム寄生虫の使用が、現在のところ知られていない保存された抗原に対する免疫応答を惹起する可能性を有することを明らかに示す。
(iv)遺伝子組換え齧歯類プラスモジウム寄生虫による免疫はヒトプラスモジウム感染に対して特異的な極めて効果的な防御を誘発する。
我々が提案するワクチン接種方法のさらなる利点は、我々は、極めて効果的な特異的免疫応答を誘発するであろうヒトプラスモジウム寄生虫の抗原の遺伝子組換えによる導入により、齧歯類プラスモジウム寄生虫によって提供される固有の異種間防御を向上させ得るという考えに依拠するものである。
我々が提案する戦略のコンセプトを証明するために、我々は、齧歯類PbCSPf寄生虫を使用した。我々は、免疫蛍光顕微鏡検査を用いて、PbCSPfがex vivo(図4A)又はin vivo(図4B)のどちらにおいても肝細胞内でP.ファルシパルムCSを発現することを確認した。次いで、我々は、感染の齧歯類モデルにおいてこれらのトランスジェニック寄生虫の免疫原性を評価し、操作されたP.ファルシパルムCS抗原に対するこの応答の特異性を判断した。C57BL/6マウスをPbCSPfスポロゾイトに感染させ、続いてクロロキンで処理して、血液寄生虫血及び疾患の進行を防止した。クロロキン処理の開始から5日後に、マウスを犠牲にし、採取血液から免疫血清を得た。感染していないマウスからの免疫前血清及び野生型P.ベルゲイにより免疫されたマウスからの血清を得、これらの実験においてコントロールとして使用した。血清中のP.ファルシパルムCSに対する抗体を、ELISAにより定量化した(図5A、5B)。我々の結果は、PbCSPf寄生虫により免疫されたマウスが、著しい量のこの抗体を産生したことを示しており、このことにより、齧歯類動物のPbCSPfによる免疫が、ヒト感染性寄生虫に対する防御をもたらすことが知られている[13]P.ファルシパルムCSに向けられた抗体の生成を誘発したことが証明される。
さらに、我々は、P.ファルシパルムCSエピトープに対する明らかな細胞性免疫応答を実証した(図5C)。最後に、我々は、遺伝子組換え齧歯類PbCSPfにより免疫されたマウスの血清が、ヒトプラスモジウムスポロゾイトに対して高いアビディティで認識及び結合し得ることを証明した(図5D)。さらに、我々は、この免疫血清が、ヒトプラスモジウム寄生虫の滑走運動性(図5E)及び肝細胞進入(図5F)を機能的に阻害することができることを証明した。
全体的に見て、我々のデータは、齧歯類プラスモジウム寄生虫の遺伝子組換えが、ヒトプラスモジウム寄生虫に対するこれらの寄生虫の免疫能力を実質的に高め得ることを示す。
結論
放射線弱毒化スポロゾイト(RAS)及び遺伝子的に弱毒化されたスポロゾイト(GAS)により提供されるものなどの完全生物体アプローチは、そのような弱毒化スポロゾイトワクチンの製造、製剤化及び送達に関する多大な技術的課題にもかかわらず、サブユニットベースの前赤血球期ワクチン接種戦略に代わる非常に魅力的な代替法と見られている。しかしながら、これらのアプローチの両方が、それらが最も命に関わるヒトマラリア寄生虫であるP.ファルシパルムの弱毒化に基づくものであるという事実から生じる不可避の安全性の懸念を提起する。
我々は、齧歯類プラスモジウム寄生虫とヒトプラスモジウム寄生虫との間の異種間防御能力に基づく、マラリアに対する前赤血球期完全生物体ワクチンの開発のための代替的戦略を提案する。そのようなワクチンは、ヒトプラスモジウム属種対応物に対して免疫原性であり得る齧歯類抗原による異種間防御を誘発し得る。照射マラリアスポロゾイトによる免疫に続いてCS以外の成分により誘導される異種間防御の例が利用可能である。例えば、体液性及び細胞性免疫応答による防御免疫を誘導する能力に基づく前赤血球期ワクチンの標的抗原として近年特定された、CelTOS(オーキネート及びスポロゾイトの細胞透過タンパク質(cell-traversal protein)を表す)がこれに該当し得る。CelTOSは、プラスモジウム属種の間で高度に保存されており、P.ファルシパルムからの前赤血球期抗原CelTOSによる免疫は、P.ベルゲイによる異種攻撃に対する異種間防御を誘発することが示され、これにより、逆の作用も起こり得ることが示唆された。
それらの異種間防御能力に加えて、齧歯類プラスモジウム寄生虫の免疫原性は、遺伝子組換えにより、それらを効果的に、極めて効率的な特異的免疫応答を誘発することが可能なヒト感染性プラスモジウム属種の免疫原性抗原の送達のためのプラットフォームに変えて高められ得る。当然、既に知られているか又はまだ知られていない2種以上の抗原が、プラスモジウム生活環の単段階又は多段階のいずれかに対して及びヒトプラスモジウム生物体の単一種又は複数種に対して導入され得る。というのは、そのような重複は寄生虫血の感染に対するさらなる程度の防御を確実にし得るからである。
本発明において、我々は、齧歯類寄生虫P.ベルゲイが、ヒト肝細胞には感染し得るがヒト血液期感染を引き起こすことはできないことを実証する。これらは、ワクチン接種戦略として評価されるべき齧歯類動物ベースの寄生虫の必須の前提のうちの2つを構成する。第3の前提は、トランスジェニック齧歯類プラスモジウム寄生虫がヒト感染性プラスモジウム種による攻撃に対する応答を誘発し得ることである。この仮定を実証するために、我々は、P.ベルゲイのP.ファルシパルムCS発現変異体(PbCSPf)を使用し、それが、P.ファルシパルム攻撃に対する特異的防御応答を誘発しながらもその野生型対応物の主要な特徴を保持することを証明した。これは、我々が提案する戦略の概念実証を確立し、同じ原理に基づく他のワクチン候補の設計及び製造へのさらなる道を開くものである。
PbCSPf自体は、それが比較的少ない数の唾液腺スポロゾイトをもたらしかつ野生型P.ベルゲイよりも低い肝臓感染性をもたらすという欠点を有する。これは、この寄生虫におけるP.ファルシパルムタンパク質の不適切なコンフォメーションと合わせ、内因性CSの欠如のせいである可能性が最も高い。したがって、いくつかの代替法(例えば、内因性タンパク質の置き換えとしてではなくさらに加えての、内因性CSプロモーターの制御下における、中立遺伝子座でのP.ファルシパルムCSの異種発現)が、PbCSPfの感染収率(infection yield)を改善するために企図され得る。
ヒトマラリア遺伝子のための「ピギーバック」としての齧歯類寄生虫の使用は、CS以外の抗原を含むように拡張され得る。前赤血球期免疫応答を生成するための明らかな候補の中には、トロンボスポンジン関連接着タンパク質(TRAP)及び肝臓期抗原1(LSA−1)があり、その両方が、免疫原性能力を呈することが予想される。
さらに、マラリアに対する滅菌防御免疫は、1つの抗原単独ではなく新規のP.ファルシパルム抗原の一団に向けられる。或いは、戦略はまた、血液期抗原を含めることも考慮に入れる。これらの中で、頂端膜抗原I(AMA−I)、赤血球結合抗原−175(EBA−175)、及びメロゾイト表面タンパク質1(MSP−1)が、それらの確立又は提案されている免疫原性を考慮すると、最も有力な候補である。これらの抗原は、感染の肝臓期の間のそれらの発現を可能にするプロモーターの制御下に置かれた場合、P.ファルシパルム血液期に対して宿主の免疫系に抗原刺激を与えて、さらなる防御層を生成することが予想される。さらに、このアプローチは、ガメトサイト特異的遺伝子(例えば、p48/45)を齧歯類プラスモジウムプラットフォーム内に操作して入れることにより、偽弱毒化ワクチン(pseudo-attenuated vaccine)中に伝染阻止成分を導入するために使用され得る。
この戦略は、P.ビバックス抗原(例えば、CS、上記のP.ファルシパルム遺伝子のオルソログ、ダッフィ結合タンパク質(DBP)、又は網状赤血球結合タンパク質(RBP))を免疫原性プラットフォーム中に含めることが企図され得るように、P.ファルシパルムに対する免疫の生成を超えて拡張され得る。

Claims (5)

  1. きた齧歯類プラスモジウム生物体を含む、ヒトマラリアを予防するためのワクチンであって、
    前記齧歯類プラスモジウム生物体が、ヒトプラスモジウム寄生虫由来のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質を発現するように遺伝子組換えされている、ワクチン。
  2. 前記齧歯類プラスモジウム生物体が、自然宿主が齧歯類動物である、P.ベルゲイ(P. berghei)、P.ヨエリ(P. yoelii)、P.ビンケイ(P. vinckei)及びP.シャバウディ(P. chabaudi)を含む原生動物プラスモジウム属のいずれかのメンバーである、請求項1に記載のワクチン。
  3. 前記ヒトマラリアが、原生動物プラスモジウム属のP.ファルシパルム(P. falciparum)、P.ビバックス(P. vivax)、P.マラリアエ(P.malariae)、P.オヴァレ(P. ovale)及びP.ノウレシ(P. knowlesi)を含むヒトプラスモジウム寄生虫のうちのいずれかによって引き起こされる、請求項1または2に記載のワクチン。
  4. ヒトプラスモジウム寄生虫の前赤血球期感染を阻害するための、生きた齧歯類プラスモジウム生物体を含む、医薬組成物であって、前記齧歯類プラスモジウム生物体が、ヒトプラスモジウム寄生虫由来のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質を発現するように遺伝子組換えされている、医薬組成物
  5. 薬学的に許容可能なキャリアを含む、請求項に記載の医薬組成物。
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