2006年には、およそ20年で最大の流行性耳下腺炎の流行を米国は経験した(Marin et al.,2008年,Vaccine;26(29−30):3601−3607)。集団発生は、アイオワの大学で始まり、他の11州に広がった。本発明により、アイオワの流行性耳下腺炎の流行に由来する臨床野生型分離株の完全なゲノム配列が決定された。MuV−IA、rMuVIowa/US/06、MuV Iowa/US/06、MuV−Iowa/US/06、またはMuV(Iowa/US/06)として本明細書で言及されるIowa株であるこの分離株はまた、遺伝子型Gのメンバーであり、広範囲に使用されるJeryl Lynn(JL)流行性耳下腺炎ワクチンの遺伝子型Aではない。逆遺伝学システムをこのムンプスウイルスについて作製し、その逆遺伝学システムを使用して、これらに限定されないが、ウイルスタンパク質SH(rMuVΔSH)及び/またはV(rMuVΔV)の発現を欠く組換えMuVを含む、種々の組換えMuVコンストラクトを作製した。これらの組換えウイルスは、ワクチン産生のためにWHOから承認された細胞株であるVero細胞などの組織培養細胞中でよく増殖するが、動物モデルにおいて弱毒化しており、JLワクチンと比べても少ない神経毒性を示す。これらの組換えウイルス及びそれらの派生体は、新世代のMuVワクチンに適している。
パラミクソウイルス科ファミリーのメンバーであるムンプスウイルス(MuV)は、15,384ヌクレオチドのゲノムを有するマイナス鎖非分節RNAウイルスである。ウイルスゲノムには7つの遺伝子があるが、9つの既知ウイルスタンパク質がコードされている。ヌクレオカプシドタンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、及び大型RNAポリメラーゼ(L)タンパク質は、ウイルスRNAゲノムの転写及び複製にとって重要である(Elango et al.,1988年,J Gen Virol;69(Pt 11):2893−2900;Okazaki et al.,1992年,Virology;188:926−930;及びRima et al.,1980年,J Gen Virol;46(2):501−505)。V/P遺伝子は3つのタンパク質、I、V、及びPをコードする(Paterson and Lamb,1990,J Virol;64:4137−4145)。P遺伝子内の変異は、ムンプスウイルスの病原性の増大と関連している(Saito et al.,1996年,Microbiol Immunol;40(4):271−275)。Vタンパク質は、感染細胞におけるインターフェロンシグナル伝達の阻害に重要な役割を果たす(Kubota et al.,2002年,J Virol;76(24):12676−12682;Takeuchi et al.,1990年,Virology;178:247−253;Ulane et al.,2003年,J Virol;77(11):6385−6393;及びYokosawa et al.,2002年,J Virol;76(24):12683−12690)。糖タンパク質である融合(F)タンパク質は、細胞へのウイルス侵入にとって不可欠である細胞間融合及び細胞ウイルス融合の両方を、pHに依存しない方法で媒介する(Waxham et al.,1987年,Virology;159:381−388)。別のウイルス糖タンパク質であるヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ(HN)もまたウイルス侵入に関与し(Tanabayashi et al.,1992年,Virology;187:801−804)、HN遺伝子の変異は、ムンプスウイルスの病原性に関係している(Cusi et al.,1998年,J Clin Microbiol;36(12):3743−3744)。マトリックス(M)タンパク質は、ウイルス構築に重要な役割を果たす(Matsumoto,1982年,Microbiol Immunol;26(4):285−320)。低分子疎水性(SH)タンパク質は、57残基のI型疎水性内在性膜タンパク質である(Elango et al.,1988年,J Gen Virol;69(Pt 11):2893−2900)。
本発明は、本明細書に記載するムンプスウイルスゲノムを表わす単離ポリヌクレオチド配列並びにその断片及び派生体を含む。そのようなムンプスウイルスゲノムは、これらに限定されないが、野生型MuV−IAゲノムまたはウイルスタンパク質SH(rMuVΔSH)及び/若しくはV(rMuVΔV)の発現を欠くムンプスウイルスゲノム、並びにそれらの派生体及び断片を含む。パラミクソウイルス科ファミリーのメンバーとしてのMuVは、マイナス鎖非分節RNAゲノムを有する。従って、好ましい実施形態では、MuV−IAゲノムをコードする単離ポリヌクレオチド配列は、相補DNA(cDNA)である。そのようなcDNA配列の1つは配列番号1で示される。MuV−IAウイルスの遺伝子配列及びそれぞれのコード化タンパク質のアミノ酸配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCPI)のウェブサイト(ncbi.nlm.hih.govのワールドワイドウェブ上で利用可能である)上で、GenBank受託番号JN012242;バージョンJN012242.1(GI:338784246)の下で知ることができ、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、MuV−IAゲノムを表わす単離ポリヌクレオチドはRNA分子である。MuV−IAゲノムを表わす単離ポリヌクレオチドは、ゲノムであってもアンチゲノムRNAであってもcDNAであってもよい。MuV−IAゲノムを表わす単離ポリヌクレオチドは、アンチゲノムとも呼ばれる、複製中間体RNAに対応するMuVゲノムのプラスセンスバージョンであってもよい。
更に、本明細書に記載する単離ポリヌクレオチドの派生体が本発明に含まれる。一部の実施形態では、その派生体は、本明細書に記載するポリヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有しうる。例えば、その派生体は、配列番号1またはその断片と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有しうる。一部の実施形態では、その派生体は、本明細書に記載するアミノ酸配列または本明細書に記載するムンプスウイルスゲノムにコードされたアミノ酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしうる。例えば、その派生体は、配列番号1によってコードされたポリペプチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチド配列をコードしうる。2つのポリヌクレオチド配列は、Tatusova and Madden,1999年,FEMS Microbiol Lett;174:247−250)に記載され、ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlのワールドワイドウェブ上で利用可能である、BLAST2探索アルゴリズムのBlastnプログラムを使用して比較することができる。好ましくは、マッチに対する報酬=1、ミスマッチに対するペナルティ=−2、オープンギャップペナルティ=5、伸長ギャップペナルティ=2、ギャップx_dropoff=50、期待値=10、ワードサイズ=11、フィルターonを含む、すべてのBLAST2探索パラメーターについてデフォルト値が使用される。
一部の実施形態では、その派生体は、本明細書で「高ストリンジェンシー条件」とも呼ばれる「ストリンジェントな条件」下で、本明細書に記載するポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする。例えば、その派生体は、ストリンジェントな条件下で配列番号1とハイブリダイズする。そのようなその派生体は、更に、本明細書に記載する種々の機能的な形質の1つまたは複数を示しうる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは、当業者により容易に決定可能であり、一般に、プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に応じて経験的に算定される。一般に、適切なアニーリングのためには、より長いプローブはより高い温度を必要とし、より短いプローブはより低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、一般に、相補鎖がそれらの融解温度を下回る環境下にあるときに変性DNAがリアニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高いほど、使用することができる相対温度は高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにする傾向があり、より低い温度は、ストリンジェントを弱める傾向がある。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,(1995)を参照されたい。本明細書で定義される「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、以下のことにより確認することができる:(1)洗浄のための低イオン強度及び高温の使用、例えば、50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムの使用;(2)ハイブリダイゼーション中のホルムアミドなどの変性剤の使用、例えば、42℃で、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)と50%(v/v)ホルムアミドの使用;または(3)42℃での、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS及び10%硫酸デキストランの使用、42℃での0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃での50%ホルムアミドによる洗浄、次いで、55℃での、EDTAを含有する0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄。
一部の態様では、その派生体は、派生体ヌクレオチド配列が「6の規則」に従うように、ヌクレオチド配列の欠失及び/または付加を含む。例えば、Kolakofsky et al.,1998年,J Virol;72:891−899を参照されたい。
更に、単離ポリヌクレオチドの断片及びその派生体が本発明に含まれる。そのような断片は、例えば、9つのムンプスウイルスタンパク質の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのみをコードする、MuVゲノムの一部のみを含むことができる。一部の態様では、断片はプライマーまたはプローブとして有用となりうる。
その断片は、表1または表2に記載のプライマー対の何れかにより決定されたムンプスウイルスゲノムの断片を含むことができる。例えば、PCR反応において、プライマー対として、PX1F、PX3F、PX5F、PX7F、PX9F、PX11F、PX13F、PX15F、PX17F、PX19F、PX21F、PX23F、PX25F、PX27F、PX29F、PX31F、またはPX33の何れか1つと、PX2R、PX4R、PX6R、PX8R、PX10R、PX12R、PX14R、PX16R、PX18R、PX20R、PX22R、PX24R、PX26R、PX28R、PX30R、PX32R、またはPX34Rの何れか1つとの対を、そして鋳型として本明細書に記載するポリヌクレオチド配列を使用して決定された断片。例えば、本発明の断片は、配列番号1上で、またはこれらに限定されないが、本明細書に記載するいずれのものも含む、別のムンプスウイルスゲノム上で、PX1F、PX3F、PX5F、PX7F、PX9F、PX11F、PX13F、PX15F、PX17F、PX19F、PX21F、PX23F、PX25F、PX27F、PX29F、PX31F、またはPX33Fの何れか1つを順方向プライマーとして使用し、PX2R、PX4R、PX6R、PX8R、PX10R、PX12R、PX14R、PX16R、PX18R、PX20R、PX22R、PX24R、PX26R、PX28R、PX30R、PX32R、またはPX34Rの何れか1つを逆方向プライマーとして使用する場合に得られるPCR産物を表わしてもよい。
単離ポリヌクレオチド、派生体、またはそれらの断片は、ムンプス起源でない更なる配列を含むことができる。そのような異種配列は、例えば、プロモーター配列、転写開始配列、及び/または終止配列など、更なる抗原決定基または他の更なる成分をコードすることができる。
MuV−IAまたはその派生体若しくは断片など、ムンプスウイルスゲノムをコードする単離ポリヌクレオチド配列を組み込むベクター及び他のコンストラクトが本発明に含まれる。そのようなベクターは発現ベクターであってもよい。そのようなベクターコンストラクトの1つは、MuV−IAなど、MuVの完全なゲノムをコードするポリヌクレオチド配列を含むプラスミドである。そのようなプラスミドは、本明細書では「pMuV」と呼ばれる。本発明は、本明細書に記載するムンプスゲノムの何れかを含むpMuVを含む。一部の実施形態では、ゲノム配列はcDNA配列であってもよい。
本発明は、MuV−IA遺伝子配列、またはその変異体若しくは派生体など、本明細書に記載するムンプスウイルスを含む逆遺伝学システムを含む。逆遺伝学システムは、本明細書に含まれる実施例に詳細に記載されるように、インビトロ感染性ウイルス粒子を生成するために使用することができる。He et al.,1997年,Virology;237(2):249−60、及びTompkins et al.,2007年,Virology;362(1):139−50も参照されたい。そのような感染性ウイルス粒子は、本明細書で組換えMuVと呼ばれ、また本明細書でrMuVとも呼ばれる。rMuVは、組換え手段により作製され、従って天然には存在しない。rMuVは、感染性ウイルス粒子として機能することができる。本明細書に記載するムンプスウイルスゲノムの何れかを発現するrMuVは、本発明に含まれる。例えば、これらに限定されないが、本明細書に記載するrMuVΔSH、rMuVΔV、またはrMuVΔSHΔVコンストラクトを含む、低分子疎水性(SH)タンパク質産物を発現することができず、かつ/またはVタンパク質産物を発現することができないムンプスウイルスゲノム。
本明細書に記載するムンプスウイルスゲノムは、G血清型またはA血清型に属しうる。ムンプスウイルスゲノムは、例えば、ムンプスウイルス株MuV−IA、Glouc1/UK96(AF280799)、UK01−22、87−1004(AF314560)、SIPAR 02(AF314558)、Biken(AF314561)、87−1005(AF314562)、MuV(2001年)(AF314559)、Urabe 1004−10/2(FJ375177)、Urabe Gw7(FJ375178)、Hoshino(AB470486)、Miyahara(1992年)(NC_002200)、MuV Miyahara(1992年)(2)(AB040874)、Y213(AB576764)、Dg1062/Korea/98(32172464)、L3/Russia/Vector(AY508995)、L−Zagrebマスター種(AY685921)、L−Zagrebワクチン株(AY685920)、9218/Zg98(299766355)、Novosbrisk遺伝子型C(50404164)、PetroNov遺伝子型H(AY681495)、88−1961(AF467767)、Du/CRO05(EU370207)、SP−A(FJ556896)、SP(EU884413)、SP(2006)(DQ649478)、JL2(AF3452901)、Jeryl Lynn亜株(FN31985)、Enders(GU9800521)、Jeryl Lynn主要成分(AF338106)、MuV(2000)(AF201473)、JL1(FJ211586)、RIT4385(FJ211585)、またはRIT4385(2)(FJ211584)であってもよい。一部の好ましい実施形態では、ムンプスウイルスゲノムはMuV−IAである。
低分子疎水性(SH)タンパク質産物を発現することができないムンプスウイルスゲノムは、SHタンパク質をコードする翻訳領域(ORF)の欠失または開始コドンを停止コドンに変換する変異を含み得る。例えば、SHタンパク質をコードする翻訳領域(ORF)の欠失は、SHタンパク質をコードするORFの約156ヌクレオチドの欠失を含み得る。
Vタンパク質産物を発現することができないムンプスウイルスゲノムは、Vタンパク質の発現を抑止する、V/I/P遺伝子に対する1つまたは複数の変異を含み得る。一部の態様では、Vタンパク質の発現を抑止する、V/I/P遺伝子に対する1つまたは複数の変異は、P/V遺伝子中の編集部位にヌクレオチド配列GAGGAGGGを含み得る。
本発明のムンプスウイルスのゲノムは、1つまたは複数の更なる変異及び/または欠失を含み得る。一部の態様では、更なる変異または欠失は、Pタンパク質のリン酸化をもたらす変異または欠失を含み得る。一部の態様では、Pタンパク質のリン酸化をもたらす更なる変異または欠失は、Pタンパク質のT147及び/またはS307の変異または欠失を含み得る。更に、Iタンパク質産物の発現を可能にする配列を更に含む、本明細書に記載するムンプスウイルスゲノムは、本発明に含まれる。一部の態様では、更なる変異または欠失は、L遺伝子の変異または欠失を含み得る。一部の態様では、更なる欠失及び/または変異は、当業者に公知の任意のものから選択することができる。
本発明はまた、異種ポリペプチドを更にコードする、本明細書に記載するムンプスウイルスゲノムを含む。そのような異種ポリペプチドは、例えば、非ムンプス起源の抗原性ポリペプチドであっても、例えばGFP若しくはルシフェラーゼなどの検出可能マーカーであってもよい。
更に、本明細書に記載する単離ポリヌクレオチ配列、pMuV、rMuV、ベクターコンストラクト、ウイルス感染性粒子、及び/またはウイルスコンストラクトの1つまたは複数を含む組成物も、本明細書に含まれる。そのような組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。使用される場合、医薬として許容される担体は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適した、1つまたは複数の適合する固体充填剤若しくは液体充填剤、希釈剤、または被包物質を指す。担体は、例えば、安定剤、防腐剤、及び緩衝剤を含む。適切な安定剤としては、例えば、SPGA、炭水化物(ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、デキストラン、グルタメート、若しくはグルコースなど)、タンパク質(乾燥乳清、アルブミン、若しくはカゼインなど)、またはそれらの分解産物が挙げられる。適切な緩衝剤としては、例えば、アルカリ金属リン酸塩が挙げられる。適切な防腐剤としては、例えば、チメロサール、メルチオレート、及びゲンタマイシンが挙げられる。希釈剤としては、これらに限定されないが、水、水性緩衝剤(緩衝食塩水など)、アルコール、及びポリオール(グリセロールなど)が挙げられる。そのような組成物及び/または担体は、パイロジェンフリーであってもよい。
本発明の組成物は、これらに限定されないが、水酸化アルミニウム;リン酸アルミニウム;QS−21スティミュロン(Stimulon);3−O−脱アセチル化モノホスホリルリピドA;IL−12;N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP);N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11637、nor−MDPと呼ばれる);N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEと呼ばれる);コレラ毒素;及びそのBサブユニットを含むコレラ毒素の無毒誘導体;プロコレラゲノイド(procholeragenoid)、並びに真菌多糖を含む、アジュバントを含むことができる。
本発明の組成物は、他の病原性種に対する他の免疫学的に活性な抗原を含む、更なる活性免疫原を含むことができる。他の免疫学的に活性な抗原は、複製型作用物質であっても、非複製型作用物質であってもよい。複製型作用物質としては、例えば、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(variscella zoster virus:VZV)、パラインフルエンザウイルス(Parainfluenza virus:PIV)、及び呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory Syncytial virus:RSV)の弱毒化形態が挙げられる。そのような更なる作用物質は、麻疹−流行性耳下腺炎−風疹(measles−mumps−rubella:MMR)及び麻疹−流行性耳下腺炎−風疹−水痘(measles−mumps−rubella−varicella:MMRV)の組合せワクチンの中で現在使用されているものの1つまたは複数であってもよい。そのような組成物の製剤は、当技術分野で周知である。
本発明はまた、本明細書に記載するウイルスベクター及び組成物を作製及び使用する方法を含む。本開示の組成物は、選択された投与経路に適合した種々の形態で、医薬品に製剤化することができる。当業者は、組成物が投与様式及び投与量単位に応じて異なるものになることを理解するであろう。本発明の作用物質は、これらに限定されないが、静脈内、局所的、経口、鼻腔内、皮下、腹腔内、筋肉内、及び腫瘍内送達を含む、種々の方法で投与するために製剤化することができる。一部の態様では、組成物は、粘膜への無針投与のために、例えば、上気道への鼻腔内投与のために製剤化される。哺乳動物被験体に医薬組成物を粘膜投与すると、被験体の全身性免疫応答の生成に加えて、投与部位から離れた粘膜組織を含む粘膜組織中で免疫応答が刺激されることになると予想される。
本発明はまた、本明細書に記載する単離ポリヌクレオチド配列、pMuV、rMuV、ベクターコンストラクト、感染性ウイルス粒子、ウイルスコンストラクト、または組成物を被験体に投与することにより被験体に免疫応答を誘導する方法を含む。免疫応答が防御免疫を付与しても、付与しなくてもよい。免疫応答は、例えば、体液性応答及び/または細胞性応答を含んでもよい。そのような免疫応答は、体液性免疫反応であっても、細胞性免疫応答であっても、及び/または粘膜性免疫応答であってもよい。体液性免疫応答は、IgG、IgM、IgA、IgD、及び/またはIgEの応答を含み得る。体液性、細胞性、または粘膜性の免疫応答の判定は、これらに限定されないが、本明細書に記載するいずれの方法も含めて、種々の方法のいずれによっても確定することができる。免疫応答の誘導は、感染因子による将来の攻撃に向けた免疫系のプライミング及び/または刺激を含むことができ、将来の感染に対する免疫を準備する。そのような免疫応答の誘導は、防御応答として役立ち、一般に症状を軽減させる。この免疫応答は、自然免疫応答及び/または適応免疫応答を増強することができる。免疫原性は、これらに限定されないが、マウス、フェレット、及び/または非ヒト霊長類のモデル系を含む、種々の動物モデルのいずれでもアッセイすることができる。
本発明の単離ポリヌクレオチド配列、pMuV、rMuV、ベクターコンストラクト、感染性ウイルス粒子、ウイルスコンストラクト、または組成物は、被験体に投与されたとき、例えばJLワクチンなど、現在使用されている流行性耳下腺炎ワクチンと比較して、低下した神経毒性を示すことができる。神経毒性は、これらに限定されないが、通常使用される方法、及び新生ラットへの脳内接種を含めた神経毒性試験を含む、本明細書に記載するいずれの方法も含めた、種々の方法のいずれによってもアッセイすることができる(Rubin et al.,2000年,J Virol;74:5382−5384)。
本発明はまた、本明細書に記載する単離ポリヌクレオチド配列、pMuV、rMuV、ベクターコンストラクト、感染性ウイルス粒子、ウイルスコンストラクト、または組成物を被験体に投与することにより被験体にワクチン接種する方法を含む。そのようなワクチン接種は、将来の感染による症状の軽減または緩和をもたらすことができ、将来の感染を予防することができる。好ましくは、これらの組成物には、流行性耳下腺炎感染の予防及び/または寛解において、免疫原性組成物として治療及び予防の用途がある。そのような用途では、本発明の少なくとも1つの弱毒化した組換えムンプスウイルスは、免疫学的に有効な量で、通常の流行性耳下腺炎感染の経過中に大幅な軽減を引き起こすような量で使用される。再び、免疫原性は、これらに限定されないが、マウス、フェレット、及び/または非ヒト霊長類のモデル系を含む、種々の動物モデルのいずれでもアッセイすることができる。本発明の単離ポリヌクレオチド配列、pMuV、rMuV、ベクターコンストラクト、感染性ウイルス粒子、ウイルスコンストラクト、または組成物は、被験体に投与されたとき、例えばJLワクチンなど、現在使用されている流行性耳下腺炎ワクチンと比較して、低下した神経毒性を示すことができる。神経毒性は、これらに限定されないが、通常使用される方法、及び新生ラットへの脳内接種を含めた神経毒性試験を含む、本明細書に記載のいずれの方法も含めた、種々の方法のいずれによってもアッセイすることができる(Rubin et al.,2000年,J Virol;74:5382−5384)。
本発明の方法に関しては、種々の投与方法のいずれでも使用することができる。例えば、投与は、静脈内、局所的、経口、鼻腔内、皮下、腹腔内、筋肉内、または腫瘍内であってもよい。一部の態様では、投与は、例えば、噴霧、液滴、またはエアロゾルによって上気道に鼻腔内投与することによる、粘膜への無針投与である。
本開示の作用物質は、1回で投与しても、いくつかの複数回投与に分けて、ある時間間隔で投与してもよい。例えば、本発明の作用物質は、反復して、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、若しくはそれ以上の回数投与しても、または持続注入で投与してもよい。治療の正確な投与量及び期間は、治療される疾患の関数であり、公知の試験プロトコールを使用して経験的に、またはインビボもしくインビトロの試験データから外挿して決定することができることを理解されたい。濃度及び投与量はまた、緩和すべき症状の重症度に応じて異なりうることも留意されたい。任意の特定の被験体について、特定の投与レジメンを、個々の必要性及び組成物の投与を管理または監督する人の専門的な判断に従って時間経過とともに調整するべきであること、及び本明細書に記載のいかなる濃度範囲も単に例示的なものであり、特許請求の範囲の組成物及び方法の範囲または実施を限定するように意図するものではないことを更に理解されたい。
「治療有効量」で、所望の治療効果を得るために適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で被験体を治療するために十分な量の化合物を意味する。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の合計1日使用量は、健全な医療判断の範囲内で主治医により決定されることになることを理解されたい。いずれの特定の患者についても、特定の治療有効用量レベルは、例えば、治療される障害及び障害の重症度、使用される特定化合物の活性、使用される特定組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別、及び食事、使用される特定化合物の投与回数、投与経路、及び排泄速度、治療期間、使用される特定化合物と併用してまたは同時に使用される薬物、及び医療技術分野で周知の同様の因子を含む、種々の因子に依存することになる。
一部の治療実施形態では、作用物質の「有効量」は、少なくとも1つの病理学的パラメーターの軽減をもたらす量である。従って、例えば、本開示の一部の態様では、有効量は、作用物質で治療されない個体におけるパラメーターの予想される軽減と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、または少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の軽減を達成するのに効果的な量である。
本明細書で使用される場合、用語「被験体」は、これらに限定されないが、ヒト及び非ヒト脊椎動物を含む。好ましい実施形態では、被験体は哺乳動物、具体的にはヒトである。被験体は、個体であってもよい。被験体は、「個体」、「患者」、または「宿主」であってもよい。非ヒト脊椎動物は、家畜動物、伴侶動物、及び実験動物を含む。非ヒト被験体はまた、非ヒト霊長類、及びこれらに限定されないが、ラットまたはマウスなどの齧歯類を含む。非ヒト被験体はまた、限定はされないが、ニワトリ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、フェレット、ミンク、及びウサギを含む。
本明細書で使用される場合、「インビトロ」は、細胞培養であり、「インビボ」は、被験体の体内である。本明細書で使用される場合、「単離」は、その天然環境(例えば、それが天然に存在するならば、その天然環境)から取り出されたか、組換え手法を使用して産生されたか、または化学的または酵素的に合成されたもので、従って、その天然状態から「人の手により」改変されている物質を指す。
本明細書で使用される場合、「単離」物質は、その天然環境から取り出されたか、組換え手法を使用して産生されたか、または化学的または酵素的に合成された物質である。例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または細胞は単離することができる。好ましくは、物質は精製される、即ち、天然において関係している他の成分から、少なくとも60%フリー、好ましくは少なくとも75%フリー、そして最も好ましくは少なくとも90%フリーである。
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの何れか)のポリマー形態を指し、二本鎖及び一本鎖のRNA及びDNAの両方を含む。ポリヌクレオチドは、天然供給源から直接得ることができるか、または組換え手法、酵素的手法、または化学的手法の支援を受けて調製することができる。ポリヌクレオチドは、トポロジーが直鎖状であっても、環状であってもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、発現ベクター若しくはクローニングベクターなどのベクターの一部または断片であってもよい。ポリヌクレオチドは、例えばコード領域及び調節領域などの非コード領域を含む、異なる機能を有するヌクレオチド配列を含んでもよい。
単語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で特定の有益性を与えうる本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じかまたは他の状況下で好ましいことがある。更に、1つまたは複数の好ましい実施形態の記述は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外するように意図するものでもない。
特に明記されない限り、「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ(at least one)」は、互換的に使用され、1つまたは2つ以上を意味する。
特に指示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、成分量、分子量等を表現するあらゆる数字は、すべての場合に、用語「約」で修飾されているものとして理解されるべきである。従って、これに反する指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の数値パラメーターは、本発明により得ようと努める所望の特性に応じて異なりうる近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲の均等論を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告された有効桁の数字を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
本発明の幅広い範囲を記載する数値範囲及び数値パラメーターは近似値であるが、具体例に記載の数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、すべての数値は、それぞれの試験測定で見出される標準偏差から必然的に得られる範囲を本質的に含有する。
本明細書は、説明的な実施形態を例示する。本出願の全体にわたりいくつかの箇所で、例の記載を通して案内がなされ、それらの例は種々の組合せで使用することができる。それぞれの実例では、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ役立ち、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
以下の実施例によって本発明を詳細に説明する。特定の実施例、材料、量、及び手順は、本明細書に記載の本発明の範囲及び精神に従って、幅広く解釈されるべきであることを理解されたい。
実施例1
最近の集団発生に関連した株に由来する野生型ムンプスウイルスのレスキューは、ムンプスウイルスの病変形成におけるSH ORFの役割を明らかにする。
本実施例により、流行に由来する代表的な株(MuV−IA)の完全なゲノムを配列決定した。MuV−IAは、遺伝子型Gのメンバーであり、2004〜2005年における英国での集団発生に関連したMuVと同じ遺伝子型である。逆遺伝学システムを、MuV−IA(rMuV−IA)のために構築し、SH遺伝子の翻訳領域(ORF)を欠くウイルス(rMuVΔSH)をレスキューするために使用した。L929細胞のrMuVΔSH感染は、rMuV−IAと比較して、NF−κB活性化、TNF−α産生、及びアポトーシスの増加を誘導した。rMuVΔSHは、動物モデルにおいて弱毒化していた。これらの結果から、ウイルス感染の間における、TNF−αシグナル伝達の妨害及びウイルス病変形成に、MuVのSH ORFが重要な役割を果たすことが示された。
結果
MuV−IAの完全なゲノム配列。米国での最近の集団発生に関連したウイルスの遺伝子特性をよりよく理解するために、アイオワ州の集団発生に由来する代表的な分離株の完全なゲノム配列を決定した。これは、GENBANK受託番号JN012242として入手可能である。Jeryl Lynn、Urabe、88.1961、及びPetroNovのゲノム配列の比較から得られたコンセンサス配列に基づいて、一連のプライマーを設計した。これらのプライマーを表1に示す。ランダムヘキサマーを使用してMuV−IAのウイルスRNAをcDNAに逆転写し、次いで、プライマーのセットを使用してPCR反応を行い、対応するプライマーを使用してその産物を配列決定した。次いで、配列決定の結果に基づいた第2セットのプライマーを使用して、RT−PCRを実施し、第1回の配列決定断片の産物と重複する産物をこのプライマーを使用して配列決定した。この第2セットのプライマーを表2に示す。リーダー配列及びトレーラー配列は、5’/3’RACEを実施することにより決定した。
MuV−IAのSHタンパク質配列を遺伝子型Gのムンプスウイルスの他の株と比較すると、SHタンパク質の推定上の膜貫通ドメイン内に1つの保存的変化が存在するだけであり(図1A)、MuV−IAが遺伝子型Gに属することが確認された(Rota et al.,2009年,J Med Virol;81(10):1819−1825)。MuV−IAのゲノム分岐を更に研究するために、MuV−IAのゲノム配列及びGenbankからの32の完全長ゲノム配列を使用して、系統樹を作製した(図1B)。系統発生解析から、MuV−IAが、2005年にクロアチアで単離された、遺伝子型GのウイルスであるMuV Du/CRO05の配列(Santak et al.,2006年,J Med Virol;78(5):638−643)と最も近縁であることが示された。MuV−IAとJeryl Lynnワクチン(主要成分)とのタンパク質コード領域間の予測アミノ酸配列の比較から、NP、M、及びLのタンパク質配列は、98%超の同一性で高度に保存されているが、V、P、F、SH、及びHNのタンパク質の間には、より大きな分岐があることがわかった(図1C)。予測SHタンパク質配列の同一性は、85%にすぎなかった。
MuV−IAに対する感染性cDNAクローンの生成。MuV−IAの病変形成を研究するために、逆遺伝学システムを導入した。RNAウイルスは疑似種として存在するので、ゲノムのコンセンサス配列を組換えMuVに対するベースとして使用した。PIV5ミニゲノム発現プラスミドに類似した、ムンプスウイルスのためのルシフェラーゼ(luciferase:Luc)レポーター遺伝子を有するミニゲノムを含有するプラスミド(pT7−MuV−Mini−Luc)を、rMuV−IAのトレーラー配列及びリーダー配列を使用して構築した(Lin et al.,2005年,Virology;338(2):270−280)。加えて、pCAGGSベクター内のNP、P、及びLをコードするプラスミドを入手して、配列決定により確認した。プラスミドの機能性を試験するために、BSRT7細胞にプラスミドを形質移入した。2dpiに、細胞を回収し、ルシフェラーゼ(Luc)アッセイを実施した。PまたはLを欠くプラスミドではない、すべてのプラスミドで形質移入された細胞で、Luc活性が検出され、プラスミドが機能的なP及びLのタンパク質を発現することが示された。RT−PCRを行って、完全なゲノムを表わすDNA断片を増幅し、個々のプラスミドベクターに挿入して、完全長ゲノムに組み立てた。T7(pMuV−IA)プロモーターの制御下で発現されるMuV−IAの完全長ゲノムを有するプラスミド(pMuV−IA)は、感染性PIV5を生成するために使用されたプラスミドに類似していた(He et al.,1997年,Virology;237:249−260)。MuV−IAのコンセンサス配列と比較すると、pMuV−IAでは、L ORF内で、11863(TからCに)及び12028(CからTに)の位置にある2つのヌクレオチドが変化していた。しかしながら、これらのヌクレオチド変化はいずれも、予測Lタンパク質配列に変化をもたらすものではなかった。組換えMuV(rMuV−IA)を、MuVIAの完全長ゲノムを含有するプラスミドを使用してレスキューした。BSRT−7細胞に、pMuV−IA及びウイルスRNAポリメラーゼ成分を発現するプラスミドを同時形質移入した。個々のプラークを選択してVero細胞中で増幅した。レスキューされたウイルスの全ゲノムを配列決定し、入力cDNAゲノム配列と一致することを見出した。
rMuV及びMuV−IAの増殖の時間経過を比較するために、マルチサイクル増殖アッセイを実施した(図2A)。両方のウイルスとも、Vero細胞において同様のピーク力価まで増殖した。感染細胞の上清中のウイルス力価は、感染後の最初の2日間で指数関数的に増加し、48hpiに107pfu/mlの力価に到達した。HeLa細胞(ヒト細胞株)、MDBK細胞(ウシ細胞株)、及びL929細胞(マウス細胞株)での両ウイルスの増殖も比較し、これら2つのウイルス間に明白な差を観察しなかった。更に、ウエスタンブロットを使用して、細胞におけるウイルスタンパク質発現レベルを検討した(図2B)。タンパク質レベルが感染後の様々な時点で同様であり、組織培養細胞において、rMuVの複製がMuV−IAと類似していることが示された。
加えて、追加の遺伝子としてEGFPまたはウミシイタケルシフェラーゼ(Renila Luciferase:RL)タンパク質の何れかを発現する感染性組換えウイルスをレスキューした。pMuV−IAにおいて、F遺伝子とSH遺伝子の間に、SHの遺伝子開始(gene start:GS)とNPの遺伝子終結(gene end:GE)によって挟まれたEGFP遺伝子を挿入することによって、pMuVEGFPを構築し、pMuV−EGFPにおいて、EGEPのコード配列をウミシイタケルシフェラーゼ(RL)のコード配列で置換することにより、pMuV−RLを構築した。感染Vero細胞におけるEGFPまたはRLの発現を検出した(図2C及び2D)。
SH ORFを欠く組換えムンプスウイルスのレスキュー。MuVのSHタンパク質の機能を研究するために、SH遺伝子のSH遺伝子翻訳領域(ORF)内の156ヌクレオチドを、pMuV−IAから欠失させた。短縮SH ORFは、オリジナルSH ORFの開始及び遺伝子終結によって挟まれた5アミノ酸残基をコードする短いORFを含有した(pMuV−IAΔSH、図3A)。SH ORFを欠く感染性MuVをレスキューし(rMuVΔSH)(図3B及び3C)、そのゲノムを配列決定した。その配列は入力cDNA配列と一致した。rMuVΔSHゲノムのサイズは、15,228ntからなり、「6の規則」に従っていた(Kolakofsky et al.,1998年,J Virol;72:891−899)。wtMuV及びrMuVはSHタンパク質を発現し、rMuVΔSHは発現しないことを確認するために、感染Vero細胞の細胞溶解物を、抗SH並びに抗NP及び抗Pによる免疫ブロッティングにより調べた(図3D)。SHは、MuV−IA及びrMuVの感染細胞で検出されたが、rMuVΔSH感染細胞では検出されず、rMuVΔSH感染細胞ではSHタンパク質発現の欠如が確認された。
rMuV及びrMuVΔSHの分析。rMuVΔSHの増殖速度を検討するために、複数サイクルの増殖曲線及びタンパク質発現レベルをVero細胞で調べた。rMuVΔSH感染Vero細胞から放出されたウイルスの力価は、すべての時点でrMuV感染Vero細胞と同様のままであった(図4A)。感染細胞を溶解し、ウエスタンブロットを使用してウイルスタンパク質発現レベルを比較すると、rMuVΔSH感染細胞及びrMuV感染細胞における、NP及びPのタンパク質レベルは同様であり(図4B)、SH ORFがVero細胞におけるウイルス遺伝子発現またはウイルス放出にとって必須ではないことが示された。これは以前の発見と一致している。HN遺伝子はSH遺伝子の下流にある。HNの発現レベルに対してSH ORFの欠失が何らかの重要な影響を及ぼすか否かを調べるために、フローサイトメトリーを使用して感染細胞のHN及びNPの発現レベルを調べた。図4Cに示すように、rMuV感染細胞及びrMuVΔSH感染細胞におけるHNの相対発現レベルは同様であり、SH ORF配列の欠失がHNタンパク質の発現に影響を及ぼさないことが示唆された。更に、HNのmRNA発現レベルをリアルタイムRT−PCRを使用して調べた。rMuVとrMuVΔSHの間で顕著な差は観察されなかった(図4D)。興味深いことには、rMuVSHは、rMuVと比較して、Vero細胞でより大きなプラークを形成した(図4A)。
rMuVΔSHは、L929細胞に細胞変性効果を誘導した。我々は、rMuVΔSH及びrMuVによるVero、MDBK、及びHeLa細胞の感染を比較した。感染後1日目には、rMuVΔSH感染またはrMuV感染のVero細胞及びMDBK細胞に観察可能な差はなかった。我々の研究室の以前の研究では、PIV5及びRSVのSH ORFがTNF−αシグナル伝達の遮断にある役割を果たすことが示された。ムンプスウイルスSH ORFがTNF−αシグナル伝達経路の調節にある役割を有するという仮説を試験するために、TNF−α処理後にアポトーシスを受けるL929細胞でのrMuVΔSHの表現型を検討した。rMuVΔSH感染は、rMuVまたはwtMuVによる感染よりも顕著に多くの細胞死をもたらした。表現型は感染後2日目に明らかになった(図5B)。rMuVΔSH感染L929細胞に観察された細胞変性効果(cytopathic effects:CPE)がアポトーシスにより引き起こされたものか否かを検討するために、TUNELアッセイを実施した。1dpiにおいて、rMuVΔSHによる感染は、rMuVよりもアポトーシスの感染細胞をより高い割合でもたらし(図5C)、SHの欠如が感染細胞にアポトーシスの増加をもたらすことが示された。
TNF−αは、rMuVΔSH誘導アポトーシスに重要な役割を果たした。rMuVΔSH感染L929細胞のアポトーシスが上昇したTNF−αに起因するものか否かを試験するために、rMuVΔSH感染L929細胞におけるNF−κBの活性化を、NF−κBのキーサブユニットであるp65の核移行を調べることにより検討した。NF−κB因子は細胞質の中に局在化する。例えばTNF−α刺激によって活性化すると、p65が核に移行する(Baud and Karin,2001年,Trends Cell Biol;11(9):372−377)。より高レベルのp65核局在化がrMuVΔSH感染L929細胞に観察され(図6A)、NF−κBの活性化が示された。TNF−α産生がrMuVΔSH感染細胞で増加するか否かを検討するために、感染細胞の上清を回収し、ELISAを使用してTNF−αレベルを測定した。TNF−α産生レベルは、rMuVΔSH感染細胞で上方制御されていた(図6B)。TNF−αの増加がrMuVΔSH感染細胞におけるアポトーシスの増加にある役割を果たすか否かを判定するために、感染細胞をTNF−αに対する中和抗体で処理した。抗TNF−αは、rMuVΔSH感染細胞のCPEを減少させたが、対照抗体は効果を示さず(図6C)、TNF−αがrMuVΔSH誘導細胞死に重要な役割を果たすことが示された。これはTUNELアッセイで確認された(図6D)。1dpiに、対照抗体処理では、rMuVΔSHは、rMuVよりもほぼ4倍高いアポトーシス率を誘導した。抗TNF−α抗体の処理は、感染細胞の細胞死を効果的に遮断した(図6C、D)。
MuV−IAのSHは、インビトロでのTNF−αシグナル伝達を遮断した。単独で発現したMuV−IA SHがTNF−αシグナル伝達を遮断しうるか否かを検討するために、MuV−IAのSHをコードするプラスミドを、NF−κBプロモーター−ルシフェラーゼレポーターシステムと共にL929細胞に同時形質移入した。形質移入後1日目に、細胞をTNF−αで処理した。TNF−αシグナル伝達は、MuV−IAのSH及びPIV5のSHにより遮断されたが、MuV−IAのNP(図7A)またはSH ORPの配列(図7B)によっては遮断されず、SHタンパク質がTNF−α媒介シグナル伝達を遮断できることが示された。
rMuVΔSHはインビボでは弱毒化していた。MuVはヒトウイルスであり、ウイルスの病変形成を研究する理想的な動物モデルは存在しない。新生ラットへのMuVの脳内注入を使用して、MuVの種々の株の相対的な病原性を比較した(Rubin et al.,2005年)。ウイルスの神経毒性を比較するために、rMuVまたはrMuVΔSHを新生ラットの脳に脳内注入した。相対神経毒性スコアを、脳水腫の相対重症度に基づいて算出した。図8に示すように、rMuVΔSHは、rMuVよりも低い神経毒性スコアを示し、SH ORFの欠失がインビボでの弱毒化をもたらすことが示された。
考察
MuVに対する免疫は、米国で1歳及び5歳の小児に投与される、2回接種のMMR(流行性耳下腺炎、麻疹、及び風疹)ワクチンレジメンの一部である。2回のワクチン接種スケジュールでも、大規模な集団発生がワクチン接種を受けた集団に起こった。本実施例では、米国及び欧州での最近の集団発生に関連した株を代表する野生型ムンプスウイルスのレスキューについて記載されている。本実施例では、TNF−αの調節における、SHタンパク質の潜在的な役割が同定され、SH ORFの欠失がインビボでの弱毒化をもたらすことが実証され、SHがウイルスの病変形成にある役割を果たすことが示された。インビボでのrMuVΔSHの弱毒化は、SH ORFを欠失させることが、弱毒化されたムンプス株を開発するための可能な戦略となりうることを示唆する。GFP及びRLなどの外来遺伝子を発現する組換えMuVが得られており、興味深いことには、Vero細胞におけるrMuV−RLのRL発現レベルは、20継代後にも比較的高いままであり、おそらくMuVをベクターとして使用することができることを示している。
パラミクソウイルスのSHタンパク質は、PIV5感染細胞で最初に同定された(Hiebert et al.,1985年,J Virol;55:744−751)。同様の遺伝子がMuVのEnders株の配列分析に基づいて予測された。しかしながら、推定上のSH遺伝子の遺伝子間配列の変異により、Enders株MuVのSHタンパク質は感染細胞に発現されない(Takeuchi et al.,1991年,Virology;181:364−366)。従って、MuVのSHタンパク質は、MuV感染細胞に検出されなかった。Wilsonらは、PIV5のゲノム内のSH ORFをMuVのEnders株のSH ORFで置き換え、MuV SHがPIV5のSH ORFに機能的に置き換わることができることを見出した(Wilson et al.,2006年,J Virol;80(4):1700−09)。従って、MuV SHの機能は、近縁関係にあるパラミクソウイルスであるPIV5のSH ORFの機能と同じであると考えられる。本実施例において、SHの発現が初めてMuV感染細胞に検出され、MuV感染細胞にSHタンパク質の存在が確認された。更に、新しい逆遺伝学システムを利用して、SH ORFを欠く組換えMuV(recombinant MuV lacking the SH ORF:rMuVΔSH)が得られ分析された。
興味深い観察の1つは、rMuVΔSHがより大きなプラークを生成することであった。可能な説明としては、SH ORFの欠失が野生型ウイルスよりもよく細胞間融合を促進するウイルスをもたらしたことがある。ORFの総数にも遺伝子の全体的な順序にも変化がなかったので、我々は、rMuVΔSHのウイルスmRNAの相対量及びウイルスタンパク質の発現レベルが野生型ウイルスと同様であるはずであると予想する(図4B、4C、及び4D)。従って、rMuVΔSHによる大きなプラーク形成が高レベルのウイルスタンパク質発現によるものである可能性は低い。更に、MuV HN及びFを形質移入された細胞を使用する融合アッセイを、MuV SHの存在下または非存在下で実施して、細胞間融合の程度に差がないことを観察し、SHが細胞間融合の促進に役割を有しないことが示唆された。rMuΔSHにより形成されたより大きなプラークがrMuVΔSHによる高レベルの細胞死の誘導による可能性がある。ウイルスは同じ速度で細胞に感染した;しかしながら、rMuVΔSHが感染した細胞には、rMuVよりも多くの細胞死が誘導され、プラークの端でより迅速な細胞死がもたらされた。
一部のORFに由来するmRNAが生物機能を有しうる可能性がある。例えば、PIV5のL ORFのmRNAは、IFN−β発現を活性化することができる(Luthra et al.,2011年,Proc Natl Acad Sci USA;108(5):2118−2123)。本実施例では、SHのORFが欠失しており、SH ORFによりコードされたポリペプチドの機能をSH mRNA自体と識別することができない。SHポリペプチドはTNF−α媒介シグナル伝達を遮断するために必要であったが、SH ORFの配列は必要ではなく、我々は、ムンプスウイルスの病変形成におけるSHポリペプチドの重要な役割を支持する;しかしながら、欠失したSH遺伝子から発現される可能性のある小さなmRNAがrMuVΔSHの表現型に寄与したであろう可能性がある。新生ラットの脳におけるrMuVΔSHの神経毒性の軽減は、SH ORFがウイルスの病変形成に重要な役割を果たしていることを示す。我々は、rMuVΔSHによる感染がより高レベルの炎症促進性サイトカインの発現を誘導して、感染のより迅速な消失をもたらし、それによって、感染した脳の損傷を限定的にすると提案する。
材料及び方法
プラスミド、ウイルス、及び細胞。分子クローニングはすべて、以前に記載された標準手順に従って行った(He et al.,1997年,Virology;237:249−260)。MuV−IA NP、P、及びL遺伝子は、pCAGGS発現ベクターにクローン化した(Niwa et al.,1991年,Gene;108:193−200)。MuV−IA SH遺伝子は、pCAGGS発現ベクターにクローン化した。MuV−IA SH(停止コドン)は、3つの連続した停止コドン配列を、SH ORFの開始コドンの6ヌクレオチド下流に導入することにより構築した。pUC19におけるMuV−IAの完全長cDNAの構築は、PIV5の逆遺伝学システムと類似していた(He et al.,1997年,Virology;237:249−260)。pMuVΔSHを構築するために、4番目〜57番目のアミノ酸のSH ORF領域(156nt)を、サブクローニングを容易にし、ゲノムの長さを6の倍数に維持するように(「6の規則」として知られている)設計された短い6ヌクレオチド配列と置き換えた。pMuV−EGFP及びpMuV−RLは、F遺伝子開始とSH遺伝子終結に挟まれたEGFPまたはウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の何れかをFとSHの遺伝子間に挿入することにより構築した。
cDNAから感染性ウイルスをレスキューするために、完全長ゲノムまたは変異MuVゲノムを含有するプラスミド(5μg)を、プラスミドpCAGGS−L(1μg)、pCAGGS−NP(1.5μg)、及びpCAGGS−P(200ng)と共に、BSRT−7細胞に同時形質移入した。通常形質移入後4〜7日目に、形質移入されたBSRT−7細胞で融合細胞形成を観察することができた。上清をVero細胞の中にプラークした。4〜7dpiにプラークは視覚化することができた。各独立したレスキューに由来する1つまたは2つのプラークをVero細胞の中で増幅し、それらのゲノムを配列決定した。
Vero、HeLa、MDBK、及びL929細胞は、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(P/S)(Mediatech Inc.,Holu Hill,FL)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle medium:DMEM)中で維持し、BSRT−7細胞は、10%FBS、1%P/S、及び10%トリプトースリン酸ブロス(tryptose phosphate broth:TPB)に加え、400μg/mlのG418を添加したDMEM中で維持した。細胞を5%CO2、37℃で培養し、感染または形質移入の前日に、記録された80〜90%のコンフルエンスに翌日なるように適切な希釈比で継代した。ウイルス感染については、1%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin:BSA)を添加したDMEM中で、細胞に0.01、3、または5のMOIでウイルスを感染させ、5%CO2、37℃で1〜2時間インキュベートした。次いで、培地を、2%FBS及び1%P/Sを添加したDMEMと交換した。形質移入については、製造業者提供のプロトコールに従い、Invitrogen社製のPLUS(商標)及びLipofectamine(商標)試薬を使用して、細胞にプラスミドを形質移入した。
MuV−IA(MuV/Iowa/US/2006)は、2006年の集団発生の初期段階に流行性耳下腺炎症例から得られた頬側スワブから、Iowa Hygenic Laboratoryにて分離した。遺伝子型分析はCDCで実施し(Rota et al.,2009年,J Med Virol;81(10):1819−1825)、SH配列の受託番号はDQ661745である。ムンプスウイルスはすべて、Vero細胞中で増殖させ、4〜7dpiに回収した。ウイルス力価は、以前に記載されたように(He and Lamb,1999年,J Virol;73:6228−6234;及びHe et al.,1997年,Virology;237:249−260)、プラークアッセイ及びその後のギムザ染色によりVero細胞で測定した。
ウイルスの配列決定。ウイルスRNAは、QIAGEN社製のQIAampRウイルスRNA抽出ミニキットを使用し、製造業者のプロトコールに従って、細胞培養上清から抽出した。単離した全RNAは、ランダムヘキサマーと共にInvitrogen社製のSuper ScriptR III逆転写酵素を使用して、cDNAに逆転写した。次いで、合成されたcDNAを、ムンプスウイルスゲノム特異的プライマー(表1)及びInvitrogen社製のTaqポリメラーゼを使用するPCRのための鋳型として活用した。それぞれ順方向及び逆方向のプライマーを含む15組のプライマー(表2に示す)を、15の重複する断片にゲノムを分割するように設計した。これらのプライマーは、PCR産物のその後の配列決定のために使用した(Li et al.,2011年,J Virol;85(1):32−42)。リーダー配列及びトレーラー配列は、cDNA末端の迅速増幅法(Rapid Amplification of cDNA Ends)(RACE)(Li et al.,2011年,J Virol;85(1):32−42)の標準プロトコールに従って配列決定した。
ムンプスのNP、P、及びSHに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体の作製。MuV−IAに対するモノクローナル抗体を作製するために、ウイルスをVero細胞中で増殖させた。感染したVero細胞の培地を回収し、3K rpmで10分間、低速遠心分離して清澄化した。ウイルスを含有する清澄化培地を、20%スクロース溶液10mlの上に載せ、4℃、40K rpmで、1.5時間遠心分離した。ペレットを10×PBS 0.5ml中に再懸濁し、80%ショ糖溶液1.3mlと混合し、底部から上部に向けて低下するショ糖勾配:50%ショ糖溶液1.8ml及び10%ショ糖溶液0.6mlを重ねた。底部にウイルスを含むショ糖勾配を、4℃、45K rpmで、3時間(h)遠心分離した。1ml分画を回収し、1×TEN緩衝液(100mM NaCl、10mM Tris−base、1mM EDTA)10mlと混合し、4℃、40K rpmで、1.5時間遠心沈殿させた。ウイルスを含有するペレットを、50μlの1×TEN緩衝液及び1%NP−40の中に懸濁し、マウスハイブリドーマ細胞の生成のために使用した。MuV−IAのNP及びPに対するモノクローナル抗体を産生するマウスハイブリドーマ細胞を、ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)のコア施設で操作した。このハイブリドーマを、20%FBS及び0.1%ゲンタマイシンに加え、ピルピン酸ナトリウムを添加したD−MEM中で、5%CO2、37℃にて培養した。
MuV−IA SHに対するポリクローナル抗体を作製するために、2つのペプチド(N末端MPAIQPPLYLTFLLC(配列番号10)及びC末端CYQRSFFHWSFDHSL(配列番号11))を、GenScript Corporationから購入した。MuV−IA V(GenScript Corporation)に対するポリクローナル抗体をウサギで作製するために、2つのペプチド(QFIKQDETGDLIETC(配列番号12)及びCSRPDNPRGGHRREW(配列番号13))を使用した。
抗TNF−αによる感染細胞の処理。6ウェルプレート中のL929細胞に、rMuVΔSHまたはrMuVを5のMOIで感染させ、2%FBS及び1%P/Sを添加したDMEM中で、50μg/mlの中和抗TNF−α抗体または対照抗体(BD Pharmingen)と共に、1日間または2日間培養した。1日目または2dpiに、デジタルカメラを装着した顕微鏡で細胞を撮影し、次いで、MuV−NP染色またはTUNELアッセイのために回収した。
フローサイトメトリー及びTUNELアッセイ。フローサイトメトリーを、以前に記載されたように実施した(Timani et al.,2008年,J Virol;82(18):9123−9133)。6ウェルプレート中のL929細胞に、rMuVΔSH若しくはrMuVまたは模擬感染を、3または5のMOIで実施した。1または2dpiに、付着細胞をトリプシン処理し、培地中の浮遊細胞と合わせた。細胞を遠心分離し、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)中の0.5%ホルムアルデヒドに4℃で1時間再懸濁した。次いで、固定細胞をPBSで洗浄し、50%FCS−50%DMEM及び3容量の70%エタノールの中で一晩透過性にした。透過性になった細胞を、製造業者のプロトコールに準拠する、アポトーシス細胞に対するTUNEL染色または感染率のためのMuV−NP染色の何れかに供した。NP染色のための細胞の場合、モノクローナルMuV−NP抗体を1:200に希釈した後、1:100の希釈比でPE抗マウス二次抗体染色を行った。
Vero細胞に模擬感染、またはrMuVΔSH若しくはrMuVを0.5若しくは0.01のMOIで感染させた。24または48hpiに、付着細胞を浮遊細胞と合わせて回収し、固定した。HN表面染色については、1:50の希釈比で抗HNを用いて細胞を直接染色した;HN及びNP染色の全染色については、固定細胞をPBS中の0.1%サポニンで透過性にし、1:200の希釈比で抗NPを用いて、または1:50の希釈比で抗HNを用いて染色した。
NF−κB活性化の検出アッセイ。6ウェルプレート中のガラスカバースリップ上のL929細胞に、0.01のMOIでrMuVΔSH若しくはrMuVを感染、または模擬感染させた。2dpiに、カバースリップをPBSで洗浄し、0.5%ホルムアルデヒドで固定した。0.1%サポニンを加えたPBSで固定細胞を透過性にし、次いで、0.1%サポニン含有PBS中でマウス抗P65(Santa Cruz Biotechnology)と共に、続いてFITC標識ヤギ抗マウス二次抗体(Jackson Laboratory)と共にインキュベートした。デジタルカメラを装着した蛍光顕微鏡を使用して細胞を撮影した。
NF−κBレポーターアッセイシステムは、以前に記載されたように実施した(Wilson et al.,2006年,J Virol;80(4):1700−09)。L929細胞を24ウェルプレートに播種し、pκB−TATA−Luc(NF−κBプロモーター領域とそれに続くTATAボックスエンハンサー及びホタルルシフェラーゼ遺伝子を含有するレポータープラスミド)並びにpCAGGS−RL(ウミシイタケルシフェラーゼタンパク質を発現する形質移入対照プラスミド)に加えて、空ベクター、pCAGGS−MuV SH、pCAGGS−MuV SH(停止)、pCAGGS−PIV5 SH、またはpCAGGS−MuV NPの何れかを、PLUS(商標)及びLipofectamine(商標)試薬を使用して形質移入した。形質移入後2日目に、細胞の半分を、Optima(Invitrogen)において、10ng/ml濃度のTNF−α(Alexis,San Diego)を用いて、5%CO2、37℃で4時間処理し;細胞の半分を、Optimaのみで処理した。次いで、細胞を1×受動溶解緩衝液(Promega,Madison,WI)100μlで溶解し、溶解物10μlを、デュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega,Madison,WI)を使用するデュアルルシフェラーゼアッセイに供した。TNF−α刺激細胞対非TNF−α刺激細胞の比を、「ルシフェラーゼ活性の誘導」として使用する。
免疫ブロッティング。6ウェルプレート中の約90%コンフルエンスのVero細胞に、模擬、MuV−IA、rMuV、またはrMuVΔSHを、0.05のMOIで感染させた。感染後0時間、24時間、48時間、または72時間に細胞を回収し、以前に記載されたように(Luthra et al.,2008年,J Virol;82(21):10887−10895)、WCEB緩衝液(50mM Tris.HCl pH8.0、120mM NaCl、0.5%NP−40、0.00076%EGTA、0.2mM EDTA、10%グリセロール)0.5ml中でプロテアーゼ阻害剤の混合物を用いて溶解した。細胞溶解物を短時間遠心分離して細胞片を除去した。細胞溶解物を10%または17.5%のポリアクリルアミドゲルに負荷し、SDS−PAGEに供した。タンパク質を、Immobilon−FL転写膜(Millipore)に転写し、一次抗体(抗MuV SH 1:250、抗MuV V 1:500、抗MuV NP 1:5000、抗MuV P 1:2000)及び西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した対応二次抗体と共にインキュベートし、Amersham ECL(商標)ウエスタンブロッティング検出キット(GE Healthcare)により検出した。
細胞培養におけるrMuVΔSH、rMuV、及びMuV−IA感染の時間経過。6cmプレート中の細胞に、MuV−IA、rMuV、またはrMuVΔSHを0.01のMOIで感染させた。上清100μlを、感染後0時間、24時間、48時間、72時間に回収し、1%BSAを添加して−80℃で凍結した。ウイルス力価は、24ウェルプレート中のVero細胞を使用して、プラークアッセイを3回繰り返して測定した。ウイルスとの1〜2時間のインキュベーション後に、増殖培地を、2%FBS、1%P/S、及び1%低融点アガロースを含有する半固体DMEMに交換した。4〜7dpiに、24ウェルプレートのVero細胞をギムザ染色液で染色し、プラークをカウントした。
TNF−αの酵素結合免疫吸着測定法(enzyme−linked immunosorbent assay:ELISA)。6ウェルプレート中のL929細胞に、模擬、rMuV、またはrMuVΔSHを5のMOIで感染させた。培地を1dpi、2dpi、及び3dpiに回収した。培地に分泌されたTNF−αの量を、以前に記載された手順(Li et al.,2011年,J Virol;85(1):32−42)に従い、マウスTNF−α検出キット(Amersham Pharmacia)を使用して測定した。
リアルタイムRT−PCR。Vero細胞に模擬感染、またはrMuVΔSH若しくはrMuVを0.005のMOIで感染させた。ウイルスRNAをQIAGEN RNeasyminiキットを使用して、4dpiに感染細胞から抽出し、プライマーとしてオリゴdTを使用して、cDNAに逆転写した。MuV F及びHN mRNA特異的FAMタグ付きプローブを、Applied Biosystems(商標)から購入した。リアルタイムPCRを、製造業者のプロトコールに従い、TaqMan(登録商標)Gene Expression Mixを使用して組み立てた。Δctを使用してHN mRNA対F mRNA間の比を算出した。
MuV神経毒性の検査。ラット神経毒性試験を、以前に記載されたように(Rubin et al.,2000年,J Virol;74:5382−5384)実施した。新生ラットに、EMEM20μl中のrMuV(n=36)またはrMuVΔSH(n=24)を100pfu脳内に接種した。注入1か月後に動物を屠殺して脳を摘出し、浸漬固定してパラフィン包埋した。脳の各半球に由来する、解剖学的正中線から一定距離にある10μm矢状切片を1つ選択し、ヘマトキシリン及びエオジンで染色した。神経毒性スコアは、Image−Pro Plus画像解析ソフトウェア(Media Cybernetics)を使用して、脳(小脳以外)の横断面に基づき、対になった脳に由来する組織切片上の側脳室のパーセントとして算出した。神経毒性スコアは、ラット脳当たり2つの組織切片のそれぞれに関するこれら2つの測定の平均比率(パーセント)として定義した。計画した1か月エンドポイントの前に、疼痛または苦痛の徴候を示したいずれのラットも、直ちに人道的に安楽死させ、分析に含めた。実験動物の管理及び使用のためのNIHガイドライン(NIH Guidelines for the Care and Use of Laboratory Animals)を、全体を通して厳守した。
更に現在、本実施例の結果は、Xu et al.,”Rescue of wild−type mumps virus from a strain associated with recent outbreaks helps to define the role of the SH ORF in the pathogenesis of mumps virus,”Virology;417(1):126−36(2011年8月15日に公表;Epub 2011年6月14日)で知ることができる。
実施例2
ムンプスウイルスのVタンパク質は病変形成に重要な役割を果たす。
ムンプスウイルス(MuV)は、耳下腺炎などの比較的軽度の症状から髄膜炎及び脳炎などの重症度の高い合併症に及ぶ多岐にわたる徴候を特徴とするヒトの急性感染症を引き起こす。広く普及したムンプスワクチン接種がムンプス発生率を劇的に低下させた;しかしながら、集団発生は依然としてワクチン接種を受けた集団に起こる。MuVのVタンパク質は、細胞培養で発現されると、インターフェロン(IFN)の発現及びシグナル伝達並びにインターロイキン6(IL−6)のシグナル伝達を遮断する。本実施例では、Vタンパク質を発現することができない組換えMuV(rMuVΔV)を生成した。レスキューされたMuVは、米国における最近の集団発生から取り出された臨床野生型分離株に由来する(MuVIowa/US/06、G遺伝子型)。このウイルスの分析により、IFNの発現及びシグナル伝達並びにIL−6のシグナル伝達の遮断における、Vタンパク質の役割が確認された。rMuVIowa/US/06ΔVウイルスがインビトロで高レベルのIL−6発現を誘導することも見出され、VがIL−6発現の低下にある役割を果たすことが示唆された。インビボでは、rMuVIowa/US/06ΔVウイルスは高度に弱毒化しており、Vタンパク質がウイルスの病原性に不可欠な役割を果たしていることが示された。
MuVのRNAゲノムは、15,384のヌクレオチド長である。それは9つの既知のウイルスタンパク質をコードする。MuVのVタンパク質は、224のアミノ酸残基を有し、すべてのパラミクソウイルスの間で保存されるシステイン(Cys)リッチのC末端を含有する。Vタンパク質は、IFN活性化遺伝子発現のために重要な転写因子であるSTAT1の分解を通してインターフェロン(IFN)シグナル伝達経路を妨害する(Kubota et al.,2002年,J Virol;76:12676−12682)。MuV Vタンパク質のCysリッチのC末端内のトリプトファンリッチモチーフは、STAT1のN末端領域を介する(Yokosawa et al.,2002年,J Virol;76:12683−12690)STAT1のユビキチン化及び分解(Kubota et al.,2002年,J Virol;76:12676−12682;Kubota et al.al.,2001年,Biochem Biophys Res Commun;283:255−259;及びNishio et al.,2002年,Virology;300:92)において不可欠である。Vタンパク質はまた、Trp−Asp(WD)反復を含有し、かつIFN受容体とSTAT1の間の相互作用を媒介する受容体活性化Cキナーゼ(RACK1)と関連することが実証されている。V−RACK1相互作用は、Vタンパク質によるIFNシグナル伝達の遮断に寄与する、STAT1とRACK1の解離をもたらす(Kubota et al.,2002年,J Virol;76:12676−12682)。この相互作用は、STAT1の完全な分解が起こる前に、IFNシグナル伝達を遮断するために重要となりうる(Kubota et al.,2005年,J Virol;79:4451−4459)。MuVのVタンパク質はまた、感染細胞におけるIFN発現の活性化に重要な役割を果たすRNAヘリカーゼであるMDA5と相互作用し(Andrejeva et al.,2004年,Proc Natl Acad Sci USA;101:17264−17269)、IFN発現の活性化を遮断する。Vタンパク質のCysリッチC末端は、MDA5のヘリカーゼCドメインを介するMDA5とVタンパク質の相互作用にとって不可欠である(Parisien et al.,2009年,J Virol;83:7252−7260;Ramachandran and Horvath,2010年,J Virol;84:11152−11163)。Vタンパク質は、κBキナーゼε阻害物質(inhibitor of κB kinase ε:IKKe)/腫瘍壊死因子受容体関連因子(tumor necrosis factor receptor associated factor:TRAF)ファミリーメンバー−関連NF−κBアクチベーター(TANK)−結合キナーゼ1(TBK1)の基質として働くことができ、インターフェロン調節因子−3(interferon regulatory factor 3:IRF3)の活性化の阻害をもたらす。Vタンパク質とTBK1/IKKeの間の相互作用は、IFN発現にとって重要な転写因子であるIRF3の活性化を阻害し、IFN発現の遮断をもたらす(Lu et al.,2008年,J Biol Chem;283:14269−14276)。Vタンパク質は、インターロイキン6(IL−6)媒介シグナル伝達及び腫瘍形成にとって重要な転写因子であるSTAT3の分解を引き起こす(Ulane et al.,2003年,J Virol;77:6385−6393)。Vタンパク質内の点変異(位置95でのEからD)により、STAT3を分解の標的にするその能力は影響を受けることなく、STAT1の分解が可能になるVタンパク質が生じる。IFNシグナル伝達を遮断するVタンパク質の能力は、ウイルスの病変形成にとって重要であると思われる(Rosas−Murrieta et al.,2010年,Virol J;7:263)。本実施例では、Vタンパク質をもはや発現することができない組換えMuV(rMuVIowa/US/06ΔV)を生成した。レスキューされたMuVは、米国における最近の集団発生に由来する臨床野生型(WT)分離株から取り出された(MuVIowa/US/06、G遺伝子型)。これは、ウイルス感染の文脈における、MuVのVタンパク質の機能に関する最初の研究である。
材料及び方法
プラスミド、ウイルス、及び細胞。MuV株のMuVIowa/US/06は、米国における2006年の中西部ムンプス集団発生期間中の患者から得られた。ウイルス(pMuVIowa/US/06)の完全長cDNAクローンを、実施例1に記載のように構築した(Xu et al.,2011年,Virology;417:126−136も参照のこと)。このプラスミドは、P/V遺伝子の編集部位(GGGGGG;配列番号14のヌクレオチド1〜6)をGAGGAGGG(配列番号15のヌクレオチド1〜8)に変化させ、「6の規則」に従うように、更に4つの塩基対(CTAG;配列番号16のヌクレオチド3〜6)を遺伝子の3’非翻訳領域(3’UTR;配列番号16)に付加することにより、Vタンパク質を発現しないように改変した(Kolakofsky et al.,1998年,J Virol;72:891−899)。
感染性ウイルスをレスキューするために、プラスミドpMuVIowa/US/06(5μg)を、プラスミドpCAGGS−L、(1μg)、pCAGGS−NP(1.5μg)、及びpCAGGS−P(200ng)と共に、BSRT−7細胞に形質移入した。3日後に、形質移入されたBSRT−7細胞を、Vero細胞と1:1で混合した。10〜14日後に、融合細胞形成が観察された場合、rMuVIowa/US/06ΔVを含有する上清を回収し、Vero細胞でプラークを精製した。プラーク(感染後[dpi]4〜7日発達させる)をVero細胞で増幅し、それらのゲノムを配列決定した。レスキュー手順を反復して、rMuVIowa/US/06ΔVの独立したストックを生成した。
Vero、HeLa、MDBK、及びL929細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(P/S)を含有したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持した(Mediatech Inc.,Holu Hill,FL)。BSRT−7細胞は、10%FBS、1%P/S、及び10%トリプトースリン酸ブロス(TPB)に加え、400μg/mlジェネテシンG418抗生物質を添加したDMEM中で維持した。細胞を5%CO2、37℃で培養し、感染または形質移入の前日に、80〜90%のコンフルエンスに翌日なるように適切な希釈比で継代した。ウイルス感染については、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したDMEM中で、細胞に0.01、3、または5の感染多重度(multiplicity of infection:MOI)でウイルスを感染させ、5%CO2、37℃で1〜2時間インキュベートした。次いで、接種培地を、2%FBS及び1%P/Sを添加したDMEMと交換した。PLUS及びLipofectamine試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用し、製造業者から提供されたプロトコールに従って、細胞にプラスミドを形質移入した。
ムンプスウイルスはすべて、Vero細胞中で増殖させ、4〜7dpiに回収した。ウイルス力価は、以前に記載されたように(He and Lamb,1999年,J Virol;73:6228−6234;He et al.,1997年,Virology;237:249−260)、プラークアッセイによりVero細胞で測定した。パラインフルエンザウイルス5(PIV5)及びVタンパク質のC末端の発現を欠く組換えPIV5(rPIV5VΔC)を、以前に記載されたように増殖させた(He et al.,2002年,Virology;303:15−32)。
ウイルスの配列決定。ウイルスRNAは、QIAampウイルスRNA抽出ミニキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を使用し、製造業者のプロトコールに従って、細胞培養上清から抽出した。単離したウイルスRNAは、ランダムヘキサマーと共にSuperScript III逆転写酵素(Invitrogen)を使用してcDNAに逆転写した。次いで、合成されたcDNAは、ムンプスウイルスゲノム特異的プライマー(表1に示す)及びTaqポリメラーゼ(Invitrogen)を使用するPCRのための鋳型として活用した。それぞれ順方向及び逆方向のプライマーを含む15組のプライマー(表2に示す)を、15個の重複する断片にゲノムを分割するように設計した。次いで、これらのプライマーは、PCR産物のその後の配列決定のために使用した(Li et al.,2006年,Virology;346:219−228)。リーダー配列及びトレーラー配列は、cDNA末端の迅速増幅法(RACE)(Li et al.,2011年,J Virol;85:32−42)の標準プロトコールに従って配列決定した。
フローサイトメトリー及びTUNELアッセイ。フローサイトメトリーは、以前に記載されたように(36)実施した。6ウェルプレート中のHeLa細胞またはVero細胞に模擬感染、またはrMuVIowa/US/06ΔV、rMuVIowa/US/06、若しくはMuVIowa/US/06を0.1若しくは0.5のMOIで感染させた。感染後24時間(hpi)、48hpi、72hpi、または96hpiに、付着細胞をトリプシン処理し、培地中の浮遊細胞と合わせた。細胞を遠心分離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.5%パラホルムアルデヒドに4℃で1時間再懸濁した。次いで、固定細胞をPBSで洗浄し、50%ウシ胎仔血清(FCS)−50%DMEM及び3容量の70%エタノールの中で一晩透過性にした。透過性になった細胞を、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ媒介dUTP−ビオチンニック末端標識(terminal deoxynucleotidyltransferase−mediated dUTP−biotin nick end labeling:TUNEL)染色、またはタンパク質発現レベルのためのMuVIowa/US/06−NP、MuVIowa/US/06−P、若しくはMuVIowa/US/06−HN染色の何れかに供した。NP染色については、モノクローナルMuVIowa/US/06−NP抗体を1:200に希釈し;P染色については、モノクローナルMuVIowa/US/06−P抗体(実施例1に記載のように;Xu et al.,2011年,Virology;417:126−136も参照のこと)を1:50に希釈した後、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate:FITC)抗マウス二次抗体(Jackson ImmunoResearch)染色を1:10,000の希釈で行った。HN染色については、ポリクローナルMuVIowa/US/06−HNを1:50に希釈した後、FITC抗ウサギ二次抗体染色を1:10,000の希釈比で行った。TUNEL染色は、製造業者のプロトコール(Roche)に従い、以前に記載されたように実施した(Sun et al.,2009年,PLoS Pathog;5:e1000525;Sun et al.,2004年,J Virol;78:5068−5078)。
免疫ブロッティング。6ウェルプレート中のほぼ90%コンフルエンスのVero細胞に模擬感染、またはrMuVIowa/US/06若しくはrMuVIowa/US/06ΔVを0.01若しくは0.5のMOIで感染させた。以前に記載されたように(Rubin et al.,2011年,Vaccine;29:2850−2855;Rubin et al.,2000年,J Virol;74:5382−5384)、感染後の様々な時点で、WCEB緩衝液(50mM Tris−HCl[pH8.0]、120mM NaCl、0.5%NP−40、0.00076%EGTA、0.2mM EDTA、10%グリセロール)0.5ml中で、プロテアーゼ阻害剤の混合物を用いて細胞を溶解し回収した。細胞溶解物を短時間遠心分離して細胞片を除去し、10%または17.5%のポリアクリルアミドゲル上に負荷し、SDS−PAGEに供した。タンパク質を、Immobilon−FL転写膜(Millipore,Billerica,MA)に転写し、一次抗体(抗MuVIowa/US/06 V、1:500;抗MuVIowa/US/06 NP、1:5,000;抗MuVIowa/US/06 P、1:2,000[43]、抗STAT1、1:200(#B2410;Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,CA);抗STAT2、1:200(#07−224;Millipore,Billerica,MA);抗STAT3、1:200(#F300;Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,CA)及び西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した対応二次抗体と共にインキュベートし、Amersham ECLウエスタンブロッティング検出キット(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を使用して検出した。
rMuVIowa/US/06ΔV及びrMuVIowa/US/06の増殖曲線。6cmプレートまたは6ウェルプレート中の細胞に、rMuVΔVまたはrMuVを0.01のMOIで感染させた。感染後0時間、24時間、48時間、及び72時間(HeLaでは、24時間、48時間、72時間、120時間、168時間、216時間、264時間)に、上清を1ml(6cmプレート)または100μl(6ウェルプレート)回収し、1%BSAを添加して80℃で保存した。ウイルス力価は、6ウェルプレート中のVero細胞を使用して、プラークアッセイを3回繰り返して測定した。ウイルスとの1〜2時間(h)のインキュベーション後に、増殖培地を、2%FBS、1%P/S、及び1%低融点アガロースを含有するDMEMに交換した。4〜7dpiに、6ウェルプレートのVero細胞をギムザ染色液で染色し、プラークをカウントした。
IFN−β及びIL−6に対するELISA。12ウェルプレート中で、HeLa細胞若しくは293T細胞に、模擬感染、またはPIV5−WT(MOI 5)、rPIV5−VΔC(MOI−5)、rMuVIowa/US/06(MOI 0.5)、若しくはrMuVIowa/US/06ΔV(MOI 0.5)ウイルスを感染させた。感染後24時間及び48時間に上清を回収した。培地中に分泌されたIL−6の量は、OptEIAヒトIL−6酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キット(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して測定し、IFN−βは、以前に記載されたように(16、18)、VeriKineヒトIFN−β ELISAキット(PBL InterferonSource,Piscataway,NJ)を使用し、製造業者の説明書に従って測定した。
神経毒性試験。レスキューしたウイルスの神経毒性表現型は、以前に記載されたように(Rubin et al.,2000年,J Virol;74:5382−5384)、ラットにおけるMuV感染の主要な神経病理学的転帰であるMuV誘導脳水腫の程度を測定することにより評価した。手短に言えば、3リターの8〜10匹の新生ルイスラットに、プラスミドpMuVIowa/US/06からレスキューされた2つのウイルスストックのそれぞれ及びプラスミドpMuVIowa/US/06ΔVからレスキューされた2つのウイルスストックのそれぞれを100PFU含有するDMEM10μlを用いて脳内接種した。接種後30日目に、実験動物の管理及び使用のためのNIHガイドラインに従って、ラットをCO2窒息により人道的に屠殺した。脳を摘出し、10%中性緩衝ホルマリン中にて4℃で4〜5日間浸漬固定した後、パラフィン包埋した。吻側−尾部正中線の両側に由来する、基準距離で得られた矢状切片をヘマトキシリン−エオジンで染色した。
神経毒性スコアは、Image−Pro Plus画像解析ソフトウェア(Media Cybernetics,Silver Spring,MD)を使用して測定した、脳(小脳以外)の横断面と側脳室の横断面(神経毒性のあるMuV株による感染の後に拡大する)との比を算出することにより決定した。ラット脳当たり2つの組織切片のそれぞれに関するこれら2つの測定の平均比率(パーセントで示す)を、その特定の脳に対する神経毒性スコアとする。各ウイルスの神経毒性スコアは、処置群内のすべての脳に対する平均神経毒性スコアである。t検定または非正規データ(Shapiro−Wilk検定に失敗)、Mann−Whitney順位和検定(α=0.05)を使用して、すべての比較がなされた。
結果
Vタンパク質の発現を欠く組換えMuV(rMuVΔV)の回収。ウイルス感染の文脈の中でウイルスの病変形成におけるVタンパク質の役割を検討するために、我々は、Vタンパク質発現を消失させる変異を含有するMuVIowa/US/06ゲノムのcDNAを構築した(pMuVIowa/US/06ΔV)(MuVIowa/US/06ゲノムの受託番号はJN012242である)(Xu et al.,2011,Virology;417:126−136)。ゲノム由来のVタンパク質発現の消失は、P/V遺伝子中の編集部位(GGGGGG;配列番号14のヌクレオチド1〜6)をGAGGAGGG(配列番号15のヌクレオチド1〜8)に変化させることにより達成した。従って、Pタンパク質をコードする転写物のみが、P/V遺伝子転写から生成する(図9A)。Vタンパク質の発現を消失した感染性ウイルス(rMuVIowa/US/06ΔV)を、BSRT−7細胞へのpMuVIowa/US/06ΔVの形質移入を介するクローン化DNAからレスキューした。レスキューされたウイルスは、更にプラーク精製してVero細胞中で増幅した。レスキューされたウイルスゲノムの中にVタンパク質発現を遮断する遺伝子変化の存在を確認するために、ウイルスRNAをウイルスストックから抽出し、cDNAに逆転写して配列決定した(図9B及び9C)。
レスキューされたウイルスゲノムの配列決定により、入力cDNA配列と比較して、NP遺伝子終結(GE)配列及びP/V遺伝子開始(GS)配列にヌクレオチド置換が存在すること並びにVタンパク質の発現を消失させることになる変化が存在することが示された(図9C)。rMuVIowa/US/06ΔV感染Vero細胞中にVタンパク質の発現がないことを確認するために、感染細胞の免疫ブロッティングを実施した(図9D)。更なる検討のために、cDNAプラスミドから更に7回ウイルスをレスキューした(図10A)。合計8つのレスキューされたウイルスのうちの7つのウイルスは、NP GE(6つ)またはP/V GS領域(1つ)の何れかに点変異を含有したが、1つはL遺伝子に点変異を含有した(図10B)。レスキューされたrMuVIowa/US/06ΔVウイルスはすべて、そのゲノムに少なくとも1つの点変異を含有し、最も頻度の高い点変異はゲノム中の位置1899であった;従って、このウイルスを代表的なウイルスとして使用し、特に明記されていない限り、この研究に関してはrMuVIowa/US/06ΔVと命名した。
組織培養細胞株におけるrMuVΔVの分析。細胞株におけるrMuVIowa/US/06ΔVの増殖速度を分析するために、Vero細胞またはHeLa細胞に模擬感染、またはrMuVIowa/US/06ΔV若しくはrMuVIowa/US/06を0.01のMOIで感染させ、感染後の複数の時点で培地を回収し、プラークアッセイを使用してウイルス力価を測定した(図11A)。rMuVIowa/US/06ΔVは、感染後の最初の48時間(hpi)の間、Vero細胞において、rMuVIowa/US/06Vと同等の速度で増殖し、次いで、rMuVIowa/US/06ΔVの増殖は低下し、検討した時間経過全体を通して、rMuVIowa/US/06よりもほぼ1ログ少ない力価のままであった(図11A)。Vero細胞におけるrMuVIowa/US/06ΔVのプラークサイズは、rMuVIowa/US/06と顕著な差を示さなかった(図11B)。rMuVIowa/US/06ΔVまたはrMuVIowa/US/06の低MOI感染Vero細胞のタンパク質発現レベルを、抗NP、抗P、及び抗V、または抗β−アクチンによる免疫ブロッティングにより調べた(図11C)。時間経過と一致して、rMuVIowa/US/06ΔVのウイルスタンパク質発現レベルは、48、72、及び96hpiにおいて、rMuVIowa/US/06と同様であった(β−アクチンのレベルに対して調整する)。HeLa細胞では、rMuVIowa/US/06ΔVの増殖は低下した(図11D)。機能的なVタンパク質が存在しないことにより、rMuVIowa/US/06ΔVのウイルス力価は、rMuVIowa/US/06と比較して、72hpi〜168hpiにおいてほぼ2log10低下していた。それにもかかわらず、両方のウイルスは、その後の時点で同様の力価に到達した。
rMuVIowa/US/06ΔV感染細胞におけるウイルス遺伝子の発現。回収されたrMuVIowa/US/06ΔVウイルスのNP GEまたはP/V GSの何れかにおける変異は、NPとPの間のウイルスタンパク質発現レベルの調節が、cDNAからのrMuVIowa/US/06ΔVの回収にとって重要である可能性を示唆する。rMuVIowa/US/06ΔVにおけるウイルスタンパク質発現パターンを検討するために、高いMOIで感染させたVero細胞を、感染後の様々な時点でNP及びPのタンパク質に対して染色し、フローサイトメトリーにより評価した(図12)。NP及びPの発現パターンの起こりうる変化を定量するために、Pタンパク質の発現レベルを、対応するNPレベルに対して規準化した(図12A及び12B)。rMuVΔVのP/NP比は、12、16、24、及び48hpiでrMuVよりも顕著に高く、rMuVIowa/US/06ΔVウイルスにおけるPタンパク質発現の増大が示された。この差は、72hpiにはもはや明らかではなかった。
このNP及びPの発現パターンの変化が、このrMuVIowa/US/06ΔV株にユニークなものか否かを検討するために、P GS変異を含有するrMuVIowa/US/06ΔV(rMuVIowa/US/06ΔV[PGS])、及びL翻訳領域(ORF)変異を含有するrMuVIowa/US/06ΔV(rMuVIowa/US/06ΔV[L遺伝子])も調べた(図12C及び12D)。rMuVIowa/US/06ΔVと同様に、rMuVIowa/US/06ΔV(PGS)及びrMuVIowa/US/06ΔV(L遺伝子)は両方ともrMuVIowa/US/06よりもPタンパク質発現レベルが高く、このNP及びPの発現パターンの変化が、回収されたrMuVIowa/US/06ΔVウイルスに典型的であることが示唆された。
下流のウイルスタンパク質の発現がVタンパク質の欠失またはNP GEにおける点変異の何れかにより影響を受けるか否かを調べるために、フローサイトメトリーを使用してHN発現レベルを調べた。Vero細胞に模擬感染、またはrMuVIowa/US/06ΔV若しくはrMuVIowa/US/06を0.5のMOIで感染させ、次いで、24hpiに細胞を回収し、NP及びHNの染色に供した(図13)。HN対NP比に顕著な変化は観察されなかった。
組織培養細胞株におけるrMuVIowa/US/06ΔV誘導のCPE促進。rMuVIowa/US/06ΔV誘導の細胞変性効果(cytopathic effects:CPE)を、3種の異なる生物に由来する3種の異なる細胞培養株で比較した。HeLa(ヒト)、Vero(サル)、及びMDBK(ウシ)細胞に、rMuVIowa/US/06ΔVまたはrMuVIowa/US/06を0.5のMOIで感染させ、72hpiに細胞を撮影した。rMuVIowa/US/06ΔVは、HeLa細胞に最も重度のCPEを引き起こした。より多くかつより大型の融合細胞がrMuVIowa/US/06ΔV感染HeLa細胞に観察され、これが細胞死への主要要因である可能性がある(図14A)。細胞死がアポトーシスを原因とするものか否かを調べるために、TUNELアッセイを実施した(図14B)。rMuVIowa/US/06ΔVを0.5のMOIで感染させたHeLa細胞では、rMuVを感染させた細胞よりも少なくとも2倍高レベルのアポトーシスが示された。同様に、rMuVIowa/US/06ΔVは、Vero細胞で、より高レベルのアポトーシスを誘導した(図14C)。Vの欠失が感染細胞にアポトーシスの増加をもたらしたことは、Vタンパク質が感染細胞におけるアポトーシスの誘導の遮断にある役割を果たしうることを示唆する。
MuVIowa/US/06感染細胞におけるSTATタンパク質の状態。以前の研究では、STATタンパク質を分解の標的にすることによりIFNシグナル伝達経路の遮断にVタンパク質が関与することが示されている。MuVIowa/US/06のVタンパク質がIFN経路の唯一のウイルスコード化アンタゴニストであるか否かを判定するために、STATファミリータンパク質レベルを、rMuVIowa/US/06ΔVまたはrMuVIowa/US/06を感染させたVero細胞で調べた(図15A及び15B)。以前のインビトロ形質移入研究と一致して、rMuVIowa/US/06感染Vero細胞では、STAT2ではなくSTAT1及びSTAT3が完全に分解されたが、一方Vタンパク質の発現を欠くrMuVIowa/US/06ΔVでは、いずれのSTATタンパク質も分解の標的となることはなく、Vタンパク質がMuVIowa/US/06によるSTATタンパク質分解にとって不可欠かつ必要なものである可能性が示唆された。検出可能なVタンパク質の生成とSTATタンパク質の分解との間にタイムラグがあり(図15A及び15B)、STATの分解がVタンパク質の蓄積を必要とする可能性が示唆される。
MuVと近縁関係にあるパラミクソウイルスであるPIV5は、感染細胞におけるIFN−βの誘導を妨害するが、Vタンパク質の保存的C末端の発現を欠く組換えPIV5は妨害しない(He et al.,2002年,Virology;303:15−32;Poole et al.,2002年,Virology;303:33−46)。rMuVIowa/US/06ΔVとrMuVIowa/US/06によるIFN−β誘導を比較するために、ELISAを使用して感染させた293T細胞の培地中のIFN−β濃度を測定した。48hpiに、rMuVIowa/US/06ΔVは、rMuVIowa/US/06による誘導よりも高いIFN−β産生を誘導し(図16A)、MuVIowa/US/06のVタンパク質がIFN−β発現の制限にある役割を果たしていることが示された。
rMuVIowa/US/06ΔVは、より高レベルのIL−6誘導をもたらした。MuVIowa/US/06感染において機能的Vタンパク質が存在しないと、他のサイトカインの誘導がもたらされるか否かを検討するために、rMuVIowa/US/06ΔV及びrMuVIowa/US/06の感染細胞の培地中のIL−6産生レベルを調べた。48hpiに、HeLa細胞において、rMuVIowa/US/06ΔVは、rMuVIowa/US/06よりも高レベルのIL−6産生をもたらし(図16B)、IL−6誘導がVタンパク質の存在により低下することが示された。興味深いことには、rMuVIowa/US/06感染もまた顕著な量のIL−6産生を誘導した。これはMuVが炎症性疾患であることと一致している。
rMuVIowa/US/06ΔVの神経毒性。ウイルス神経毒性に対するVタンパク質の影響を調べるために、プラスミドpMuVIowa/US/06ΔV(rMuVIowa/US/06ΔV)を使用する2つの独立したレスキューに由来するウイルス(図10A)を、rMuVIowa/US/06及び対照としての高度に弱毒化したJeryl Lynn(JL)ワクチンウイルスと共に、ラットで試験した。図17に示すように、ΔVウイルスは、rMuVIowa/US/06及びJLワクチンウイルスと比較して高度に弱毒化していた。
考察
本実施例の結果により、インビトロ感染の文脈において、Vタンパク質の発現を消失した、臨床分離株(遺伝子型G)に由来する組換えウイルスに関する研究を通してこれらの発見が確認される。
更に、Vタンパク質発現が欠如すると、炎症促進性サイトカインであるIL−6のより高レベルの誘導がもたらされ、Vタンパク質がIL−6発現の抑制にある役割を果たすことが示唆された。感染細胞でVタンパク質発現が欠如すると、動物モデルにおいてこの株の弱毒化がもたらされたと思われ、Vタンパク質がウイルスの病原性に不可欠な役割を果たすことが示唆された。rMuVIowa/US/06ΔVには、IFN作用に反撃する能力がないため、インビボでのウイルス複製が制限され、かつrMuVIowa/US/06ΔVによる、より高レベルのIL−6の誘導によって、単球が誘引されて感染が迅速に排除されるため、インビボでのrMuVIowa/US/06ΔVの弱毒化がもたらされたと考えられる。
遺伝学的にMuVに最も近縁のウイルスはパラインフルエンザウイルス5(parainfluenza virus 5:PIV5)である。MuV及びPIV5のVタンパク質は、ウイルス感染細胞における、MDA5を介するIFN発現の遮断、STAT1分解を介するIFNシグナル伝達の遮断、及びIL−6発現の阻害を含む、多くの同一の機能を共有する。興味深いことには、Vタンパク質全体を欠く組換えPIV5が、組織培養細胞で得られたことはなくPIV5のVタンパク質は、MuVに対するVタンパク質よりも、ウイルス複製により重要な役割を果たすことが示唆される(Dillon and Parks,2007年,J Virol 81:11116−11127;He et al.,2002年,Virology;303:15−32)。rMuVIowa/US/06ΔVに生存能があることにより、ウイルス複製におけるMuVIowa/US/06Vタンパク質の役割が少なくとも組織培養細胞では重要でないことが示唆される。
本実施例では、Vタンパク質(rMuVIowa/US/06ΔV)を産生することができない組換えウイルスを、最近の集団発生に由来する臨床分離株をベースとしたMuVに対して逆遺伝学システムを使用して生成した。このウイルスは、ワクチン生産のために使用される細胞株であるVero細胞、並びに他の細胞型において、野生型ウイルスと同様の力価まで増殖した。最も重要なことは、このウイルスが、ラットに少ない神経毒性を示し、そのためワクチン候補としてこのウイルスが支持されることである。
MuVのV/P遺伝子は、鋳型にないG残基が転写の間に特定の部位でmRNAに挿入され、3つの異なるORFに翻訳されうるmRNAを生成する「RNA編集」の過程を介して、3つのタンパク質、V、I、及びPをコードする(Saito et al.,1996年,Microbiol Immunol;40:271−275)。Vタンパク質はmRNAの「未編集」コピーから、Pは2つのG残基が挿入されたmRNAから、そしてIタンパク質は1つまたは4つのG残基が挿入されたmRNAから翻訳される。これらのタンパク質はすべて、155のアミノ酸残基からなる同一のN末端を有する。Pタンパク質は、391のアミノ酸残基を有し、ウイルスRNA合成に不可欠な役割を果たす。Iタンパク質は、170のアミノ酸残基を有し、その機能は明らかでない。IのmRNAは、RNA編集の副産物であり、なんら重要な機能を有していない可能性も考えられる。rMuVIowa/US/06ΔVを生成するために我々が使用した戦略はまた、Iタンパク質の発現を消失させた。Iに対するmRNAは、V、I、及びPの転写物の合計のわずか2%未満を占めるにすぎず、かつその配列は、V及びPのN末端と極めて類似しているので(Iは約170のアミノ酸残基を有し、そのうちの155はV及びPのN末端と同一である)(Paterson and Lamb,1990年,J Virol;64:4137−4145;Takeuchi et al.,1990年,Virology;178:247−253)、rMuVIowa/US/06ΔVの表現型は、Vタンパク質の欠如に帰せられる。しかしながら、Iタンパク質の役割の可能性を除外することはできない。
L遺伝子内の変化を除くすべての変化は、NP遺伝子とP/P遺伝子との間の遺伝子結合で起こり、Vタンパク質を発現できない生存可能な感染性MuVが生成する。L遺伝子内の変異が、Vタンパク質を欠くウイルスのレスキューを可能にできたことは興味深い。L遺伝子内の変異が偶然に起こったもので、Lの機能にとって重要でない可能性を除外することはできないが、特定の変異がNP−PとLとの間の相互作用の調節にある役割を果たしうると推測することができ、レスキューされた他のすべてのウイルスがNP及びPのレベルを調節する変異を有したと考えられる。ウイルスの更に詳細な分析により、Lの機能について、より十分な理解を得ることができる。
本実施例の結果は、現在、Xu et al.,“The v protein of mumps virus plays a critical role in pathogenesis,”J Virol;86(3):1768−76(February 2012年;Epub 2011年 Nov 16)で知ることができる。
実施例3
マウスにおけるMuVΔSH及びMuVΔVの免疫原性
マウスにおけるrMuVΔSH及びrMuVΔVの免疫原性を判定し、MuV特異的免疫応答を測定した。一群10匹のマウスに、PBS、または106pfuのMuV、rMuVΔV、若しくはrMuVΔSHを鼻腔内に接種した。接種後21日目に、マウスから血液試料を採取した。ELISAを使用して血清中の抗MuV抗体の力価を測定した。ELISA用の96ウェルプレートを精製されたMuVビリオンでコーティングした。血清の最大希釈度及び最小希釈度における、MuVとrMuVΔSHに対するP値並びにMuVとMuVΔVに対するP値は、0.05未満であった。この結果を図18に示す。
更に、体液性免疫(抗体)分析には、MuV特異的ELISAにより測定される、気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage:BAL)中の抗MuV抗体の測定が含まれる。ELISAアッセイでは、抗体のアイソタイプ(IgA、IgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3)も、適切な二次抗体を使用して決定される。MuV特異的抗体の力価もウイルスにより測定される。異種のJLまたは同種のMuV−IAに対する中和アッセイが、血清及びBAL洗浄試料について実施される。
細胞性免疫(T細胞)は、抗原特異的IFNγ産生により測定することができる。具体的には、BAL、脾臓、及び/または流入領域リンパ節に由来するリンパ球について、MuV感染APCを用いる、または温和な界面活性剤で破壊される精製されたMuVビリオンを用いる再刺激によるMuV特異的T細胞応答をアッセイする。IFN−γ応答は、細胞内サイトカイン染色及び/またはELISPOTアッセイにより測定される。
免疫応答の誘導部位により、免疫応答の性質が変化し、予防効果が劇的に影響を受ける可能性があるので、MuVに対する局所性及び全身性免疫が、免疫後の様々な時点で測定される。鼻腔内(IN)のMuV免疫には、MuV暴露に対する防御を媒介する、局所のMuV特異的T細胞及び免疫グロブリン応答を誘導する可能性がある。局所(即ち肺)のMuV特異的免疫応答は、免疫または暴露の後の時点で採取されるBAL試料の分析により評価される。浸潤したリンパ球集団を遠心分離により回収し、気管支肺胞洗浄液(BAL)について粘膜Igを分析する。全身性応答は、血清抗体及び脾臓または縦隔リンパ節(mediastinal lymph node:MLN)のリンパ球の分析により評価される。
現行のMMRワクチン接種レジメンは、2回の筋肉内(IM)接種を要請する。同様のレジメンが、ワクチンの効力を評価するためのマウスモデルで使用された(Cusi et al.,2001年,Arch Virol;146(7):1241−862)。最初に、免疫原性をそのような2回接種/IMレジメント(regiment)を使用してアッセイすることができる。マウスに初回用量が注入され、最初の注入の2週間後に注入がなされる。最後の免疫の1か月後に、上記の免疫学的アッセイのためにマウスは屠殺される。この実験により、我々の手にあるJLワクチンと共に、ワクチン候補の接種後の免疫応答のベースラインが作製される。
本明細書に記載のrMuVワクチンコンストラクトの免疫原性は、2回接種/鼻腔内(IN)プロトコールを使用して調べることができる。体液性及び細胞性免疫応答の両方が測定される。IN経路が、一部のワクチンに対して、強固な細胞性免疫応答を含む、より良好な免疫応答を生成したことが報告されている。加えて、IN接種には、粘膜免疫応答及びより高い力価のIgAを生成する利点がある。インフルエンザウイルスワクチン接種のためのIN経路の使用が成功したため、IN経路が、大規模な人口集団に導入される新しいワクチンのための実行可能な経路になる。
同様の様式で、3回の接種レジメンも試験される。初期第I相臨床試験の最も可能性の高い対象は、2回のMMRの予防接種をすでに受けた健常個体になるので、JLワクチンによる2回/IM接種後に3回目接種のJL(対照として)または3回目接種のMuVワクチンを、IMまたはINの何れかで接種した後の免疫応答が調べられる。追加免疫(3回目接種)として使用される、本明細書に記載のMuVワクチンコンストラクトが安全でかつ強固な抗遺伝子型G免疫応答を生成する場合、このコンストラクトは、MMRの2回目接種の代わりに使用することができ、最終的には2回接種のMMRにおけるJLと入れ替えることができる。
本明細書に記載の任意のrMuVコンストラクトの免疫原性を、本実施例で記載のように、マウスでアッセイすることができる。同様の免疫原性研究及び有効性研究はまた、これらに限定されないが、フェレット及び非ヒト霊長類モデル系を含む、更なる動物モデル系で試みることができる。
実施例4
rMuVΔSHΔVの生成及び分析
MuVワクチンは、1歳の幼児に使用されるので、新しいワクチンの開発において安全性は最重要の検討課題である。rMuVΔSH及びrMuVΔVは両方とも、ラットの脳ベースの神経毒性試験において弱毒化を示すが、更に、いかなる潜在的リスクも軽減するために、逆遺伝学システムを使用してSH及びVの両方を欠く組換えウイルス(rMuVΔSHΔV)を生成した。
手短に言えば、実施例1に詳細に記載したプロトコールに従い(例えば、図3Aを参照のこと)、MuVΔSHΔVゲノムからのSHタンパク質発現の除去を、pMuV−IAから、SH遺伝子のSH遺伝子翻訳領域(ORF)内の156ヌクレオチドを欠失させることにより達成した。また、実施例2に詳細に記載したプロトコールに従い(例えば、図9Aを参照のこと)、MuVΔSHΔVゲノムからのVタンパク質発現の除去を、P/V遺伝子内の編集部位(GGGGGG)をGAGGAGGGに変化させることにより達成した。従って、Pタンパク質をコードする転写物のみが、P/V遺伝子転写から生成する。SHタンパク質及びVタンパク質のいずれの発現も消失した感染性ウイルス(rMuVΔSHΔV)を、pMuVΔSHΔVのBSRT−7細胞への形質移入を介して、クローン化DNAからレスキューした。レスキューされたウイルスを更にプラーク精製して、Vero細胞中で増幅した。レスキューされたウイルスのrMuVΔSHΔVゲノムにおけるSHタンパク質及びVタンパク質の発現を両方とも遮断する遺伝子変化の存在を確認するために、ウイルスRNAをウイルスストックから抽出し、cDNAに逆転写して配列決定した。
実施例1及び実施例2に詳細に記載した手順に従い、感染細胞の免疫ブロッティングを実施して、rMuVΔSHΔV感染細胞中にSHタンパク質及びVタンパク質の発現がないことを確認する。rMuVΔSHΔVの発現、機能、免疫原性、及び病原性は、これらに限定されないが、例えば本明細書に含まれる実施例に記載されるものなど、本明細書に記載されるいずれの方法も含む、種々の方法により分析する。研究には、新生ラットの脳におけるrMuVΔSHΔVの神経毒性の検討及びマウスにおける免疫原性の検討が含まれうる。
実施例5
ワクチン候補としての組換えMuVの改良
本実施例では、所望の位置に変異を導入するために、逆遺伝学システムを使用してrMuVコンストラクトを更に変異させる。得られるMuV変異体を組織培養細胞で分析する。神経毒性をラットモデルで評価し、ウイルスの免疫原性をマウス、フェレット、及び霊長類で調べる。V及びSHを欠く上に更なる点変異があるrMuVは、最も弱毒化されることになり、かつ復帰する可能性が最も低いように思われる。
更なるMuV変異体の生成及び分析。MuVに最も近縁のウイルスはパラインフルエンザウイルス5(PIV5)である。これら2つのウイルスは、同数の遺伝子及び遺伝子の順序を有する。PIV5に関する最近の研究で、ウイルス遺伝子の発現を高めることができ、I型インターフェロンなどのサイトカインの発現を誘導することができる、PIV5タンパク質内の残基が同定された(Sun et al.,2009年,PLoS Pathog;5(7):e1000525)。PIV5のPタンパク質のS157残基が宿主キナーゼPLK1に対する結合部位であり、PIV5のPタンパク質のS308残基がPLK1のリン酸化部位であることが見出された。S157またはS308をアミノ酸残基Aに変異させると、ウイルス遺伝子の発現及びインターフェロン−βの発現を高めるウイルスがもたらされる。ウイルス遺伝子発現の増加は、抗原量を増加させるので、可能性として免疫応答を増加させ、IFN発現の増加は、IFNの抗ウイルス効果のため、弱毒化を引き起こす可能性がある。MuVのPタンパク質内の対応する残基はT147及びS307である。これらの残基を変異させて、ウイルス遺伝子の発現及びインターフェロンの誘導に対するこれらの残基の変化の影響を調べる。
Iを欠くrMuV及びIを発現するrMuVΔVの生成及び分析。rMuVΔVを生成するために、実施例2で使用した戦略は、Vの発現以外にIタンパク質の発現も消失させた。Iタンパク質はVI//P遺伝子の編集産物である。その機能は知られていない。その発現レベルは、VまたはPに比較して極めて低く、かつその配列は、V及びPのN末端に極めて類似しているので(Iは約170のアミノ酸残基を有し、そのうちの155はV及びPのN末端と同一である)、Iタンパク質の欠失の影響は見落とされることが多い。効果的なワクチンを開発する目的のために、Vと共にIを欠失させることは弱毒化にとって有利である可能性がある。しかしながら、Iタンパク質がウイルスの病変形成にある役割を有し、ワクチンの有効性に寄与する可能性がある。一般的にはウイルスの生活環における、そして具体的には免疫応答の生成におけるIタンパク質の役割を検討するために、Iタンパク質を欠く組換えウイルスを生成する。rMuVΔVゲノムを、PとMとの間にVを挿入するための骨格として使用する。編集部位での変異の結果として、IもVもP遺伝子から作られないが、Vタンパク質は、新たに挿入されたVから作られる。同様に、rMuVΔVゲノムの骨格において、HNとLとの間にI遺伝子を挿入して、Iを発現する組換えrMuVΔV(rMuVΔ V+I)を生成する。挿入される2つの遺伝子結合が異なる理由は、Vタンパク質の発現レベルは野生型ウイルス感染を反映するほど高くすべきであり、Iの発現レベルは野生型ウイルス感染細胞のように低くすべきであるということである。リーダー配列に近い遺伝子結合(P−M結合)は、離れたもの(HN−L結合)よりも高いウイルス遺伝子発現レベルをもたらすであろう。得られるウイルスコンストラクトを、前の実施例に記載のように分析する。
復帰変異株の生成及び分析。rMuVΔVの場合、Vタンパク質欠失表現型を生じさせるために、いくつかの点変異をMuVのゲノムに導入した。時間経過と共に、表現型を復帰させる変異が生成する可能性がありうる。rMuVΔVの復帰変異株は、20継代にわたり、Vero細胞でのウイルス継代後に得られていないが、この実験はインターフェロンコンピテント細胞株で反復されることになる。Vero細胞は、ワクチン生産のためにWHO及びFDAから承認されており、I型IFNを産生しない。rMuVΔVがこの細胞株で安定であることは、ワクチンとしてrMuVΔVを将来大量生産する場合の励みになる。しかしながら、Vero細胞は、IFN遺伝子座の欠失によりIFN産生が欠如している。従って、インターフェロンコンピテント環境中でのrMuVΔVの復帰変異株の割合を調べることになる。インターフェロンを産生し、それに応答するヒト肺細胞株であるA549細胞に、rMuVΔVを0.1のMOIで感染させ、感染後4日目に、感染細胞の培地を回収し、それを使用して新たなA549に約0.1のMOIで感染させる。予備試験では、rMuVΔVがほぼ106pfu/mlに達することが観察され、この力価は、粗い評価として我々の実験に使用される。継代ごとに、rMuVΔV感染A549細胞の培地からウイルスを回収し、継代5、10、15、及び20代目に由来するウイルスを最初に配列決定する。同様に、rMuVΔSH及びrMuV−P−T147Aなどの他のMuV変異体を調べることになる。
ウイルス遺伝子発現の上昇及び/またはインターフェロン誘導の増加を示す組換えウイルスについて、前の実施例に記載のように、神経毒性及び免疫原性を試験する。I型インターフェロンの誘導におけるそれらの可能性のために、rMuVΔVと同等の弱毒化を達成していない変異についても試験する。I型インターフェロンは、その抗ウイルス活性が周知であるが、適応免疫の誘導にもポジティブな役割を果たす(Iwasaki et al.,2004年,Nat Immunol;5(10):987−95)。それは、記憶T細胞の増殖を促進し、T細胞のアポトーシスを防止する。それは、抗原交差提示に重要な役割を果たす。それは、体液性免疫を高めて、樹状細胞を刺激する。IFNを誘導するこれらのMuV変異体が、その親よりも強固な免疫応答を生成するか否かは、大いに興味のあるところである。これらの変異が実際により良好な免疫応答を生成する場合、これらの変異はrMuVゲノムに組み込まれることになる。
IのmRNAは、RNA編集の副産物であり、なんら重要な機能を有していない可能性も考えられる。Iタンパク質がウイルスの複製及び病変形成に役割を有しているか否かを検討することは、Iタンパク質についての潜在的な新規機能を明らかにするだけでなく、ワクチン開発にとっても重要であろう。rMuVΔVが弱毒化しすぎる場合には、rMuVΔVの骨格中でIを発現させることは、弱毒化が所望のレベルにあるウイルスを設計する助けとなりうる。ヒトPIV2ワクチンの開発の場合には、Vタンパク質を欠失させると、弱毒化しすぎて効果的ではないウイルスが生じる(Schaap−Nutt et al.,2010年,Virology;397(2):285−98)。従って、VまたはIを再び加えると、より適切に弱毒化したMuVワクチンを得ることができる。
PLK1結合及びリン酸化の原因となる、MuVのPタンパク質中の残基は、上記に予測したものとは異なっている可能性がありうる。それらを、PIV5について使用されたものと類似の手法を使用して検索する:MuVのP内には2つのPLK1結合モチーフがある。MuV中の類似の残基を調べることになる。予備研究では、Pタンパク質とPLK1とが相互作用し、PLK1結合部位がPタンパク質内にあることが示された。加えて、ウイルス遺伝子の発現を促進するその能力を高める、即ち、ウイルス遺伝子発現表現型を増強する、P内の変異が同定された。Pタンパク質を変異させることに加えて、他の遺伝子中の変異も作られる。例えば、ウイルス遺伝子発現を高める、PIV5のL遺伝子中の変異が同定されている。同じ変異をMuVのL遺伝子に組み込むことになる。
実施例6
フェレットにおける組換えムンプスウイルスの免疫原性
本明細書に記載の任意のMuVについてワクチン候補としての免疫原性及び有効性をフェレットで試験する。フェレットは、MuV感染の病変形成に関する研究にとっては小型の動物モデル系である。フェレットとヒトの間で肺の生理及び形態について顕著な類似性がある。フェレットは、呼吸系ウイルスによる感染に極めて罹りやすい。フェレットは、他のいくつかの呼吸器系病原体のための動物モデルとして確立されている。最も重要なことには、MuVが感染したフェレットから分離されており、感染動物の肺の中に病理変化が観察された(Gordon et al.,1956年,J Immunol;76(4):328−33)。研究には、rMuVコンストラクトによるフェレットの感染、フェレットにおけるrMuVコンストラクトの免疫原性の判定、及び暴露後の肺におけるウイルス負荷及び病理変化の軽減におけるそのようなワクチン候補の有効性の検討が含まれる。以前に記載されたように(Gordon et al.,1956年,J Immunol;76(4):328−33)、一群5匹のフェレットに、107pfuの野生型MuVまたはrMuVコンストラクトを1ml容量で感染させる。動物は、感染後の最初の1週間は毎日、次の週は1日置きに熱をモニターする。接種後3、4、5、7、9、及び11日目に、鼻洗浄液及び血液試料を回収し、プラークアッセイを使用してそれらの中のウイルス力価を測定する。接種後3、4、7、11、及び14日目に、フェレットを屠殺し、肺及び鼻甲介を回収して、ウイルス力価を測定する。肺及び鼻甲介における病理変化をH&E染色を使用して検査する。フェレットにおけるMuV変異体の免疫原性を、前の実施例に記載のように調べる。MuVに対する体液性免疫及び細胞性免疫を、ワクチン候補並びにJLワクチン及び野生型MuVによる接種後調べる。2回のIN接種及び3回接種(JLによる2回IM接種及びその後のワクチン候補の1回IN接種)を使用することができる。免疫学的検査に加えて、ワクチン接種を受けた動物を、野生型MuVに曝露する。細胞性免疫応答のアッセイ用の試薬を含む、フェレットにおける免疫学的アッセイ用の試薬を作製する。そのような試薬としては、CD3、CD4、CD8、IFN−β、IFN−γ、IL−6、及びIL−8に対するモノクローナル抗体を挙げることができる。
実施例7
呼吸器合胞体ウイルスワクチン開発のためのベクターとしてのムンプスウイルス
呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)は、小児のウイルス呼吸器感染症の最も重要な原因であり、幼児並びに免疫無防備状態の被験体及び高齢者の間の罹患率及び死亡率の主要な原因である(Collins,P.L.,R.M.Chanock,and B.R.Murphy,Respiratory syncytial virus,in Fields Virology,D.M.Knipe and P.M.Howley,Editors.2001年,Lippincott,Williams and Wilkins:Philadelphia.p.1443−1485)。加えて、重篤なRSV感染は、将来、喘鳴及び喘息をもたらすことがある。他の呼吸系ウイルスによる感染と異なり、RSVは、その後の感染に対する持続的な防御免疫を誘導しない。従って、ほとんどの個体は、一生を通して複数回感染する。現在、エアゾル化されたリバビリン及び予防的免疫グロブリン療法が臨床環境の中で使用されているが、RSVに対するワクチンも、重篤なRSV疾患に対する効果的な根治的治療も存在しない。しかしながら、高コストのパリビズマブによる予防処置には、RSVの季節の間、毎月注入する必要があるため、健康上の利益に対する費用対効果に疑問が提起されている。従って、RSVに対する安全で効果的なワクチンに対する差し迫った必要性がある。
非分節マイナス鎖RNAウイルス(negative non−segmented single−stranded RNA virus:NNSV)として、MuVは、その生活環の中にDNA(または核)相がないため、組換えまたは挿入による、宿主細胞DNAの意図しない遺伝子改変結果の可能性が回避されるので、ワクチン開発に対する優れたウイルスベクター候補である。プラス鎖RNAウイルスに比較して、MuVのゲノム構造は安定である。従って、プラス鎖RNAウイルスのゲノムは、再結合して、挿入された外来遺伝子を迅速に欠失することが多いので、MuVはプラス鎖RNAウイルスよりもワクチンベクターとしてよく適合している。
RSV Fを含有するMuV−Fの生成及び分析。RSV(A2株)のF遺伝子を、MuV−GFPの生成と同じ戦略を使用して、MuVゲノムのFとSHの間に挿入する(MuV−F)。手短に言えば、F遺伝子を、4プライマーPCR手法を使用して、遺伝子終結(GE)、遺伝子間領域(I)、及び遺伝子開始(GS)(これらはウイルスmRNA合成にとって重要である)と組み合わせる(He et al.,1995年,Gene;164:75−79)。この配列を、NPのGSとNP遺伝子のコード配列の間に挿入する。効果的であるためにはウイルスRNAゲノムが6の倍数である必要があるという「6の規則」は、MuVについては絶対的ではないが、Fを有するゲノムの長さを6の倍数になるように維持する。MuV−F感染細胞のFの発現レベルを、免疫沈降を使用して調べ、RSV感染細胞と比較する。高いMOI及び低いMOIでのウイルスの増殖速度を、MuVと比較する。
ワクチン候補としての3’−近位F含有MuV−Fの生成及び検討。MuVなどのマイナス鎖RNAウイルスは、3’末端リーダー配列から転写を開始し、ウイルス遺伝子の転写レベルはリーダー配列へのそれらの距離により影響を受ける。例えば、リーダー配列に最も近い、MuVのNP遺伝子は、最も多量に転写されるが、リーダー配列から最も離れて位置するL遺伝子は、転写が最少である(図19)。ワクチン候補の有効性は、Fタンパク質の発現レベルを増加させることにより、高められると期待される(組換えRSVについて示されるように(Krempl et al.,2002年,J Virol;76(23):11931−42))。F遺伝子の発現レベルを増加させるために、F遺伝子をリーダー配列のすぐ下流でNP遺伝子の上流に挿入する(図19)。
ベクターとしてムンプスウイルスを使用して、RSV Gタンパク質を、RSV Fタンパク質と同様に発現させることができる。
本明細書に引用のすべての特許、特許出願、及び刊行物の完全な開示、並びに電子的に入手可能な資料(例えば、GenBank及びRefSeq等における、寄託されたヌクレオチド配列、並びにSwissProt、PIR、PRF、PDBと、GenBank及びRefSeqの注釈付きコード領域に由来する翻訳物等における寄託されたアミノ酸配列を含む)は、参照により組み込まれる。本出願の開示と参照により本明細書に組み込まれる任意の文献の開示との間にいかなる矛盾が存在する場合でも、本出願の開示を優先するものとする。前述の詳細な説明及び実施例は、明快な理解のためにのみ提示されている。不必要な限定をそこから理解すべきではない。本発明は図示され記載された綿密な詳細に限定されるものではない。当業者にとって明白な変形形態は、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に含まれるからである。
配列表フリーテキスト
配列番号1 Vタンパク質をコードするV/P遺伝子及び低分子疎水性タンパク質をコードするSH遺伝子を含むムンプスウイルスゲノム
配列番号2 ムンプスウイルスVタンパク質
配列番号3 ムンプスウイルス低分子疎水性タンパク質
配列番号4 ムンプスウイルス株Glouc1/UK96のSHタンパク質配列
配列番号5 ムンプスウイルス株UK01−22のSHタンパク質配列
配列番号6 ムンプスウイルス株MuV−IAのSHタンパク質配列
配列番号7 SH遺伝子の上流の核酸配列
配列番号8 SH遺伝子の欠失から得られる組換え核酸配列
配列番号9 SHタンパク質の欠失を確認するために配列決定されたPCR産物
配列番号10 抗体を生成するために使用されたMuV−IA SH N末端ペプチド配列
配列番号11 抗体を生成するために使用されたMuV−IA SH C末端ペプチド配列
配列番号12〜13 抗体を生成するために使用されたMuV−IA Vタンパク質ペプチド配列
配列番号14 P/V遺伝子内の核酸編集配列
配列番号15 Vタンパク質発現を消失させる組換え核酸配列
配列番号16 P/V遺伝子の改変から得られる組換え核酸配列
配列番号17 Vタンパク質の欠失を確認するために配列決定されたPCR産物
配列番号18 Vタンパク質欠失があるムンプスウイルスのNP遺伝子の終結からP/V遺伝子の開始までの核酸配列
配列番号19〜25 Vタンパク質欠失があるムンプスウイルスのNP遺伝子の終結からP/V遺伝子の開始までのレスキューされた核酸配列
配列番号:26〜81 合成オリゴヌクレオチドプライマー