特許文献2記載の技術は、ヘキサベンゾコロネン(HBC)に官能基を結合するとともに、この官能基を介して自己集積化させることで、いわゆるナノチューブ状の集積体を得ようとするものである。従って、最終的な半導体を得るための工程数が多く、しかも、得られた集積体がp型(ドナー)であるのか、又はn型(アクセプタ)であるのかが明確ではない。
特許文献3には、HBCの集積体であるナノチューブは、正孔及び電子の伝導経路を同時に有する、との示唆がある。この特許文献3記載の技術は、ナノチューブの内面及び外面をフラーレンで被覆するとともに、その被覆率でHBCにおける正孔移動度を制御するものである。このことから諒解されるように、特許文献2、3記載の技術では、HBCそれ自体のドナーとしての特性を向上させることはできない。
また、特許文献4記載の技術は、グラフェン誘導体に対し、フッ素原子を有する官能基を結合させ、これにより、n型半導体を得るものである。すなわち、この技術では、アクセプタが得られるに留まり、ドナーを得ることはできない。
ところで、光電変換材料のアクセプタとして用いることが可能な物質としては、上記のPCBMの他にも、キノイド系やペリレン系等の種々の低分子有機半導体が提案されている。その一例として、図14に示す、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)等が挙げられる。
上記の通り、光電変換材料の光電変換効率を向上させるためには、アクセプタのHOMO及びLUMOのエネルギー準位に応じて、上記(A)〜(C)を満足するようなドナーを選定する必要がある。しかしながら、アクセプタとして用いることが可能な種々の物質のそれぞれに対して、最適なHOMO及びLUMOのエネルギー準位を有するドナーを選定することは容易ではない。すなわち、特許文献2〜5記載の炭素縮合環をドナーとして用いたとしても、上記の種々のアクセプタに対応した最適なエネルギー準位の組み合わせからなる光電変換層を得ることは困難である。その結果、十分な光電変換効率が得られない懸念がある。
さらに、特許文献2〜5のいずれにおいても、低分子有機化合物が開示されるのみである。周知のように、低分子有機化合物は有機溶媒に溶解し難く、光電変換層を得る際にロールツーロール法等を行うことが困難となるという不具合が顕在化している。また、BHJ太陽電池において、光電変換層を得る際に有機溶媒に溶解し難い低分子有機化合物を用いると、アクセプタドメインとドナードメインとが良好に混在しない懸念がある。その結果、光電変換層における電子及び正孔の移動が促進されず、光電変換効率を十分に向上させることが困難になる。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ドナーあるいはアクセプタとして優れた特性を示し、しかも、光電変換層を簡便且つ高精度に得ることが可能な光電変換材料及びその製造方法と、この光電変換材料を含む光電変換層を具備する有機薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、電子を供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料であって、
一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて得られるポリフェニレンをさらに反応させた炭素縮合環の重合体からなることを特徴とする。
ただし、一般式(1)中のR1〜R6は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す
。
一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて得たポリフェニレンをさらに反応させることで、π共役系が拡張された、すなわち、π電子の非局在化の範囲が拡張された炭素縮合環からなる重合体が形成される。以下、この重合体を「ナノグラフェンポリマー」ともいう。なお、ここでの「ポリマー」は、モノマーを繰り返し単位とする低分子及び高分子の総称であり、オリゴマーを含む。
このナノグラフェンポリマーは、上記の通り、主鎖に沿ってπ電子雲が広がりをもつπ共役系であるため、吸光係数が大きく、励起子が活発に生成される。また、HOMOとLUMOとの間のエネルギー準位差であるバンドギャップが小さく、極大吸収波長が長波長側にシフトし、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収される。つまり、太陽光の利用効率を良好に向上させることができる。
以上のような理由から、このナノグラフェンポリマーを光電変換材料とする有機薄膜太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
また、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は、P3HT等に比して低く(深く)なる。従って、例えば、PCBMをアクセプタとし、ナノグラフェンポリマーをドナーとする場合、P3HTをドナーとする場合に比してエネルギー損失が小さくなる。すなわち、ナノグラフェンポリマーを光電変換層のドナーとする有機薄膜太陽電池では、開放電圧Vocが大きくなる。
また、上記の通り、一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させることによりポリフェニレンが得られる。この際、例えば、重合させるモノマーのモル比や、モノマーの各々の組成及び構造を調整することによって、ポリフェニレンの組成及び構造についても様々に調整することができる。ひいては、ポリフェニレンをさらに反応させて得られるナノグラフェンポリマーの組成及び構造(主鎖骨格に含まれる炭素縮合環の数等)を容易に調整することができる。
基本的には、ナノグラフェンポリマーの主鎖骨格を構成する炭素縮合環に含まれる二重結合の個数に2を乗じることで、該主鎖骨格に含まれるπ電子(以下、単にπ電子ともいう)の数が算出される。従って、上記のようにナノグラフェンポリマーの組成及び構造を調整することで、π電子の数を所望の値に調整することが可能になる。
ナノグラフェンポリマーのバンドギャップはπ電子の数に関連して定まるため、上記のようにπ電子の数を調整することで、該バンドギャップを所望の値に調整することが可能になる。さらに、バンドギャップの値の変化に併せてHOMO及びLUMOのエネルギー準位も変化する。従って、結果的には、π電子の数を調整することで、バンドギャップ、HOMO及びLUMOのエネルギー準位を所望の値に調整することが可能になる。
すなわち、種々のアクセプタに対応して、ナノグラフェンポリマーが最適なHOMO及びLUMOのエネルギー準位を有するようにπ電子数を調整することができる。その結果、例えば、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、アクセプタとして用いることができる種々の物質に対して、良好な光電変換効率を示すナノグラフェンポリマーをドナーとして提供することが可能になる。なお、ナノグラフェンポリマーをアクセプタとして用いる場合も同様に、種々のドナーに対応して最適な値となるようにHOMO及びLUMOのエネルギー準位を調整することができる。従って、優れた光電変換効率を示す光電変換層を容易に得ることが可能になる。
上記の一般式(2)で示すモノマーとしては、一般式(3)〜(5)の少なくともいずれか1つであることが好ましい。
ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
この場合、最終的に得られるナノグラフェンポリマーについて、その主鎖骨格を形成するグラフェン構造部分、すなわち、互いに縮合している炭素環の数を効果的に増大させることができる。その結果、π共役系を一層良好に拡張することができ、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを得ることができる。このようなナノグラフェンポリマーを光電変換材料とすることで、有機薄膜太陽電池の光電変換効率をより良好に向上させることが可能になる。
また、一般式(1)、(2)で示すモノマーが、R1〜R6、R9〜R14の少なくともいずれか一つに、側鎖として上記の可溶性基を備えることが好ましい。この場合、モノマーを重合させて得られるポリフェニレンにも上記の可溶性基が導入されることとなる。上記の側鎖は、ナノグラフェンポリマーを形成するべくポリフェニレンを反応させる際、複数のポリフェニレンの構成単位同士が接近することを抑制する立体障害となる。これによって、複数のポリフェニレンの構成単位同士の炭素環が架橋することを抑制しつつ、各構成単位内の反応(炭素縮合環の形成)を十分に進行させることができる。その結果、主鎖骨格の全体にわたってπ電子雲が十分に広がったナノグラフェンポリマーを容易に得ることができる。
また、このナノグラフェンポリマーは、可溶性基が導入された状態で得られるため、有機溶媒に対するナノグラフェンポリマーの溶解度を高めることができる。これによって、上記の通り太陽光の利用効率を向上させるべく、炭素縮合環の分子量を増大させたナノグラフェンポリマーであっても、有機溶媒に容易に溶解することができる。従って、スピンコート法やロールツーロール法等を用いて光電変換層を簡便且つ高精度に形成することができる。
上記のナノグラフェンポリマーの構成単位の主鎖骨格に含まれるπ電子の数は、60〜250であることが好ましい。上記の通り、π電子の数を調整し、π共役系の範囲を調整することによって、バンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。従って、π電子の数を60以上とすることで、π共役系を十分に拡張して、光電変換効率に優れたナノグラフェンポリマーを得ることができる。
また、π電子の数を増大させることは、炭素縮合環の分子量を増大させることになるため、π電子の数を250以下とすることで、有機溶媒等に対して容易に溶解するナノグラフェンポリマーを得ることができる。つまり、ナノグラフェンポリマーのπ電子の数を上記の範囲内とすることで、光電変換効率に優れた光電変換層を、簡便且つ高精度に形成することが可能になる。
上記のポリフェニレンの好適な例としては、下記の一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。
ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
なお、一般式(10)で示す化合物は、種々の異性体を含み、その一例として、一般式(12)〜(14)で示す化合物が挙げられる。
ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
同様に、一般式(11)で示す化合物は、種々の異性体を含み、その一例として、一般式(15)〜(17)で示す化合物が挙げられる。
ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
これらのポリフェニレンは、上記の通りモノマーを重合する際のモル比や、該モノマーの組成及び構造等を調整することによって容易に作成することが可能である。
また、上記ポリフェニレンの反応物として、一般式(18)〜(31)で示すグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマーが挙げられる。
ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表
す。
これらのナノグラフェンポリマーでは、主鎖骨格のグラフェン構造部分が効果的に増大され、π共役系が一層良好に拡張されている。すなわち、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がっている。このようなナノグラフェンポリマーを光電変換材料とすることで、有機薄膜太陽電池の光電変換効率をより効果的に向上させることが可能になる。
なお、本発明においては、一般式(18)〜(31)に示されるような構成単位がナノメートルスケールであるグラフェンを「ナノグラフェン」ともいう。
上記のモノマー、ポリフェニレン、ナノグラフェンポリマーは、側鎖の可溶性基として、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基の少なくともいずれか1つを備えることが好ましい。つまり、一般式(1)に示すモノマーのR1〜R6の少なくとも1つが上記の可溶性基であることが好ましい。また、一般式(3)〜(5)に示すモノマーのR9〜R14の少なくとも1つが上記の可溶性基であることが好ましい。
これらのモノマーを重合させて得られるポリフェニレンも上記の可溶性基を有する。すなわち、一般式(6)〜(17)に示す化合物のR15〜R72の少なくとも1つに上記の可溶性基が導入されることになる。また、これらの化合物を構成単位とするポリフェニレンを反応させて得られるナノグラフェンポリマーも上記の可溶性基を有する。すなわち、一般式(18)〜(31)に示すナノグラフェンのR15〜R72の少なくとも1つに上記の可溶性基が導入されることになる。
なお、側鎖として上記の可溶性基を備えていないモノマーを重合させることで、無置換のポリフェニレンを得た後、該無置換のポリフェニレンに上記の可溶性基を導入することもできる。
ポリフェニレンが側鎖として上記の可溶性基を備える場合、上述した通り、該可溶性基が立体障害となることで、主鎖骨格の全体にわたってπ電子雲が十分に広がったナノグラフェンポリマーを容易に得ることができる。
また、このようにして得られたナノグラフェンポリマーには、上記の可溶性基が側鎖として導入されているため、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解度を一層良好に高めることができる。特に、ナノグラフェンポリマーが側鎖の可溶性基として、アルコキシ基を備える場合、一層好ましくは分岐アルコキシ基を備える場合、上記の溶解度を一層良好に高めることができる。
また、可溶性基が、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基の少なくともいずれか一つである場合、該可溶性基の炭素数は、3〜20であることが好ましい。これによって、光電変換材料として優れた変換効率を示し、且つ良好に有機溶媒に溶解させて容易に成膜可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。
また、ナノグラフェンポリマーの重合度(構成単位の個数)は、2〜150であることが好ましい。重合度を2以上とすることで、吸光係数を十分に高くすることや、バンドギャップを十分に小さくすることができる。一方、150以下とすることで、重合に要する時間を短縮でき、ナノグラフェンポリマーの生産効率を向上させることができる。すなわち、重合度を上記の範囲内に設定することにより、光電変換材料として優れた特性を示すナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。
さらに、本発明は、電子を供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料を製造する方法であって、
一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて、ポリフェニレンを生成する工程と、
前記ポリフェニレンを反応させて、光電変換材料である炭素縮合環の重合体を生成する工程と、
を有することを特徴とする。
ただし、一般式(1)中のR1〜R6は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。また、一般式(2)中のArは、未置換の若しくは置換された芳香族を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。
このような過程を経ることで、π共役系が十分に拡張され、光電変換材料(ドナーあるいはアクセプタ)として優れた機能するナノグラフェンポリマーを容易且つ高精度に得ることができる。すなわち、このナノグラフェンポリマーを光電変換材料とした有機薄膜太陽電池では、光電変換効率を効果的に向上させることが可能になる。
また、上記のようにして、ポリフェニレンを得る際、一般式(2)で示すモノマーは、一般式(3)〜(5)の少なくとも1つで示すモノマーであることが好ましい。
ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
このモノマーからポリフェニレンを経て得られたナノグラフェンポリマーでは、その主鎖骨格を形成するグラフェン構造部分を効果的に増大させることができる。すなわち、π共役系が一層良好に拡張され、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを得ることができる。
上記のナノグラフェンポリマーを得る際、該ナノグラフェンポリマーの構成単位の主鎖骨格に含まれるπ電子の数を60〜250とすることが好ましい。このπ電子の数は、例えば、重合させるモノマーのモル比や、組成及び構造等を調整することによって調整することができる。π電子の数を60以上とすることで、π共役系を十分に拡張して、光電変換材料として優れた吸光係数、バンドギャップ、極大吸収波長を有するナノグラフェンポリマーを得ることができる。また、π電子の数を250以下とすることで、有機溶媒等に対しても容易に溶解する分子量のナノグラフェンポリマーを得ることができる。
上記のモノマーを重合させることで、下記の一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つを構成単位とするポリフェニレンを得ることが好ましい。
ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
なお、一般式(10)で示す化合物の一例としては、一般式(12)〜(14)で示す化合物が挙げられる。つまり、一般式(12)〜(14)で示す化合物は互いに異性体の関係にある。
ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
また、一般式(11)で示す化合物の一例としては、一般式(15)〜(17)で示す化合物が挙げられる。つまり、一般式(15)〜(17)で示す化合物は互いに異性体の関係にある。
ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表す。
そして、上記のポリフェニレンを反応させることで、一般式(18)〜(31)で示すグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマーを得ることが好ましい。
ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は
、炭素数が3〜20個のアルコキシ基を表
す。
このようにして得られたナノグラフェンポリマーでは、主鎖骨格のグラフェン構造部分が効果的に増大され、π共役系が一層良好に拡張されている。すなわち、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がっている。従って、ナノグラフェンポリマーを光電変換材料とすることで、有機薄膜太陽電池の光電変換効率をより効果的に向上させることが可能になる。
上記のモノマー、ポリフェニレン、ナノグラフェンポリマーは、側鎖の可溶性基として、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基の少なくともいずれか1つを備えることが好ましい。また、これらの可溶性基は、炭素数が3〜20であることが一層好ましい。この場合、可溶性基によって、複数のポリフェニレンの構成単位同士の炭素縮合環が架橋することを抑制でき、主鎖骨格の全体にわたってπ電子雲が十分に広がったナノグラフェンポリマーを容易に得ることが可能になる。また、これらの可溶性基が側鎖として導入されることで、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解度を高めることができる。なお、溶解度を高める観点から、特に好ましい可溶性基はアルコキシ基であり、一層好ましくは分岐アルコキシ基である。
また、ナノグラフェンポリマーの重合度が2〜150となるように、ポリフェニレンを反応させることが好ましい。このためには、例えば、重合反応時の反応温度や反応時間を、重合度が2〜150となるような条件に設定すればよい。重合度を2以上とすることで、吸光係数を十分に高くすることや、バンドギャップを十分に小さくすることができる。一方、150以下とすることで、重合に要する時間を短縮でき、ナノグラフェンポリマーの生産効率を向上させることができる。
さらに、本発明は、前記光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池であって、該光電変換材料を電子供与体として含む光電変換層を具備することを特徴とする。
この有機薄膜太陽電池では、例えば、PCBMをアクセプタとしたときのドナーとしてナノグラフェンポリマーを用いることで、P3HTを用いる場合に比して、光電変換層の吸光係数を大きくし、極大吸収波長を長波長側にシフトすることができる。また、ドナーのバンドギャップを小さくすることができる。その上、ドナーのLUMOのエネルギー準位を、アクセプタであるPCBMのLUMOの準位に近くすることができる。
従って、この有機薄膜太陽電池では、励起子の生成の活発化、太陽光の利用効率の向上、開放電圧Vocの増大が可能となり、光電変換効率を向上させることができる。
このように光電変換効率が大きな有機薄膜太陽電池では、同一の発電量が得られる太陽電池に比して、その面積を小さくすることができる。従って、重量を低減させることができるため、設置場所に加わる負荷も小さくすることができる。また、設置面積が小さくなるので、設置レイアウトの自由度も向上する。
また、ナノグラフェンポリマーが、上記の可溶性基を備える場合、有機溶媒に対する溶解度が良好に高められる。このため、上記の通り、太陽光の利用効率を向上させるべく炭素縮合環の分子量を増大させたナノグラフェンポリマーであっても、簡便且つ容易に成膜して光電変換層を得ることができる。すなわち、光電変換効率に優れた有機薄膜太陽電池を簡便且つ容易に得ることができる。
有機薄膜太陽電池の好適な例は、ドナードメインとアクセプタドメインが混在する光電変換層を備えるバルクへテロ接合型のものである。この場合、例えば、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成される平面ヘテロ接合型のものに比して、ドナードメインとアクセプタドメインとの接触面積が大きい。有機薄膜太陽電池では、主にドナードメインとアクセプタドメインの界面で励起子が電子と正孔に分離して発電に関与するので、両者の接触面積が大きいバルクへテロ接合型として構成することにより、光電変換効率を向上させることが可能となる。
特に分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを用いてバルクへテロ接合型の有機薄膜太陽電池の光電変換層を作製する場合、該ナノグラフェンポリマーが有機溶媒に易溶であるため、容易に成膜を行うことができる。これによって、良好に相分離したドナードメインとアクセプタドメインとが互いに混在した光電変換層を得ることができる。すなわち、光電変換層における電荷の分離効率を向上させることができるため、光電変換効率を向上させた有機薄膜太陽電池を得ることができる。
本発明によれば、π電子雲の広がりが大きいπ共役系のナノグラフェンポリマーを光電変換材料とするため、吸光係数を大きく、且つバンドギャップ(HOMOとLUMOとのエネルギー準位差)を小さくすることができる。また、極大吸収波長を長波長側にシフトさせて、光の吸収領域を可視光側へ広くすることができる。
また、ナノグラフェンポリマーを得る際、主鎖骨格に含まれるπ電子の数を調整することができる。つまり、ナノグラフェンポリマーのバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を所望の値に調整することができる。このため、HOMOのエネルギー準位が低いドナーとしてナノグラフェンポリマーが得られる。また、PCBMをアクセプタとして用いた場合、ドナー及びアクセプタのLUMOのエネルギー準位を互いに近づけることができる。
すなわち、ナノグラフェンポリマーをドナーとし、PCBMをアクセプタとした光電変換層では、励起子が活発に生成される。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、開放電圧Vocが大きくなる。その結果、光電変換効率が大きく、小面積で軽量な有機薄膜太陽電池を得ることが可能になる。
さらに、PCBM以外の種々の物質をアクセプタとして用いた場合であっても、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、良好な光電変換効率を示すナノグラフェンポリマーをドナーとして提供することが可能になる。従って、優れた光電変換効率を示す光電変換層を容易に形成することが可能なナノグラフェンポリマーを得ることができる。
このナノグラフェンポリマーは、側鎖として可溶性基を備える場合、有機溶媒に一層容易に溶解するようになる。その結果、光電変換層の成膜作業を容易且つ高精度に行うことが可能になり、有機薄膜太陽電池の製造効率及び光電変換効率を良好に向上させることができる。
以下、本発明に係る光電変換材料及びその製造方法につき、該光電変換材料を含む光電変換層を具備するバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(BHJ太陽電池)10の要部概略縦断面図である。このBHJ太陽電池10は、透明電極12に対し、正孔輸送層14、光電変換層16、裏面電極18が下方からこの順で重畳されることで構成される。
透明電極12は、正極として機能する。すなわち、該透明電極12には、正孔24が移動する。なお、透明電極12としては、例えばインジウム−スズ複合酸化物(ITO)等、太陽光をはじめとする光を十分に透過するものが選定される。
正孔輸送層14は、光電変換層16にて生成した正孔24が透明電極12に移動することを支援する層である。この正孔輸送層14は、一般的には、ポリスチレンスルホン酸でドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、すなわち、いわゆるPEDOT:PSSから形成することができる。
光電変換層16は、電子供与体(ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメイン26と、電子受容体(アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメイン28とが混在する層として形成されている。この中、アクセプタの好適な例としては、上記のPCBMが挙げられるが、これ以外にも、図14に示す、TCNQ、NTCDA、PTCDAを用いることができる。
さらに、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、N,N’−ジペンチル−3,4,9,10−ペリレン−ジカルボキシイミド(PTCDI−C5)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレン−ジカルボキシイミド(PTCDI−C8)、N,N’−ジフェニル−3,4,9,10−ペリレン−ジカルボキシイミド(PTCDI−Ph)等をアクセプタとして用いてもよい。
一方、ドナーとなるp型半導体、すなわち、本実施形態に係る光電変換材料は、一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて得られるポリフェニレンをさらに反応させた炭素縮合環の重合体(ナノグラフェンポリマー)からなる。
ただし、一般式(1)中のR1〜R6は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R1〜R6の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。また、一般式(2)中のArは、未置換の若しくは置換された芳香族を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。
この一般式(2)で示すモノマーの好適な例としては、一般式(3)〜(5)で示すものが挙げられる。
ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R9〜R14の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。
すなわち、一般式(1)で示すモノマーと、一般式(3)〜(5)で示すモノマーの少なくとも1つとを重合させてポリフェニレンを得ることが好ましい。この場合、最終的に得られるナノグラフェンポリマーについて、その主鎖骨格を形成するグラフェン構造部分、すなわち、互いに縮合している炭素環の数を効果的に増大させることができる。
これらのモノマーを重合させて得られるポリフェニレンとして、一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。
ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。
すなわち、一般式(6)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは、一般式(1)で示すモノマーと、一般式(3)で示すモノマーとを1:1のモル比で重合させることによって得られる。また、一般式(7)〜(9)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは互いに異性体であり、一般式(1)、(4)で示すモノマーを1:1のモル比で重合させることによって得られる。さらに、一般式(10)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは、一般式(1)、(4)、(5)で示すモノマーを2:1:1のモル比で重合させることによって得られる。さらに、一般式(11)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは、一般式(1)、(4)、(5)で示すモノマーを3:1:2のモル比で重合させることによって得られる。
具体的には、一般式(10)、(11)で示す化合物は複数の異性体を含む。一般式(10)で示す化合物の異性体の一例として、一般式(12)〜(14)で示すものが挙げられる。
ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。
また、一般式(11)で示す化合物の異性体の一例として、一般式(15)〜(17)で示すものが挙げられる。
ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R49〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。
なお、一般式(10)、(11)で示す化合物は、一般式(12)〜(14)及び一般式(15)〜(17)で示す化合物に限定されるものではなく、異性体として取り得る全ての化合物を含む。
また、ポリフェニレンは、一般式(6)〜(11)で示す化合物のいずれか1つのみが互いに結合したものに限定されることなく、例えば、一般式(6)〜(11)で示す化合物がランダムに結合したものであってもよい。
上記のポリフェニレンをさらに反応させて得られるナノグラフェンポリマーとして、一般式(18)〜(31)で示すナノグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。
ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。
すなわち、一般式(18)、(19)で示すナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーは、一般式(6)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンを反応させることで得られる。同様に、一般式(20)、(21)に係るナノグラフェンポリマーは、それぞれ一般式(7)、(8)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(22)、(23)に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(9)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(24)、(25)に係るナノグラフェンポリマーは、それぞれ一般式(12)、(13)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(26)、(27)に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(14)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(28)、(29)に係るナノグラフェンポリマーは、それぞれ一般式(15)、(16)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(30)、(31)に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(17)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。
なお、ナノグラフェンポリマーは、一般式(18)〜(31)で示すナノグラフェンのいずれか1つのみが互いに結合したものに限定されることなく、例えば、一般式(18)〜(31)で示す化合物がランダムに結合したものであってもよい。
また、ナノグラフェンポリマーの構成単位は、一般式(18)〜(31)で示すナノグラフェンに限定されない。すなわち、ポリフェニレンが一般式(6)〜(11)で示す化合物が取り得る全ての異性体を構成単位とすることに対応して、該ポリフェニレンを反応させて得られるナノグラフェンポリマーも複数の異性体を含む。
上記の通り、一般式(1)、(2)で表されるモノマーを重合させる際に、モノマーのそれぞれのモル比や、組成及び構造等を調整することで、得られるポリフェニレンの組成及び構造についても調整することが可能である。従って、ポリフェニレンをさらに反応させて得られるナノグラフェンポリマーの組成及び構造(主鎖骨格に含まれる炭素縮合環の数等)を容易に調整することができる。
ナノグラフェンポリマーの主鎖骨格に含まれる炭素縮合環中の二重結合の数に応じて、該主鎖骨格に含まれるπ電子の数も変化する。このため、ナノグラフェンポリマーの組成及び構造を調整することで、π電子の数を調整することが可能になる。具体的には、炭素縮合環の二重結合の数に2を乗じることでπ電子の数を算出することができる。従って、一般式(18)、(19)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は60である。一般式(20)〜(23)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は78である。一般式(24)〜(27)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は150である。一般式(28)〜(31)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は222である。
このナノグラフェンポリマーの主鎖骨格に含まれるπ電子は、主鎖骨格の炭素縮合環上に非局在化している。すなわち、このπ電子の数は、π共役系の範囲に対応し、該π電子の数を調整することによって、バンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。つまり、上記のようにπ電子の数を調整することで、ナノグラフェンポリマーのHOMO及びLUMOのエネルギー準位を所望の値に調整することが可能になる。
その結果、例えば、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、上記に例示したようなアクセプタとして用いることができる種々の物質に対して、良好な光電変換効率を示すナノグラフェンポリマーをドナーとして提供できる。種々のアクセプタに対応して最適なHOMO及びLUMOのエネルギー準位を有するようにナノグラフェンポリマーのπ電子の数を調整できるためである。
なお、ナノグラフェンポリマーをアクセプタとして用いる場合も同様に、種々のドナーに対応して最適な値となるようにバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。従って、光電変換材料としてのナノグラフェンポリマーの汎用性を向上させることができ、且つ優れた光電変換効率を示す光電変換層を容易に得ることが可能になる。
ナノグラフェンポリマーの構成単位の主鎖骨格に含まれるπ電子の数は、60〜250であることが好ましい。π電子の数を増大させるほど、π共役系の範囲を拡張することとなる。従って、π電子の数を60以上とすることで、π共役系を十分に拡張して、光電変換効率に優れたナノグラフェンポリマーを得ることができる。また、π電子の数を増大させることは、炭素縮合環の分子量を増大させることになるため、π電子の数を250以下とすることで、有機溶媒等に対して容易に溶解するナノグラフェンポリマーを得ることができる。
つまり、ナノグラフェンポリマーのπ電子の数を上記の範囲内とすることで、光電変換効率に優れた光電変換層を、簡便且つ高精度に形成することが可能になる。
ここで、一般式(6)中のR15〜R24として水素を備える(無置換の)ポリフェニレンから形成されるナノグラフェンポリマーについて説明する。このナノグラフェンポリマーでは、図2(a)に示すように、一つの構成単位内の炭素環同士が全て反応して炭素縮合環が形成されることが好ましい。
つまり、図2(a)に示すナノグラフェンポリマーでは、図2(b)に示すように、構成単位内に反応していない炭素環が含まれるナノグラフェンポリマーに比べて、π電子雲の広がりを一層良好に得ることができる。また、図2(a)に示すナノグラフェンポリマーでは、図2(c)に示すように、複数の構成単位同士が架橋結合したナノグラフェンポリマーに比べて、有機溶媒に対するナノグラフェンポリマーの溶解度を効果的に高めることができる。すなわち、ナノグラフェンポリマーの溶液を用いた成膜を容易にすることができる。
図2(a)に示すようなナノグラフェンポリマーを容易且つ効率的に得るためには、ポリフェニレンが一般式(6)中のR15〜R24の少なくとも一つに、可溶性基を備えることが好ましい。ここで、可溶性基とは、ポリフェニレンに側鎖として導入されることで、無置換のポリフェニレンよりも、有機溶媒に対する溶解性を高めることができる置換基である。可溶性基として好適には、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基(アルキル基)、直鎖アルコキシ基及び分岐アルコキシ基(アルコキシ基)等の置換基が挙げられる。
このような可溶性基は、例えば、図3に示すように、ポリフェニレンaの構成単位同士の反応において立体障害となる。これによって、該構成単位同士が互いに接近することを抑制できる。その結果、1つの構成単位内における炭素環同士の反応を効果的に進行させることができるため、複数の構成単位間が架橋することを抑制し、十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを容易且つ効率的に得ることができる。
なお、図3に例示のポリフェニレンaでは、一般式(6)中のR17、R19、R20、R22にアルコキシ基(OC10H21)が導入され、R23及びR24にアルキル基(C12H25)が導入され、R15及びR16にアルキル基(CH3)が導入されている。なお、導入される可溶性基の種類や配置は、上記に限定されるものではない。
また、図4に示すように、一般式(7)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンbについても、一般式(6)と同様に、可溶性基が導入されることで、複数の構成単位同士の間で反応が生じることを抑制できる。
図4に例示のポリフェニレンbは、一般式(7)中のR25〜R32にアルコキシ基としてOC10H21が導入された化合物を構成単位とする。
可溶性基が導入されたポリフェニレンは、例えば、一般式(1)、(3)〜(5)に示すモノマーのR1〜R6、R9〜R14の少なくとも1つに可溶性基を導入することで得ることができる。
なお、例えば、可溶性基としてアルキル基を有するポリフェニレンを得る場合等については、予めモノマーに可溶性基が導入されていなくてもよい。すなわち、無置換(一般式(1)及び(3)〜(5)中のR1〜R6及びR9〜R14がいずれも水素)のモノマーから無置換のポリフェニレンを得た後、該ポリフェニレンにアルキル基を導入することも可能である。
上記の通り、側鎖として可溶性基が導入されたポリフェニレンを反応させてナノグラフェンポリマーを得る場合、該ナノグラフェンポリマーにも可溶性基が導入される。つまり、一般式(18)〜(31)に示すナノグラフェンのR15〜R72の少なくとも1つに上記の可溶性基が導入されることになる。これによって、ナノグラフェンポリマーを有機溶媒に対して易溶とすることができる。
なお、ナノグラフェンポリマーの溶解度を向上させる観点からは、ポリフェニレンが側鎖としてアルコキシ基を備えることが好ましく、特に好ましくは分岐アルコキシ基である。この場合、上記溶解度を一層効果的に高めることができる。
アルキル基及びアルコキシ基としては、炭素数が3〜20個であるものが好ましい。アルコキシ基の炭素数を上記の範囲とすることで、ポリフェニレンの構成単位同士の接近を抑制しつつ、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解性を向上させることができる。すなわち、光電変換材料として優れた特性を示し、且つ有機溶媒に易溶であり良好に成膜することが可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。
また、ナノグラフェンポリマーの重合度は、2〜150であることが好ましい。重合度を2以上、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを2個以上とすることによって、吸光係数を大きくすることができる。また、重合度を150以下、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを150個以下とすることによって、ナノグラフェンポリマーを得るまでの重合に要する時間を短縮して、生産効率を向上させることができる。従って、重合度を上記の範囲に設定することで、吸光係数が十分に向上した光電変換材料を効率よく作製することができる。
BHJ太陽電池10(図1参照)においては、このようなナノグラフェンポリマーからなる光電変換材料を含む光電変換層16上に、裏面電極18が重畳される。この裏面電極18は、電子30が到達する負極として機能する。なお、光電変換層16と裏面電極18の間には、バトクプロインやフッ化リチウム等からなる電子輸送層(不図示)を介在させてもよい。これによって、光電変換層16にて生成した電子30が裏面電極18に移動することを促進させることができる。
本実施形態に係るBHJ太陽電池10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。
BHJ太陽電池10の透明電極12に光(例えば、太陽光)が照射されると、該光は、正孔輸送層14を通過して光電変換層16に到達する。その結果、該光電変換層16において、励起子32が生成する。
生成した励起子32は、ドナードメイン26内を移動して、該ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との界面に到達する。そして、この界面において、電子30と正孔24に分離する。上記と同様に、この中の電子30は、アクセプタドメイン28内を移動し、電子輸送層を経由した後、負極である裏面電極18に到達する。一方、正孔24は、ドナードメイン26内を移動し、正孔輸送層14を経由した後、正極である透明電極12に到達する。
ここで、本実施形態では、光電変換層16中のドナードメイン26が、一般式(16)〜(29)で示すナノグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマー(光電変換材料)からなる。
一般式(18)〜(31)から諒解される通り、ナノグラフェンにおいては、その全体にπ電子雲が広がっている。ドナードメイン26は、このナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーからなる。つまり、ドナードメイン26では、ナノグラフェン単体(モノマー)からなる場合に比して、π電子雲がより一層広範囲にわたって広がっている。
このようにπ電子雲の広がりが大きいドナードメイン26では、極大吸収波長が長波長側にシフトするとともに吸光係数が大きくなる。すなわち、HOMO−LUMO間のエネルギー準位差に相当するバンドギャップが小さくなる。従って、ドナードメイン26において、励起子32の生成が活発となるとともに、太陽光の利用効率が向上する。
さらに、このナノグラフェンポリマーを得る際、主鎖骨格に含まれるπ電子の数を調整することができる。すなわち、ナノグラフェンポリマーのバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を所望の値に調整することができる。これによって、ナノグラフェンポリマーをドナーとして用いる場合では、アクセプタとして用いる物質に応じて、HOMO及びLUMOのエネルギー準位を適切な値に調整することができる。その結果、優れた光電変換効率を示す光電変換層16を容易に得ることが可能になる。
さらに、このナノグラフェンポリマーは、側鎖として可溶性基を備える場合、有機溶媒に一層容易に溶解するようになる。その結果、光電変換層16の成膜作業を容易且つ高精度に行うことが可能になり、BHJ太陽電池10の製造効率及び光電変換効率を良好に向上させることができる。
このため、BHJ太陽電池10では、同一の発電量が得られる他の太陽電池に比して面積を小さくすることができる。従って、重量が低減するので設置場所に加わる負荷が小さくなり、また、設置レイアウトの自由度が向上する。
次に、本実施形態に係る光電変換材料の製造方法、すなわち、ナノグラフェンポリマーの製造方法について説明する。
上記した通り、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(1)、(2)で示すモノマーを重合させて得られたポリフェニレンの反応生成物として得ることができる。以下、図3に示すポリフェニレンaを反応させて、ナノグラフェンポリマーaを得る場合を例に挙げて説明する。
先ず、ポリフェニレンaを得るべく、アルコキシ基(OC10H21)を導入したジベンジルケトンを形成する。具体的には、反応式(32)で示すように、4−ヒドロキシベンゼン酢酸メチルと1−ヨードデカンとを反応させて4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルを得る。
そして、反応式(33)で示すように、4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルに、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)を加え、これによって得られる中間生成物にさらに塩酸を加える。その結果、アルコキシ基を導入したジベンジルケトンとして、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンを形成することができる。
次に、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンと、1,4−ビスベンジルとからアルコキシ基を備える3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)a(一般式(1)で示すモノマー)を得る。具体的には、反応式(34)で示すように、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、1,4−ビスベンジル、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。なお、TritonBは、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムである。これによって、3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)aを得ることができる。
次に、反応式(35)で示すように、上記の通り得られた3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)aと、1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼン(一般式(3)で示すモノマー)をディールスアルダー重合させる。これによって、ポリフェニレンaを得ることができる。この際、アルコキシ基を備える3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)aと、アルキル基を備える1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼンとを反応させることによって、効率的にポリフェニレンaを得ることができる。また、ポリフェニレンaにアルコキシ基及びアルキル基の両方を導入することが可能になり、有機溶媒に対するポリフェニレンaの可溶性を一層高めることができる。
上記のようにして得られたポリフェニレンaを、例えば、反応式(36)で示すように、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させる。その結果、上記のアルコキシ基及びアルキル基が導入されたナノグラフェンポリマーaが得られる。具体的には、このナノグラフェンポリマーaには構造異性体が含まれる。従って、一般式(18)又は(19)のR17、R19、R20、R22にOC10H21が導入され、R23及びR24にC12H25が導入され、R15及びR16にCH3が導入されたナノグラフェンポリマーaを得ることができる。
次に、図4に示すポリフェニレンbを反応させて、ナノグラフェンポリマーbを得る場合を例に挙げて説明する。
なお、ポリフェニレンbと構造異性体の関係にある一般式(8)、(9)に係るポリフェニレンも、ポリフェニレンbと同様にして得られることは勿論である。また、ポリフェニレンbからナノグラフェンポリマーbを得る場合と同様に、一般式(8)、(9)に係るポリフェニレンから、一般式(20)〜(23)に係るナノグラフェンポリマーを得ることができる。
先ず、ポリフェニレンbを得るべく、アルコキシ基(OC10H21)を導入したジベンジルケトンと、アルコキシ基(OC10H21)を導入した1,4−ビスベンジルとを形成する。
具体的には、先ず、上記の反応式(32)、(33)で示す反応を経て、アルコキシ基を導入したジベンジルケトンを得る。
これとは別に、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルを形成するべく、先ず、反応式(37)で示すように、ヨードフェノールとブロモデカンとを反応させて、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンを得る。
次に、反応式(38)で示すように、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンと、1,4−ジエチニルベンゼンとを反応させて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを得る。
次に、反応式(39)で示すように、パラジウム(Pd)錯体等を触媒に用いて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを酸化反応させることでアルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルを得る。
上記のように形成した、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンと、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルとを反応させる。すなわち、反応式(40)で示すように、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジル、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。これによって、アルコキシ基を備える3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)b(一般式(1)で示すモノマー)を得ることができる。
そして、反応式(41)で示すように、3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)bと、4,4’−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ビフェニル(一般式(4)で示すモノマー)とをディールスアルダー重合させる。これによって、ポリフェニレンbを得ることができる。
なお、上記の4,4’−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ビフェニルは、以下のようにして得ることができる。すなわち、先ず、上記の反応式(37)で示すように、ヨードフェノールとブロモデカンとを反応させて、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンを得る。
そして、反応式(42)で示すように、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンと、4,4’−ジエチニルビフェニルとを溶媒中、触媒存在下で反応させる。ここで、溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF:C4H8O)を用いることができる。また、触媒としては、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド((Ph3P)2PbCl2)と、ヨウ化銅(CuI)と、ジエチルアミン(Et2NH)とを用いることができる。これによって、4,4’−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ビフェニルが形成される。
上記のようにして得られたポリフェニレンbを、例えば、反応式(43)で示すように、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させる。その結果、ナノグラフェンポリマーbを得ることができる。すなわち、このナノグラフェンポリマーbは、一般式(20)中のR25〜R32にOC10H21が導入されたナノグラフェンを構成単位とする。
上記の通り、ポリフェニレンa、bには、可溶性基が導入されているため、複数の構成単位間のカップリング(分子間カップリング)が抑制される。従って、例えば、触媒としての塩化鉄の量を調整することで、構成単位内の炭素環を全て反応させつつ、複数の構成単位間に架橋構造が形成されることを抑制できる。これによって、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった炭素縮合環からなるナノグラフェンポリマーa、bを得ることができる。つまり、この炭素縮合環に非局在化しているπ電子の数は、ナノグラフェンポリマーaの主鎖骨格の構成単位中では60であり、ナノグラフェンポリマーbの主鎖骨格の構成単位中では78である。
このように、一般式(1)、(2)で表されるモノマーの重合比、組成及び構造等を調整することによって、ナノグラフェンポリマーのπ電子の数(主鎖骨格に含まれる炭素縮合環の二重結合の数)を容易に調整することができる。
また、ナノグラフェンポリマーの重合度は、例えば、モノマーの比率や、重合反応時の反応時間や反応温度を設定することで調整可能であり、上記したように2〜150とすることが好ましい。これによって、吸光係数が十分に向上した光電変換材料(ナノグラフェンポリマー)を効率よく作製することができる。
図5は、上記のポリフェニレンa及びナノグラフェンポリマーaの1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。スペクトル中、0〜2ppmに現れているピークは、アルコキシ基の水素に由来している。また、6〜8ppmに現れているピークは、フェニル基の水素に由来している。
図5から、ポリフェニレンaのスペクトル中に出現しているアルコキシ基の水素に由来するピークは、ナノグラフェンポリマーaのスペクトル中にも出現していることが分かる。すなわち、上記のように、アルコキシ基を備えるポリフェニレンaを反応させることで、該アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーaが生成されていると判断し得る。
また、フェニル基の水素に由来するピークは、ポリフェニレンaのスペクトル中には出現しているが、ナノグラフェンポリマーaのスペクトル中には出現していない。このため、上記のように得られたナノグラフェンポリマーaでは、ポリフェニレンaの構成単位内のフェニル基が互いに反応して炭素縮合環が形成されていること、つまり、ナノグラフェンポリマーaのπ共役系が十分に拡張されていることが分かる。
図6は、上記のポリフェニレンb及びナノグラフェンポリマーbの1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。スペクトル中、0〜2ppmに現れているピークは、アルコキシ基の水素に由来している。また、6〜8ppmに現れているピークは、フェニル基の水素に由来している。
上記のポリフェニレンa及びナノグラフェンポリマーaと同様、図6から、アルコキシ基を備えるポリフェニレンbを反応させることで、該アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーbが生成されていると判断し得る。また、ナノグラフェンポリマーbのπ共役系が十分に拡張されていることが分かる。
図7は、ポリフェニレンa及びナノグラフェンポリマーaの紫外・可視分光法(UV−Vis)の吸収スペクトルであり、図8は、ポリフェニレンb及びナノグラフェンポリマーbの紫外・可視分光法(UV−Vis)の吸収スペクトルである。
図7及び図8から、長波長側の吸収端が、ポリフェニレンa、bの各々では略330nmであるのに対し、ナノグラフェンポリマーaでは略585nmであり、ナノグラフェンポリマーbでは略650nmであることが分かる。すなわち、ナノグラフェンポリマーa、bでは、ポリフェニレンa、bに比して、極大吸収波長が長波長側にシフトしている。π電子共役系では、その分子量が増え、π電子の数が増大するにつれて、極大吸収波長が長波長側にシフトし、光の吸収領域が可視光側へ広くなる。従って、図7及び図8からも、ナノグラフェンポリマーa、bは、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった炭素縮合環からなり、π共役系が十分に拡張されていると判断し得る。
ナノグラフェンポリマーa、bの他にも、一般式(1)、(2)で示すモノマーの重合時のモル比や、組成及び構造等を調整することで、種々の構成単位からなるナノグラフェンポリマーを得ることができる。
例えば、一般式(18)で示すナノグラフェンのR15〜R24が全て水素(無置換)であるナノグラフェンポリマー(以下、ナノグラフェンポリマーcともいう)を得る方法について説明する。この場合、上記のナノグラフェンポリマーaを得る工程において、反応式(35)で示す反応中の3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)aに代えて、無置換の3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)を用いればよい。
すなわち、無置換の3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)と、1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼン(一般式(3)で示すモノマー)をディールスアルダー重合させることでポリフェニレンcを得る。そして、このポリフェニレンcを塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いてさらに反応させることでナノグラフェンポリマーcを得ることができる。
また、一般式(18)で示すナノグラフェンのR17〜R19、R20〜22にアルキル基として、オクチル基を有するナノグラフェンポリマーdを得る方法について説明する。この場合、上記と同様にポリフェニレンcを得た後、該ポリフェニレンcの側鎖にアシル基を導入する。具体的には、一般式(6)中のR17〜R19及びR20〜R22にアシル基を導入する。このためには、例えば、反応式(44)で示すように、カルボン酸塩化物をアシル化剤とし、塩化アルミニウム(AlCl3)を触媒として、ポリフェニレンcをアシル化する。
次に、アシル基が導入されたポリフェニレンcを、例えば、反応式(45)で示すように、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)及び塩化アルミニウムを還元剤として還元する。これによって、一般式(6)中のR17〜R19及びR20〜R22にオクチル基が導入されたポリフェニレンdが得られる。
反応式(46)で示すように、ポリフェニレンdを塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させることでナノグラフェンポリマーdを得ることができる。
図9に、上記のナノグラフェンポリマーa、b、c、d、P3HT、PCBMのそれぞれについて、紫外・可視分光法(UV−Vis)、光電子収量分光法(PYS)を用いて測定したHOMO及びLUMOのエネルギー準位を示す。
図9に示すように、HOMOとLUMOとのエネルギー準位差であるバンドギャップは、ナノグラフェンポリマーa、b、c、dがそれぞれ2.1eV、1.9eV、2.0eV、2.0eVであり、P3HTが2.2eVである。従って、ナノグラフェンポリマーa〜dのバンドギャップのそれぞれは、P3HTのバンドギャップに比して、小さいことが分かる。
また、LUMOのエネルギー準位は、ナノグラフェンポリマーa、b、c、dがそれぞれ約−3.2eV、−3.2eV、−3.9eV、−3.5eVであり、P3HTが約―2.5eVである。従って、ナノグラフェンポリマーa〜dのそれぞれのLUMOのエネルギー準位は、P3HTに比して低く、PCBM(フラーレン誘導体)のLUMOのエネルギー準位に近い。この理由は、ナノグラフェンポリマーa〜dの構成単位であるナノグラフェンa〜dが炭化水素炭素環を基本骨格とする炭素縮合環であり、PCBMの構造に類似するためであると推察される。このため、ナノグラフェンポリマーa〜dをドナーとし、PCBMをアクセプタとして光電変換層16を形成したBHJ太陽電池10では、P3HTをドナーとする場合に比して、開放電圧Vocを大きくすることができる。
また、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、アクセプタとして用いられる種々の物質に対して、最適な光電変換効率を示すようにナノグラフェンポリマーのπ電子の数を調整することができる。これによって、優れた変換効率を示す光電変換層を容易に形成することが可能になる。
なお、ナノグラフェンポリマーをアクセプタとして用いる場合も同様に、種々のドナーに対応して最適な値となるようにバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。
上記のナノグラフェンポリマーをドナーとして含む光電変換層16は、以下のようにして形成することができる。先ず、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン等の適切な溶媒に、ナノグラフェンポリマーとPCBMとを混合して、又はそれぞれ個別に添加する。ナノグラフェンポリマー及びPCBMは有機溶媒に良好に溶解するため、混合溶液を容易に調整することができる。
次に、この混合溶液を、スピンコーティング、インクジェット印刷、ローラキャスティング、ロールツーロール法等のいずれかの手法によって、正孔輸送層14上に塗布する。
次に、該正孔輸送層14上の混合溶液を加熱すると、該混合溶液が硬化し、光電変換層16が得られる。必要に応じて、アニール処理を施すことでドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離をさらに促進することが可能である。その結果、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28の接合界面の面積が増大し、発電性能を向上させることも可能である。
ドナーとしてモノマーを用いる場合、モノマーが有機溶媒に溶解し難いことから、光電変換層16を得る際に上記したような手法を採用することは困難である。これに対し、本実施形態では、上記のように可溶性基が導入されたナノグラフェンポリマーをドナーとして用いる。ナノグラフェンポリマーが所定の溶媒に容易に溶解することから、上記したプロセスによって、光電変換層16を容易且つ簡便に、しかも、低コストで形成することが可能である。また、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離を一層良好に促進することができるため、BHJ太陽電池10の光電変換効率を向上させることができる。
以上の通り、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーは、π電子雲の広がりが大きいπ共役系からなるため、吸光係数が大きい。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、バンドギャップが小さく、HOMOのエネルギー準位が低い。すなわち、LUMOのエネルギー準位が、PCBMのLUMOのエネルギー準位に近い。
このため、ナノグラフェンポリマーをドナー、PCBMをアクセプタとしたBHJ太陽電池10では、励起子32が活発に生成される。また、開放電圧Vocが大きくなる。従って、光電変換効率を良好に向上させることができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
上記した実施形態では、一般式(1)、(2)で示すモノマーから、一般式(18)〜(31)で示すナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーを得る例について説明した。しかしながら、特にこれらに限定されるものではなく、必要なバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー順位)に応じて適当なπ電子の数のナノグラフェンポリマーを得ることができる。
また、上記した実施形態では、側鎖の可溶性基として、直鎖アルコキシ基(OC10H21)を備えるナノグラフェンポリマーa、bを得る例について説明した。この直鎖アルコキシ基に代えて、分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを得る場合、以下に示すようにすればよい。
すなわち、上記のナノグラフェンポリマーaを得る工程のうち、反応式(32)で示す反応中の1−ヨードデカンに代えて、2−エチルヘキシルヨージドを用いる。これによって、ナノグラフェンポリマーaの直鎖アルコキシ基に代えて、分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを得ることができる。
また、上記のナノグラフェンポリマーbを得る工程のうち、反応式(37)で示す反応中のブロモデカンに代えて、2−エチルヘキシルブロミドを用いる。これによって、ナノグラフェンポリマーbの直鎖アルコキシ基に代えて、分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを得ることができる。
また、上記した実施形態では、一般式(2)で示すモノマーが、一般式(3)〜(5)で示すモノマーである場合を例に挙げて説明したが、とくにこれらに限定されるものではない。例えば、一般式(2)で示すモノマーとして、一般式(47)〜(50)で示すモノマーを採用してもよい。
ただし、一般式(47)、(50)中のR73、R74、R77、R78は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表し、一般式(49)中のR75及びR76は、それぞれ独立にアルキル基を表す。
一般式(1)に対して、一般式(47)〜(50)で示すモノマーのそれぞれを1:1のモル比で重合させた場合、一般式(51)〜(54)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンを得ることができる。
ただし、一般式(51)〜(54)中のR79〜R104は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R79〜R104の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表し、一般式(53)中のR75及びR76は、それぞれ独立にアルキル基を表し、一般式(54)中のR77及びR78は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。
このポリフェニレンをさらに反応させることで、一般式(55)〜(58)で示すナノグラフェンを構成単位とし、それぞれのπ電子の数が52、68、60、54であるナノグラフェンポリマーを得ることができる。
ただし、一般式(55)〜(58)中のR105〜R130は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R105〜R130の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表し、一般式(57)中のR75及びR76は、それぞれ独立にアルキル基を表し、一般式(58)中のR77及びR78は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。
また、上記した実施形態では、一般式(10)で示す化合物の一例として、一般式(12)〜(14)で示す化合物を例示したが、この他にも、例えば、一般式(59)〜(61)で示す化合物を挙げることができる。
ただし、一般式(59)〜(61)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。
一般式(59)〜(61)で示す化合物のそれぞれは、一般式(12)〜(14)で示す化合物と異性体である。従って、一般式(59)〜(61)に係るポリフェニレンも、一般式(12)〜(14)に係るポリフェニレンと同様にして得ることができる。
また、一般式(59)〜(61)に係るポリフェニレンのそれぞれが反応して得られるナノグラフェンポリマーの一例として、一般式(62)〜(64)で示すナノグラフェンを構成単位とするものが挙げられる。
ただし、一般式(62)〜(64)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。
また、上記した実施形態では、光電変換層16にドナーとアクセプタが混在するBHJ太陽電池10を例示して説明している。しかしながら、ナノグラフェンポリマー(光電変換材料)は、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成された光電変換層を有する平面ヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池に用いることもできる。この場合、ドナーからなる層を、ナノグラフェンポリマーから形成するようにすればよい。
また、この実施形態では、ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のドナーとして用いる例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のアクセプタとして採用することも可能である。
さらに、ナノグラフェンポリマーの用途は、有機薄膜太陽電池の光電変換層16に限定されるものではない。例えば、光センサに採用することも可能である。
光電変換層のドナーに上記のナノグラフェンポリマーaを採用し、アクセプタにPCBMを採用してBHJ太陽電池セルを作製した。
具体的には、先ず、ITO電極がパターニングされたガラス基板を洗浄し、該基板をスピンコータに固定する。次に、基板上にPEDOT:PSS水分散液を滴下し、4000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の正孔輸送層を形成する。
これとは別に、図3に示す構成単位からなるナノグラフェンポリマーa4mgと、PCBM16mgとを、1.0mlのオルトジクロロベンゼンに溶解させて混合溶液を調整する。
この混合溶液を、グローブボックス内に設置したスピンコータに固定した上記基板の正孔輸送層上に滴下し、1000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の光電変換層を形成する。
次に、真空蒸着装置内に、上記のように正孔輸送層及び光電変換層を形成した基板をセットし、該光電変換層上にバトクプロインやフッ化リチウム等を電子輸送層として蒸着する。さらに、電子輸送層上に200nmの膜厚となるようにアルミニウム電極を蒸着して、BHJ太陽電池セルを得た。
このBHJ太陽電池セルについて発電性能を測定した結果を図10に示す。なお、発電性能は、疑似太陽光として、エアマスフィルタを装着したソーラーシミュレータの光AM1.5G(100mW/cm2)をBHJ太陽電池セルに照射して行った。すなわち、BHJ太陽電池セルに対して、ソースメータユニット(Kethley2400)を用いて電圧を印加しつつ、上記の光照射時に流れる電流の測定を行った。そして、この測定結果から、短絡電流密度Isc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FF、光電変換効率(%)を求めた。
図10に示すように、BHJ太陽電池セルでは、短絡電流密度Iscが3.27mA/cm2、開放電圧Vocが0.80V、曲線因子FFが0.5であり、光電変換効率が1.3%であった。
従って、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーaをドナーとするBHJ太陽電池では、開放電圧Vocが大きく、十分な光電変換効率が得られることが確認された。すなわち、発電性能を良好に向上させることが可能である。