本発明は、厚み方向に多層構造を有するレンズおよびその製造方法に関するもので、多段階で層ごとに重合するに際して、スピンキャスト製法とモールド製法を組み合わせたことを特徴とする。以下、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。
本発明ではレンズが多層構造を有するように、少なくとも2段階の重合工程を経て製造される。図1には、2層構造のレンズを製造する工程が示されている。まずスピンキャスト製法により第一層を形成する。(a)工程において、凹型(10)には第一重合性組成物(1)が充填される。この凹型によって基本的にはレンズの外表面(フロントカーブ)が形成される。「基本的に」とは、凹型の内面カーブをより曲率半径の大きなカーブのもので成形し、凹型を外してからレンズが所望のフロントカーブになるように切削・研磨することも可能だからである。
凹型に充填された第一重合性組成物は、凹型を回転させつつ、酸素を0.1〜3%の濃度範囲で含むガス雰囲気下で重合される((b)工程)。図では(L1)を凹型の回転軸としてスピンキャスト製法により重合が進行することが示されている。本発明の一つの特徴は所定の重合段階においては、酸素を敢えて適当な濃度で存在させつつ重合を行う点である。
通常、酸素は重合を阻害するとして殆ど無いか極めて低濃度の状態になるように管理される。例えば、モールド製法によってコンタクトレンズを自動成形する装置に関する公報(特許文献3)には、段落74に「酸素は上記したように重合に有害な影響を与えるので取り除かれる。」旨が記載され、レンズを成形する前に実質的にすべての酸素を型材料から除去することでレンズの表面特性が改良される発明(特許公報4)等もある。
一方、大気環境でのコンタクトレンズの製造方法に関する発明(特許文献5)や所定の酸素曝露量によるコンタクトレンズの製造方法に関する発明(特許文献6)のように、一見すると酸素の共存が好ましいと受け取れるような公報も存在する。しかし、これらの発明では、制限された短時間内に「型」を酸素を含む環境に曝すことによって、レンズ表面にボイドの形成が少なくなるなどの効果を狙ったものであり、前記の各発明(特許文献3及び4)の記載と同様に、酸素が重合物に悪影響を及ぼさない範囲内で利用されているのである。
すなわち、本発明では重合物に対して悪影響があるとされる酸素を所定の濃度に調整しつつ、前記(b)工程が行われることによって、第一重合性組成物の酸素と触れる露出面側の重合が遅れたゲル状であり、特に、レンズ最先端のエッジ部分は非常に薄いため、形が定まらない状態である。この時点において、酸素は重合物に明らかに悪影響を与えているのである。しかし、次いで、(d)工程にて重合すると、第一重合性組成物の重合が遅れていた部分が第二重合性組成物と一緒に重合して硬化し、先に形成された層と後に形成された層との結合力が高まる。さらに、均一で高品質の統合した1つのエッジが形成され、完成品としたときの良品率向上に寄与する利点も有するのである。即ち、(b)工程で酸素が重合物に悪影響を与えたことを(d)工程で逆利用した点に、本願発明の驚くべき新機軸とその卓越した効果が認められるのである。
このような(b)工程における酸素濃度は、0.1〜3%、好ましくは0.2〜2%、より好ましくは0.3〜1%の範囲に調整される。前記範囲より少ない場合は第一重合性組成物の重合がエッジ部分でも過度に進行し、形を有するほどに硬化するおそれがあり、酸素濃度が多すぎると第一重合性組成物の重合が相当程度に妨げられ、重合しないおそれがあるため注意が必要である。なお(b)工程のガス雰囲気下において、酸素と共存させるガスとしては、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを使用する。
前記(b)工程の後、第一重合性組成物重合体の露出面に対して、第二重合性組成物(2)を充填する((c)工程)。この充填工程ではできるだけ酸素のない不活性ガス雰囲気下で行う、または、大気環境で素早く行うことが好ましい。第二重合性組成物の重合に際しては、酸素は重合物に明らかに悪影響を与えるものとして好ましくないからである。
第一凸型(20)を前記第二重合性組成物(2)の上から前記凹型(10)に嵌め合わせた後、第二重合性組成物を重合する((d)工程)。第一重合性組成物重合体を被覆するように第二重合性組成物を重合して、二層構造のレンズを得ることができる。この重合工程は通常のモールド製法と同様であり、留意すべき点として第二重合性組成物の重合収縮がある。液体状態である組成物(モノマー等)が重合して固体へと状態が変化するに際して、構成分子或いは原子間距離が相対的に接近し、全体の体積が収縮するからである。この課題の解決策としては、重合収縮に追随するように可撓性の凸型或いは可撓性のリムを備えた凸型を用いる方法や、重合に関与しない溶媒等を使用して重合収縮を吸収するようにした置換可能な不活性希釈剤を用いる方法、重合収縮を補償するために予めレンズ形成空間よりも余分な材料を収容する押湯を有する凸型を用いる方法および、凹凸何れかの型のレンズエッジ形成部分の先端を他方の型に食い込ませて重合物のレンズ部分と不要部分とを分離させる方法などを採用することができる。
前記の第二重合性組成物と第一重合性組成物は、異なる組成物であるとは限らない。例えば、後述する虹彩付きレンズを製造するような場合であれば、第一重合性組成物重合体の露出表面に着色成分を塗布した後に第一重合性組成物と同じ組成物を第二重合性組成物として使用することもあるからである。一方、多焦点レンズを作成するような場合には、各重合性組成物はそれぞれ異なる屈折率の重合体を形成させることが望まれるため、必然的に異種の重合性組成物を使用することになる。
異種の重合性組成物を組み合わせる例として、屈折率以外にそれぞれの層の硬さが異なるレンズを製造することもできる。従来、中心部分がハードレンズで、周辺部分をソフトレンズにするという二種材が提案されている。このような二種材の特徴は、視力矯正に優れるハードで中心部を形成すると同時に、周辺部分をソフトにして装用感を向上させ、ハードレンズとソフトレンズの長所を併せ持つレンズが提供されることにあった。その製造方法は種々のものがあるが、基本的には中心部と環状周辺部という材料の分布を有するものであった。
前記二種材には二つの課題がある。一つには、レンズをいかにして外すのか、二つには、異種の材料を接合する面積が小さいために両材料の結合力が弱い、ということである。レンズの外し方として、一般にハードレンズは上下のまぶたを中心に向けて寄せ集めるようにして外すが、これはレンズのエッジ部が硬いから可能なのである。一方、ソフトレンズはレンズを親指と人差し指で挟むように折り曲げて、眼から外す。しかし、二種材を外す際は、ソフトレンズのように折り曲げるにはハード部分が邪魔をして思うように挟めず、周辺部がソフトのためハードレンズのようにまぶたの力で外すことも困難である。
それに対して、本発明の製造方法によって得られる、各層の硬さが異なるレンズを製造した場合について説明する。ソフトレンズがハードレンズよりも視力矯正に劣るのは、ソフトレンズが角膜表面の凹凸に倣ってしまうからである。すなわち乱視矯正力に劣る。そこで、本発明のレンズ内面側を硬めの層で、レンズ外面側をソフトな層に製造する。レンズ内面側の硬さによって、角膜の凹凸に倣うことが防止され、レンズ内面と角膜の間に涙液を溜めて視力を矯正することができる。
一方、レンズ外面側をソフトにすることでレンズの装用感を維持し、レンズを外す際にも挟める程度にレンズ全体としては柔軟性を示すようにすることができる。また、レンズ外面側を硬めの層で、レンズ内面側をソフトな層に製造することも可能である。さらに、各層の性質が異なるレンズ、例えば、酸素透過性が優れたシリコーンヒドロゲル層を、生体親和性に優れたN−ビニルピロリドンや2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のモノマーを主成分としたヒドロゲル層でサンドイッチ状に覆ったレンズも容易に製造できる。
しかも、レンズの中心部とその周辺部とを異種素材で接合させた多種材のように各素材の接合面が狭いわけではなく、厚み方向に層状構造を有するために、両材料の接合力は飛躍的に向上される。このように視力矯正、装用感、レンズの外し易さ、耐久性および酸素透過性など、総合的に優れたレンズを設計することができるのである。
本発明の厚み方向に多層構造を有するレンズを製造する上で容易に理解できるように、各層が重ね合わされて重合後のレンズ製品の厚みとなるため、通常、各段階で重合される層の厚みはそれぞれが重合後のレンズ製品よりも薄くなるように重合されるが、(b)工程のスピンキャスト製法は、充填する液量と回転速度を定めるのみで容易に3μm程度の薄い重合物を製造できる長所を有している。
一方、モールド製法は、一般的に、型はプラスチックから成形されるが、プラスチックは成形上超精密な精度が得難いため、雄雌両型間のレンズを形成する空間の精密な制御が難しく、そのため、重合物の厚みを10μm以下にすることは難しい。従って、酸素透過性が優れたシリコーンヒドロゲル層を、生体親和性に優れたN−ビニルピロリドンや2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のモノマーを主成分とした薄いヒドロゲル層でサンドイッチ状に覆う場合などには、(b)工程のスピンキャスト製法は有利である。なお本明細書において、「重合後のレンズ製品」とは、最後の重合工程が終了して型を開いたときのレンズをいい、その後に水和処理等を行って膨潤させ、患者の眼に装用できる状態の「レンズ完成品」とは区別している。
ところで、第一重合性組成物重合体を(b)工程のスピンキャスト製法で薄くかつ均一に製造するには、型を芯ずれなく滑らかに回転させるのみでなく、液が型に斑なく均一に分布する必要がある。型と液の極性が異なると、表面張力により液は水滴の様に丸くなり、回転により型より外へ放出されることもある。従って、親水性のN−ビニルピロリドンや2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のモノマーを主成分としたヒドロゲル層を(b)工程のスピンキャスト製法で製造する際に、型材がポリプロピレン等の疎水性材料の場合は、プラズマ処理等にて、事前に型のレンズ形成面を親水化することが望ましい。さらに、型のレンズ形成表面を重合性組成物でなじませることも望ましい。
第一重合性組成物重合体に第二重合性組成物を接触させると、第一重合性組成物重合体に第二重合性組成物の一部が浸み込むことになる。そこで第二重合性組成物を重合させると、両層間が剥がれない強い強度が得られる。また、(b)工程にて、第一重合性組成物重合体のエッジ部分の重合が不十分で形が形成されていないと、(d)工程にて、エッジ部分は嵌合された凹型と第一凸型との間隙の形状となり、第一と第二の重合性組成物の混合・統合した滑らかな形に(d)の重合工程で容易に形成されるのである。
なお、エッジを全周に亘って均一かつ高品質に製造するには、凹型と第一凸型とが嵌合された際にレンズ形成域外に排出された第二重合性組成物も同時に重合することが好ましい。これによって、レンズ域内の第二重合性組成物が斑なく均一に重合するからである。
本発明では、前記凹型の凹面は重合後のレンズ製品の外面を、前記第一凸型の凸面は重合後のレンズ製品の内面をそれぞれ形成する。しかし、重合後のレンズ製品を切削・研磨などによって仕上げることも可能である。そのような場合には、(d)工程後に型を開く際に、重合後のレンズ製品が、選択的に一方の型に固定されていることが好ましい。切削加工される側の面を形成している型を外しておく必要があるからである。
このような選択性を確実にコントロールする方法としては、(I)型材料と各層を形成する組成物との接着力が高い材料を、固定させたい側の型材料として採用し、他方を接着力が低い材料から成形する方法(例えば、含水性のレンズを製造する場合には、重合性組成物には親水性のモノマー等が配合されているため、固定させる型材料をポリアミドなどの親水性型材料で作成し、露出させる型材料をポリプロピレンなどの疎水性型材料で作成するなど)がある。また、(II)凹型と第一凸型の型材料を同じもので作成し、一方の型表面に何らかの処理(例えばプラズマ、UV照射、コロナ放電、レーザー或いは、界面活性剤を塗布するなど)を施して接着しやすくする、又は離型しやすくする方法でもよい。或いは、(III)常に一方の型に選択的に固定するような型を開く方法(例えば、凹型から第一凸型へと温度勾配を持たせて型を開くと、熱の低い方に選択的に重合後のレンズ製品が残るようにする方法)を採用してもよい。前述したコントロールの方法は、より確実に制御することが可能となる技術であり、切削により仕上げること自体の採否を含め、コスト等総合的な判断から決定すれば良い。
以下では3層以上のレンズを製造する場合について詳しく説明する。
本発明の別の態様として、前記(b)工程と(c)工程の間に、以下の工程を介在させることにより3層構造のレンズが製造できる。図2(e)には、(b)工程後の第一重合性組成物重合体(1)の露出面(凹面)に第三重合性組成物(3)を充填する工程が示されている((e)工程)。図から明らかなように、この(e)工程は実質的には前記(c)工程と同様である。
図2(f)に示すように、(e)工程ののち、凹型(10)を(L2)を中心軸として回転させつつ、酸素濃度0.1〜3%を含むガス雰囲気下で第三重合性組成物を重合させる((f)工程)。(f)工程も実質的には(b)工程と同様である。
図中、中心軸L3とL4は同一であっても、また異なる位置関係に有っても良い。図3には、(b)工程、(f)工程のそれぞれについて、中心軸を偏心させた場合について示している。凹型(10)の直径方向について一端を(12)、他端を(13)とし、(b’)工程では軸Lを(12)に沿って、(f’)工程では軸Mを(13)に沿ってそれぞれ回転させて重合させている((b’)工程は(b)工程の変形例、(f’)工程は(f)工程の変形例である)。このような偏心回転によって、レンズの径方向に沿って異なる重合体から構成されたレンズを得ることができる。例えば屈折率が異なる材料で構成したり、硬さが異なる材料で構成したりするなど、従来公知のレンズ材料を使用しつつ、機能が付与された新規なレンズを製造することができるのである。なお、中心軸の位置関係の組み合わせは前記のみに限定されるものではない。
本発明の他の態様として、前記(a)〜(d)工程の後、前記凹型(10)に各重合体(1,2)を付着させた状態で前記第一凸型(20)を分離する工程が図4(g)に示されている((g)工程)。そして第二重合性組成物重合体(2)の上に、第四重合性組成物(4)を充填する工程((h)工程)、第二凸型(22)を第四重合性組成物(4)の上から前記凹型(10)に嵌め合わせた後、前記第四重合性組成物を重合する工程((i)工程)が、それぞれ図4(h)及び(i)に示されている。この方法によっても(e)工程及び(f)工程を介在させたときと同様に、3層構造のレンズを得ることができるのである。
さらに前記(e)、(f)工程を介在させた(a)〜(d)工程の後に、前記凹型(10)に各重合体(1,3,2)を付着させた状態で前記第一凸型(20)を分離する工程((g’)工程)が図5(g’)に示されている。そして第二重合性組成物重合体(2)の上に、第四重合性組成物(4)を充填する工程((h’)工程)、第二凸型(22)を第四重合性組成物(4)の上から前記凹型(10)に嵌め合わせた後、前記第四重合性組成物を重合する工程((i’)工程)が、それぞれ図5(h’)及び(i’)に示されている。この方法によれば4層構造のレンズを得ることもできるのである。
以下同様な工程を繰り返せば、その工程数に応じてより多層構造のレンズを得ることができるが、あくまで得ようとするレンズの必要性等とコスト等の兼ね合いで決めることである。
こうして得られる、3層構造のレンズの好適な例としては、酸素透過性の高い材料を使用した中間層と、親水性材料で表面層を構成したレンズがある。酸素透過性の高い素材はシリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート等のモノマーやシリコーン含有マクロマーなどを使用することで得られるが、これらは一般に表面の撥水性が問題となる。そこで、この材料を中間層としレンズ表面には、親水性を示すモノマー等を使用する。このような構成によって、酸素透過性が高く、表面親水性に優れた理想のレンズを提供することができるのである。
以上の工程において、本発明に使用する型の材料は、汎用の熱可塑性樹脂から成形され、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル等が使用可能である。これらの樹脂を組み合わせて各型に使用することも、また、同じ樹脂材料で成形された型を使用することもできる。樹脂としては、ポリプロピレン、ポリスチレンやポリアミド等が価格、透明性、成形性に優れる等の理由で好ましく用いられる。また各型の成形方法としては射出成形の他、圧縮成形、真空成形など公知の方法が適宜採用可能である。
また、本発明の重合性組成物には従来公知のモノマー等を使用することができ、例えば含水性ソフトレンズを得る場合には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸等が、また非含水性ソフトレンズを得るにはガラス転移点の低い高分子重合体を与えるモノマー、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ〉アクリレート等が使用できる。酸素透過性の素材としては、シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート等のモノマーやシリコーン含有マクロマーなどが前記モノマー等と組み合わせて用いることができる。第一、第二、第三、或いは第四重合性組成物のいずれも必須のモノマー等がある訳ではなく、得ようとするレンズ製品に応じて種類、組成比などが適宜選択可能である。なお、上記モノマー等は本発明に使用できるモノマー等の一部を例示したものにすぎず、本発明に使用できるモノマー等を限定するものではないことは言うまでもない。
本発明における各重合性組成物の重合については、公知の方法を採用できる。例えば、加熱による熱重合や、紫外線のような光を照射した光重合、これらの併用などである。熱重合は、室温付近から徐々に昇温し、数分乃至数時間で30〜120℃の温度範囲の熱をかける。熱重合開始剤としては、過硫酸塩や過酸化物、アゾ系開始剤などが挙げられる。一方、光重合の場合には、紫外線、電子線などの活性エネルギー照射により重合を進行させる。光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤等が挙げられる。これらの重合法および開始剤の選択は、重合性組成物と型材料などを考慮して適宜選択することができる。
スピンキャスト製法またはモールド製法はそれぞれほぼ確立された技術であり、現在においてはソフトレンズの製造方法として一般的に使用されている。これらの製法を使用して低価格でレンズが提供できるようになると、市場でのレンズの差別化のために新しい機能を付加したり、新規なレンズ素材を提案することが求められるようになる。本発明では前記の通り、両製法をうまく組み合わせることにより多層構造のレンズを高い良品率で得ることに成功したものである。
レンズの付加価値を高める例としては、瞳の色又は質感を他覚的に変化させるカラーレンズもある。虹彩付きレンズとも呼ばれるが、本発明を利用すればこのようなレンズを提供することもできる。以下ではカラーレンズの製造法について説明する。
簡易的には、図1において、(b)工程後の第一重合性組成物重合体1の露出面(6)に第二重合性組成物を充填する前に、所望のデザインで着色成分を塗布すれば良い。デザインは、ドット、線、平面のいずれか若しくはこれらの組み合わせで構成され、単に着色する他に、文字、図形、記号、虹彩模様などを表すこともできる。塗布方法は、従来の方法が適宜採用でき、例えば、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷などがある。いずれの塗布方法を選択するかは、着色成分の物性や第一半製品の物性、凸面か凹面かなどを勘案して定められる。第一重合性組成物重合体1の露出面へ塗布したのち、第二重合性組成物の添加によって着色成分が分散しないように固定することが望ましい。着色成分の固定方法は、各種(加熱、乾燥、電子線照射など)の方法があり、これも適宜選択可能である。
虹彩付きレンズの製造に際しては、レンズ装用者の虹彩を隠蔽して、瞳の色や質感を他覚的に変化させるために、不透明材料としてカーボン系着色剤、金属酸化物系着色剤、フタロシアニン系着色剤など、流動性を制御するための増粘剤などが着色成分に添加される。さらに、モノマー等を添加して、重合性組成物重合体とより強固に結合させることができる。重合性組成物重合体によって完全にサンドイッチ構造となるので、着色成分の溶出などは効果的に抑制される。しかし、着色成分を介して重合性組成物重合体が隔てられていることを考慮すると、モノマー等を添加しておくことが好ましい。
前記不透明材料を添加しないで、着色透明レンズを製造することも勿論可能である。全体を同一色に着色する場合は、初めから第一及び(または)第二重合性組成物に透明な着色剤を添加すれば済むが、部分的に異なる色に着色したい場合や、文字、図形などをレンズ全体に現したい場合には、本発明の製造方法が有効である。前記塗布工程をレンズ製造ラインの中に組み込むか否かは、状況に応じて切り替えることができる。通常は透明レンズを製造しつつ、例えば、装用者のオーダーメイドでキャラクターなどをレンズに表現するといった対応が可能であるため、在庫管理の必要がなく、レンズの付加価値を高めることが容易となる。
以上がいわゆる2層構造のレンズに着色する場合である。当然、3層或いは、それ以上の層構造を有するレンズに対しても着色可能である。例えば、図2の(f)工程後の第三重合性組成物重合体の露出面(7)や、図4の(g)工程後の第二重合性組成物重合体の露出面(8)、図5の(g’)工程後の第二重合性組成物重合体の露出面(9)のいずれか一つ以上に着色成分を塗布して、その後の工程を経ることによって着色成分がレンズ素材内に完全に埋め込まれた構造のレンズを得ることができるのである。なお3層以上の構造のレンズの場合に、各層間に着色成分を塗布すれば、より複雑な色彩や模様を形成し表現することも可能であり、より繊細なデザインを有するレンズの提供が可能である。
以下に幾つかの実施例を示して、本発明をより具体的に明らかにする。
酸素プラズマ処理した PP製凹型に第一重合性組成物(2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)59w/w%、グリセロールメタクリレート(GMA)30w/w%、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)0.5w/w%、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(HMPP)0.5w/w%、グリセリン(溶媒として添加)10w/w%)を100μl入れ、型をゆっくり回して型のレンズ形成面全体に第一重合性組成物をなじませた後、第一重合性組成物を大部分除去し、10μl程残した((a)工程)。この凹型を回転装置に載せ、380rpmで回転させ、雰囲気を0.5%の酸素を含む窒素ガスに変換して5分後から、光(365nm、1.5mW/cm2)を5分間照射し、第一重合性組成物を重合させた((b)工程)。
第一重合性組成物重合体の露出表面に図6のように光遮蔽物質(2−HEMA30 %、酸化鉄40%、酸化チタン20%、増粘剤10%)を鱗状に厚み10μmになるように印刷し、送風器中で10分間約25℃にて放置した。塗布した光遮蔽物質の表面は乾燥したように観察された。
さらに第一重合性組成物と同じ組成の第二重合性組成物を第一重合性組成物重合体の露出表面に25μl入れ((c)工程)、上から第一凸型を嵌め合わせて、第一凸型から凹型に向かって光(365nm、 3mW/cm2)を5分間照射し、第二重合性組成物を重合させた((d)工程)。両型を分離したところ、重合物はプラズマ処理した凹型に付着していた。重合後のレンズ製品8個をそれぞれ精製水5mlに浸漬すると、含水して膨潤し型から外れた。含水・膨潤して軟らかくなった製品を新たな精製水5mlに10分間室温で浸漬した。新たな精製水5mlに10分間室温で浸漬する操作を5回繰り返し、製品内の溶出性成分を除去し、塩化ナトリウムを0.9w/w%とエチレンジアミン4酢酸3ナトリウムを0.03w/w%とを加えた精製水1ml入りPP製容器内の窪みに入れ、多層フィルムで容器の窪みをシールし、121℃で20分間オートクレーブ滅菌した。冷後、多層フィルムを剥がし、レンズ完成品を検査したが、設計通り度数−3.00D、中心厚み0.11mm、直径14.2mmでレンズ周囲の形状が良好な良品レンズが8枚得られた(良品率100%)。
(比較例1)
実施例1と同様にして8枚のレンズ製作を試みた。但し、第一重合性組成物の重合時には、5%の酸素を含む窒素ガス雰囲気とした。この場合、光を5分間照射した後の第一重合性組成物は硬化せずに液状のままであり、光遮蔽物質を印刷できなかった。
(比較例2)
実施例1と同様にして8枚のレンズ製作を試みた。但し、第一重合性組成物の重合時には、100%窒素ガス雰囲気とした。3枚は実施例1と同様に、レンズ周囲の形状が良好な良品のレンズが得られた。しかし、5枚は、レンズ周囲の形状が滑らかでなかったり、内側又は外側に湾曲し、不良品と判定され廃棄せざるを得なかった(良品率37.5%)。
実施例1と同様にして8枚のレンズ製作を試みた。実施例1と同様にして、第一重合性組成物を重合し、着色成分を塗布し、その露出面上に、第三重合性組成物(ビス(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(Mn=約6500)30w/w%,トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート30w/w%,ジメチルアクリルアミド39w/w%,EDMA0.5w/w%,光重合開始剤(HMPP)0.5w/w%)を10μl入れ((e)工程)、この凹型を前記回転装置に載せ、380rpmで回転させ、雰囲気を0.5%の酸素を含む窒素ガスに変換して5分後から、光(365nm、1.5mW/cm2)を5分間照射し、第三重合性組成物を重合させた((f)工程)。
第三重合性組成物重合体の露出表面にさらに光遮蔽物質(2−HEMA30%、酸化鉄40%、酸化チタン20%、増粘剤10%)を厚み10μmにて印刷し、送風器中で10分間約25℃にて放置した。塗布した光遮蔽物質の表面は乾燥したように観察された。
さらに第一重合性組成物と同じ組成の第二重合性組成物を20μl入れ((c)工程)、実施例1と同様にして第二重合性組成物を重合させ((d)工程)、両型を分離し、レンズを水和・溶出処理・滅菌した。レンズ完成品を検査したが、設計通り度数−3.00D、中心厚み0.11mm、直径14.2mmでレンズ周囲の形状が良好なシリコーンヒドロゲルを2−HEMA系の材料でサンドした良品レンズが8枚得られた(良品率100%)。このレンズの酸素透過性は実施例1のレンズより高く、表面の親水性は実施例1のレンズと同様であった。また、このレンズを装用した人の目は、実施例1のレンズを装用した場合に比較し、より自然でより深みがあり大きく見えた。
実施例1と同様にして8枚のレンズ製作を試みた。実施例1と同様にして、第一重合性組成物を重合し、その露出面上に第二重合性組成物(ビス(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(Mn=約6500)30w/w%,トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート30w/w%,ジメチルアクリルアミド39w/w%,EDMA0.5w/w%,光重合開始剤(HMPP)0.5w/w%)を25μl入れ((c)工程)、上から第一凸型を嵌め合わせ、実施例1と同様にして重合させた((d)工程)。
凹型と第一凸型とを分離すると、レンズはプラズマ処理した凹型に付着していた((g)工程)。第二重合性組成物重合体の露出面上に、第一重合性組成物と同じ組成の第四重合性組成物を25μl入れ((h)工程)、実施例1の第二重合性組成物と同様にして第四重合性組成物を重合させ((i)工程)、両型を分離し、レンズを水和・溶出・滅菌した。レンズ完成品を検査したが、設計通り度数−3.00D、中心厚み0.11mm、直径14.2mmでレンズ周囲の形状が良好なシリコーンヒドロゲルを2−HEMA系の親水性材料でサンドした良品レンズが8枚得られた(良品率100%)。
実施例1と同様にして8枚のレンズ製作を試みた。PP製凹型に第一重合性組成物第一重合性組成物(トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート37.5w/w%,ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート45w/w%,ビニルベンジルメタクリレート6w/w%,2−HEMA10w/w%,EDMA1w/w%,光重合開始剤(HMPP)0.5w/w%)を100μl入れ、型をゆっくり回して型のレンズ形成面全体に第一重合性組成物をなじませた後、第一重合性組成物を大部分除去し、10μl程残した((a)工程)。この凹型を回転装置に載せ、380rpmで回転させ、雰囲気を0.5%の酸素を含む窒素ガスに変換して5分後から、光(365nm、1.5mW/cm2)を5分間照射し、第一重合性組成物を重合させた((b)工程)。その露出面上に第二重合性組成物(2−HEMA80w/w%,ヒドロキシブチルメタクリレート19w/w%,EDMA0.5w/w%,光重合開始剤(HMPP)0.5w/w%)を25μl入れ((c)工程)、上から第一凸型を嵌め合わせ、実施例1と同様にして重合させた((d)工程)。
両型を分離し、レンズの付着した型を撓めてレンズを型より外し、精製水5mlに浸漬して第二重合性組成物重合物を含水・膨潤させ、新たな精製水5mlに30分間60℃で浸漬した。新たな精製水5mlに30分間60℃で浸漬する操作を5回繰り返し、製品内の溶出性成分を除去し、塩化ナトリウムを0.9w/w%とエチレンジアミン4酢酸3ナトリウムを0.03w/w%とを加えた精製水1ml入りPP製容器内の窪みに入れ、多層フィルムで容器の窪みをシールし、放射線滅菌した。冷後、多層フィルムを剥がし、レンズ完成品を検査したが、設計通り度数−3.00D、中心厚み0.11mm、直径14.2mmでレンズ形状が良好な硬質で酸素透過性に優れた外面を有するレンズの内面を2−HEMA系の親水性で軟質の材料でコートした良品レンズが8枚得られた(良品率100%)。