JP6155463B2 - 圧粉磁心の製造方法とその製造方法で作製された圧粉磁心を用いた磁性素子の製造方法 - Google Patents

圧粉磁心の製造方法とその製造方法で作製された圧粉磁心を用いた磁性素子の製造方法 Download PDF

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本発明は、インダクタ、チョークコイル、トランス等のインダクタンス部品に使用される圧粉磁心の製造方法とその製造方法で作製された圧粉磁心を用いた磁性素子の製造方法に関するものである。
近年のスマートフォンやPC等の電子機器の小型化、大電流化に伴い、これらに使用されるインダクタンス部品に対しても、小型化や大電流駆動の要求が高くなっている。
このインダクタンス部品を磁性材料の観点から大別すると、金属磁性材料を用いた圧粉磁心と、フェライト磁心に分類することができる。上述した大電流化の要求に対して有利な磁性材料としては、金属磁性材料からなる圧粉磁心があげられ、フェライト磁心に比べて飽和磁化が大きく、大電流下でも透磁率の低下が小さい。
この圧粉磁心は一般的に金属磁性粉末と、樹脂との混合物を加圧成形して得られる。また、金属磁性粉末の分散性を向上させる目的で、金属磁性粉末の表面を表面改質剤により改質する技術や、金属磁性粉末間の絶縁性を確保する目的で、金属磁性粉末間に金属酸化物等の絶縁材料を介在させる技術も知られている。
このような従来技術としては、例えば特許文献1があげられる。特許文献1には金属磁性粉末と、結着性樹脂としてシリコーン樹脂、金属酸化物からなる絶縁材料を用いた構成の圧粉磁心が開示されている。
特開2010−043361号公報
この特許文献1にはシリコーン樹脂の各種品番が開示され、その中には有機酸を有するシリコーン樹脂が多数開示されている。しかしながらこのシリコーン樹脂の熱硬化処理時に、有機酸を含むシリコーン樹脂を熱硬化処理すると、この有機酸が解離されてなる共役塩基が起因となるガスが発生してしまう。このガスは製造工程上問題となり、例えば熱硬化炉内の外壁やダクトに付着し蓄積してしまうのみならず、これらを腐食させてしまうため設備の劣化が大きな課題となる。
上記課題を解決するために本発明は、金属磁性粉末に、有機酸を有するシリコーン樹脂と、第二族元素の金属イオンを含む無機化合物とを混合し、前記有機酸を解離させて共役塩基とし、前記共役塩基と前記第二族元素の金属イオンとからなるイオン結合化合物を生成するとともに、前記イオン結合化合物を含む混合粉末を得るイオン結合工程と、前記混合粉末を加圧成形して成形体を得る加圧成型工程と、前記成形体を所定の温度で熱処理する熱処理工程とを備えた圧粉磁心の製造方法を提供する。
上記イオン結合工程を経ることにより本発明は、有機酸を解離させてなる共役塩基と第二族元素の金属イオンとをイオン結合させることができるため、前記有機酸に起因するガスの発生を抑制することができるとともに、磁気特性に優れた圧粉磁心を実現することができる。
本発明の一実施例における圧粉磁心の製造工程図 図1における圧粉磁心の製造工程図にて作製された圧粉磁心の拡大断面模式図 図2における圧粉磁心を用いて作製されたコイル埋設型磁性素子の斜視図 図3におけるコイル埋設型磁性素子の断面模式図
以下、本発明の圧粉磁心5について図2を用いて説明する。
図2は本発明の一実施例における圧粉磁心5の断面拡大模式図である。図2における圧粉磁心5は、シリコーン樹脂2と、無機化合物3とからなる混合物が、金属磁性粉末1の表面を覆うように配置されてなり、シリコーン樹脂2に含まれる有機酸が解離してなる共役塩基と、無機化合物3に含まれる第二族元素の金属イオンとが結合されてなるイオン結合化合物4が無機化合物3に付着するように介在している。
金属磁性粉末1としてはFe−Ni系、Fe−Si−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Cr系、Feのうち、少なくとも1種類以上を含んでいることが望ましい。Fe系金属磁性粉末は、飽和磁束密度が高いため、大電流下の使用において有用である。
Fe−Ni系金属磁性粉末を用いる場合、その比率はNiの含有量が40重量%以上90重量%以下とすることが望ましい。Fe−Ni系金属磁性粉末におけるNiの役割は、Niの含有量が、40重量%よりも多いと軟磁気特性の改善に効果的で、90重量%よりも少ないと飽和磁化が大きくなり直流重畳特性が向上する。さらに透磁率を改善させるために1〜6重量%のMoを含有させることも可能である。
Fe−Si−Al系金属磁性粉末を用いる場合、その比率はSiが8重量%以上12重量%以下、Alの含有量が4重量%以上6重量%以下であり、各構成元素の含有量を前記組成範囲とすることで高い透磁率と低い保磁力が得られるためである。
Fe−Si系金属磁性粉末を用いる場合、その比率はSiの含有量が1重量%以上8重量%以下とすることが好ましい。Siを含有させることにより、磁気異方性、磁歪定数を小さくし、また電気抵抗を高め、渦電流損失を低減させる効果がある。Siの含有量を1重量%以上とすることで、軟磁気特性の改善効果を得ることができ、8重量%以下とすることで、飽和磁化の低下を抑制し直流重畳特性の低下を抑制することができる。
Fe−Si−Cr系金属磁性粉末を用いる場合、その比率はSiが1重量%以上8重量%以下、Crの含有量が2重量%以上8重量%以下が好ましい。Siを含有させることにより、磁気異方性、磁歪定数を小さくし、また電気抵抗を高め、渦電流損失を低減させる効果がある。Siの含有量を1重量%以上とすることで、軟磁気特性の改善効果を得ることができ、8重量%以下とすることにより、飽和磁化の低下を抑制し直流重畳特性の低下を抑制することができる。また、Crを含有させることにより、さらに耐候性を向上させる効果があり含有量を2重量%以上とすることで、耐候性改善効果を得ることができ、8重量%以下とすることにより、軟磁気特性の劣化を抑制することができる。
なお、Fe系金属磁性粉末を用いる場合は、主成分の元素であるFe以外にも不純物が混成してしまうことがある。ここで不純物とは例えば、Mn、Cr、Ni、P、S、C等が挙げられる。
金属磁性粉末1の平均粒子径は1〜100μmであることが望ましい。平均粒子径を1.0μm以上とすることにより高い充填率を得ることができ、透磁率を向上させることができる。また、平均粒子径を100μm以下とすることにより、高周波領域において渦電流損失が大きくなるのを抑制することができる。より好ましい平均粒子径は1〜30μmの範囲である。
また、表面改質剤(図示せず)で金属磁性粉末1の表面を覆い、さらにその表面をシリコーン樹脂2と無機化合物3とからなる混合物で覆う構成としてもよい。表面改質剤により金属粉の分散性を向上させることができる。この表面改質剤としてはSi系、Ti系、Al系があげられ、本発明においては限定されない。
無機化合物3としては、シリコーン樹脂2に含まれる有機酸が解離してなる共役塩基とイオン結合反応を引き起こす、第二族元素の金属イオンを含むものであればよい。第二族元素の金属イオンを含む無機化合物3は、無機化合物3の表面の吸着水分子層のpHが高く、有機酸を解離させやすい。これにより共役塩基と、第二族元素の金属イオンとがイオン結合するためガスの発生を抑制することができる。
第二族元素の金属イオンとしてはMg2+、Ca2+、Ba2+、Sr2+等があげられ、有機酸としては主としてカルボン酸(化学式:R−COOH)があげられる。このカルボン酸が解離するとRCOO-で表される共役塩基と、H+に解離される。ここで、例えば第二族元素の金属イオンがMg2+で、有機酸がカルボン酸の場合、これらがイオン結合して化学式(RCOO)2Mgで表されるイオン結合化合物4が生成するものと推測される。(RCOO)2Mgのようなイオン結合した化合物は揮発することなく圧粉磁心5中で安定に残存し、複数の金属磁性粉末1間を絶縁する絶縁材として機能するため、耐電圧性を向上させることができるものと考えられる。
以下、本発明における圧粉磁心の製造方法を図1の製造工程図を用いて順に説明する。
まず、イオン結合工程において所定量配合した金属磁性粉末1に、有機酸を有するシリコーン樹脂2と第二族元素の金属イオンを含む無機化合物3とを混合することで有機酸を解離し、解離した共役塩基と第二族元素の金属イオンとをイオン結合させ、イオン結合化合物4を生成させるとともに、このイオン結合化合物4を含む混合粉末を得る。
有機酸が解離されてなる共役塩基と、無機化合物3に含まれる第二族元素の金属イオンとをイオン結合させることで、後の工程で行う乾燥工程または熱処理工程時に発生する有機酸を起因としたガスの発生を抑制することができる。
ここで、有機酸を有するシリコーン樹脂2とは、純シリコーン樹脂に対する変性シリコーン樹脂のことを指し、一般的に純シリコーン樹脂には有機酸は含まれていない。有機酸を有するシリコーン樹脂2は純シリコーン樹脂よりも熱硬化後の機械的強度が高いことから、圧粉磁心の強度を向上することができるため好ましい。有機酸の具体例としては主としてカルボン酸が多く利用されているが、本発明における有機酸とは特に限定されるものではなく、熱硬化時にこの有機酸に起因するガスを発生させるものを指す。
また、シリコーン樹脂2と、金属磁性粉末1との分散性を向上させるために分散剤を添加してもよい。
なお、図1におけるイオン結合工程とは異なり、有機酸を有するシリコーン樹脂2と第二族元素の金属イオンを含む無機化合物3を別途混合した後に金属磁性粉末1と混合することで、共役塩基が他成分に阻害されることなく第二族元素の金属イオンとイオン結合してイオン結合化合物4を生成するため、ガスの発生を抑制する効果を最大限に発揮することができる。
次に、加圧成形工程において、上記イオン結合工程にて作製された混合粉末を3ton/cm2〜7ton/cm2程度の圧力で加圧成形して所望形状の成形体を作製する。
次に、熱処理工程において、上記加圧成形工程にて作製された成形体を150℃以上250℃以下の温度で熱処理して、シリコーン樹脂2が硬化し強度の高い圧粉磁心5を得ることができる。
なお、イオン結合工程で作製された混合粉末に含まれる溶剤成分を揮発させるため65℃以上150℃以下の温度で加熱する乾燥工程を設けることで、後に行う加圧成形工程における圧粉磁心5の成形性がより良好となる。また、イオン結合工程で作製された混合粉末を分級して粒子サイズを揃えることにより、さらに成形性を向上させることができるため好ましい。
以下、本発明における圧粉磁心5の製造方法にて作製された圧粉磁芯5を用いたインダクタ部品について説明する。このインダクタ部品としてはコイル埋設型磁性素子8があげられ図3および図4を用いて説明する。図3は図2における圧粉磁心5を用いて作製されたコイル埋設型磁性素子8の斜視図であり、図4は図3におけるコイル埋設型磁性素子8の断面模式図である。
図3、図4のように、本発明におけるコイル埋設型磁性素子8は圧粉磁心5と、外部端子6と、コイル部7とからなり、コイル部7が圧粉磁心5に埋設されるとともに、このコイル部7と外部端子6は一体形状となるものである。
コイル部7および外部端子6としては、電気導電率がよい材料であれば良く、主として銅や銀の材料があげられる。また、このコイル部7は平角形状または丸線形状があげられ製品特性、製品サイズによって使い分けることができる。
圧粉磁心5は上述したとおりであり、説明を省略する。
以下、本発明におけるコイル埋設型磁性素子8の製造方法を説明する。
圧粉磁心5の製造方法としては上述のとおりであり説明は省略する。
コイル埋設型磁性素子8の製造方法としては、加圧成形工程時にコイル部7を埋設する点で圧粉磁心5の製造方法と異なる。図4に示すようにコイル部7および外部端子6は電気的に接続された一体の形状となっており、この加圧成形時には、コイル部7を圧粉磁心5に埋設して加圧成形し、この加圧成形後に外部端子6となる部分を折り曲げて作製する。
前記した成形圧力を大きくすれば、金属磁性粉末1の充填率が高くなり透磁率は向上するが、高すぎると埋設されたコイル部7間の絶縁確保が困難になる。
加圧成形工程後の熱処理は上述した熱処理工程と同様であり、熱処理温度および熱処理雰囲気は、樹脂成分が十分に硬化するとともにコイル部7および外部端子6が熱処理により酸化もしくは腐食しない条件であればよく特に限定されるものではない。
本発明は、有機酸を有するシリコーン樹脂を用いた圧粉磁心の製造工程において、シリコーン樹脂の硬化工程で発生する有機酸を起因とするガスの発生を抑制することができるため、熱硬化炉等の外壁やダクトへの揮発物質付着量を低減し、これらの腐食を抑制することができる。
1 金属磁性粉末
2 シリコーン樹脂
3 無機化合物
4 イオン結合化合物
5 圧粉磁心
6 外部端子
7 コイル部
8 コイル埋設型磁性素子

Claims (6)

  1. 金属磁性粉末に、
    有機酸を有するシリコーン樹脂と、
    第二族元素の金属イオンを含む無機化合物とを混合し、
    前記有機酸を解離させて共役塩基とし、
    前記共役塩基と前記第二族元素の金属イオンとからなるイオン結合化合物を生成するとともに、
    前記イオン結合化合物を含む混合粉末を得るイオン結合工程と、
    前記混合粉末を加圧成形して成形体を得る加圧成型工程と、
    前記成形体を150℃以上250℃以下の温度で熱処理して前記シリコーン樹脂を硬化させる熱処理工程とを備えた圧粉磁心の製造方法。
  2. 前記イオン結合工程において、
    有機酸を有するシリコーン樹脂と、
    第二族元素の金属イオンを含む無機化合物とを混合し、
    前記有機酸を解離させて共役塩基とし、前記共役塩基と前記第二族元素の金属イオンとからなるイオン結合化合物を生成した後に、
    前記金属磁性粉末を混合する請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記金属磁性粉末と表面改質剤とを混合し、金属磁性粉末の表面に前記表面改質剤を被覆する表面改質工程の後に、
    前記有機酸を有するシリコーン樹脂と、
    前記第二族元素の金属イオンを含む無機化合物とを混合し、
    前記有機酸を解離させて共役塩基とし、前記共役塩基と前記第二族元素イオンとからなるイオン結合化合物を生成する請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  4. 前記有機酸はカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記第二族元素の金属イオンはMg2+、Ca2+のいずれか一方を少なくとも含む請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  6. 金属磁性粉末に、
    有機酸を有するシリコーン樹脂と、
    第二族元素の金属イオンを含む無機化合物とを混合し、
    前記有機酸を解離させて共役塩基とし、
    前記共役塩基と前記第二族元素の金属イオンとからなるイオン結合化合物を生成するとともに、
    前記イオン結合化合物を含む混合粉末を得るイオン結合工程と、
    コイル及び前記コイルに電気的に接続された一対の端子の少なくとも一部を埋設するように前記混合粉末を加圧成形して成形体を得る加圧成型工程と、
    前記成形体を150℃以上250℃以下の温度で熱処理して前記シリコーン樹脂を硬化させる熱処理工程とを備えたコイル埋設型磁性素子の製造方法。
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