以下、実施の形態に係る半導体レーザ装置について説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、第1実施形態(端面発光型)に係る半導体レーザ装置の平面図(図1(A))、正面図(図1(B))である。
設置台10上に、複数の半導体レーザ素子LDが配置されている。半導体レーザ素子LDの厚み方向をZ軸方向とし、これに垂直な2方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする。複数の半導体レーザ素子LDは、X軸に沿って配置されている。半導体レーザ素子LDが、端面発光型である場合には、その共振長はY軸方向であり、レーザ光はY軸の正方向に沿って出射される。半導体レーザ素子LDから出射されたレーザ光は、末広がりのテーパー導波路TPに入力される。テーパー導波路TP内には、二次元回折格子が形成されており、入射したレーザ光をZ軸方向に曲げて出射する機能を有する。このような回折格子としては、種々の形状が知られている。例えば、波長程度の周期でストライプ或いは扇型に周期構造を設けることで、これらは2次の回折格子として動作し、入射したレーザ光がZ方向に曲げられる。また、波長程度の周期で2次元的に例えば正方格子状に真円などの孔形状を配列することによっても、入射したレーザ光はZ方向に曲げられる。複数のテーパー導波路TPの長手方向(Y軸)は、同一の向きである。
テーパー導波路TPから出射されたレーザ光LBは、Z軸方向に進行する。レーザ光LBの波面WV21,WV22の位相は、テーパー導波路TP内の波面WVの位相に依存する。テーパー導波路TP内の波面WVの位相を調整するには、半導体レーザ素子LDから出射されるレーザ光の位相を調整すればよい。この位相を調整することにより、複数のテーパー導波路TPから出射されたレーザ光から構成される波面WV21を、X軸に平行にしたり、波面WV22で示されるように、X軸から傾斜させることが可能である。
半導体レーザ素子LDから出射されるレーザ光の位相を制御するため、隣接する半導体レーザ素子LDの間には、光路長制御素子Cが配置されている。詳細には、隣接する半導体レーザ素子LDの半導体発光部間に、光路長制御素子Cが配置されている。隣接する半導体レーザ素子LDの半導体発光部間の離間距離は、レーザ光の数波長以内の距離であり、半導体発光部は、図1(B)の矢印Pで示されるように、光学的に結合している。この離間距離は、エバネッセント場が形成される距離に設定することもできる。光路長制御素子Cは、隣接する半導体発光部間の光路長を制御する素子である。
図2は、隣接する半導体レーザ素子群(発光部群)を示す図である。
レーザ素子LDは、活性層4を含んでおり、活性層4を含む半導体発光部から、Y軸の正方向に向けてレーザ光が出射される。光路長制御素子Cは、隣接する半導体発光部間に配置されている。隣接する半導体発光部は、光学的に結合しているので、光路長制御素子Cをこれらの間に配置することにより、半導体発光部間の光路長を容易に制御することができる。半導体発光部間の誘電率や物理的な距離を変化させれば光路長は変化するため、光路長制御素子Cの構造としては、種々のものが考えられる。誘電部材を移動させる構造、液晶の誘電率を制御する構造、メタマテリアルを用いた構造、圧電素子を用いた構造、電気光学結晶を用いた構造などが考えられる。
以上のように、上述の半導体レーザ装置は、それぞれがレーザ光を出力し、互いに光学的に結合可能な距離で離間して配列した複数の半導体発光部(半導体レーザ素子LD)と、隣接する半導体発光部間の光路長を制御する光路長制御素子Cとを備えている。光路長制御素子Cによって、半導体発光部間の光路長を制御すると、各半導体発光部から出射されるレーザ光の位相が変化し、複数の半導体発光部から出射されるレーザ光の重ね合わせにより形成されるレーザビームパターンを変化させることができる。
図3は、単一の半導体レーザ素子の縦断面構成を示す図である。
このレーザ素子LDは、レーザ光を発生する活性層4と、活性層4を挟む上部クラッド層7及び下部クラッド層2と、これらの間に設けられ活性層4を挟む光ガイド層3,5を備えている。詳説すれば、半導体基板1上には、下部クラッド層2、下部光ガイド層3、活性層4、上部光ガイド層5、上部クラッド層7、コンタクト層8が順次積層されており、半導体基板1の下面には第1電極E1が設けられ、コンタクト層8の上面には第2電極E2が設けられている。コンタクト層8の表面には、SiNx又はSiO2などの絶縁膜9が形成されている。
第1電極E1と第2電極E2との間に駆動電流が供給された場合、活性層4内において電子と正孔の再結合が生じ、活性層4が発光する。これらの発光に寄与するキャリア及び発生した光は、上下の光ガイド層3,5とクラッド層2,7によって、これらの間に効率的に閉じ込められる。
活性層4の近傍には、これに光学的に結合する回折格子2aが設けられることとしてもよい。回折格子2aが形成された場合には、半導体レーザ素子は、分布帰還型(DFB)レーザとして機能し、形成されない場合にはファブリペロー型(FP)レーザとして機能する。なお、この半導体レーザ素子は、結合型単一モードリッジ型レーザとすることができる。Y軸方向がレーザ光の共振長方向であるため、下部電極E1は、半導体基板1の全面に設けることとし、上部電極E2はY軸に沿って設けることとした。上部電極E2の直下の活性層4の周囲が発光する。半導体発光部は、活性層4と回折格子2aを含むものとする。回折格子2aは、本例では、下部クラッド層2の上面に、これと同一の材料で形成することとするが、回折格子は、上部クラッド層7の下面や活性層4の内部に形成することも可能である。
半導体レーザ素子LDの材料の一例として、半導体基板1はGaAsからなり、下部クラッド層2はAlGaAsからなり、下部光ガイド層3はAlGaAsからなり、活性層4は多重量子井戸構造MQW(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)からなり、上部光ガイド層5は、下層AlGaAs/上層GaAsからなり、上部クラッド層7がAlGaAsからなり、コンタクト層8がGaAsからなる。
なお、各層には、第1導電型(N型)の不純物又は、第2導電型(P型)の不純物が添加されており(不純物濃度は1×1017〜1×1021/cm3)、半導体基板1をN型、下部クラッド層2をN型、下部光ガイド層3をI型、活性層4をI型、上部光ガイド層5の下層をP又はI型、上層をI型、上部クラッド層7をP型、コンタクト層8をP型とすることができる。なお、意図的にはいずれの不純物も添加されていない領域は真性(I型)となっている。I型の不純物濃度は1×1016/cm3以下である。
また、例えば、半導体基板1の厚みを150μm(80μm〜350μm)、下部クラッド層2の厚みを2×103nm(1×103nm〜3×103nm)、下部光ガイド層3の厚みを150nm(0〜300nm)、活性層4の厚みを30nm(10nm〜100nm)、上部光ガイド層5の下層の厚みを50nm(10nm〜100nm)、上層の厚みを50nm(10nm〜300nm)、上部クラッド層7の厚みを2×103nm(1×103nm〜3×103nm)、コンタクト層8の厚みを200nm(50nm〜500nm)とすることができる。なお、括弧内は好適値である。
また、クラッド層のエネルギーバンドギャップは、光ガイド層のエネルギーバンドギャップよりも大きく、光ガイド層のエネルギーバンドギャップは活性層4の井戸層のエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。AlGaAsにおいては、Alの組成比を変更することで、容易にエネルギーバンドギャップと屈折率を変えることができる。AlXGa1−XAsにおいて、相対的に原子半径の小さなAlの組成比Xを減少(増加)させると、これと正の相関にあるエネルギーバンドギャップは小さく(大きく)なり、GaAsに原子半径の大きなInを混入させてInGaAsとすると、エネルギーバンドギャップは小さくなる。すなわち、クラッド層のAl組成比は、光ガイド層のAl組成比よりも大きく、光ガイド層のAl組成比は、活性層の障壁層(AlGaAs)と同等か大きい。クラッド層のAl組成比は0.2〜0.4に設定され、本例では0.3とする。光ガイド層及び活性層における障壁層のAl組成比は0.1〜0.15に設定され、本例では0.1とする。なお、ガイド層には電子の活性層からのリークを抑制するために、第2導電型(p型)クラッド層との間にクラッド層と同等のAl組成で10〜100nm程度の層を挿入しても良い。
上述のテーパー導波路の配置や形状は、様々な変形をすることができる。以下、テーパー導波路を変形した実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態(端面発光型)に係る半導体レーザ装置の平面図である。
第1実施形態では、テーパー導波路TPのXY平面内における重心位置をX軸上に整列させた例について説明したが、本形態では、テーパー導波路TPのXY平面内における重心位置をX軸に沿って千鳥状に配置したものである。テーパー導波路TPの形状は台形であるが、扇型であってもよい。その他の構造及び作用は第1実施形態と同様であり、この構造の場合も、テーパー導波路TPからZ軸方向に出射されるレーザ光LBの位相は、光路長制御素子Cによって制御することができ、所望のレーザビームパターンを得ることができる。
図5は、第3実施形態(端面発光型)に係る半導体レーザ装置の平面図である。
本例では、第1実施形態と比較して、複数のテーパー導波路TPの長手方向の向きが異なることとしたものである。その他の構造及び作用は第1実施形態と同様であり、この構造の場合も、テーパー導波路TPからZ軸方向に出射されるレーザ光LBの位相は、光路長制御素子Cによって制御することができ、所望のレーザビームパターンを得ることができる。
図6は、第4実施形態(端面発光型)に係る半導体レーザ装置の平面図である。
この例は、複数の半導体レーザ素子のそれぞれに結合する複数のテーパー導波路TPが、重畳した形状を有している。重なり合うテーパー導波路TPの境界線はない。図の如く各テーパー導波路TPの形状を台形と仮定した場合に、全てテーパー導波路TPが重複する領域Rには、二次元回折格子が形成されており、この領域において、レーザ光がZ軸方向に曲げられる。その他の構造及び作用は第1実施形態と同様であり、この構造の場合も、テーパー導波路TPからZ軸方向に出射されるレーザ光LBの位相は、光路長制御素子Cによって制御することができ、所望のレーザビームパターンを得ることができる。
図7は、第5実施形態(端面発光型)に係る半導体レーザ装置の平面図である。
この実施形態では、第1実施形態と比較して、テーパー導波路を取り除き、半導体レーザ素子LDから出射されるレーザ光の経路上に、二次元の回折格子R2を配置したものである。回折格子R2では、X軸に平行な第1屈折率の領域と、第2屈折率領域が、Y軸に沿って交互に並んでいる。この回折格子R2の領域において、レーザ光がZ軸方向に曲げられる。その他の構造及び作用は第1実施形態と同様であり、この構造の場合も、回折格子R2からZ軸方向に出射されるレーザ光LBの位相は、光路長制御素子Cによって制御することができ、所望のレーザビームパターンを得ることができる。
図8は、第6実施形態(端面発光型)に係る半導体レーザ装置の平面図である。
この実施形態では、第5実施形態と比較して、二次元の回折格子R2の向きが異なるものである。回折格子R2では、X軸に対して傾斜した第1屈折率の領域と、第2屈折率領域が、これらの長手方向に垂直な方向に沿って交互に並んでいる。この回折格子R2の領域において、レーザ光がZ軸方向に曲げられる。その他の構造及び作用は第1実施形態と同様であり、この構造の場合も、回折格子R2からZ軸方向に出射されるレーザ光LBの位相は、光路長制御素子Cによって制御することができ、所望のレーザビームパターンを得ることができる。
次に、面発光型の半導体レーザ素子を用いた例について説明する。
図9は、第7実施形態(面発光型)に係る半導体レーザ装置の平面図(図9(A))、光路長制御素子を用いない場合の装置の正面図(図9(B))、光路長制御素子Cを用いた場合の正面図(図9(C))である。
設置台10上に、複数の半導体レーザ素子LDが配置されている。半導体レーザ素子LDの厚み方向をZ軸方向とし、これに垂直な2方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする。複数の半導体レーザ素子LDは、X軸に沿って配置されている。半導体レーザ素子LDは、面発光型であり、レーザ光の出射方向はZ軸の正方向である。半導体レーザ素子LDから出射されたレーザ光は、Z軸方向に進行するが、上述の光路長制御素子Cが存在しない場合、レーザ光LBの波面WVの位相は一致していない(図9(B)参照)。
一方、半導体レーザ素子LD間に、光路長制御素子Cが存在する場合、レーザ光LBの波面の位相を制御することができる。波面WVの位相を調整するには、半導体レーザ素子LDから出射されるレーザ光の位相を調整すればよい。この位相を調整することにより、レーザ光全体の波面WV21をX軸に平行にしたり、波面WV22で示されるように、X軸から傾斜させることが可能である。
半導体レーザ素子LDから出射されるレーザ光の位相を制御するため、隣接する半導体レーザ素子LDの間には、光路長制御素子Cが配置されている。詳細には、隣接する半導体レーザ素子LDの半導体発光部間に、光路長制御素子Cが配置されている。隣接する半導体レーザ素子LDの半導体発光部間の離間距離は、レーザ光の数波長以内の距離であり、半導体発光部は、図9(C)の矢印Pで示されるように、光学的に結合している。この離間距離は、エバネッセント場が形成される距離に設定することもできる。光路長制御素子Cは、隣接する半導体発光部間の光路長を制御する素子である。
図10は、隣接する半導体レーザ素子群(発光部群)を示す図である。
レーザ素子LDは、活性層4及びフォトニック結晶層6を含んでおり、活性層4及びフォトニック結晶層6を含む半導体発光部から、Z軸の正方向に向けてレーザ光が出射される。光路長制御素子Cは、隣接する半導体発光部間に配置されている。隣接する半導体発光部は、光学的に結合しているので、光路長制御素子Cをこれらの間に配置することにより、半導体発光部間の光路長を容易に制御することができる。半導体発光部間の誘電率や物理的な距離を変化させれば光路長は変化するため、光路長制御素子Cの構造としては、種々のものが考えられる。誘電部材を移動させる構造、液晶の誘電率を制御する構造、メタマテリアルを用いた構造、圧電素子を用いた構造、電気光学結晶を用いた構造などが考えられる。
以上のように、上述の半導体レーザ装置は、それぞれがレーザ光を出力し、互いに光学的に結合可能な距離で離間して配列した複数の半導体発光部(半導体レーザ素子LD)と、隣接する半導体発光部間の光路長を制御する光路長制御素子Cとを備えている。光路長制御素子Cによって、半導体発光部間の光路長を制御すると、各半導体発光部から出射されるレーザ光の位相が変化し、複数の半導体発光部から出射されるレーザ光の重ね合わせにより形成されるレーザビームパターンを変化させることができる。
図11は、単一の半導体レーザ素子の縦断面構成を示す図である。
説明の都合上、半導体レーザ素子LDの向きは反転して示してある。このレーザ素子LDは、レーザ光を発生する活性層4と、活性層4を挟む上部クラッド層7及び下部クラッド層2と、これらの間に設けられ活性層4を挟む光ガイド層3,5を備えている。詳説すれば、半導体基板1上には、下部クラッド層2、下部光ガイド層3、活性層4、上部光ガイド層5、フォトニック結晶層6、上部クラッド層7、コンタクト層8が順次積層されており、半導体基板1の下面には第1電極E1が設けられ、コンタクト層8の上面には第2電極E2が設けられている。コンタクト層8の表面には、SiNx又はSiO2などの絶縁膜9が形成され、半導体基板1の下面には、反射防止膜Mが形成されている。
第1電極E1は、中央部に開口を有する開口電極であり、第1電極E1の開口内及び周辺には、反射防止膜Mが設けられている。反射防止膜Mは、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜からなる。誘電体多層膜としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、二酸化シリコン(SiO2)、一酸化シリコン(SiO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)などの誘電体層群から選択される2種類以上の誘電体層を適当に積層した膜を用いることができる。例えば、波長λの光に対する光学膜厚で、λ/4の厚さの膜を積層する。なお、反射膜や反射防止膜は、スパッタ法を用いて形成することができる。
フォトニック結晶層6は、基本層6Aと、基本層6A内に周期的に埋め込まれ、これと異なる屈折率を有する異屈折率領域6Bとからなる。
第1電極E1と第2電極E2との間に駆動電流が供給された場合、活性層4内において電子と正孔の再結合が生じ、活性層4が発光する。これらの発光に寄与するキャリア及び発生した光は、上下の光ガイド層3,5とクラッド層2,7によって、これらの間に効率的に閉じ込められる。
活性層4の近傍には、これに光学的に結合するフォトニック結晶層6が設けられている。本例では、上部クラッド層7と上部光ガイド層5との間に、フォトニック結晶層6が設けられているが、これは下部クラッド層2と下部光ガイド層3との間に設けることとしてもよい。また、本例では、下面の電極E1が開口を有することとしているが、これは全面電極として、上部電極E2を透明電極や小さな電極或いは開口電極とし、上部からレーザ光を出射する構造としてもよい。
半導体レーザ素子LDの材料の一例として、半導体基板1はGaAsからなり、下部クラッド層2はAlGaAsからなり、下部光ガイド層3はAlGaAsからなり、活性層4は多重量子井戸構造MQW(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)からなり、上部光ガイド層5は、下層AlGaAs/上層GaAsからなり、上部クラッド層7がAlGaAsからなり、コンタクト層8がGaAsからなる。フォトニック結晶層(位相変調層、屈折率変調層)6は基本層6AがGaAs、基本層6A内に埋め込まれた異屈折率領域(埋込層)6BがAlGaAsからなる。
なお、各層には、第1導電型(N型)の不純物又は、第2導電型(P型)の不純物が添加されており(不純物濃度は1×1017〜1×1021/cm3)、半導体基板1をN型、下部クラッド層2をN型、下部光ガイド層3をI型、活性層4をI型、上部光ガイド層5の下層をP又はI型、上層をI型、フォトニック結晶層6をI型、上部クラッド層7をP型、コンタクト層8をP型とすることができる。なお、意図的にはいずれの不純物も添加されていない領域は真性(I型)となっている。I型の不純物濃度は1×1016/cm3以下である。
また、例えば、半導体基板1の厚みを150μm(80μm〜350μm)、下部クラッド層2の厚みを2×103nm(1×103nm〜3×103nm)、下部光ガイド層3の厚みを150nm(0〜300nm)、活性層4の厚みを30nm(10nm〜100nm)、上部光ガイド層5の下層の厚みを50nm(10nm〜100nm)、上層の厚みを50nm(10nm〜300nm)、フォトニック結晶層6の厚みを100nm(50nm〜300nm)、上部クラッド層7の厚みを2×103nm(1×103nm〜3×103nm)、コンタクト層8の厚みを200nm(50nm〜500nm)とすることができる。なお、括弧内は好適値である。
また、クラッド層のエネルギーバンドギャップは、光ガイド層のエネルギーバンドギャップよりも大きく、光ガイド層のエネルギーバンドギャップは活性層4の井戸層のエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。AlGaAsにおいては、Alの組成比を変更することで、容易にエネルギーバンドギャップと屈折率を変えることができる。AlXGa1−XAsにおいて、相対的に原子半径の小さなAlの組成比Xを減少(増加)させると、これと正の相関にあるエネルギーバンドギャップは小さく(大きく)なり、GaAsに原子半径の大きなInを混入させてInGaAsとすると、エネルギーバンドギャップは小さくなる。すなわち、クラッド層のAl組成比は、光ガイド層のAl組成比よりも大きく、光ガイド層のAl組成比は、活性層の障壁層(AlGaAs)と同等か大きい。クラッド層のAl組成比は0.2〜0.4に設定され、本例では0.3とする。光ガイド層及び活性層における障壁層のAl組成比は0.1〜0.15に設定され、本例では0.1とする。なお、ガイド層には電子の活性層からのリークを抑制するために、第2導電型(p型)クラッド層との間にクラッド層と同等のAl組成で10〜100nm程度の層を挿入しても良い。
なお、フォトニック結晶層6における柱状の異屈折率領域を空隙とし、空気、窒素又はアルゴン等の気体が封入されてもよい。また、フォトニック結晶層6においては、XY平面内における正方格子又は三角格子の格子点位置に異屈折率領域6Bが配置されている。この正方格子における縦及び横の格子線の間隔は、レーザ光の波長を等価屈折率で除算した程度であり、具体的には300nm程度に設定されることが好ましい。正方格子の格子点位置でなく、三角格子における格子点位置に異屈折率領域を配置することもできる。三角格子の場合の横及び斜めの格子線の間隔は、波長を等価屈折率で除算し、さらにSin60°で除算した程度であり、具体的には350nm程度に設定されることが好ましい。
なお、格子間隔aの正方格子の場合、直交座標の単位ベクトルをx、yとすると、基本並進ベクトルa1=ax、a2=ayであり、並進ベクトルa1、a2に対する逆格子基本ベクトルb1=(2π/ax)、b2=(2π/ay)である。フォトニック結晶のエネルギーバンドギャップにおける波数ベクトルk=nb1+mb2(n、mは任意の整数)の場合に、波数kがΓ点となり、格子間隔aが波長λに等しい共振モード(XY平面内における定在波)が得られる。
次に、上述の光路長制御素子Cについて説明する。なお、上述の半導体発光部は、符号LGで示すものとする。
以上のように、上述の面発光型の半導体レーザ素子においては、半導体発光部は、発光層4と、発光層4に光学的に結合したフォトニック結晶層6とを備えており、フォトニック結晶層6の厚み方向に沿ってレーザ光を出射することができる。フォトニック結晶層6は、その厚み方向に沿った埋込領域(異屈折率領域)を、元の半導体層(基本層)内に周期的に分散させており、埋込領域の屈折率が周囲の半導体層の屈折率とは異なる。この構造の場合、発光層4に光学的にフォトニック結晶層6を結合させると、埋込領域の存在により、レーザ光が厚み方向に発振して、フォトニック結晶層6の厚み方向に沿って出射することができる。
この構造によれば、上述のように、フォトニック結晶層6の厚み方向に出射するレーザ光の位相は、光路長制御素子Cによって、制御することができるため、複数のレーザ光の重ね合わせにより形成されるレーザビームパターンを変化させることができる。
図12は、半導体レーザ装置の縦断面構成を示す図である。
当該縦断面構成は、上述のいずれの実施形態の半導体レーザ装置にも適用することができる。この半導体レーザ装置は、それぞれがレーザ光を出力し、互いに光学的に結合可能な距離で離間して配列した複数の半導体発光部LGと、隣接する半導体発光部LG間の光路長を制御する光路長制御素子Cとを備えている。光路長制御素子Cは、誘電部材C1と、誘電部材C1を移動させる移動素子C2とを備えている。
誘電部材C1はガラスや樹脂などの誘電体材料、または、後述するメタマテリアルからなり、移動素子C2は微小なアクチュエータからなる。このようなアクチュエータとしては、圧電素子からなるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)や、電磁石によって引き合う力が弾性力に抗するように弾性体の両端に電磁石を設けたMEMSなどが挙げられる。圧電素子に電圧を印加すると、電圧に応じて伸縮をするため移動素子として機能し、電磁石に電流を与えた場合には弾性体が縮小するため移動素子として機能する。
移動素子C2は、設置台10に設けられ、Z軸方向に延びた孔内に配置され、移動素子C2の一端を孔の底面に固定し、他方端を誘電部材C1に固定しておく。これにより、移動素子C2がZ軸方向に移動した場合に、誘電部材C1をZ軸方向に移動させることができる。
光路長は、屈折率と実際の距離の積で与えられる。透磁率が1である通常の媒質に対しては、可視光では誘電率は屈折率の2乗で与えられ、その他の波長の場合にも、誘電率と屈折率との間には、これに準じた関係がある。したがって、半導体発光部LG間の光伝播経路Pにおける誘電率を変化させれば、光路長を変化させることができる。すなわち、光路長を規定する空間内に誘電部材C1が配置される度合によって、光路長を変化させることができる。移動素子C2によって、誘電部材C1が完全に半導体発光部LG間の空間に移動した場合には、誘電部材C1の誘電率に依存して光路長が決定され、移動素子C2によって、誘電部材C1が半導体発光部LG間の空間内から除外された場合には、当該空間の誘電率(空気や希ガスなどの空間内気体の誘電率)によって、光路長が決定される。
図13は、半導体レーザ装置の縦断面構成を示す図である。
この光路長制御素子Cは、一対の電極EA,EBと、電極EA,EB間に配置された液晶LCとを備えている。液晶LCは適当な絶縁性の容器内に保持されている。XZ平面内においては、当該容器の上部は絶縁層DAを構成し、下部は絶縁層DBを構成している。一対の電極間EA,EBに印加する電圧によって、液晶LCの結晶構造が変化し、したがって、その誘電率が変化する。代表的な液晶としては、ネマチック液晶が知られている。詳説すれば、液晶LCを構成する分子の誘電率は、分子の縦軸方向と横軸方向で誘電率が異なるため、電圧の印加により、特定の向きに分子が配向した場合と、ランダムに分子が分散している場合とでは、光伝播方向の誘電率、すなわち、屈折率は異が異なり、電圧の大きさに依存して、光路長が変化させることができる。
また、光路長制御素子C或いは上記誘電部材C1は、メタマテリアルを備えることができる。人工構造体であるメタマテリアルは、誘電体層の両面を金属層で挟んだ積層構造の厚み方向(Z軸方向)に複数の貫通孔を形成してなる。光路長制御素子Cは、このメタマテリアルと、それぞれの貫通孔の両端に設けられた一対の電極と、これらの電極間の貫通孔内に設けられた液晶とを備えることができる。貫通孔の平面形状としては、円形や楕円形の他、三角形、菱型、或いは平行四辺形などの四角形、又は、五角形などの多角形等が挙げられる。メタマテリアルは複数の開口を備えているため、多くのメタマテリアルは、フィッシュネット型の構造ともよばれる。貫通孔の両端は、ガラス等の一対の窓材で封止された後、窓材の外側に前述の一対の電極を配置する。電極の配置位置は、図13の電極EA,EBの位置である。メタマテリアルは、光の波長よりも小さな構造体を有する人工材料で、例えば、前記貫通孔を1つ以上、有する。したがって、前記電極EAとEBに印加する電圧によって、液晶LCの結晶構造を変化させ、メタマテリアルの屈折率(誘電率)を変化させる事により、この誘電率を制御し、光路長を変化させることができる。
図14は、半導体レーザ装置の縦断面構成を示す図である。
この光路長制御素子Cは、隣接する半導体発光部LGを光学的に結合させる電気光学結晶EOと、電気光学結晶EOに電圧を印加する一対の電極EA,EB(電圧印加手段)と、を備えている。電極EA,EBに電圧を与えることにより、電気光学結晶に電圧が印加されると、結晶内部に電界が発生する。電気光学結晶の屈折率は、電界に比例して変化する(一次電気光学効果)ため、半導体発光部間の電気光学結晶内を伝播する光の光路長を変化させることができる。
電気光学結晶EOとしては、BBO(βBaB2O4)、LiTaO3、KTP(KTiOPO4)、LiNbO3、MgO添加LiNbO3、Fe添加LiNbO3、又はZnO添加LiNbO3などの結晶が知られている。
電気光学結晶の形状及び寸法は、結合導波路(MMI:多モード干渉導波路)の形状及び寸法に設定することができる。
図15は、半導体レーザ装置の縦断面構成を示す図である。
光路長制御素子Cは、それぞれの半導体発光部LGを移動させ、前記半導体発光部間の相対位置を変化させる圧電素子とすることができる。本例ではZ軸方向に移動させる例が示されるが、Y軸方向に移動させる構造とすることも可能である。個々の半導体発光部LG自身を移動させた場合、2つの効果が生じる。1つの効果は、半導体発光部LGの物理的な位置が移動することにより、所望のレーザビームパターンの形成位置までのレーザ光の光路長、すなわち、この形成位置におけるレーザ光の位相が変化する。もう1つの効果は、隣接する半導体発光部LGは、光学的に結合しているので、半導体発光部LGの移動により、光伝播経路Pで示される半導体発光部LG間の光路長が変化する。これら2つの効果は同時に生じるが、いずれの効果も、レーザビームパターン形成位置でのレーザ光の位相を変化させており、光路長制御素子Cを制御することにより、複数の半導体発光部LGから出射されるレーザ光の重ね合わせにより形成されるレーザビームパターンを変化させることができる。
また、半導体発光部LGは、発光層と、前記発光層に光学的に結合した回折格子と、を備え、前記発光層の厚み方向に垂直な方向に沿って共振が生じ、前記発光層の端面からレーザ光を出射することができる。発光層に光学的に回折格子を結合させると、半導体レーザ素子の共振器内部に回折格子を形成することになり、この回折格子により特定波長のみを選択的に強め合う分布帰還型(DFB)レーザを構成することができる。DFBレーザでは、単一波長のレーザ光を出射することができる。なお、回折格子を、活性層内部に形成することもできる。
この構造によれば、上述のように、半導体発光部の端面から出射させるレーザ光の位相は、光路長制御素子によって、制御することができるため、複数のレーザ光の重ね合わせにより形成されるレーザビームパターンを変化させることができる。
なお、上述の例では、3又は4つの半導体レーザ素子が配列した例を示したが、これは5以上の半導体レーザ素子が配列していてもよい。
最後に、上述の半導体レーザ素子について簡単に説明する。
半導体レーザ素子の製造においては、各化合物半導体層は、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いる。半導体基板1の(001)面上に結晶成長を行うが、これに限られるものではない。AlGaAsを用いたレーザ素子の製造においては、AlGaAsの成長温度は500℃〜850℃であって、実験では550〜700℃を採用し、成長時におけるAl原料としてTMA(トリメチルアルミニム)、ガリウム原料としてTMG(トリメチルガリウム)およびTEG(トリエチルガリウム)、As原料としてはAsH3(アルシン)、N型不純物用の原料としてSi2H6(ジシラン)、P型不純物用の原料としてDEZn(ジエチル亜鉛)を用いる。AlGaAsの成長においては、TMA、TMG、アルシンを用い、GaAsの成長においては、TMGとアルシンを用いるが、TMAは用いない。InGaAsは、TMGとTMI(トリメチルインジウム)とアルシンを用いて製造する。絶縁膜の形成は、その構成物質を原料としてターゲットをスパッタして形成すればよい。
すなわち、図11の半導体レーザ素子は、まず、N型の半導体基板(GaAs)1上に、N型のクラッド層(AlGaAs)2、ガイド層(AlGaAs)3、多重量子井戸構造(InGaAs/AlGaAs)4、光ガイド層(GaAs/AaGaAs)5、フォトニック結晶層となる基本層(GaAs)6Aを、MOCVD(有機金属気相成長)法を用いて順次、エピタキシャル成長させる。次に、エピタキシャル成長後のアライメントをとるため、PCVD(プラズマCVD)法により、SiN層を基本層6A上に形成し、次に、レジストを、SiN層上に形成する。更に、レジストを露光・現像し、レジストをマスクとしてSiN層をエッチングし、SiN層を一部残留させて、アライメントマークを形成する。残ったレジストは除去する。
次に、基本層6Aに別のレジストを塗布し、アライメントマークを基準とし、レジスト上に電子ビーム描画装置で2次元微細パターンを描画し、現像することでレジスト上に2次元微細パターンを形成する。その後、レジストをマスクとして、ドライエッチングにより100〜300nm程度の深さを持つ2次元微細パターンを基本層6A上に転写し、孔(穴)を形成し、レジストを除去する。孔の深さは、100nmである。この孔の中に、異屈折率領域6B(AlGaAs)となる化合物半導体を孔の深さ以上に再成長させる。次に、上部クラッド層(AlGaAs)7、コンタクト層(GaAs)8を順次MOCVDで形成し、適当な電極材料を蒸着法又はスパッタ法で基板の上下面に形成して第1及び第2電極を形成する。また、必要に応じて、基板の上下面に絶縁膜をスパッタ法等で形成することができる。
フォトニック結晶層を活性層の下部に備える場合には、活性層及び下部光ガイド層の形成前に、下部クラッド層上にフォトニック結晶層を形成すればよく、フォトニック結晶層を備えない図3の半導体レーザ素子を製造する場合は、この製造工程を省略すればよい。なお、図3の半導体レーザでは、下部クラッド層上にDFB用の回折格子2aを有しており、これは下部クラッド層の形成後にフォトリソグラフィ―技術によって所望パターンのマスクを形成し、当該マスク上に回折格子2aを成長させ、しかる後、光ガイド層3を形成すればよい。
以上、説明したように、動的に位相が変化する光路長制御素子(位相シフト部)を介して、多数の半導体レーザ素子をコヒーレントに結合させることで、より多彩なビームパターンを動的に変化させることが可能となる。